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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1362381
異議申立番号 異議2020-700017  
総通号数 246 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-15 
確定日 2020-06-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6544264号発明「半導体装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6544264号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6544264号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成28年2月23日に出願され、令和1年6月28日にその特許権の設定登録がされ、令和1年7月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年1月15日に特許異議申立人田中貞嗣、小山卓志は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6544264号の請求項1?7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
半導体層の一方の主面となる表面側において設けられた第1主電極と第2主電極との間に流れる電流のオン・オフが前記第1主電極と前記第2主電極との間に設けられた制御電極の電位によって制御され、前記第1主電極と前記第2主電極との間の前記表面上において層間絶縁層を介して前記表面と対向するように設けられた電極であるフィールドプレートを具備する半導体装置であって、
前記フィールドプレートは、前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部を具備することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記テール部は、前記表面に沿って前記第1主電極と前記第2主電極とが並ぶ方向において突出することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分において、前記フィールドプレートにおける前記テール部以外において前記表面と対向する面と、前記テール部において前記表面と対向する面とは同一平面を構成し、
前記フィールドプレートにおける前記一方の端部側の面として、
前記表面から遠い側に設けられ前記表面との間でなす角度が第1テーパ角とされた面である第1端面と、
前記テール部における前記表面と対向する側と反対側の面であり前記表面との間でなす角度である第2テーパ角が前記第1テーパ角よりも小さく設定され、前記第1端面よりも前記表面に近い側に設けられた第2端面と、
を具備することを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分は前記制御電極と前記第2主電極との間に設けられ、前記第1主電極がソース電極、前記第2主電極がドレイン電極、前記制御電極がゲート電極とされた電界効果トランジスタであることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体層は前記制御電極の直下においてIII属窒化物半導体のヘテロ接合を具備し、前記電流は前記へテロ接合界面を流れることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分において、
前記フィールドプレートの最大厚さをTとし、前記テール部の最大厚さをT1として、0<T1/T≦0.5であることを特徴とする請求項3から請求項5までのいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記表面と垂直、かつ前記表面に沿って前記第1主電極と前記第2主電極とが並ぶ方向に沿った断面視において
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記テール部以外の領域の前記表面に沿った長さをa、前記テール部の前記表面に沿った長さをbとして、0.05≦b/a≦0.2の範囲であることを特徴とする請求項3から請求項6までのいずれか1項に記載の半導体装置。」

3 申立理由の概要
特許異議申立人田中卓嗣、小山卓志は、主たる証拠として、Stephen Pearton,“GaN and ZnO-based Materials and Devices”, Springer Series in Materials Science, 2012年, p.225第39?41行,p.226Fig.7.6,その説明文(以下「文献1」という。)及びNitronex Corroration, GaN essentials: Substrates for GaN RF Devices, Application notes 011, 2008年6月p.1?10(以下「文献2」という。)を提出し、請求項1?7に係る特許は、特許法第29条第1項第3号、及び同法同条第2項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1?7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、請求項1?7に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。

4 文献の記載
(1) 文献1の記載と引用発明1
ア 文献1の記載
文献1には、以下の事項が記載されている(訳文は合議体による。以下同じ。)。
(ア)「Abstract A review of nitride -based HEMT technoligy, beginning with substrate consederation and moving to crystal growth, device processing,packing, and finallu to products.・・・」(p.209第1?3行)
(「概要 窒化物系HEMT技術のレビューが、はじめに基板の考察、次に結晶成長、デバイスプロセス、パッケージ、最後に製品についてされる。・・・」

(イ)「This field plate is typically tied to the grounded source electrode (source fieldplate, or SFP) and is located above the high field region at the drain edge of the gateas shown in Fig. 7.6」(p.225第39?41行))
(訳文)
(「図7.6に示されるように、このフィールドプレートは、通常、接地されたソース電極(ソースフィールドプレート、またはSFP)に接続されており、そしてゲートのドレイン側の端における高電界領域の上方にある。」)

