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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K |
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管理番号 | 1362778 |
審判番号 | 不服2019-3216 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-07 |
確定日 | 2020-05-28 |
事件の表示 | 特願2014-230809「微小粒子状物質防御用外用剤」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月26日出願公開、特開2016- 94361〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年11月13日に出願された特願2014-230809号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。 平成30年 6月27日付け:拒絶理由通知書 平成30年 8月27日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月15日付け:拒絶査定 平成31年 3月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 1年10月30日付け:拒絶理由通知書 令和 1年12月 3日 :意見書、手続補正書の提出 令和 2年 1月15日付け:最後の拒絶理由通知書 令和 2年 2月17日 :意見書、手続補正書の提出 第2 令和2年2月17日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和2年2月17日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む、微小粒子状物質防御用O/W型乳化外用剤。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和1年12月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む、微小粒子状物質防御用乳化外用剤。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「乳化外用剤」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)当審が通知した令和2年1月15日付け拒絶理由通知書で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、国際公開第2014/136993号(2014年9月12日国際公開。以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある。 記載事項1-1(段落[0001]) 「本発明は、大気汚染物質や紫外線などの外的刺激による皮膚へのダメージを防止又は抑制することのできるスキンケア化粧料に関する。より詳細には、紫外線防御能を有するのみならず、大気汚染物質を有効に吸着でき、なおかつ優れたpH緩衝能を有するスキンケア化粧料に関する。」 記載事項1-2(段落[0002]) 「皮膚や毛髪は常に外的刺激に曝されており、外的環境から様々なダメージを受けている。特に最近注目されている微小粒子状物質等の大気汚染物質や酸性雨等の酸性液体は、皮膚に付着することにより肌に悪影響を及ぼすことが知られている。」 記載事項1-3(段落[0007]) 「よって本発明は、大気汚染物質や酸性液体のみならず紫外線を含む様々な外的刺激から肌を有効に保護することができるスキンケア化粧料、即ちアンチポリューション化粧料を提供することを目的とする。」 記載事項1-4(段落[0010]) 「本発明のスキンケア化粧料は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを配合しているので、その吸着能により大気汚染物質を有効に吸着して肌に到達させず、酸性物質が付着してもpH緩衝能によって中和することができ、これらの外的刺激による肌ダメージを軽減することができる。」 記載事項1-5(段落[0027]) 「本発明のスキンケア化粧料は、水性化粧料(マイクロエマルジョンを含む)、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料、及び油性化粧料などの任意の形態で提供することができる。」 記載事項1-6(段落[0042]?[0047]) 「[0042] 本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述する。なお、配合量は特記しない限り質量%を意味する。 [0043] 実施例1:大気汚染物質吸着効果 下記の表1に示す処方で試料を調製した。 [表1] [0044] 下記の組成を有する疑似大気汚染物質(分散物)を上記各試料に5質量%混合し、15分間静置した。 ・疑似大気汚染物質:カーボンブラック(1質量%)+オクタン酸セチル(99質量%) [0045] 前記の疑似大気汚染物質を加えた直後と、15分間静置した後 の試料の外観を観察した結果を以下の基準で評価した。同時に、各試料の紫 外線防御効果を測定して以下の基準で評価した。それらの結果を表2に併せ て示す。 ・評価基準 吸着効果: 15分間静置後にカーボンブラックが沈降し透明層が見られた:A カーボンブラックの沈降及び透明層が見られない:B 紫外線防御効果: 波長300nmにおける吸光度が1以上:A 波長300nmにおける吸光度が1未満:B [0046] [表2] [0047] 表2に示した結果から明らかなように、同量の紫外線防御剤(紫外線吸収剤)を含む各試料は十分な紫外線防御能を有する。