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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1362139
審判番号 不服2019-1536  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-02-04 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2015-518357「迅速検査装置および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月27日国際公開、WO2013/191552、平成27年 8月20日国内公表、特表2015-523894〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月20日(パリ条約による優先権主張 2012年6月20日 欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年9月7日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月22日付けで拒絶理由が通知されたが、指定した期間内に意見書及び手続補正書が提出されなかったため同年9月28日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、平成31年2月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正

1 本件補正による補正の内容

(1)請求項1について
請求項1に係る補正事項は、補正前の請求項1(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載のもの)に、「前記流体貯留部と前記少なくとも1つのレセプタクルとの間にフィルターが設けられ、」という記載を追加する補正と、補正前の請求項1の「前記試料を前記吸着および/または吸収要素から前記レセプタクル内に押し出す」という記載を「前記試料を前記吸着および/または吸収要素から前記フィルターを介して前記レセプタクル内に押し出す」という記載に補正するもの(下線は補正箇所を示す。以下同様。)である。

(2)請求項6について
請求項6に係る補正事項は、補正前の請求項6(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載のもの)の「前記グリップに、少なくとも1つの歯と、前記歯のためのガイドトラックを有する前記ハウジング部とが設けられ、またはその逆であり、」という記載を「前記グリップに、少なくとも1つの歯が設けられ、前記歯のためのガイドトラックが前記ハウジング部に設けられ、またはその逆であり、」という記載に補正するものである。

(3)請求項11について
請求項11に係る補正事項は、補正前の請求項11(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載のもの)の「前記要素と前記第2の部品内の少なくとも1つの試薬との間に設けられたフィルタを介して、」という記載を「前記要素と前記第2の部品内の少なくとも1つの試薬との間に設けられた前記フィルタを介して、」という記載に補正するものである。

(4)請求項26について
請求項26に係る補正事項は、補正前の請求項26(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載のもの)の「前記流体接続は、血漿で実質的に完全に充填される、」という記載を「前記試料成分は、血漿である、」という記載に補正するものである。

2 本件補正による特許請求の範囲の補正は、上記1で認定した補正事項のみであり、当該補正の前後において、特許請求の範囲の請求項18の記載は、何ら変更されていないから、当該請求項18に係る発明が特許を受けることができない場合には、本件補正による補正の適否にかかわらず、本願は拒絶されることになる。
このような事情に鑑み、本件補正後の請求項18に係る発明について検討する。

第3 本願発明
本願の請求項18に係る発明(以下「本願発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項18又は本件補正よる補正前の平成29年9月7日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項18に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「 【請求項18】
部品キットであって、
希釈液を有する第1の部品と、
検査ストリップを有する第2の部品と、
前記希釈液で希釈された血液試料から血球を濾過するためのフィルタとを備え、前記フィルタは、前記第1もしくは第2の部品内に、またはこれらの部品の一方と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも血漿は前記フィルタを通過可能であるが血球は前記フィルタを通過不可能であり、前記部品キットはさらに、
既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素を備え、前記要素は、前記第1もしくは第2の部品内に、またはこれらの部品の一方と結合するための別個の要素として設けられ得、これによって、前記血液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得、
前記第1の部品は、前記第1の部品内の希釈液を前記吸着および/または吸収要素を通しておよび/または前記要素に沿って押し出すように、体積が減少可能である、部品キット。」

第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由のうち請求項18に対する新規性及び進歩性に係る理由3及び理由4の概要は、次のとおりのものである。

理由3
(新規性)本願の請求項18に係る発明(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載したもの)は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の各引用文献1、2及び4のそれぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由4
(進歩性)本願の請求項18に係る発明(平成29年9月7日に提出の手続補正書の特許請求の範囲に記載したもの)は、本願の出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の各引用文献1?4のそれぞれに記載された発明に基づいて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:省略
引用文献2:特表2007-526807号公報
引用文献3:省略
引用文献4:特表2009-503542号公報

第5 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献2について

(1)引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。

(引2ア)
「【0002】
〔発明の技術背景〕
吸収性スワブは一般に、さらなる分析のために患者から流体標本を収集するのに使用されることが、医術において知られている。医療スワブは一般に、患者の選択された部分、例えば外傷の表面に、スワブの先端を接触するために手動で扱われる細長いスティックあるいはシャフトの一端に繊維性のスワブ先端部を含む。結果として、細胞物質を含む組織液がスワブ先端部に付着し、そのスワブ先端部を1つ以上の選択された試薬に接触させることよって、感染の存在あるいは患者の状況に関する他の情報を示すことができる。スワブ標本を行う試験は一般に、蛍光検査、酵素試験、モノクローナル抗体による試験、および、凝集試験を含む。」

