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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G09F |
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管理番号 | 1362370 |
異議申立番号 | 異議2019-700907 |
総通号数 | 246 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-06-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-14 |
確定日 | 2020-05-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6541757号発明「再剥離ラベルおよびその製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6541757号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6541757号(請求項の数4。以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成29年12月1日に出願されたものであって,令和1年6月21日にその特許権の設定登録がされた。 令和1年7月10日に本件特許について特許掲載公報の発行がなされたところ,同年11月14日に特許異議申立人(以下,「申立人」という。)より請求項1ないし4に係る特許について本件特許異議の申立てがされた。 2 本件特許の各請求項に係る発明について (1) 本件特許の請求項1ないし4に係る発明(以下,それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明4」といい,これらを総称して「本件特許発明」という。)は,それぞれ,特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,当該請求項1ないし4の記載は,次のとおりである。 「【請求項1】 両面に印刷された不透明層と,透明層の一面とが接着層で接着され,前記透明層の他面に再剥離可能な再剥離貼着層が設けられた再剥離ラベルの製造方法であって, 前記不透明層に印刷する印刷工程と, 前記透明層の他面が前記再剥離貼着層を介して台紙に貼り着けられた状態でこれを供給する透明層供給工程と, 前記再剥離貼着層および前記透明層を前記台紙から剥離する剥離工程と, 剥離した前記再剥離貼着層および前記透明層と前記台紙とを再貼り付けする再貼工程と, 前記接着層を形成する接着層形成工程と, 前記接着層により前記不透明層と前記透明層とを接着する接着工程と, 前記不透明層と前記接着層と前記透明層と前記再剥離貼着層とを打ち抜いてラベル輪郭を形成する打ち抜き工程と, を有し, 前記剥離工程の後に 前記再剥離貼着層と前記台紙との間に糊殺し層を形成する糊殺し工程を有するとともに, 前記糊殺し工程において,前記糊殺し層が前記ラベル輪郭に対して一部分のみ形成されることを特徴とする再剥離ラベルの製造方法。 【請求項2】 前記接着層がUV硬化接着剤からなり,前記接着層形成工程の後に, UV照射して前記接着層を硬化するUV照射工程を有することを特徴とする請求項1記載の再剥離ラベルの製造方法。 【請求項3】 前記接着層が透明接着剤からなるとともに前記再剥離貼着層が透明層とされることを特徴とする請求項1または2記載の再剥離ラベルの製造方法。 【請求項4】 前記糊殺し工程において, 前記糊殺し層が前記ラベル輪郭の所定部分に接して形成されることを特徴とする請求項1記載の再剥離ラベルの製造方法。」 (2) なお,本件特許発明の「再剥離」とは,どのような剥離を指すのか,各請求項の記載からは,明確には理解し難いことから,本件特許明細書の記載を参酌すると,【0002】ないし【0004】には「販売キャンペーンなどの目的で,缶容器表面に貼り着けられるとともに,購入者が再剥離して裏面の情報を確認可能となっているラベルが知られている(特許文献1)。・・・(中略)・・・特許文献に記載された技術では,購入者が再剥離する際に,ラベルが剥がしにくいためこれを解決したいという要求があった。」