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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1361849 |
審判番号 | 不服2019-9344 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-12 |
確定日 | 2020-04-23 |
事件の表示 | 特願2014-237932「眼科撮影装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016- 97181〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年11月25日の出願であって、平成30年11月12日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月9日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月9日付けで拒絶査定されたところ、令和元年7月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和元年7月12日の手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年7月12日の手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) 本件補正は、特許請求の範囲を補正するものであり、そのうち請求項1について、本件補正前(平成31年1月9日提出の手続補正書)の 「光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼をスキャンすることにより断面像を取得する眼科撮影装置であって、 所定のスキャン可能範囲内において光コヒーレンストモグラフィを実行する計測部と、 前記被検眼を動画撮影する撮影部と、 前記撮影部により取得された動画像と、前記動画像におけるスキャン位置およびスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された四角形の2以上のスキャンパターン像とを表示手段に表示させると共に、前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャンパターン像の表示位置を変更可能である表示制御部と、 前記2以上のスキャンパターン像の相対位置を変更するための操作部と、 相対位置が変更された後の前記2以上のスキャンパターン像に対応する2以上のスキャンラインに基づいて前記計測部に光コヒーレンストモグラフィを実行させる計測制御部と を含み、 所定の位置を基準とした回転方向に前記スキャン可能範囲を越える前記スキャンパターン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われたとき、前記計測制御部は、前記スキャンパターン像が前記回転方向に回転移動したときに前記スキャンパターン像の角部が前記スキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め、前記表示制御部は、前記接触位置に対応した表示位置に前記スキャンパターン像を表示させることにより前記スキャンパターン像の表示位置の移動を前記接触位置にて停止する、眼科撮影装置。」(本件補正前の請求項1。以下、「本願発明」という。) を、 「光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼をスキャンすることにより断面像を取得する眼科撮影装置であって、 所定のスキャン可能範囲内において光コヒーレンストモグラフィを実行する計測部と、 前記被検眼を動画撮影する撮影部と、 前記撮影部により取得された動画像と、前記動画像におけるスキャン位置およびスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された四角形の2以上のスキャンパターン像とを表示手段に表示させると共に、前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャンパターン像の表示位置を変更可能である表示制御部と、 前記2以上のスキャンパターン像の相対位置を変更するための操作部と、 相対位置が変更された後の前記2以上のスキャンパターン像に対応する2以上のスキャンラインに基づいて前記計測部に光コヒーレンストモグラフィを実行させる計測制御部と を含み、 前記2以上のスキャンパターン像の少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含み、 所定の位置を基準とした回転方向に前記スキャン可能範囲を越える前記スキャンパターン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われたとき、前記計測制御部は、前記スキャンパターン像が前記回転方向に回転移動したときに前記スキャンパターン像の角部が前記スキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め、前記表示制御部は、前記接触位置に対応した表示位置に前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像を表示させることにより前記2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を前記接触位置に対応した位置にて停止する、眼科撮影装置。」(本件補正後の請求項1。以下、「本件補正発明」という。) と補正することを含むものである。(なお、下線は、補正箇所を示すために、請求人が付したものである。) 2 補正の適否 (1)補正事項について 上述の請求項1の補正には、次のア-ウの補正事項が含まれる。 ア 本願発明の「2以上のスキャンパターン像」が、「少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含」むものであることを特定すること。 イ 本願発明の「前記接触位置に対応した表示位置に」「表示させる」「スキャンパターン像」が、「前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像」であることを特定すること。 ウ 2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を停止する位置を、本願発明の「接触位置」から「接触位置に対応した位置」とすること。 (2)上記(1)ア及び(1)イに係る補正の適否 上記(1)アに係る補正は、本願発明の「2以上のスキャンパターン像」を「少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含」むものに限定することにより請求項1の範囲を減縮するものであり、上記(1)イに係る補正は、本願発明の「前記接触位置に対応した表示位置に」「表示させる」「スキャンパターン像」を「前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像」に限定することにより請求項1の範囲を減縮するものであるから、上記(1)ア及び上記(1)イの補正は、特許法17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。そこで、本件補正発明が、特許法17条の2第6項において準用する特許法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について検討する。 ア 本件補正発明 本件補正発明は、上記1に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。 イ 特許法第29条第2項について (ア) 引用文献、引用発明 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である、特開2014-140489号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審において付与したものである。)。 a 記載事項について (引1a)「【0010】 ・・・ 【発明を実施するための形態】 【0011】 本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1?図12は本実施形態の実施例に係る図である。 【0012】 <概要> 眼科撮影装置10は、予め設定された走査パターンにて、OCT光学系100からの測定光(試料光ともいう)を被検眼上で横断方向に走査する。本装置は、測定光の横断位置に関する断層画像を取得する。本装置は、走査パターンの位置に応じて、走査パターンを変形する。」 (引1b)「【0021】 <変形される走査パターン> 変形される走査パターンとしては、例えば、複数の走査ラインが互いに交差するクロス状のパターンが用いられる。本装置は、各走査ラインに関する断層画像を取得できる。例えば、本装置は、本走査パターンを用いて、ある交点に関して異なる走査方向の断層画像を取得できる。したがって、単一の走査ラインでの断層画像に比べて、複数の方向から被検物の断層画像を観察できる。」 (引1c)「【0025】 走査パターンとしては、例えば、同一方向に関して複数の走査ラインを持つ走査パターンであっても、本実施形態の技術の適用は可能である(図13参照)。」 (引1d)「【0036】 <複数の走査ラインを持つ走査パターン(例えば、クロス状パターン)の変形手法(図6、図7、図10、図12参照)> 走査パターンの位置に応じて走査パターンを変形させる場合、制御部70は、走査位置が基準領域Aを超える走査ラインの移動を禁止すると共に、移動が禁止されたラインに対して他の走査ラインを移動させるようにしてもよい。」 (引1e)「【0046】 <検者からの指示による走査パターンの変形> なお、上記のように走査パターンを変形させる場合、走査位置に応じて変形する構成に限定されず、例えば、検者からの信号に基づいて変形するようにしてもよい。この場合、制御部70は、走査位置に関わらず、走査パターンを変形できる。」 (引1f)「【0052】 <実施例> 以下、本実施形態に係る実施例を図面に基づいて説明する。図1は本実施例に係る眼科撮影装置の構成について説明する概略構成図である。以下の説明においては、眼科撮影装置として、被検眼の眼底撮影を行う眼底撮影装置を例に挙げて説明を行う。もちろん、眼科撮影装置としては、眼底撮影装置に限定されず、被検眼の前眼部撮影を行う前眼部撮影装置等が挙げられる。 【0053】 図1を参照して、本実施形態に係る眼科撮影装置10の概略構成について説明する。本実施形態の眼科撮影装置10は、OCT光学系100と、観察光学系200と、固視標投影ユニット300と、制御部70とを主に備える。 【0054】 <OCT光学系> OCT光学系100は、被検眼Eの組織(例えば、眼底Ef)の断層画像を取得するための光干渉光学系であり、光断層干渉計(OCT:Optical Coherence Tomography)の構成を備える。具体的には、OCT光学系100は、測定光源102、カップラー(光分割器)104、測定光学系106、参照光学系110、および検出器(受光素子)120を主に備える。 【0055】 より詳細には、カップラー(光分割器)104は、測定光源102から出射された光を測定光学系106の光路と参照光学系110の光路に分割する。測定光学系106は、測定光を眼Eの眼底Efに導く。参照光学系110は、参照光を生成する。OCT光学系100は、眼底Efによって反射された測定光と,参照光を合成する。検出器120(受光素子)は、合成された光を受光する。 【0056】 OCT光学系100は、眼底Ef上の撮像位置を変更するため、眼底Ef上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108、固視標投影ユニット300)を備える。制御部70は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層像を取得する。 【0057】 検出器120(受光素子)は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。眼科撮影装置10には、種々のOCTを採用できる。例えば、Spectral-domain OCT(SD-OCT)、Swept-source OCT(SS-OCT)、Time-domain OCT(TD-OCT)等のいずれを眼科撮影装置10に採用してもよい。 【0058】 光スキャナ108は、測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査させる。例えば、光スキャナ108は、眼底上で二次元的(XY方向(横断方向))に測定光を走査させる。光スキャナ108は、瞳孔と略共役な位置に配置される。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構50によって任意に調整される。 【0059】 これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼底上で任意の方向に走査される。これにより、眼底Ef上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。 【0060】 参照光学系110は、参照光を生成する。前述したように、参照光は、眼底Efでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。 【0061】 参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。 【0062】 <正面観察光学系> 正面観察光学系(正面像観察デバイス)200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。観察光学系200は、例えば、光源から発せられた測定光(例えば、赤外光)を眼底上で二次元的に走査させる光スキャナと、眼底と略共役位置に配置された共焦点開口を介して眼底反射光を受光する第2の受光素子と、を備え、いわゆる眼科用走査型レーザ検眼鏡(SLO)の装置構成を持つ。 【0063】 なお、観察光学系200の構成としては、いわゆる眼底カメラタイプの構成であってもよい。また、OCT光学系100は、観察光学系200を兼用してもよい。すなわち、正面画像は、二次元的に得られた断層像を形成するデータを用いて取得されるようにしてもよい(例えば、三次元断層像の深さ方向への積算画像、XY各位置でのスペクトルデータの積算値、ある一定の深さ方向におけるXY各位置での輝度データ、網膜表層画像、等)。 【0064】 <固視標投影ユニット> 固視標投影ユニット300は、眼Eの視線方向を誘導するための光学系を有する。投影ユニット300は、眼Eに呈示する固視標を有し、複数の方向に眼Eを誘導できる。 【0065】 例えば、固視標投影ユニット300は、可視光を発する可視光源を有し、視標の呈示位置を二次元的に変更させる。これにより、視線方向が変更され、結果的に撮像部位が変更される。例えば、撮影光軸と同方向から固視標が呈示されると、眼底の中心部が撮像部位として設定される。また、撮影光軸に対して固視標が上方に呈示されると、眼底の上部が撮像部位として設定される。すなわち、撮影光軸に対する視標の位置に応じて撮影部位が変更される。 【0066】 固視標投影ユニット300としては、例えば、マトリクス状に配列されたLEDの点灯位置により固視位置を調整する構成、光源からの光を光スキャナを用いて走査させ、光源の点灯制御により固視位置を調整する構成、等、種々の構成が考えられる。また、投影ユニット300は、内部固視灯タイプであってもよいし、外部固視灯タイプであってもよい。 【0067】 <制御部> 制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部70のCPUは、眼科撮影装置10の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部70のROMには、眼科撮影装置10の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。 【0068】 制御部70には、不揮発性メモリ(以下、メモリに省略する)72、操作部74、および表示部75等が電気的に接続されている。メモリ72は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、および、眼科撮影装置10に着脱可能に装着されるUSBメモリ等をメモリ72として使用することができる。メモリ72には、眼科撮影装置10による正面画像および断層画像の撮影を制御するための撮影制御プログラムが記憶されている。また、メモリ72には、撮影された二次元の断層画像、三次元画像、正面画像、断層画像の撮影位置の情報等、撮影に関する各種情報が記憶される。操作部74には、検者による各種操作指示が入力される。 【0069】 操作部74は、入力された操作指示に応じた信号を制御部70に出力する。操作部74には、例えば、マウス、ジョイスティック、キーボード、タッチパネル等の少なくともいずれかを用いればよい。表示部75は、眼科撮影装置10の本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。表示部75には、眼科撮影装置10によって撮影された断層画像および正面画像を含む各種画像が表示される。 【0070】 なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。例えば、PCに設けられた設定制御部と、OCT光学系100等の動作を制御する動作制御部とによって、眼科撮影装置10の制御部70が構成されてもよい。