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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1362675
審判番号 不服2019-4470  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-04-04 
確定日 2020-05-20 
事件の表示 特願2017-156802「ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス、及び、携帯可能な医療超音波撮像デバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-213427〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)3月26日(パリ条約による優先権主張 2012年3月26日 米国、2012年9月21日 米国、2013年3月15日 米国)を国際出願日として出願した特願2015-503476号の一部を、平成29年8月15日に新たに出願したものであって、平成30年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年11月8日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同月29日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)されたところ、平成31年4月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成31年4月4日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年4月4日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
フロントパネルを有するタブレット筐体と、
少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有する、前記タブレット筐体内のコンピュータと、
超音波画像を表示するタッチスクリーンディスプレイと、
トランスデューサーアレイを有するトランスデューサプローブ筐体と、
前記トランスデューサプローブ筐体内に配置された超音波ビームフォーマー処理回路と、
を備え、
前記タッチスクリーンディスプレイは、前記フロントパネル上に配置され、
前記タッチスクリーンディスプレイと前記コンピュータとは、前記タブレット筐体内のバッテリから電力を受け取り、
前記タッチスクリーンディスプレイと前記超音波ビームフォーマー処理回路とは、前記コンピュータに通信可能に接続されており、
前記コンピュータは、前記タッチスクリーンディスプレイからの第1のジェスチャ入力に呼応して、前記超音波ビームフォーマー処理回路の動作を変更するように動作可能であり、
ユーザが閲覧するための前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され、
前記表示領域は、超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する、
ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成30年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 【請求項1】
フロントパネルを有するタブレット筐体と、
少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有する、前記タブレット筐体内のコンピュータと、
超音波画像を表示するタッチスクリーンディスプレイと、
トランスデューサーアレイを有するトランスデューサプローブ筐体と、
前記トランスデューサプローブ筐体内に配置された超音波ビームフォーマー処理回路と、
を備え、
前記タッチスクリーンディスプレイは、前記フロントパネル上に配置され、
前記タッチスクリーンディスプレイと前記コンピュータとは、前記タブレット筐体内のバッテリから電力を受け取り、
前記タッチスクリーンディスプレイと前記超音波ビームフォーマー処理回路とは、前記コンピュータに通信可能に接続されており、
前記コンピュータは、前記タッチスクリーンディスプレイからの第1のジェスチャ入力に呼応して、前記超音波ビームフォーマー処理回路の動作を変更するように動作可能である、
ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス。」

2 補正の適否
本件補正は、「ユーザが閲覧するための前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され、前記表示領域は、超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する」という限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特表2008-515583号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。(下線は、当審にて付した。以下同様。)

(引1a)「【0023】
図1を参照すると、本発明に基づく超音波撮像システム10は超音波スキャナ12、超音波スキャナ12を制御するための電気機械サブシステム14、電気機械サブシステム14を制御するための処理ユニットまたはコンピュータ16ならびに超音波画像および仮想コントロールが表示されるタッチスクリーン18を含む。電気機械サブシステム14は、コンピュータソフトウェア、モニタおよびタッチスクリーンインターフェースとは別に超音波撮像システム10の電気的および機械的な諸サブシステムを実装する。たとえば、電気機械サブシステム14は、超音波スキャナ12を動作させ、そのインターフェースとなるための必要な構造を含む。
【0024】
コンピュータ16は電気機械サブシステム14とのインターフェースとなり、それを制御する必要なハードウェアおよびソフトウェアを含む。たとえば、マイクロプロセッサ、メモリおよびインターフェースカードである。メモリは超音波撮像システム10のさまざまな機能を実装するソフトウェア命令を保存している。
【0025】
タッチスクリーン18はコンピュータ16に線でつながれたモニタ上に、あるいはコンピュータ16に無線で結合された可搬ディスプレイ装置上に、あるいはその両方に実装されうる。タッチスクリーン18は、超音波撮像プロセスの所望の制御変化を示すコマンド信号のコンピュータ16による形成を可能にすることによって、超音波撮像システム10に対する完全な制御を提供する。タッチスクリーン18は抵抗性、容量性またはその他のタッチスクリーン18であってよく、コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置を提供する。タッチスクリーン18のタッチの位置はコンピュータ16による個別的な制御機能に関連付けられる。その制御機能はタッチスクリーン18のタッチされた位置に表示されたものであり、コンピュータ16はその関連付けられている制御機能を実行する。すなわち、電気機械サブシステム14を制御するためのコマンド信号を生成することによってである。
【0026】
本発明のある重要な側面は、超音波撮像システム10を制御するための入力は、ハードUIコンポーネント、たとえばボタン、トラックボール、機能キーおよびTGCポテンショメータなどにも、EL(電界発光)ディスプレイのような別個のソフトUIコンポーネントにも要求されないことである。そのようなハードおよびソフトUIコンポーネントによって実行される制御機能のすべては今や、超音波画像と一緒にタッチスクリーン18上に表示される仮想コントロールによって表される。このように、データ入力のための別個のキーボードならびに他のハードUIコンポーネントの必要性はなくなっている。
【0027】
図2は、超音波撮像システム10の動作の間のタッチスクリーン18上の仮想コントロールのレイアウトのサンプルを示している。タッチスクリーン18は利用可能な表示領域または視野20の中に超音波画像の全体を表示するか、あるいは超音波画像を視野20の一部分にある一つまたは複数の重畳されたアクティブ化領域22、24、26と一緒に表示するかする。アクティブ化領域22、24、26は、キー、ボタン、トラックボールおよびTGCポテンショメータといったハードUIコントロールを含む超音波撮像システム10の通常のコントロールを画面上の仮想デバイスとして実装したものを表す。
【0028】
コンピュータ16は、視野20上での超音波画像の全画面表示と、超音波画像および撮像モードに依存しうる選択されたアクティブ化領域22、24、26の表示との間でユーザーがトグルすることを許容するようプログラム可能である。超音波画像およびアクティブ化領域22、24、26が視野20を共有するときには、コンピュータ16はより小さな隠蔽されない画像を該画像の一つまたは複数の辺に置かれたアクティブ化領域22、24、26とともに呈示するか、あるいは代替的にフルサイズの画像をその画像の上に任意的に半透明の形で重畳されたアクティブ化領域22、24、26とともに呈示するようプログラム可能でありうる。これらの選択肢はシステムセットアップの間にユーザーが選好として設定しうる。異なる撮像モードは異なるアクティブ化領域22、24、26の呈示につながり、また該アクティブ化領域22、24、26についての異なるラベルにつながる。」