(ウ)「Fig. 7.6Cross-sectional STEM of GaN-on-Si HEMT shown epilayers and device construction」(「図7.6 エピ層と素子構造を示すGaN-on-Si HEMTの断面STEM」)

(エ)Fig.7.6は、以下のとおりである。



Fig.7.6から、以下の構成が見て取れる。
「GaN層の表面に設けられたソースオーミック及びドレインオーミックと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間に設けられたゲートと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間の前記表面においてSiNxと表記された層、下側の黒色層、灰色層、上側の黒色層を介して前記表面と対向するように設けられたSFPと表記された層とを具備するHEMTであって、
SFPの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレインオーミックとの間に設けられるHEMT。」

(オ)そうすると、文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「窒化物系HEMTであって、
GaN層の表面に設けられたソースオーミック及びドレインオーミックと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間に設けられたゲートと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間の前記表面においてSiN_(x)層を介して前記表面と対向するように設けられフィールドプレートとを具備し、
フィールドプレートは、接地されたソース電極(ソースフィールドプレート、またはSFP)に接続されており、そしてゲートのドレイン側の端における高電界領域の上方にあり、
SFPの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレインオーミックとの間に設けられるHEMT。」

イ 文献2の記載と引用発明2
次に、文献2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「2. Abstract
The commercialization of III-nitridetechnology and fabrication of high quality GaN based devices has been madepossible due to the advances in the deposition of III-V thin-films on Sisubstrates.」)(p.3第1?2行)
(「III族窒化物技術の商業化及び高品質のGaNベースのデバイスの製造は、Si基板上へのIII-N薄膜の堆積の進歩により可能になった。」)

(イ)「GaN HEMT shave been demonstrated on Si, SiC, sapphire and on native GaN substrates.However, Si and SiC are the preferred choices for RF devices. The maturity ofthe AlGaN/GaN heterostructures in terms of reliability, cost andmanufaturability has been demonstrated through the use of commerciallyavailable high resistivity 100-mm Si substrates.」(p.3下から3行目?p.4の1行目
(「GaN HEMTは、Si、SiC、サファイア及びネイティブGaN基板上で実証されている。ただし、RFデバイスにはSiとSiCが推奨される。信頼性、コスト、製造性の観点において、市販の高抵抗100mmSi基板の使用したAlGaN/GaNヘテロ構造の成熟度は実証されている。」)

(ウ)「Figure 1. Cross section SEM image of 0.5μm NRF1 fieldplated AlGaN/GaN HEMT technology. 」
(「図1、0.5ミクロン NRF1 フィールドプレート付きAlGaN/GaN HEMTのSEM断面画像」)

(エ)Figure 1は、以下のとおりである。


Figure 1から、以下の構成が見て取れる。
「表面に設けられたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲートと、ソース電極とドレイン電極との間の前記表面において不動態化層(パッシべーション層、下側の黒色層、灰色層、上側の黒色層)を介して前記表面と対向するように設けられたフィールドプレートとを具備するAlGaN/GaN HEMTであって、
フィールドプレートの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレイン電極との間に設けられるHEMT。」

(オ)そうすると、文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「表面に設けられたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲートと、ソース電極とドレイン電極との間の前記表面において不動態化層(パッシべーション層)を介して前記表面と対向するように設けられたフィールドプレートとを具備するAlGaN/GaN HEMTであって、
フィールドプレートの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレイン電極との間に設けられるHEMT。」

5 当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号、第2項について
ア 請求項1に係る発明について
(ア)引用発明1との対比
請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。また、請求項2?7に係る発明を、順にそれぞれ「本件発明2」?「本件発明7」という。)と引用発明1とを対比する。

a 引用発明1の「HEMT」、「GaN層」、「ソースオーミック」と「ドレインオーミック」、「ゲート」、「SiN_(x)層」、「フィールドプレート」は、それぞれ本件発明1の「半導体装置」、「半導体層」、「第1主電極」と「第2主電極」、「制御電極」、「層間絶縁層」、「フィールドプレート」に相当する。

