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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A47L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A47L
管理番号 1361417
審判番号 不服2019-3634  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-05-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-18 
確定日 2020-05-01 
事件の表示 特願2014-128344「ウェットワイパー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月18日出願公開、特開2016- 7267、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年6月23日を出願日とする出願であって、平成30年2月15日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年4月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年6月13日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年8月10日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年12月18日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成31年3月18日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和元年12月26日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年3月2日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

本願の請求項1?4に係る発明(以下、請求項順に、「本願発明1」、「本願発明2」・・・という。)は、令和2年3月2日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
布帛と、該布帛に含浸させた除菌液と、を有するウェットワイパーであって、
前記布帛が、パルプとポリエステルとを含み、
前記パルプの含有量が、前記布帛100質量%に対して、20?80質量%であり、
前記ウェットワイパーの最大引張強度(T1)を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度(T2)が、20N/50mm以上であり、
前記布帛の目付量が、20?60g/m^(2)である、
ウェットワイパー。
【請求項2】
前記引張強度(T2)に対する前記最大引張強度(T1)の比(T1/T2)が、1.0?5.0である、請求項1に記載のウェットワイパー。
【請求項3】
前記除菌液の含有量が、前記布帛100質量部に対して、50?350質量部である、請求項1又は2に記載のウェットワイパー。
【請求項4】
医療用である、請求項1?3のいずれか1項に記載のウェットワイパー。」

第3 引用文献、引用発明等

1 引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(国際公開第2013/015735号)には、図面とともに次の事項が記載されている。(括弧内は、当審による仮訳である。下線は理解の一助のために当審で付加した。以下、同様である。)。

ア 「The present disclosure refers to a moist wipe or hygiene tissue comprising a hydraulically entangled nonwoven material impregnated with a wetting composition. It is especially related to moist toilet paper and other wipes or hygiene tissue intended to be flushable in a sewer. It further refers to a method for making the flushable moist wipe or hygiene tissue.」(第1ページ第5?9行)

(仮訳:本開示は、湿潤化組成物で含浸され、水力で絡合させた不織布材料で構成されたウェットワイパー又は衛生ティッシュに関する。特に、下水道に流せることを意図した、湿ったトイレットペーパー、及び他のワイパー又は衛生ティッシュに関する。それは更に、流せるウェットワイパー、又は衛生ティッシュを製造するための方法に関する。)

イ 「A premoistened wipe or hygiene tissue according to the invention comprises a hydroentangled nonwoven material impregnated with a wetting composition. The wetting composition may contain a major proportion of water and other ingredients depending on the intended use. Wetting compositions useful in moist wipes and hygiene tissue are well-known in the art.
Hydroentangling or spunlacing is a technique for forming a nonwoven web introduced during the 1970’ies, see e g CA patent no. 841 938. The method involves forming a fibre web, which is either drylaid or wetlaid, after which the fibres are entangled by means of very fine water jets under high pressure. Several rows of water jets are directed against the fibre, web which is supported by a movable foraminous support or a perforated drum. In this process the fibres entangle with one another providing sufficient bonding strength to the fibrous web without the use of chemical bonding agents. The entangled fibrous web is then dried. The fibres that are used in the material can be natural fibres, especially cellulosic pulp fibres, manmade staple fibres, and mixtures of pulp fibres and staple fibres. Spunlace materials can be produced with high quality at a reasonable cost and they possess a high absorption capacity.
The fibres used in the moist wipe or hygiene tissue according to the invention are at least 70%, by fibre weight, pulp fibres and at least 5%, by fibre weight, poly(lactic acid), PLA, fibres having a length between 8 and 20 mm and a fineness between 0.5 and 3 dtex. The PLA fibres may have a modulus between 20 and 50 g/denier, preferably between 30 and 40 g/denier, according to ASTM method D2256/D3822.」(第4ページ第18行?第5ページ第5行)