この場合、例えば、PCの設定制御部は、PCに接続された操作部の操作に基づいて断層画像の撮像位置等を設定し、設定した内容を動作制御部に指示すればよい。動作制御部は、設定制御部からの指示に従って、眼科撮影装置10の各構成による撮影動作を制御すればよい。また、受光信号に基づいて画像を生成(取得)する処理は、動作制御部および設定制御部のいずれで行ってもよい。 【0071】 例えば、制御部70は、OCT光学系100の検出器120から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を取得すると共に、観察光学系200の受光素子から出力される受光信号に基づいて正面像を取得する。また、制御部70は、固視標投影ユニット300を制御して固視位置を変更する。 【0072】 例えば、制御部70は、表示部75の表示画面を制御する。取得された眼底像は、表示部75に静止画又は動画として出力される他、メモリ72に記憶される。制御部70は、操作部74から出力される操作信号に基づいて、OCT光学系100、観察光学系200、固視標投影ユニット300の各部材を制御する。 【0073】 <制御動作> 以上のような構成を備える装置において、その制御動作について説明する。検者は、固視標投影ユニット300の固視標を注視するように被検者に指示する。図示無き前眼部観察用カメラで撮影される前眼部観察像が、表示部75に表示される。そこで、検者は、前眼部の瞳孔中心に測定光軸が位置されるように、アライメント操作を行う。 【0074】 制御部70は、光スキャナ108の駆動を制御し、眼底上で測定光を所定方向に関して走査する。制御部70は、検出器120から出力される出力信号から所定の走査領域に対応する受光信号を取得することにより、断層画像を形成する。また、制御部70は、OCT光学系100を制御し、断層画像を取得すると共に、観察光学系200を制御し、眼底正面像を取得する。そして、制御部70は、OCT光学系100によって断層画像、観察光学系200によって眼底正面像を随時取得する。 【0075】 図2は、表示部75に表示される表示画面の一例を示す図である。制御部70は、表示部75上に、観察光学系200によって取得された正面画像20、指標25、断層画像30、を表示する。走査パターン25は、正面画像20上における断層画像の測定位置(取得位置)を表す指標である。走査パターン25は、表示部75上の正面画像上に電気的に表示される。 【0076】 制御部70は、ポインタ21(例えば、十字マーク、ドットマーク、ペンマーク等)を表示部75上に表示する。制御部70は、操作部74からの操作信号に基づいて、ポインタ21を移動させる。 【0077】 本実施例では、正面画像20上にポインタ21を合わせた状態で、操作部74が操作される(例えば、ドラッグ操作、クリック操作)ことにより、撮影条件の設定が可能な構成となっている。ポインタ21は、表示部75上における任意の位置を指定するために用いられる。 【0078】 <スキャンラインの設定> 以下、走査パターンとして、クロスパターンが設定された場合を例として説明する。なお、走査パターン25は、検者の操作に基づいて任意の形状に予め設定される。例えば、複数用意された走査パターンから選択される。 【0079】 断層画像及び正面画像が同一画面上に表示されたら、検者は、撮影したい断層画像の位置を表示部75上の正面画像から設定する。ここで、検者は、操作部74を用いて移動操作(例えば、ドラッグ操作)を行うことによって、正面画像に対して走査パターン25を移動させる。 【0080】 検者によって走査パターン25が正面画像20に対して移動されると、制御部70は、随時走査位置の設定を行う。そして、制御部70は、設定された位置に対応する走査位置における断層画像を取得する。そして、取得された断層画像を表示部75の表示画面上に随時表示する。また、制御部70は、操作部74から出力される操作信号に基づいて測定光の走査位置を変更すると共に、変更された走査位置に対応する表示位置に走査パターン25を表示する。このように、制御部70は、あるフレームレートにて走査位置の設定、及び断層画像の取得を連続的に実行することにより、断層画像の動画像を更新する。 【0081】 なお、初期段階において、走査パターン25は、交点Crを中心とする左右及び上下対称の十字の走査ライン(クロススキャン)からなる。 <走査位置に応じた走査パターン形状の変更> 図2は、走査位置を調整する前の表示画面を示す図である。走査位置は、初期設定として、例えば、正面画像の中心位置に設定される。なお、制御部70は、操作部74からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度、走査幅(スキャン長)を変更するようにしてもよい。 【0082】 制御部70は、正面画像上における走査パターンの位置に応じて、走査パターンを変形させる。図3は、走査パターンを変形する際の例を示すフローチャートである。例えば、制御部70は、走査パターン25が移動された後の各走査ラインの座標を算出する。ここで、制御部70は、移動先の中心位置、回転角度、スキャン幅を用いる。そして、交差中心からのオフセット量は0とする。 【0083】 次に、制御部70は、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定する。Yesと判定された場合、交差中心(交点K)からのオフセット量を算出する。つまり、制御部70は、はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるように算出する。 【0084】 次に、制御部70は、移動後の各走査ラインの座標を再計算する。つまり、制御部70は、移動後の交差中心の位置、初期の交差中心からのオフセット量、回転角度、スキャン幅を用いる。その後、制御部70は、中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナ108を用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う。 【0085】 なお、Noと判定された場合、判定された走査ラインの座標を用いて、走査中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナ108を用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う。 【0086】 図4、図5は、走査パターンの変形制御の一例について説明するための図である。図4は走査パターン変形前を示し、図5は走査パターン変形後を示す。正面画像上には、基準領域Aが設定される。基準領域Aに関して、本実施例では、観察光学系200の撮影可能範囲(撮影画角)に対応する。つまり、表示部75上においては、正面画像の表示領域に対応する。なお、基準領域Aは、例えば、上下左右方向に関して設定される。ただし、これに限定されず、少なくとも1方向に設定されていればよい。 【0087】 制御部70は、走査パターンと基準領域Aとの位置関係に基づいて、走査パターンを変形するようにしてもよい。制御部70は、走査パターンを変形するか否かの境界として基準領域Aを設定してもよい。この場合、基準領域Aは、矩形形状に限定されず、走査パターンを変形するか否かを規定する領域であればよい。例えば、円、楕円などであってもよい。また、制御部70は、設定された走査パターンに応じて、基準領域Aの形状を変形するようにしてもよい。 【0088】 より詳細には、制御部70は、走査パターンが基準領域Aに達しているか否かを判定する。図4に示すように、走査パターン25の端点が基準領域Aに到達していない場合、すなわち走査パターン25の全体が基準領域Aより内側に位置している場合、制御部70は、走査パターン25の形状を変更しない(図2参照)。 【0089】 制御部70は、基準領域Aより狭い中心領域B(点線領域)内において、初期の形状にて走査パターン25の交点Kを正面画像上で移動できる。中心領域Bは、例えば、基準領域Aに対し、走査パターン25の交点Kから端点までの距離分、各方向に関して狭い。つまり、初期の形状に設定された走査パターン25の交点Kは、中心領域B内を移動可能である。制御部70は、中心領域Bにおける眼底上の目標部位を中心とする複数の断層画像を取得可能となる。 【0090】 例えば、断層像を取得したい目標部位が、正面画像における中心領域にある場合、検者は、操作部74の操作によって、目標部位に向けて走査パターン25を移動させる。走査パターン25における縦ライン25aと横ライン25bの交点Kが目標部位に達すると、制御部70は、予め設定された走査パターン25にて、目標部位を中心とする複数の断層画像を取得可能となる。 【0091】 一方、走査パターン25の端点が基準領域Aに到達した後、さらに走査パターン25が到達方向に移動される場合、制御部70は、走査パターン25の形状を変更する(図5、図6参照)。