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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1362218
審判番号 不服2018-15380  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-11-20 
確定日 2020-06-02 
事件の表示 特願2014- 69627「ネットワークシステム、パケット伝送装置、パケット伝送方法、及び情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月 2日出願公開、特開2015-192391、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成26年3月28日を出願日とする出願であって,平成29年10月10日付けで拒絶理由通知がされ,平成29年12月12日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ,平成30年4月19日付けで拒絶理由通知がされ,平成30年6月26日に意見書が提出され,平成30年8月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,平成30年11月20日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,令和2年1月31日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,令和2年3月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。


第2 原査定の概要

原査定(平成30年8月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 (進歩性)本願請求項1-3,6-8に係る発明は,以下の引用文献1ないし5に基づいて,本願請求項4,5に係る発明は,以下の引用文献1ないし7に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.Cisco IOS Software Configuration Guide, Release 12.2SX,Cisco,2013年11月17日,https://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/switches/lan/catalyst6500/ios/12-2SX/configuration/guide/book.pdf
2.国際公開第2012/130357号
3.「IPv6 Topics IPv6を取り巻く技術・標準化動向(3)-IPマルチキャスト-」,BUSINESS COMMUNICATION,第42巻,第1号,2005年1月1日,pp.155-157
4.特開2011-124709号公報
5.特開2009-246845号公報
6.特開2004-179811号公報
7.特開2000-349818号公報


第3 当審拒絶理由の概要

当審拒絶理由通知における拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(明確性)この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(1)請求項1の「マルチキャストルーティングを行う複数の第1の通信装置と、前記複数の第1の通信装置間を接続し、マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送する複数の第2の通信装置」との記載は,「第1の通信装置」「第2の通信装置」が具体的にどのような通信装置であるか記載されていないため,発明全体としてどのような通信装置からなるどのような通信環境を前提とするのか把握できず,不明確である。
(2)請求項1の「前記複数の第2の通信装置のそれぞれは、
前記複数の第1の通信装置のうちのいずれかの装置から送信されるマルチキャストグループへの参加要求の受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして記憶する第1の記憶部と、
前記マルチキャストグループのマルチキャストパケットを、自装置が有するポートのうちの前記転送ポートから転送する転送部と、
マルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる第1の通信装置のアドレスを記憶する第2の記憶部と、
前記参加要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定する判定部と、
を備え」
との記載は,「マルチキャストグループへの参加要求」を行ってから「マルチキャストパケット」の転送を行うという「第2の通信装置」の実際の処理順序と整合しておらず,構成全体を明確に把握できず,記載として不明確である。
(3)請求項1の「前記第2の通信装置の前記判定部は、
前記複数の第1の通信装置のうちのいずれかから、マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合に、
前記脱退要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、
前記脱退要求の受信ポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求によって示されるマルチキャストグループの転送ポートが記憶されている場合には、該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定する」
との記載は意味が不明であり,記載として不明確である。