と記載され,【0063】及び【0064】には「本実施形態における再剥離ラベル10は,まず,台紙18から剥離して,透視できない不透明な材質からなる缶容器等の側面などに貼り着けられて,表印刷層17として印刷されたキャンペーン内容などの視認情報を視認可能な状態とされる。・・・(中略)・・・さらに,缶容器(被着体)などの購入者が,再剥離ラベル10を指や爪などで缶容器表面から再剥離することにより,裏印刷層15として印刷されたキャンペーン内容などの視認情報を視認可能とされる。」と記載されている。これらの記載から,本件特許明細書においては,缶容器等の被着体に貼着するために,ラベルを台紙から剥がすことを「剥離」と表現し,被着体に貼着されたラベルを当該被着体から剥がすことを「再剥離」と表現しているものと理解されるから,本件特許発明の「再剥離」とは,被着体に貼着されたラベルを当該被着体から剥がすことを指していると解するのが相当である。 3 申立ての理由の概要 申立人は,甲1ないし甲6を提出した上で,特許異議申立書において,本件特許発明1ないし4は,甲1に記載された発明及び周知技術(周知例:甲2ないし甲6)に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,取り消すべきである旨主張している。 申立人が提出した甲1ないし甲6は,次のとおりである。 甲1:特開2010-20155号公報 甲2:特開2005-157192号公報 甲3:特開2002-258747号公報 甲4:特開2004-226547号公報 甲5:特開2010-39165号公報 甲6:特開2006-145974号公報 4 甲1 (1)甲1の記載 甲1は,本件特許に係る出願の出願前である平成22年1月28日に日本国内において頒布された刊行物であるところ,当該甲1には,次の記載がある。(なお,下線は,後述する甲1発明の認定の根拠となる箇所を示すために,付したものである。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,販売促進キャンペーンなどに用いられるラベルおよびその製造方法に関し,特に商品等の被着体に貼付される裏面側に視認可能な情報,例えば当落を示す情報や応募用のシリアルナンバ等が表示されたラベルおよびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来,商品の販売促進のために,商品の購入者が応募することにより,種々の商品が当たるといったキャンペーンが行われている。このようなキャンペーンには,裏面に当落を示す情報や応募用のシリアルナンバ等が表示されたラベルが用いられ,商品に貼付されたラベルを購入者が剥がすことで,当落の確認や,応募用のシリアルナンバを取得することができるようになっている(例えば,特許文献1参照)。 【0003】 しかしながら,従来技術では,ラベルの裏面に各種情報を表示するために,ラベルの裏面に各種情報を印刷する工程と,各種情報が印刷された裏面に商品に貼付するための粘着剤を塗布する工程とが必要となる。従って,ラベルを構成するラベル基材として,裏面に各種情報が印刷されても,当該印刷が表面に透過しない特殊な基材を選択しなければならず,コスト高になってしまうと共に,裏面に粘着剤を塗布する設備がなければならないため,小ロットでは,コスト高になってしまうという問題点があった。 【0004】 【特許文献1】特開2002-258747号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は斯かる問題点に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,ラベル基材の選定が容易であると共に,粘着剤を塗布する設備を必要とすることなく,裏面に各種情報を表示させることができ,低コストを実現することができるラベルおよびその製造方法を提供する点にある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 ・・・(中略)・・・ また請求項3記載の発明の要旨は,被着体に貼付される裏面側から視認可能な裏面表記が表示されたラベルの製造方法であって,半透明もしくは透明な第1のラベル基材の裏面に塗布された第1の粘着剤によって第1の剥離基材が仮着されている第1のラベル原紙を供給する第1の供給工程と,前記第1のラベル原紙の表面に前記裏面表記を左右逆像で印刷する裏面表記印刷工程と,不透過性の第2のラベル基材の裏面に塗布された第2の粘着剤によって第2の剥離基材が仮着されている第2のラベル原紙を供給する第2の供給工程と,前記第2のラベル原紙から前記第2の剥離基材を剥離する剥離工程と,裏面表記印刷工程によって前記裏面表記が左右逆像で印刷された前記第1のラベル原紙の表面に,前記剥離工程によって前記第2の剥離基材が剥離された前記第2のラベル原紙を前記第2の粘着剤を用いて貼り合わせる貼り合わせ工程と,前記第1のラベル基材および前記第2のラベル基材を所定の形状に切断する切断工程とを有することを特徴とするラベルの製造方法に存する。 