しかし、粉末成分として(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマーを配合した比較例2及び粉末成分を配合しない比較例3では疑似大気汚染物質であるカーボンブラックを吸着して沈降させることができなかったのに対し、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム又はシリカを配合した実施例1及び比較例1ではカーボンブラックが沈降して透明層が形成された。」 (イ)上記記載事項1-1?1-6、特に記載事項1-1、1-6の実施例1の記載から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「10質量%のオクチルメトキシシンナメート、3質量%のジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、40質量%のオクタン酸セチル、42質量%のイソドデカン及び5質量%のメタケイ酸アルミン酸マグネシウムからなる、大気汚染物質や紫外線などの外的刺激による皮膚へのダメージを防止又は抑制することのできるスキンケア化粧料。」 (3)引用発明1との対比 ア 本件補正発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「オクチルメトキシシンナメート」、「スキンケア化粧料」は、それぞれ本件補正発明の「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル」、「外用剤」に相当する。 (イ)記載事項1-2における「微小粒子状物質等の大気汚染物質」との 記載、記載事項1-3における「本発明は、大気汚染物質や酸性液体のみな らず紫外線を含む様々な外的刺激から肌を有効に保護することができる」と の記載、記載事項1-4における「本発明のスキンケア化粧料は、メタケ イ酸アルミン酸マグネシウムを配合しているので、その吸着能により大気汚 染物質を有効に吸着して肌に到達させず」との記載、及び記載事項1-6の「疑似大気汚染物質であるカーボンブラック」との記載から、引用発明1の大気汚染物質などの外的刺激による皮膚へのダメージを防止又は抑制するなる用途は、本件補正発明の「微小粒子状物質防御用」なる用途に相当するといえる。 (ウ)本件補正発明の「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む」なる記載は、それら以外の成分を排除するものではなく、本願明細書の段落【0024】には「本実施形態の外用剤は、必要に応じて添加剤を含有することができる。」との記載もあるから、本件補正発明は、引用発明1における「オクチルメトキシシンナメート」及び「ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル」以外の成分も含み得るものである。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む、微小粒子状物質防御用外用剤。」 【相違点1】 「外用剤」について、本件補正発明は「O/W型乳化」しているのに対し、引用発明1は「O/W型乳化」していない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点1について 引用文献1の記載事項1-5には「本発明のスキンケア化粧料は、水性化粧料(マイクロエマルジョンを含む)、水中油型乳化化粧料、油中水型乳化化粧料、及び油性化粧料などの任意の形態で提供することができる。」なる 記載があり、また、水中油型(O/W型)乳化化粧料は周知慣用のものにすぎないから、引用発明1を水中油型(O/W型)乳化化粧料の形態で提供することは、当業者が容易に想到し得たことである。 イ 効果について 引用文献1の記載事項1-4及び1-6の実施例1と比較例3の記載からみて、引用発明1は、疑似大気汚染物質であるカーボンブラックの沈降効果として示される、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムに起因する大気汚染物質吸着効果を有するものである。 そして、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムが大気汚染物質を吸着して肌に到達させなければ、当然肌は大気汚染物質から保護されることになり、この効果はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム自体に起因するものであるから、引用発明1を水中油型(O/W型)乳化化粧料とした場合においても奏されると認められる。 ここで、本件補正発明の「微小粒子状物質防御」との効果について、本願の発明の詳細な説明の段落【0059】?【0062】には、以下の記載がなされている。 「【0059】 [試験例:微小粒子状物質防御効果の評価] (1)試験サンプルの調製 (試験サンプル) 使用した試験サンプルは、各種試薬を表1に示す混合比で適宜混合し、調製した。出来上がったサンプルはO/W型乳化外用剤であった。 (微小粒子状物質) 微小粒子状物質として、微小粒子状物質に含まれる炭素を想定し、薬用炭(商品名;A SUPRA EUR、会社名;日本ノリット、粒子径;D50=20μm)を使用した。 また同様に、微小粒子状物質として、微小粒子状物質に含まれる金属物質を想定し、赤酸化鉄(商品名;SA-R-10、三好化成社、平均粒径1.5μm)を使用した。 【0060】 (2)試験方法 生理食塩水で戻した乾燥豚皮4センチ角(商品名;ブタ皮、毛なし 10X10cm、会社名;フナコシ)に、0.1gの試験サンプルを塗布し、0.01gの前述の微小粒子状物質を塗布した。 その後、100mlの水で30秒間、豚皮を洗い流し、マイクロスコープ(VHX-1100、キーエンス社)を用いて、175倍率で撮影した。撮影した画像を解析し(解析ソフト;ImageJ、製作元;National Institutes of Health)、付着率を算出した。 付着率(%)=(微小粒子状物質付着面積)/(豚皮面積)×100 【0061】 (3)試験結果 それぞれの評価結果を表1に示した。紫外線吸収剤と同様の油性物質である油剤を配合した比較例に比べて、紫外線吸収剤を含む実施例1は、微小粒子状物質の付着が少なかった。