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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1362155
審判番号 不服2019-10556  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-08 
確定日 2020-05-07 
事件の表示 特願2017-225652「生体情報検出装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月20日出願公開、特開2019- 92910〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年11月24日の出願であって、平成30年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成31年1月11日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年5月30日付けで拒絶査定されたところ、同年8月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 令和元年8月8日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年8月8日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「主面が生体に面した状態で、前記生体の被測定箇所に装着される筐体と、
前記生体の表面に近接配置されて前記生体の情報を取得する第一情報取得部と、前記第一情報取得部とは異なる前記生体の情報を取得する第二情報取得部と、を含み、前記筐体の前記主面から突出した突出部を有する検出部と、
を備え、
前記主面側から見た場合において、前記第一情報取得部は、前記第二情報取得部の周囲であって前記検出部における検出部本体の内面に配置され、
前記第一情報取得部は、温度センサを備え、
前記第二情報取得部は、センシング窓と発光部と受光部とにより構成された脈拍センサであり、
前記センシング窓は、前記検出部本体に圧入され、
前記センシング窓と前記検出部本体の表面とが面一となることにより、前記第一情報取得部と前記第二情報取得部とは、前記検出部本体の表面において面一となっていることを特徴とする生体情報検出装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年1月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりである。
「主面が生体に面した状態で、前記生体の被測定箇所に装着される筐体と、
前記生体の表面に近接配置されて前記生体の情報を取得する第一情報取得部と、前記第一情報取得部とは異なる前記生体の情報を取得する第二情報取得部と、を含み、前記筐体の前記主面から突出した突出部を有する検出部と、
を備え、
前記主面側から見た場合において、前記第一情報取得部は、前記第二情報取得部の周囲に配置されることを特徴とする生体情報検出装置。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第一情報取得部」、「第二情報取得部」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2016-131733号公報(平成28年7月25日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。

(a)
「【0010】
[適用例3] 上記適用例にかかる生体情報測定装置において、前記脈波センサーは、前記ケース部の前記第1の脚側の面に設けられ、ユーザーの体側に突出するセンサー凸部に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、ユーザーの体側に突出するセンサー凸部に脈波センサーが配置されているので、ユーザーの体に対する脈波センサーの接触状態がさらに安定し、ユーザーの脈波信号の検出精度をより向上させることができる。」

(b)
「【0034】
[適用例15] 上記適用例にかかる生体情報測定装置において、前記ケース部に格納され、生体の温度を検出する温度センサーを備え、前記温度センサーは、前記回路基板の前記脈波センサーと同じ側の面に搭載されていることを特徴とする。
【0035】
本適用例によれば、温度センサーが、回路基板において脈波センサーと同じ生体側の面に搭載されるので、温度センサーがケース部内にスペース効率よく配置されて小型化に寄与できるとともに、温度センサーによるユーザーの体温の測定をより確実に行うことができる。」

(c)
「【0051】
図1において、実施形態1に係る生体情報測定装置(以下では、測定装置ともいう)は、生体情報が測定される生体(例えば人体)に装着され、脈拍、およびその他の生体情報を測定する電子機器である。実施形態1の測定装置1は、腕時計のようにユーザー(生体)の測定部位に装着され使用される。」

(d)
「【0054】
図1(b)に示すように、測定装置1は、装置本体であるケース部10と、ケース部10を手首WRに固定する第1のバンド22および第2のバンド24を有するバンド部20と、バンド部20の第1のバンド22と第2のバンド24とを接続する接続部としてのバックル部30と、を備えている。
【0055】
ケース部10の正面側には、生体情報測定結果や時刻などを文字やグラフィックス等として表示する表示部(モニター部(ディスプレイ))50が備えられている。測定装置1は、測定装置1の正面とは反対側の底面(検出部)を手首WRに密着させた状態で生体情報を測定する。そして、測定結果や、測定結果に基づいた生体情報の評価結果等を表示部50に表示する。」

