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審決分類 審判 判定 同一 属する(申立て成立) H04M
管理番号 1361511
判定請求番号 判定2019-600015  
総通号数 245 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2020-05-29 
種別 判定 
判定請求日 2019-06-10 
確定日 2020-05-05 
事件の表示 上記当事者間の特許第6433284号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「スマートフォン用ケース」は、特許第6433284号発明の技術的範囲に属する。 
理由 第1 請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、本件判定請求書の「5 請求の趣旨」及び「6 請求の理由」の「(3) 本件特許発明の説明」によれば、イ号図面及びその説明書(以下、「イ号物件説明書」という。)に示すスマートフォン用ケース(以下、「イ号物件」という。)は、特許第6433284号(以下、「本件特許」という。)の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本件発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。

第2 事案の概要
1 手続の経緯
本件特許は、平成26年12月22日に出願したものであって、平成30年11月16日に、その特許権の設定登録がされたものである。そして、本件判定に係る手続の概要は以下のとおりである。

令和 元年 6月10日 判定請求書
令和 元年 8月 5日 判定請求答弁書
営業秘密に関する申し出
令和 元年10月15日 判定請求弁駁書
令和 元年11月11日付け 審尋通知書
令和 元年12月 2日 第1回口頭審尋
令和 元年12月12日付け 証拠調べ通知書
令和 2年 2月14日 意見書(被請求人)

2 本件発明の分説
本件発明を構成要件に分説すると、次のとおりである。以下、分説した構成要件をそれぞれの符号に従い「構成要件A」などのようにいう。

A スマートフォンを収容するスマートフォン用ケースであって、
B 前記スマートフォンの裏面を覆う本体と、
C 前記スマートフォンの表面を覆い、前記本体に対して回動可能に結合された蓋部と、
D 前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材と、
E を備えるスマートフォン用ケース。

3 争点
本件判定の争点は、以下のとおりである。

(1)構成要件充足性(争点1)
少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材(構成要件D)について

(2)均等(争点2)

4 争点に関する当事者の主張
(1)争点1(構成要件充足性)について
[請求人の主張]
ア 請求人は、イ号物件について蓋部を把持して蓋部360度回動状態とし、把持している手を放して蓋部を開放し、蓋部が180度回動状態となるまでの時間をストップウオッチによって測定したところ、3回の測定で0.34秒、0.37秒、0.41秒であった。これを「約0.4秒」とした。
甲6号証は、測定状況を撮影した動画の中の回動前及び回動中の3時点をキャプチャしたものであり、時刻18秒47において蓋部360度回動状態であり、時刻18秒70において蓋部の回動角が180度以上であり、時刻18秒77において蓋部の回動角が180度未満となっていることから、18秒47と18秒77の差の0.3秒の間において蓋部が360度から180度まで回動した。
よって、イ号物件は構成要件Dを充足する(以上、判定請求書4頁、弁駁書2?3頁)。

イ 本件発明は、使用中にスマートフォンを落としてもタッチパネルを保護することのできるスマートフォン用ケースを提供すること課題とし、この課題を達成するため、付勢部材の付勢力が強く、利用者がうっかり手を放して落下させてしまったとしても、地面に衝突するまでに蓋部が180度以下の角度まで回動して、タッチパネルが地面に直接衝突することが防止されるものが、本件発明である。本件発明の「付勢部材」は「連結部に2つ設けられ」た「スプリング又は板バネ」に限定されない(判定請求書4?5頁)。
イ号物件が特許6363319号(乙1号証)の実施品であることについては不知であるが、付勢力が強い付勢部材であれば(蓋部を360度から180度まで回動させる時間が0.5秒以下であれば)、いかなる付勢部材であっても本件発明の技術的範囲に属し、仮にイ号物件の付勢部材が前記実施品のものとしても、本件発明の技術的範囲に属する(弁駁書3頁)。

ウ スマートフォン用ケースである以上、180度の角度で停止するものはありえず、本件発明は、180度の角度を超えて0度に向けてさらに回動するものを自明に含む。請求項1の「少なくとも」の語は、180度の角度を超えて0度に向けてさらに回動することを含むための語である(判定請求書5頁)。

[被請求人の主張]
ア 蓋部360°回動状態から蓋部180°回動状態まで回動する時間を、どのように測定するのか判然としない。また、イ号物件の説明書には、「約0.4秒」と記載されており、「約」がどこまで含まれるのかも判然としない。
よって、イ号物件のヒンジ部材が構成要件Dを充足するかどうかは、不知である(以上、答弁書7頁)。

