ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A47C 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 A47C |
---|---|
管理番号 | 1362325 |
異議申立番号 | 異議2019-700593 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-07-29 |
確定日 | 2020-03-30 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6460954号発明「寝台装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6460954号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 特許第6460954号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 特許第6460954号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6460954号の請求項1?9に係る特許についての出願は、平成27年10月6日に特許出願され、平成31年1月11日に本件特許の設定登録がされ、同年1月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和1年7月29日に特許異議申立人株式会社プラッツ(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年10月25日付けで取消理由が通知され、同年12月27日に意見書の提出及び訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がされ、令和2年1月15日付けで手続補正指令(方式)がされ、同年1月22日に請求書の趣旨を補正する手続補正書が提出され、同年1月27日付けで異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知がされ(特許法第120条の5第5項)、同年2月26日に異議申立人より意見書が提出され、同年3月8日に異議申立人より先の意見書と共に提出された甲第10号証の公報番号が誤りであり、それを取り下げ、正しい公報番号の甲第11号証を提出する旨の上申書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 本件訂正請求の趣旨は、特許第6460954号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?9について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。なお、下線部が訂正箇所である。 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台と、 前記複数のボトムを支持する複数の第1フレームと、 前記複数の第1フレームを支持する第2フレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する報知部と、 を備え、 前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、前記第1発音期間よりも短い第2発音期間を含むブザー音を発し、 前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、前記第1部材の一部は湾曲しており、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ、 前記寝台の床からの最低高さは20cmよりも小さい ことを特徴とする電動ベッド。」 と記載されているのを 「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台と、 前記複数のボトムを支持する複数の第1フレームと、 前記複数の第1フレームを支持する第2フレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する報知部と、 を備え、 前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、前記第1発音期間よりも短い第2発音期間を含むブザー音を発し、 前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、前記第1部材の一部は湾曲しており、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ、 前記寝台の床からの最低高さは15cmであり、 前記第1部材は、湾曲する部分を含む第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続されることを特徴とする電動ベッド。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 本件訂正請求は、一群の請求項〔1?9〕に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1のうち、訂正前の「前記寝台の床からの最低高さは20cmよりも小さい」を「前記寝台の床からの最低高さは15cmであり」とする訂正(以下「訂正事項1-1」という。)