(引1b)「【0033】
いくつかの例では、実行されるべき正確な機能を示すためには、ユーザーはアクティブ化領域22に触れる際に横切るようになぞることが必要である。すなわち、スライディング・タッチである。たとえば、利得とラベル付けされたアクティブ化領域に触れることで利得の上昇および低下の両方ができ、利得の上昇に一つ、利得の低下に一つという別個のアクティブ化領域は必要とされない。利得を上げるには、ユーザーは利得とラベル付けされたアクティブ化領域22を上向きに一回または複数回指でなぞる。上向きになぞるたびにそれが検出され、利得の上昇が引き起こされる。他方、利得を下げるには、ユーザーは利得アクティブ化領域で下向きに指をなぞる。」

(引1c)「【0053】
たとえば、アクティブ化領域22は、図6Aにおけるグラフィック70によって例示されるように、画像の水平/垂直並進を示すグラフィック記号を含みうる。このアクティブ化領域に触れると、そのアクティブ化領域は好ましくは、たとえばハイライトされた境界線またはグラフィック色の変化によってハイライトされた状態に変わる。するとユーザーは、画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その画像を視野20内で水平方向または垂直方向に並進させうる。短い期間の間ユーザーによる画像移動がなかったら、あるいは別のアクティブ化領域に触れられた場合、画像並進に関連付けられたアクティブ化領域22はコンピュータ16によって自動的にハイライト解除され、並進機能が無効にされる。さらなる例として、アクティブ化領域22は、図6Bのグラフィック72によって示されるように、画像回転のためのグラフィック記号を含みうる。このアクティブ化領域に触れられると、該アクティブ化領域は好ましくはハイライトされた状態に代わり、するとユーザーは画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その3D画像を視野20内で水平軸または垂直軸のまわりに回転させうる。短い期間の間ユーザーによる画像回転がなかったら、あるいは別のアクティブ化領域に触れられた場合、画像回転に関連付けられたアクティブ化領域22はコンピュータ16によって自動的にハイライト解除され、回転機能が無効にされる。」

(引1d)「【0056】
上記のタッチスクリーン・ユーザーインターフェースは費用およびスペースが貴重な小型の可搬式超音波システムについて特に好適である。よって、タブレットPCは前記ユーザーインターフェースのために理想的なアプリケーションである。
【0057】
さらに、超音波スキャナは非常に小さくなってきており、本発明のある実装では、超音波撮像システムは、標準的なインターフェース接続(有線または無線)および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブと、前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPCと、前記タブレットPCにおいてソフトウェアとして具現された上記のユーザーインターフェースであって、アクティブ化領域を形成し、前記タブレットPCの画面上に超音波画像を表示する機能をもったユーザーインターフェースとを含む。」

(引1e)「図2



(イ)引用文献1に記載された発明
a 上記(引1a)?(引1c)及び(引1e)より、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。