図6(a)?図6(c)は、走査パターンが変形された後の表示画面の一例を示す図である。 【0092】 制御部70は、中心領域Bから基準領域Aまでの周辺領域Cにおいて、形状が変更された走査パターン25を正面画像上で移動できる。つまり、変形された走査パターン25の交点Kは、中心領域Bから基準領域Aまでの周辺領域C内を移動可能である。制御部70は、その周辺領域における眼底上の目標部位を中心とする複数の断層画像を取得可能となる。これにより、異なる方向に関する複数の走査ラインから構成される走査パターンに関して、走査パターンの走査中心の移動範囲が拡大される。これにより、目標部位に関連する複数の断層画像を容易に取得できる。 【0093】 以下に、走査パターン25の形状を変更する際の制御についてより詳細に説明する。例えば、周辺領域Cに目標部位がある場合、検者は、操作部74の操作によって、走査パターン25を正面画像上の目標部位に向けて移動させる。 【0094】 例えば、縦ライン25aの上側端点が基準領域Aに達した後、さらに、走査パターン25が上方向に移動された場合、制御部70は、縦ライン25aの移動を禁止すると共に、横ライン25bを上方に移動させる(図6(a))。つまり、制御部70は、移動が固定された状態の縦ライン25aに対し、横ライン25bを移動させる。この場合、横ライン25bの縦方向の移動は、基準領域Aに達した前後に関係なく、制御部70は、操作部74からの操作信号に基づいて横ライン25bを移動させればよい。 【0095】 この結果、走査パターン25における交点Kの位置が上方向に移動するため、走査パターンの形状が、初期の形状に対して変形した状態となる。これにより、交点Kが、周辺領域Cの上方エリアに配置可能となるため、上方エリアに表示された眼底の目標部位に関連する断層画像を容易に取得できる。さらに、走査パターンの形状が変化されても、縦ライン25aの走査幅は維持されるため、目標部位に関する縦方向の断層画像を、当初の撮影範囲にて取得できる。 【0096】 なお、走査パターン25の縦ライン25aが基準領域Aに達した後の動作の場合、制御部70は、逆に、縦ライン25aの移動を禁止すると共に、横ライン25bを下方に移動させればよい。 【0097】 また、横ライン25bの左側端点が基準領域Aに達した後、さらに、走査パターン25が左方向に移動された場合、制御部70は、横ライン25bの移動を禁止すると共に、縦ライン25aを左方に移動させる(図6(b))。つまり、制御部70は、移動が固定された状態の横ライン25bに対し、縦ライン25aを移動させる。この場合、縦ライン25aの横方向の移動は、基準領域Aに達した前後に関係なく、制御部70は、操作部74からの操作信号に基づいて縦ライン25bを移動させればよい。 【0098】 この結果、走査パターン25における交点Kの位置が横方向に移動するため、走査パターンの形状が、初期の形状に対して変形した状態となる。これにより、交点Kが、周辺領域Cの左側エリアに配置可能となるため、左側エリアに表示された眼底の目標部位に関連する断層画像を容易に取得できる。さらに、走査パターンの形状が変化されても、横ライン25bの走査幅は維持されるため、目標部位に関する横方向の断層画像を、当初の撮影範囲にて取得できる。 【0099】 なお、走査パターン25の横ライン25bが基準領域Aに達した後の動作の場合、制御部70は、逆に、横ライン25bの移動を禁止すると共に、横ライン25bを右方に移動させればよい。 【0100】 例えば、周辺領域Cにおける左上部分に目標部位がある場合、検者は、操作部74の操作によって、走査パターン25を正面画像の左上領域に向けて移動させる。上記制御手法を用いて、制御部70は、縦ライン25aの上側端点及び横ライン25bの左側端点の少なくともいずれかが基準領域Aに達した後、さらに、走査パターン25が到達方向に移動された場合、制御部70は、走査パターン25を変形すればよい(図6(c))。これにより、交点Kが、周辺領域Cの左上部エリアに配置可能となるため、左上部エリアに表示された眼底の目標部位に関連する断層画像を容易に取得できる。さらに、走査パターンの形状が変化されても、縦ライン25a及び横ライン25bの走査幅は維持されるため、目標部位に関する各方向の断層画像を、当初の撮影範囲にて取得できる。なお、周辺領域Cの他のエリアに目標部位が存在する場合の制御方法については、説明を省略する。」 (引1g)「【0122】 なお、走査パターンとして、同一方向に関して複数の走査ラインを持つ走査パターンが用いられる場合、制御部70は、少なくとも1本の走査ラインを他の走査ラインに対して走査方向にスライドさせるようにしてもよい(図13参照)。このような手法は、走査ラインが斜め方向に設定された場合に有利である(例えば、画面の角に走査ラインが設定できる)。」 (引1h)引用文献1の図1、2、3には、各々、次の図面が記載されている。 【図1】 【図2】 【図3】 (引1i)引用文献1の図4、図5には、各々、次の図面が記載されている。 【図4】 【図5】 (引1j)引用文献1の図13には、次の図面が記載されている。 【図13】 b 引用発明について (a)記載事項の整理(引用箇所の下線も含め、下線は、当審にて付したものである。) ・眼科撮影装置10について 摘記(引1f)の段落【0053】には、OCT光学系100と、観察光学系200と、固視標投影ユニット300と、制御部70とを備えた眼科撮影装置10が記載されている。 ・OCT光学系100について 摘記(引1f)の段落【0054】には、OCT光学系100が、眼底Efの断層画像を取得するための光断層干渉計の構成を備えることが記載され、段落【0071】には、制御部70は、OCT光学系100の検出器120から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を取得することが記載されている。 ・被検眼のスキャンについて 摘記(引1f)の段落【0056】には、OCT光学系100は、光スキャナ108を備えることが記載され、段落【0058】には、光スキャナ108は、測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査するものであることが記載されている。 ・観察光学系200の受光素子について 摘記(引1f)の段落【0062】には「正面観察光学系(正面像観察デバイス)200は、眼底Efの正面画像を得るために設けられている。」と、段落【0071】には「・・・制御部70は、・・・観察光学系200の受光素子から出力される受光信号に基づいて正面像を取得する。」と、段落【0072】には「取得された眼底像は、表示部75に静止画又は動画として出力される」と、各々記載されているから、観察光学系200の受光素子は、眼底Efの正面画像を動画で得るものであることが記載されているといえる。 ・基準領域Aと正面画像の表示領域について 摘記(引1f)の段落【0086】には、基準領域Aは、表示部75上においては正面画像の表示領域に対応することが記載されている。 ・走査パターンについて 摘記(引1b)の段落【0021】には、走査パターンとして、複数の走査ラインが互いに交差するクロス状のパターンが記載されている。 ・操作部74について 摘記(引1f)の段落【0079】には、「検者は、操作部74を用いて移動操作(例えば、ドラッグ操作)を行うことによって、正面画像に対して走査パターン25を移動させる。」と記載されており、操作部74を用いて移動操作を行うことによって、正面画像に対して走査パターン25の位置を移動させることが記載されているといえる。 また、摘記(引1d)の段落【0036】には、「制御部70は、走査位置が基準領域Aを超える走査ラインの移動を禁止すると共に、移動が禁止されたラインに対して他の走査ラインを移動させるようにしてもよい」と記載されており、走査パターン25中の特定の走査ラインのみの位置を移動させることが可能であることが記載されているといえる。 ・制御部70による表示部75への表示について 摘記(引1f)の段落【0071】には「制御部70は、表示部75の表示画面を制御する。取得された眼底像は、表示部75に静止画又は動画として出力される・・・」と、段落【0075】には「走査パターン25は、表示部75上の正面画像上に電気的に表示される。」と各々記載されている。また、摘記(引1f)の図2より、表示部75において、走査パターン25は正面画像20上に配置されることが見てとれる。また、摘記(引1f)の段落【0078】には「走査パターンとして、クロスパターンが設定された場合」と記載されており、走査パターン25はクロスパターンであるといえる。 したがって、制御部70は、取得された眼底像の正面画像の動画と、走査パターン25を表示部に表示させ、走査パターン25は取得された眼底像の正面画像の動画上で表示されているといえる。 ・制御部70による走査パターン25の操作位置の変更や変形について 摘記(引1f)の段落【0080】には、「制御部70は、操作部74から出力される操作信号に基づいて測定光の走査位置を変更すると共に、変更された走査位置に対応する表示位置に走査パターン25を表示する。」