• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01M
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01M
管理番号 1361438
異議申立番号 異議2019-700633  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-08 
確定日 2020-02-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6468163号発明「鉛蓄電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6468163号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-6〕について訂正することを認める。 特許第6468163号の請求項1ないし3,5,6に係る特許を維持する。 特許第6468163号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6468163号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2015-207180号)は,平成27年10月21日の出願であって,平成31年 1月25日にその特許権の設定の登録がされ,同年 2月13日に特許掲載公報が発行され,その後,令和 1年 8月 8日に,本件特許について,特許異議申立人 牧野 純二(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,当審が同年10月 7日付けで取消理由を通知したところ,同年11月29日に特許権者により意見書及び訂正請求書が提出されたが,申立人による意見書の提出はなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
上記訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は,次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1における
「前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、」を
「前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記ビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂であり、」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
訂正前の請求項1における
「前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されている、」を
「前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されており、前記Sn合金は、Snを50質量%以上含む、」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2?6も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項4を削除する。

(4)訂正事項4
訂正前の請求項5における
「請求項1?4のいずれかに記載の鉛蓄電池」を
「請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池」と訂正する。

(5)訂正事項5
訂正前の請求項6における
「請求項1?4のいずれかに記載の鉛蓄電池」を
「請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池」と訂正する。

2 訂正の目的の可否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は,請求項1における「ビスフェノール系樹脂」をより具体的に特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件明細書の段落【0023】には「(A)ビスフェノール系樹脂としては、例えば、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂が挙げられる。」と記載され,また,段落【0104】には,実施例として合成例1(ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)が記載されている。よって,訂正事項1は,新規事項に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は,請求項1における「Sn合金」をより具体的に特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,本件特許明細書の段落【0088】には「前記表面層は、ISSサイクル特性が向上する観点から、Snを50質量%以上含む合金から形成されていることが好ましい。」と記載され,また,段落【0110】には,実施例として負極集電体の耳部にSn層を形成したものが記載されている。よって,訂正事項2は,新規事項に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は,訂正前の請求項4を削除するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして,訂正事項3は,請求項を削除するものであるから,新規事項に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

(4)訂正事項4,5について
訂正事項4は,請求項5において,引用する請求項を「請求項1?4」から「請求項1?3」にするものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり,また,訂正により削除された請求項4の引用という明瞭でない記載の釈明,又は請求項4との引用関係の解消を目的とするものでもある。
そして,訂正事項4は,引用する請求項を「請求項1?4」から「請求項1?3」にするものであるから,新規事項に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。
訂正事項5は,請求項6において,引用する請求項を「請求項1?4」から「請求項1?3」にするものであるから,上記と同様,特許請求の範囲の減縮,明瞭でない記載の釈明,又は請求項4との引用関係の解消を目的とするものであり,かつ,新規事項に該当せず,また,実質上特許請求の範囲を拡張ないし変更するものでもない。

3 一群の請求項について
訂正前の請求項1?6について,請求項2?6は請求項1を引用しているものであって,訂正事項1及び訂正事項2により,訂正後の請求項1に連動して訂正されるものである。したがって,訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は,特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

4 独立特許要件について
訂正前の請求項1?6の全てに特許異議の申立てがされているから,特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。

5 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号,第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであって,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

第3 本件発明
上記第2で検討したとおり,令和 1年11月29日付け訂正請求書による本件訂正は適法なものである。そして,本件訂正後の請求項1?6に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1?6」という。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される,次のとおりのものである。下線は訂正箇所を示す。

「【請求項1】
正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池であって、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記ビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂であり、
前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されており、前記Sn合金は、Snを50質量%以上含む、鉛蓄電池(ただし、負極材がアルギン酸又はその塩を含むものを除く)。
【請求項2】
前記電解液がアルミニウムイオンを含む、請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
部分充電状態下で使用される、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるアイドリングストップシステム車。
【請求項6】
請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるマイクロハイブリッド車。」

第4 特許異議申立ての理由及び取消理由の概要
申立人による特許異議申立ての理由は次のとおりであり,当審は,このうち,申立理由2及び同3を採用し,取消理由として通知した。