は、「寝台の床からの最低高さ」を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1のうち、「第1部材」について、「前記第1部材は、湾曲する部分を含む第1部分と、2つの第2部分とを含み、前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続される」とする訂正(以下「訂正事項1-2」という。)は、「第1部材」の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 次に、訂正事項1-1は、訂正前の請求項9に記載された事項であり、訂正事項1-2は、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。)の特に段落【0078】及び願書に添付した図面の【図10】の記載より当業者にとって自明な事項であるので、訂正事項1は、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項を追加するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 3 異議申立人の主張について 異議申立人は、令和2年2月26日付けの意見書の「6.(1) 1)」、「6.(2)1)」において、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を変更するものである旨主張する。 しかしながら、上記(1)のとおり、訂正事項1は、特許請求の範囲の記載自体を訂正することによって特許請求の範囲を変更するもの(例えば、請求項に記載した事項を別の意味に表す表現に入れ替えることによって特許請求の範囲をずらす訂正)や、発明の対象を変更する訂正ではなく、実質上特許請求の範囲を変更するものではないので、上記主張は採用できない。 なお、異議申立人は、同意見書の「6.(1) 2)」、「6.(2) 2)」において、訂正後の特許請求の範囲各項に記載される発明は、進歩性を具備せず、独立特許要件を満たしていない旨も主張しているが、訂正前の全ての請求項が異議申立ての対象とされているため、訂正後の各請求項に対し独立特許要件は課されないので(特許法第120条の5第9項、同法第126条第7項参照。)、当該主張は、取消理由を有する旨の誤記であるものとして取り扱う。 4 小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?9〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?8に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。なお、上記「第2」のとおり請求項9は削除されている。 「【請求項1】 背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台と、 前記複数のボトムを支持する複数の第1フレームと、 前記複数の第1フレームを支持する第2フレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する報知部と、 を備え、 前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、前記第1発音期間よりも短い第2発音期間を含むブザー音を発し、 前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、前記第1部材の一部は湾曲しており、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ、 前記寝台の床からの最低高さは15cmであり、 前記第1部材は、湾曲する部分を含む第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続されることを特徴とする電動ベッド。 【請求項2】 前記ブザー音の前記パターンが、前記第1発音期間を含む第1パターンと、前記第2発音期間を含み前記第1パターンと異なる第2パターンとを含む ことを特徴とする請求項1に記載の電動ベッド。 【請求項3】 前記寝台が下降する際に、前記第1高さになると、前記寝台の下降が一旦停止し、前記報知部は前記第1パターンのブザー音を発し、 前記寝台が再度下降する間、前記報知部が、前記第2パターンのブザー音を発し続ける ことを特徴とする請求項2に記載の電動ベッド。 【請求項4】 前記制御部に接続する操作部を更に備え、 前記操作部は、前記寝台を下降させる下降スイッチと、前記寝台を上昇させる上昇スイッチとを含む ことを特徴とする請求項3に記載の電動ベッド。 【請求項5】 前記下降スイッチが押下されている間、前記寝台の前記床からの高さが前記第1高さよりも高いときに、前記寝台が下降する ことを特徴とする請求項4に記載の電動ベッド。 【請求項6】 前記操作部は、さらに、背上げスイッチと、背下げスイッチと、脚下げスイッチと、脚上げスイッチとを含む ことを特徴とする請求項5に記載の電動ベッド。 【請求項7】 前記操作部は、さらに、背上げスイッチと、背下げスイッチと、脚下げスイッチと、脚上げスイッチとを含む ことを特徴とする請求項4に記載の電動ベッド。 