イ イ号物件のシリコーンゴム製のヒンジ部材は、付勢する力が弱いことから、本件発明のように本体11と蓋部12の先端12aとでスマートフォン20を支えることによって、タッチパネル20aの地面への接触を回避することは不可能であり、イ号物件のヒンジ部材は本件発明の「付勢部材」の作用効果を奏するものではないから、イ号物件のヒンジ部材は本件発明の構成要件Dを充足しない(答弁書6頁)。
本件発明における「付勢部材」とは、スプリングや板バネなどのように、強い付勢力を有する商品であるといえるが、イ号物件では、特段付勢する作用効果を有しない商品である「シリコーンゴム製チューブ」を利用するものであり、本件発明における「付勢部材」とは形状も材質も使用目的も全く異なるものである(答弁書6?7頁)。
また、イ号物件のヒンジ部材は「蓋部」と「本体の底板」を直接連結するものであり、本件明細書の「付勢部材14a」、「付勢部材14b」とは、構造的に異なるものである(意見書2頁)。

ウ 本件発明の付勢部材は「360度から180度まで回動すると特定されるのに対し、イ号物件のヒンジ部材は蓋部360°回動状態から蓋部0°回動状態まで回動するから、構成要件Dを充足しない。すなわち、「360度から0度まで回動するヒンジ部材」のうち、360度から180度まで回動する過程のみを抜き出して、イ号物件のヒンジ部材を構成要件Dと同一であるとする請求人の認定は誤りである(答弁書3?4頁)。
また、本件発明の実施形態(【0014】、【0020】、図1、図2)では、「付勢部材14a」は「蓋部を表面からの角度360度から180度まで回動する」ための付勢部材であり、「付勢部材14b」は「蓋部を表面からの角度180度から0度まで回動する」ための付勢部材であって、本件発明のスマートフォンケースは、「付勢部材14a」と「付勢部材14b」の2種類の付勢部材が協働して蓋部を閉じるものであるから、本件発明の構成要件Dの「前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」は「付勢部材14a」に限定するものである(答弁書4?5頁)。
そして、本件発明の「蓋部を表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」(付勢部材14a)によれば、本体11と蓋部12の先端12aとでスマートフォン20を支えることにより、タッチパネル20aの地面への接触を回避するものであり、蓋部12が開いた状態で作用効果を発揮するものであるところ、イ号物件は一つのヒンジ部材で蓋部360°回動状態から蓋部0°回動状態まで回動することを可能とするものであって、その作用効果も、本件発明のように本体と蓋部の先端によりタッチパネルを保護するものではなく、蓋部で完全にタッチパネルを覆うことにより保護するものであり、全く異なる(答弁書5?6頁)。
さらに、本件発明の「付勢部材」が「側部13並びに付勢部材14a及び14bの全体と対応する」という合議体の認定については、【0020】の記載から本件発明の「付勢部材」が「付勢部材14a」であると明確に特定されており、「側部13」が付勢部材の一部を構成することは記載も示唆もされておらず、蓋部を360度から0度まで閉じる機能を有する付勢部材については一切記載がないことから、前記合議体の認定は誤りである(意見書2頁)。
本件明細書では、「少なくとも」という用語を「少なくとも0.5秒以内」(【0005】)又は「少なくとも180度の角度」(【0006】)に使い分けていることから、特許請求の範囲に記載における「180度の角度」に対して「少なくとも」を付さなかったことは、特許権を取得するために意識的に限定したものである(意見書3頁)。

(2)争点2(均等)
[請求人の主張]
イ号物件が特許6363319号(乙1)の実施品であることについては不知であるが、仮にそうであったとしても、付勢部材の相違である相違部分は本件発明の本質的部分ではなく、相違部分をイ号物件におけるものと置き換えても本件発明と同一の作用効果を奏し、相違部分をイ号物件におけるものと置き換えることがイ号物件の製造等の時点において容易に想到でき、イ号物件が本件発明の出願時における公知技術と同一又は公知技術から容易に推考できたものではなく、イ号物件が本件発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がないから、イ号物件は、本件発明と均等であり、本件発明の技術的範囲に属する(弁駁書3?4頁)。

[被請求人の主張]
均等について、被請求人は特段の主張をしていない。

5 証拠方法
(1)請求人は、証拠方法として以下を提出した。
甲1号証 特許第6433284号登録原簿謄本(当審注:証拠説明書には「特許第6433284号公報謄本」とあるが、立証の趣旨及び提出された甲1号証からみて、「公報」は「登録原簿」の誤記と認める。)
甲2号証 警告書(請求人が被請求人に宛てたもの)
甲3号証 御回答(被請求人が請求人に宛てたもの)
甲4号証 質問書(請求人が被請求人に宛てたもの)
甲5号証 質問書に対する御回答(被請求人が請求人に宛てたもの)
甲6号証 イ号物件動作に係る動画のキャプチャ

(2)被請求人は、証拠方法として以下を提出した。
乙1号証 特許第6363319号公報
乙2号証 工具の通販サイト「モノタロウ」の「スプリング」に関する商品。https://www.monotaro.com/s/?c=&q=%83X%83v%83%8A%83%93%83O&swc=0
乙3号証 工具の通販サイト「モノタロウ」の「板バネ」に関する商品。https://www.monotaro.com/s/?c=&q=%94%C2%83o%83l&swc=0
乙4号証 工具の通販サイト「モノタロウ」の「シリコーンゴム製チューブ」に関する商品。https://www.monotaro.com/s/?c=&q=%83V%83%8A%83R%81%5B%83%93%83S%83%80%90%BB%83%60%83%85%81%5B%83u&swc=0

