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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1363006
審判番号 不服2019-9220  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-09 
確定日 2020-06-11 
事件の表示 特願2015- 18881「皮膚バリア機能測定回路および皮膚バリア機能測定回路を有する電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 8日出願公開、特開2016-140582〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月2日の出願であって、平成30年11月1日付けで拒絶理由が通知され、同年12月28日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年1月10日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年3月22日付けで意見書が提出され、同年4月1日付けで拒絶査定されたところ、令和元年7月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
令和元年7月9日になされた手続補正は、補正前の請求項3、8-10を削除するものであり、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものである。
そして、本願の請求項に係る発明は、上記手続補正後の特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「交流信号を発生させる交流波発生回路と、
前記交流信号を印加する印加電極と、
前記印加電極から肌を透過した信号を検出する検出電極と、
前記交流信号に基づく信号を検出し波形を調整する検出回路と、
前記交流波発生回路の制御または前記検出回路からの出力信号を検出し演算を行う演算器と、
前記交流信号に基づく前記信号を検出し、前記信号の大きさを判定して切り替え信号を出力する判定回路と、を備え、
前記検出回路は、前記交流信号に基づく前記信号の波形を調整する増幅回路と、電流検出回路と、フィルター回路と、を備え、
前記切り替え信号に応じて前記増幅回路のゲインを変更する、皮膚バリア機能測定回路。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、平成30年12月28日付けで提出された手続補正書の特許請求の範囲における請求項1に係る発明は、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであをすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
また、請求項2に係る発明は、上記引用文献1、及び、引用文献3,4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、請求項4-7,11に係る発明は、上記引用文献1、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献2に記載された技術事項、及び、引用文献3,4に記載された周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2006-334415号公報
引用文献2:特開2012-157463号公報
引用文献3:特開平7-79938号公報(周知技術を示す文献)
引用文献4:特開平7-108040号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載事項及び引用発明
1 引用文献1の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2006-334415号公報(平成18年12月14日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。


「【0001】
本発明は、皮膚水和度(Skin hydration)の測定装置、皮膚水和度の測定装置の制御方法及び皮膚水和度の測定プログラムを記録した記録媒体に係り、特に、携帯電話、または携帯情報端末(PDA)のような携帯用端末機を利用して皮膚水和度を測定する皮膚水和度の測定装置、皮膚水和度の測定装置の制御方法及び皮膚水和度の測定プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、皮膚の含まれる水分を介して外部の刺激と感染とから身体を保護する障壁の役割を果たす。最近、皮膚美容への関心の高まりにより、皮膚の角質層に含まれた水分の量である皮膚水和度を測定する装置が開発されている。前記皮膚水和度の測定装置を利用して測定した皮膚水分量を利用し、測定された皮膚水和度に合う化粧品を選択したり、または周囲の環境の温湿度の影響に対する評価及び皮膚疾患にかかっていないかどうかなどを確認したりする。
【0003】
図1は、皮膚の断面図である。皮膚は、剥離層100、角質層110、有棘層120、真皮130及び皮下組織140からなっている。前記剥離層100、角質層110及び有棘層120を含む表皮部分は、皮膚内水分の外部蒸発を防止することにより、水分均衡及び障壁の機能を皮膚に維持させる。特に、前記表皮の水分均衡機能は、前記角質層110内の水和度維持メカニズムにより行われる。
【0004】
皮膚水和度は、角質層110に含まれる水分の量を意味し、皮膚障壁の状態を表す最適の指標であり、皮膚水和度は、人により、身体部位により、または季節により異なる値を有する。」


「【0005】
皮膚水和度を測定する方法としては、皮膚に電圧を印加した後、印加した電圧に対応して皮膚に流れる電流を測定することにより、測定した電流を利用して角質層の水分量を計算する方法が使われる。
【0006】
しかし、このような皮膚水和度の測定装置は、携帯が不便であり、ユーザが皮膚水和度を測定しようとする場所や時間に制限されることなく、自身の皮膚状態を測定できないという問題があった。また、携帯電話のような携帯用端末機を利用して皮膚水和度を測定するためには、携帯用端末機に備えられた3V前後の単電源をDC/DCコンバータを利用して昇圧した後で使用しなければならず、電力消耗が増大するという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、皮膚水和度を測定するにあたり、このような問題点を解決するために、携帯用端末機の単電源を利用して皮膚水和度を測定する皮膚水和度の測定装置、皮膚水和度の測定装置の制御方法及び皮膚水和度の測定プログラムを記録した記録媒体を提供することである。」