(e)
「【0061】
ケース部10の第1の脚7A側、即ちユーザーの生体側(手首側)には、生体情報としての脈波を検出する脈波センサー部5が配置されている。本実施形態では、ケース部10の第1の脚7A側の面に、ユーザーの生体側に突出するセンサー凸部65が形成されており、このセンサー凸部65の内部空間に配置されたセンサー用回路基板75に脈波センサー部5が搭載されている。センサー用回路基板75は、例えばFPCなどの中継基板85を介してメイン回路基板70と電気的に接続されている。センサー凸部65は、ケース部10と一体で形成されたリブとすることもできる。このように、脈波センサー部5が、ユーザーの生体側に突出するセンサー凸部65に配置されていることにより、ユーザーの体に対する脈波センサーの接触状態が安定し、脈波信号の検出精度を向上させる効果を奏する。また、脈波センサー部5は、ケース部10の第1の脚7A側の面においてケース部10の重心10Gを含む領域に配置されている。この構成により、ユーザーの生体(手首)に対する脈波センサー部5の接触位置や接触状態が安定し、脈波信号の検出精度を向上させることができる。また、本実施形態の生体情報測定装置1では、主な駆動・制御回路や後述する各種の検出部を搭載したメイン回路基板70とは別個に、脈波センサー部5を搭載するセンサー用回路基板75が備えられている。これにより、小型化が要求される生体情報測定装置1において、ケース部10における脈波センサー部5やその他の各種検出部のレイアウトの自由度の向上を実現することができる。
【0062】
ここで、脈波センサー部5の構成、および測定原理について説明する。図3は、脈波センサー部5の概略構成、および測定原理を模式的に示す部分断面図である。図3において、脈波センサー部5は、センサー凸部65内に配置されたセンサー用回路基板75、および、センサー用回路基板75のユーザーの生体(手首の皮膚1000)側の面に搭載された光源としての発光素子61,63(通常LED(Light Emitting Diode)が用いられる)と、受光素子62(通常フォトダイオードが用いられる)とを有する光電脈波センサーである。センサー凸部65内部において、発光素子61,63と、受光素子62とは、遮光部材67により遮光されており、発光素子61および受光素子62の皮膚1000側の窓部68は透光性を有している。窓部68は透明な凸レンズ状の部材であり、透明樹脂が好適に用いられる。脈波センサー部5の発光素子61,63から窓部68を通過してユーザーの皮膚(生体)1000に照射された光は、皮膚1000下の血管1002を流れる血液によって一部が吸収されるが、残りの光は反射されて皮膚1000から外に出る。そして、生体で反射された光は受光素子62によって補足され、受光信号として中継基板85を介してメイン回路基板70(図2を参照)に出力される。受光素子62からの受光信号は、血管を流れる血液量に相当する情報を含む信号である。血管を流れる血液量は、心臓の脈動によって変化するので、受光素子62上の信号は心臓の拍動に対応して変化する。つまり、受光素子62の信号の変化は、心拍数のパルスに相当するものである。そして、単位時間当たり(例えば10秒当たり)のパルス数を係数することによって、心臓が1分間に打つ心拍数が得られる。」

(f)
「【0069】
温度センサー160は、ユーザー(生体)の温度、即ち体温を検出する。このように、温度センサー160が、メイン回路基板70の脈波センサー部5と同じ生体側の面に配置されていることにより、温度センサー160によるユーザーの体温の測定をより確実に行うことができる。なお、温度センサー160は環境温度を測定することも可能である。
また、メイン回路基板70の一方の面には、電池120(図2を参照)を充電するための充電端子部150が設けられている。」

(g)
図2(a)として以下の図面が記載されている。



(h)
図3として以下の図面が記載されている。



(i)
図4(a)として以下の図面が記載されている。




(イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

(a)上記(ア)(c)の「実施形態1の測定装置1は、腕時計のようにユーザー(生体)の測定部位に装着され使用される。」、上記(ア)(d)の「測定装置1は、装置本体であるケース部10と、(・・中略・・)と、を備えている。」、「測定装置1は、測定装置1の正面とは反対側の底面(検出部)を手首WRに密着させた状態で生体情報を測定する。」、及び、上記(ア)(g)の図2aから、引用文献1には、「底面を手首WRに密着させた状態で生体情報が測定されるように、腕時計のようにユーザー(生体)の測定部位に装着される測定装置1のケース部10」が記載されているものと認められる。

(b)上記(ア)(e)の「ケース部10の第1の脚7A側、即ちユーザーの生体側(手首側)には、生体情報としての脈波を検出する脈波センサー部5が配置されている。本実施形態では、ケース部10の第1の脚7A側の面に、ユーザーの生体側に突出するセンサー凸部65が形成されており、このセンサー凸部65の内部空間に配置されたセンサー用回路基板75に脈波センサー部5が搭載されている。」、及び、上記(ア)(g)の図2aから、引用文献1には、「脈波センサー部5を含み、ケース部10のユーザーの生体側に突出したセンサー凸部65」が記載されているものと認められる。

(c)上記(ア)(f)の「温度センサー160は、ユーザー(生体)の温度、即ち体温を検出する。このように、温度センサー160が、メイン回路基板70の脈波センサー部5と同じ生体側の面に配置されていることにより、温度センサー160によるユーザーの体温の測定をより確実に行うことができる。」、及び、上記(ア)(g)の図2aから、引用文献1には、「ケース部10の生体側の面に配置された温度センサー160」が記載されているものと認められる。