【請求項8】 前記報知部は、スピーカを備え、 前記スピーカは、前記寝台の前記床からの高さに応じて異なるパターンの音を発する ことを特徴とする請求項2に記載の電動ベッド。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 訂正前の請求項1?9に係る特許に対して、当審が令和1年10月25日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1?9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術的事項(ないし周知・慣用技術)に基いて、当業者が容易に想到することができたものである。 よって、請求項1?9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 引用文献 甲第1号証:取扱説明書 在宅ケアベッド 楽匠Sシリーズ, パラマウントベッド株式会社 甲第2号証:電動在宅看護ベッド NX-1・NX-2 和夢彩 取扱説明 書,シーホネンス株式会社 ここで、甲第1号証の裏表紙の右下に「’12.03」との記載があり、西暦を略記する場合、「’」を付して下2桁で表記することは常識的なことであるから、甲第1号証は、本件出願前の2012年3月に公知になったものと推認される。また、甲第2号証の裏表紙の右下に「2014.07.01」との記載があり、本件出願前の2014年7月1日に公知になったものと推認される。 3 引用文献の記載事項及び記載された発明等 (1)甲第1号証について ア 記載事項 甲第1号証には次の記載がある(かっこ書きで取扱説明書の頁番号を併記する。なお、手書きの文字等は、異議申立人が付加したものである。甲第2号証も同様。)。 (1a)2枚目(5頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1b)3枚目(23頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1c)4枚目(24頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1d)5枚目(25頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1e)6枚目(48頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1f)7枚目(49頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1g)8枚目(51頁)には次の図面及び説明文の記載ある。 (1h)9枚目(53頁)には次の図面及び説明文の記載ある。 (1i)10枚目(59頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 なお、一番下の図面に、異議申立人が引き出し線と「頭側フレームB」との記載を付加しているが、引き出し線の開始位置の部材は、上記(1e)?(1g)から「足側フレーム」であると認められる。 (1j)11枚目(60頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1k)12枚目(61頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 (1l)13枚目(101頁)の下段の「電装品」の表の「形式」の欄には「リニアアクチュエーター(DCモーター)」と記載されている。 イ 認定事項 上記アの記載事項に加え、以下の事項が認定できる。 (1m)上記(1l)より、甲第1号証の「ベッド」は「電動ベッド」であることが明らかである。 (1n)上記(1a)より、「背ボトム」、「キューマボトム」、「膝ボトム」、「足ボトム」からなるものは、「寝台」といえるものである。 (1o)上記(1g)、(1j)より、「頭側フレーム」の「リトラフレーム」は、「背ボトム」を支持するといえる。 (1p)上記(1i)より、「頭側フレーム」の「リトラフレーム」及び「足側フレーム」は、「キューマボトム」を支持するといえる。 (1q)上記(1k)より、「足側フレーム」は、「膝ボトム」及び「足ボトム」を支持するといえる。 (1r)上記(1e)?(1g)より、「ベースフレーム」は、「頭側フレーム」及び「足側フレーム」を支持するといえる。 (1s)上記(1c)の「■低床位置のお知らせ」欄の図面に示される動作をするためには、ゆかからベッドのボトム上面までの高さを調節する「駆動機構」といえるものが備えられていることは技術的に明らかといえ、上記(1n)も踏まえると、「寝台を移動させる駆動機構」を認定できる。 (1t)上記(1a)、(1h)の「コントロールボックス」の中には「制御部」といえるものが収められていることは技術的に明らかである。そして、当該「制御部」は、上記(1s)の「駆動機構」に接続するものであることは、上記(1a)下方の「アクチュエーターケーブルのコネクター差込部」との記載及び電動ベッドの技術常識から明らかといえる。 (1u)上記(1a)の「手元スイッチ」は、上記(1t)の「制御部」に接続するものであることも、上記(1a)下方の「手元スイッチコネクター差込部」及び上記(1h)下方の「手元スイッチコード」との記載から技術的に明らかといえる。そして、上記(1c)の「■低床位置のお知らせ」欄の図面には「ピッ!」というブザー音と、「ピピッ!」、「ピピッ!」