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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  E04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1362372
異議申立番号 異議2020-700071  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-07 
確定日 2020-05-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6560993号発明「屋根」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6560993号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6560993号の請求項1に係る特許についての出願は、平成28年2月3日に出願され、令和1年7月26日にその特許権の設定登録がされ、令和1年8月14日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年2月7日に特許異議申立人藤江桂子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。


第2 本件発明
特許第6560993号の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「垂木と、屋根パネルと、パネル押えとを有し、垂木は、パネル受け部と、パネル受け部よりも外側に位置するパネル支持部を有し、パネル押えは、パネル押え部を有し、パネル押えを垂木上にネジ止めし、垂木のパネル受け部とパネル押えのパネル押え部とで屋根パネルの端部を挟持しており、パネル支持部は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり、屋根パネルを押し上げていることを特徴とする屋根。」


第3 申立理由の概要
申立人は、甲第1号証ないし甲第7号証(主たる証拠として甲第1号証または甲第5号証)提出して、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反しており、また、本件発明は、明確性要件を満たしておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求し、さらに発明の詳細な説明の記載は、本件発明を実施可能な程度に記載されておらず、実施可能要件を満たしていないから、特許法第36条第6項第2号、第1号及び同条第4項第1号の規定に違反している旨、主張している。

また、申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付された証拠は、以下のとおりである。
甲第1号証:特開2014-224429号公報
甲第2号証:特開2010-281053号公報
甲第3号証:特開平2-225754号公報
甲第4号証:特開2002-13193号公報
甲第5号証:特開2013-213320号公報
甲第6号証:特開平11-200547号公報
甲第7号証:特開2001-111088号公報


第4 各証拠の記載
(1)甲第1号証
特許異議申立書に添付された甲第1号証には、以下の事項が記載されている。(下線は決定で付した。以下同様。)
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外構造物の屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外構造物の屋根としては、カーポートやテラス等の簡易建物の屋根が知られている。例えば、間隔をおいて設けた垂木間に中骨を架け渡して骨組みが形成されており、骨組みの隣接する垂木同士の間の上面に屋根パネルが取り付けられたカーポートが知られている。このカーポートの屋根は、屋根パネルと中骨との間に緩衝材が設けられており、風による屋根パネルの振動などで音が発生することを防止している。また、この屋根には、屋根は後から前に向かって下り勾配の傾斜をなすとともに右から左にかけても下り勾配の傾斜をなしている(たとえば、特許文献1参照)。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような屋外構造物の屋根は、屋根パネルと中骨との間に緩衝材が介在されつつも下り勾配の傾斜をなしているので、屋根パネルは平面をなすように垂木間に掛け渡されている。このような屋根パネルは、端部が把持されて生じる撓み変形が、風などにより上下方向に繰り返されて振動したときに、緩衝材により屋根パネルが直接中骨に接触することを防止して音の発生を抑えることは可能であるが、屋根パネルの振動そのものを抑制する効果は小さい。また、屋外構造物の屋根において風による音の発生は、屋根パネルと中骨との接触によるものばかりではなく、屋根パネル自身が振動により音を発する場合もあり、単に緩衝材を介在させるだけでは、音の発生を抑えることができないという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、風等による音の発生を防止することが可能な屋外構造物の屋根を提供することにある。」

ウ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明の屋外構造物の屋根は、屋外構造物の屋根であって、第1方向の長さが当該第1方向と直交する第2方向の長さより長い四辺形状をなす複数の屋根材が当該屋根材の前記第2方向に並べて配置され、前記第1方向に沿うとともに前記第2方向に互いに間隔を隔てて設けられた複数の第1方向部材のうちの2本の前記第1方向部材間に、前記第1方向部材間における中央側が前記第1方向部材間における端部側より高くなるように湾曲した状態で、前記屋根材が架け渡されていることを特徴とする屋外構造物の屋根。
【0007】
このような屋外構造物の屋根によれば、第1方向部材間に掛け渡された屋根材は第1方向部材間において、湾曲しているので、屋根材が平面をなすように単に第1方向部材間に掛け渡されている場合に生じる、第1方向部材に両端が支持された屋根材の中央が、風などにより上下に撓むような振動が抑制される。このとき、屋根材は、短辺側となる第2方向の中央側が高くなるように湾曲しているので、長辺側となる第1方向の中央側が高くなるように湾曲される場合より大きな力にて湾曲されているため形状が保たれ易い。このため、たとえ風に煽られたとしても音の発生を防止することが可能である。また、屋根材は中央側が端部側より高い状態で湾曲しているので、雨水等が屋根材上に溜まることを防止することが可能であり、屋根材下の空間をより広く確保することが可能である。
【0008】
かかる屋外構造物の屋根であって、前記屋根材は、弾性変形されて湾曲していることが望ましい。
このような屋外構造物の屋根によれば、屋根材は、弾性変形されて湾曲しているので、屋根材自身の弾性により復元する方向に力が第1方向部材に作用しつつ湾曲された状態が維持されている。このため、屋根材の湾曲した方向と反対側への撓みが規制されているので、屋根材の撓みによる振動はより発生しにくい。このため、たとえ風に煽られたとしても音の発生をより確実に防止することが可能である。
【0009】
かかる屋外構造物の屋根であって、前記第1方向部材は、前記屋根材の端部を上下方向から挟む挟持部を有し、前記屋根材の、前記挟持部に挟まれた部位より縁部側を下方に押圧する押圧部を有していることが望ましい。
このような屋外構造物の屋根によれば、屋根材は、第1方向部材の挟持部が上下方向から挟む部位より縁部側が押圧部により下方に押圧されるので、屋根材をその中央側が上方に突出するように湾曲させることが可能である。このため、屋根材を第1方向部材間に架け渡すだけで、湾曲させることが可能である。
【0010】
かかる屋外構造物の屋根であって、前記屋根材が架け渡される前記第1方向部材間には、第2方向部材が架け渡されており、前記第2方向部材上には、前記第1方向部材間における中央側に、前記屋根材の前記端部側より高い位置にて前記屋根材を支持する支持部材が備えられていることが望ましい。
このような屋外構造物の屋根によれば、第1方向部材間に架け渡された第2方向部材上に備えられた支持部材により、屋根材は第1方向部材間における中央側が端部より高い位置に支持されるので、屋根材を確実に湾曲させることが可能である。
【0011】
かかる屋外構造物の屋根であって、前記支持部材は、緩衝材であることが望ましい。
このような屋外構造物の屋根によれば、屋根材の第1方向部材間における中央側を支持する支持部材が緩衝材なので、屋根材と支持部材との間においても音の発生を防止することが可能である。」