(引2イ)
「【0045】
上記の全ての実施形態において、キャップがシャフトにしっかり固定されている時は、スワブまた生検は、流体をスワブまた生検から1つ以上の診断試薬へ運ぶことができる吸収性材料と接触しているのが好ましい。このことによって、上記した先行技術において必要とされていたような、スワブまた生検からサンプルを診断材料へ洗い出す希釈液体の必要性を最小限にする。ある実施形態において、診断キャップはキャップがシャフトにしっかり固定されている時、スワブを圧縮して、それによって、液体サンプルをスワブから診断材料へ搾り出すように成形、および、構成されている。この実施形態はスワブが連続気泡フォーム材料を含む場合に特に適している。」

(引2ウ)
「【0085】
〔好適な実施形態の説明〕
図1および図2を参照すると、装置は、概して熱可塑性ポリマーから一体に成型された中空シャフト1を含む。医療的に許容可能なスポンジまたは不織布繊維からなる従来のスワブ2は、シャフト1の中空内部と流体連通状態にある、シャフト1の第1端部にしっかり固定されている。
【0086】
装置は2つの代替診断キャップ3、4をさらに含む。キャップ3、4はそれぞれ、スワブシャフトの膨張部分6と捩込み締まり嵌め(snug interference fit)を形成することができる。膨張部分6はキャップ3、4の開口部の内部断面に相補的な切頭円錐形断面(frusto-conical cross-section)を有する。特に、突出部6はスワブ2から半径方向に外側に向かって延出していることを見出すことができる。結果として、相当に小さなキャップ3,4を、本発明に従う装置に使用できる。
【0087】
中空シャフト1の上端には、シリンジ5のノズル8と液密の締まり嵌め(liquid-tight interference fit)を形成できる開口部7がある。シリンジ5は気体で充填されていて、スワブ2から診断キャップ3,4へ液体サンプルを単純に吹き出すために使用できる。代替的に、シリンジ5はスワブ2からキャップ3,4、へサンプルを洗い出すために水、生理食塩水、または、緩衝食塩水を含んでいてよい。さらに別の実施形態において。シリンジ5は水性溶液中に診断試薬を収容してよい。さらに他の実施形態において、装置は、キャップ中で所望の分析を行うため、例えば、異なる水性試薬のような、異なる水性溶液を収容する複数のシリンジ5を含んでよい。シリンジ5は患者に接触させないので、殺菌する必要はないことは理解されるであろう。」

(引2エ)
「【0091】
図5から図8を参照すると、アッセイシステムは側方流動検知キャップ30、スワブ32または生検パンチ44、およびシリンジ34を含む。検知キャップ30は概して、ディスク型であり、概して円柱形の構造で、ディスクの中心から上向きに突き出ている管状サンプル受容ポート38を有している。図5から図8の実施形態はシャフトの膨張部分およびサンプル受容ポートの内側表面に、相補的なルアーロックネジ山42、46を含むことを除いて、スワブ32または生検パンチ44、および、シリンジ34は、概して、図1の実施形態の構造と同様である。
・・・
【0093】
図8から図10を参照すると、診断キャップ30は、上部50および実質的にディスク型の下部52から形成されたハウジングを含む。それぞれの部分は熱可塑性プラスチックの射出成形により作られうる。ハウジング上部は、それ自体、2つの別個の部分から作られる。ハウジングの上部および下部はスナップ式部品54を手段として、互いに嵌め込む。図10に示すように、ハウジングの上部50の下表面は、多孔性キャリア材料からなるそれぞれのテストストリップ64を受け入れるため、放射状に間隔を置いた浅い5つの凹部59を含む。それぞれのテストストリップは、例えば異なる創傷の症状における分析物の特徴といった、異なる分析物を検査するように構成されている。テストストリップ64はハウジング下部52によって凹部内に保持される。ハウジング下部52およびハウジング上部50は互いにスナップ式に嵌め込まれているとき、サンプルのための流体流路は凹部59に沿ってハウジング上部および下部の間に伸びている。
【0094】
すでに述べたように、ハウジング上部50はスワブを受け取るために上向きに突き出た管状サンプル受容ポート38を含む。フィルター膜を、サンプルから粒子および細胞を取り除くために、部分60内の注入ポートの底に配置することができる。しかし、この実施形態においては、細胞表面の酵素分析物への自由な通過を可能にするため、膜を除いている。したがって、サンプルは円柱形(環状)注入溝62を介して5つのテストストリップ64の上流端へ流れる。
・・・
【0105】
使用において、スワブを創傷液のサンプルを得るのに使用する。典型的に、サンプルは創傷液の約100μLの体積を有するであろう。スワブをルアーロック手段によって装置のサンプル受容ポートの中に挿入する。その後、シリンジからスワブの中央溝を通して生理食塩水(滅菌PBS)を注入することによってスワブからサンプルを放出する。サンプルは注入溝を介して、テストストリップに沿って通る。所定時間後、装置の下側を見て、分析の結果を評価する。」