1 申立理由1(実施可能要件)
比較例1は,その負極集電体の耳部は「Snを0.5質量%含む合金」となっており,訂正前の請求項1?3,5,6の構成を備えるが,本件発明の課題が解決できないとされている。よって,本件発明4を除く本件発明は,本件発明の課題を解決し,所定の効果を奏することを,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が認識することができない。
よって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が訂正前の請求項1?3,5,6に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載しておらず,訂正前の請求項1?3,5,6に係る特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 申立理由2(サポート要件)(取消理由として採用)
比較例1の耳部は「Snを0.5質量%含む合金」であり,本件発明の課題を解決し,所定の効果を奏することはないと説明されているが,請求項1ではSn含有量を限定していない。よって,本件明細書の記載は,請求項1?3,5,6に係る発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えるものである。
よって,訂正前の請求項1?3,5,6は,発明の詳細な説明に記載されたものでないから,訂正前の請求項1?3,5,6に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 申立理由3(サポート要件)(取消理由として採用)
本件明細書の実施例で使用されている「ビスフェノール系樹脂」は,すべて「ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物」であり,他のビスフェノール系樹脂を使用した例は示されていない。そして,本件出願時の技術常識にも照らし,本件明細書の記載は,請求項1?6に係る発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲を超えるものである。
よって,訂正前の請求項1?6は,発明の詳細な説明に記載されたものでないから,訂正前の請求項1?6に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

4 申立理由4(実施可能要件)
本件明細書の実施例で使用されている「ビスフェノール系樹脂」は,すべて「ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物」であり,他のビスフェノール系樹脂を使用した例は示されていない。
そして,本件出願時の技術常識にも照らし,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が訂正前の請求項1?6に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載していないから,訂正前の請求項1?6に係る特許は,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

第5 当審の判断
当審は,本件訂正による訂正後の請求項1?6はいずれも,当審が通知した取消理由を解消しており,上記第4の申立理由1?4のいずれにも該当しないものと判断する。その理由は次のとおりである。

1 申立理由2,3(サポート要件)(取消理由として採用)について
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
そこで,以下,本件発明が解決しようとする課題を踏まえつつ,本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かを検討する。

(1)本件発明が解決しようとする課題について
本件明細書によると,本件発明は,鉛蓄電池に関するものであって(段落【0001】),充電受入性に優れ,ISSサイクル特性にも優れる鉛蓄電池を提供することを目的とする(段落【0011】,以下「本件課題」という。)。
ここで,充電受入性とは,作製した電池において,25℃,10.4Aで30分間定電流放電し,12時間放置した後,100Aの制限電流の下,2.41Vで60秒間の定電圧充電し,充電開始から5秒目の電流値測定により評価されるものであり(段落【0115】),また,ISSサイクル特性とは,ISS車(アイドリングストップ車)での鉛蓄電池の使われ方を模擬したサイクル試験で判定される電池の寿命を表す(段落【0117】)。

(2)本件課題を解決できる範囲について
ア 本件発明の負極材は,ビスフェノール系樹脂を含んでおり,ビスフェノール系樹脂としては,(a)ビスフェノール系化合物と,(b)アミノ酸,アミノ酸誘導体,アミノアルキルスルホン酸,アミノアルキルスルホン酸誘導体,アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,を反応させて得られる樹脂等が挙げられる(段落【0023】)。本件発明は,その負極材が上記ビスフェノール系樹脂を含むことにより,充電受入性に優れ,更に,負極集電体の耳部が破断しにくくなり,突然寿命になりにくいためISSサイクル特性に優れるとされる(段落【0069】)。

イ 本件発明の負極集電体には,集電のための耳部が形成されており,耳部は,Sn又はSn合金の表面層を有しているが,前記表面層は,ISSサイクル特性が向上する観点から,Snを50質量%以上含む合金から形成されていることが好ましい(段落【0087】?【0088】)。前記表面層が,Sn又はSn合金から形成されていることにより,PSOC(部分充電状態)下で突然寿命にならない長寿命な性能を有する鉛蓄電池を提供することができる(段落【0088】?【0090】)。

ウ 実施例では,負極材を構成するビスフェノール系樹脂として合成例1(ビスフェノール・アミノベンゼンスルホン酸・ホルムアルデヒド縮合物)を作成し(段落【0104】),また,負極集電体として耳部にSn層が形成された負極集電体を作製し(段落【0109】),作製した鉛蓄電池の電池特性を評価したところ,負極有機添加剤としてビスフェノール系樹脂を有し,かつ,耳部にSn又はPb-Sn合金の表面層を有している実施例1?4は,いずれか一方又は両者を有しない比較例1?4に対し,充電受入性,ISSサイクル特性ともに向上していることが分かる(段落【0118】表1)。