(d)上記(ア)(f)の「温度センサー160は、ユーザー(生体)の温度、即ち体温を検出する。このように、温度センサー160が、メイン回路基板70の脈波センサー部5と同じ生体側の面に配置されていることにより、温度センサー160によるユーザーの体温の測定をより確実に行うことができる。」、及び、上記(ア)(i)の図4(a)より、温度センサー160が脈波センサー部5の周囲に配置されている点が見てとれるから、引用文献1には、「測定装置1の底面側から見た場合において、温度センサー160は、脈波センサー部5の周囲に配置され」ることが記載されているものと認められる。

(e)上記(ア)(e)の「脈波センサー部5は、センサー凸部65内に配置されたセンサー用回路基板75、および、センサー用回路基板75のユーザーの生体(手首の皮膚1000)側の面に搭載された光源としての発光素子61,63(通常LED(Light Emitting Diode)が用いられる)と、受光素子62(通常フォトダイオードが用いられる)とを有する光電脈波センサーである。センサー凸部65内部において、発光素子61,63と、受光素子62とは、遮光部材67により遮光されており、発光素子61および受光素子62の皮膚1000側の窓部68は透光性を有している。窓部68は透明な凸レンズ状の部材であり、透明樹脂が好適に用いられる。」、及び、上記(ア)(h)の図3から、引用文献1には、「脈波センサー部5は、発光素子61,63と受光素子62、窓部68とにより構成される」ことが記載されているものと認められる。

(f)上記(ア)(h)の図3から、引用文献1には、「窓部68とセンサー凸部65の表面が面一」であることが記載されているものと認められる。

(g)上記(ア)(c)から、引用文献1には、「生体情報測定装置」が記載されているものと認められる。

以上をふまえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「底面を手首WRに密着させた状態で生体情報が測定されるように、腕時計のようにユーザー(生体)の測定部位に装着される測定装置1のケース部10と、
脈波センサー部5を含み、ケース部10のユーザーの生体側に突出したセンサー凸部65と、
ケース部10の生体側の面に配置された温度センサー160と、
を備え、
測定装置1の底面側から見た場合において、温度センサー160は、脈波センサー部5の周囲に配置され、
脈波センサー部5は、発光素子61,63と受光素子62、窓部68とにより構成され、窓部68とセンサー凸部65の表面が面一となる、
生体情報測定装置。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(ア)引用発明の「ケース部10」は、本件補正発明の「筐体」に相当する。
また、本件補正発明の「主面」は、「筐体」の表面のうち主要な面を意味するものと認められ、引用発明のケース部10の表面のうち比較的大面積であり、主要な面といえる「底面」は、本件補正発明の「主面」に相当する。
してみると、引用発明の「底面を手首WRに密着させた状態で生体情報が測定されるように、腕時計のようにユーザー(生体)の測定部位に装着される測定装置1のケース部10」は、本件補正発明の「主面が生体に面した状態で、前記生体の被測定箇所に装着される筐体」に相当する。

(イ)引用発明の「ケース部10の生体側の面に配置された温度センサー160」は、本件補正発明の「前記生体の表面に近接配置されて前記生体の情報を取得する第一情報取得部」に相当し、また、引用発明の「温度センサー160」は、本件補正発明の「温度センサ」に相当する。

(ウ)引用発明の「脈波センサー部5」は、「温度センサー160」とは異なる生体情報としての脈波情報を取得するものである。
したがって、引用発明の「脈波センサー部5」は、本件補正発明の「前記第一情報取得部とは異なる前記生体の情報を取得する第二情報取得部」に相当する。

(エ)引用発明の「センサー凸部65」は、ケース部10の底面からユーザーの生体側(手首側)に突出した部分を含むものであり、「センサー凸部65」は脈波センサー部5を含む突出部を有し、生体情報を検出する検出部であるといえる。
してみると、引用発明の「脈波センサー部5を含み、ケース部10のユーザーの生体側に突出したセンサー凸部65」は、本件補正発明の「前記第一情報取得部とは異なる前記生体の情報を取得する第二情報取得部と、を含み、前記筐体の前記主面から突出した突出部を有する検出部」に相当する。

(オ)本件補正発明の「検出部本体」は、「検出部」の本体部分を意味するものと認められるから、引用発明の「センサー凸部65」は「検出部」に相当するとともに、「検出部本体」に相当する。