(引2オ)
「【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】スワブ、2つの診断キャップ、および、スワブシャフトの中へ流体を導入するためのシリンジを含む、本発明に従う装置である。
【図2】診断キャップおよびスワブシャフトに固定されたシリンジを有する、図1の実施形態の長手方向断面図である。」

(引2カ)図1


(引2キ)図2


(引2ク)図5


(引2ケ)図8


(引2コ)図10


(2)引用文献2に記載された発明

ア 【0091】の記載によれば、図5のアッセイシステムにおけるスワブ32として、図1の中空シャフト(スワブシャフト)1及びスポンジからなる「従来のスワブ2」(【0085】)を備えたものが用いられ、「従来のスワブ2」は、「【0002】〔発明の技術背景〕吸収性スワブは一般に、さらなる分析のために患者から流体標本を収集するのに使用される・・・医療スワブは・・・外傷の表面に、スワブの先端を接触するために手動で扱われる細長いスティックあるいはシャフトの一端に繊維性のスワブ先端部を含む。結果として、細胞物質を含む組織液がスワブ先端部に付着し」との記載及び「【0105】使用において、スワブを創傷液のサンプルを得るのに使用する。典型的に、サンプルは創傷液の約100μLの体積を有するであろう。」との記載を踏まえると、「患者の外傷の表面から細胞物質を含む定量の組織液サンプルを収集することができる吸収性スワブ2」であることが理解できる。

イ 「【0087】・・・シリンジ5は気体で充填されていて、スワブ2から診断キャップ3,4へ液体サンプルを単純に吹き出すために使用できる。代替的に、シリンジ5はスワブ2からキャップ・・・へサンプルを洗い出すために水、生理食塩水、または、緩衝食塩水を含んでいて」、「【0045】上記の全ての実施形態において、・・・スワブ・・・からサンプルを診断材料へ洗い出す希釈液体」との記載及び図5を踏まえると、シリンジ5を、シリンジ5内の気体を用いて、スワブ2から液体サンプルを吹き出すために使用する旨の記載があることから、スワブ2から液体サンプルを希釈液体(水、生理食塩水など)で洗い出す場合も圧力を加えて洗い出すものであることが理解できるから、「シリンジ34は、シリンジ34内に希釈液体を収容し、この希釈液体を用いてスワブ2から細胞物質を含む組織液サンプルを洗い出すために、シリンジ34内にプランジャを押し込むことにより希釈液体をスワブ2から押し出す」ことが理解できる。

ウ 「サンプル」は、上記アのとおり「細胞物質を含む組織液サンプル」であり、上記イのとおり「希釈液体」によって「スワブ2から」「細胞物質を含む組織液サンプルを洗い出す」から、「【0094】・・・フィルター膜を、サンプルから粒子および細胞を取り除くために、部分60内の注入ポートの底に配置する」との記載を踏まえると、「フィルター膜は、希釈液体によって希釈された細胞物質を含む組織液サンプルから細胞物質を取り除く」ことが理解できる。

エ 「【0108】・・・【図2】・・・スワブシャフトに固定されたシリンジを有する、図1の実施形態の長手方向断面図である」、「【0085】・・・図1および図2を参照すると、・・・スワブ2は、・・・シャフト1の第1端部にしっかり固定されている。」、「【0087】中空シャフト1の上端には、シリンジ5のノズル8と液密の締まり嵌め・・・を形成できる」との記載及び図2を踏まえると、「シリンジ34は、スワブシャフト1の上端に締まり嵌めで固定でき、スワブシャフト1の下端に吸収性スワブ2が固定される」ことが理解できる。

オ 上記ア?エを含め上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる(同じ意味合いの語彙が複数ある場合は、それらの語彙を一つの語彙に統一して用いた。以下、同様。)。

「側方流動検知キャップ30、患者の外傷の表面から細胞物質を含む定量の組織液サンプルを収集することができる吸収性スワブ2、スワブシャフト1、プランジャを備えるシリンジ34、フィルター膜、テストストリップ64を含むアッセイシステムであって、
吸収性スワブ2は、スポンジからなり、スワブシャフト1の中空内部と流体連通状態にあるスワブシャフト1の下端に固定され、
シリンジ34は、スワブシャフト1の上端に締まり嵌めで固定でき、シリンジ34内に希釈液体を収容し、この希釈液体を用いてスワブ2から細胞物質を含む組織液サンプルを洗い出すために、シリンジ34内にプランジャを押し込むことにより希釈液体をスワブ2から押し出し、
側方流動検知キャップ30は、上部50およびディスク型の下部52から形成されたハウジングを含み、
ハウジング上部50は、吸収性スワブ2を受け取るために上向きに突き出た管状サンプル受容ポート38を含み、フィルター膜は、希釈液体によって希釈された細胞物質を含む組織液サンプルから細胞物質を取り除くために、管状サンプル受容ポート38の底の部分60に配置することができ、
ハウジングの上部50の下表面は、それぞれのテストストリップ64を受け入れるため、放射状に間隔を置いた浅い5つの凹部59を含み、それぞれのテストストリップ64は、ハウジング下部52によって凹部59内に保持される、
アッセイシステム。」