エ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る屋外構造物の屋根としてテラスに設けられるテラス屋根について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態のテラス屋根10は、図1に示すように、掃き出し窓2を備えた建物1と隣接して設けられたテラス3上に設けられ、建物1の外壁1aから張り出すように設けられている。
【0017】
以下の説明においては、テラス屋根10が設けられた状態で上下となる方向を上下方向、テラス屋根10が取り付けられている建物1の外壁1a及び窓2を基準として建物1の外壁1aに沿う方向を見付け方向、建物1の内外方向を見込み方向として説明する。また、テラス屋根10が備える各部材は、単体として説明する場合であっても、テラス屋根10が設けられた状態で上下方向、見付け方向、見込み方向等となる方向にて方向を特定して説明する。ここで、見込み方向が第1方向に相当し、見付け方向が第2方向に相当する。
【0018】
本実施形態のテラス屋根10は、建物1の外壁1aに固定される垂木掛11と、垂木掛11と互いに間隔を隔てて平行に配置され軒樋と一体に形成された前枠12と、垂木掛11と前枠12との見付け方向における端部同士を繋ぐ2本の側枠13と、2本の側枠13間に見付け方向に互いに間隔を隔てて等間隔に配置され垂木掛11と前枠12との間に見込み方向に沿って架け渡される2本の垂木14と、側枠13と垂木14との間及び垂木14同士の間に見込み方向に間隔を隔てて見付け方向に沿って各々2本ずつ架け渡される野縁15と、側枠13と垂木14及び垂木14同士の間に架け渡された3枚の屋根材16と、前枠12における見付け方向の端部を支持する2本の支柱17と、を有している。ここで、見込み方向に沿って設けられる側枠13及び垂木14が第1方向部材に相当し、見付け方向に沿って設けられる野縁15が第2方向部材に相当する。」

オ 「【0027】
2本の垂木14は、見込み方向に連通する中空部141aを有する押出成形部材でなる垂木本体141と、垂木本体141の上部にビス止めされる垂木上板142とを有している。垂木14は、見付け方向における両側に、屋根材16が配置されるため、側枠13に設けられていた屋根材16の周端部16aを収容する収容部13aと同様の収容部14aが、見付け方向の両側にそれぞれ設けられている。
【0028】
具体的には、2本の垂木本体141の上部には、見付け方向の中央部にて上方に突出する中央突部141bを除き、その両側を窪ませた凹部141cが設けられており、凹部141cの外側の縁にそれぞれ設けられるシール材18が嵌合される下シール嵌合部141dが設けられている。
【0029】
垂木上板142は、垂木本体141の上にて、見付け方向における両端に設けられた2つの下シール嵌合部141dに渡るように凹部141c上を覆う部材である。垂木上板142の見付け方向における中央部分には、垂木本体141の上に配置されたときに、垂木本体141上に突出する中央突部141bが挿入される挿入凹部142aが設けられている。垂木上板142には、挿入凹部142aに垂木本体141の中央突部141bが挿入された状態で、下シール嵌合部141dと上下に対向する位置に設けられてシール材18が嵌合される上シール嵌合部142bと、上シール嵌合部142bより内側にて下方に突出して挿入凹部142aを形成するとともに屋根材16を押圧する押圧部142cを有している。
【0030】
垂木14は、シール材18が嵌合された垂木本体141の中央突部141bが、シール材18が嵌合された垂木上板142に挿入凹部142aに挿入されるとともに押圧部142cが凹部141c内に挿入されて、垂木上板142が中央突部141b上でビス止めされている。このとき、凹部141c上を垂木上板142が覆って形成される空間が、屋根材16の周端部16aが収容される収容部14aをなしている。
【0031】
収容部14aは、各垂木本体141の見付け方向における両側の上部に、外側に向かって開放されて形成されており、開放された端部の上下に、垂木14の長手方向に沿ってシール材18が嵌合されている。そして、シール材18は上下方向において対向するように設けられており、上下に位置するシール材18の対向する面は、開放された側から奥に向かって僅かに低くなるように傾斜しており、対向するシール材18間に、収容部14aに収容される屋根材16の周端部16aが挟持される。すなわち、垂木本体141及び垂木上板142に設けられたシール材18が挟持部をなしている。収容部14aの対向するシール材18の奥には空隙が形成されており、空隙内に上方から突出された押圧部142cが挿入されている。
【0032】
押圧部142cは、凹部141cを形成する奥側の壁部141eに沿うように垂設された垂設片142dの下端にほぼ僅かに上方に傾斜させた押圧片142eが開放されている側に延出されている。そして、垂木本体141の凹部141cに設けられたシール材18上に屋根材16の周端部16aが載置されて、垂木上板142が垂木本体141に取り付けられると、対向して傾斜するシール材18間に屋根材16が挟持されるとともに押圧部142cにより屋根材16の縁部16bが下方に押圧される。
【0033】
このため、側枠13と垂木14との間に架け渡された屋根材16及び、垂木14同士の間に架け渡された屋根材16は、側枠13と垂木14との間及び垂木14同士の間にて見付け方向における中央側が、端部側より高くなるように弾性変形されて湾曲した状態にて保持される。
【0034】
見込み方向に沿って互いに平行に設けられている側枠13と垂木14には、屋根材16より下側に、互いに対向する側壁部13b、14bに取付部材19を介して野縁15が架け渡されている。野縁15は、側枠13と垂木14との間、或いは、垂木14同士の間に水平に設けられており、上方に位置する屋根材16との間隔は、野縁15の見付け方向における端部で狭く、中央側で広くなっている。
【0035】
そして、野縁15の見付け方向における中央部分には、野縁15と屋根材16との間に、例えばウレタンやシリコンゴムなどの支持部材としての緩衝材20が設けられ、屋根材16が下方から支持されている。」

