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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1361846
審判番号 不服2019-5871  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-07 
確定日 2020-04-23 
事件の表示 特願2014-168207「信号処理装置および方法、並びに、プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 4日出願公開、特開2016- 46618〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年8月21日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月21日付け:拒絶理由通知書
平成30年 8月15日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 1月28日付け:拒絶査定
令和 元年 5月 7日 :拒絶査定不服審判の審判請求書、手続補正 書の提出


第2 令和元年5月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
令和元年5月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)

(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載

本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)

「【請求項1】
受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデータ内においてより均一に分散するように並び替える並び替え部と、
擬似乱数を生成する擬似乱数生成部と、
前記擬似乱数と前記第1のデータより擬似乱数列を生成し、前記擬似乱数列を用いて、キャリア信号を位相変調する変調部と、
前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を送信する送信部と
を備える信号処理装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲

本件補正前の、平成30年8月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
送信データの受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが前記送信データ内により均一に分散するように並び替える並び替え部と、
前記並び替え部により並び替えられた前記送信データを用いて、キャリア信号を位相変調する変調部と、
前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を送信する送信部と
を備える信号処理装置。」


2 補正の適否

特許請求の範囲の請求項1についての本件補正のうち、「前記並び替え部により並び替えられた前記送信データ」を「擬似乱数を生成する擬似乱数生成部と、前記擬似乱数と前記第1のデータより擬似乱数列を生成し、前記擬似乱数列」とする補正事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「キャリア信号を位相変調する変調部」で用いられる「送信データ」を、「(擬似乱数生成部で生成した)擬似乱数」と「第1のデータ」より生成した「擬似乱数列」に限定するものである。

また、特許請求の範囲の請求項1についての本件補正のうち、「送信データの受信側」を「受信側」とする補正事項及び、「前記送信データ内に」を「第1のデータ内において」とする補正事項は、共に、上記「送信データ」を限定する補正事項に伴い、整合性をとるために必要となった補正事項である。

そして、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、前記各補正事項を含む特許請求の範囲の請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正発明が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。


(1)本件補正発明

本件補正発明は、上記「1(1)」に記載したとおりのものである。


(2)引用文献1について

平成31年1月28日付け拒絶査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である米国特許出願公開第2002/0064182号明細書(2002年5月30日公開。以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付与した。)

ア 「[0001] The present invention relates to communications systems and in particular to a scheme for digital encoding of signals in a wireless system.」

(仮訳:[0001] 本発明は、通信システムに関し、特に、無線システムにおける信号のデジタル符号化の機構に関するものである。)

イ 「[0004] Consider the Code Division Multiple Access (CDMA) and Time Division Multiple Access (TDMA) digital systems presently in widespread use. Each of these systems provide for certain logical types of the radio channels that make up the forward link and reverse link. In particular, the forward link channels often include a pilot channel, paging channels, and multiple forward traffic channels. The traffic channels are used to carry the payload data between the base station and the mobile unit. A pilot channel is also typically required to allow the remote unit to maintain synchronization with the base station. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0004] 現在広く使われている符号分割多元接続(CDMA)及び時分割多元接続(TDMA)方式について検討する。これらのシステムは、順方向リンク及び逆方向リンクを構成する無線チャネルの特定の論理形式を提供する。特に、順方向リンクチャネルは、しばしば、パイロットチャネル、ページングチャネル、及び多数の順方向トラフィックチャネルを含む。トラフィックチャネルは、基地局と移動ユニットとの間でペイロード・データを伝えるために使用される。また、パイロットチャネルは、一般に遠隔ユニットが基地局との同期を維持することを可能にするために必要である。・・・(省略)・・・)

ウ 「[0011] An alternative to allocating individual pilot channels is to make use of a sequence of pilot symbols. The pilot symbols are interleaved with data symbols on the traffic channel. This technique is generally referred to as pilot symbol assisted modulation. In such a system, the transmitter encodes the data to be sent on the traffic channel as a series of symbols. A pilot symbol interleaver then inserts a sequence of predetermined pilot symbols within the data symbol sequence. The pilot symbol augmented sequence is then modulated and transmitted over the radio channel. At the receiving station, a decimater or deinterleaver and filter separate the pilot symbols from the data symbols.」