2 引用文献4について

(1)引用文献4の記載
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(引4ア)
「【0003】
多数の患者が頻繁に、毎日でさえも血液試料を採取及び分析する必要がある。糖尿病患者個人が血糖値を自己管理することがよく知られた例である。血糖値を自己管理する多くの製品が市販されている。医師の推奨を受けこのような製品を使用する際に、患者は通常、自身の血糖値制御の成功を管理できるように1日に何度も血糖値を測定する。多くの糖尿病患者にとって、定期的に血糖をテストすることの失敗は、腎不全、失明、高血圧及び他の深刻な合併症等の、組織及び臓器の損傷につながる可能性がある。自身の血液を定期的にテストする必要があり得る他の患者には、進行性腎疾患患者及び心不全患者が挙げられる。」

(引4イ)
「【0025】
図2は、血液試料等の液体試料の収集及び当該試料と一定量の希釈剤との混合の両方を行う新規の毛管式器具100を示す。図2に示すように、器具100は毛管101を含むコレクタ106を有する。毛管101の直径は例えば約1mmであり得る。
【0026】
コレクタ106の先端の毛管101の開放端が、例えば血液である一定量の液体と接触すると、その液体の試料が毛管力によって毛管101内に引き込まれる。このように、その液体の所望の試料を収集することができる。
【0027】
液体は、破断特徴部102に達するまで毛管101内に引き込まれ続ける。破断特徴部102は毛管101内で働く毛管力を妨げ、液体が毛管101内にさらに引き込まれないようにする。破断特徴部102は、例えば、毛管力が働かなくなる点まで毛管101を拡げることであり得る。代替的に、破断特徴部102はコレクタ106内の小さい孔であってもよく、この孔が毛管力の作用を妨げる。孔は、ガス透過性膜によって覆われることにより、器具からのいかなる液体の漏れも防止することができる。毛管力を妨げる任意の他の手段を破断特徴部102として用いてもよい。
【0028】
コレクタ106は通常、透明材料から形成され、破断特徴部102まで毛管106内に引き込まれる試料をユーザが見ることができるようにする。破断特徴部102はまた、コレクタ106上に配置される目に見える線107又は他の目に見える指示子と関連付けることができ、それにより、破断特徴部102の場所、及び試料を収集する際に毛管101を充填すべき量をユーザが容易に見ることができるようにする。このように、破断特徴部102は、後の分析用に必要な量に基づく毛管101内に収集されるべき試料の量を示すように、特に毛管101に沿って位置付けられることができる。
【0029】
器具100は、特定の既知の量の希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103も含む。このリザーバ103は、より詳しく後述するように、コレクタ106の毛管101と、おそらくは最小限の量の圧力下でない限り希釈剤104が毛管101に流入するのを防止する弁、破断可能な膜又は他の手段と流体連通している。
【0030】
器具100は希釈剤リザーバ103と流体連通しているチャンバ105も含み、当該チャンバは試料及び希釈剤104を器具100から押し出すのに使用される。図2に示す例では、チャンバ105は、可撓性であると共に最初に一定量の空気若しくは他の気体、又は液体を充填されているスクイーズチャンバ又はスクイーズバルブである。
【0031】
試料がコレクタ106の毛管101内に引き込まれた後、毛管101の開放端を有するコレクタ106の先端を、希釈された試料を受け取って分析する用意ができている分析機器上に位置付けることができ、例えばこれは、化学分析器の試料ウェル、テストカード又はストリップ等である。
【0032】
次に、ユーザはスクイーズチャンバ105を圧縮して、空気又は他の液体を圧力下でチャンバ105から押し出す。チャンバ105は希釈剤リザーバ103と流体連通しているため、この動作によりリザーバ103内の希釈剤104に圧力が加わる。
【0033】
これにより、希釈剤104が毛管101内に、毛管101を通して押し流される。希釈剤104が毛管101を通して押し流されると、希釈剤104は毛管101から試料を流す一方、自動的に試料と混合されて試料を希釈する。この結果、適当に希釈された試料が、対応する分析機器による使用の準備ができている状態で器具100から押し出される。
【0034】
したがって、図示の器具100により血液又は他の液体の少量の試料を容易に収集すると共に、試料を分析する準備として当該試料と適切な既知の量の希釈剤とを混合することができる。器具100のユーザは、本明細書に記載した従来のシステムに必要な希釈剤混合管、搬送ピペット、希釈剤を保持するテストディスク又は他のさらなる機器を使用する必要がない。さらに、器具100及びその使用方法は、上述した代替的なシステムに要するよりもわずかな手先の器用さしか必要としない。
【0035】
図3は、器具100の別の可能な特徴を示す。図3に示すように、試料をコレクタ106内に引き込んだ後、フィルタ107をコレクタ106の先端及び毛管101の開放端に配置してもよい。このフィルタ107は、希釈剤104及び分析に所望の試料の1つ又は複数の成分のみを毛管内に通すように設計される。
【0036】
例えば、コレクタ106内の試料は全血であり得る。全血よりも血漿の分析が所望される場合、適切なフィルタ107をコレクタ106の先端に配置する。このフィルタ107は、チャンバ105が圧縮されると希釈剤及び血漿のみを通す。他の血液成分はコレクタ106内に保持される。この結果、器具100は分析用の希釈された血漿の試料を、全血の試料採取よりも容易且つ迅速に提供する。」