「超音波スキャナ12、超音波スキャナ12を制御するための電気機械サブシステム14、電気機械サブシステム14を制御するためのコンピュータ16ならびに超音波画像および仮想コントロールが表示されるタッチスクリーン18を含む超音波撮像システム10において、
電気機械サブシステム14は、コンピュータソフトウェア、モニタおよびタッチスクリーンインターフェースとは別に超音波撮像システム10の電気的および機械的な諸サブシステムを実装し、
電気機械サブシステム14は、超音波スキャナ12を動作させ、そのインターフェースとなるための必要な構造を含み、
コンピュータ16は電気機械サブシステム14とのインターフェースとなり、それを制御する必要なハードウェアであるマイクロプロセッサ、メモリおよびインターフェースカードを含み、
タッチスクリーン18はコンピュータ16に線でつながれたモニタ上に実装され、
タッチスクリーン18は、超音波撮像プロセスの所望の制御変化を示すコマンド信号のコンピュータ16による形成を可能にすることによって、超音波撮像システム10に対する完全な制御を提供し、
タッチスクリーン18は、コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置を提供し、
タッチスクリーン18のタッチの位置は、タッチスクリーン18のタッチされた位置に表示されたコンピュータ16による個別的な制御機能に関連付けられ、
コンピュータ16は電気機械サブシステム14を制御するためのコマンド信号を生成することによってその関連付けられている制御機能を実行し、
超音波撮像システム10の動作の間のタッチスクリーン18上の仮想コントロールのレイアウトは視野20の中に超音波画像を視野20の一部分にある一つまたは複数の重畳されたアクティブ化領域22、24、26と一緒に表示し、
アクティブ化領域22、24、26は、キー、ボタン、トラックボールおよびTGCポテンショメータといったハードUIコントロールを含む超音波撮像システム10の通常のコントロールを画面上の仮想デバイスとして実装したものを表し、
アクティブ化領域22は、利得とラベル付けされたアクティブ化領域を含み、この領域をスライディング・タッチで上向きになぞるたびに、利得の上昇が引き起こされ、
アクティブ化領域22は、画像の水平/垂直並進を示すグラフィック記号であるグラフィック70を含み、このアクティブ化領域に触れると、そのアクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり、画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その画像を視野20内で水平方向または垂直方向に並進させ、
アクティブ化領域22は、画像回転のためのグラフィック記号であるグラフィック72を含み、このアクティブ化領域に触れられると、該アクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その3D画像を視野20内で水平軸または垂直軸のまわりに回転させる
超音波撮像システム10。」

b 上記(引1d)には、「タッチスクリーン・ユーザーインターフェースは費用およびスペースが貴重な小型の可搬式超音波システムについて特に好適であ」って、「タブレットPCは前記ユーザーインターフェースのために理想的なアプリケーションであ」り、そのための「超音波撮像システムは、標準的なインターフェース接続および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブと、前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPCと、前記タブレットPCにおいてソフトウェアとして具現された上記のユーザーインターフェースであって、アクティブ化領域を形成し、前記タブレットPCの画面上に超音波画像を表示する機能をもったユーザーインターフェースとを含む」旨記載されているから、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。

「標準的なインターフェース接続および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブと、
前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPCと、
前記タブレットPCにおいてソフトウェアとして具現された上記のユーザーインターフェースであって、アクティブ化領域を形成し、前記タブレットPCの画面上に超音波画像を表示する機能をもったユーザーインターフェースとを含む
小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システム。」