カ 【図2】は以下のとおり。


キ 上記アないしカからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「垂木掛11と前枠12と側枠13と垂木14と野縁15と屋根材16と、を有するテラス屋根10において、
屋根材16は、見付け方向における中央側が、端部側より高くなるように弾性変形されて湾曲した状態にて保持され、
野縁15の見付け方向における中央部分には、野縁15と屋根材16との間に、例えばウレタンやシリコンゴムなどの支持部材としての緩衝材20が設けられ、屋根材16が下方から支持され、
垂木14は、垂木本体141と、垂木本体141の上部にビス止めされる垂木上板142とを有し、
垂木本体141の上部には、見付け方向の中央部にて上方に突出する中央突部141bの両側を窪ませた凹部141cが設けられており、凹部141cの外側の縁にシール材18が嵌合される下シール嵌合部141dが設けられ、
垂木上板142には、下シール嵌合部141dと上下に対向する位置に設けられてシール材18が嵌合される上シール嵌合部142bと、上シール嵌合部142bより内側にて下方に突出して屋根材16を押圧する押圧部142cを有しており、
垂木本体141の凹部141cに設けられたシール材18上に屋根材16の周端部16aが載置されて、垂木上板142が垂木本体141に取り付けられると、対向して傾斜するシール材18間に屋根材16が挟持されるとともに押圧部142cにより屋根材16の縁部16bが下方に押圧される、
テラス屋根10。」

(2)甲第2号証
特許異議申立書に添付された甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポート、テラス、及びバルコニー等の屋根部を形成でき、屋外に設置される屋根部材を備える簡易建物に関する。」

イ 「【0021】
簡易建物1は、支柱2、2、…、第一梁5、5、第二梁10、10、屋根部材30、連結部材60、60、…、及び排水手段80を備えている。」

ウ 「【0028】
図1?図6に戻り、引き続き簡易建物1を構成する部材について説明する。屋根部材30は、枠体31、垂木45、45、…、棟木52、52、…、及び屋根パネル59、59、…を備えている。
【0029】
枠体31は、枠材32、32、34、34を方形に組み合わせて枠状とされた部材である。枠材のうち第一梁5、5と長手方向を同じくして配置される枠材32、32は、所定の断面を有しつつ、特に図3(c)からわかるように長手方向に湾曲している。
【0030】
一方、枠材のうち第二梁10、10と長手方向を同じくして配置される枠材34、34は、上記枠材32、32の端部をかけ渡すように取り付けられ、図5、図6に表れるような断面を備えている。ここでは枠材34を例に説明する。
枠材34は、断面において、片36、37、38、39により囲まれる中空部35と、パネル押さえ40とを有している。」

エ 「【0032】
一方、中空部35の片のうち、屋根パネル59側の片38にはパネル押さえ40が設けられている。パネル押さえ40は片38に取り付けられパネル59側に延在する上片41と、片41の下方に片41と概ね同じようにパネル側に延在し、屋根パネル59側端部が上方に折り曲げられている下片42とを備えている。上片41と下片42とは片43により連結されている。また、片38の下部には被係合片38a、及びこれに係合される取付金具38bが設けられている。被係合片38a、及び取付金具38bにより、枠材34の上部に設けられた上部取付部材35aとボルト35bを介して垂木45と枠材34とを固定している、また、取付金具38bの先端が後述する横樋81に係合する。」