第3 争点1に対する当合議体の判断
1 本件発明の技術的意義
(1)本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。
ア 明細書の記載
「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スマートフォンを収容して保護するスマートフォン用ケースに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンを収容するスマートフォン用ケース(以下、単にケースとも呼ぶ)は、装飾的な目的で用いられるほか、スマートフォンを保護する目的で用いられる。保護の目的において、特に、タッチパネルを保護することが重要である。そこで、特許文献1にはタッチパネルをカバーするケースが開示されている。しかし、タッチパネルを使用する際にはカバーを外さなくてはならず、使用中にスマートフォンを落とした場合に、地面等に落下してタッチパネルを損傷することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3183528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、使用中にスマートフォンを落としてもタッチパネルを保護することのできるスマートフォン用ケースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のスマートフォン用ケースは、スマートフォンを収容するスマートフォン用ケースであって、前記スマートフォンの裏面を覆う本体と、前記スマートフォンの表面を覆い、前記本体に対して回動可能に結合された蓋部と、前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
これによれば、付勢部材により蓋部が本体に対して付勢されて、スマートフォンを使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間約0.5秒以内に、蓋部が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体と蓋部の端部とにより表面の地面への接触を回避することができる。
(中略)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0014】
図1に、本実施形態に係るスマートフォン用ケース(以下、単にケースと呼ぶ)10の構成を示す。図1(A)及び(B)は、それぞれ、スマートフォン20を収容し、蓋を180度の角度で開けた状態においてケース10の構成を示す上面図及び側面図である。ケース10は、スマートフォンを収容するケースであり、本体11、側部13、蓋部12、及び付勢部材14a,14bから構成される。
(中略)
【0018】
蓋部12は、本体11の底板11aに等しいサイズの矩形状を有し、その表面、すなわちタッチパネル20aを覆う。蓋部12は、ヒンジ(不図示)により、側部13の左端部に回動可能に結合されている。蓋部12は、本体11及び側部13と同様に、アルミニウム及びファインセラミックのいずれかから成形される。それにより、蓋部12を軽量且つ十分な強度で構成することができる。
【0019】
付勢部材14a,14bは、本体11(底板11a)と側部13との連結部に2つ、側部13と蓋部12との連結部に2つ設けられている。付勢部材14a,14bとして、一例としてスプリングを採用することができる。その他、板バネ等、適当な部材を採用することもできる。
【0020】
付勢部材14aは、側部13を、本体11の底板11aの裏側から本体11の表側に向けて付勢する。付勢部材14bは、蓋部12を、側部13に対して本体11の表側に向けて付勢する。それにより、蓋部12を解放した際に、図2(A)に示すように、側部13は本体11に収容されたスマートフォン20の左側面を、蓋部12は本体11に収容されたスマートフォン20の表面、すなわちタッチパネル20aを覆う。それにより、スマートフォン20が保護される。
(中略)
【0023】
上記の条件を満たす付勢部材14a,14bに最低必要な付勢力(トルク)Nを求める。ここで、スマートフォン20は、地面から1?1.2m程度の高さで使用するものとする。ただし、この高さは一例であり、実際の使用状況に応じて適宜変更して考えてよい。この高さから、地面に落下するまでに要する落下時間は0.45?0.5秒である。簡単のため、落下時間は0.5秒とする。また、付勢部材14a,14bにより蓋部12が本体11(底板11a)に対して回動するものとし、側部13の回動は考えないこととする。また、付勢部材14a,14bの付勢力(トルク)は蓋部12の角度に対して一定とする。
【0024】
蓋部12の慣性モーメントIは、その質量M及び幅(図面横方向の幅)Wを用いてI=(1/3)MW^(2)と表される。蓋部12は初速(角速度)ゼロの状態から付勢部材14a,14bにより付勢されるため、蓋部12が時間Tの間に角度180度(πrad)回動するのに要する角加速度αはα=2π/T^(2)と求められる。付勢力(トルク)N、蓋部12の慣性モーメントI、及び角加速度αの関係N=Iαより、トルクN=(2π/3)MW^(2)/T^(2)が得られる。なお、T=0.5秒に対して、トルクN=8.4MW^(2)が得られる。蓋部12の質量30g、幅W=10cm、落下時間T=0.5秒を用いると、トルクN=0.0025N・mが得られる。これにより、蓋部は、少なくとも0.5秒以内に、本体11の表面に対して180度の角度まで回動する。蓋部12に、アルミニウム又はファインセラミックスを用いれば、その質量は30g以下となる。(アルミニウム又はファインセラミックスのうち最も比重の大きなジルコニアでも比重は6g/cm^(3)である。10cm四方の板を0.5mm厚みとした場合における質量が30gとなる。)小さなトルクの付勢部材による実施が可能である。
【0025】
以上詳細に説明したように、本実施形態のスマートフォン用ケース10は、スマートフォン20の裏面を覆う本体11、スマートフォン20の表面を覆い、本体11に対して回動可能に結合された蓋部12、及び蓋部12を裏面から表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、蓋部12を表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材14a,14bを含んで構成される。付勢部材14a,14bにより蓋部12が本体11に対して付勢されて、スマートフォン20を使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間約0.5秒以内に、蓋部12が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体11と蓋部12の先端12aとにより表面の地面への接触を回避することができる。
【0026】
なお、付勢部材14a,14bに要する付勢力(トルク)N=(2π/3)MW^(2)/T^(2)は、簡単のために幾つかの仮定の下で導出したため、より精密な模型に基づいて導出してもよい。ただし、本発明の精神を逸脱しない限りにおいてより精密な模型に基づいて導出された条件も、本発明の範囲内に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のスマートフォン用ケースは、使用中にスマートフォンを落とした場合にタッチパネルを保護するのに好適である。」