(3)本件発明が本件課題を解決できるかについて
本件発明は,訂正後の請求項1に記載されるとおり,負極材に含まれるビスフェノール系樹脂として(a)ビスフェノール系化合物と,(b)アミノ酸,アミノ酸誘導体,アミノアルキルスルホン酸,アミノアルキルスルホン酸誘導体,アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,を反応させて得られる樹脂を特定し,また,負極集電体の耳部におけるSn合金は,Snを50質量%以上含むことを特定したものである。
ここで,合成例1のビスフェノール系樹脂の縮合成分であるアミノベンゼンスルホン酸は,アミノ基及びスルホン酸基を有し,かつ,炭化水素基の一種であるアリール基を有するものであるから,訂正後の本件発明に係るビスフェノール系樹脂の成分(b)であるアミノアルキルスルホン酸(誘導体)及びアミノアリールスルホン酸(誘導体)の代表的な成分であるということができる。
そして,本件明細書の発明の詳細な説明の記載によれば,上記(2)ア?ウのとおり,そのような特定のビスフェノール系樹脂と,Sn又はSn合金を用いることにより,用いない場合に比べ充電受入性,ISSサイクル特性ともに向上する,すなわち,本件課題を解決できることが示されているのであるから,本件発明は,発明の詳細な説明に記載されたものであるということができる。

(4)まとめ
以上のとおり,訂正後の請求項1?6は,発明の詳細な説明に記載されたものであるといえるから,サポート要件に係る取消理由は解消した。

2 申立理由1,4(実施可能要件)について
物の発明における発明の実施とは,その物の生産,使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号),物の発明について特許法第36条第4項第1号が定める実施可能要件を充足するためには,当業者が,明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識とに基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,その物を製造し,使用することができる程度の記載があることを要する,と解される。
そこで,上記観点から,本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するか否かを検討する。

(1)上記1(2)(3)に摘示のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の負極材は特定のビスフェノール系樹脂を含んでおり,当該ビスフェノール系樹脂としては,(a)ビスフェノール系化合物と,(b)アミノ酸,アミノ酸誘導体,アミノアルキルスルホン酸,アミノアルキルスルホン酸誘導体,アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と,を反応させて得られる樹脂が挙げられるとともに,実施例として,合成例1による具体的樹脂の合成と,その負極材への適用が示されている。

(2)同じく,上記1(2)(3)に摘示のとおり,本件明細書の発明の詳細な説明には,本件発明の負極集電体は,耳部にSnを50質量%以上含む合金の表面層を有すること,及び,実施例として,耳部にSn,又はPb-50質量%Sn合金の表面層を適用したものが示されている。

(3)そうすると,当業者は,上記(1)(2)に摘示のとおりの記載を含む本件明細書の発明の詳細な説明の記載と,出願時の技術常識を参酌して,過度な試行錯誤を要することなく,本件発明1?6を実施することができるといえる。
よって,本件明細書の発明の詳細な説明は,当業者が訂正後の請求項1?6に記載された発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。

第6 むすび
以上のとおり,当審が通知した取消理由,及び,特許異議申立書に記載した申立理由によっては,訂正後の請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すことはできず,また,他に訂正後の請求項1?3,5,6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また,請求項4は本件訂正により削除されたから,特許異議の申立ての対象となる請求項が存在しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、及び電解液を備える鉛蓄電池であって、前記負極が負極材と負極集電体とを有し、前記負極材がビスフェノール系樹脂と負極活物質と、を含み、前記ビスフェノール系樹脂は、(a)ビスフェノール系化合物と、(b)アミノアルキルスルホン酸、アミノアルキルスルホン酸誘導体、アミノアリールスルホン酸及びアミノアリールスルホン酸誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、(c)ホルムアルデヒド及びホルムアルデヒド誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を反応させて得られる樹脂であり、
前記負極集電体は耳部を有し、前記耳部はSn、又はSn合金の表面層が形成されており、前記Sn合金は、Snを50質量%以上含む、鉛蓄電池(ただし、負極材がアルギン酸又はその塩を含むものを除く)。
【請求項2】
前記電解液がアルミニウムイオンを含む、請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
部分充電状態下で使用される、請求項1又は2に記載の鉛蓄電池。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるアイドリングストップシステム車。
【請求項6】
請求項1?3のいずれかに記載の鉛蓄電池を備えるマイクロハイブリッド車。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-02-12 
出願番号 特願2015-207180(P2015-207180)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (H01M)
P 1 651・ 537- YAA (H01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 赤樫 祐樹冨士 美香  
特許庁審判長 亀ヶ谷 明久
特許庁審判官 平塚 政宏
池渕 立
登録日 2019-01-25 
登録番号 特許第6468163号(P6468163)
権利者 日立化成株式会社
発明の名称 鉛蓄電池  
代理人 財部 俊正  
代理人 吉住 和之  
代理人 清水 義憲  
代理人 平野 裕之  
代理人 財部 俊正  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 平野 裕之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 中塚 岳  
代理人 吉住 和之  
代理人 中塚 岳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