第4 本願発明

本願請求項1ないし8に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は,令和2年3月13日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される発明であり,以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数の通信装置と、
前記複数の通信装置間を接続し、マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送する複数のパケット伝送装置と、
を含むネットワークシステムであって、
前記複数のパケット伝送装置のそれぞれは、
前記複数の通信装置のうちマルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる通信装置のアドレスを記憶する第2の記憶部と、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう、前記参加要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定する判定部と、
転送のため前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして記憶する第1の記憶部と、
前記マルチキャストグループのマルチキャストパケットを、自装置が有するポートのうちの前記転送ポートから転送する転送部と、
を備え、
前記パケット伝送装置の前記判定部は、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから、マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合には、前記脱退要求を転送できるよう、前記脱退要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、前記脱退要求を受信したポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求の対象であるマルチキャストグループへの参加要求に対応してマルチキャストパケットの転送ポートが記憶されている場合には、当該参加要求を送信した通信装置がマルチキャストパケットを受信できるよう該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定する、
ネットワークシステム。
【請求項2】
前記パケット伝送装置は、
前記複数のパケット伝送装置間で所定のプロトコルにより構築される論理的なツリー構造についての情報を記憶する第3の記憶部と、
自装置が前記参加要求を受信した場合に、前記ツリー構造におけるルートとなるパケット伝送装置に、前記参加要求の受信ポートを通知し、
自装置が前記ルートである場合に、前記第3の記憶部に記憶される前記ツリー構造についての情報に基づいて、前記参加要求の経路を特定し、該経路上の前記パケット伝送装置の前記参加要求の受信ポートを、前記マルチキャストグループの転送ポートとして、前記複数のパケット伝送装置のそれぞれに通知する、通知部と、
をさらに備える請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
前記通知部は、前記経路外のポートを、前記マルチキャストグループのパケットを転送しない破棄ポートとして通知する、
請求項2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
前記通知部は、
前記参加要求の受信ポートの通知を所定周期で行い、
前記第1の記憶部に格納される転送ポートについて、前記参加要求の受信ポートの通知が所定時間受信されない場合には、前記マルチキャストグループについて、全ポートを破棄ポートとして前記複数のパケット伝送装置のそれぞれに通知する、
請求項3に記載のネットワークシステム。
【請求項5】
前記パケット伝送装置は、
前記参加要求の受信ポートを前記マルチキャストグループの転送ポートとして前記第1の記憶部に記憶し、前記第1の記憶部に記憶される転送ポートについて、前記参加要求が所定時間受信されない場合に、該転送ポートとして記憶されるポートを前記マルチキャストグループのパケットを転送しない破棄ポートに変更する管理部を、
さらに備える請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項6】
マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数の通信装置間を接続し、マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送するパケット伝送装置であって、
前記複数の通信装置のうちマルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる通信装置のアドレスを記憶する第2の記憶部と、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう、前記参加要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定する判定部と、
前記参加要求を転送できるよう、前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして記憶する第1の記憶部と、
前記マルチキャストグループのマルチキャストパケットを、前記パケット伝送装置が有するポートのうちの前記転送ポートから転送する転送部と、
を備え、
前記判定部は、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから、マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合には、前記脱退要求を転送できるよう、前記脱退要求を転送するポートを、
自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、
前記脱退要求を受信したポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求の対象であるマルチキャストグループへの参加要求に対応してマルチキャストパケットの転送ポートが記憶されている場合には、当該参加要求を送信した通信装置がマルチキャストパケットを受信できるよう該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定する、
パケット伝送装置。
【請求項7】
マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数通信装置間を接続し、マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送するパケット伝送装置が、
前記複数の通信装置のうちマルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる通信装置のアドレスを第2の記憶部に記憶し、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう、前記参加要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、
転送のため前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして第1の記憶部に記憶し、
前記マルチキャストグループのマルチキャストパケットを、前記パケット伝送装置が有するポートのうちの前記転送ポートから転送し、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから、マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合には、前記脱退要求を転送できるよう、前記脱退要求を転送するポートを、
自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、前記脱退要求を受信したポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求の対象であるマルチキャストグループへの参加要求に対応してマルチキャストパケットの転送ポートが記憶されている場合には、当該参加要求を送信した通信装置がマルチキャストパケットを受信できるよう該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定する、
パケット伝送方法。
【請求項8】
マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数の通信装置間を接続し、マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送するパケット伝送装置に、
前記複数の通信装置のうちマルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる通信装置のアドレスを第2の記憶部に記憶させ、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう、前記参加要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定させ、
転送のため前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして第1の記憶部に記憶させ、
前記複数の通信装置のうちのいずれかから、マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合には、前記脱退要求を転送できるよう、前記脱退要求を転送するポートを、
自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定させ、前記脱退要求を受信したポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求の対象であるマルチキャストグループへの参加要求に対応してマルチキャストパケットの転送ポートが記憶されている場合には、当該参加要求を送信した通信装置がマルチキャストパケットを受信できるよう該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定させる、
ための情報処理プログラム。」


第5 引用文献,引用発明等

1.引用文献1について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(「Cisco IOS Software Configuration Guide, Release 12.2SX,Cisco,2013年11月17日,https://www.cisco.com/c/en/us/td/docs/switches/lan/catalyst6500/ios/12-2SX/configuration/guide/book.pdf」)には,図とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与。以下同様。)