(仮訳:本発明による湿潤化されたワイパーまたは衛生ティッシュは、湿潤化組成物が含浸された水流交絡させた不織布材料を含む。湿潤化組成物は、使用目的に応じて、主成分の水及び他の成分を含有することができる。ウェットワイパーおよび衛生ティッシュに有用な湿潤化組成物は、当該技術分野において周知である。
水流交絡すること、またはスパンレースは、例えば、カナダ国特許出願公開第841938号公報に参照されるように、1970年代に導入された不織ウエブを形成するための技術である。この方法は、乾式堆積又は湿式堆積のいずれかである繊維ウエブを形成することを含み、その後、繊維は高圧下で非常に微細な水噴射により絡み合わされる。水噴射の複数列が、可動小孔のある支持体又は孔のあるドラムによって支持された繊維ウエブに対して向けられている。このプロセスでは、繊維は、化学的結合剤を使用することなく繊維ウエブに十分な接合強度を付与するために互いに絡み合う。次に、絡み合った繊維ウエブを乾燥する。材料に使用される繊維は、天然繊維、特にセルロースパルプ繊維、人工人造繊維、パルプ繊維と人造繊維との混合物とすることができる。スパンレース材料は、妥当な費用で高品質に製造することができ、高い吸収能力を有する。
本発明によるウェットワイパー又は衛生ティッシュに使用される繊維が、少なくとも70%の繊維重量のパルプ繊維と少なくとも5%の繊維重量のポリ(乳酸)、PLAであり、繊維が8?20mmの長さを有し、繊度が0.5?3dtexである。PLA繊維は、ASTM法D2256/D3822によると、20?50g/denier、好ましくは30?40g/denierの係数を有する。)

ウ 「By combining PLA fibres, regenerated cellulose fibres and pulp it is thus possible to balance the strength that the product become flushable i.e. disintegrates in a sewer. At the same time the wet tensile strength is high enough that the product does not break at dispensing and during the wet wipe use. Surprisingly, sufficient wet strength is thus obtained for the hydroentangled composite material without any thermal bonds between PLA staple fibres or without use of any chemical binders.」(第7ページ第13?18行)

(仮訳:PLA繊維、再生セルロース繊維、及びパルプを組み合わせることによって、製品が流せる、すなわち、下水道中で分解するような強度のバランスをとることが可能である。同時に、湿潤引張り強度は、製品を取り出すときおよびウェットワイパーの使用中に破れないように十分に高い。驚くべきことに、こうして、十分な湿潤強度が、PLA人造繊維間で熱結合することや、化学的結合材を使用することなく、水流交絡させた複合材料に対して得られる。)

エ 「The entangled web is converted into wipes or hygiene tissue of appropriate dimensions
The wet strength in the cross-machine direction should be between 25 and 200 N/m, preferably between 40 and 200 N/m. The wet strength in machine direction is usually higher. The wet strength is measured with water according to the test method SS-EN ISO12625-5:2005.
The basis weight of the wipe or hygiene tissue is preferably between 40 and 100 g/m^(2) as calculated on the dry weight of the fibrous material, excluding the wetting composition.」(第9ページ第33行?第10ページ第7行)

(仮訳:この絡み合ったウエブは、適切な寸法のワイパーまたは衛生ティッシュに変換される。
機械横方向の湿潤強度は、25N/m?200N/m、好ましくは40N/m?200N/mである。機械方向の湿潤強度の方が通常高い。湿潤強度は、試験法SS-EN ISO12625 5:2005に従って、水を用いて測定される。
ワイパー又は衛生ティッシュの目付量は、湿潤化組成物を除く繊維材料の乾燥重量に対して計算して、好ましくは40?100g/m^(2)である。)

オ 「The wipe or hygiene tissue is impregnated with a wetting composition containing ingredients depending on the intended use of the product. A major proportion of the wetting composition is normally water. Other ingredients may include cleansing agents, skin care agents, bactericides, fungicides, emollients, perfumes, preservatives etc. depending on the intended use.」(第10ページ第25行?第10ページ第29行)

(仮訳:ワイパー又は衛生ティッシュは、製品の使用目的に応じた成分を含有する湿潤化組成物で含浸させる。湿潤化組成物の主成分は、通常水である。他の成分は、使用目的に応じて洗浄剤、スキンケア剤、殺菌剤、殺真菌剤、皮膚軟化剤、香料、防腐剤などが挙げられる。)

カ 上記イ、オの記載から、ウェットワイパーは、不織布材料と、該不織布材料に含浸させた水と殺菌剤とを含有する湿潤化組成物と、を有することが理解できる。

キ 上記イには、ワイパーが、水流交絡させた不織布材料を含むこと、水流交絡により形成された繊維ウエブの材料に使用される繊維は、天然繊維や人工人造繊維であること、及びウェットワイパーに使用される繊維が、少なくとも70%の繊維重量のパルプ繊維と少なくとも5%の繊維重量のPLAであることが記載されているから、上記イの記載から、ウェットワイパーに使用される不織布材料が、パルプ繊維とPLAとを含み、パルプ繊維の繊維重量は、少なくとも70%であることが理解できる。