というブザー音が「手元スイッチ」からの吹き出し内に記載されていることから、「手元スイッチ」が「ブザー」を有することは明らかといえる。 (1v)電動ベッドの技術常識を参酌し、上記(1s)も併せると、上記(1e)の一番下の図面に対し、当審が破線矢印及び枠囲みの文字を付加した次の参考図1に記載した部材が、甲第1号証に示されているといえる。 〔参考図1〕 (1w)上記(1v)の各部材について、「ベースフレームには、平面視において前記ベースフレームのベッド幅方向に延びる甲1第1部材が設けられ、前記ベースフレームは、前記ベッド幅方向に交差するベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2部材と、前記甲1第2部材に設けられた脚座とを備え、前記ベースフレームに、前記第ベッド幅方向に延びる甲1第3部材が設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第1リンクが前記甲1第3部材に設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2リンクが前記甲1第1部材に設けられ、前記甲1第1部材は前記甲1第3部材よりもベッドの頭側に設けられ」ていることが認定できる。 さらに、上記(1v)の各部材について、上記(1f)も踏まえると、「甲1第1部材は、甲1第1部材第1部分と、2つの甲1第1部材第2部分とを含み、前記甲1第1部材第2部分それぞれは、下側で前記甲1第1部材第1部分に接続され、上側で足側フレームに接続される」ことも認定できる。 ウ 甲1発明 上記ア、イより、甲第1号証には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。 「背ボトム、キューマボトム、膝ボトム、足ボトムからなる寝台と、 前記背ボトムを支持する頭側フレームのリトラフレーム、前記キューマボトムを支持する前記頭側フレームの前記リトラフレーム及び足側フレーム、膝ボトム及び足ボトムを支持する前記足側フレームと、 前記頭側フレーム及び前記足側フレームを支持するベースフレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する、ブザーを有する手元スイッチと、 を備え、 ベッドの高さをさげる場合、ゆかからボトム上面までの高さが約28cmで、『ピッ!』というブザー音を鳴らして一旦停止し、 再度、手元のスイッチの高ささげボタンを押すと、『ピピッ!』というブザー音を繰り返し鳴らしながら最低高さ(約20cm)までさがり、 前記ベースフレームには、平面視において前記ベースフレームのベッド幅方向に延びる甲1第1部材が設けられ、前記ベースフレームは、前記ベッド幅方向に交差するベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2部材と、前記甲1第2部材に設けられた脚座とを備え、前記ベースフレームに、前記第ベッド幅方向に延びる甲1第3部材が設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第1リンクが前記甲1第3部材に設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2リンクが前記甲1第1部材に設けられ、前記甲1第1部材は前記甲1第3部材よりもベッドの頭側に設けられ、 ゆかからベッドのボトム上面までの高さを、約20cmから約65cmまで調節でき、 前記甲1第1部材は、甲1第1部材第1部分と、2つの甲1第1部材第2部分とを含み、 前記甲1第1部材第2部分それぞれは、下側で前記甲1第1部材第1部分に接続され、上側で足側フレームに接続される電動ベッド。」 (2)甲第2号証について ア 記載事項 甲第2号証には次の記載がある。 (2a)2枚目の左側頁の上段には「『電動在宅介護ベッド 和夢シリーズ“彩”NX-1・NX-2』は、ベッドを使用する方の動作を助けること、介護する方の介護負担を軽減することを目的として作られたベッドです。」との記載がある。 (2b)2枚目の左側頁の下段には「2.手元スイッチ操作でベストポジションを自在にコントロールできます。ボトム角度、高さ調節を無段階に調節できます。・・・」(なお、黒塗りの菱形は省略した。以下同様。)との記載がある。 (2c)2枚目の右側頁の中段には「4.低床25cm。(ゆかからボトム上面までの高さを示しています)・・・最高床高67.5cm(マットレスを除く)まで上がり、介護する方の腰痛を予防し、介護の負担を軽減します。」、「5.高性能リニアアクチュエーターを採用しています。・・・万一の漏電にも安全な『低電圧DC24Vシステム』。・・・」との記載がある。 (2d)3枚目の左側頁(21頁)及び右側頁(22頁)には次の図面及び説明文の記載がある。 イ 認定事項 上記アの記載事項に加え、以下の事項が認定できる。 (2e)上記(2b)、(2c)より、甲第2号証の「ベッド」は「電動ベッド」であることが明らかである。また、上記(2d)の「ハイローベースユニット」は「電動ベッド」の高さ調節を行うものであることも技術的に明らかである。 (2f)電動ベッドの技術常識を参酌し、上記(2e)も併せると、上記(2d)の「○1ハイローベースユニットに脚座を差し込む(4箇所)」(丸囲みの1は「○1」と代用表記とした。)欄の図面に対し、当審が破線矢印及び枠囲みの文字を付加した次の参考図2に記載した部材が、甲第2号証に示されているといえる。 