イ 図面の記載

【図1】


【図2】


(2)前記(1)より、以下の本件発明の技術的意義について以下が認められる。
本件発明は、スマートフォンを収容して保護するスマートフォン用ケースに関する(【0001】)。
スマートフォンを保護する目的で用いられるスマートフォン用ケース(以下、単にケースとも呼ぶ)は、タッチパネルを保護することが重要である。先行技術文献である特許文献1(登録実用新案第3183528号公報)にはタッチパネルをカバーするケースが開示されているが、タッチパネルを使用する際にはカバーを外さなくてはならず、使用中にスマートフォンを落とした場合に、地面等に落下してタッチパネルを損傷するという問題があった(【0002】、【0003】)。
本件発明は、使用中にスマートフォンを落としてもタッチパネルを保護することのできるスマートフォン用ケースを提供することを課題とする(【0004】)。
前記課題を解決するための手段として、本件発明のスマートフォン用ケースは、スマートフォンを収容するスマートフォン用ケースであって、前記スマートフォンの裏面を覆う本体と、前記スマートフォンの表面を覆い、前記本体に対して回動可能に結合された蓋部と、前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材と、を備える(【0005】、請求項1)。
前記構成によれば、付勢部材により蓋部が本体に対して付勢されて、スマートフォンを使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間約0.5秒以内に、蓋部が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体と蓋部の端部とにより表面の地面への接触を回避することができる(【0006】)。
本件発明の実施形態において、ケース10は、スマートフォンを収容するケースであり、スマートフォン20の裏面を覆う本体11、側部13、本体11に対して回動可能に結合された蓋部12、及び付勢部材14a,14bから構成される(【0014】、【0025】)。
付勢部材14a,14bは、本体11(底板11a)と側部13との連結部に2つ、側部13と蓋部12との連結部に2つ設けられている。付勢部材14a,14bとして、一例としてスプリングを採用することができる。その他、板バネ等、適当な部材を採用することもできる。(【0019】)
付勢部材14aは、側部13を、本体11の底板11aの裏側から本体11の表側に向けて付勢する。付勢部材14bは、蓋部12を、側部13に対して本体11の表側に向けて付勢する。付勢部材14a,14bにより蓋部12が本体11に対して付勢されて、蓋部12を解放した際に、図2(A)に示すように、側部13は本体11に収容されたスマートフォン20の左側面を、蓋部12は本体11に収容されたスマートフォン20の表面、すなわちタッチパネル20aを覆い、それにより、スマートフォン20が保護され、また、前記付勢により、スマートフォン20を使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間0.45?0.5秒(簡単のため、約0.5秒)以内に、蓋部12が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体11と蓋部12の先端12aとにより表面の地面への接触を回避することができる(【0020】、【0023】、【0025】)。

2 イ号物件の認定
(1)職権に基づく証拠調べの結果
当合議体は、以下のURLで特定される動画(以下、「本件動画」という。)に対して職権に基づき証拠調べを実施し、その結果を両当事者に通知した。本件動画によれば、以下の事実が認められる。
https://youtu.be/ae0_ORLYiCY

ア 本件動画は、株式会社テレビ朝日により平成30年5月20日に「ビートたけしの知らないニュース」と題して放送された映像である。

イ 本件動画中で紹介されるスマホケース「CATFLIP」は本件イ号物件であり、本件動画は本件イ号物件の動作を示した映像である。

ウ 本件動画を再生してから約1分6秒経過後、画面には、「CATFLIP」が360度回動状態で手によって保持されている状態とともに「地面から15cm以上」という文字が表示され、「地面から15センチ以上離れていればフタが閉まる仕組みなのだ」というナレーションが流れるにつれ、画面には、「CATFLIP」から手を離し、「CATFLIP」が地面に落下するまでに「CATFLIP」が0度回動状態となる動作が表示される。