ク 上記エには、ワイパーの目付量は、湿潤化組成物を除く繊維材料の乾燥重量に対して計算すると、40?100g/m^(2)であることが記載されており、上記アの記載から、ワイパーの湿潤化組成物を除く繊維材料が不織布材料であることは、明らかであるから、上記ア、エの記載から、不織布材料の目付量が、40?100g/m^(2)であることが理解できる。

ケ したがって、上記ア?クを総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「不織布材料と、該不織布材料に含浸させた水と殺菌剤とを含有する湿潤化組成物と、を有するウェットワイパーであって、
前記不織布材料が、パルプ繊維とPLAとを含み、
前記パルプ繊維の繊維重量は、少なくとも70%であり、
前記ウェットワイパーの機械横方向の湿潤強度は、40N/m?200N/mであり、機械方向の湿潤強度の方が高く、
前記不織布材料の目付量が、40?100g/m^(2)である、
ウェットワイパー。」

2 引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2006-56875号公報)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
本発明は、美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品、並びに美容用及び/または皮膚科用のクレンジング及び/またはスキンケア組成物を適用するパッド、ワイプ、タオル、ペーパータオル(towelette)、またはティッシュなどの基材としてのこの吸収製品の使用に関する。」

イ 「【0045】
本発明は、詳細を後述する少なくとも1つの不織布吸収シートを含む美容用及び/または皮膚科用のパーソナルケア及び/またはクレンジング吸収製品に関する。不織吸収シートは、約10wt%?約100wt%、好ましくは約30wt%?約90wt%、より好ましくは約40wt%?約80wt%のリヨセル繊維と、約0wt%?約90wt%、好ましくは約10wt%?約70wt%、より好ましくは約20wt%?約60wt%の他の天然繊維、半合成繊維、及び/または合成繊維の少なくとも1つを含む。」

ウ 「【0073】
更に、本吸収シートは、機械方向及び横断方向において5?1000N/5cmの範囲の引張り強度を有する。好ましい引張り強度の値は、20N/5cm?800N/5cm、より好ましくは80N/5cm?400N/5cm、更に好ましくは100N/5cm?250N/5cmの範囲である。
【0074】
本吸収シートは、機械強度が優れており、特に湿潤強度は満足できるものである。従って、本発明に従った吸収製品は、濡れても形が崩れず、シート材料の嵩(厚み)が減らずにエマルジョンやローションなどのスキンケア組成物または落としたメイク及び/または老廃物を十分な量、吸収することができる。」

エ 「【0082】
本発明の吸収製品では、この製品に導入された如何なる液体やローションも重力によってこの製品内を移動することがなく、たとえ長期間保管したとしても初めに導入された深さに維持されるという驚くべき事実が分かった。」

3 引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2002-105826号公報)には、次の事項が記載されている。

ア 「【0007】請求項4の発明は、親水性繊維を30重量%以上含むことを特徴とする請求項1?3のいずれかに記載の開孔不織布であり、請求項1?3のいずれかに記載の開孔不織布において、親水性繊維を30重量%以上含むことにより、ふき取り布、おむつ部材、壁装材、内装材、ガーゼ、水切りシート及び袋、排水溝ゴミ取りシート、簡易液体フィルター、マスク内ろ材などの用途のうち特に親水性の要求される場合に好適な開孔不織布を得ることができる。」

イ 「【0013】また、本発明に使用する接着性繊維は、上記の複合繊維であるとともに潜在捲縮性繊維であることがさらに好ましい。このような潜在捲縮性を併せ持つ複合繊維としては、例えば温度特性の異なる複数の樹脂成分から成る芯鞘型もしくはサイドバイサイド型といった複合構造を有する繊維であって、樹脂成分中の1成分と他の樹脂成分との間で熱収縮率及び溶融温度が、異なる組み合わせとなっており、1つの樹脂成分が軟化して収縮し、しかも他の樹脂成分が実質的に収縮しない温度で熱処理を施すことによって、個々の繊維がコイル状(または、スパイラル状)の捲縮を持つようになる複合繊維であり、さらに、この複合繊維は樹脂成分中の1成分の溶融する温度まで熱処理を行えば接着繊維としても用いることができる複合繊維をあげることができる。このような複合繊維は、最適な捲縮発現条件を選んだ場合に、外力がかからない状態で発現後の捲縮数が発現前の室温での捲縮数の少なくとも2倍以上に増加するものが望ましく、例えば、室温で10?20個/インチの捲縮数が、繊維単独で外力がかからない状態で110?170℃で15分間加熱した場合に、40?200個/インチ程度に増加するものが好ましい。」