c 上記aにおける技術事項の「電気機械サブシステム14」は、「超音波スキャナ12を動作させ、そのインターフェースとなるための必要な構造を含」んでおり、また、上記aにおける技術事項の「コンピュータ16は電気機械サブシステム14とのインターフェースとなり」、「タッチスクリーン18はコンピュータ16に線でつながれたモニタ上に実装され」ているから、上記bにおける技術事項の「小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システム」における構成要素と、上記aにおける技術事項の「超音波撮像システム10」の構成要素を対応させると、上記bにおける技術事項の「標準的なインターフェース接続および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブ」は、上記aにおける技術事項の「電気機械サブシステム14」及び「超音波スキャナ12」からなるものであって、上記bにおける技術事項の「前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPC」は、上記aにおける技術事項の「コンピュータ16」、「コンピュータ16に線でつながれたモニタ」及び「モニタ上に実装され」た「タッチスクリーン18」からなるものであり、上記aにおける技術事項の「超音波撮像システム10の動作の間のタッチスクリーン18上の仮想コントロール」は、上記bにおける技術事項の「前記タブレットPCの画面上」の「ユーザーインターフェース」であるといえる。そして、上記aにおける技術事項の「タッチスクリーン18」は、「前記タブレットPCの画面上」に実装されていることは明らかである。
そうすると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「電気機械サブシステム14及び超音波スキャナ12からなる、標準的なインターフェース接続および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブと、
コンピュータ16、コンピュータ16に線でつながれたモニタ及びモニタ上に実装されたタッチスクリーン18からなる、前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPCと、
前記タブレットPCにおいてソフトウェアとして具現された上記のユーザーインターフェースであって、アクティブ化領域を形成し、前記タブレットPCの画面上に超音波画像を表示する機能をもったユーザーインターフェースとを含む
小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システムであって、
電気機械サブシステム14は、コンピュータソフトウェア、モニタおよびタッチスクリーンインターフェースとは別に超音波撮像システムの電気的および機械的な諸サブシステムを実装し、
電気機械サブシステム14は、超音波スキャナ12を動作させ、そのインターフェースとなるための必要な構造を含み、
コンピュータ16は電気機械サブシステム14とのインターフェースとなり、それを制御する必要なハードウェアであるマイクロプロセッサ、メモリおよびインターフェースカードを含み、
タッチスクリーン18は前記タブレットPCの画面上に実装され、
タッチスクリーン18は、超音波撮像プロセスの所望の制御変化を示すコマンド信号のコンピュータ16による形成を可能にすることによって、超音波撮像システムに対する完全な制御を提供し、
タッチスクリーン18は、コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置を提供し、
タッチスクリーン18のタッチの位置は、タッチスクリーン18のタッチされた位置に表示されたコンピュータ16による個別的な制御機能に関連付けられ、
コンピュータ16は電気機械サブシステム14を制御するためのコマンド信号を生成することによってその関連付けられている制御機能を実行し、
超音波撮像システムの動作の間のタッチスクリーン18上の仮想コントロールのレイアウトは視野20の中に超音波画像を視野20の一部分にある一つまたは複数の重畳されたアクティブ化領域22、24、26と一緒に表示し、
アクティブ化領域22、24、26は、キー、ボタン、トラックボールおよびTGCポテンショメータといったハードUIコントロールを含む超音波撮像システム10の通常のコントロールを画面上の仮想デバイスとして実装したものを表し、
アクティブ化領域22は、利得とラベル付けされたアクティブ化領域を含み、この領域をスライディング・タッチで上向きになぞるたびに、利得の上昇が引き起こされ、
アクティブ化領域22は、画像の水平/垂直並進を示すグラフィック記号であるグラフィック70を含み、このアクティブ化領域に触れると、そのアクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり、画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その画像を視野20内で水平方向または垂直方向に並進させ、
アクティブ化領域22は、画像回転のためのグラフィック記号であるグラフィック72を含み、このアクティブ化領域に触れられると、該アクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その3D画像を視野20内で水平軸または垂直軸のまわりに回転させる
小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システム。」

イ 引用文献4について
(ア)引用文献4に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2005-137747号公報(以下「引用文献4」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引4a)「【0013】
この超音波診断装置は、大きくは、超音波診断装置の本体11と、超音波プローブ12と、超音波画像を表示し入力操作信号を入力する表示入力制御部13と、本体11に外部から入力制御信号を入力する入力部14と、心拍情報を検知する心拍検知器15とから成る。」

(引4b)「【0016】
表示入力制御部13は、画像発生回路27の出力を受信し画像を表示する表示部31と、画像などに対する制御のための入力部32と、センター部33とから成る。
【0017】
本発明は、上記表示入力制御部13の入力部32における入力機構を改良するものであり、操作者の指の動きにより入力操作を可能とする。」

(引4c)「【0022】
また図3に示すように、操作者は表示部31の画面上で、自己の人差し指を画面に押し付け、引っ張る(ドラッグ)ことにより、上記アローカーソル36を移動させることができ、更に引いていったあるところで、差し指34を画面35から離す(ドロップ)ことによってその位置にアローカーソル36を固定することができる。
【0023】
また、図4に示すように、超音波診断装置の表示部31の画面内の外縁、即ち超音波画像41の横には、グラフィックユーザインターフェース(GUI)のスイッチ42が表示され、更にその外側には、ロータリーエンコーダのボタン43が表示される。
【0024】
そこで、上記のように操作者は例えばその人差し指45で、表示画面上のGUIのスイッチ42の1つに触れることにより、その触れたスイッチに対応するトグル操作(オン・オフを含む)を行い、対応するサブメニューを例えばプルダウンメニューとして表示させ、その中から選択できるようにすることができる。」

(引4d)「【0027】
また、図6に示すように、操作者は自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすることにより、ROIを移動させることができる。また、図7に示すように操作者は、自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすることにより、ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変えることが可能となる。」