エ 以上によれば、本件動画は、落下の開始地点が地面から15cm以上であれば、本件イ号物件が360度回動状態で手によって保持されている状態で手を離すと、地面に落下するまでに本件イ号物件が0度回動状態となることを示している。

(2)イ号物件
ア イ号物件説明書には「イ号物件は、被請求人の販売するスマートフォン用ケース「CAT FLIP」であり」との記載及び「イ号物件は、蓋部180度回動状態の平面図に示すように、スマートフォンを収容する本体と、本体の上面(スマートフォンの表示面(タッチパネル)が上面となるように収容されると考えられる)を被覆する蓋部を備えたスマートフォン用ケースである。」との記載がある。
スマートフォン用ケースの一般的な使用方法に鑑みるに、イ号物件の本体にスマートフォンを収容した場合に、イ号物件の本体がスマートフォンのタッチパネルとは反対側の面を覆うことは当然であり、蓋部が被覆するのはスマートフォンのタッチパネル側の面であると認められる。
以上によれば、イ号物件は、「スマートフォンを収容するスマートフォン用ケースであって、前記スマートフォンを収容し、前記スマートフォンのタッチパネルとは反対側の面を覆う本体と、前記スマートフォンのタッチパネル側の面を覆う蓋部と、を備えるスマートフォン用ケース。」であると認められ、この認定に反する当事者の主張はない。

イ イ号物件説明書には「本体及び蓋部は公知のスマートフォン用ケースと同様であるが、本体と蓋部とを接続するヒンジ部にイ号物件の特徴がある。」との記載があり、該記載から、イ号物件は「本体と蓋部とを接続するヒンジ部を備える」ことが認められ、この認定に反する当事者の主張はない。

ウ 本件動画によれば、イ号物件は、「落下の開始地点が地面から15cm以上であれば、手を離すと、地面に落下するまでに前記蓋部がスマートフォンのタッチパネル側の面からの角度360度から0度まで回動する」ことが認められ、この認定に反する当事者の主張はない。

エ 前記ア?ウによれば、イ号物件を以下のとおりに認定できる。イ号物件は構成毎に分説し、分説した構成をそれぞれの符号に従い「構成a」などのようにいう。

a スマートフォンを収容するスマートフォン用ケースであって、
b 前記スマートフォンを収容し、前記スマートフォンのタッチパネルとは反対側の面を覆う本体と、
c 前記スマートフォンのタッチパネル側の面を覆う蓋部と、
d 本体と蓋部とを接続するヒンジ部と、を備え、
e 落下の開始地点が地面から15cm以上であれば、手を離すと、地面に落下するまでに前記蓋部がスマートフォンのタッチパネル側の表面からの角度360度から0度まで回動する
f スマートフォン用ケース。

3 属否の判断
(1)構成要件Aについて
イ号物件は「スマートフォンを収容するスマートフォン用ケース」(構成a)であるから、本件発明の構成要件Aを充足する。

(2)構成要件Bについて
本件明細書の「その表面、すなわちタッチパネル20a」(【0018】)との記載及び「スマートフォン20の表面、すなわちタッチパネル20a」(【0020】)との記載に鑑みれば、本件発明における「表面」はスマートフォンのタッチパネル側の面のことを意味するので、本件発明における「裏面」はスマートフォンのタッチパネル側とは反対側の面を意味すると解される。
そうすると、イ号物件の「本体」は、「スマートフォンのタッチパネルとは反対側の面を覆う」もの(構成b)であるから、本件発明の「スマートフォンの裏面を覆う本体」(構成要件B)を充足する。

(3)構成要件Cについて
イ号物件の「蓋部」は、「スマートフォンのタッチパネル側の面を覆う」(構成c)ものである。
そして、構成dによれば、イ号物件の「蓋部」は「ヒンジ部」によって「本体」と接続されている。
さらに、構成eによれば、イ号物件の「蓋部」はスマートフォンのタッチパネル側の面に対して回動可能となっているから、スマートフォンを収容する「本体」に対して回動可能であることが明らかである。
以上によれば、イ号物件の「蓋部」は、スマートフォンのタッチパネル側の面を覆い、本体に対して回動可能に結合されたものである。
そうすると、前記(2)のとおり、本件発明の「表面」はスマートフォンのタッチパネル側の面のことを意味するのだから、イ号物件は本件発明の構成要件Cを充足する。