ウ 「【0015】本発明に使用する接着性繊維以外の繊維は、該接着性繊維を構成する樹脂のうち接着成分となる樹脂の融点より、好ましくは10°C以上高い融点で溶融する樹脂または成分から構成された繊維であり、合成繊維や半合成繊維や天然繊維など繊維の種類は問わず適宜選択できる。このような接着性繊維以外の繊維は、合成繊維の場合は、1種類の熱可塑性樹脂からなる合成繊維であっても、異なる2種類以上の樹脂が複合された複合繊維であっても適宜選択して使用することができる。
【0016】本発明に使用する親水性繊維は、水に対して濡れ性の良い繊維が好ましく、吸水性の優れたものは特に好ましく、合成繊維や半合成繊維や天然繊維など繊維の種類は問わず適宜選択できる。このような親水性繊維としては、例えばレーヨン繊維、コットン繊維、アセテート繊維、アクリル繊維などがある。本発明では、このような親水性繊維を30重量%以上含むことにより、特に親水性の要求される、ふき取り布、おむつ部材、ガーゼ、水切りシート及び袋、排水溝ゴミ取りシート、簡易液体フィルター、マスク内ろ材などに好適な開孔不織布を得ることができる。」

エ 「【0031】【実施例】(実施例1)乾式法のウエブ形成装置により、繊度2.2デシテックス、繊維長44mmのポリプロピレン/低融点ポリプロピレンサイドバイサイド型の接着性繊維である潜在捲縮性複合繊維20%と繊度1.7デシテックス、繊維長38mmのレーヨン繊維80%からなる重量30g/m^(2)のクロスレイされた繊維ウエブAを作成した。次に、繊度2.2デシテックス、繊維長44mmのポリプロピレン/低融点ポリプロピレンサイドバイサイド型の接着性繊維である潜在捲縮性複合繊維5%と繊度1.7デシテックス、繊維長38mmのレーヨン繊維95%からなる重量30g/m^(2)のクロスレイされた繊維ウエブBを作成して、繊維ウエブAの上に積層した。この積層した繊維ウエブを80メッシュ平織り金網のコンベアーベルトからなる開孔のある支持体上に載置して、繊維ウエブの上部より、水圧4MPaの高圧水を、直径0.13mmのノズル孔が0.6mm間隔で直線状に配列されたノズルプレート1本より噴射させ、高速水流となし、繊維ウエブにあて、繊維ウエブに第一回目の予備的絡合処理を行った。次に、この予備処理された繊維ウエブを反転させて、第一回目と同じ開孔のある支持体上に載置して、第一回目の予備処理と同じ方法で第二回目の予備的絡合処理を行った。次に、繊維ウエブAが開孔形成用支持体と接触するように、この予備処理された繊維ウエブを再び反転させて10メッシュ平織り横ナックルタイプの、プラスチックのコンベアーベルトからなる開孔形成用支持体上に載置して、繊維ウエブの上部より、水圧8MPaの高圧水を、直径0.13mmのノズル孔が0.6mm間隔で直線状に配列されたノズルプレート2本より噴射させ、高速水流となし、繊維ウエブにあて、繊維ウエブを絡合処理すると同時に開孔処理した。次に、この開孔及び、絡合処理した繊維ウエブを平織り金網からなるコンベアーベルトの上に載置して、エアースルー型のドライヤーの中で、潜在捲縮性複合繊維の接着成分である低融点ポリプロピレン樹脂が溶融するように、155°Cの温度で、潜在捲縮発現処理と熱接着処理を行い開孔不織布を得た。この開孔不織布の重量は59.7g/m^(2)であり、厚さは0.86mm、破断時の引張強さは、タテ方向が80.2N/50mm巾、ヨコ方向が31.6N/50mm巾、破断時の伸び率は、タテ方向が30.8%、ヨコ方向が53.0%、カンチレバー法による剛軟度は68mm、ピリングテストによる耐摩耗性の度合いは、表(ウエブA側の面であり、接着性繊維の混合比率の多い面)がL級、裏(ウエブB側の面であり、接着性繊維の混合比率の少ない面)がL級であった。」