(イ)引用文献4に記載された技術事項
上記(ア)より、引用文献4には、以下の技術事項(以下「技術事項4」という。)が記載されている。

「超音波診断装置の本体11と、
超音波プローブ12と、
超音波画像を表示し入力操作信号を入力する表示入力制御部13とを含む超音波診断装置において、
表示入力制御部13は、画像を表示する表示部31と、画像などに対する制御のための入力部32とを含み、
上記表示入力制御部13の入力部32における入力機構を、操作者の指の動きにより入力操作を可能とし、
操作者は表示部31の画面上で、自己の人差し指を画面に押し付け、引っ張る(ドラッグ)ことにより、アローカーソル36を移動させることができ、更に引いていったあるところで、人差し指34を画面35から離す(ドロップ)ことによってその位置にアローカーソル36を固定することができ、
超音波診断装置の表示部31の画面内の外縁、即ち超音波画像41の横には、グラフィックユーザインターフェース(GUI)のスイッチ42が表示され、
操作者は人差し指45で、表示画面上のGUIのスイッチ42の1つに触れることにより、その触れたスイッチに対応するトグル操作(オン・オフを含む)を行い、対応するサブメニューを例えばプルダウンメニューとして表示させ、その中から選択できるようにすることができ、
操作者は自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすることにより、ROIを移動させることができ、
操作者は、自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすることにより、ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変えることが可能となる
超音波診断装置。」

ウ 引用文献6について
(ア)引用文献6に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2003-190159号公報(以下「引用文献6」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

(引6a)「【0011】
【発明の実施の形態】図1は、本発明の一実施例に従った携帯超音波システム5の概略ブロック線図である。超音波システム5のいくつかの図示されている要素は取り外し自在の変換器モジュール10と、ビーム整形モジュール40と、PDA装置120と、オプションである外部バッテリ/電源110とを含む。変換器モジュール10はビーム整形モジュール40に装着されて、ハンドヘルドプローブアセンブリ2を形成する。本発明の一実施例では、PDA120はPDA120及びハンドヘルドプローブアセンブリ2に電力を供給するための内部バッテリを含む。バッテリパワーインタフェース140はPDA120とハンドヘルドプローブアセンブリ2との間に接続している。図2は、超音波システム5を更に現実に即して示している。
【0012】変換器モジュール10は64素子変換器アレイ20と、64チャネル/16チャネルマルチプレクサ30とを具備する。ビーム整形モジュール40はパルサ60と、TX/RX切り替えモジュール35と、フォルダモジュール50と、電圧制御増幅器(VCA)70と、アナログ/デジタル変換器(ADC)80と、ビーム整形ASIC90と、PDAインタフェースコントローラ100とを具備する。PDA装置120は、Windows-CE(商標)アプリケーションなどのWindows(商標)を実行し且つタッチスクリーン表示部125を有するパームパイロットなどの標準汎用装置である。また、PDA120は、複数の超音波撮影モードを支援するために超音波データ処理及びアプリケーションソフトウェアを含むように変形されている。」

(イ)引用文献6に記載された技術事項
上記(ア)より、引用文献6には、以下の技術事項(以下「技術事項6」という。)が記載されている。

「PDA装置120と、ハンドヘルドプローブアセンブリ2とを含む携帯超音波システム5において、
PDA120はPDA120に電力を供給するための内部バッテリを含み、
PDA装置120は、Windows-CE(商標)アプリケーションなどのWindows(商標)を実行し且つタッチスクリーン表示部125を有する
携帯超音波システム5。」

(3)引用発明との対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明の「小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システム」は、本件補正発明の「ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス」に相当する。

b 引用発明の「コンピュータ16、コンピュータ16に線でつながれたモニタ及びモニタ上に実装されたタッチスクリーン18からなる、前記走査プローブとのインターフェース接続をもつタブレットPC」は、通常、フロントパネルを有するタブレット筐体内に「コンピュータ16」等を有しているものであるから、引用発明の「小型の可搬式超音波システムである超音波撮像システム」と、本件補正発明の「ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス」とは、「フロントパネルを有するタブレット筐体」を備えている点で一致する。

c 引用発明の「コンピュータ16」は、上記bで検討したとおり、フロントパネルを有するタブレット筐体内にあるものであるから、引用発明の「マイクロプロセッサ、メモリを含」む「コンピュータ16」は、本件補正発明の「少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有する、前記タブレット筐体内のコンピュータ」に相当する。

d 引用発明の「タッチスクリーン18上」には、「視野20の中に超音波画像を」「表示し」ているから、引用発明の「モニタ」及び「タッチスクリーン18上」に、「視野20の中に超音波画像を」「表示」する「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」は、本件補正発明の「超音波画像を表示するタッチスクリーンディスプレイ」に相当する。