(仮訳:[0011] 個別のパイロットチャネルを割り当てることの代替として、パイロットシンボル列の利用がある。パイロットシンボルは、トラフィックチャネル上でデータシンボルとインターリーブされる。この技術は、一般的に、パイロットシンボル支援変調と呼ばれる。このようなシステムにおいて、送信機は、シンボル列として伝送チャネル上で送信されるようにデータを符号化する。パイロットシンボルインタリーバは、データシンボル列内に、事前に定められたパイロットシンボル列を挿入する。パイロットが追加されたシンボル列は、変調されて無線チャネルを介して送信される。受信局において、デシメータ又はデインターリーバ及びフィルタがデータシンボルからパイロットシンボルを分離する。)

エ 「[0025] FIG. 1 is a block diagram of a communication system 10 that interleaves pilot symbols with data symbols and uses a systematic block coder to ensure that the pilot symbols are located in predetermined locations. In the following description of a preferred embodiment, the communication system 10 is described such that the shared channel resource is a wireless or radio channel. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0025] 図1は、パイロットシンボルをデータシンボルとインターリーブし、組織的ブロック符号器を使用してパイロットシンボルが所定の位置に確実に配置される通信システム10のブロック図である。以下の好ましい実施形態の説明では、通信システム10は、共有チャネルリソースが無線又はラジオチャネルであるとして説明されている。・・・(省略)・・・)

オ 「[0026] The communication system 10 includes a number of Personal Computer (PC) devices 12-1, 12-2, . . . 12-h, . . . 12-1, corresponding Subscriber Access Units (SAUs) 14-1, 14-2, . . . 14-h, . . . 14-1, and associated antennas 16-1, 16-2, . . . 16-h, . . . 16-1. Centrally located equipment includes a base station antenna 18, and a Base Station Processor (BSP) 20. ・・・(省略)・・・ The system 10 is a demand access, point to multi-point wireless communication system such that the PCs 12 may transmit data to and receive data from network server 30 through bi-directional wireless connections implemented over forward links 40 and reverse links 50. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0026] 通信システム10は、多数のパーソナルコンピュータ(PC)機器12-1、12-2、・・・12-h、12-l、対応する加入者アクセスユニット(SAUs)14-1、14-2、・・・14-h、・・・14-l及び、関連するアンテナ16-1、16-2、・・・16-h、・・・16-lを含む。中央に位置する装置は、基地局アンテナ18、および基地局プロセッサ(BSP)20を含む。・・・(省略)・・・システム10は、順方向リンク40及び逆方向リンク50により実施される双方向無線接続を介してパーソナルコンピュータ12がネットワークサーバ30とデータの送受信を行うといった、デマンドアクセスの一地点対多地点無線通信システムである。・・・(省略)・・・)

カ 「[0031] The reverse link 50 actually consists of a number of different types of logical and/or physical radio channels including an access channel 51, multiple traffic channels 52-1, . . . 52-t, and a maintenance channel 53. The reverse link access channel 51 is used by the SAUs 40 to send messages to the BSP 20 to request that traffic channels be granted to them. The assigned traffic channels 52 then carry payload data from the SAU 14 to the BSP 20. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0031] 逆方向リンク50は、実際には、種々の異なるタイプの論理及び/又は物理無線チャネルにより構成されており、アクセスチャネル51、複数のトラフィックチャネル52-1...52-t及びメンテナンスチャネル53を含む。逆方向リンクアクセスチャネル51は、SAUs40が使用し、BSP20にメッセージを送信することで、トラフィックチャネルを与えてもらうように要求する。そして、割り当てられたトラフィックチャネル52はペイロードデータをSAU14からBSP20に伝える。・・・(省略)・・・)

キ 「[0033] In the preferred embodiment, the logical channels 41 - 43 and 51 - 53 are defined by assigning each channel a unique pseudorandom channel (PN) code. The system 10 is therefore a so-called Code Division Multiple Access (CDMA) system in which channels assigned to unique codes may use the same radio carrier frequency. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0033] 好ましい実施形態では、論理チャネル41-43と51-53は、各チャネルに固有の疑似乱数チャネル(PN)コードを割り当てることによって定義される。システム10は、したがって、固有のコードが割り当てられた複数のチャネルが同じ無線キャリア周波数を使用できる、いわゆる符号分割多元接続(CDMA)である。・・・(省略)・・・)

ク 「[0034] Turning attention now to FIG. 2 there is shown a generalized block diagram of the encoding process at the transmit side and decoding process at the receive side according to the invention. It should be understood that the invention is implemented on the reverse link 50, so that the transmitter 100 may typically be one of the SAUs 14 and the receiver is the Base Station Processor (BSP) 20. However, in other implementations it is possible for the invention to be applied on the forward link 40, in which case the transmitter is implemented in the BSP 20 and the receivers is the SAUs 14.」