b 引用発明1は、「GaN層の表面に設けられたソースオーミック及びドレインオーミックと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間に設けられたゲートと、ソースオーミックとドレインオーミックとの間の前記表面においてSiN_(x)層を介して前記表面と対向するように設けられたフィールドプレートとを具備し」、「フィールドプレートは、接地されたソース電極(ソースフィールドプレート、またはSFP)に接続されて」いる「HEMT」であるから、「ソースオーミック及びドレインオーミック」は、「半導体層の一方の主面となる表面側」において設けられた電極であり、「ソースオーミックとドレインオーミックとの間に流れる電流のオン・オフが前記ソースオーミックと前記ドレインオーミックとの間に設けれたゲートの電位によって制御され」る半導体装置であることが明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明1とは、「半導体層の一方の主面となる表面側において設けられた第1主電極と第2主電極との間に流れる電流のオン・オフが前記第1主電極と前記第2主電極との間に設けられた制御電極の電位によって制御され、前記第1主電極と前記第2主電極との間の前記表面上において層間絶縁層を介して前記表面と対向するように設けられた電極であるフィールドプレートを具備する半導体装置」である点で一致する。

c そうすると、本件発明1と引用発明1との間には、次の一致点と相違点がある。
<一致点>
「半導体層の一方の主面となる表面側において設けられた第1主電極と第2主電極との間に流れる電流のオン・オフが前記第1主電極と前記第2主電極との間に設けられた制御電極の電位によって制御され、前記第1主電極と前記第2主電極との間の前記表面上において層間絶縁層を介して前記表面と対向するように設けられた電極であるフィールドプレートを具備する半導体装置。」

<相違点>
<相違点1>
本件発明1は、「前記フィールドプレートは、前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部を具備する」のに対し、引用発明1では、そのような特定はなされていない点。

(イ)本件発明1と引用発明1との相違点についての判断
a 相違点1について
引用発明1では、「ソースオーミックとドレインオーミックとの間の前記表面においてSiN_(x)層を介して前記表面と対向するように設けられフィールドプレートとを具備し、 フィールドプレートは、接地されたソース電極(ソースフィールドプレート、またはSFP)に接続されており、そしてゲートのドレイン側の端における高電界領域の上方にあり、 SFPの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレインオーミックとの間に設けられる」ものの、文献1の上記箇所以外を精査しても、文献1には、フィールドプレートのGaN層の表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、「当該部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部」について、記載も示唆もされていない。

したがって、相違点1は、実質的な相違点であり、また、引用発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。

b したがって、本件発明1は、引用発明1であるということはできず、また、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 特許異議申立人田中貞嗣、小山卓志は、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(ア)ウ)」において、以下のように主張する。
「ウ)構成要件C,Dについて
甲第1号証における図7.6の記載及び第225頁39行目から第1行の記載によれば、「SFP」における「ゲート」と「ドレイン」の間に位置する部分の端部から、当該端部よりも厚さの薄い「薄厚部」が延びていると言える。
また、甲第1号証における図7.6の記載によれば、甲1発明における「薄厚部」は、「SFP」の端部から「GaN層」の表面に沿って「ドレイン」側へ延びて突出していることが認められる。
したがって、甲1発明における「SFPにおけるゲートとドレインとの間に位置する部分の端部に設けられ、厚さが薄く、かつドレイン側へ延びた薄厚部」は、本件特許発明1における「フィールドプレートの半導体層の表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部」に相当する。」(異議申立書18ページ1?16行)

しかしながら、文献1(甲第1号証)の図7.6において、SFP(白色層)のドレインオーミック側の端部から延びている薄厚部を見て取ることはできない。
異議申立人は、異議申立書の12ページ14?20行において、図7.6における下側の黒色層、灰色層、上側の黒色層及び白色層が電気的に接続されており、その積層構造全体がSPFである旨を主張するが、文献1及び文献2には、そのような記載はなく、また、文献1及び文献2の記載と技術常識から、上記構成が自明であると認めることもできない。
また、文献1の第225頁39行目から第1行には、「図7.6に示されるように、このフィールドプレートは、通常、接地されたソース電極(ソースフィールドプレート、またはSFP)に接続されており、そしてゲートのドレイン側の端における高電界領域の上方にあります。」と記載されており、当該記載を参照しても、「SFP」における「ゲート」と「ドレイン」の間に位置する部分の端部から延びている「薄厚部」が示されているとはいえない。