オ 「【0037】
棟木52は、その断面において矩形中空に形成された中空部53を有し、該中空部53の下面の幅方向(図9の紙面左右方向)略中央からは下方に延在する片54が設けられている。さらに片54の下端には幅方向両方に延びるように片55が設けられている。さらに片55を幅方向に延長するように、板状の部材である挟持板56が片55に係合されている。従って、棟木52には、中空部53の下面を形成する片、片54、及び挟持板56により両側方に開口した2つの溝T、Tが形成される。また、本実施形態では棟木52の中空部53が溝T、Tより上方に配置される。」

カ 「【0039】
屋根パネル59、59、…は、その四周端部を、区画を形成する枠体31、垂木45、45、…、棟木52、52、…に差し込むようにして固定される。具体的には、枠材34への屋根パネル59の端部の取り付けは図5に表れている。すなわち、枠材34に具備されるパネル押さえ40の上片41と下片42とに屋根パネル59の端部が挟まれるように固定される。ここで上記したように、枠材34には排水経路が形成されているので、屋根パネル59の上面の雨水等が適切に横樋81に流れる。排水については後で詳しく説明する。」

キ 「【0041】
同様に、棟木52、52、…への屋根パネル59の端部の取り付けは図9に表れている。すなわち、棟木52に形成される溝T、Tに屋根パネル59の端部を挿入するように固定する。このときパッキン57、57も溝T、Tに挿入することで防水性や安定した取り付け性を確保することができる。ここで上記したように、本実施形態の棟木52、52、…は、上方に中空部53、53、…を配置する向きとしているので、屋根パネル59、59、…の下面側には薄い挟持板56のみが表れる。従って使用者は、天井部(屋根部材の下面)にシンプルですっきりとした印象を得ることができる。後述するように、簡易屋根1では支柱2、2、…、及び梁10、10を強調し、重厚な印象を与えることができるが、一方で、このように他の細部においてシンプルな印象を与えることで、さらに支柱及び柱を強調させることが可能となる。
従来はこのような中空部が天井部側に突出して表れていたので、棟木が目立つ構成となり、屋根部への印象が大きくなることがあった。」

ク 【図5】は以下のとおり。


ケ 【図9】は以下のとおり。


コ 上記クの【図5】を参照すると、パネル押さえ40において、下片42の先端は、上片41の先端よりも屋根パネル59中央側に位置していることが看取できる。
また、上記ケの【図9】を参照すると、棟木52を中心として、挟持板56の外側端部は、パッキン57の外側端部よりも、若干外側に位置していることが看取できる。

(3)甲第3号証
特許異議申立書に添付された甲第3号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「<産業上の利用分野>
この発明は、バス停留所、自動車ガレージ、タクシー乗場、自転車置場、休憩所などの屋根体その他多目的に利用することができる屋根用プレート材の連接構造及びその工法に関するものである。」(1頁右下欄11?15行)

イ 「次に、この発明の別な実施例をバス停留所の屋根を例として第3図?第6図に基づいて説明する。
このバス停留所は、脚体1にて方形状の屋根構造体2を支持した全体構造をしている。そしてこの屋根構造体2は、可撓性を有する材質(ポリカーボネート樹脂等)製の屋根用プレート材3をサッシ状の連接材4にて連接した屋根体5と、前記脚体1にて支持された方向Aへ延びる角形中空構造の母屋(基礎材)6とからなっている。そして、7は化粧板であり、前記屋根体の5の周囲にわたって設けられるものである。
また、屋根体5を構成する屋根用プレート材3は、平板状のプレート本体8と、このプレート本体8の両側の端部9に一体形成した折曲部10とからなっている。
次に、前記連接材4の形状を説明する。この連接材4は長手方向にわたって左右対象の同一断面形状をしているものなので、第5図に表された断面形状を中心にして説明する。この連接材4はまず一対の支持部11を備えたウエブ部(下係合部)16を有する。この支持部11の上端には、プレート本体8の端部9近辺に傾斜状態で当接(面接触)する当接部12が一体形成されている。そして、この支持部11の下方には一定の間隔Dを隔てて対向する取付部14が各々形成されている。この各取付部14の先端は若干上方へ向けて湾曲している。
15は断面鏃形状をしている端末係合部(上係合部)である。そして、端末係合部15の両側には、端末係合部15とウエブ部16と支持部11の上部にてそれぞれ溝部17が形成されることとなる。
次にこの連接材4を用いたプレート材3の連接方法を第6図を中心にして説明する。
・・・(中略)・・・
そして、次に第1の屋根用プレート材3aの一方の折曲部10の端末22を、端末係合部15の一方の鏃部23の下側へ係合させ、プレート本体8の端部9近辺を支持部11の当接部12に当接させる。この状態では屋根用プレート材3aのプレート本体8は未だ平板状である。次に、屋根用プレート材3aの他方の折曲部10の端末22に、取付具18を予め挿入しておいた第2の連接材4bの端末係合部15を係合させる。そして、この第2の連接材4bを、プレート本体8の中央部を上方へ撓ませながら母屋6へ取付具18にて固定する。このようにして取付けられた第1及び第2の連接材4a、4b間の屋根用プレート材3aは、湾曲状態となっており、連接材4a、4bと屋根用プレート材3aとの固定にはネジ等を一切使用しない。そして、以上の作業を繰り返し行うことにより、母屋6上へ屋根用プレート材3a、3b、3c・・・・・・と連接材4a、4b、4c・・・・・・とからなる屋根体5を形成していくことができる。」(3頁左上欄16行?右下欄19行)