(仮訳:[0034] 今度は、本発明による送信側での符号プロセスと受信側で復号プロセスの一般化されたブロック図が示されている図2に着目する。本発明は逆方向リンク50上で実施されるものであり、送信機100は典型的にはSAUs14の1つであり、受信機は基地局プロセッサ(BSP)20であることが理解されるべきである。しかしながら、別の実施例として、本発明を順方向リンク40に適用することも可能であり、この場合、送信機はBSP20に実装され、受信機はSAUs14となる。)

ケ 「[0035] In any event, a transmitter 100 is implemented with a pilot inserter 110, block encoder 120, pilot interleaver 130, channel coder 140 and radio frequency (RF) modulator 150. The receiver 200 includes an RF demodulator 250, channel decoder 240, pilot deinterleaver 230, block decoder 220, pilot removal 210, and pilot reference generator 205.」

(仮訳:[0035] いずれにしても、送信機100は、パイロット挿入器110、ブロック符号器120、パイロットインターリーバ130、チャネル符号器140及び無線周波数(RF)変調器150で実装される。受信機200は、RF復調器250、チャネル復号器240、パイロット・デインターリーバ230、ブロック復号器220、パイロット除去器210、及びパイロット基準生成器205とを含む。)

コ 「[0037] Before discussing the details of the pilot inserter 110 and block encoder 120 in more detail, it is instructed to consider the operation of a typical error coding process. In particular, consider an example situation in the use of a turbo product code which is to encode data at the rate of 1/4. (We assume in the discussion of this first embodiment that data is real-valued only such that a “symbol” is a single data bit, and discuss a situation with complex-valued data symbols later on.) In the case shown in FIG. 3 A, the input data bits data_(1), data_(2) . . . data_(16) may thought of as being placed in the upper left hand corner of a matrix encoding space. ・・・(省略)・・・
[0038] For a typical prior art block coding operation, that is one without supplementation with pilot symbols according to the invention, the 16 input data bits are placed an upper left hand corner of the 8x8 encoded space as shown in FIG. 3A.
[0039] The encoded matrix is then presented to the block encoder to calculate and create the parity bits for an encoded space. In the example being discussed, in the case of a 1/4 rate code, three times as many parity bits as data bits are calculated and created as shown in FIG. 3B. ・・・(省略)・・・」(当審注:[0037]の“may thought of as”は“may be thought of as”の誤記と認める。)

(仮訳:[0037] パイロット挿入器110とブロック符号器120の詳細について説明する前に、典型的な誤り符号化処理について検討するよう指示される。特に、実例として、符号化率が1/4のターボ積符号を使用する状態を考慮する。(この第1実施例の議論では、データは“シンボル”が単一データビットであるような実数値のみであると想定し、複素数データシンボルについては後で扱う。)図3Aの例では、入力データビットdata_(1)、data_(2)...data_(16)は行列符号空間の左上の角に配置されると考えられる。・・・(省略)・・・
[0038] 典型的な従来技術のブロック符号器の動作、すなわち本発明によるパイロットシンボルの付加を含まない動作において、16入力データビットが図3Aに示すように8×8符号化空間の左上角に配置される。
[0039] それから、符号化行列はブロック符号器に渡されて、ブロック符号器は符号化空間のためのパリティビットを計算し生成する。議論されている例において、すなわち符号化率が1/4の場合、図3Bに示すように、データビットの3倍のパリティビットが計算され、生成される。・・・(省略)・・・)

サ 「[0040] Returning attention to FIG. 2, the pilot inserter 110 and block encoder 120 can now be understood more particularly. In the pilot insertion scheme employed by the pilot inserter 110, some of the input data symbols are replaced with pilot symbols. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0040] 図2に再注目すると、パイロット挿入器110とブロック符号器120が今はより深く理解されよう。パイロット挿入器110で用いられるパイロット挿入機構において、いくつかの入力データシンボルはパイロットシンボルに置き換えられる。・・・(省略)・・・)

シ 「[0041] Turning attention to FIG. 3C, we see that in considering a group of 16 data symbols, 4 of the symbols will be replaced with pilot symbols such that the input matrix becomes as shown. Thus a pilot symbol, pilot_(1), is followed by three data symbols, data_(1), data_(2), data_(3). The next pilot symbol, pilot_(2), is followed by data symbols data_(4), data_(5), data_(6) and so on.
[0042] As in the case of the standard turbo product code, the matrix in FIG. 3C is then presented to the block encoder 120 to create the encoded space shown in FIG. 3D. ・・・(省略)・・・」