(カ)引用発明の「発光素子61,63」は、本件補正発明の「発光部」に相当する。

(キ)引用発明の「受光素子62」は、本件補正発明の「受光部」に相当する。

(ク)引用発明の「窓部68」は、本件補正発明の「センシング窓」に相当する。

(ケ)引用発明の「生体情報測定装置」は、本件補正発明の「生体情報検出装置」に相当する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「主面が生体に面した状態で、前記生体の被測定箇所に装着される筐体と、
前記第一情報取得部とは異なる前記生体の情報を取得する第二情報取得部、を含み、前記筐体の前記主面から突出した突出部を有する検出部と、
前記生体の表面に近接配置されて前記生体の情報を取得する第一情報取得部と、
を備え、
前記主面側から見た場合において、前記第一情報取得部は、前記第二情報取得部の周囲に配置され、
前記第一情報取得部は、温度センサを備え、
前記第二情報取得部は、センシング窓と発光部と受光部とにより構成された脈拍センサ
である生体情報検出装置。」

【相違点1】
本件補正発明は、「第一情報取得部」が「突出部」に含まれ、「検出部本体の内面に配置」されるのに対し、引用発明は、「温度センサー160」が「センサー凸部65」に含まれているか明らかでなく、「ケース部10」の内面に配置されているものの「センサー凸部65」の内面に配置されたものか明らかでない点。

【相違点2】
本件補正発明は、「前記センシング窓は、前記検出部本体に圧入され」ているのに対し、引用発明は、当該構成について特定されていない点。

【相違点3】
本件補正発明は、「前記第一情報取得部と前記第二情報取得部とは、前記検出部本体の表面において面一となっている」のに対して、引用発明は、当該構成について特定されていない点。


(4)判断
以下、相違点について検討する。
ア 相違点1及び3について
引用発明においては、「温度センサー160」が「センサー凸部65」に含まれているか明らかでないが、引用文献1の上記2(2)ア(ア)(b)の記載をふまえると、引用発明においては、「温度センサーによるユーザーの体温の測定をより確実に行う」ことを企図しているものと認められる。
そして、ユーザーの体温を測定する生体情報検出装置において、確実な体温測定を行うために生体情報検出装置本体から生体側に突出した部分に温度センサーを設けることは、周知の技術手段であり(例えば、特開2005-261464号公報(特に段落【0011】、【0039】?【0046】、【0101】?【0106】、図1,2,8)参照。)、センサー凸部に脈波センサーを配置することで、ユーザーの体に対する脈波センサーの接触状態がさらに安定し、ユーザーの脈波信号の検出精度をより向上させた(上記2(2)ア(ア)(a)参照)引用発明において、「センサー凸部65」の内面に「温度センサー160」を配置することは、当業者が容易に想到しうることである。
また、引用発明は、窓部68とセンサー凸部65の表面が面一であるので、脈波センサー部5を含むセンサー凸部65の内面に「温度センサー160」を配置することで、両センサー部の表面が面一となるものである。
よって、引用発明において、相違点1及び3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

イ 相違点2について
引用発明の「窓部68」は「センサー凸部65」に如何にして取り付けられたものであるか明らかでないが、本件補正発明、及び、引用発明と同様の手首に装着される生体情報検出装置において脈波センサーの窓部を検出部本体に圧入して設けることは、周知の構成であり(例えば、特開2011-104234号公報(特に段落【0027】?【0030】、図2)参照)、引用発明の「窓部68」を「センサー凸部65」に圧入して設ける構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

ウ そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年8月8日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年1月11日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1,2,6,7,9に係る発明は,本願の原出願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない、
また、この出願の請求項1ないし10に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1,2,4に記載された発明及び引用文献3に示されるような慣用手段に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2016-131733号公報
引用文献2:特開2016-123717号公報
引用文献3:特開2005-261464号公報
引用文献4:特開2017-164537号公報


3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「第一情報取得部」が、「(前記第二情報取得部の周囲)であって前記検出部における検出部本体の内面に配置され(上記かっこは当審が付した)」る事項と、「前記第一情報取得部は、温度センサを備え、
前記第二情報取得部は、センシング窓と発光部と受光部とにより構成された脈拍センサであり、
前記センシング窓は、前記検出部本体に圧入され、
前記センシング窓と前記検出部本体の表面とが面一となることにより、前記第一情報取得部と前記第二情報取得部とは、前記検出部本体の表面において面一となっている」に係る限定事項を削除したものである。
つまり、本願発明は、前記第2の[理由]2(4)で示した相違点1?3に係る構成を削除したものであるから、引用発明と構成上の差異はない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号に該当し、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-02-27 
結審通知日 2020-03-03 
審決日 2020-03-23 
出願番号 特願2017-225652(P2017-225652)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
P 1 8・ 113- WZ (A61B)
P 1 8・ 575- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲瀬▼戸井 綾菜松本 隆彦磯野 光司  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 松谷 洋平
森 竜介
発明の名称 生体情報検出装置  
代理人 田▲崎▼ 聡  
代理人 鈴木 慎吾  
代理人 西澤 和純  

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