A 「Understanding PIM Snooping
In networks where a Layer 2 switch interconnects several routers, such as an Internet exchange point (IXP),the switch floods IP multicast packets on all multicast router ports by default, even if there are no multicast receivers downstream. With PIM snooping enabled, the switch restricts multicast packets for each IP multicast group to only those multicast router ports that have downstream receivers joined to that group. When you enable PIM snooping, the switch learns which multicast router ports need to receive the multicast traffic within a specific VLAN by listening to the PIM hello messages, PIM join and prune messages, and bidirectional PIM designated forwarder-election messages.」(41-1ページ下から9行?同2行)
(当審訳:「PIMスヌーピングを理解する
複数のルータ、例えばインターネットエクスチェンジ(IXP)、をレイヤー2スイッチが接続するネットワークでは、スイッチは、たとえ下流側にマルチキャスト受信機がなくても、標準で全てのマルチキャストルータのポートにIPマルチキャストパケットをフラッディングする。PIMスヌーピングを有効とすることで、スイッチは、各IPマルチキャストグループへのマルチキャストパケットを、グループに参加した受信機が下流側にあるマルチキャストルータのポートのみに制限して送信する。PIMスヌーピングを有効にすると、スイッチは、PIM Helloメッセージ、PIM Join及びPruneメッセージ、及び双方向PIM designated forwarder-electionメッセージを聴くことで、特定のVLAN内でどのマルチキャストルータポートがマルチキャストトラフィックの受信を必要としているかを学習する。」)

B 「Figure 41-2 shows the flow of a PIM join message with PIM snooping enabled. In the figure, the switches restrict the PIM join message and forward it only to the router that needs to receive it (Router B).」(41-2ページ下から3行?末行)
(当審訳:「図41-2は、PIMスヌーピングを有効とすることによる、PIM Joinメッセージのフローを示す。図の中で、スイッチは、PIM Joinメッセージを制限し、その受信を必要とするルータ(ルータB)のみにそれを転送する。」)

C 「


」(41-3ページFigure41-2)

D 「Figure 41-4 shows the flow of a data traffic with PIM snooping enabled. In the figure, the switches forward the data traffic only to the router that needs to receive it (Router A).」(41-3ページ下から2行?末行)
(当審訳:「図41-4は、PIMスヌーピングを有効とすることによる、トラフィックデータのフローを示す。図の中で、スイッチは、トラフィックデータの受信を必要とするルータ(ルータA)のみにそれを転送する。」)

E 「


」(41-4ページFigure41-4)

F 上記Eにおける図の記載から,マルチキャストルーティングを行う複数のルータ(A,B,C,D)と,前記ルータ間を接続し,マルチキャストパケットを転送する複数のスイッチと,を含むネットワークシステム,が読み取れる。そして,上記Aの「PIMスヌーピングを有効とすることで、スイッチは、各IPマルチキャストグループへのマルチキャストパケットを、グループに参加した受信機が下流側にあるマルチキャストルータのポートのみに制限して送信する。PIMスヌーピングを有効にすると、スイッチは、PIM Helloメッセージ、PIM Join及びPruneメッセージ、及び双方向PIM designated forwarder-electionメッセージを聴くことで、特定のVLAN内でどのマルチキャストルータポートがマルチキャストトラフィックの受信を必要としているかを学習する。」との記載から,上記複数のスイッチは,PIMスヌーピングを有効とすると,PIM Helloメッセージ,PIM Join及びPruneメッセージ,及び双方向PIM designated forwarder-electionメッセージを聴くことで,特定のVLAN内でどのマルチキャストルータポートがマルチキャストトラフィックの受信を必要としているかを学習し,各IPマルチキャストグループへのマルチキャストパケットを,グループに参加した受信機が下流側にあるマルチキャストルータのポートのみに制限して送信する,ことが読み取れる。

G 上記Bの「PIMスヌーピングを有効とすることによる、PIM Joinメッセージのフローを示す。図の中で、スイッチは、PIM Joinメッセージを制限し、その受信を必要とするルータ(ルータB)のみにそれを転送する。」との記載及び上記Cにおける図の記載から,上記Fにおける複数のスイッチは,PIM Joinメッセージを制限し,その受信を必要とするルータのみに転送する,ことが読み取れる。

以上,上記AないしGの記載及び検討から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マルチキャストルーティングを行う複数のルータ(A,B,C,D)と,前記ルータ間を接続し,マルチキャストパケットを転送する複数のスイッチと,を含むネットワークシステムであって,
上記複数のスイッチは,
PIMスヌーピングを有効とすると,PIM Helloメッセージ,PIM Join及びPruneメッセージ,及び双方向PIM designated forwarder-electionメッセージを聴くことで,特定のVLAN内でどのマルチキャストルータポートがマルチキャストトラフィックの受信を必要としているかを学習し,各IPマルチキャストグループへのマルチキャストパケットを,グループに参加した受信機が下流側にあるマルチキャストルータのポートのみに制限して送信し,
PIM Joinメッセージを制限し,その受信を必要とするルータのみに転送する,
ネットワークシステム。」