(仮訳:[0041] 図3Cを参照すると、一群の16データシンボルについて考えた場合、4つのシンボルがパイロットシンボルで置き換えられて入力行列が図示のようになることがわかる。したがって、パイロットシンボル pilot_(1)の後に3つのデータシンボルdata_(1)、data_(2)、data_(3)が続く。次のパイロットシンボルpilot_(2)の後には データシンボルdata_(4)、data_(5)、data_(6)が続き、以下同様である。
[0042] 標準のターボ積符号では、図3Cの行列がブロック符号器120に渡されて図3Dに示される符号化空間が作成される。・・・(省略)・・・)

ス 「[0043] It is the job of the pilot interleaver 130 to rearrange the output matrix in such a manner that the pilot symbols are evenly distributed among the data and parity symbols in a manner which makes sense. In the simplest instance, the data and parity symbols can be placed on the channel in, more or less, the order in which they appear in the matrix. This situation is shown in FIG. 4A. In particular, it is noted that the pilot symbols pilot_(1), pilot_(2), pilot_(3) are redistributed through the matrix so that they are read out once every 16 bits, or 6.25% of the time, as desired. The matrix can thus be interpreted as a set of instructions for ordering the output bits, by reading along the first row, and then reading the bits out along the second row, and then also the third row, and so on.」

(仮訳:[0043] パイロットインターリーバ130の役割は、合理的な方法で、データシンボル及びパリティシンボルの間にパイロットシンボルが均等に分配されるように出力行列を再配置することである。最も簡単な例では、データ及びパリティシンボルは、多かれ少なかれ、それらが行列内に現れる順にチャネル上に配置することができる。この例は図4Aに示されている。特に、望みどおり16ビット毎、つまり6.25%の時間で読み出されるよう、パイロットシンボルpilot_(1)、pilot_(2)、pilot_(3)は行列を通じて再分配されることに留意されたい。したがって、行列は、第1行に沿って読み取り、続いて第2行に沿って読み取り、それから第3行に沿って読み取っていくことで、出力ビットの順序を決めるための一連の命令として解釈することができる。)

セ 「[0045] In yet another example of the implementation of the interleaver 130, it may be advantageous to apply data to the channel with Quadrature Phase Shift Keyed (QPSK) format modulation. In this case, individual input data bits are read in pairs so that for example, 2 pilot bits are required to make up respectively the In-phase (I) and the Quadrature (Q) portion of a complex valued data symbol. In this case, pilot bits are also read out in pairs so that two pilot bits comprise a pilot symbol. The result, as shown in FIG. 4D, is a situation in which pilot symbols (consisting of a pilot_(1) and pilot_(2) bit) still appear every 16 symbols or 6.25% of the time.」

(仮訳:[0045] インターリーバ130のさらに別の実施例は、四位相偏移変調(QPSK)を用いるチャネルにデータを適用するのに有利かもしれない。この場合、個々の入力データビットが2つ1組で読まれ、例えば、2つのパイロットビットが要求され、それらはそれぞれ複素数値データシンボルの同相(I)及び直交(Q)成分を構成する。この場合、パイロットビットも2つ1組で読み出され、2つのパイロットビットが1つのパイロットシンボルを構成する。結果は、図4Dに示すように、パイロットシンボル(pilot_(1)とpilot_(2)から構成される。)が依然として16シンボル毎、つまり6.25%の時間で出現する状態となる。)

ソ FIG.1 (仮訳:図1)


タ FIG.2 (仮訳:図2)


チ FIG.3A (仮訳:図3A)


ツ FIG.3B (仮訳:図3B)


テ FIG.3C (仮訳:図3C)


ト FIG.3D (仮訳:図3D)


ナ FIG.4A (仮訳:図4A)


ニ FIG.4D (仮訳:図4D)


ヌ 上記「ア」から「ニ」の記載事項から、引用文献1には以下の発明が記載されている。(以下、「引用発明」という。)

