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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1362992 |
審判番号 | 不服2018-16361 |
総通号数 | 247 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-12-07 |
確定日 | 2020-06-11 |
事件の表示 | 特願2017- 92253「プログラムおよびゲーム装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開,特開2018-187104〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成29年5月8日に出願された特許出願であって,平成30年1月11日付けで拒絶理由が通知され,同年3月20日に意見書及び手続補正書が提出され,同年5月14日付けで拒絶理由が通知され,同年7月13日に意見書及び手続補正書が提出され,同年9月21日付けで拒絶査定がされ,それに対して,同年12月7日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され,その後,当審において,令和1年12月24日付けで拒絶理由が通知され,令和2年3月6日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 本願の請求項1ないし8に係る発明は,令和2年3月6日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,そのうち請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,以下のとおりのものである。 「プロセッサを具備するゲーム装置のプログラムであって, 前記プロセッサを, 仮想的なフィールド内のキャラクタに,ユーザの操作によって複数の動作の中から1以上の動作を実行させる動作制御部, 前記キャラクタと関連付けられた素材およびアイテムの所持状況を,前記フィールド内で入手した素材,ならびに,破棄された素材またはアイテムに基づいて前記所持状況を更新し,前記所持状況に基づいて特定された素材およびアイテムの重量の和を算出する所持状況管理部,ならびに, 前記複数の動作毎に該動作が制限される重量の和が予め定められ,算出された前記重量の和に応じて,前記複数の動作から制限対象となる動作を特定し,当該動作の実行を制限する動作制限部, として機能させ, 前記動作制限部は, 制限対象となる1以上の動作を特定するに際して, 一の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせと, 別の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせとを異ならせ, 前記制限対象とする動作には,前記フィールドにおいて前記キャラクタが位置する地形に対応して不可能となる動作が含まれ, 前記動作制限部による制限は,所定の条件を満たした場合に緩和される, プログラム。」 第3 当審における拒絶理由の概要 当審において通知された令和1年12月24日付け拒絶理由は,平成30年12月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は,本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明,及び本願の出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2,3,4等に示される周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないという理由を含むものである。 記 <引用文献等一覧> 1.遊び応えがあり過ぎるMMORPG『黒い砂漠』を10倍スムーズに楽しむ方法?生活ガイド第2回?,ファミ通.com,[オンライン],2016年5月23日,[2019年12月13日検索],<URL:https://www.famitsu.com/news/201605/23106351.html> 2.ザ エルダースクロールズV:スカイリム ザ・コンプリートガイド,株式会社アスキー・メディアワークス,2013年1月22日,第5版,p.033,036,037,040,041,169 3.DARK SOULS III,電撃PlayStation Vol.612,株式会社KADOKAWA,2016年4月14日,第22巻,第12号,通巻738号,p.48ないし55 4.