(引4ウ)
「【0038】
図5は、本明細書に記載の器具を操作する例示的な方法を示すフローチャートである。図5に示すように、液体試料が毛管力によって器具のコレクタへ引き込まれる(ステップ200)。これは、開放した毛管を含む器具の先端を試料採取すべき液体と接触させることによって行われる。
【0039】
試料が器具内に収集されると、試料の特定の成分(複数可)のみが分析のために後に押し出されるように試料をろ過することが望ましい場合がある。ろ過が望ましい場合(決定201)、適切なフィルタを、試料を収容しているコレクタの先端に適用する(ステップ202)。ろ過が所望でない場合、フィルタを適用する必要はない。
【0040】
次に、試料を希釈し、希釈された試料を分析機器に押し出すように圧力を器具のチャンバに加える(ステップ203)。上述したように、チャンバに圧力を加えることは、例えば可撓性のチャンバを圧縮するか、又はチャンバ内に配置されるプランジャを動作させることを含み得る。
【0041】
この結果、希釈剤がコレクタへ押し流され、コレクタにおいて希釈剤が試料と混合し、試料を器具から適切な分析機器へ流す(ステップ204)。これにより、適当に希釈された試料を、さらなる機器又はこのような機器を扱う器用さをあまり必要とすることなく、説明した1つの器具のみを用いて分析機器に押し出すことができる。」

(引4エ)図3


(引4オ)図5


(2)引用文献4に記載された発明

ア 「【0031】・・・分析する用意ができている分析機器上に位置付けることができ、例えばこれは、化学分析器の・・・ストリップ等である」との記載を踏まえると、【0033】に記載の「対応する分析機器」は、ストリップを含むことが理解できる。

イ 「【0036】例えば、コレクタ106内の試料は全血であり得る。全血よりも血漿の分析が所望される場合、適切なフィルタ107をコレクタ106の先端に配置する。このフィルタ107は、チャンバ105が圧縮されると希釈剤及び血漿のみを通す。他の血液成分はコレクタ106内に保持される。」との記載を踏まえると、【0033】に記載の「ストリップの使用の準備ができている状態で器具100から押し出される」「希釈された試料」は、「フィルタ107を通して希釈された血漿」であることが理解できる。

ウ 上記ア及びイを含め上記(1)の記載及び図面を総合すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。

「試料として血液の収集及び当該血液と一定量の希釈剤との混合の両方を行う毛管式器具100であって、
毛管式器具100は、毛管101を含むコレクタ106を有し、コレクタ106の先端の毛管101の開放端が、血液と接触すると、その血液が毛管力によって毛管101内に引き込まれ、血液を収集することができ、血液は、破断特徴部102に達するまで毛管101内に引き込まれ続け、破断特徴部102は、後の分析用に必要な量に基づく毛管101内に収集されるべき血液の量を示すように、毛管101に沿って位置付けられ、
毛管式器具100は、特定の既知の量の希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103も含み、このリザーバ103は、コレクタ106の毛管101と、最小限の量の圧力下でない限り希釈剤104が毛管101に流入するのを防止する弁、破断可能な膜又は他の手段と流体連通し、
毛管式器具100は、希釈剤リザーバ103と流体連通しているチャンバ105も含み、当該チャンバ105は血漿及び希釈剤104を毛管式器具100から押し出すのに使用され、チャンバ105は、可撓性であると共に最初に一定量の空気若しくは他の気体、又は液体を充填されているスクイーズチャンバ105であり、
毛管式器具100は、スクイーズチャンバ105が圧縮されると希釈剤及び血漿のみを通し、他の血液成分をコレクタ106内に保持するフィルタ107も含み、血液をコレクタ106内に引き込んだ後、フィルタ107をコレクタ106の先端に配置し、
ユーザはスクイーズチャンバ105を圧縮して、空気若しくは他の気体、又は液体を圧力下でチャンバ105から押し出し、チャンバ105は希釈剤リザーバ103と流体連通しているため、この動作によりリザーバ103内の希釈剤104に圧力が加わり、これにより、希釈剤104が毛管101内に、毛管101を通して押し流され、希釈剤104が毛管101を通して押し流されると、希釈剤104は毛管101から血液を流す一方、自動的に血液と混合されて血液を希釈し、この結果、フィルタ107を通して希釈された血漿は、ストリップの使用の準備ができている状態で毛管式器具100から押し出される、
毛管式器具100と、
当該毛管式器具100のコレクタ106の先端に位置付けるストリップと、
を備えるシステム。」