ウ 第5図は以下のとおり。


(4)甲第4号証
特許異議申立書に添付された甲第4号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カーポート、テラス、アプローチ、バルコニー等に用いる簡易屋根に関する。」

イ 「【0025】このようであるから、前記傾斜した取付けた屋根板15の傾斜角度が上水平屋根6cの屋根板15と傾斜屋根6bの屋根板15との傾斜角度よりも小さく、その屋根板15の取付けが容易であると共に、上水平屋根6cと傾斜屋根6bとの傾斜角度を大きくできる。
【0026】次に隣接した垂木20の対向した他方の溝32間に亘って屋根板15を取付ける構造を説明する。図2と図3に示すように、垂木本体20の上向きの蟻溝29に下シール材51を装着し、屋根板押え22の下向きの蟻溝30に上シール材50を装着する。この各シール材は断面略円形中空形状の定形シール材である。前記上シール材50が屋根板15の上面に接すると共に、下シール材51に屋根板15の下面が接して屋根板15の端縁部を垂木12の他方の溝32に水密して取付ける。
【0027】図2に示すように、下桁10a,11aの一端面44寄りに連結した垂木12と中間桁10c,11cの一端面45寄りに連結した垂木12、つまり他方の溝32に屋根板15が上向きに傾斜して取付けてある垂木12の屋根板押え22は、図4(a)に示すように、図4(b)に示す屋根板15が水平な場合よりも一方の溝24(一側面20a)寄りに位置をずらしてビス21で固着されている。これにより、その上シール材50は、図4(b)に示す下シール材51の真上の位置よりも図4(a)のように一方の溝24寄り(他方の溝32の奥側)に位置がずれている。
【0028】このようであるから、図4(a)に示すように屋根板上面15aと上シール材50の上接触部aが屋根板下面15bと下シール材51の下接触部bよりも他方の溝32の奥側に位置がずれ、屋根板15を上向きに傾斜させ易いので大きな角度上向きに傾斜させることが可能である。」

ウ 【図4】(a)は以下のとおり。



(5)甲第5号証
特許異議申立書に添付された甲第5号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱間の梁の下に吊具を介して屋根体を吊り下げ支持した屋根構造体に関する。」

イ 「【0008】
本発明は上記問題点を解消し、屋根パネルを常にフラットに支持して全体の外観を良好に保持するとともに、耐久性も向上することができる屋根構造体を提供することをその課題とする。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に大型屋根構造体の斜視図を示す。この大型屋根構造体は、設置スペースの間口部1を基準として左右1対の中空の金属製支柱2、2が前後に配置されている。左右の支柱2、2の上部には中空の金属製梁3が設けられている。前後の梁3は平行で、梁3の両端はブラケット((図示せず))を介して支柱2の上端に連結され、これにより門形の屋根支持部材が構成されている。なお、設置スペースとしては、自動車2、3台分の駐車スペースや、あるいは自動車1台分と玄関アプローチ、さらにはテラス部分も含むような大きなスペースが想定されている。
【0023】
前後の梁3には複数の吊具10が取り付けられ、吊具10に屋根体Aが吊り下げ支持されている。屋根体Aは前後枠11、12と左右の両側枠13とを方形に組んでなる屋根枠14と、前後枠11、12に平行に架け渡された垂木15と、屋根枠14と垂木15との間の空間部内に固定された屋根パネル16とから構成されている。梁3の吊具10には垂木15が固定され、これにより屋根体Aが吊り下げ支持されている。」

エ 「【0029】
次に、吊具10の下部にはフラットな屋根体Aの垂木15が取り付けられている。垂木15は、図1の屋根枠14の前枠11と後枠12とに架設され、図3に示されるように、上部中央には中空の立上がり部22を上向きに突出形成し、立上がり部22の両側に屋根パネル16の支持部29を張り出し形成した真直状の金属製部材で、立上がり部22の両側下部には下向きに開口する係合部32と斜め下向きのネジ受け溝33が形成されている。支持部29上面の外側と内側にはそれぞれ外側ビート36と内側ビート37が嵌合固定されている。」

オ 「【0032】
次に、屋根パネル16はアクリルやポリカーボネートなどの透光性合成樹脂の細長平板で、上記垂木15とネジ受け溝33にネジ止めされたパネル押え42とによって上下から挟持固定されている。
【0033】
屋根パネル16はアクリルやポリカーボネートなどの透光性合成樹脂の細長平板によって構成されている。屋根パネル16の側縁は垂木15の両側支持部29の2条のビート36、37とパネル押え42のビート39とによって挟持固定されている。なお、43は垂木連結材である。」

カ 【図3】は以下のとおり。


キ 上記アないしカからみて、甲第5号証には、次の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものと認める。