「【0031】
図2は、本実施形態に係る皮膚水和度の測定装置に適用される皮膚水和度の測定方法を示す図面である。交流電源200は、皮膚に接触した2つの印加電極210,220を介して、表皮230と真皮240とからなる皮膚に電圧を印加する。印加電圧は、表皮230に含まれた角質層のサセプタンス(susceptance)を測定するために、50khz前後の低周波数を有することが望ましい。
【0032】
2つの測定電極250,260は、印加された電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定し、皮膚に流れる電流に相応する電圧がOP-AMP270により増幅されて出力される。増幅された電圧は、A/D変換部280を介してデジタル信号に変換され、計算部290は、変換されたデジタル信号を利用し、角質層のサセプタンスを計算する。計算部290は、計算されたサセプタンスを利用し、角質層に含まれた水分の量を計算する。
【0033】
図3は、本実施形態に係る皮膚水和度測定が可能な携帯用端末機の全体的な構成を示すブロック図である。図3に示す携帯用端末機は、充電用電源300、電圧印加部305、電流測定部310、電圧増幅部315、A/D変換部320、メインプロセッサ325、ROM330、RAM335、ディスプレイ部340、ユーザ入力部345及び通信部350を備えてなる。図3に図示された携帯用端末機を利用した皮膚水和度の測定装置の動作を、図5を参照して説明する。ここで、携帯端末機としては、例えば、携帯電話またはPDAである。図5は、携帯用端末機を利用した皮膚水和度の測定装置の動作を示すフローチャートである。
【0034】
一般的な携帯電話のような携帯用端末機の動作としては、メインプロセッサ325の制御を受けて通信部350は、基地局とデータまたは音声信号を送受信し、ディスプレイ部340は、現在の携帯用端末機の状態などを表示し、ユーザ入力部345は、ユーザから特定端末機の機能遂行のための命令を、図示を省略したキーボタンなどを介して入力される。ROM330は、メインプロセッサの動作のためのプログラムを保存する。
【0035】
電圧印加部305は、充電用電源300から電力を供給され、ユーザが皮膚水和度を測定する所望の部位に電圧を印加する(ステップ500)。電圧印加部305は、2個のOP-AMPを備え、OP-AMPを介して発生させたサイン波を測定部位に印加することが望ましい。また、一般的に、携帯用端末機に使われる電源は、0Vから3V前後の範囲を有する単電源(single power source)であるから、電圧印加部305もまた測定部位に0Vから3V前後の範囲を有する単電圧を印加する。電圧印加部305は、メインプロセッサ325で使われるサイン波を直接メインプロセッサ325から入力され、測定部位に印加することもできる。ここで、単電源は、一般的に、0Vないし3Vの範囲であり、電圧印加部305は、この範囲の電圧を印加できるが、単電源は、3V以上であってもよく、かかる場合、電圧印加部305も、3V以上の電圧を印加可能である。
【0036】
電流測定部310は、測定部位に接触した電極(図示せず)を利用し、印加電圧を印加することにより測定部位に流れる電流を測定する(ステップ510)。測定した電流が抵抗(図示せず)を通過することにより発生する電圧は、電圧増幅部315に入力される。ここで、抵抗は、電圧増幅部315で増幅された電圧が携帯端末機で使われる電圧を超えないようにすることが望ましい。電圧増幅部315は、OP-AMPのような増幅器を利用し、測定された電圧に相応する電圧を増幅する(ステップ520)。この増幅された電圧の大きさが携帯用端末機で測定可能な範囲、例えば、携帯用端末機で使用する電源である0Vから3Vまでである場合、0Vから3Vまでの間を超えれば、測定される増幅電圧の大きさが3Vにサチュレート(saturation)される。従って、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲になるように制御する(ステップ530)。」


「【0039】
以下では、ステップ530におけるメインプロセッサ325が増幅された電圧を制御する方法について具体的に述べる。
【0040】
第一の方法としては、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の出力電圧を入力され、入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、電圧増幅部315の増幅率を調整する。メインプロセッサ325は、電圧増幅部315に備えられた可変抵抗の抵抗値を調整することにより、電圧増幅部315の増幅率を調整することが望ましい。電圧増幅部315の出力電圧の大きさが大きいほど信号対ノイズ比(SNR:Signal to Noise Ratio)が増大するので、正確な皮膚水和度の測定のために、メインプロセッサ325は、増幅された電圧の大きさが携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲でできる限り大きい値を有するように制御することが望ましい。
【0041】
第二の方法としては、RAM335に電圧増幅部315の出力電圧を2つ以上の区間に分け、各区間に対応する増幅率値を保存しておき、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315から入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し、電圧増幅部315の増幅率を調整する。例えば、RAM335に電圧増幅部315の出力電圧を2区間に分け、出力電圧が0Vから1.5Vである場合には、増幅率を100倍に、前記出力電圧が1.5Vから3Vである場合には、増幅率を10倍に保存しておき、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の出力電圧が0.5Vの場合には、電圧増幅部315の増幅率を100倍に調整することが望ましい。
【0042】
第三の方法としては、電圧印加部305が、増幅率が0より大きく1未満である増幅器(図示せず)、すなわち、電圧の大きさを小さくする増幅器(図示せず)を具備し、メインプロセッサ325が、電圧増幅部315の出力電圧の大きさが携帯用端末機内で測定可能な電圧範囲を超えないように、増幅器(図示せず)の増幅率を調整する。
【0043】
第四の方法としては、電圧増幅部315が2個以上のOP-AMPを具備し、電圧増幅部に入力される電圧を2段階以上に分けて増幅し、電圧増幅部315の出力電圧が携帯用端末機内で測定可能な電圧範囲を超えないように制御することもできる。メインプロセッサ325が増幅率を調整し、電圧増幅部315の出力電圧を制御した場合、調整された増幅率値をRAM335に保存することが望ましい。」