(4)構成要件Dについて
ア 被請求人と請求人の主張
構成要件Dの「少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する」に関する主張について、被請求人は、イ号物件のように360度から0度まで回動するヒンジ部とは異なると主張する一方、請求人は、360度から0度まで回動するものを含むと主張しており、互いの主張が異なっている。
構成要件Dは付勢部材の回動角について「少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する」と限定しているが、「180度まで」の語義が回動の終点を意味しているのか、それとも、0.5秒以内のある時刻において180度まで回動することを規定するのみで、その後0度まで回動することを許容しているのかは、構成要件Dの文言のみからでは判然としない。
そこで、構成要件Dを解釈するにあたり、本件明細書に記載される、本件発明の課題、課題解決手段及び効果を参酌して本件発明の「付勢部材」の技術的意義を明らかにし(後述イを参照。)、該技術的意義に照らして構成要件Dを解釈して、イ号物件が構成要件Dを充足するか否かを検討する。

イ 技術的意義を踏まえた本件発明における「付勢部材」
(ア)前記1(2)のとおり、本件発明が解決すべき課題は使用中にスマートフォンを落としてもタッチパネルを保護することのできるスマートフォン用ケースを提供することにあり、前記課題を解決するための構成として、本件発明は「前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」を採用し、該構成により「スマートフォンを使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間約0.5秒以内に、蓋部が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体と蓋部の端部とにより表面の地面への接触を回避する」という効果を得るものである。

(イ)前記「少なくとも180度の角度まで回動」した状態で、タッチパネルが下に向いた姿勢でスマートフォン及びケース(以下、「スマートフォン等」と総称する。)が地面と衝突した場合、本体と蓋部の先端とが最初に地面と接することになる。衝突直前のスマートフォン等の運動エネルギーは、落下開始時点の高さに重力加速度とスマートフォン等の総重量を乗じた量となる。衝突時、本体と蓋部の先端とが地面に接したときには、この運動エネルギーは瞬間的に0に減少することになるが、本件発明の実施形態で想定されるような8.4MW^(2)(Mは蓋部の質量、Wは蓋部の幅)程度のトルク(【0024】)ではこのエネルギーを完全に吸収することができず、最終的にタッチパネルが地面に接触することは明らかである。そうすると、本件発明において「本体と蓋部の端部とにより表面の地面への接触を回避する」(【0006】)としているのは、タッチパネル表面が地面に接触することを完全に防止することを意味するのではなく、地面にタッチパネル表面が接触する前に蓋部が接触し、付勢部材のトルクで前記運動エネルギーを少しでも減殺することを意味すると認められる。

(ウ)他方、タッチパネルが上を向いた姿勢で衝突した場合は、スマートフォンは本体の底板11aにより保護され、タッチパネルが地面と接触しないことは、明らかである。
さらに、蓋部が完全に閉じた(0度の角度まで回動した)状態であれば、タッチパネルが下を向いた姿勢で衝突しても、タッチパネルは蓋部により保護されて地面と接触しないことも明らかである。
このような衝突の態様が本件発明において想定されていることは、本件明細書の「蓋部12を解放した際に、図2(A)に示すように、側部13は本体11に収容されたスマートフォン20の左側面を、蓋部12は本体11に収容されたスマートフォン20の表面、すなわちタッチパネル20aを覆う。それにより、スマートフォン20が保護される。」(【0020】)との記載から明らかであり、かつ、一般的なスマートフォン用ケースが有する通常の機能に鑑みても当然といえる。

(エ)前記(イ)及び(ウ)に鑑み、課題解決のための「付勢部材」の技術的意義は、地面と衝突するまでの間(すなわち、少なくとも0.5秒以内)に蓋部をタッチパネルの保護ができる角度である少なくとも180度の角度まで閉じることであり、これを考慮すれば構成要件Dの「少なくとも0.5秒以内に、前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」とは、「落下するまでの時間である0.5秒以内に、蓋部を、裏面に重ねられた表面に対して360度の角度からタッチパネルの保護ができる角度である少なくとも180度の角度まで回動する付勢部材」であって、「タッチパネルの保護ができる角度」は、完全に閉じていること(すなわち、角度0度)を含むから、構成要件Dも、その後0度まで回動する付勢部材を含むと認められる。

ウ イ号物件のヒンジ部(構成d及びe)
(ア)イ号物件は、手を離すと地面に落下するまでに蓋部がスマートフォンのタッチパネル側の表面からの角度360度から0度まで回動する(構成e)のだから、イ号物件の蓋部は裏面から表面に向けて付勢されていることが明らかである。そして、前記付勢は、弱いながらもヒンジ部(構成d)が担っていると認められる(答弁書6頁3行)。
そうすると、イ号物件のヒンジ部は、蓋部を裏面から表面に向けて付勢して、前記蓋部を回動する付勢部材であるといえる。

(イ)イ号物件は15cmの高さから落下させれば、地面に落下するまでに360度回動状態から0度回動状態になる(構成e)。ここで、初速度なしの状態で15cmの高さからの自由落下に掛かる時間は、重力加速度を9.8m/sとすると、約0.17秒であるから、イ号物件は少なくとも0.18秒以内に前記蓋部を前記表面からの角度360度から0度まで回動する。
そして、イ号物件の蓋部は、360度回動状態から0度回動状態に移行する途中で180度回動状態を経由することが明らかであり、360度回動状態から180度回動状態まで移行する時間は、360度回動状態から0度回動状態まで移行する時間よりも短いことも明らかである。