【発明の効果】 【0007】 ・・・(中略)・・・ 【0009】 また,本発明のラベルの製造方法は,半透明もしくは透明な第1のラベル基材の裏面に塗布された第1の粘着剤によって第1の剥離基材が仮着されている第1のラベル原紙を供給する第1の供給工程と,第1のラベル原紙の表面に裏面表記を左右逆像で印刷する裏面表記印刷工程と,不透過性の第2のラベル基材の裏面に塗布された第2の粘着剤によって第2の剥離基材が仮着されている第2のラベル原紙を供給する第2の供給工程と,第2のラベル原紙から第2の剥離基材を剥離する剥離工程と,裏面表記印刷工程によって裏面表記が左右逆像で印刷された第1のラベル原紙の表面に,剥離工程によって第2の剥離基材が剥離された第2のラベル原紙を第2の粘着剤を用いて貼り合わせる貼り合わせ工程と,第1のラベル基材および第2のラベル基材を所定の形状に切断する切断工程とを有することにより,粘着剤を塗布する設備を必要とすることなく,市販の第1のラベル原紙および第2のラベル原紙を用いて裏面に各種情報が表示されたラベルを簡単に製造することができ,低コストを実現することができるという効果を奏する。」 イ 「【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 以下,本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。 【0011】 図1は,本発明に係るラベルの実施の形態の構成を示す図であり,(a)は,平面図であり,(b)は,側面図である。図2は,図1に示す裏面表記の印刷例を示す図であり,(a)は,平面図であり,(b)は,側面図である。 【0012】 本実施の形態のラベル10は,販売促進キャンペーン等に用いられ,裏面側,すなわち被着体に貼付される粘着面側に,被着体から剥がした後に視認可能な情報が表示されたラベルであり,図1を参照すると,第1の剥離基材1と,第1のラベル基材2と,第2のラベル基材3とで構成され,第1のラベル基材2の裏面に塗布された第1の粘着剤4によって第1の剥離基材1が第1のラベル基材2の裏面に仮着されていると共に,第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって第1のラベル基材2の表面と第2のラベル基材3の裏面とが貼り合わされている。なお,図1(b)に示す側面図においては,説明のために厚み方向を拡大して記載している。 ・・・(中略)・・・【0014】 第1のラベル基材2には,紙基材やフィルム基材等の半透明もしくは透明な基材が用いられ,裏面には,被着体に貼付するための第1の粘着剤4が塗布されていると共に,表面には,裏面側から視認可能な表記(以下,裏面表記6と称す)が左右逆像で印刷されている。従って,図2に示すように,第1の剥離基材1を剥離した裏面,すなわち第1の粘着剤4の粘着面を見ると,第1のラベル基材2の表面に左右逆像で印刷された裏面表記6が,裏面側から第1のラベル基材2を通して正像で視認することができるようになっている。なお,図2(b)に示す側面図においては,説明のために厚み方向を拡大して記載している。 【0015】 第2のラベル基材3の表面は,各種情報を示す表記(以下,表面表記7と称す)が印刷される表示部として用いられると共に,第2のラベル基材3には,紙基材やフィルム基材等の不透明な不透過性の基材を用いられ,第1のラベル基材2の表面に左右逆像で印刷された裏面表記6を第2のラベル基材3を通して視認することができないようになっている。なお,第2のラベル基材3として,半透明もしくは透明な基材を用いる場合には,第2のラベル基材3の表面や裏面に着色を施すことで,不透過性を付与して用いるようにしてもよい。また,本実施の形態では,キャンペーンを示す表記(以下,表面表記7と称す)が印刷されている。 ・・・(中略)・・・ 【0017】 第2の粘着剤5の粘着力は,第1の粘着剤4の粘着力よりも強く設定されており,被着体に貼付したラベル10を剥がす際に,第2のラベル基材3のみが剥がれることを防止し,第1のラベル基材2と第2のラベル基材3が貼り合わされた状態で剥がれるようになっている。」 ウ 「【0018】 次に,本実施の形態のラベル10の製造方法について図3および図4を参照して詳細に説明する。 図3は,本発明に係るラベルの実施の形態を製造する製造装置の構成を示す概略側面図であり,図4は,本発明に係るラベルの実施の形態の製造工程を説明する説明図である。 【0019】 製造装置20は,第1のラベル原紙11と第2のラベル原紙12とを用いて本実施の形態のラベル10を製造する装置であり,図3を参照すると,第1のラベル原紙11が装着される第1の装着部21と,裏面表記印刷部22と,第2のラベル原紙12が装着される第2の装着部23と,剥離部24と,剥離基材巻き取り部25と,貼り合わせ部26と,表面表記印刷部27と,切断部28と,巻取り部29とを備えている。 【0020】 第1のラベル原紙11としては,図4(a)に示すように,第1のラベル基材2の裏面に塗布された第1の粘着剤4によって第1の剥離基材1が仮着されている市販のラベル連続体を用いることができる。なお,図4には,製造装置20における各工程での側面図が示されており,説明のために厚み方向を拡大して記載している。 【0021】 第1のラベル原紙11は,ロール状に巻回されて第1の装着部21に回転可能に装着され,第1の装着部21から引き出されて裏面表記印刷部22に供給される。なお,本実施の形態では,第1のラベル原紙11は,表巻きに,すなわち第1のラベル基材2の表面が外側になるように巻回されている。 【0022】 裏面表記印刷部22は,第1のラベル原紙11の表面側から印刷を行う印刷手段であり,図4(c)に示すように,第1の装着部21から供給された第1のラベル原紙11における第1のラベル原紙11の表面に,裏面表記6を左右逆像で印刷する裏面表記印刷工程を実行し,裏面表記6が左右逆像で印刷された第1のラベル原紙11は,貼り合わせ部26に供給される。なお,裏面表記印刷部22では,任意の印刷方式を採用することができる。 【0023】 第2のラベル原紙12としては,図4(b)に示すように,第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって第2の剥離基材8が仮着されている市販のラベル連続体を用いることができる。 【0024】 第2のラベル原紙12は,ロール状に巻回されて第2の装着部23に回転可能に装着され,第2の装着部23から引き出されて剥離部24に供給される。なお,本実施の形態では,第2のラベル原紙12は,表巻きに,すなわち第2のラベル基材3の表面が外側になるように巻回されている。 【0025】 剥離部24は,図4(d)に示すように,第2のラベル原紙12から第2の剥離基材8を剥離,すなわち第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって仮着されている第2の剥離基材8を剥離させる剥離手段であり,第2のラベル原紙12から第2の剥離基材8を剥離する剥離基材剥離工程を実行し,剥離された第2の剥離基材8は,剥離基材巻き取り部25によって巻き取られると共に,第2の剥離基材8が剥離された第2のラベル基材3は,貼り合わせ部26に供給される。 【0026】 貼り合わせ部26は,一対のローラからなり,図4(e)に示すように,裏面表記6が左右逆像で印刷された第1のラベル原紙11の表面と,第2のラベル基材3の裏面とを,第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって貼り合わせることで,ラベル10の連続体を生成する貼り合わせ工程を実行し,生成されたラベル10の連続体は,表面表記印刷部27に供給される。 【0027】 表面表記印刷部27は,ラベル10の連続体の表面側から印刷を行う印刷手段であり,図4(f)に示すように,貼り合わせ部26から供給されたラベル10の連続体の表面,すなわち第2のラベル基材3の表面に表面表記7を印刷する表面表記印刷工程を実行し,表面表記7が印刷されたラベル10の連続体は,切断部28に供給される。なお,表面表記印刷部27では,任意の印刷方式を採用することができる。 