e 引用発明の「超音波スキャナ12」は、本件補正発明の「トランスデューサーアレイ」に相当する。そして、引用発明の「電気機械サブシステム14及び超音波スキャナ12からなる、標準的なインターフェース接続および統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブ」は、通常筐体内に「電気機械サブシステム14及び超音波スキャナ12」を有しているものであるから、引用発明の「超音波スキャナ12」を有する「超音波走査プローブ」の筐体は、本件補正発明の「トランスデューサーアレイを有するトランスデューサプローブ筐体」に相当する。

f 引用発明の「電気機械サブシステム14は、コンピュータソフトウェア、モニタおよびタッチスクリーンインターフェースとは別に超音波撮像システム10の電気的」「サブシステムを実装し」、「超音波スキャナ12を動作させ」るものであって、上記eのとおり、引用発明の「ビーム形成機能をもつ超音波走査プローブ」は、通常筐体内に「電気機械サブシステム14」を有しているものであるから、引用発明の「統合されたビーム形成機能をもつ超音波走査プローブ」の筐体内に配置された「電気機械サブシステム14」が「実装」する「超音波スキャナ12を動作させ」る「電気的」「サブシステム」は、本件補正発明の「前記トランスデューサプローブ筐体内に配置された超音波ビームフォーマー処理回路」に相当する。

g 引用発明の「モニタ」及び「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」は、「タブレットPC」においては、通常フロントパネル上にあるものであるから、引用発明の「モニタ」及び「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」と、本件補正発明の「前記タッチスクリーンディスプレイ」とは、「前記フロントパネル上に配置され、」ている点で一致する。

h 引用発明の「コンピュータ16」は、「モニタ」と「線でつながれ」ており、「タッチスクリーン18」は「モニタ上に実装され」ている。また、引用発明の「コンピュータ16は電気機械サブシステム14とのインターフェースとな」る「インターフェースカードを含」んでいるから、「電気機械サブシステム14」が「実装」する「超音波スキャナ12を動作させ」る「電気的」「サブシステム」は、「コンピュータ16」に接続されているといえる。
すると、引用発明の「モニタ」及び「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」及び「電気機械サブシステム14」が「実装」する「超音波スキャナ12を動作させ」る「電気的」「サブシステム」と、本件補正発明の「前記タッチスクリーンディスプレイと前記超音波ビームフォーマー処理回路」とは、「前記コンピュータに通信可能に接続されて」いる点で一致する。

i 引用発明の「タッチスクリーン18」は、「コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置を提供し」、また、引用発明の「コンピュータ16は電気機械サブシステム14を制御するためのコマンド信号を生成することによってその関連付けられている制御機能を実行し」ている。そして、この「電気機械サブシステム14を制御するためのコマンド信号」は、「タッチスクリーン18」から提供される「タッチスクリーン18のタッチの位置に表示された制御機能に関連付けられ」た信号である。
すると、引用発明の「コンピュータ16」は、「タッチスクリーン18」からの「タッチスクリーン18のタッチの位置に表示された制御機能に関連付けられ」た「コマンド信号」によって、「電気機械サブシステム14を制御する」ものであるといえる。
また、引用発明は、「アクティブ化領域22は、利得とラベル付けされたアクティブ化領域を含み、この領域をスライディング・タッチで上向きになぞるたびに、利得の上昇が引き起こされ」ることから、引用発明の「コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置」の情報は、「スライディング・タッチ」というジェスチャによって生成されたものであるから、引用発明の「コンピュータ16に対して、ユーザーがタッチスクリーン18に指、スタイラスまたはその他の好適なデバイスで触れたという指標ならびにタッチの位置」の情報を提供する「スライディング・タッチ」は、本件補正発明の「前記タッチスクリーンディスプレイからの第1のジェスチャ入力」に相当する。そして、引用発明の「電気機械サブシステム14」の「制御」は、「タッチスクリーン18」からの「タッチスクリーン18のタッチの位置に表示された制御機能に関連付けられ」た「コマンド信号」によるものであるから、引用発明の「コンピュータ16」は、「スライディング・タッチ」により、「電気機械サブシステム14を制御する」ものであるといえる。
そうすると、引用発明の「コンピュータ16」は、「スライディング・タッチ」により、「電気機械サブシステム14を制御する」ことは、本件補正発明の「コンピュータは、前記タッチスクリーンディスプレイからの第1のジェスチャ入力に呼応して、前記超音波ビームフォーマー処理回路の動作を変更するように動作可能であ」ることに相当する。