と記載されている。 摘記(引1f)の段落【0081】には、制御部70は、操作部74からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更することが記載されている。 また、摘記(引1f)の段落【0083】-【0085】には、次の事項が記載されている。 「【0083】 次に、制御部70は、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定する。Yesと判定された場合、交差中心(交点K)からのオフセット量を算出する。つまり、制御部70は、はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるように算出する。 【0084】 次に、制御部70は、移動後の各走査ラインの座標を再計算する。つまり、制御部70は、移動後の交差中心の位置、初期の交差中心からのオフセット量、回転角度、スキャン幅を用いる。その後、制御部70は、中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナ108を用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う。 【0085】 なお、Noと判定された場合、判定された走査ラインの座標を用いて、走査中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナ108を用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う。」 そして、【0086】、【図4】、【図5】より、走査パターンの変形後は、表示部75に更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示することが見てとれる。 (b)引用発明 上記aの摘記事項及び(a)を踏まえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。なお、図面番号や図面中の記号については、省略した。 「OCT光学系と、眼底カメラである観察光学系と、固視標投影ユニットと、制御部とを備えた眼科撮影装置であって、 OCT光学系は、眼底の断層画像を取得するための光断層干渉計の構成と光スキャナを備え、光スキャナは、測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査するものであり、 観察光学系の受光素子は眼底の正面画像を動画で得るものであり、 操作部を用いて移動操作を行うことにより、正面画像に対して走査パターンを移動させ、走査パターン中の特定の走査ラインのみの位置を移動させることが可能であり、 走査パターンは、複数の走査ラインが互いに交差するクロス状のパターンであり、 制御部は、 OCT光学系の検出器から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を取得し、 取得された眼底像の正面画像の動画と、走査パターンを表示部に表示させ、走査パターンは取得された眼底像の正面画像の動画上で表示され、 操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更し、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し、 Yesと判定された場合、はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるように算出し、移動後の各走査ラインの座標を再計算し、中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行い、 Noと判定された場合、判定された走査ラインの座標を用いて、走査中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行い、 走査パターンの変形後は、更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示部に表示することにより、 操作部から出力される操作信号に基づいて測定光の走査位置を変更すると共に、変更された走査位置に対応する表示位置に走査パターンを表示する、 眼科撮影装置。」 (イ)対比 本件補正発明と引用発明とを対比する。 a 眼科撮影装置について 引用発明の「眼底の断面画像を取得するための光断層干渉計の構成を備え、」「測定光源から発せられた光を被検眼眼底上で走査」する「眼科撮影装置」は、本件補正発明の「光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼をスキャンすることにより断面像を取得する眼科撮影装置」に相当する。 b 計測部について 引用発明では、「正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定」し、「Noと判定された場合」のみ「判定された走査ラインの座標を用いて」「光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う」ものであるから、引用発明の「正面画像の表示画面」は、本件補正発明の「所定のスキャン可能範囲」に相当し、また、引用発明の「正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定」し、「Noと判定された場合」のみ「判定された走査ラインの座標を用いて」「光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う」ことは、本件補正発明の「所定のスキャン可能範囲内において光コヒーレンストモグラフィを実行する」ことに相当する。 また、引用発明の「OCT光学系」は「眼底の断層画像を取得するための光断層干渉計の構成を備え」、その「検出器から出力される受光信号に基づいて画像処理により断層像を取得」するものであるから、本件補正発明の「光コヒーレンストモグラフィを実行する計測部」に相当する。 そして、引用発明の「光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作」を「OCT光学系」が行っていることは明らかであるから、引用発明の「正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定」し、「Noと判定された場合」のみ「判定された走査ラインの座標を用いて」「「光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行う」「OCT光学系」は、本件補正発明の「所定のスキャン可能範囲内において光コヒーレンストモグラフィを実行する計測部」に相当する。 c 撮影部について 引用発明の「眼底の正面画像を動画で得る」「観察光学系の受光素子」は、本件補正発明の「前記被検眼を動画撮影する撮影部」に相当する。 d 表示制御部について 引用発明の「取得された眼底像の正面画像の動画」は、本件補正発明の「前記撮影部により取得された動画像」に相当する。 また、引用発明の「複数の走査ライン」は、取得された眼底像の正面画像の動画上に表示されているから、本件補正発明の「前記動画像におけるスキャン位置及びスキャン方向を表す2以上のスキャンライン」に相当する。そして、引用発明の「複数の走査ラインが互いに交差するクロス状の」「走査パターン」と、本件補正発明の「少なくとも2つが交差するように配置された」「2以上のスキャンパターン像」とは、「複数が交差するように配置された2以上のスキャン像」である点で共通する。 したがって、引用発明の「複数の走査ラインが互いに交差するクロス状の」「走査パターン」を「取得された眼底像の正面画像の動画上で表示」させることと、本件補正発明の「前記動画像におけるスキャン位置及びスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された四角形の2以上のスキャンパターン像」「を表示手段に表示」させることとは、「前記動画像におけるスキャン位置及びスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された2以上のスキャン像を表示手段に表示させる」ことで共通する。 次に、引用発明の「操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更し、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し、」「Noと判定された場合、判定された走査ラインの座標を用いて、走査中心位置及び走査ラインの座標を更新し」、「更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示部に表示する」ことと、本件補正発明の「前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャンパターン像の表示位置を変更可能である」こととは、「前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャン像の表示位置を変更可能である」である点で共通する。 