〔参考図2〕 (2g)上記(2d)の左側頁(21頁)の一番上の「Point」欄の図面の「あたま側」、「あし側」の記載も併せると、上記(2f)の「甲2第1部材」は「甲2第3部材」よりも「あたま側」に設けられていることが把握できる。また、上記(2f)より、当該「甲2第1部材」の一部が下方に湾曲していること、及び、「甲2第1部材第1部分」が下方に湾曲する部分を含むことが看取できる。 (2h)「甲2第1リンク」と「甲2第2リンク」が交差する「甲2第1リンク」の箇所に、上記(2d)において、丸形状に記載された部材(異議申立人が「ピン」と付記した部分)が記載されており、Xリンク機構の技術常識を勘案すれば、当該部材は両リンクを結合する部材であり、それにより両リンクが連結されていることは自明といえる。 (2i)上記(2f)?(2h)より、上記(2f)、(2h)の各部材について、「ハイローベースユニットには、平面視において前記ハイローベースユニットのベッド幅方向に延びる甲2第1部材が設けられ、前記甲2第1部材の一部は下方に湾曲しており、前記ハイローベースユニットは、前記ベッド幅方向に交差するベッド長さ方向に延びる2本の甲2第2部材と、前記甲2第2部材に設けられた脚座とを備え、前記ハイローベースユニットに、前記第ベッド幅方向に延びる甲2第3部材が設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲2第1リンクが前記甲2第3部材に設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲2第2リンクが前記甲2第1部材に設けられ、前記甲2第1部材は前記甲2第3部材よりもベッドの頭側に設けられ、それぞれの前記甲2第1リンクと前記甲2第2リンクを結合する部材で連結」すること、及び、「前記甲2第1部材は、下方に湾曲する部分を含む甲2第1部材第1部分と、2つの甲2第1部材第2部分とを含む」ことが認定できる。 (2h)上記(2c)の「4.」の記載から、「ボトム上面のゆかからの最低床高は25cm」であることが認定できる。 ウ 甲2技術 上記ア、イより、甲第2号証には次の技術的事項(以下「甲2技術」という。)が記載されているものと認める。 「ハイローベースユニットにより高さ調節を無段階に調節できる電動ベッドにおいて、 前記ハイローベースユニットには、平面視において前記ハイローベースユニットのベッド幅方向に延びる甲2第1部材が設けられ、前記甲2第1部材の一部は下方に湾曲しており、前記ハイローベースユニットは、前記ベッド幅方向に交差するベッド長さ方向に延びる2本の甲2第2部材と、前記甲2第2部材に設けられた脚座とを備え、前記ハイローベースユニットに、前記第ベッド幅方向に延びる甲2第3部材が設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲2第1リンクが前記甲2第3部材に設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲2第2リンクが前記甲2第1部材に設けられ、前記甲2第1部材は前記甲2第3部材よりもベッドの頭側に設けられ、それぞれの前記甲2第1リンクと前記甲2第2リンクを結合する部材で連結し、 ボトム上面のゆかからの最低床高は25cmであり、 前記甲2第1部材は、下方に湾曲する部分を含む甲2第1部材第1部分と、2つの甲2第1部材第2部分とを含む」技術。 4 対比・判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)後者の「背ボトム」は前者の「背ボトム」に相当し、同様に、「キューマボトム」は「腰ボトム」に相当する。 また、前者の「脚ボトム」について検討するに、具体的には「脚ボトム18」は「膝ボトム19」と「足ボトム20」からなるものであるから(本件特許明細書の段落【0055】)、後者の「膝ボトム」と「足ボトム」を併せたものは、前者の「脚ボトム」に相当するといえる。 そうすると、後者の「背ボトム、キューマボトム、膝ボトム、足ボトムからなる寝台」は、前者の「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台」に相当するといえる。 (イ)前者の「前記複数のボトムを支持する複数の第1フレーム」について検討するに、具体的には「背ボトム16」は「頭側フレーム37」の「リトラフレーム39」に固定されるものであり(本件特許明細書の段落【0065】)、「腰ボトム17」は「頭側フレーム37」の「リトラフレーム39」と「足側フレーム38」の「固定部材45」に固定されるものであり(同段落【0070】、【0075】)、「脚ボトム18」は「足側フレーム38」の「固定部材45」に固定されるものである。 そうすると、後者の「頭側フレーム」と「足側フレーム」を併せたものが、前者の「複数の第1フレーム」に相当するといえるから、後者の「前記背ボトムを支持する頭側フレームのリトラフレーム、前記キューマボトムを支持する前記頭側フレームの前記リトラフレーム及び足側フレーム、膝ボトム及び足ボトムを支持する前記足側フレーム」は、前者の「前記複数のボトムを支持する複数の第1フレーム」に相当するといえる。 (ウ)上記(イ)を踏まえると、後者の「ベースフレーム」は、前者の「第2フレーム」に相当するといえるから、後者の「前記頭側フレーム及び前記足側フレームを支持するベースフレーム」は、前者の「前記複数の第1フレームを支持する第2フレーム」に相当するといえる。 (エ)上記(ア)を踏まえると、後者の「前記寝台を移動させる駆動機構」は、前者の「前記寝台を移動させる駆動機構」に相当するといえ、同様に、「前記駆動機構に接続する制御部」は、前者の「前記駆動機構に接続する制御部」に相当するといえる。 (オ)後者の「ブザー」は、前者の「報知部」に相当する。そして、本件特許の請求項1には「報知部」の配置箇所の特定はない。 そうすると、後者の「前記制御部に接続する、ブザーを有する手元スイッチ」は、前者の「前記制御部に接続する報知部」という事項を満たすといえる。 (カ)後者の「『ピッ!』というブザー音を鳴ら」すことと、「『ピピッ!』というブザー音を繰り返し鳴ら」すことは、異なるパターンのブザー音であることは明らかである。また、それぞれのブザー音は発音期間を有することは明らかであり、それぞれ、前者の「第1発音期間」、「第2発音期間」に相当する。また、後者の高さをさげるときの「ゆかからボトム上面までの高さが約28cm」は、前者の「予め設定された第1高さ」に相当し、同様に、「ゆかからボトム上面までの高さが約28cm」の高さから、「最低高さ(約20cm)」までの高さは、「第1高さより低い第2高さ」に相当するといえる。 そうすると、後者の 「ベッドの高さをさげる場合、ゆかからボトム上面までの高さが約28cmで、『ピッ!』というブザー音を鳴らして一旦停止し、 再度、手元のスイッチの高ささげボタンを押すと、『ピピッ!』というブザー音を繰り返し鳴らしながら最低高さ(約20cm)までさがり」 ということと、前者の 「前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、前記第1発音期間よりも短い第2発音期間を含むブザー音を発し」 ているということとは、 「前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、第2発音期間を含むブザー音を発し」 ているということにおいて共通するといえる。 (キ)後者の「ベッド幅方向」は前者の「第1方向」に相当し、以下同様に、「甲1第1部材」は「第1部材」に、「ベッド長さ方向」は「第2方向」に、「甲1第2部材」は「第2部材」に、「脚座」は「脚部材」に、「甲1第1リンク」は「第1リンク」に、「甲1第2リンク」は「第2リンク」にそれぞれ相当する。 そうすると、上記(ウ)も踏まえると、後者の 「前記ベースフレームには、平面視において前記ベースフレームのベッド幅方向に延びる甲1第1部材が設けられ、前記ベースフレームは、前記ベッド幅方向に交差するベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2部材と、前記甲1第2部材に設けられた脚座とを備え、前記ベースフレームに、前記第ベッド幅方向に延びる甲1第3部材が設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第1リンクが前記甲1第3部材に設けられ、前記ベッド長さ方向に延びる2本の甲1第2リンクが前記甲1第1部材に設けられ、前記甲1第1部材は前記甲1第3部材よりもベッドの頭側に設けられ」 るということと、前者の 「前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、前記第1部材の一部は湾曲しており、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ」 るということとは、 「前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ」 るということにおいて共通するといえる。 (ク)後者の「甲1第1部材第1部分」は前者の「第1部分」に相当し、同様に、「甲1第1部材第2部分」は「第2部分」に相当する。 そうすると、上記(イ)、(キ)も踏まえると、後者の 「前記甲1第1部材は、甲1第1部材第1部分と、2つの甲1第1部材第2部分とを含み、 前記甲1第1部材第2部分それぞれは、下側で前記甲1第1部材第1部分に接続され、上側で足側フレームに接続される」 ということと、前者の 「前記第1部材は、湾曲する部分を含む第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続される」 ということとは、 「前記第1部材は、第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続される」 ということにおいて共通するといえる。 (ケ)したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりと認める。 〔一致点〕 「背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台と、 前記複数のボトムを支持する複数の第1フレームと、 前記複数の第1フレームを支持する第2フレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する報知部と、 備え、 前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、第2発音期間を含むブザー音を発し、 前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ、 前記第1部材は、第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続される電動ベッド。」 