第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

引用発明における「不織布材料」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1における「布帛」に相当し、以下同様に、「水と殺菌剤とを含有する湿潤化組成物」は「除菌液」に、「パルプ繊維」は「パルプ」に、「PLA」は「ポリエステル」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「布帛と、該布帛に含浸させた除菌液と、を有するウェットワイパーであって、
前記布帛が、パルプとポリエステルとを含む、
ウェットワイパー。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1はパルプの含有量が、「布帛100質量%に対して、20?80質量%」であるのに対し、引用発明はパルプ繊維の繊維重量は、少なくとも70%である点。

(相違点2)本願発明1はウェットワイパーの最大引張強度(T1)を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度(T2)が、「20N/50mm以上」であるのに対し、引用発明は機械横方向の湿潤強度は、40N/m?200N/mである点。

(相違点3)本願発明1は布帛の目付量が、「20?60g/m^(2)である」のに対し、引用発明は不織布材料の目付量が、40?100g/m^(2)である点。

(2)相違点についての判断

事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。

引用文献3には、段落【0001】、【0074】及び【0082】に記載されているように、エマルジョンやローションなどのスキンケア組成物を含んだ不織布吸収シートにおいて、吸収シートの引張り強度が、20N/5cm?800N/5cmであることが記載されており、また、引用文献4には、段落【0007】に記載されているように、ふき取り布などの親水性の要求される場合に好適な開孔不織布において、開孔不織布のヨコ方向の破断時の引張強さが31.6N/50mm巾であることが記載されている。

一方、引用文献1の第7ページ第13?18行の記載によれば、引用発明は、PLA繊維、及びパルプを組み合わせることによって、取り出しやふき取りの際には破れないが、製品が流せる、すなわち、下水道中で分解するような強度のバランスをとることを可能とするものであるから、引用発明のウェットワイパーの機械横方向の湿潤強度(本願発明にあわせて単純に換算すると「2N/50mm?10N/50mm」となる。)も、取り出しやふき取りの際には破れないが、下水道中で分解するような強度に調整されたものであるといえる。してみると、引用文献3や引用文献4の記載事項から、「ウェットワイパーの最大引張強度を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度が、20N/50mm以上」という技術的事項が、本願出願日前において周知の技術(以下、「周知技術」という。)であるといえたとしても、引用発明の湿潤強度「2N/50mm?10N/50mm」を、これよりはるかに大きな値である「20N/50mm以上」とする動機付けは見当たらず、むしろ、強度を上げることは、下水道中で分解しづらくなると考えられるから、引用発明において湿潤強度を上げることには、阻害要因があるといえる。

そして、本願発明1は、ウェットワイパーの最大引張強度(T1)を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度(T2)を、20N/50mm以上とすることにより、引用文献1の記載事項から予測し得ない「被払拭表面の再汚染が防止でき、ふき取り性能に優れる(本願明細書段落【0010】)」という格別な効果を奏するものである。

したがって、上記相違点1,3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたとすることはいえない。

2 本願発明2?4について

本願発明2?4も、本願発明1の「ウェットワイパーの最大引張強度(T1)を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度(T2)が、20N/50mm以上」と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたとすることはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定は、請求項1について上記引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら、令和2年3月2日にされた手続補正により補正された請求項1にかかる発明は、「ウェットワイパーの最大引張強度(T1)を有する方向に対し直交する方向における前記ウェットワイパーの引張強度(T2)が、20N/50mm以上」という発明特定事項を有するものであり、上記のとおり、本願発明1?4は、引用発明及び周知技術に基づいて、容易に発明をすることができたとすることはいえない。したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について

当審では、補正前の請求項5の「ウェットワイパーの製造方法」について、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない旨の拒絶の理由を通知しているが、令和2年3月2日にされた補正において、当該請求項を削除する補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明1?4は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-04-15 
出願番号 特願2014-128344(P2014-128344)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A47L)
P 1 8・ 121- WY (A47L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 粟倉 裕二大光 太朗  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 松本 泰典
久保 竜一
発明の名称 ウェットワイパー  
代理人 大貫 敏史  
代理人 内藤 和彦  
代理人 江口 昭彦  
代理人 稲葉 良幸  
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