以上をまとめると、引用発明の「取得された眼底像の正面画像の動画と、クロスパターンである走査パターンが表示され、走査パターンは取得された眼底像の正面画像の動画上で表示されている表示部に表示させ」、「操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更し、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し、」「Noと判定された場合、判定された走査ラインの座標を用いて、走査中心位置及び走査ラインの座標を更新し」、「更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示部に表示する」「制御部」と、本件補正発明の「前記撮影部により取得された動画像と、前記動画像におけるスキャン位置およびスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された四角形の2以上のスキャンパターン像とを表示手段に表示させると共に、前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャンパターン像の表示位置を変更可能である表示制御部」とは、「前記撮影部により取得された動画像と、前記動画像におけるスキャン位置およびスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された2以上のスキャン像とを表示手段に表示させると共に、前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャン像の表示位置を変更可能である表示制御部」である点で共通する。 e 操作部について 引用発明の「移動操作を行うことにより、正面画像に対して走査パターンを移動させ」る「操作部」は、本件補正発明の「前記2以上のスキャンパターン像の」「位置を変更するための操作部」と、「前記2以上のスキャン像の位置を変更するための操作部」である点で共通する。 また、引用発明の「走査パターン中の特定の走査ラインのみの位置を移動させる」ことと、本件補正発明の「前記2以上のスキャンパターン像の相対位置を変更する」こととは、「前記2以上のスキャン像の相対位置を変更する」点で共通する。 よって、引用発明の「移動操作を行うことにより、正面画像に対して走査パターンを移動させ、走査パターン中の特定の走査ラインのみの位置を移動させることが可能であ」る「操作部」と、本件補正発明の「前記2以上のスキャンパターン像の相対位置を変更するための操作部」とは、「前記2以上のスキャン像の相対位置を変更するための操作部」である点で共通する。 f スキャンパターン像とスキャンラインについて 引用発明の「複数の走査ライン」は、本件補正発明の「2以上のスキャンライン」に相当する。 したがって、引用発明の「走査パターンは、複数の走査ラインが互いに交差するクロス状のパターンであ」ることと、本件補正発明の「前記2以上の スキャンパターン像の少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含む」こととは、「前記2以上のスキャン像の少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含」む点で共通する。 g 計測制御部について 引用発明においては、「走査中心位置及び走査ラインの座標を更新した後」も「測定光の」「走査パターンは、複数の走査ラインが互いに交差するクロス状のパターン」であることは明らかである。したがって、引用発明の「中心位置及び走査ラインの座標を更新した後、光スキャナを用いた測定光の走査制御、及び断層画像の描画動作、を行」う「制御部」と、本件補正発明の「相対位置が変更された後の前記2以上のスキャンパターン像に対応する2以上のスキャンラインに基づいて前記計測部に光コヒーレンストモグラフィを実行させる」「計測制御部」とは、「相対位置が変更された後の前記2以上のスキャン像に対応する2以上のスキャンラインに基づいて前記計測部に光コヒーレンストモグラフィを実行させる計測制御部」である点で共通する。 h スキャンパターン像の回転移動について h-1 引用発明で、「操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更」する際に、何らかの位置を基準に回転させていること、及び、操作部で走査パターンの回転移動要求が行われることは明らかであるから、引用発明の「操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更」することと、本件補正発明の「所定の位置を基準とした回転方向に」「スキャンパターン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われ」ることとは、「所定の位置を基準とした回転方向に」「スキャン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われ」ることである点で共通する。そして、引用発明において「正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し」た結果「Yesと判定された場合」は、本件補正発明の「前記スキャン可能範囲を超える前記スキャンパターン像の」「移動要求が」「行われた場合」に相当する。したがって、引用発明の「操作部からの所定の操作信号に基づいて、走査パターンの回転角度を変更」し、「正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し」た結果「Yesと判定された場合」は、本件補正発明の「所定の位置を基準とした回転方向に前記スキャン可能範囲を超える前記スキャンパターン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われたとき」に相当する。 h-2 引用発明の「はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるように算出」する「制御部」と、本件補正発明の「前記スキャンパターン像が前記回転方向に回転移動したときに前記スキャンパターン像の角部が前記スキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め」る「前記計測制御部」とは、「前記スキャン像が前記スキャン可能範囲の表示画面内に収まるように計算」する「前記計測制御部」である点で共通する。 また、引用発明の「走査パターンの変形後は、表示部に更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示する」「制御部」と、本件補正発明の「前記接触位置に対応した表示位置に前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像を表示させることにより前記2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を前記接触位置に対応した位置にて停止する」「前記表示制御部」とは、「前記変更された走査位置に対応した表示位置に前記2以上のスキャン像を表示させることにより前記2以上のスキャン像の表示位置の移動を前記変更された走査位置に対応した表示位置にて停止する」「前記表示制御部」である点で共通する。 よって、本件補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。 [一致点] 「光コヒーレンストモグラフィを用いて被検眼をスキャンすることにより断面像を取得する眼科撮影装置であって、 所定のスキャン可能範囲内において光コヒーレンストモグラフィを実行する計測部と、 前記被検眼を動画撮影する撮影部と、 前記撮影部により取得された動画像と、前記動画像におけるスキャン位置およびスキャン方向を表す2以上のスキャンラインに対応し少なくとも2つが交差するように配置された2以上のスキャン像とを表示手段に表示させると共に、前記スキャン可能範囲に対応する表示範囲内において前記2以上のスキャン像の表示位置を変更可能である表示制御部と、 前記2以上のスキャン像の相対位置を変更するための操作部と、 相対位置が変更された後の前記2以上のスキャン像に対応する2以上のスキャンラインに基づいて前記計測部に光コヒーレンストモグラフィを実行させる計測制御部と を含み、 前記2以上のスキャン像の少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含み、 所定の位置を基準とした回転方向に前記スキャン可能範囲を越える前記スキャン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われたとき、前記計測制御部は、前記スキャン像が前記スキャン可能範囲の表示画面内に収まるように計算し、前記表示制御部は、変更された走査位置に対応した表示位置に前記2以上のスキャン像を表示させることにより前記2以上のスキャン像の表示位置の移動を前記変更された走査位置に対応した表示位置にて停止する、 眼科撮影装置。」 