「多数のパーソナルコンピュータ(PC)機器12-1、12-2、・・・12-h、12-l、送信機100であるところの対応する加入者アクセスユニット(SAUs)14-1、14-2、・・・14-h、・・・14-l及び、関連するアンテナ16-1、16-2、・・・16-h、・・・16-lを含む複数の装置と基地局アンテナ18および基地局プロセッサ(BSP)20を含む中央に位置する装置とが、順方向リンク40及び逆方向リンク50により実施される双方向無線接続を介してデータの送受信を行う通信システム10における送信機100であって、([0026]、[0034])
前記逆方向リンク50は、アクセスチャネル51、複数のトラフィックチャネル52-1...52-t及びメンテナンスチャネル53を含む種々の異なるタイプの論理及び/又は物理無線チャネルにより構成されており、前記トラフィックチャネル52はペイロードデータをSAU14からBSP20に伝え、([0031])
前記通信システム10は、各チャネルに固有の疑似乱数チャネル(PN)コードが割り当てられた複数のチャネルが同じ無線キャリア周波数を使用できる、いわゆる符号分割多元接続(CDMA)であり、([0033])
前記送信機100は、パイロット挿入器110、ブロック符号器120、パイロットインターリーバ130、チャネル符号器140及び無線周波数(RF)変調器150で実装され、([0035])
前記パイロットインターリーバ130は、データシンボル及びパリティシンボルの間にパイロットシンボルが均等に分配されるように出力行列を再配置し、さらに、四位相偏移変調(QPSK)を用いるチャネルにデータを適用するのに有利である([0043]、[0045])
送信機100。」


(3)引用文献2、3について

ア 引用文献2について

本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特表平6-511371号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付与した。)

(ア)「本発明は、無線電話通信システムにおけるコード分割多重アクセス(CDMA)通信技術の利用に関し、特に、スペクトラム拡散通信環境において情報信号の識別および保護のためのスクランブルシーケンスを包含した改良されたCDMAエンコーディング(符号化)の方法に関するものである。」(第7頁右下欄第4-9行目)

(イ)「一般的なCDMAシステムを、図6を参照し乍ら、説明する。音声のような情報源を従来のソースコーダ20内でアナログフォーマットからディジタルフォーマットに変換する。送信機ソースコーダ20によって発生したディジタルビットストリームを、更に、送信機エラー訂正コーダ22で処理して、伝送帯域またはビットレートを増大する冗長度を追加する。例えば、プログラマブルマイクロプロセッサ(図示せず)のような、適当なコントロールメカニズムからの拡散用コード選択信号に応答して、特定の拡散用コード発生器24によって特定の拡散用コードを発生する。このコード発生器としては、前述した疑似乱数発生器が考えられる。選択した拡散用コードを、モジュロー2加算器26内で、エラー訂正コーダ22からのコード化情報信号と加算する。ここで、2進シーケンスのモジュロ-2加算演算処理は、2進論理上の排他的論理和動作に本質的に一致するものである。このモジュロー2加算動作によって、コーダ22からの情報の各ビットを複数個の“チップ”に“拡散”するようになる。
この加算器26から出力されたコード化信号を用して、高周波(RF)キャリア(搬送波)を変調する。この場合、例えばQPSKのような変調技術の中から適当な一つの技術を利用して、変調器28内で変調する。この変調されたキャリアを、従来の無線送信器30によって、空間インターフェイスを介して送信する。割当てられた周波数帯域内でオーバーラップした複数のコード化信号を、例えば、セルラーベースステーション(基地局)のような無線受信機32で合成信号波形の形態で、一緒に受信するようになる。復調器34で、ベースバンドに復調した後で、この合成信号をデコード(復号化)する。」(第11頁右下欄第10行目-第12頁左上欄第14行目)


イ 引用文献3について

本願出願日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である特表2008-532360号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審にて付与した。)

(ア)「【背景技術】
【0002】
同時に動作する多くの送信器を有する通信システムにとって、送信電力を制御する良好な方法は重要であるが、それは、そのような方法が、そのような送信器の相互干渉を減少させるからである。例えば、送信電力制御は、干渉によって制限される通信システム、例えば、広帯域符号分割多元接続(WCDMA)を用いるシステムにおいて、高いシステム容量を得るために必要である。システムの特性次第では、そのようなシステムにおける電力制御は、上りリンク(すなわち、ユーザ装置からネットワークへの送信)にとって、下りリンク(すなわち、ネットワークからユーザ装置への送信)にとって、あるいはその両方にとって、重要となりうる。
【0003】
典型的なWCDMAシステムでは、送信されることになる情報データストリームは、疑似乱数コード生成器によって生成された、非常に高速のビットレートのデータストリームの上に重ね合わされる。情報信号および疑似乱数信号は、通常、情報信号の符号化もしくは拡散とも呼ばれるプロセスにおいて、乗算によって合成される。各情報信号には、一意の拡散符号が割当てられる。複数の符号化された情報信号が、無線周波数搬送波の変調として送信され、受信器において合成信号として一緒に受信される。符号化された信号はそれぞれ、他の符号化されたすべての信号だけでなく雑音関連の信号とも、周波数においても時間においても、重なり合う。複合信号を一意の拡散符号のうちの1つと相関させることによって、対応する情報信号が分離され、復号される。」