【0028】 切断部28は,第1の剥離基材1を切り離すことなく,第1のラベル基材2および第2のラベル基材3をラベル10の形状に切断する切断手段であり,第1のラベル基材2および第2のラベル基材3をラベル10の形状に切断する切断工程を実行し,第1のラベル基材2および第2のラベル基材3がラベル10の形状に切断されたラベル10の連続体は,巻取り部29に供給され,巻取り部29によってロール状に巻き取られる。なお,切断部28における切断でカス部が発生する場合には,カス上げした後に巻取り部29に供給される。」 エ 「【図面の簡単な説明】 【0033】 【図1】本発明に係るラベルの実施の形態の構成を示す図であり,(a)は,平面図であり,(b)は,側面図である。 【図2】図2は,図1に示す裏面表記の印刷例を示す図であり,(a)は,平面図であり,(b)は,側面図である。 【図3】本発明に係るラベルの実施の形態を製造する製造装置の構成を示す概略側面図である。 【図4】本発明に係るラベルの実施の形態の製造工程を説明する説明図である。 ・・・(中略)・・・ 【図1】 【図2】 【図3】 【図4】 」 (2)甲1の記載から把握される発明 前記(1)アないしエで摘記した記載からみて,甲1には次の発明が記載されていると認められる。 「透明な第1のラベル基材2の裏面に塗布された第1の粘着剤4によって第1の剥離基材1が前記第1のラベル基材2の裏面に仮着されていると共に,不透明な不透過性の第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって前記第1のラベル基材2の表面と前記第2のラベル基材3の裏面とが貼り合わされており,前記第1のラベル基材2の表面には,裏面側から視認可能な裏面表記6が印刷され,前記第2のラベル基材3の表面には,各種情報を示す表面表記7が印刷されているラベル10であって,前記第2の粘着剤5の粘着力が,前記第1の粘着剤4の粘着力よりも強く設定されており,被着体に貼付したラベル10を剥がす際に,前記第2のラベル基材3のみが剥がれることを防止し,前記第1のラベル基材2と前記第2のラベル基材3が貼り合わされた状態で剥がれるようになっているラベル10の製造方法であって, 前記第1のラベル基材2の裏面に塗布された前記第1の粘着剤4によって第1の剥離基材1が仮着されている市販のラベル連続体である第1のラベル原紙11を,第1の装着部21から引き出して裏面表記印刷部22に供給する第1の供給工程と, 前記裏面表記印刷部22により,供給された前記第1のラベル原紙11の表面に,前記裏面表記6を左右逆像で印刷する裏面表記印刷工程と, 前記第2のラベル基材3の裏面に塗布された前記第2の粘着剤5によって第2の剥離基材8が仮着されている市販のラベル連続体である第2のラベル原紙12を,第2の装着部23から引き出して剥離部24に供給する第2の供給工程と, 前記剥離部24により,前記第2のラベル原紙12から前記第2の剥離基材8を剥離する剥離基材剥離工程と, 前記裏面表記印刷部22から供給された前記第1のラベル原紙11の表面と,前記剥離部24から供給された前記第2のラベル基材3の裏面とを,貼り合わせ部26により,前記第2のラベル基材3の裏面に塗布された前記第2の粘着剤5によって貼り合わせることで,ラベル10の連続体を生成する貼り合わせ工程と, 表面表記印刷部27により,生成されたラベル10の連続体の表面,すなわち前記第2のラベル基材3の表面に前記表面表記7を印刷する表面表記印刷工程と, 切断部28により,前記表面表記7が印刷された前記ラベル10の連続体において,前記第1の剥離基材1を切り離すことなく,前記第1のラベル基材2及び前記第2のラベル基材3をラベル10の形状に切断する切断工程と, を有するラベル10の製造方法。」(以下,「甲1発明」という。) 5 判断 (1)本件特許発明1について ア 対比 (ア) 甲1発明の「不透明な不透過性の第2のラベル基材3」,「透明な第1のラベル基材2」,「ラベル10」及び「第1の剥離基材1」は,技術的にみて,本件特許発明1の「不透明層」,「透明層」,「再剥離ラベル」及び「台紙」にそれぞれ対応する。 (イ) 甲1発明の「ラベル10」(本件特許発明1の「再剥離ラベル」に対応する。以下,「ア 対比」欄において,「」で囲まれた甲1発明の構成に付した()中の文言は,当該甲1発明の構成に対応する本件特許発明1の発明特定事項を表す。)は,第2の粘着剤5によって「第1のラベル基材2」(透明層)の表面と「第2のラベル基材3」(不透明層)の裏面とが貼り合わされ,「第1のラベル基材2」(透明層)の裏面に第1の粘着剤4が塗布されたものである。 