また、次の点で相違する。 [相違点1] 「スキャン像」が、本件補正発明では「四角形の」「スキャンパターン」であるのに対して、引用発明では、そのような特定がされていない点。 [相違点2] 「前記スキャン像が前記スキャン可能範囲の表示画面内に収まるように計算」する方法が、本件補正発明では、「前記スキャンパターン像が前記回転方向に回転移動したときに前記スキャンパターン像の角部が前記スキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め」るものであるのに対し、引用発明では、「はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるように算出」するものである点。 [相違点3] 「変更された走査位置に対応した表示位置に前記2以上のスキャン像を表示させることにより前記2以上のスキャン像の表示位置の移動を前記変更された走査位置に対応した表示位置にて停止する」方法が、本件補正発明では、「前記接触位置」に対応した表示位置に「前記接触位置が求められた」スキャン「パターン」像を含む2以上のスキャン「パターン」像を表示させることにより前記2以上のスキャン「パターン」像の表示位置の移動を「前記接触位置に」対応した位置にて停止するものであるのに対して、引用発明では、「走査パターンの変形後は、表示部に更新された走査中心位置及び走査ラインに対応した走査パターンを表示する」ものである点。 (ウ)判断 a 相違点1について 引用文献1の摘記(引1c)には、「同一方向に関して複数の走査ラインを持つ走査パターンが用いられる場合」が記載されており、摘記(引1j)の左側の図面からは、そのような走査パターンが四角形状であることが見てとれる。 そして、引用発明において、走査ラインのパターンや形状は、所望の検査に応じて公知又は周知のものから当業者が適宜選択することが可能であるから、引用発明の「走査ライン」を、引用文献1に開示された、同一方向に関して複数の走査ラインを持つ四角形状のものとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 b 相違点2について 摘記(引1f)の段落【0093】-【0094】には、走査パターンの形状変更をする際に、縦ラインの上側端点が基準領域Aに達した後、さらに、走査パターン25が上方向に移動された場合、制御部70は、縦ライン25aの移動を禁止することが記載されている。そして、当業者であれば、当該記載から、走査パターンの形状変更をする際に、基準領域Aを超える移動がされた場合、走査パターン中の走査ラインの端点が基準領域に接触した位置でその走査ラインの移動を停止することを把握することができる。 ここで、当業者であれば、引用発明の「はみ出した量と回転角度から、はみ出した走査ラインが、正面画像の表示画面内に収まるよう算出」する際の具体的計算方法を、公知の方法から選択することが可能である。すると、引用発明において、「はみ出した走査ラインが」「正面画像の表示画面内に収まるよう算出」する際に、上記段落【0093】-【0094】の記載に基づき、走査ラインを回転させたときに走査ラインの端部が正面画像の表示画面の縁端に接触する接触位置を求めることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。 c 相違点3について 上記相違点2の判断を踏まえると、「変更された走査位置に対応した表示位置に停止する」ことは、「接触位置に対応した表示位置に接触位置が求められた走査ラインを停止させた走査パターンを表示させることにより、走査パターンの表示位置の移動を接触位置に対応した位置にて停止する」ことになる。 そして、上記相違点1の判断を踏まえると、引用発明の「走査ライン」の像が「四角形のスキャンパターン像」である場合には、「走査ライン」に替えて「スキャンパターン像」を回転し、また、「走査ライン」に替えて「スキャンパターン像」の端部(角部)が正面画像の表示画面の縁端に接触する接触位置を求め、接触位置に対応した表示位置に接触位置が求められた「走査ライン」に替えて接触位置に対応した表示位置に接触位置が求められた「スキャンパターン像」を停止させた走査パターンを表示させることになる。 d 本件補正発明の効果について 本件補正発明の効果は、上記引用文献1に記載されている事項から当業者が予測可能なものであり、格別顕著なものとはいえない。 (エ)請求人の主張について 請求人は、審判請求書で「補正後の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当せず、特許法第29条第2項の規定にかかわらず特許を受けることができることは明らかであるものと思料します。」と主張しているため、以下、その主張について検討する。 a 本件補正発明と引用発明の相違点について 請求人は、本件補正発明と引用発明の相違点について、次のとおり主張している。 「補正後の請求項1に係る発明と引用文献1に記載の発明とは、・・・所定の位置を基準とした回転方向にスキャン可能範囲を越えるスキャンパターン像の回転移動要求が行われたときの計測制御部及び表示制御部の制御内容・・・が相違します。 ・・・具体的には、引用文献1に記載の発明では、正面画像の表示画面から走査ラインがはみ出るか否かを判定し、はみ出ると判定されたときに走査パターンの変形が継続されるものと思料します(引用文献1の段落0082、0083)。すなわち、引用文献1の段落0083?0116、図3に記載されているように、はみ出ると判定された後も、停止させることなく、移動先の中心位置や回転角度等を用いて、移動後の各走査ラインの座標の計算を繰り返し、図4?図7に示すように走査パターンの形状の変更を継続させます。 これに対して、補正後の請求項1に係る発明では、2以上のスキャンパターン像の少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含み、所定の位置を基準とした回転方向にスキャン可能範囲を越えるスキャンパターン像の回転移動要求が操作部を用いて行われたとき、計測制御部は、スキャンパターン像が回転方向に回転移動したときにスキャンパターン像の角部がスキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め、表示制御部は、接触位置に対応した表示位置に接触位置が求められたスキャンパターン像を含む2以上のスキャンパターン像を表示させることにより2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を接触位置に対応した位置にて停止するものです。すなわち、引用文献1に記載の発明では、はめ出る直前からはみ出ると判定された後も、回転移動要求が行われたときに表示画面内に収まるように走査パターンの形状を変更するように中心位置及び走査ラインの座標の再計算が継続されるのに対して、補正後の請求項1に係る発明では、スキャン可能範囲の縁端に接触したときに2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動が接触位置に対応した位置にて停止されます。」 しかしながら、請求人が主張する相違点は、上記相違点1ないし3として検討したものに対応するところ、前記検討のとおり、「スキャン可能範囲の縁端に接触したときに2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動が接触位置に対応した位置にて停止」することは、引用文献1の記載から、当業者が容易に想到し得るものである。よって、上記主張を参酌しても、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得る発明である。 b 本件補正発明の効果について 本件補正発明の効果について、請求人は、審判請求書にて、次のように主張している。 「上記のような構成を採用することにより、補正後の請求項1に係る発明によれば、スキャン可能範囲を超えるスキャンパターン像の回転移動要求が行われた場合でも2以上のスキャンパターン像の移動を一旦停止させることが可能になるため、これらの交差領域の把握が容易になります。場合によっては、停止後に再度2以上のスキャンパターン像の少なくとも1つを移動させて、交差領域を移動させることも可能になります。 この点、引用文献1には、「同一方向に関して複数本の走査ラインを持つ走査パターンを用いることが記載されている」かもしれませんが、その記載は主として1ライン×1ラインの走査パターンの形状を変更するものです。