第6 引用文献2を主引用例とした場合

1 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

(1)引用発明2の「希釈液体を収容」した「シリンジ34」は、本願発明の「希釈液を有する第1の部品」に相当する。

(2)引用発明2の「テストストリップ64」を「保持」した「側方流動検知キャップ30」は、本願発明の「検査ストリップを有する第2の部品」に相当する。

(3)上記(2)を踏まえると、引用発明2の「フィルター膜」は、「側方流動検知キャップ30」に「配置することができ」ることは、本願発明の「フィルタは、」「第2の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得」ることに相当する。
よって、引用発明2の「希釈液体によって希釈された細胞物質を含む組織液サンプルから細胞物質を取り除くため」の「フィルター膜」であって、前記「フィルター膜」は、「側方流動検知キャップ30」に「配置することができ」ることと、本願発明の「前記希釈液で希釈された血液試料から血球を濾過するためのフィルタ」であって、「前記フィルタは、」「第2の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも血漿は前記フィルタを通過可能であるが血球は前記フィルタを通過不可能であ」ることとは、「前記希釈液で希釈された生体液試料から細胞を濾過するためのフィルタとを備え、前記フィルタは、第2の部品と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも生体液は前記フィルタを通過可能であるが細胞は前記フィルタを通過不可能であ」る点で共通する。

(4)本願発明の「吸着および/または吸収要素」は、本願明細書の【0063】「吸収および/または吸着要素は、スポンジ状要素等の、流体試料を保持可能な要素を含むと少なくとも理解されるべきであり、毛細管要素、バイアル等を含んでもよい。」との記載から、スポンジ状要素を含むことが理解できる。この理解に立つと、引用発明2の「スポンジからな」る「吸収性スワブ2」が「下端に固定され」た「スワブシャフト1」は、本願発明の「吸着および/または吸収要素」に相当する。
また、上記(1)を踏まえると、引用発明2の「スワブシャフト1」が、「シリンジ34」と「スワブシャフト1の上端に締まり嵌めで固定でき」ることは、本願発明の「前記要素は、前記第1」「の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得」ることに相当する。
よって、引用発明2の「患者の外傷の表面から細胞物質を含む定量の組織液サンプルを収集することができる」「スポンジからな」る「吸収性スワブ2」が「下端に固定され」た「スワブシャフト1」であって、前記「スワブシャフト1」は、「シリンジ34」と「スワブシャフト1の上端に締まり嵌めで固定でき、シリンジ34内に希釈液体を収容し、このシリンジ34内にプランジャを押し込むことにより」、「希釈液体を用いてスワブ2から細胞物質を含む組織液サンプルを洗い出す」ことと、本願発明の「既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素」であって、「前記要素は、前記第1」「の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得、これによって、前記血液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得」ることとは、「既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素を備え、前記要素は、前記第1の部品と結合するための別個の要素として設けられ得、これによって、前記生体液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得」る点で共通する。

(5)引用発明2の「シリンジ34は、」「シリンジ34内にプランジャを押し込むことにより」、「シリンジ34内」において、実際に「希釈液体を収容」している領域の体積(容積)が減少することは明らかである。また、「プランジャを備えるシリンジ34」は、「シリンジ34内にプランジャを押し込むことにより」、「シリンジ34内にプランジャを押し込む」前と比べて、「シリンジ34」全体の体積が減少していることも明らかである。
よって、上記(1)を踏まえると、引用発明2の「シリンジ34は、スワブシャフト1の上端に締まり嵌めで固定でき、シリンジ34内に希釈液体を収容し、この希釈液体を用いてスワブ2から細胞物質を含む組織液サンプルを洗い出すために、シリンジ34内にプランジャを押し込むことにより希釈液体を少なくとも部分的にスワブ2から押し出」すことは、本願発明の「前記第1の部品は、前記第1の部品内の希釈液を前記吸着および/または吸収要素を通して」「押し出すように、体積が減少可能である」ことに相当する。