したがって、申立人の上記主張を採用することはできない。

(ウ)引用発明2との対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。

a 引用発明2の「HEMT」、「ソース電極」と「ドレイン電極」、「ゲート」、「不動態化層(パッシべーション層)」、「フィールドプレート」は、それぞれ本件発明1の「半導体装置」、「第1主電極」と「第2主電極」、「制御電極」、「層間絶縁層」、「フィールドプレート」に相当する。

b 引用発明2は、「表面に設けられたソース電極及びドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲートと、ソース電極とドレイン電極との間の前記表面において不動態化層(パッシべーション層)を介して前記表面と対向するように設けられたフィールドプレートとを具備するAlGaN/GaN HEMT」であるところ、「AlGaN/GaN HEMT」に係る発明であるから、「ソース電極及びドレイン電極」は、「半導体層の一方の主面となる表面側」において設けられた電極であり、「ソース電極とドレイン電極との間に流れる電流のオン・オフが前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けれたゲートの電位によって制御され」る半導体装置であることが明らかである。
したがって、本件発明1と引用発明2とは、「半導体層の一方の主面となる表面側において設けられた第1主電極と第2主電極との間に流れる電流のオン・オフが前記第1主電極と前記第2主電極との間に設けられた制御電極の電位によって制御され、前記第1主電極と前記第2主電極との間の前記表面上において層間絶縁層を介して前記表面と対向するように設けられた電極であるフィールドプレートを具備する半導体装置」である点で一致する。

c そうすると、本件発明1と引用発明2との間には、次の一致点と相違点がある。
<一致点>
「半導体層の一方の主面となる表面側において設けられた第1主電極と第2主電極との間に流れる電流のオン・オフが前記第1主電極と前記第2主電極との間に設けられた制御電極の電位によって制御され、前記第1主電極と前記第2主電極との間の前記表面上において層間絶縁層を介して前記表面と対向するように設けられた電極であるフィールドプレートを具備する半導体装置。」

<相違点>
<相違点2>
本件発明1は、「前記フィールドプレートは、前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、
前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部を具備する」のに対し、引用発明2では、そのような特定はなされていない点。

(エ)本件発明1と引用発明2との相違点についての判断
a 相違点2について
引用発明2は、「ソース電極とドレイン電極との間に設けられたゲートと、ソース電極とドレイン電極との間の前記表面において不動態化層(パッシべーション層)を介して前記表面と対向するように設けられたフィールドプレートとを具備するAlGaN/GaN HEMTであって、 フィールドプレートの前記表面と対向する部分は、ゲートとドレイン電極との間に設けられる」ものの、文献2の上記箇所以外を精査しても、文献2には、フィールドプレートのGaN層の表面と対向する部分の前記表面に沿った方向における一方の端部側において、「当該部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部」について、記載も示唆もされていない。

したがって、相違点2は、実質的な相違点であり、また、引用発明2において、相違点2に係る本件発明1の構成を採用することは当業者が容易に想到することができたものではない。

b したがって、本件発明1は、引用発明2であるということはできず、また、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

c 特許異議申立人田中貞嗣、小山卓志は、「3 申立ての理由」の「(4)ウ(タ)」において、以下のように主張する。
「(イ)甲第2号証
甲第2号証(・・・)の図1は、甲第1号証における図7.6と同様のSEM画像である。したがって、甲第2号証には、「甲1発明」、・・・と同様の発明が記載されていると認められる。」(異議申立書16ページ10?17行)
「(タ)本件特許発明1?7と甲2発明?甲2第7発明との対比(特許法第29条第2項)
上記(イ)欄で検討したものと同様の理由により、本件特許発明1?7は、甲2発明?甲2第7発明から容易に想到できたものである。」(異議申立書26ページ17?20行)