したがって、1ライン×1ラインの交点を把握することは不可能であることが明らかな上に、はみ出ると判定された後も走査パターンの変形を継続させるものですので、引用文献1に記載された手法では走査パターンの交点を把握することはできず、このような引用文献1が、スキャンパターンの交差領域の把握を容易にする本願発明を拒絶することはできないものと思料します。」 ここで、本願の明細書には、スキャンパターンを回転することについて、次のように記載されている。(引用箇所中の下線は、強調のために当審で付した。) (本a)「【0109】 スキャンパターン像の移動要求が行われた場合の第2動作例について、図8Aおよび図8Bを更に参照して説明する。図8Aおよび図8Bは、交差領域C1内の位置Q1を基準とした回転移動要求が行われた場合の動作例を表し、図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。 【0110】 図5に示す状態において、所定の回転方向RD1にスキャン可能範囲(表示範囲R1)を越えるスキャンパターン像SP1の移動要求が操作部242を用いて行われたとき、計測制御部2111は、図8Aに示すように、スキャンパターン像SP1がスキャン可能範囲の縁端に接触した位置(接触位置)を求める。表示制御部2112は、計測制御部2111により求められた接触位置に対応した表示部241の表示位置に回転後のスキャンパターン像SP1´を表示させる。同様に、表示制御部2112は、計測制御部2111により求められた接触位置に対応した表示部241の表示位置に回転後のスキャンパターン像SP2´を表示させる(図8Aに示す状態)。 【0111】 また、図5に示す状態において、所定の回転方向RD2にスキャン可能範囲(表示範囲R1)を越えるスキャンパターン像SP2の移動要求が操作部242を用いて行われたとき、計測制御部2111は、図8Bに示すように、スキャンパターン像SP2がスキャン可能範囲の縁端に接触した位置(接触位置)を求める。表示制御部2112は、計測制御部2111により求められた接触位置に対応した表示部241の表示位置に回転後のスキャンパターン像SP2´´を表示させる。同様に、表示制御部2112は、計測制御部2111により求められた接触位置に対応した表示部241の表示位置に回転後のスキャンパターン像SP1´´を表示させる(図8Bに示す状態)。 【0112】 すなわち、スキャン可能範囲を越えるスキャンパターン像の移動要求が操作部を用いて行われたとき、表示制御部は、少なくともスキャン可能範囲の縁端に接触したスキャンパターン像の表示位置の移動を当該接触位置にて停止することができる。これにより、スキャン可能範囲を越えるスキャンパターンの移動要求が行われ場合でも、スキャン可能範囲内の任意の位置に交差領域を配置させ、且つ、スキャン領域の面積を小さくすることなく注目部位のスキャンを行うことができる。 【0113】 なお、図8Aおよび図8Bでは、スキャンパターン像SP1、SP2(第1スキャン領域P1および第2スキャン領域P2)を一体的に回転移動させた場合について説明したが、この実施形態は、これに限定されるものではない。たとえば、図8Aにおいて、スキャンパターン像SP2(第2スキャン領域P2)を固定させた状態でスキャンパターン像SP1(第1スキャン領域P1)だけ回転移動させてもよい。また、図8Bにおいて、スキャンパターン像SP1を固定させた状態でスキャンパターン像SP2だけ回転移動させてもよい。また、スキャンパターン像SP1、SP2を平行移動する場合に、図8Aや図8Bのように、スキャン可能範囲の縁端に接触したスキャンパターン像の表示位置の移動を当該接触位置にて停止するようにしてもよい。」 摘記(本a)より、本願の明細書には、本件補正発明の「所定の位置を基準とした回転方向に前記スキャン可能範囲を越える前記スキャンパターン像の回転移動要求が前記操作部を用いて行われたとき、前記計測制御部は、前記スキャンパターン像が前記回転方向に回転移動したときに前記スキャンパターン像の角部が前記スキャン可能範囲の縁端に接触する接触位置を求め、前記表示制御部は、前記接触位置に対応した表示位置に前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像を表示させることにより前記2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を前記接触位置に対応した位置にて停止する」ことによる効果として、「スキャン可能範囲を越えるスキャンパターンの移動要求が行われ場合でも、スキャン可能範囲内の任意の位置に交差領域を配置させ、且つ、スキャン領域の面積を小さくすることなく注目部位のスキャンを行うことができる。」ことは記載されているといえる。しかしながら、請求人の主張する「交差領域の把握が容易にな」るという効果の記載はない。単に、「スキャンパターン像の表示位置の移動を前記接触位置に対応した位置にて停止」するようにすれば、それに伴い交差領域を把握することができるようになるという効果であれば、引用文献1に記載された事項から、当業者が予測し得るものである。よって、本件補正発明の効果は、当業者が予測可能な範囲を超える顕著なものであるということはできない。 c 小括 よって、上記請求人の主張を考慮しても、本件補正発明は引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得るものである。 (オ)小括 よって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。 3 補正却下の決定についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反してなされたものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲は、平成31年1月9日提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は、上記第2で「補正前の請求項1」として記載されたとおりのものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。 理由1.(略) 理由2.(略) 理由3.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) ●理由3 ・請求項1-9、12-13 ・引用文献等1 ・請求項10-11 ・引用文献等1-3 <引用文献等一覧> 1.特開2014-140489号公報 2.特開2014-147505号公報(周知技術を示す文献) 3.特開2014-113385号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項は、上記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。 4 対比・判断 本件補正発明は、上記第2の2で述べたとおり、本願発明について、下記の補正をしたものである。 ア 本願発明の「2以上のスキャンパターン像」について、「少なくとも一部は、2以上のスキャンラインを含」むことを特定すること。 イ 本願発明の「前記接触位置に対応した表示位置に」「表示させる」「スキャンパターン像」が、「前記接触位置が求められたスキャンパターン像を含む前記2以上のスキャンパターン像」であることを特定すること。 ウ 2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を停止する位置を、本願発明の「接触位置」から「接触位置に対応した位置」とすること。 ここで、上記ウの補正は、2以上のスキャンパターン像の表示位置の移動を停止する位置をより明瞭にするためのものであり、本願発明の「接触位置」と本件補正発明の「接触位置に対応した位置」が特定する技術事項は、実質的に同じであるといえる。 すると、本願発明は、実質的に、本件補正発明から、上記ア及びイに記載の特定事項を削除した発明であるから、本件補正発明と同様に、引用発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 結び 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-02-21 |
結審通知日 | 2020-02-25 |
審決日 | 2020-03-09 |
出願番号 | 特願2014-237932(P2014-237932) |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) P 1 8・ 575- Z (A61B) P 1 8・ 537- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 秀樹 |
特許庁審判長 |
三崎 仁 |
特許庁審判官 |
森 竜介 東松 修太郎 |
発明の名称 | 眼科撮影装置 |
代理人 | 榎並 智和 |