またさらに、カルノシンとメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含む実施例2は、比較例1に対して有意に付着率が少なく、また実施例1と比較しても微小粒子状物質の付着が抑えられていた。 【0062】 【表1】 」 このように、本件補正発明の「微小粒子状物質防御」効果とは、乾燥豚皮 に外用剤を塗布し、微小粒子状物質を塗布した後に、水で豚皮を洗い流し、 マイクロスコープで撮影した豚皮の画像を解析して算出された付着率に基づ いて評価されるものである。水の中に入れるとO/W型は水と適当にまざり 合って分散するとの技術常識(令和2年1月15日付け拒絶理由通知書で引 用された引用文献10である、化粧品学、1968年発行、第9版のp.5 7第7行等参照)をふまえれば、水中油型(O/W型)乳化化粧料が水で洗い 流しやすいことは明らかであるので、引用発明1を水中油型(O/W型)乳化 化粧料の形態で提供することで、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムに吸着 された(微小粒子状物質等の)大気汚染物質を化粧料ごと洗い流しやすくな り、肌への付着率が低くなること、すなわち、本件補正発明でいうところの 「微小粒子状物質防御」効果がもたらされることもまた、当業者であれば予 測し得る範囲内の事項である。 したがって、本件補正発明の奏する作用効果は、格別顕著なものというこ とはできない。 ウ 請求人の主張について (ア)請求人は、令和2年2月17日提出の意見書において 「審判官殿は、引用文献1の実施例1のピンポイントで示された組成物に着 目しておられますが、引用文献1に表れている技術思想は、メタケイ酸アル ミン酸マグネシウムがカーボンブラック吸着作用を有する組成物の有効成分 であるというものです。 これに対して、本願発明の技術思想は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキ シルとジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルとの組み合わ せが、微小粒子状物質防御のためのO/W型乳化外用剤の有効成分であると いうものです。 引用文献1の発明と本願発明とは、技術思想が全く異なりますので、引用 文献1の全体を読んだ当業者が、本願発明に想到することは容易ではありま せん。」 と主張している。 しかしながら、本件補正発明は、「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む、微小粒子状物質防御用O/W型乳化外用剤。」という物の発明であり、「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む」との記載は、本件補正発明にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが含まれることを排除するものではない。さらに、平成31年3月7日提出の手続補正書の請求項1に記載されていた「メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含まない」なる発明特定事項がその後の補正によりわざわざ削除された経緯、本願明細書段落【0005】の「本願発明者は、紫外線吸収剤であるパラメトキシケイ皮酸エチルヘキシルと、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルに、微小粒子状物質の皮膚への付着を抑制する効果を見出し、さらにカルノシン又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを加えることで、効果が増強されることを見出した。」(下線は当審で付した。)との記載、及び上記イで摘記した本願の実施例2にメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが配合されていることに鑑みると、本件補正発明は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルに加えてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをも含む態様をも包含しているといわざるを得ない。 そうすると、両者の相違点は上記(3)イで述べたように、O/W型乳化 しているか否かという点にしかない。 そして、引用文献1の記載事項1-5にはスキンケア化粧料を水中油型(O/W型)乳化化粧料の形態で提供することができる旨記載されており、また、水中油型(O/W型)乳化化粧料は周知慣用のものにすぎないから、引用発明1を水中油型(O/W型)乳化化粧料の形態で提供することに特に困難性は認められないことは、上記アで検討したとおりである。 したがって、請求人の上記の主張は採用できない。 (イ)請求人は、令和2年2月17日提出の意見書において 「しかし、本願発明の効果が引用文献1から予測外である点は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの作用により微小粒子状物質の皮膚への付着を顕著に抑制するという点です。 上記の通り、引用文献1は、紫外線吸収剤が微小粒子状物質の付着抑制効 果を奏さないことを明記しており(段落0010,0019,0024)、また、パラメト キシケイ皮酸エチルヘキシルとジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香 酸ヘキシルとの組み合わせがカーボンブラック吸着効果を奏さないことを立 証していますので(表1,2の比較例2,3)、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキ シル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルの作用によ り微小粒子状物質の皮膚への付着を顕著に抑制するという効果は予測できま せん。 