しかしながら、文献2(甲第2号証)には、そのFigure.1が文献1における図7.6と同じSEM画像であることも、同様な画像であるとの記載も示唆もない。
また、仮に、文献2のFigure.1が文献1(甲第1号証)における図7.6と同様のSEM画像であるとしても、上記(イ)cのとおりであるから、申立人の上記(タ)の主張も採用することはできない。

イ 本件発明2?7について
本件発明2?7は、それぞれ、本件発明1に対して、さらに技術的事項を追加したものを含む発明である。
よって、上記ア(イ)、(エ)に示した理由と同様の理由により、本件発明2?7は、引用発明1又は引用発明2であるということはできず、また、本件発明2?7は、引用発明1又は引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

ウ 特許法第29条第1項第3号、第2項についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1?7は、文献1に記載された発明又は文献2に記載された発明であるということはできず、また、本件発明1?7は、文献1に記載された発明又は文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)特許法第36条第4項第1号について
本件の請求項1には、「前記フィールドプレートは」、「前記フィールドプレートの前記表面と対向する部分における前記端部よりも他方の側の領域よりも薄く形成され、かつ前記表面に近い側において前記表面に沿って前記一方の側に突出するように設けられたテール部を具備する」と記載されている。
フィールドプレートにテール部を形成することに関連して、本件特許明細書には、以下のように記載されている。
「【0025】
その後、図4(c)に示されるように、後にフィールドプレート24となる金属層30を全面に成膜する。・・・、金属層30は、配線として使用可能な低抵抗の金属材料(例えばAl)で構成される。
【0026】
その後、図4(d)に示されるように、金属層30を加工してフィールドプレート24とするためのマスクとなるフォトレジスト層300を形成する。その後、図4(e)に示されるように、フォトレジスト層300をマスクとして金属層30のドライエッチングを行う。
【0027】
ここで、周知のように、ドライエッチングの際には、マスク(フォトレジスト層300)の極近傍においては、マスクから充分離れた領域と比べてエッチング速度が低下する。このため、図4(f)に示されるように、フォトレジスト層300から充分離れた領域で金属層30がエッチングされた状態では、フォトレジスト層300の周囲にテール部24Cが形成される。
【0028】
このため、この状態でフォトレジスト層300を除去した図4(g)の状態で、図1におけるフィールドプレート24が、第1層間絶縁層12A上に形成される。・・・」

段落【0027】に記載の、ドライエッチングの際には、マスク(フォトレジスト層300)の極近傍においては、マスクから充分離れた領域と比べてエッチング速度が低下するため、フォトレジスト層300から充分離れた領域で金属層30がエッチングされた状態では、フォトレジスト層300の周囲にテール部24Cが形成されるとの技術的事項は、ドライエッチングの際に、特定の装置、特定のガス種、特定のエッチング条件とすることによってのみ、テール部を形成することができるということではなく、ドライエッチングにおける一般的な技術的事項であるものとは認められる。

したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、フォトレジスト層300をマスクとして、例えばAlからなる金属層30のドライエッチングを行うこと、及び、フォトレジスト層300から充分離れた領域で金属層30がエッチングされた状態では、フォトレジスト層300の周囲にテール部24Cが形成されるため、この状態でフォトレジスト層300を除去すると、テール部24Cを具備するフィールドプレート24が、第1層間絶縁層12A上に形成されることが開示されている。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものである。

6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-05-21 
出願番号 特願2016-31741(P2016-31741)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (H01L)
P 1 651・ 121- Y (H01L)
P 1 651・ 113- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 恩田 和彦  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 恩田 春香
小川 将之
登録日 2019-06-28 
登録番号 特許第6544264号(P6544264)
権利者 サンケン電気株式会社
発明の名称 半導体装置  
代理人 前島 幸彦  
代理人 堀 城之  
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