ウ 引用文献2、3に示される周知技術について

上記「ア(ア)」、「ア(イ)」及び「イ(ア)」の記載事項から、以下の周知技術が認められる。

「コード分割多重アクセス(CDMA)システムの送信機において、疑似乱数を出力する疑似乱数発生器を設け、当該疑似乱数発生器から出力される疑似乱数と送信データより生成された信号を用いて高周波(RF)キャリアを変調し、無線送信する。」との周知技術。


(4)対比

本件補正発明と引用発明とを対比する。

ア 『受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、
分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分 データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデータ内にお いてより均一に分散するように並び替える並び替え部』について

(ア-1)『受信側にとって既知の部分』について

本願図5には本願発明の一実施形態である送信装置100が示されており、本願図7は当該送信装置100が送信する送信信号のフレーム構造を示したものである。この図7に関する説明として、本願発明の詳細な説明の段落【0084】には『この同期パタンは、気象観測データTMに依存しない情報である。換言するに、この同期パタンの全ビット(13オクテット)は、受信装置において既知である。このように受信側にとって「既知」の情報を同期パタン(SYNC)と称する。・・・』と記載されており、「同期パタン」、すなわち送信装置100と受信装置との同期を維持するための信号は、本件補正発明における『受信側にとって既知の部分』であると解される。

一方、引用発明における「パイロットシンボル」は、上記「(2)イ」の「パイロットチャネルは、一般に遠隔ユニットが基地局との同期を維持することを可能にするために必要である。」との記載、及び上記「(2)ウ」の「個別のパイロットチャネルを割り当てることの代替として、パイロットシンボル列の利用がある。パイロットシンボルは、トラフィックチャネル上でデータシンボルとインターリーブされる。」との記載を踏まえると、「パイロットシンボル」は「パイロットチャネル」と同様に、遠隔ユニットと基地局の同期を維持するために用いられるものであり、かつ「(2)ウ」のとおり「事前に定められた」ものであるから、「送信機100」と「基地局プロセッサ(BSP)20」との同期を維持するために用いられる既知のものであると解される。

してみると、引用発明における「パイロットシンボル」は本件補正発明でいう『受信側にとって既知の部分』に対応するものであるといえる。


(アー2)『(受信側にとって)未知の部分』について

本願図7は当該送信装置100が送信する送信信号のフレーム構造を示したものであり、当該図7に関する説明として、本願発明の詳細な説明の段落【0085】には、『これに対して、ペイロード(PAYLOAD)として伝送される気象観測データTMと、フレームチェックシーケンス(FCS)は、受信装置が予め推測することができない情報である。このように受信側にとって「知らない」情報をUND(UNknown Data)と称する。』と記載されており、『未知』と『知らない』が同義であることを踏まえると、『ペイロード(PAYLOAD)として伝送される気象観測データTM』は、本件補正発明における『(受信側にとって)未知の部分』であると解される。

一方、引用発明における「データシンボル」は、「送信機100」が本来送信したいデータの内容を示すものであって、「送信機100」から「基地局プロセッサ(BSP)20」に対してペイロードデータとして送信されるものであるから、「基地局プロセッサ(BSP)20」が予め推測することができない情報であることは自明である。

また、引用発明における「パリティシンボル」は、上記「(2)コ」、「(2)サ」、「(2)タ」に記載されているように、「パイロット挿入器110」によっていくつかの「入力データシンボル」がパイロットシンボルに置き換えられたものに対して「ブロック符号器120」における誤り符号化処理を通じて生成されるものであり「データシンボル」に依存するものであるから、前記「データシンボル」と同様に、「基地局プロセッサ(BSP)20」が予め推測することができない情報である。

してみると、引用発明における「データシンボル」と「パリティシンボル」は、本件補正発明でいう『(受信側にとって)未知の部分』に対応するものであるといえる。


(ア-3)『(受信側にとって既知の部分と未知の部分とを)それぞれ複数
に分割し』について

上記「(2)ト」には、「パイロットインターリーバ130」で処理が行われる前のデータの構成として、4個の「パイロットシンボル」、12個の「データシンボル」及び、48個の「パリティシンボル」から構成されるデータが例示されている。
上記「(ア-1)」で言及した様に、「パイロットシンボル」は、本件補正発明でいう『受信側にとって既知の部分』であって、引用発明においても4個に分割されており、同様に、そして、上記「(ア-2)」で言及した様に、「データシンボル」及び「パリティシンボル」は、本件補正発明でいう『(受信側にとって)未知の部分』であって、引用発明においても、それぞれ、12個、48個に分割されている。
してみると、引用発明においても本件補正発明と同様に、『受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し』に対応する処理が行われているものといえる。