(6)引用発明2の「希釈液体を収容」した「シリンジ34」、「テストストリップ64」を「保持」した「側方流動検知キャップ30」、「側方流動検知キャップ30」に「配置することができ」る「フィルター膜」、及び、「シリンジ34」と「上端に締まり嵌めで固定でき」、「患者の外傷の表面から細胞物質を含む定量の組織液サンプルを収集することができる」「スポンジからな」る「吸収性スワブ2」が「下端に固定され」た「スワブシャフト1」は、それぞれが独立した部品であり、「アッセイシステム」を構成するための部品一式であるから、本願発明の「部品キット」に相当する。

2 一致点・相違点
上記1から、本願発明と引用発明2とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「部品キットであって、
希釈液を有する第1の部品と、
検査ストリップを有する第2の部品と、
前記希釈液で希釈された生体液試料から細胞を濾過するためのフィルタとを備え、前記フィルタは、第2の部品と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも生体液は前記フィルタを通過可能であるが細胞は前記フィルタを通過不可能であり、前記部品キットはさらに、
既知の量の生体液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素を備え、前記要素は、前記第1の部品と結合するための別個の要素として設けられ得、これによって、前記生体液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得、
前記第1の部品は、前記第1の部品内の希釈液を前記吸着および/または吸収要素を通して押し出すように、体積が減少可能である、部品キット。」

(相違点)
本願発明では、生体液試料が血液であり、「血液」試料がサンプリングされ、「血液」の構成要素が希釈され、フィルターは、希釈された「血液」から「血球」を濾過し、「血漿」は通過可能であるが「血球」は通過不可能であるのに対し、引用発明2では、生体液試料が組織液であり、「患者の外傷の表面から」の「細胞物質を含む」「組織液」試料がサンプリングされ、「組織液」の構成要素が希釈され、フィルターは、希釈された「組織液」から「細胞物質」を濾過するものである点。

3 判断
上記相違点について検討する。

引用発明2の「組織液」は「患者の外傷の表面から」サンプリングされるものであるから、一般的に考えて「血液」を含むことが想定されるから、引用発明2は、「血液」試料がサンプリングされ、「血液」の構成要素が希釈され、フィルターは、希釈された「血液」から細胞である「血球」を濾過し、「血漿」は通過可能であるが「血球」は通過不可能であるものを含むといえる。
すると、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明2との実質的な相違点であるとはいえない。仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、引用発明2において、「患者の外傷の表面から」の「組織液サンプル」を「血液」とし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、技術常識を踏まえると当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用文献2の記載から予測される範囲内のものにすぎず、顕著なものということはできない。

4 小括
したがって、本願発明と引用発明2との間に相違することはなく、本願発明は引用発明2であるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。
また、本願発明は、引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第7 引用文献4を主引用例とした場合

1 対比
本願発明と引用発明4とを対比する。

(1)引用発明4の「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、すなわち「フィルタ107」を含めない「毛管式器具100」は、本願発明の「希釈液を有する第1の部品」に相当する。

(2)引用発明4の「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」は、本願発明の「検査ストリップを有する第2の部品」に相当する。

(3)引用発明4の「フィルタ107」は、本願発明の「フィルタ」に相当する。
また、上記(1)を踏まえると、引用発明4の「フィルタ107」は、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」されることは、本願発明の「フィルタは、前記第1」「の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得」ることに相当する。
よって、引用発明4の「希釈剤及び血漿のみを通し、他の血液成分をコレクタ106内に保持」し、「この結果、」「希釈された血漿」「を通」す「フィルタ107」であって、前記「フィルタ107」は、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」されることは、ここでの「コレクタ106内に保持」される「他の血液成分」に血球を含むことは明らかであるから、本願発明の「前記希釈液で希釈された血液試料から血球を濾過するためのフィルタ」であって、「前記フィルタは、前記第1」「の部品」「と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも血漿は前記フィルタを通過可能であるが血球は前記フィルタを通過不可能であ」ることに相当する。