(ウ)そうすると、イ号物件のヒンジ部は、蓋部を裏面から表面に向けて付勢して、少なくとも0.18秒以内に前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動するものである。

エ 構成要件Dの充足性
前記イ及びウによれば、イ号物件の「ヒンジ部」は本件発明の構成要件Dを充足する。

オ 被請求人の主張について
被請求人は、構成要件Dに関して、以下の(ア)?(ウ)の主張している。

(ア)本件明細書等には「付勢部材14aは、側部13を、本体11の底板11aの裏側から本体11の表側に向けて付勢する。」(【0020】)と記載されているから、本件発明に係る「蓋部を表面からの角度360度から180度まで回動するための付勢部材」は、「付勢部材14a」であると明確に特定されており、また、「側部13」が付勢部材の一部を構成することは記載も示唆もされておらず、蓋部を360度から0度まで閉じる機能を有する付勢部材について一切記載されていない(意見書2頁)。
そして、本件発明の実施形態の「付勢部材14a」は、「蓋部を表面からの角度360度から180度まで回動する」ための付勢部材であり、「付勢部材14b」は、「蓋部を表面からの角度180度から0度まで回動する」ための付勢部材であって、本件発明のスマートフォンケースは、「付勢部材14a」と「付勢部材14b」の2種類の付勢部材が協働して蓋部を閉じるものであるから、本件発明の「前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」は、「付勢部材14a」に限定するものである(答弁書4?5頁)。
ここで、本件明細書では、「少なくとも」という用語を「少なくとも0.5秒以内」(【0005】)又は「少なくとも180度の角度」(【0006】)に使い分けていることから、特許請求の範囲に記載の「少なくとも0.5秒以内」は、前者の意味であることが明らかであり、「180度の角度」に対して「少なくとも」を付さなかったことは、特許権を取得するために意識的に限定したものである(意見書3頁)。
上記のとおり、本件発明の「付勢部材」は「360度から180度まで」回動するものであるが、イ号物件のヒンジ部は断面略円弧状のシリコーンゴム製チューブを利用することにより一つのヒンジ部材で蓋部360度回動状態から蓋部0度回動状態まで回動するものであり、180度の位置で停止しないから、構造も作用効果も全く異なる(答弁書3頁、5頁)。

(イ)本件明細書には、「付勢部材14a」と「付勢部材14b」の2種類の付勢部材が協働して蓋部を閉じるものが記載されているだけであって、「蓋部」と「本体の底板」を直接連結するような付勢部材について記載されていない。
一方、イ号物件のヒンジ部は、「蓋部」と「本体の底板」を直接連結するものであり、本件明細書の「付勢部材14a」、「付勢部材14b」とは、構造的にも異なる(意見書2頁)。

(ウ)本件発明の実施形態の付勢部材14aによれば、本体11と蓋部12の先端12aでスマートフォン20を支えることにより、タッチパネル20aの地面への接触を回避するものであり、蓋部12が開いた状態で作用効果を発揮するものであるが、イ号物件のヒンジ部は、本体と蓋部の先端によりタッチパネルの画面を保護するものではなく、蓋部で完全にタッチパネルを覆うことにより保護するものであり、作用効果が全く異なる旨、主張する(答弁書5?6頁)。
また、本件明細書の「一例としてスプリングを採用することができる。その他、板バネ等、適当な部材を採用することもできる。」(【0018】)との記載を考慮すると、本件発明における「付勢部材」とは、スプリングや板バネなどのように、強い付勢力を有する商品であるといえる。
一方、イ号物件のヒンジ部は、付勢する力が弱いことから、本件発明の付勢部材のように、本体11と蓋部12の先端12aでスマートフォン20を支えることによってタッチパネル20aの地面への接触を回避することは不可能であり、特段付勢する作用効果を有しない商品である「シリコーンゴム製チューブ」を利用するものであって、本件発明における「付勢部材」とは形状も材質も使用目的も全く異なるから、イ号物件のヒンジ部は本件発明の付勢部材の作用効果を奏するものではない(答弁書6?7頁)。

(エ)以下では、上記(ア)ないし(ウ)に対する被請求人の主張を検討する。
被請求人の主張には、(ア)及び(イ)のように、本件発明が発明の詳細な説明に記載したものではないという主張が含まれているから、イ号物件が本件発明の技術的範囲に属さないとの主張を検討する上で、本件明細書の記載を本件発明の解釈のために参酌する。