操作やキーとキャラクター,ニコの黒い砂漠wiki,[オンライン],2016年6月6日,[2019年12月13日検索],<URL:http://nico.wiki.fc2.com/wiki/操作やキーとキャラクター> 第4 引用文献1の記載及び引用発明について 1 引用文献1の記載 (1) 引用文献1には,以下の記載がある(なお,下線は認定に用いた箇所を強調するために付した。) ア 「●レベルがある程度上がったら気にしたいこと ゲームオンが運営するPC用MMORPG『黒い砂漠』はとにかくコンテンツが豊富だ。クエストを進めつつ新たな町へ……と,何となく旅を続けていくだけでもレベルは上がっていくが,ある程度レベルが上がったら,ステータスやアイテムの管理,装備の強化などについて,ひととおり把握しておきたい。」 イ 「●アイテム管理の達人が生活コンテンツを制する 前回も書いたが,最初のうちはバッグの容量は少なく,すぐいっぱいになってしまう。また,アイテムには重量が設定されており,総重量がキャラクターの所持限界を超えると移動速度や攻撃速度が遅くなるなどのデメリットも発生する。生活・生産コンテンツに挑戦する前に,アイテムの取り扱いに慣れておこう。」 ウ 「<重量による速度制限> 100%まで・・・基本速度 101?125%・・・少し遅くなる 126?150%・・・とても遅くなり,ジャンプが不可能に 150%以上・・・移動がほぼ不可能に (100%を超えると加工生産などができなくなる)」 エ 「 ▲アイコンにカーソルを合わせると用途が表示される。この“鋭い牙”はふつうに売却すると85シルバーだが,20個集めてデルーチ農場に持っていくと3500シルバーを入手できる。不要なものは商人NPCに売却しよう。」 オ 「 ▲重量はバッグウィンドウ下部に表示される。」 カ 「<不要なアイテムはアイテム取引所へ> プレイヤー間でアイテムを売買する“アイテム取引所”は,アイテム整理にすごく便利。いかにも役に立たなそうな“雑草”が生産コンテンツ“錬金”の素材になるなど,多くのアイテムには何かしらの用途が設けられている。アイテム取引所を通じて流通させておけば,誰かの役に立ちつつ,金策もできるのだ。」 キ 「 ▲装備類は需要が多い。不要な装備をアイテム取引所に登録すると,いい金策になる。耐久度が落ちた装備は登録できないので,戦闘で使って耐久度が落ちていたら,あらかじめ装備を取り扱うNPCの元で修理しよう。」 ク 「重量の上限は,装備品や魔力水晶により増強でき,“力”を上げることでも最大重量を増やせる(これらの要素については後述)。また,パール商店(課金)の便利アイテムで,重量増加オプションを購入可能だ。」 ケ 「●ステータスに関する理解を深めよう メニューの“キャラクター情報”では,キャラクターの各種ステータスを確認できる。今回はそのなかでも,何に影響があるのか,どうしたら変動するのか,一見しただけでは分かりにくい項目について説明しよう。 ◆鍛錬◆ 鍛錬の項目にある“スタミナ”,“力”,“健康”のパラメーターは,いずれも特定の行動をすることでそれぞれの経験値が得られ,レベルが上がっていく(レベル上限は50)。また,特定の行動以外でも,一部のクエストでは報酬で直接経験値を得ることができる。」 コ 「【力】 貿易品を所持し,リュックを背負って移動することによって力経験値を得られる。こちらもスタミナと同様,移動距離などに応じて経験値を獲得できる。レベルがアップすると最大重量が増加する。貿易については次回以降に解説する予定だ。」 (2) 上記(1)の摘記事項から,以下のことがいえる。 ア 上記(1)アの記載から,MMORPGのジャンルに属するPC用のゲームを実現するゲームプログラムを把握することができる。そして,MMORPGのジャンルに属するゲームは,多数のユーザがネットワークを通じて同時に参加するものであるという技術常識を踏まえると,上記ゲームプログラムは,ネットワークで接続された,ユーザが操作するPCとサーバからなるゲームシステムによって実行されることは明らかである。 イ MMOPRGのジャンルに属するゲームにおいて,仮想的なフィールド内のキャラクターが,ユーザの操作によって何らかの動作を実行することは,技術常識といえる。 そして,上記(1)ウの記載から,キャラクターが実行する動作として,少なくともジャンプ,移動,加工生産があることが把握できる。 