(4)本願発明の「吸着および/または吸収要素」は、本願明細書の【0063】「吸収および/または吸着要素は、スポンジ状要素等の、流体試料を保持可能な要素を含むと少なくとも理解されるべきであり、毛細管要素、バイアル等を含んでもよい。」との記載から、毛細管要素を含むことが理解できる。この理解に立つと、引用発明4の「毛管101を含むコレクタ106」は、本願発明の「吸着および/または吸収要素」に相当する。
そして、引用発明4の「血液」を「分析用に必要な量に基づく毛管101内に収集されるべき血液の量」「に達するまで毛管101内に引き込」める「コレクタ106」は、本願発明の「既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素」に相当する。
よって、上記(1)を踏まえると、引用発明4の「血液」を「分析用に必要な量に基づく毛管101内に収集されるべき血液の量」「に達するまで毛管101内に引き込」める「コレクタ106」であって、前記「コレクタ106」は、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」「と流体連通し」、「希釈剤104が毛管101内に、毛管101を通して押し流され、希釈剤104が毛管101を通して押し流されると、希釈剤104は毛管101から血液を流す一方、自動的に血液と混合されて血液を希釈」することは、本願発明の「既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素」であって、「前記要素は、前記第1」「の部品内に」「設けられ得、これによって、前記血液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得」ることに相当する。

(5)引用発明4の「スクイーズチャンバ105」は、「圧縮」されると「空気若しくは他の気体、又は液体」が「チャンバ105から押し出」されることによって、「希釈剤104が毛管101内に、毛管101を通して押し流され」ることから、「希釈剤リザーバ103」内において、実際に「希釈剤104」が「充填」されている領域の体積(容積)が減少することは明らかである。また、「スクイーズチャンバ105」は、「圧縮」されると「圧縮」される前と比べて、「スクイーズチャンバ105」の体積が減少する結果、「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品全体の体積が減少することも明らかである。
よって、上記(1)を踏まえると、引用発明4の「スクイーズチャンバ105」は、「圧縮」されると「空気若しくは他の気体、又は液体」が「チャンバ105から押し出」されることによって、「希釈剤104が毛管101内に、毛管101を通して押し流され、希釈剤104が毛管101を通して押し流されると、希釈剤104は毛管101から血液を流す一方、自動的に血液と混合されて血液を希釈」することは、本願発明の「前記第1の部品は、前記第1の部品内の希釈液を前記吸着および/または吸収要素を通して」「押し出すように、体積が減少可能である」ことに相当する。

(6)引用発明4の「システム」は、「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」する「フィルタ107」、並びに「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」「を備える」ことから、引用発明4の「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」する「フィルタ107」、並びに「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」と、本願発明の「部品キット」とは、「複数の部品」である点で共通する。

2 一致点・相違点
上記1から、本願発明と引用発明4とは、次の点で一致し、次の点で相違する。

(一致点)
「複数の部品であって、
希釈液を有する第1の部品と、
検査ストリップを有する第2の部品と、
前記希釈液で希釈された血液試料から血球を濾過するためのフィルタであって、前記フィルタは、前記第1の部品と結合するための別個の要素として設けられ得、少なくとも血漿は前記フィルタを通過可能であるが血球は前記フィルタを通過不可能であり、前記複数の部品はさらに、
既知の量の血液をサンプリングする可能性を提供する吸着および/または吸収要素を備え、前記要素は、前記第1の部品内に設けられ得、これによって、前記血液の構成要素が、前記要素を通過した前記希釈液によって希釈され得、
前記第1の部品は、前記第1の部品内の希釈液を前記吸着および/または吸収要素を通して押し出すように、体積が減少可能である、複数の部品。」

(相違点)
複数の部品が、本願発明では、「部品キット」を構成しているのに対し、引用発明4では、毛管式器具100を構成している「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」する「フィルタ107」と、「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」である点。

3 判断
上記相違点について検討する。

引用発明4の「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、並びに、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」する「フィルタ107」は、それぞれが独立した部品であり、「毛管式器具100」を構成するための部品一式であるから、「毛管式器具100」の部品キットであるといえる。
そして、引用発明4は、「毛管式器具100」及び「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」「を備えるシステム」であって、当該「システム」は、引用文献4の【0003】に記載されているように「糖尿病患者個人が血糖値を自己管理する」ための使用形態が想定され、患者にとって「毛管式器具100」と「ストリップ」は一体不可分の関係にあることが理解できることから、引用発明4において、「コレクタ106」、「希釈剤104で充填される希釈剤リザーバ103」及び「スクイーズチャンバ105」からなる部品、並びに、「血液をコレクタ106内に引き込んだ後、」「コレクタ106の先端に配置」する「フィルタ107」を備える「毛管式器具100」の部品キットに、さらに「コレクタ106の先端に位置付けるストリップ」を加えて、「システム」の部品キットとし、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明の奏する作用効果は、引用文献4の記載から予測される範囲内のものにすぎず、顕著なものということはできない。

4 小括
したがって、本願発明は、引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、又は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-11-28 
結審通知日 2019-12-03 
審決日 2019-12-16 
出願番号 特願2015-518357(P2015-518357)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼ 芳徳  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
渡戸 正義
発明の名称 迅速検査装置および方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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