ここで,甲1発明の「不透明な不透過性の第2のラベル基材3」(不透明層)の表面には,各種情報を示す表面表記7が印刷されているから,甲1発明の「不透明な不透過性の第2のラベル基材3」と本件特許発明の「両面に印刷された不透明層」は,「表面に印刷された不透明層」である点で共通する。 また,粘着剤とは接着剤の一種であり(いわゆる感圧接着剤である。),粘着剤によって貼り合わせることは,接着剤からなる層(すなわち接着層)によって接着することにほかならないから,甲1発明の「第2の粘着剤5」によって貼り合わされていることは,本件特許発明1の「接着層で接着され」ていることに相当する。 そして,甲1発明により製造される「ラベル10」(再剥離ラベル)は,「第2の粘着剤5」(再剥離粘着層)の粘着力が,第1の粘着剤4の粘着力よりも強く設定されており,第2のラベル基材3のみが剥がれることを防止し,被着体に貼付したラベル10を剥がす際に,第1のラベル基材2と第2のラベル基材3が貼り合わされた状態で剥がれるようになっているのであるから,「第1の粘着剤4」の部分で剥がれるよう構成されたものである。そうすると,甲1発明により製造される「ラベル10」は「再剥離」することが予定された「再剥離ラベル」であるといえ,塗布された「第1の粘着剤4」の層は「再剥離」可能な「再剥離粘着層」であるといえ,甲1発明の「第1のラベル基材2」(透明層)の裏面には「再剥離可能な再剥離貼着層」が設けられているといえる。 以上によれば,本件特許発明1により製造される「再剥離ラベル」と甲1発明により製造される「ラベル10」は,「表面に印刷された不透明層と,透明層の一面とが接着層で接着され,前記透明層の他面に再剥離可能な再剥離貼着層が設けられた再剥離ラベル」である点で共通し,本件特許発明1と甲1発明は,「表面に印刷された不透明層と,透明層の一面とが接着層で接着され,前記透明層の他面に再剥離可能な再剥離貼着層が設けられた再剥離ラベルの製造方法」である点で共通する。 (ウ) 甲1発明の「表面表記印刷工程」は,「第2のラベル基材3」(不透明層)の表面に表面表記7を印刷する工程であるから,本件特許発明1の「不透明層に印刷する印刷工程」に相当する。 (エ) 甲1発明の「第1の供給工程」は,「第1のラベル基材2」(透明層)の裏面に塗布された「第1の粘着剤4」によって「第1の剥離基材1」(台紙)が仮着されている市販のラベル連続体である第1のラベル原紙11を,第1の装着部21から引き出して裏面表記印刷部22に供給する工程であるところ,前記(イ)で述べたとおり,塗布された「第1の粘着剤4」の層は「再剥離粘着層」といえるから,当該「第1の供給工程」は,「第1のラベル基材2」(透明層)の他面が「再剥離粘着層」を介して「第1の剥離基材1」(台紙)に貼り着けられた状態でこれを供給する工程であるといえる。 したがって,甲1発明の「第1の供給工程」は,本件特許発明1の「透明層の他面が前記再剥離貼着層を介して台紙に貼り着けられた状態でこれを供給する透明層供給工程」に相当する。 (オ) 甲1発明の「貼り合わせ工程」は,第1のラベル原紙11の表面(すなわち「第1のラベル基材2」の表面)と,「第2のラベル基材3」の裏面とを,「第2の粘着剤5」によって貼り合わせる工程であるところ,前記(イ)で述べたとおり,粘着剤によって貼り合わせることは,接着剤からなる接着層によって接着することにほかならないから,当該「貼り合わせ工程」は,「第2の粘着剤5の層」(接着層)により「第2のラベル基材3」(不透明層)と「第1のラベル基材2」(透明層)とを接着する工程であるといえる。 したがって,甲1発明の「貼り合わせ工程」は,本件特許発明1の「接着層により不透明層と透明層とを接着する接着工程」に相当する。 (カ) 甲1発明の「切断工程」は,第1の剥離基材1を切り離すことなく,「第1のラベル基材2」及び「第2のラベル基材3」をラベル10の形状に切断する工程であるところ,「第2の粘着剤5の層」は,第1のラベル基材2と第2のラベル基材3の間に存在するのであるから,前記切断工程によって,ラベル10の形状に切断されることは自明であり,かつ,切断されたラベル10は,第1の剥離基材1から剥離され,第1の粘着剤4によって被着体に貼着されるのであるから,技術的にみて,「第1の粘着剤4の層」についても,前記切断工程によって,ラベル10の形状に切断されることは明らかである。 