〔相違点1〕 「第1発音期間」、「第2発音期間」の関係について、本件発明1が、「第1発音期間よりも短い第2発音期間を含む」というものであるのに対し、甲1発明では、「『ピッ!』というブザー音」における発音期間と「『ピピッ!』というブザー音」における発音期間の長短関係が明らかでない点。 〔相違点2〕 「第2フレーム」について、本件発明1が、「前記第1部材の一部は湾曲しており」、「第1部材」の「第1部分」は「湾曲する部分を含む」ものであり、「それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し」ているのに対し、甲1発明の「甲1第1部材」は湾曲しておらず、「甲1第1部材」の「甲1第1部材第1部分」は湾曲する部分を含まず、「甲1第1リンク」と「甲1第2リンク」を固定部材で連結していることの特定がない点。 〔相違点3〕 本件発明1が、「前記寝台の床からの最低高さは15cmであ」るのに対し、甲1発明は、「ゆかからベッドのボトム上面までの高さを、約20cmから約65cmまで調節できる」点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点2及び3について検討する。 (ア)まず、相違点3に係る本件発明1の「寝台の床からの最低高さ」について検討するに、本件特許明細書の段落【0035】に「寝台200の下降可能な下限の高さである最低床高」、同【0039】に「寝台200の床からの高さが最低床高となると」、同【0050】に「寝台200の床からの高さが下降可能な高さの下限である最低床高となったかを判断する」との記載があるが、寝台(背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備えるものである。)の高さ方向におけるどの位置を基準としているのか明確な定義はされていない。 ここで、本件発明1と同一技術分野の商品の取扱説明書である甲第1号証や甲第2号証において、床高について、床からボトム上面の高さと定義していること(記載事項(1c)、(2c)参照。)、及び、令和1年12月27日付けの意見書の6頁18?19行において「例えば、寝台の床からの最低高さが20cmの甲1発明を寝台の床からの高さを15cmの本件発明1に変更できるか具体的に検討する。」と特許権者が主張していることから、本件発明1における「寝台の床からの最低高さ」とは、甲第1号証や甲第2号証の定義と同様のものと解される。 そうすると、上記相違点3は、「『寝台の床からの最低高さ』について、本件発明1が、『15cm』であるのに対し、甲1発明は、『約20cm』である点。」と言い換えることができる。 (イ)次に、相違点2に関して、甲1発明への甲2技術の適用について検討する。 甲2技術の「ハイローベースユニット」は、「甲2第1部材」、「甲2第3部材」、「甲2第1リンク」、「甲2第2リンク」が設けられるところ、これらの部材が設けられる「フレーム」といえるものを有することは明らかであり、それは本件発明1の「第2フレーム」に相当する。 そして、後者の「ベッド幅方向」は前者の「第1方向」に相当し、以下同様に、「甲2第1部材」は「第1部材」に、「ベッド長さ方向」は「第2方向」に、「甲2第2部材」は「第2部材」に、「甲2第3部材」は「第3部材」に、「脚座」は「脚部材」に、「甲2第1リンク」は「第1リンク」に、「甲2第2リンク」は「第2リンク」に、「結合する部材」は「固定部材」に、「甲2第1部材第1部分」は「第1部分」に、「甲2第1部材第2部分」は「第2部分」にそれぞれ相当する。 そうすると、甲2技術は、上記相違点2に係る本件発明1の、「前記第1部材の一部は湾曲しており」、「第1部材」の「第1部分」は「湾曲する部分を含む」ものであり、「それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し」ているという発明特定事項に相当する構成を一応有しているといえる。 しかしながら、甲2技術の「甲2第1部材の一部」及び「甲2第1部材第1部分」が湾曲する具体的な方向は「下方」であって、甲1発明に甲2技術を適用したのであれば、「甲1第1部材の一部」は下方に湾曲し、「甲1第1部材」の「甲1第1部材第1部分」は下方に湾曲する部分を含むことになる。 ここで、相違点3に係る「寝台の床からの最低高さ」を、甲1発明の「約20cm」から本件発明1の「15cm」に変更すること、すなわち、更なる低床化を図ることを検討すると、甲1発明の「甲1第1部材」は「前記甲1第1部材第2部分それぞれは、下側で前記甲1第1部材第1部分に接続され、上側で足側フレームに接続される」ものであるところ、上記適用によって「甲1第1部材第1部分」に生じた下方に湾曲する部分は、「甲1第1部材第1部分」よりさらに下方に突出する部分となるため、「甲1第1部材」の下方にある部材との干渉の可能性を考慮すれば、上記適用は低床化に不利となることは構成上自明のことといえる(なお、甲2技術の「最低床高」は「25cm」であり、甲1発明よりさらに高いものである。)。 (ウ)以上検討したとおりであるから、甲1発明において、寝台の床からの最低高さを「約20cm」から「15cm」に変更しようとする際に、甲1発明に甲2技術を採用しようとする動機付けがあるとはいえず、むしろ阻害要因があるともいえる。 