(ア-4)『分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の
各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデ ータ内においてより均一に分散するように並び替える』について

引用発明における「パイロットインターリーバ130」は、「データシンボル及びパリティシンボルの間にパイロットシンボルが均等に分配されるように出力行列を再配置」する処理を上記「(2)ト」で例示されているデータに対して実行し、上記「(2)ナ」や「(2)ニ」で例示されているデータを生成するものである。
よって、「パイロットインターリーバ130」による処理が実行されることで生成された上記「(2)ナ」や「(2)ニ」で例示されているデータが、本件補正発明でいう『第1のデータ』に対応するものといえる。
そして、上記「(ア-1)」で言及した様に、「パイロットシンボル」は、本件補正発明でいう『受信側にとって既知の部分』であり、上記「(ア-2)」で言及した様に、「データシンボル」及び「パリティシンボル」は、本件補正発明でいう『(受信側にとって)未知の部分』であることを踏まえると、引用発明における「パイロットインターリーバ130」は、本件補正発明でいう『分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデータ内においてより均一に分散するように並び替える』に対応する処理を実行しているといえる。


(ア-5)小活

上記「(ア-1)」から「(ア-4)」で検討したとおり、引用発明は、本件補正発明でいう『受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデータ内においてより均一に分散するように並び替える並び替え部』に対応する構成を備えているといえる。


イ 『(前記擬似乱数と前記第1のデータより擬似乱数列を生成し、前記擬
似乱数列を用いて、)キャリア信号を位相変調する変調部』について

引用発明は、「位相変調」の方式のひとつである「四位相偏移変調(QPSK)」を用いるものであり、当該「四位相偏移変調(QPSK)」は、上記「(2)タ」に図示される「無線周波数(RF)変調器150」が、「パイロットインターリーバ130」から「チャネル符号器140」を介して出力される信号に対して実行するものである。
また、引用発明において、「通信システム10は、各チャネルに固有の疑似乱数チャネル(PN)コードが割り当てられた複数のチャネルが同じ無線キャリア周波数を使用できる、いわゆる符号分割多元接続(CDMA)であり」、前記「無線キャリア周波数」が、データを「送信機100」から「基地局プロセッサ(BSP)20」に搬送するために用いられる搬送波であることは明らかである。
一方、本件補正発明でいう『キャリア信号』は『擬似乱数列を用いて』位相変調されるものであるから、『キャリア信号』も『擬似乱数列』というデータを『信号処理装置』から『受信側』に搬送するために用いられる搬送波である。
してみると、引用発明における「無線キャリア周波数」は、本件補正発明でいう『キャリア信号』に相当し、引用発明における「無線周波数(RF)変調器150」は、本件補正発明における『キャリア信号を位相変調する変調部』に対応するものといえる。


ウ 『前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を
送信する送信部』について

引用発明において、「無線周波数(RF)変調器150」によって変調されたキャリア信号は、送信機100であるSAUs14に接続されている「アンテナ16」から送信されるのであるから、前記「アンテナ16」は、本件補正発明における「前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を送信する送信部」に相当する。


エ 『信号処理装置』について

引用発明である「送信機100」は、「データシンボル及びパリティシンボルの間にパイロットシンボルが均等に分配されるように出力行列を再配置する」といった信号処理を行う「パイロットインターリーバ130」などから構成されるものであるから、本件補正発明でいう『信号処理装置』といえる。


上記「(4)対比」で検討したことを踏まえると、本件補正発明と引用発明とは、

「受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが第1のデータ内においてより均一に分散するように並び替える並び替え部と、
前記並び替え部からの出力を用いてキャリア信号を位相変調する変調部と、
前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を送信する送信部と
を備える信号処理装置。」で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本件補正発明は『擬似乱数を生成する擬似乱数生成部』を備えているのに対し、引用発明はかかる構成を備えていない点。