したがって,甲1発明の「切断工程」は,「第2のラベル基材3」(不透明層)と「第2の粘着剤5の層」(接着層)と「第1のラベル基材2」(透明層)と「第1の粘着剤4の層」(再剥離貼着層)とをラベル10の形状に切断する工程である。 ここで,甲1発明の「ラベル10の形状」とは,ラベル10の輪郭のことにほかならないから,本件特許発明1の「ラベル輪郭」に相当し,甲1発明の「切断工程」における「ラベル10の形状に切断する」ことは,本件特許発明1の「打ち抜いてラベル輪郭を形成する」ことに相当する。 したがって,甲1発明の「切断工程」は,本件特許発明1の「不透明層と接着層と透明層と再剥離貼着層とを打ち抜いてラベル輪郭を形成する打ち抜き工程」に相当する。 (キ) 前記(ア)ないし(カ)によれば,本件特許発明1と甲1発明は, 「表面に印刷された不透明層と,透明層の一面とが接着層で接着され,前記透明層の他面に再剥離可能な再剥離貼着層が設けられた再剥離ラベルの製造方法であって, 前記不透明層に印刷する印刷工程と, 前記透明層の他面が前記再剥離貼着層を介して台紙に貼り着けられた状態でこれを供給する透明層供給工程と, 前記接着層により前記不透明層と前記透明層とを接着する接着工程と, 前記不透明層と前記接着層と前記透明層と前記再剥離貼着層とを打ち抜いてラベル輪郭を形成する打ち抜き工程と, を有する再剥離ラベルの製造方法。」 である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1: 本件特許発明1は,「不透明層」の裏面に印刷がされ,「不透明層」の印刷された裏面と「透明層」の一面とを接着するための「接着層」を形成する接着層形成工程を有するのに対して, 甲1発明は,「第2のラベル基材3」の裏面ではなく「第1のラベル基材2」の表面に印刷がされ,「第2のラベル基材3」の裏面と「第1のラベル基材2」の印刷された表面を貼り合わせる「第2の粘着剤5の層」は,予め「第2のラベル基材3」の裏面に形成されているのであって,「第2の粘着剤5の層」を形成する工程を有してはいない点。 相違点2: 本件特許発明1は,再剥離貼着層および透明層を台紙から剥離する剥離工程と,剥離した前記再剥離貼着層および前記透明層と前記台紙とを再貼り付けする再貼工程と,前記剥離工程の後に前記再剥離貼着層と前記台紙との間に糊殺し層を形成する糊殺し工程を有するとともに,前記糊殺し工程において,前記糊殺し層が前記ラベル輪郭に対して一部分のみ形成されるのに対して, 甲1発明は,そのような剥離工程,再貼工程及び糊殺し工程を有しておらず,糊殺し層が形成されない点。 (ク) なお,申立人は,特許異議申立書において,甲1の請求項3,【0012】及び【0027】の記載を摘記した上で,甲1発明は,「f 第2のラベル基材3の裏面に第2の粘着剤5を形成する工程」を有している旨主張する。 しかしながら,甲1には,「第2の供給工程」において,第2のラベル基材3の裏面に塗布された第2の粘着剤5によって第2の剥離基材8が仮着されている市販のラベル連続体である第2のラベル原紙12を,第2の装着部23から引き出して剥離部24に供給することが記載されているのみであって,第2のラベル基材3の裏面に第2の粘着剤5を形成する工程を設けることは,申立人が摘記した記載を含め,甲1のいずれの箇所にも記載されていない。 したがって,申立人の前記主張は採用できない。 イ 相違点1の容易想到性について 事案に鑑みて相違点1について判断する。 (ア) 甲1の【0002】ないし【0005】の記載(前記4(1)ア)から把握されるように,甲1発明は,商品等の被着体に貼付される裏面側に視認可能な情報が表示されたラベルを製造する従来の方法では,ラベルの裏面に各種情報を印刷する工程と,各種情報が印刷された裏面に商品に貼付するための粘着剤を塗布する工程とが必要となるため,ラベルを構成するラベル基材として,裏面に各種情報が印刷されても,当該印刷が表面に透過しない特殊な基材を選択しなければならず,コスト高になってしまうと共に,裏面に粘着剤を塗布する設備がなければならないため,小ロットでは,コスト高になってしまうという問題点を解決するためになされたものである。 