(オ)上記(ア)及び(イ)の主張に関し、特許請求の範囲の「付勢部材」と本件明細書の「付勢部材14a」「付勢部材14b」の関係について検討する。
特許請求の範囲の「付勢部材」とは「本体に対して回動可能に結合された蓋部」を「回動する」ものであり、「前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して」いる部材である一方、本件明細書の「付勢部材14aは、側部13を、本体11の底板11aの裏側から本体11の表側に向けて付勢する。」(【0020】:下線は強調のために当合議体が付した。)との記載を参照するに、本件発明の実施形態の「付勢部材14a」は蓋部を付勢するものではなく、側部を付勢するものであるから、本件発明の「前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、・・・回動する付勢部材」ではない。
また、本件発明の実施形態の「付勢部材14b」については、本件明細書に「付勢部材14bは、蓋部12を、側部13に対して本体11の表側に向けて付勢する。」(【0020】)と記載されているとおり、蓋部を側部(本体と成す角は付勢部材14a次第)に対して本体の表側に向けて付勢するものであって、本件発明の「付勢部材」のように蓋部を裏面(本体)から表面に向けて付勢するものではない。
そして、付勢部材14aと付勢部材14bとの間にある「側部13」により、付勢部材14aにより得られたタッチパネル(表面)に対する側部13の回動角と、付勢部材14bにより得られた側部13に対する蓋部の回動角とが合成され、タッチパネル(表面)に対する蓋部の回動角が得られることは明らかである。このことは、本件明細書の「蓋部12を裏面から表面に向けて付勢して、少なくとも0.5秒以内に、蓋部12を表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材14a,14b」との記載及び「付勢部材14a,14bにより蓋部12が本体11に対して付勢されて、スマートフォン20を使用する際の高さ約1?1.2mの位置から地面に落下するまでの時間約0.5秒以内に、蓋部12が、裏面に重ねられて表面に対して360度の角度から少なくとも180度の角度まで回動することで、本体11と蓋部12の先端12aとにより表面の地面への接触を回避することができる。」との記載(いずれも【0025】)とも整合し、前記記載は、本件発明の実施形態において付勢部材14a及び付勢部材14bの両者が側部により協働して蓋部を裏面から表面に向けて付勢していることを意味すると解される。
よって、本件発明の実施形態の「付勢部材14a」、「付勢部材14b」及び「側部13」の全体が、本件発明の「前記蓋部を前記裏面から前記表面に向けて付勢して、・・・前記蓋部を前記表面からの角度360度から180度まで回動する付勢部材」に対応すると解すべきであり、本件発明の「付勢部材」が「付勢部材14a」に限定されると解すべきではない。
また、本件発明の「付勢部材」は、「適当な部材を採用することもできる。」(【0019】)と記載されているように、単一の部材であると限定されておらず、かつ、素材ないし材質又は形状が限定されているわけでもない。

(カ)上記(ア)の主張に関し、前記イに記載したように、本件発明の「付勢部材」は、少なくとも0.5秒以内に蓋部を「360度から180度まで」回動させることを限定しているのみで、180度の回動角で蓋部が停止することを限定しておらず、0度まで回動することを含む。

(キ)上記(ア)及び(ウ)の主張に関し、前記イに示したとおり、本件発明は蓋部が開いた状態で作用効果を発揮するにとどまらず、蓋部が閉じた状態をも想定しており、蓋部が開いた状態での作用効果は落下時の運動エネルギーの減殺にあるところ、付勢部材の付勢する力が弱かったとしても、前記運動エネルギーは付勢する力に応じて減じられる。
また、本件発明の「付勢部材」は単一の部材であると限定されておらず、かつ、素材ないし材質又は形状が限定されているわけでもない。
加えて、本件発明における付勢は0.5秒以内に180度まで閉じれば良い程度の付勢であるのに対し、イ号物件の付勢は少なくとも0.18秒で0度まで閉じる程度のものであるから、イ号物件の付勢が本件発明のものよりも弱いとはいえない。そして、前記のとおり、本件発明の「付勢部材」の作用効果は、付勢する力が弱くとも得られる。

したがって、上記(エ)ないし(キ)に記載のとおり、被請求人の主張は採用できない。

カ 小括
以上によれば、イ号物件は本件発明の構成要件Dを充足する。

(5)前記(1)?(4)のとおり、イ号物件は構成要件A?Dを充足するスマートフォン用ケースであるから、構成要件Eを充足する。

(6)以上、前記(1)?(5)によれば、イ号物件は、本件発明の全ての構成要件を充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

第4 争点2について
前記第3のとおり、イ号物件は本件発明の全ての構成要件を充足するから、本件発明とイ号物件とが均等であるかについて判断する余地はない。

第5 むすび
前記第3のとおり、イ号物件は、本件発明の技術的範囲に属する。
よって、結論のとおり判定する。
 
判定日 2020-04-23 
出願番号 特願2014-258216(P2014-258216)
審決分類 P 1 2・ 1- YA (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 永田 義仁  
特許庁審判長 吉田 隆之
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
登録日 2018-11-16 
登録番号 特許第6433284号(P6433284)
発明の名称 スマートフォン用ケース  
代理人 金子 宏  
代理人 特許業務法人雄渾  
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