[相違点2]
本件補正発明においては、『変調部』が『前記擬似乱数と前記第1のデータより擬似乱数列を生成し、前記擬似乱数列を用いて』『キャリア信号』を『位相変調』するのに対し、引用発明においては、「無線周波数(RF)変調器150」が「チャネル符号器140」から出力されるどの様な信号を用いて「無線キャリア周波数」を「四位相偏移変調(QPSK)」するのか明らかでない点。


(6)判断

事案に鑑みて、[相違点1]及び[相違点2]をあわせて検討する。

引用文献2、3に開示されているように、「コード分割多重アクセス(CDMA)システムの送信機において、疑似乱数を出力する疑似乱数発生器を設け、当該疑似乱数発生器から出力される疑似乱数と送信データより生成された信号を用いて高周波(RF)キャリアを変調し、無線送信する」ことは周知技術である。
そこで、「符号分割多元通信(CDMA)」を実施するための具体的な構成として、引用文献2、3に開示されている周知技術を引用発明の「チャネル符号器140」に適用して、引用発明に疑似乱数を出力する疑似乱数発生器を設け、当該疑似乱数と送信データより生成された信号を用いて、「無線周波数(RF)変調器150」にて「四位相偏移変調(QPSK)」を行うようにして、本件補正発明とすることは、当業者であれば、容易に想到し得たものである。

したがって、本願発明は、引用発明及び、引用文献2と引用文献3に示される周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


3 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年8月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される前記「第2」の「1(2)」に記載のとおりのものである。


2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶の理由1の概要は、この出願の請求項1-2,4,7-10,19-20に係る発明は、本願出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、というものである。
また、理由2の概要は、この出願の請求項1-11、16-20に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものであり、この出願の請求項12-15に係る発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明及び、特開2003-087222号公報に記載された技術事項に基づいて、その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。


3 引用文献1について

引用文献1に記載された発明(引用発明)は上記「第2」の「2(2)」に記載したとおりである。


4 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比する。


ア 『送信データの受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複
数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部
分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが前記送信デ
ータ内により均一に分散するように並び替える並び替え部』について

本願発明でいう『送信データ』は「並び替え部により並び替えられた」ものであり、一方、引用発明においても、上記「第2」の「2(4)」の「(ア-4)」で言及したように、「パイロットインターリーバ130」による処理が実行されることで生成された上記「(2)ナ」や「(2)ニ」で例示されているデータは、本願発明でいう『受信側にとって既知の部分』である「パイロットシンボル」が、均一に分散するよう並び替えられたものであるから、本願発明における「並び替え部により並び替えられた」『送信データ』に対応するものである。
してみると、上記「第2」の「2(4)」の「ア」で検討したとおり、引用発明は、本願発明でいう『送信データの受信側にとって既知の部分と未知の部分とをそれぞれ複数に分割し、分割された前記既知の部分の各部分データと前記未知の部分の各部分データとを、前記既知の部分の前記部分データが前記送信データ内により均一に分散するように並び替える並び替え部』に対応する構成を備えているといえる。


イ 『前記並び替え部により並び替えられた前記送信データを用いて、キャ
リア信号を位相変調する変調部』について

上記「第2」の「2(4)」の「イ」で言及したように、引用発明は、「位相変調」の方式のひとつである「四位相偏移変調(QPSK)」を用いるものであり、当該「四位相偏移変調(QPSK)」は、上記「(2)タ」に図示されているように、「無線周波数(RF)変調器150」が、「パイロットインターリーバ130」から「チャネル符号器140」を介して出力される信号に対して実行するものである。
そして、上記「ア」で言及したように、「パイロットインターリーバ130」による処理が実行されることで生成されたデータは、本願発明における「並び替え部により並び替えられた」『記送信データ』に対応するものであるのだから、引用発明における「無線周波数(RF)変調器150」は、本願発明でいう『前記並び替え部により並び替えられた前記送信データを用いて、キャリア信号を位相変調する変調部』に相当する。


ウ 『前記変調部により位相変調された前記キャリア信号である送信信号を
送信する送信部』について

上記「第2」の「2(4)」の「ウ」で言及したとおりである。


エ 『信号処理装置』について

上記「第2」の「2(4)」の「エ」で言及したとおりである。


オ 上記「ア」から「エ」で検討したように、本願発明と引用発明との間に相違点は存在しない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-02-26 
結審通知日 2020-02-27 
審決日 2020-03-10 
出願番号 特願2014-168207(P2014-168207)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (H04B)
P 1 8・ 575- WZ (H04B)
P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 龍一  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 岡本 正紀
丸山 高政
発明の名称 信号処理装置および方法、並びに、プログラム  
代理人 三浦 勇介  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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