「大型屋根構造体に設けられた前後の金属製梁3に取り付けられた複数の吊具10に吊り下げ支持された屋根体Aであって、
吊具10の下部には屋根体Aの垂木15が取り付けられ、
垂木15は、上部中央を上向きに突出形成した立上がり部22の両側に屋根パネル16の支持部29を張り出し形成し、立上がり部22の両側下部には斜め下向きのネジ受け溝33が形成され、支持部29上面の外側と内側にはそれぞれ外側ビート36と内側ビート37が嵌合固定されており、
上記垂木15のネジ受け溝33にパネル押え42をネジ止めし、屋根パネル16の側縁は垂木15の両側支持部29の2条のビート36、37とパネル押え42のビート39とによって挟持固定されている、屋根体A。」

(6)甲第6号証
特許異議申立書に添付された甲第6号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、バルコニー屋根、テラス、カーポート、シェルタ等の簡易屋根における母屋材の取付構造に関するものである。」

イ 「【0011】
【発明の実施の形態】以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る母屋材の取付構造をシェルタに適用した場合について説明する。このシェルタは、渡り廊下等における雨除け・日除けとして設置されるものであり、図1は、平坦面を挟んで両側に傾斜面を有する部分に設置したシェルタの側面図である。同図に示すように、、このシェルタ1は、傾斜面に合わせて長手方向に凸状湾曲部1aおよび凹状湾曲部1bの2箇所の湾曲部を有する屋根本体2を、両端の2組の支柱3aおよび各湾曲部1a,1bの2組の支柱3bの計6組の支柱3a,3bで支持している。屋根本体2はアーチ状に形成され、梁を設けることなく、各支柱3a,3bの上端に直接、載置固定されている。」

ウ 「【0014】これらの図に示すように、垂木5の側面には母屋7の取付位置にブラケット(連結材)10が固定されており、母屋7の両端部はこのブラケット10を介して垂木5に固定されている。母屋7は中空部21を有し、母屋7の各端部は、ブラケット10を中空部21内に呼び入れるようにして垂木5の側面に突き当てられ、この状態でブラケット10に固定されている。そして、母屋7が垂木5に組み込まれた状態では、ブラケット10は母屋7の中空部21内に完全に隠ぺいされている。
【0015】ブラケット10は、厚手の鋼板やステンレス板などの板材を略「L」字状に折り曲げて形成されており、垂木5の側面にねじ止めされる取付辺部31と、母屋7を支持する支持辺部32とで構成されている。この場合、取付辺部31と支持辺部32との為す角度は、垂木5に対する母屋7の取付角度に合致するように折曲げ調整されている。したがって、取付辺部31と支持辺部32との為す角度は、屋根本体2の水平部1cに位置するブラケット10では直角に、凸状湾曲部1aに位置するブラケット10では直角より小さい角度に、凹状湾曲部1bに位置するブラケット10では直角より大きい角度に、それぞれ折曲げられている。」

エ 「【0022】次に、図5を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。同図に示すように、この実施形態では、ブラケット15が垂木5を横断方向に貫通する平板状のもので構成されている。すなわち、垂木5の両側に必要な連結材を単一のブラケット15で構成している。この場合、取付辺部41は垂木5の中空内部に位置しており、両端部の支持辺部42が垂木5から突出し、且つ母屋7の取付角度に合わせて適宜、折曲げるようにしている。」

オ 【図2】(a)(b)は以下のとおり。


(7)甲第7号証
特許異議申立書に添付された甲第7号証には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、フィルム基板上に形成された太陽電池を、電気絶縁性の保護材により封止するために、太陽電池の受光面側および非受光面側の双方に保護層を設けた太陽電池モジュールおよびその設置方法に関する。」

イ 「【0021】上記設置方法によれば、太陽電池モジュールは、受光面側が凸となるように平板状の太陽電池モジュールを弓状に湾曲させているため、降雨の際に太陽電池モジュールの表面に降り注いだ雨水は、湾曲した表面を流れ下って、押え具で固定した太陽電池モジュールの非発電領域に溜り、屋根の傾斜面に沿って地上に流れ落ちる。従って、太陽電池モジュール表面への雨水や塵埃の付着・滞留防止を図ることができる。」

ウ 「【0030】図1、2に於いて、隣接する取付けレール110に跨り、押え具120を介してロックピン130で取付けレール110に固定された太陽電池モジュール100は、その光入射側の上面101が、光入射方向に向かって弓状に湾曲して凸形状をなしており、これは以下の構成と施工手順で実現される。なお、太陽電池モジュール100の形状や断面構造は、図14の従来構造と同じであり、説明は省略する。」

エ 「【0034】図4(a)は本発明の取付けレール110を示す一部断面斜視図である。取付けレール110はその断面が取付け下面112に直交する中心法線114に対してほぼ左右対称な形状をなしており、上側は略Y字形状で、太陽電池モジュール100の取付け上面111と中心法線114となす角度αが90度未満で、太陽電池モジュールを弓状に湾曲させるような形状として、取付け上面111は斜め上方に向いている。下側には左右にリブ115が伸びており、その取付け下面112は中心法線114と直交しており、取付け下面112は前述のルーフィング材32を介して野地板31に当接する。またリブ115から上方に向かって伸びた突起116は、取付け上面111側から万一雨水が侵入した場合に野地板31に流れないように阻止するガイドであり、取付け穴113は図1におけるロックピン130が挿入される穴である。
【0035】図4(b)は本発明の押え具120を示す一部断面斜視図である。押え具120は、その断面形状が略Y字状で中心法線に対して左右対称の形状をなしており、押え部121の押え下面122、ここでは押え部121の厚さが均一であるため、押え上面127と中心法線124とでなす角度βは、前記の角度αと同じ角度(α=β)としてある。」