したがって、甲1発明において、上記相違点2、3の両者に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たとはいえない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2技術(ないし周知・慣用技術)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項に規定する要件を満たしていないとはいえない。 (2)本件発明2?8について 本件発明2?8は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるので、本件発明1と同様の理由により、甲1発明(ないし甲第1号証にさらに記載された発明)及び甲2技術(ないし周知・慣用技術)に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項9に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、異議申立人による特許異議の申立てについて、請求項9に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 背ボトム、腰ボトム、脚ボトムを含む複数のボトムを備える寝台と、 前記複数のボトムを支持する複数の第1フレームと、 前記複数の第1フレームを支持する第2フレームと、 前記寝台を移動させる駆動機構と、 前記駆動機構に接続する制御部と、 前記制御部に接続する報知部と、 を備え、 前記報知部は、前記寝台を下降させる際に、前記寝台の床からの高さに基づいて異なるパターンのブザー音を発し、 前記報知部は、 前記床からの前記寝台の高さが予め設定された第1高さのとき、第1発音期間を含むブザー音を発し、 前記床からの前記寝台の高さが前記第1高さよりも低い第2高さのとき、前記第1発音期間よりも短い第2発音期間を含むブザー音を発し、 前記第2フレームには、平面視において前記第2フレームの第1方向に延びる第1部材が設けられ、前記第1部材の一部は湾曲しており、 前記第2フレームは、前記第1方向に交差する第2方向に延びる2本の第2部材と、前記第2部材に設けられた脚部材とを備え、 前記第2フレームに、前記第1方向に延びる第3部材が設けられ、前記第2方向に延びる2本の第1リンクが前記第3部材に設けられ、前記第2方向に延びる2本の第2リンクが前記第1部材に設けられ、 それぞれの前記第1リンクと前記第2リンクを固定部材で連結し、 前記第1部材は前記第3部材よりも電動ベッドの頭側に設けられ、 前記寝台の床からの最低高さは15cmであり、 前記第1部材は、湾曲する部分を含む第1部分と、2つの第2部分とを含み、 前記第2部分それぞれは、下側で前記第1部分に接続され、上側で前記複数の第1フレームの1つに接続されることを特徴とする電動ベッド。 【請求項2】 前記ブザー音の前記パターンが、前記第1発音期間を含む第1パターンと、前記第2発音期間を含み前記第1パターンと異なる第2パターンとを含む ことを特徴とする請求項1に記載の電動ベッド。 【請求項3】 前記寝台が下降する際に、前記第1高さになると、前記寝台の下降が一旦停止し、前記報知部は前記第1パターンのブザー音を発し、 前記寝台が再度下降する間、前記報知部が、前記第2パターンのブザー音を発し続ける ことを特徴とする請求項2に記載の電動ベッド。 【請求項4】 前記制御部に接続する操作部を更に備え、 前記操作部は、前記寝台を下降させる下降スイッチと、前記寝台を上昇させる上昇スイッチとを含む ことを特徴とする請求項3に記載の電動ベッド。 【請求項5】 前記下降スイッチが押下されている間、前記寝台の前記床からの高さが前記第1高さよりも高いときに、前記寝台が下降する ことを特徴とする請求項4に記載の電動ベッド。 【請求項6】 前記操作部は、さらに、背上げスイッチと、背下げスイッチと、脚下げスイッチと、脚上げスイッチとを含む ことを特徴とする請求項5に記載の電動ベッド。 【請求項7】 前記操作部は、さらに、背上げスイッチと、背下げスイッチと、脚下げスイッチと、脚上げスイッチとを含む ことを特徴とする請求項4に記載の電動ベッド。 【請求項8】 前記報知部は、スピーカを備え、 前記スピーカは、前記寝台の前記床からの高さに応じて異なるパターンの音を発する ことを特徴とする請求項2に記載の電動ベッド。 【請求項9】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-03-17 |
出願番号 | 特願2015-198765(P2015-198765) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A47C)
P 1 651・ 851- YAA (A47C) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小原 正信 |
特許庁審判長 |
藤井 昇 |
特許庁審判官 |
一ノ瀬 覚 岡▲さき▼ 潤 |
登録日 | 2019-01-11 |
登録番号 | 特許第6460954号(P6460954) |
権利者 | パラマウントベッド株式会社 |
発明の名称 | 寝台装置 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |
代理人 | 日向寺 雅彦 |
代理人 | 小崎 純一 |
代理人 | 小崎 純一 |
代理人 | 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所 |
代理人 | 市川 浩 |
代理人 | 市川 浩 |