j 引用発明の「アクティブ化領域22、24、26は、キー、ボタン、トラックボールおよびTGCポテンショメータといったハードUIコントロールを含む超音波撮像システム10の通常のコントロールを画面上の仮想デバイスとして実装したものを表し」ているから、引用発明の「アクティブ化領域22、24、26」の、「超音波撮像システム10の通常のコントロールを画面上の仮想デバイスとして実装したもの」は、本件補正発明の「タッチ動作される制御バー」に相当する。そして、引用発明は「超音波撮像システムの動作の間のタッチスクリーン18上の仮想コントロールのレイアウトは視野20の中に超音波画像を視野20の一部分にある一つまたは複数の重畳されたアクティブ化領域22、24、26と一緒に表示し」ており、これらの表示は、ユーザーが閲覧するためのもであるから、引用発明の「モニタ」及び「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」と、本件補正発明の「タッチスクリーンディスプレイ」とは、「ユーザが閲覧するための前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され」ている点で一致する。

イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「フロントパネルを有するタブレット筐体と、
少なくとも1つのプロセッサと少なくとも1つのメモリとを有する、前記タブレット筐体内のコンピュータと、
超音波画像を表示するタッチスクリーンディスプレイと、
トランスデューサーアレイを有するトランスデューサプローブ筐体と、
前記トランスデューサプローブ筐体内に配置された超音波ビームフォーマー処理回路と、
を備え、
前記タッチスクリーンディスプレイは、前記フロントパネル上に配置され、
前記タッチスクリーンディスプレイと前記超音波ビームフォーマー処理回路とは、前記コンピュータに通信可能に接続されており、
前記コンピュータは、前記タッチスクリーンディスプレイからの第1のジェスチャ入力に呼応して、前記超音波ビームフォーマー処理回路の動作を変更するように動作可能であり、
ユーザが閲覧するための前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配された
ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス。」

(相違点1)「前記タッチスクリーンディスプレイと前記コンピュータ」への電力の供給が、本件補正発明は、「前記タブレット筐体内のバッテリから」行われているのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)「前記表示領域」が、本件補正発明は、「超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する」のに対し、引用発明は、「アクティブ化領域22は、画像の水平/垂直並進を示すグラフィック記号であるグラフィック70を含み、このアクティブ化領域に触れると、そのアクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり、画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その画像を視野20内で水平方向または垂直方向に並進させ」、また、「アクティブ化領域22は、画像回転のためのグラフィック記号であるグラフィック72を含み、このアクティブ化領域に触れられると、該アクティブ化領域はハイライトされた状態に変わり画像の任意のところに触れてドラッグすることによって、その3D画像を視野20内で水平軸または垂直軸のまわりに回転させる」ものであって、「視野20内」の「超音波画像」を「水平/垂直並進」、又は、「水平軸または垂直軸のまわりに回転」させる制御が、「画像の任意のところに触れてドラッグする」ことにより行われているが、この「画像」が、「視野20内」の「超音波画像」を指しているのか、「アクティブ化領域22」にある「グラフィック70」又は「グラフィック72」を指しているのか不明であるから、引用発明は「視野20内」の「超音波画像」の操作を、「画像の任意のところに触れてドラッグする」という「超音波画像」が表示されている領域のタッチ動作入力によるものであるか不明である点。

(4)判断
ア 相違点について
以下、上記相違点1及び2について検討する。

(ア) 相違点1について
技術事項6の「PDA装置120は、Windows-CE(商標)アプリケーションなどのWindows(商標)を実行」するものであるから、技術事項6の「PDA装置120」は、その筐体内にコンピュータを有していることは明らかである。そして、技術事項6の「内部バッテリ」は、「PDA装置120」の筐体内にあるから、技術事項6の「内部バッテリ」は、「PDA装置120」の「タッチスクリーン表示部125」及び「PDA装置120」内のコンピュータへの電力の供給を行っていることは明らかである。そして、技術事項6の「PDA装置120」や、引用発明の「タブレットPC」等の可搬型で小型のPCは、通常、コンセントなどの外部電源の無い環境で使用することを想定しているものであって、可搬型で小型のPCが、バッテリを備えることは常套手段にすぎないから、技術事項6のように、筐体内にバッテリを有し、このバッテリが、ディスプレイやコンピュータ等の可搬型で小型のPC内の各機器への電力の供給を行う構成は、周知技術であったといえる。
すると、引用発明の「タブレットPC」に、該周知技術を適用し、引用発明の「タブレットPC」内にバッテリを備え、引用発明の「モニタ」及び「モニタ上に実装されたタッチスクリーン18」と「コンピュータ16」とは、この「タブレットPC」内のバッテリから電力を受け取る構成とすることは、当業者が容易に想到できたものであるといえるから、上記相違点1に係る構成は、引用発明及び周知技術より当業者が容易になし得たものである。