そして,技術的にみると,甲1発明は,前記問題点を解決するために,予め裏面に第2の粘着剤5が塗布された第2のラベル基材3を用いることによって,粘着剤を塗布する必要をなくし,さらに,そのような第2のラベル基材3を用いることで,予め第2の粘着剤5が塗布されている第2のラベル基材3の裏面には,印刷を施すことができなくなる又は困難になることから,新たに透明な第1のラベル基材2を用意し,当該第1のラベル基材2の表面に情報を左右逆像で印刷し,第2のラベル基材3の裏面と第1のラベル基材2の表面とを,第2のラベル基材3の裏面に予め塗布された第2の粘着剤5によって貼り合わせるという手段を採用することで,ラベルの裏面側から印刷された情報を視認できるようにしたものと理解される。 そうすると,甲1発明にとって,予め裏面に第2の粘着剤5が塗布された第2のラベル基材3を用いること,及び第1のラベル基材2の表面に情報を左右逆像で印刷することは,発明の課題を解決するために欠くことのできない構成である。 しかるに,甲1発明において,相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,第2のラベル基材3の裏面に情報を印刷してから,当該裏面に接着剤を塗布するような構成のものに変更することにほかならず,甲1発明が解決しようとした課題を解決することができないものとなってしまうから,このような構成の変更には阻害要因が存在するというほかない。 以上のとおりであるから,甲1発明において,相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,当業者が容易に想到できたことではない。 (イ) 申立人は,特許異議申立書において,再剥離した際に裏面(貼り付け面)の情報を確認可能なラベルにおいて,「不透明層の両面に印刷される」ことは,例えば,甲2や甲3に記載されているように従来周知であり,このような従来周知の技術事項を甲1発明に適用することは,適宜なし得ることにすぎないなどと主張する。(なお,甲3は,甲1に記載された「特許文献1」である。) しかしながら,前記(ア)で述べたように,甲1発明において,第2のラベル基材3の裏面に情報を印刷してから,当該裏面に接着剤を塗布するような構成を採用することには阻害要因が存在するから,たとえ申立人がいう技術事項が従来周知であるのだとしても,甲1発明において,相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項に相当する構成を採用することは,当業者が容易に想到できたこととはいえない。 したがって,申立人の主張は採用できない。 ウ 小括 以上のとおりであるから,相違点2の容易想到性について判断するまでもなく,本件特許発明1は,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件特許発明2ないし4について 本件特許の請求項2ないし4は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件特許発明2ないし4は,本件特許発明1の全発明特定事項を具備し,これにさらに限定を加えたものに該当するところ,前記(1)で述べたとおり,本件特許発明1が,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,本件特許発明2ないし4についても,同様の理由で,甲1発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。 6 むすび 以上のとおり,特許異議の申立ての理由及び証拠によっては,請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。 また,他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって,結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-04-24 |
出願番号 | 特願2017-231922(P2017-231922) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G09F)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 槙 俊秋 |
特許庁審判長 |
尾崎 淳史 |
特許庁審判官 |
清水 康司 畑井 順一 |
登録日 | 2019-06-21 |
登録番号 | 特許第6541757号(P6541757) |
権利者 | 株式会社トッパンインフォメディア |
発明の名称 | 再剥離ラベルおよびその製造方法 |
代理人 | 鈴木 史朗 |
代理人 | 松沼 泰史 |
代理人 | 棚井 澄雄 |