2.引用文献2について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(国際公開第2012/130357号)には,図面とともに次の事項が記載されている。

H 「In PIM-SM, a network node uses unicast forwarding of JOIN messages in order to join or to leave a multicast group. In order to join a multicast group, the network node sends a JOIN message in upstream direction of the multicast tree to a common source network node (the term "common source network node" hereinafter also includes a rendezvous point in the case of a shared tree). The JOIN message is routed along a path of the multicast tree determined by Multicast Routing Information Base (MRIB) tables. The paths listed in these tables are usually derived directly from unicast routing tables (but they could also be derived differently). Similarly, a network node wanting to leave a multicast group sends a PRUNE packet up the multicast tree to the common source network node.」(1ページ21行?31行)
(訳(ファミリである特表2014-513888号の記載):「 PIM-SMにおいて、ネットワークノードは、マルチキャストグループに対して参加又は離脱するためにJOINメッセージのユニキャスト転送を使用する。マルチキャストグループに参加するために、ネットワークノードは、共通ソースネットワークノードに向けてマルチキャストツリーの上流方向にJOINメッセージを送信する(以下、用語「共通ソースネットワークノード」は、共有ツリーの場合のランデブーポイントを更に含む)。JOINメッセージは、マルチキャストルーティング情報ベース(MRIB)テーブルにより判定されるマルチキャストツリーのパスに沿ってルーティングされる。これらのテーブルにおいて列挙されるパスは、通常、ユニキャストルーティングテーブルから直接導出される(しかし、それらは異なる方法で導出されてもよい)。同様に、マルチキャストグループから離脱するために待機しているネットワークノードは、マルチキャストツリーの上向きにPRUNEパケットを共通ソースネットワークノードに送信する。」)

3.引用文献3について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(「IPv6 Topics IPv6を取り巻く技術・標準化動向(3)-IPマルチキャスト-」,BUSINESS COMMUNICATION,第42巻,第1号,2005年1月1日,pp.155-157)には,図とともに次の事項が記載されている。

I 「・PIM-SM
PIM-SMにおけるルータの動作を図2に示す。まず、受信者から後述の「マルチキャストグループ管理」プロトコルでル-タに送信されたグループ参加要求は、ルータAからランデブーポイント(以下RP)と呼ばれる集中点ルータに送られる。また、送信者から送信されるマルチキャストパケットはルータBでカプセル化されてRPに送られる。一旦、RPを経由する配信ツリーに従って中継が開始された後、最短パスを経由する配信ツリーを用いた中継に切り替わる。
PIM-SMは受信者の増加に伴ってRPの負担が増し、RP障害時の影響範囲も広がるため、受信者が比較的少ないネットワークに適している。」(156ページ左欄下から1行?右欄12行)

4.引用文献4について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開2011-124709号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

J 「【0003】
IP放送の受信端末が受信を停止する場合は、マルチキャスト配信から離脱するためのLEAVEメッセージを送信する。配信を行っている伝送系路上のルータがLEAVEメッセージを受信すると、配下のネットワーク内に他に受信を行っている受信端末が存在しないか確認するためのメッセージを送信する。
ルータからのメッセージに対して、配下のネットワーク内の受信端末から一定時間内に返信がなければ、ルータは放送データの配信を停止する。この返信を待つ間は放送データが配信され続ける。」

5.引用文献5について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特開2009-246845号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

K 「【0005】
ところで、上記IGMPやMLD、MLDv2には、共通の仕様として、マルチキャストグループから離脱する際に他の端末の状況を確認するシーケンスがある。例えばMLDv2では、マルチキャストグループから離脱する際に端末から離脱要求をルータが受信すると、ルータは配下に他の端末が参加しているかどうかを確認するために、MLDv2 Query(Multicast Address Specific Query)を1回以上送信する。そして、MLDv2 Queryが指定したマルチキャストアドレスを受信する端末が存在しないことを確認してから、コンテンツの配信を停止する。すなわち、ルータは端末からの離脱要求を受信すると当該端末へのコンテンツの配信を即時停止するわけではなく、ルータ配下に収容されている複数の端末のうち、上記コンテンツを受信中の他の端末の存在の有無を十分に確認した上で、コンテンツの配信休止を決定する。他の端末の存在を確認するために要する時間は、例えばMLDv2の場合、ルータがMLDv2 Queryを送信してその応答を待つ必要があることから、秒オーダが必要となる。」

6.引用文献6について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6(特開2004-179811号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