さらに,MMORPGのジャンルに属するゲームにおいて,キャラクターがアイテムを入手することも,技術常識といえる。 ウ 上記(1)エ,同オ及び同キの画像は,引用文献1が開示するゲームプログラムをゲームシステムで実行することで,PCが備える表示装置に表示される画像の一部を表していることは明らかであり,これらの画像からは,バッグウィンドウに「ゴミ箱」のアイコンが表示されていることが看取できる。 ゲームの分野において,「ゴミ箱」のアイコンが,何らかの対象を廃棄するために用いられるという技術常識に照らせば,引用文献1に開示されているゲームにおいては,ユーザが,「ゴミ箱」のアイコンを用いて,キャラクターが所持するアイテムを廃棄できることは明らかである。 エ 上記(1)カの記載から,引用文献1に開示されたゲームにおいて,アイテムとして,生産コンテンツ“錬金”の素材となるもの(以下,単に「素材」という。)が存在することが把握できる。 オ 上記(1)エの画像の左下側からは,「鋭い牙」という文字列の下方に,「説明:商店に売却したり,複数個集めれば他のアイテムと交換できる。」という文字列があることが看取できる。 そして,技術常識に鑑みれば,「鋭い牙」は,アイテムの名称であると認められる。 そうすると,引用文献1からは,アイテムとして,商店に売却したり,複数個集めれば他のアイテムと交換できるアイテム(以下,「売却・交換用品」という。)が存在することが把握できる。 カ 上記(1)キの画像の左側からは,「アゼリアーナヘルム」という文字列の下方に,「説明:民兵のエリート隊員達のため特別に生産された防具」という文字列があること,同画像の中央部からは,「ヘラクレスのオーラ兜」という文字列の下方に,「説明:ヘラクレスの汗を入れて作ったと言われている防具。」という文字列があることが,それぞれ看取できる。 技術常識に鑑みれば,「アゼリアーナヘルム」及び「ヘラクレスのオーラ兜」は,アイテムの名称であると認められる。 そうすると,引用文献1からは,アイテムとして,「防具」が存在することが把握できる。 キ 上記(1)エの画像の左下側からは,「鋭い牙」という文字列の下方に,「重量:0.10LT」という文字列があること,上記(1)キの左側からは,「アゼリアーナヘルム」という文字列の下方に,「重量:18.00LT」という文字列があること,同画像の中央部からは,「ヘラクレスのオーラ兜」という文字列の下方に,「重量:10.50LT」という文字列があることが,それぞれ看取できる。 「鋭い牙」,「アゼリアーナヘルム」及び「ヘラクレスのオーラ兜」は,アイテムの名称であるから,上記(1)イの記載を踏まえれば,それらの下方に「重量」という用語と共に付された数字が,各アイテムに設定されている重量を表すること,及び「LT」が重量の単位であることは明らかである。 したがって,引用文献1からは,アイテムごとに異なる重量が設定されていることが把握できる。 ク 上記(1)イに,アイテムに重量が設定されることが記載されており,上記ウで説示したとおり,アイテムには素材が含まれるのであるから,アイテムに含まれる各素材にもそれぞれ重量が設定されていることは明らかである。 ケ 上記(1)イ及び同ウの記載を総合すると,上記(1)ウの「100%」などの数字は,キャラクターが所持するアイテムの総重量の,キャラクターの所持限界に対する割合を示していることは明らかである。 また,上記(1)ウの記載から,キャラクターが所持するアイテムの総重量がキャラクターの所持限界を超えた場合のデメリットには,キャラクターが所持するアイテムの総重量の前記所持限界に対する割合が,101?125%になると移動速度や攻撃速度が少し遅くなり,126?150%になるととても遅くなり,かつ,ジャンプが不可能になり,150%以上になると移動がほぼ不可能になること,及び100%を超えると加工生産ができなくなることが含まれるものと認められる。 コ 「限界」,「上限」及び「最大」という用語の意味の類似性に照らせば,上記(1)イの記載における,「所持限界」と,上記(1)クの記載における,「重量の上限」,並びに,上記(1)ク及び同コの「最大重量」という用語は,同義であると認められる。 そうすると,上記(1)クないし同コの記載からは,キャラクターの所持限界が,キャラクターのパラメーターの「力」を上げると増加することが把握できる。 