また、引用文献1の比較例3の組成物は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘ キシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含みま すが、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含まないために、カーボンブラ ック吸着効果を有しません(表1,2)。従って、これをO/W型乳化組成物 に変更したとしても、微小粒子状物質の付着抑制効果を奏さないことが予測 されます。 引用文献1中の、本願発明により近い比較例3に着目せず、本願発明から遠い実施例1にのみ着目して、本願発明のO/W型外用剤が微小粒子状物質付着抑制効果を有することは予測できるとすることは、当業者の目線を離れており、不合理です。 また、引用文献の一部を取り出して、本願発明の効果を予測できるとする ことは、正しくありません。」 とも主張している。 しかしながら、引用文献1は上記記載事項1-3のとおり「大気汚染物質や酸性液体のみならず紫外線を含む様々な外的刺激から肌を有効に保護することができるスキンケア化粧料、即ちアンチポリューション化粧料を提供する」ことを課題とするものであり、引用文献1には、比較例3より優れた例として実施例1が記載されているのだから(記載事項1-6の[表2]等参照)、引用文献1に接した当業者が優れた例である実施例1に着目するのは不合理どころか、むしろ当然のことである。そもそも、上記(ア)で述べたとおり、本件補正発明は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルに加えてメタケイ酸アルミン酸マグネシウムをも含む態様をも包含するものであり、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムを含まないことを特定するものではないから、引用文献1の比較例3の方が実施例1よりも本件補正発明に近いと一概にいうことはできない。 そして、引用発明1は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含むものであるから、引用発明1を水中油型(O/W型)乳化化粧料の形態としたものは、当然にパラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルに起因する効果を奏することとなる。 したがって、請求人の上記の主張も採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和2年2月17日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、令和1年12月3日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1及び4に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明4」という。)は、その請求項1及び4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 [本願発明1] 「パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及びジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルを含む、微小粒子状物質防御用乳化外用剤。」 [本願発明4] 「O/W型乳化組成物である、請求項1?3の何れかに記載の微小粒子状物質防御用乳化外用剤。」 2 令和2年1月15日付けで当審が通知した拒絶理由 令和2年1月15日付けで当審が通知した拒絶理由の理由1は、次のとおりのものである。 本願発明1、4は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:国際公開第2014/136993号 3 引用発明1 当審が通知した令和2年1月15日付け拒絶理由通知書で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明は、上記「第2 2(2)ア(イ)」に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明4の「O/W型乳化組成物である、・・・微小粒子状物質防御用乳化外用剤」なる発明特定事項は、本件補正発明の「微小粒子状物質防御用O/W型乳化外用剤」なる発明特定事項に相当する。そうすると、請求項1の引用形式で記載される本願発明4は、本件補正発明に相当するものであるから、本願発明4は、本件補正発明をそのままの態様で包含するものである。 したがって、上記「第2 2(4)」で指摘したとおりの理由により、本願発明4は、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 また、乳化外用剤である本願発明1は、O/W型乳化外用剤である本件補正発明をそのままの態様で包含するものであるから、上記「第2 2(4)」で指摘したとおりの理由により、本願発明1も、引用発明1及び引用文献1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明1、4は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-30 |
結審通知日 | 2020-03-31 |
審決日 | 2020-04-13 |
出願番号 | 特願2014-230809(P2014-230809) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(A61K)
P 1 8・ 121- WZ (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼ 美葉子 |
特許庁審判長 |
光本 美奈子 |
特許庁審判官 |
冨永 みどり 山内 達人 |
発明の名称 | 微小粒子状物質防御用外用剤 |
代理人 | 多田 央子 |