L 「【0019】
マルチキャストルータ110のマルチキャストグループ管理部114は端末100がマルチキャストグループに参加しているかを把握するために、端末100の存在する回線116に対してマルチキャスト参加者がいるかどうかを定期的に確認している。端末100がマルチキャストグループに参加している場合には、端末100はその確認の問合せに対してそのマルチキャストグループへの参加要求を返答する。これらのやりとりに用いられるプロトコルは、ソース限定型マルチキャストの問い合わせの場合にはIGMPv3やMLDv2であり、ソース非限定型マルチキャストの場合にはIGMPv2やMLDv1である。既に端末100がそのマルチキャストグループには参加していない場合、端末100は何も返事を返さない。そのため回線116において一定時間マルチキャスト参加要求が途絶えると、マルチキャストルータ110は回線116にはそのマルチキャストグループに参加している端末が存在しないと判断して、送信元方向の隣接マルチキャストルータ121にそのマルチキャストグループからの離脱要求をPIM-SMなどのマルチキャストルーティングプロトコルを用いて送信する。」

7.引用文献7について

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7(特開2000-349818号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

M 「【0017】中継装置130は、このようなマルチキャストデータの配信を、joinメッセージを受信してから一定時間、又はpruneメッセージ等を受信するまで行う。よって、マルチキャストデータの配信を要求するクライアント140は、一定時間以上繰り返しjoinメッセージをサーバ110に送信しつづける必要がある。」


第6 対比・判断

1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「ルータ」,「スイッチ」,「マルチキャストパケット」,「PIM Joinメッセージ」はそれぞれ本願発明1の「通信装置」,「パケット伝送装置」,「マルチキャストパケット」,「参加要求」に相当する。

イ 引用発明の「スイッチ」は「各IPマルチキャストグループへのマルチキャストパケットを,グループに参加した受信機が下流側にあるマルチキャストルータのポートのみに制限して送信」するものであるから,上記アを踏まえると,引用発明と本願発明1とは,“マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数の通信装置と,前記複数の通信装置間を接続し,マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送する複数のパケット伝送装置と,を含むネットワークシステム”である点で一致するといえる。

ウ 引用発明は「PIM Joinメッセージを制限し,その受信を必要とするルータのみに転送する」ものであり,そのために「PIM Joinメッセージ」を「転送」するためのポートを当然に決定し,そのための手段を有すると解されるから,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“複数のパケット伝送装置のそれぞれ”が,“複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう,前記参加要求を転送するポートを決定する判定部”を有する点で共通するといえる。

エ 上記イを踏まえると,引用発明と本願発明1とは,後記する点で相違するものの,“複数のパケット伝送装置のそれぞれ”が,“マルチキャストグループのマルチキャストパケットを転送する転送部”を有する点で共通するといえる。

オ 上記アないしエの検討から,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「マルチキャストルーティングを行うことでマルチキャストパケットを送受信する複数の通信装置と,
前記複数の通信装置間を接続し,マルチキャストパケットを受信ポート以外のポートから転送する複数のパケット伝送装置と,
を含むネットワークシステムであって,
前記複数のパケット伝送装置のそれぞれは,
前記複数の通信装置のうちのいずれかから送信されるマルチキャストグループへの参加要求を転送できるよう,前記参加要求を転送するポートを決定する判定部と,
前記マルチキャストグループのマルチキャストパケットを転送する転送部と,
を備える,
ネットワークシステム。」

(相違点1)
複数のパケット伝送装置のそれぞれに関し,
本願発明1は,「前記複数の通信装置のうちマルチキャスト配信ツリーのランデブーポイントとなる通信装置のアドレスを記憶する第2の記憶部」を備えるのに対して,
引用発明は,複数のスイッチについてそのような特定はなされていない点。

(相違点2)
パケット伝送装置が備える判定部に関し,
本願発明1は,参加要求を転送するポートを,「自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに」決定するのに対して,
引用発明は,そのような特定はなされていない点。

(相違点3)
複数のパケット伝送装置のそれぞれに関し,
本願発明1は,「転送のため前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして記憶する第1の記憶部」を備えるのに対して,
引用発明は,複数のスイッチについてそのような特定はなされていない点。

(相違点4)
パケット伝送装置が備える送信部に関し,
本願発明1は,マルチキャストグループのマルチキャストパケットを,「自装置が有するポートのうちの前記転送ポートから」転送するのに対して,
引用発明は,そのような特定はなされていない点。