オ 【図1】は以下のとおり。


カ 【図4】(a)(b)は以下のとおり。


第5 当審の判断
1 29条2項(容易性)
(1)甲第1号証を主引用例として検討
ア 対比
本件発明と甲1発明を対比する。
甲1発明の「屋根材16」、「垂木本体141」、「垂木上板142」、「下シール嵌合部141d」に嵌合する「シール材18」、「上シール嵌合部142d」に嵌合する「シール材18」、「テラス屋根10」は、それぞれ本件発明の「屋根パネル」、「垂木」、「パネル押え」、「パネル受け部」、「パネル押え部」、「屋根」に相当するから、本件発明と甲1発明とは、
「垂木と、屋根パネルと、パネル押えとを有し、垂木は、パネル受け部を有し、パネル押えは、パネル押え部を有し、パネル押えを垂木上にネジ止めし、垂木のパネル受け部とパネル押えのパネル押え部とで屋根パネルの端部を挟持している屋根。」で一致するものの、以下の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明は、垂木は、パネル受け部よりも外側に位置するパネル支持部を有し、パネル支持部は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり、屋根パネルを押し上げているのに対し、甲1発明は、垂木が本件発明のようなパネル支持部を有していない点。

相違点の判断
(ア)上記相違点1について検討する。
本件発明は、上記相違点1に係る構成により、「屋根パネル5を幅方向の中央側が上に盛り上がるように曲げる作用が働」(本件明細書段落【0016】)くものであるところ、甲1発明では、「押圧部142cにより屋根材16の縁部16bが下方に押圧される」ことにより、「屋根材16は、見付け方向における中央側が、端部側より高くなるように弾性変形されて湾曲した状態にて保持され」ている。

(イ)上記(ア)の構成の相違について、申立人は、(a)屋根パネルを傾斜して支持するために、パネル受け部より外側で屋根パネルを押し上げるか、パネル押え部より内側で屋根パネルを押し下げるかは、当業者が当然に考慮する選択肢であって、また、屋根パネルを傾斜して支持するために、屋根パネルの縁部より外側で屋根パネルを押し上げ、より内側で屋根パネルを押し下げることは、甲2?4から周知技術であるから、甲1発明における押圧部142cに代えて、甲2?4に記載されている屋根パネルの外側で押し上げる押上部を採用することは当業者であれば容易に推考しうる事項に過ぎない旨(申立書30頁4?6行、32頁1?8行)、及び、(b)パネル受け部より外側でパネル等を支持部により押し上げることは、甲5、2、6のとおり周知技術であり、屋根パネルが外側に向けて上方に傾斜している場合にパネル支持部がパネル受け部よりそれより高い位置で屋根パネルを支持することとなるのは当然のことに過ぎない旨(申立書35頁1?6行)、主張している。
そこで、上記主張について検討する。

a 主張(a)について
甲第1号証の段落【0009】に、「かかる屋外構造物の屋根であって、前記第1方向部材は、前記屋根材の端部を上下方向から挟む挟持部を有し、前記屋根材の、前記挟持部に挟まれた部位より縁部側を下方に押圧する押圧部を有していることが望ましい。」と記載されていることからみて、パネル受け部よりも外側で屋根パネルを押し上げるように替える動機付けが存在しない。
また、申立人が提出した甲第2号証ないし甲第4号証から読み取れる技術事項は、パネルを傾斜して支持するために、パネルを上下から挟持する部分において、下側の挟持部を上側の挟持部よりも屋根パネル側にずらすことであって、挟持部よりも外側に支持部を設け、該支持部を高くすることにより屋根パネルを押し上げることまでは、読み取ることはできないから、甲第2号証ないし4号証から読み取れる技術事項を甲1発明に適用したとしても、上記相違点1に係る本件発明の構成にはならない。

b 主張(b)について
甲第2号証の図9に記載された屋根パネル59の上下の挟持部をみると、その上下で内外方向にずれていることが看て取れる程度であって、挟持部の外側に支持部を設けたものとは認められないし、甲第6号証に記載されたブラケット10は、垂木に母屋を取り付けるための部材であって、屋根材自体を直接垂木に取り付けるためのものではない。そして、甲第5号証に記載の技術を甲1発明に適用することができるかどうかについて検討しても、甲1発明の押圧部142cは、上下のシール材18よりも内側に配置しており、押圧部142cとシール材18とは垂木14内にすべて設けられていることから、該シール材18の外側である垂木14の外側に、さらに支持部を設ける動機付けが存在しない。

(ウ)したがって、申立人が主張する周知技術を甲1発明に適用することにより、上記相違点1に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととは言えない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲第5号証を主引用例として検討
ア 対比
本件発明と甲5発明を対比する。
甲1発明の「屋根パネル16」、「垂木15」、「パネル押え42」、「ビート37」、「ビート36」、「ビート39」、「屋根体A」は、それぞれ本件発明の「屋根パネル」、「垂木」、「パネル押え」、「パネル受け部」、「パネル支持部」、「パネル押え部」、「屋根」に相当するから、本件発明1と甲5発明とは、
「垂木と、屋根パネルと、パネル押えとを有し、垂木は、パネル受け部と、パネル受け部よりも外側に位置するパネル支持部を有し、パネル押えは、パネル押え部を有し、パネル押えを垂木上にネジ止めし、垂木のパネル受け部とパネル押えのパネル押え部とで屋根パネルの端部を挟持している屋根。」で一致するものの、以下の点で相違している。
〔相違点2〕
パネル支持部について、本件発明は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり、屋根パネルを押し上げているのに対し、甲5発明は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあるのか、屋根パネルを押し上げているか不明である点。