(イ) 相違点2について
a 技術事項4の「超音波画像を表示し入力操作信号を入力する表示入力制御部13」は、「上記表示入力制御部13の入力部32における入力機構を、操作者の指の動きにより入力操作を可能とし、操作者は表示部31の画面上で、自己の人差し指を画面に押し付け、引っ張る(ドラッグ)ことにより、上記アローカーソル36を移動させることができ、更に引いていったあるところで、差し指34を画面35から離す(ドロップ)ことによってその位置にアローカーソル36を固定することができ」るものであるから、本件補正発明の「タッチスクリーンディスプレイ」に相当する。

b 技術事項4は、「操作者は人差し指45で、表示画面上のGUIのスイッチ42の1つに触れることにより、その触れたスイッチに対応するトグル操作(オン・オフを含む)を行い、対応するサブメニューを例えばプルダウンメニューとして表示させ、その中から選択できるようにすることができ」るものであるから、技術事項4の「表示画面上のGUIのスイッチ42」は、本件補正発明の「タッチ動作される制御バー」に相当する。そして、技術事項4は、「超音波診断装置の表示部31の画面内の外縁、即ち超音波画像41の横には、グラフィックユーザインターフェース(GUI)のスイッチ42が表示され」ているから、技術事項4の「表示入力制御部13」には、「GUIのスイッチ42」と「超音波画像41」が表示され、「超音波画像41」は、「超音波画像を表示」する領域に表示されているから、技術事項4の「表示入力制御部13」には、「GUIのスイッチ42」と「超音波画像41」が表示されることは、本件補正発明の「前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され」ることに相当する。

c 技術事項4は、「操作者は自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすることにより、ROIを移動させることができ、操作者は、自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすることにより、ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変えることが可能となる」ものであって、「カラー関心領域(ROI)62」及び「ROI72」は、共に「超音波画像41」内にあることは明らかである。そして、「ROIを移動させること」及び「ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変えること」は、本件補正発明の「1又は複数の超音波画像操作を制御すること」に相当する。
すると、技術事項4の「ROIを移動させる」ために「自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすること」及び「ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変える」ために「自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすること」は、本件補正発明の「超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力」に相当する。
そして、技術事項4は、「自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすることにより、ROIを移動させ」、また、「自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすることにより、ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変える」から、技術事項4の「超音波画像41」が表示された領域は、「自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすること」及び「自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすること」に反応するといえる。
よって、技術事項4の「自己の人差し指61を画面上のカラー関心領域(ROI)62の2次元画像辺部63a,63bに当ててドラッグすることにより、ROIを移動させること」及び「自己の人差し指71をROI72の角73a、73bに当ててドラッグすることにより、ROI72を大きくしたり小さくしたりしてその大きさを変えること」は、本件補正発明の「前記表示領域は、超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する」ことに相当する。

d 上記a?cより、技術事項4は、本件補正発明の「前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され、前記表示領域は、超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する」構成を有しているといえる。
すると、引用発明の「視野20の中に超音波画像を視野20の一部分にある一つまたは複数の重畳されたアクティブ化領域22、24、26と一緒に表示」する構成に対し、技術事項4の上記構成を適用し、「視野20の中」の「超音波画像」が表示された領域は、「視野20の中」の「超音波画像」が表示された領域の内部における1又は複数の「超音波画像」の操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する構成とすることは、当業者が容易に想到できたことであるといえる。

ウ 効果について
本件補正発明の効果は、引用文献1、4及び6に記載された技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明、技術事項4及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年4月4日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年11月8日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?19に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?7に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特表2008-515583号公報
引用文献2.特表2009-525538号公報
引用文献3.特開2012-024133号公報
引用文献4.特開2005-137747号公報
引用文献5.特開2010-220218号公報
引用文献6.特開2003-190159号公報
引用文献7.特開2011-200482号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1の記載事項及び引用発明は、前記第2の[理由]2(2)アに記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「ユーザが閲覧するための前記タッチスクリーンディスプレイには、タッチ動作される制御バーと、前記超音波画像が表示される表示領域とが配され、前記表示領域は、超音波画像が表示された前記表示領域の内部における1又は複数の超音波画像操作を制御するための複数のタッチ動作入力に反応する」という限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、相違点1のみとなり、前記第2の[理由]2(4)ア(ア)に記載したとおり、上記相違点1に係る構成は、引用発明及び周知技術より当業者が容易に想到をすることができたものであるから、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2019-12-11 
結審通知日 2019-12-17 
審決日 2020-01-06 
出願番号 特願2017-156802(P2017-156802)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥田 雄介  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 福島 浩司
渡戸 正義
発明の名称 ハンドヘルド医療超音波撮像デバイス  
代理人 龍華国際特許業務法人  

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