(相違点5)
本願発明1は,「パケット伝送装置の前記判定部は、前記複数の通信装置のうちのいずれかから,マルチキャストグループからの脱退要求を受信した場合には、前記脱退要求を転送できるよう、前記脱退要求を転送するポートを、自装置が有するポートのうちの前記ランデブーポイントが存在する側のポートのみに決定し、前記脱退要求を受信したポート以外に、前記第1の記憶部に、該脱退要求の対象であるマルチキャストグループへの参加要求に対応してマルチキャストパケットの転送ポートが記憶されている場合には、当該参加要求を送信した通信装置がマルチキャストパケットを受信できるよう該マルチキャストグループへの参加要求の作成及び送信を決定する」のに対して,
引用発明は,そのような特定はなされていない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点3ないし5は,マルチキャストパケットの転送ポートの設定に関するものであるから,まず以下でまとめて検討する。
本願発明は,「L2SWのフラッディングにより、該当のマルチキャストパケットを所望しない装置が接続されるポートからもマルチキャストパケットが転送されるので、回線の帯域が圧迫されることがあった」(段落【0004】)との課題を解決するために,「パケット伝送装置」の「第1の記憶部」において,「転送のため前記参加要求を受信した受信ポートを該マルチキャストグループのマルチキャストパケットの転送ポートとして記憶」し(相違点3に対応する構成),「転送部」において,「マルチキャストグループのマルチキャストパケットを、自装置が有するポートのうちの前記転送ポートから転送する」(相違点4に対応する構成)よう構成したものであり,すなわち,「複数の通信装置間を接続」する「複数のパケット伝送装置」のうち所望されていないポートからマルチキャストパケットが漏れることを防ぐという課題に対し課題解決手段を提供するものである。そして,上記相違点5に係る構成は 上記課題に対する上記課題解決手段を設けたことを前提に,「Pruneメッセージは、L2SW#8に届くものの、RPを接続するポートではないポートに接続するL3SW#8へはL2SW#8によって転送が阻止される。そのため、L3SW#8はPruneメッセージが他のL3SWから送信されたことを知ることができない。すなわち、図3に示されるようには、L3SW#8は他のL3SWからPruneメッセージを受信したことを契機にJoinメッセージを送信することができない」(段落【0047】)との不具合の発生に対処するための解決手段を提供するものと解することができる。
それに対し,引用発明は,スイッチのフラッディングについて言及がなく,また仮にスイッチのフラッディングを防止することが周知の課題であるとしても,フラッディングを防止するために解決手段をどのように設けるかは一意に決まらないから,当該周知の課題があることを前提に相違点3及び4に係る構成とする動機づけがあるとは認められず,ひいては,相違点3及び4に係る構成を設けたことを前提とする相違点5に係る構成とすることは到底想定し得ないから,そのための動機づけを見出すことはできない。
そうすると,引用発明に基づいて,相違点3ないし5に係る本願発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得ることであるとはいえない。

したがって,上記相違点1及び2について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし7に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし8について

本願発明6ないし8は,本願発明1と同様の構成を有するかカテゴリーが異なるだけであり,また,本願発明2ないし5は,本願発明1を更に限定したものであるので,本願発明1と同様の理由により,当業者であっても引用発明,引用文献2ないし7に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断

1.特許法第29条第2項について

原査定は,請求項1-3,6-8について上記引用文献1ないし5に基づいて,請求項4,5について上記引用文献1ないし7に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和2年3月13日付けの手続補正により補正された請求項1ないし8は,それぞれ相違点3ないし5に係る構成または同様の構成を有するものとなっており,
上記第6のとおり,本願発明1ないし8は,上記引用発明,引用文献2ないし7に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。


第8 当審拒絶理由について

1.特許法第36条第6項第2号について

当審拒絶理由通知で通知した上記第3の拒絶の理由(特許法第36条第6項第2号)は,令和2年3月13日付けの手続補正により,いずれも解消した。


第9 むすび

以上のとおり,本願発明1ないし8は,当業者が引用発明,引用文献2ないし7に記載された技術的事項,及び,周知技術に基づいて容易に発明することができたものではない。
したがって,原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-05-14 
出願番号 特願2014-69627(P2014-69627)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04L)
P 1 8・ 537- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 速水 雄太玉木 宏治  
特許庁審判長 田中 秀人
特許庁審判官 仲間 晃
山崎 慎一
発明の名称 ネットワークシステム、パケット伝送装置、パケット伝送方法、及び情報処理プログラム  
代理人 平川 明  
代理人 大竹 裕明  
代理人 高田 大輔  
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