相違点の判断
本件発明は、上記相違点2に係る構成により、「屋根パネル5を幅方向の中央側が上に盛り上がるように曲げる作用が働」(本件明細書段落【0016】)くものであるところ、申立人は、甲7には、太陽電池モジュールの端部を傾斜するように取り付けるための取付上面111及び押え部121を傾斜させることが記載され、甲2、4、6にも、傾斜したパネルの外側の支持部の高さを内側の支持部の高さより高くすることが記載されているとおり、屋根パネルが傾斜する場合に、パネル受け部及びパネル支持部の高さも当該傾斜に応じて変える必要があることは自明であり、上記相違点2の構成は、当業者であれば容易に採用しうる設計的事項にすぎない旨(申立書39頁17行?40頁3行)、主張している。
しかしながら、甲第5号証の段落【0008】に「屋根パネルを常にフラットに支持して全体の外観を良好に保持するとともに」と記載されていることからみて、甲5発明は、垂木15に対して屋根パネル16を傾斜させて挟持固定する動機付けはない。
また、甲第2、4、6及び7号証に記載された屋根パネルを挟持又は支持する構造と、甲5発明の屋根パネルを挟持及び支持する構造とは相違していることから、単に屋根パネルを傾斜して設けることが周知技術であったとしても、該周知技術を甲5発明に適用した上で、甲5発明の上記構造をどの様に代えるかは、さらに検討を要することである。
よって、上記相違点2に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるから、本件発明は、甲5発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 36条6項2号(明確性)
明確性について、申立人は、「本件発明は、『パネル支持部は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり』と特定しているが、単に『高い』というのみでは、その程度が不明確であり、技術常識に照らしても発明特定事項が不足していることが明らかであるから、本件発明は、明確性要件を満たしていない。」(申立書42頁3?6行)と主張している。
特許請求の範囲には、該高い位置の特定はなく、また発明の詳細な説明にも、該高い位置の説明はないものの、「屋根パネル5を幅方向の中央側が上に盛り上げるように曲げる作用が働」(段落【0016】)く程度に、本件発明において、パネル支持部の上端が、パネル受け部よりも高い位置にあればよいことは明らかであるから、本件発明の「高い位置」との特定が不明確とまではいえない。

3 36条6項1号(サポート要件)、4項1号(実施可能要件)
サポート要件及び実施可能要件について、申立人は、「明細書には、本件発明の課題及び効果として『中骨が無くても屋根パネルの撓みを防止できる』と記載されているが、本件発明には、当該課題を達成し効果を奏するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求している。すなわち、技術常識を考慮すれば、パネル支持部を、その上端がパネル受け部よりも高い位置とすることのみによって中骨を不要にできるとは考えられず、屋根パネルの剛性・寸法、屋根パネル端部の挟持力、パネル支持部の支持力、『高さ』の程度、垂木と直交する野縁等の有無などを特定し、発明の詳細な説明において当業者が実施できるように説明する必要がある。発明の詳細な説明には、どのような条件、仕様にすれば中骨を不要とできるのかが記載されていない。よって、本件発明は、サポート要件及び実施可能要件を満たしていない。」(申立書42頁9?21行)と主張している。
本件発明は、「屋根パネルを押し上げていることで、中骨がなくても屋根パネルの撓みを防止できる。」(段落【0006】)との効果を奏するにあたり、「パネル受け部よりも外側に位置するパネル支持部を有し、」「パネル支持部は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり、屋根パネルを押し上げていること」と特定されているものの、その他には特定されていない。
しかしながら、「屋根パネル5を幅方向の中央側が上に盛り上がるように曲げる作用が働き、従来のように上垂木3,3間に屋根パネル5を受ける中骨を設けなくても、屋根パネル5が自重や降雪等で撓むのを防止できる。」(段落【0016】)との記載からみて、従来より一般的に用いられている屋根パネル等を通常の方法により組み付けた上で、支持部材を「屋根パネル5を幅方向の中央側が上に盛り上げるように曲げる作用が働」く程度の高さ位置とすればよいことが理解できるから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明を実施可能な程度に記載されている。
そして、上記説示によれば、本件発明には、「パネル支持部は、上端がパネル受け部よりも高い位置にあり、屋根パネルを押し上げていること」との特定により、本件発明の課題を解決し、かつ効果を奏するための手段が反映されているといえるので、本件発明は、発明の詳細な説明に記載した発明である。


第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-04-24 
出願番号 特願2016-18837(P2016-18837)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (E04B)
P 1 651・ 121- Y (E04B)
P 1 651・ 536- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 森次 顕
特許庁審判官 住田 秀弘
秋田 将行
登録日 2019-07-26 
登録番号 特許第6560993号(P6560993)
権利者 三協立山株式会社
発明の名称 屋根  
代理人 小林 陽一  
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