2 引用発明 上記1の事項から,引用文献1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「ネットワークで接続された,ユーザが操作するPCとサーバからなるゲームシステムによって実行されるゲームプログラムであって, 前記ゲームシステムに, 仮想的なフィールド内のキャラクターに,ユーザの操作によって少なくともジャンプ,移動,加工生産の動作を実行させる機能と, キャラクターに,素材,売却・交換用品,防具が存在するアイテムを入手させる機能と, キャラクターが所持するアイテムを廃棄する機能と, アイテムごとに異なる重量が設定されており, キャラクターが所持するアイテムの総重量がキャラクターの所持限界を超えると移動速度や攻撃速度が遅くなるなどのデメリットを発生させる機能と, を実現させ, キャラクターが所持するアイテムの総重量がキャラクターの所持限界を超えた場合のデメリットには,キャラクターが所持するアイテムの総重量の前記所持限界に対する割合が,101?125%になると移動速度や攻撃速度が少し遅くなり,126?150%になるととても遅くなり,かつ,ジャンプが不可能になり,150%以上になると移動がほぼ不可能になること,及び100%を超えると加工生産ができなくなることが含まれ, キャラクターの所持限界は,キャラクターの“力”のパラメーターを上げると増加する, ゲームプログラム。」 第5 当審における判断 1 対比 本願発明と引用発明とを対比すると,以下のことがいえる。 (1) 引用発明の「ゲームプログラム」は,本願発明の「プログラム」に相当する。 (2) 引用発明の「PC」は,「ゲームプログラム」の少なくとも一部を実行するものであることは自明であり,PCがプロセッサを具備することも自明であるから,引用発明の「PC」は,本願発明の「プロセッサを具備するゲーム装置」に相当する。 (3) 上記(1)及び(2)から,本願発明と引用発明とは,「プロセッサを具備するゲーム装置」において少なくとも一部が実行される「プログラム」である点において共通する。 (4) 引用発明においては,「前記ゲームシステムに,仮想的なフィールド内のキャラクターに,ユーザの操作によって少なくともジャンプ,移動,加工生産の動作を実行させる機能」「を実現させ」ているから,本願発明と引用発明とは,「仮想的なフィールド内のキャラクタに,ユーザの操作によって複数の動作を実行させる動作制御部」「として機能させ」る点において共通する。 (5) 引用発明の「素材」は,本願発明の「素材」に相当する。 (6) 本願発明の「アイテム」の対比にあたり,本願明細書の記載を参酌すると,段落【0014】に,「アイテムとは,武器,防具,薬品など,それ単体で有用な価値を有するものである。」と記載されている。 引用発明の「売却・交換用品」は,売却できたり,交換することで,他のアイテムを入手することができたりすることから,それ単体で有用な価値を有するといえるし,引用発明の「防具」も,本願明細書の段落【0014】の上記記載に例示されており,それ単体で有用な価値を有するといえる。 そうすると,本願明細書の上記記載に照らせば,引用発明の「売却・交換用品」及び「防具」は,本願発明の「アイテム」に相当する。 (7) 引用発明においては,「前記ゲームシステムに」,「キャラクターにアイテムを入手させる機能と,前記キャラクターが所持するアイテムを破棄する機能」と,「を実現させ」ているが,アイテムを入手したり,破棄したりするごとに,キャラクターとアイテムの関連付けを,「ゲームシステム」が更新していることは明らかである。 引用発明の「アイテム」には,「素材」が含まれることを踏まえると,本願発明と引用発明とは,「前記キャラクタと関連付けられた素材およびアイテムの所持状況を,入手した素材,ならびに,破棄された素材およびアイテムに基づいて前記所持状況を更新」する点において共通する。 (8) 引用発明において,「アイテムごとに異なる重量が設定されており,キャラクターが所持するアイテムの総重量がキャラクターの所持限界を超えると移動速度や攻撃速度が遅くなるなどのデメリットを発生させる」ためには,「ゲームシステム」が,キャラクターのアイテムの所持状況に基づいてアイテムの総重量を算出する必要があることは明らかである。 そうすると,本願発明と引用発明とは,「前記所持状況に基づいて特定された素材およびアイテムの重量の和を算出する」点において共通する。 (9) 上記(7)及び(8)の検討から,本願発明と引用発明とは,「前記キャラクタと関連付けられた素材およびアイテムの所持状況を,入手した要素,および,破棄された素材およびアイテムに基づいて前記所持状況を更新し,前記所持状況に基づいて特定された素材およびアイテムの重量の和を算出する所持状況管理部」「として機能させ」る点において共通する。 (10) 引用発明においては,「ゲームシステム」が,「キャラクターが所持するアイテムの総重量がキャラクターの所持限界を超えると移動速度や攻撃速度が遅くなるなどのデメリットを発生させ」ており,「ジャンプ」は,「総重量の所持限界に対する割合」が「126?150%になる」と「不可能」とさせ,「150%以上になると移動がほぼ不可能に」させ,「100%を超えると加工生産ができなく」させる。 引用発明において,例えば,「キャラクターの所持限界」自体が,200LT(「LT」は,重量の単位である(上記第4の1(2)カ)。)であると,具体的に決まれば,それに対して,ジャンプが不可能にさせられる「126?150%」,移動がほぼ不可能にさせられる「150%」,加工生産ができるなく「100%」となる重量の値も,それぞれ,252?300LT,300LT,200LTと具体的に決まるものである。 すなわち,引用発明においては,複数の動作毎に動作が制限される重量の和が予め定められているといえるから,本願発明と引用発明とは,「前記複数の動作毎に該動作が制限される重量の和が予め定められ,算出された前記重量の和に応じて,前記複数の動作から制限対象となる動作を特定し,当該動作の実行を制限する動作制限部,として機能させ」る点において共通する。 さらに,引用発明においては,100%を超えたときに不可能となる動作と,126?150%になったときに不可能となる動作と,150%以上になったときに不可能となる動作は異なっている。 そうすると,本願発明と引用文献とは,「前記動作制限部は,制限対象となる1以上の動作を特定するに際して,一の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせと,別の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせとを異ならせ」る点においても共通する。 (11) 引用発明においては,「キャラクターの所持限界は,キャラクターのパラメーターの“力”を上げると増加する」ものであり,キャラクターの所持限界が増加すれば,加工生産ができなく」なる「アイテムの総重量」,「ジャンプ」が「不可能」になる「アイテムの総重量」,「移動」が「ほぼ不可能になる」「アイテムの総重量」も,それに伴って増加するから,引用発明においては,「キャラクターのパラメーターの“力”を上げると」,動作の制限が緩和されるといえる。 そうすると,引用発明の「キャラクターのパラメータの“力”を上げる」ことは,本願発明の「所定の条件を満た」すことに相当するから,本願発明と引用発明とは,「前記動作制限部による制限は,所定の条件を満たした場合に緩和される」点において共通する。 なお,請求人は,令和2年3月6日に提出した意見書において,動作制御部による制限が,所定の条件を満たした場合に緩和される点について,引用文献1に記載も示唆もされていない旨を主張するが,上述したとおり,引用文献1には,この点についての開示があるから,請求人の主張を採用することはできない。 (12) 上記(1)ないし(11)から,本願発明と引用発明とは,以下の点で一致する。 [一致点] 「プロセッサを具備するゲーム装置において少なくとも一部が実行されるプログラムであって, 仮想的なフィールド内のキャラクタに,ユーザの操作によって複数の動作の中から1以上の動作を実行させる動作制御部, 前記キャラクタと関連付けられた素材およびアイテムの所持状況を,入手した素材,ならびに,破棄された素材またはアイテムに基づいて前記所持状況を更新し,前記所持状況に基づいて特定された素材およびアイテムの重量の和を算出する所持状況管理部,ならびに, 前記複数の動作毎に該動作が制限される重量の和が予め定められ,算出された前記重量の和に応じて,前記複数の動作から制限対象となる動作を特定し,当該動作の実行を制限する動作制限部, として機能させ, 前記動作制限部は, 制限対象となる1以上の動作を特定するに際して, 一の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせと, 別の重量の和において制限対象とする動作の組み合わせとを異ならせ, 前記動作制限部による制限は,所定の条件を満たした場合に緩和される, プログラム。」 (13) そして,両者の発明は,以下の点で相違する。 [相違点1] 本願発明の「プログラム」,「ゲーム装置」の「プロセッサ」を,「動作制御部」,「所持状況管理部」及び「動作制限部」として機能させるのに対して,引用発明の「ゲームプログラム」は,ゲームシステムを構成するPCとサーバのいずれもプロセッサを有することは自明であることを踏まえると,PCのプロセッサと,サーバのプロセッサのいずれかを,「動作制御部」,「所持状況管理部」及び「動作制限部」として機能させることはいえるものの,PCのプロセッサを「動作制御部」,「所持状況管理部」及び「動作制限部」として機能させるのか否かが特定されない点。 [相違点2] 本願発明においては,「素材」は,「フィールド内で入手する」ものであるのに対して,引用発明においては,「素材」を入手する場所について特定されない点。 [相違点3] 本願発明においては,「制限対象とする動作」に,「前記フィールドにおいて前記キャラクタが位置する地形に対応して不可能となる動作が含まれる」のに対して,引用発明においては,そのような動作が含まれるのか否かが特定されない点。 2 相違点に対する判断 (1) 相違点1について 引用発明において,「ゲームシステム」を構成する「PC」のプロセッサ,または,「サーバ」のプロセッサによって実現される機能を,PCのプロセッサまたはサーバのプロセッサのいずれで実現するかは,当業者がプログラムを設計する際に,適宜決めるべき事項に過ぎず,ゲームシステムを構成するPCのプロセッサを,「動作制御部」,「所持状況管理部」及び「動作制限部」として機能させるようにすることは,単なる設計変更である。 (2) 相違点2について 素材となるアイテムを,ゲーム内の仮想的なフィールドで入手できるようにすることは,RPGのジャンルに属するゲームにおいて,一般的に行われている周知慣用手段である点に照らせば,引用発明においても素材をフィールド内で入手するものと解されるから,上記相違点2は実質的な相違点とはいえない。 仮に,本願発明と引用発明が,上記相違点2で相違するとしても,上述の点に照らせば,引用発明において,素材をフィールド内で入手するように構成することは,当業者が適宜なし得る程度のことである。 (3) 相違点3について 例えば,引用文献2(p.33上段の「水中を泳いで進むことになる。」の記載を参照。),引用文献3(p.50左上欄の「沼地の水深が深いところではダッシュできないので,なるべく水深が浅いところを移動しよう。」の記載を参照。),引用文献4(「キャラクター操作」の表「Space長押し 壁などのオブジェクトに登る」の記載を参照。)に記載されるように,仮想的なフィールド内のキャラクタに,ユーザの操作によって動作を実行させるゲームにおいて,フィールドにおいて前記キャラクタが位置する地形に対応して不可能となる動作,特定の地形でのみ可能となる動作は,本願出願前の周知技術である。 キャラクターに様々な動作を可能とすることで,ゲームにおける行動の自由度を高めることは,電子ゲームの分野において,一般的な課題であり,さらに,引用発明が,キャラクターが所持するアイテムの総重量によってキャラクターの動作を制限することを行っているうえ,上記周知技術を開示する各引用文献2ないし4に記載された,「水中を泳いで進む」,「ダッシュ」,「壁などのオブジェクトに登る」などの動作が,所持品の重量が大きいと困難な動作であることが,実生活上の経験則から自明であることに照らせば,引用発明における,キャラクターの動作として,上記周知技術を適用し,その動作を,キャラクターが所持するアイテムの総重量に応じて制限するようにすることは,当業者が適宜なし得る程度のことである。 3 効果について 本願発明が奏する効果は,引用発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 第6 むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-03-24 |
結審通知日 | 2020-03-31 |
審決日 | 2020-04-27 |
出願番号 | 特願2017-92253(P2017-92253) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
P 1 8・ 537- WZ (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前地 純一郎 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
清水 康司 塚本 丈二 |
発明の名称 | プログラムおよびゲーム装置 |
代理人 | 高橋 太朗 |
代理人 | 大林 章 |
代理人 | 高田 聖一 |