「【0044】
A/D変換部320は、電圧増幅部315の出力電圧をデジタル信号に変換して出力する(ステップ540)。メインプロセッサ325は、デジタル信号を入力され、デジタル信号と次の式(1)とを利用し、測定部位の角質層のサセプタンスBを計算する(ステップ550)。
【0045】
【数1】

【0046】
式(1)で、Iは測定電流であり、Vは印加電圧、Yは測定部位のアドミタンス、Gは測定部位のコンダクタンス、Bは測定部位のサセプタンスである。
【0047】
メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の増幅率、A/D変換部320から入力されるデジタル信号の大きさ、及び電圧増幅部315の前段階で使われた抵抗値を利用し、電流測定部310で測定した電流を計算し、計算された測定電流を電圧印加部305が印加した電圧で割ってアドミタンス値を計算し、測定部位のサセプタンス値を計算する。前記のように、印加電圧の周波数を50Khz前後の低周波とすることにより、測定部位のうち、水分量を測定する所望の角質層のアドミタンスを計算できる。
【0048】
メインプロセッサ325は、計算された測定部位のサセプタンス値を利用し、測定部位の皮膚水和度を計算する(ステップ560)。RAM335には、サセプタンス値と皮膚水和度値との関係が関係式またはルックアップテーブルのような形態で保存されており、メインプロセッサ325は、RAM335に保存されたサセプタンス値と皮膚水和度値との関係を利用し、計算されたサセプタンス値から測定部位の皮膚水和度を計算することが望ましい。また、RAM335に保存されたサセプタンスと皮膚水和度との関係は、実験により求めることが望ましい。」


図2として、以下の図面が記載されている。



図3として、以下の図面が記載されている。


(2)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。

ア 上記(1)ウの
「【0031】
(・・・中略・・・)交流電源200は、皮膚に接触した2つの印加電極210,220を介して、表皮230と真皮240とからなる皮膚に電圧を印加する。印加電圧は、表皮230に含まれた角質層のサセプタンス(susceptance)を測定するために、50khz前後の低周波数を有することが望ましい。
【0032】
2つの測定電極250,260は、印加された電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定し、皮膚に流れる電流に相応する電圧がOP-AMP270により増幅されて出力される。」、及び、上記(1)カの図2から、引用文献1には、「50khz前後の低周波数の電圧を皮膚に印加する交流電源200、前記電圧を印加するために皮膚に接触した印加電極210,220、前記電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定する測定電極250,260」が記載されているものと認められる。

イ 上記(1)ウの
「【0032】
2つの測定電極250,260は、印加された電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定し、皮膚に流れる電流に相応する電圧がOP-AMP270により増幅されて出力される。増幅された電圧は、A/D変換部280を介してデジタル信号に変換され、計算部290は、変換されたデジタル信号を利用し、角質層のサセプタンスを計算する。計算部290は、計算されたサセプタンスを利用し、角質層に含まれた水分の量を計算する。
(・・・中略・・・)
【0036】
電流測定部310は、測定部位に接触した電極(図示せず)を利用し、印加電圧を印加することにより測定部位に流れる電流を測定する(ステップ510)。測定した電流が抵抗(図示せず)を通過することにより発生する電圧は、電圧増幅部315に入力される。ここで、抵抗は、電圧増幅部315で増幅された電圧が携帯端末機で使われる電圧を超えないようにすることが望ましい。電圧増幅部315は、OP-AMPのような増幅器を利用し、測定された電圧に相応する電圧を増幅する(ステップ520)。」、及び、上記(1)キの図3から、引用文献1には、「電圧を印加することにより測定部位に流れる電流を測定する電流測定部310、測定した電流が通過することにより電圧を発生する抵抗、皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅する電圧増幅部315」が記載されているものと認められる。

ウ 上記(1)オの
「【0044】
A/D変換部320は、電圧増幅部315の出力電圧をデジタル信号に変換して出力する(ステップ540)。
(・・・中略・・・)
【0047】
メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の増幅率、A/D変換部320から入力されるデジタル信号の大きさ、及び電圧増幅部315の前段階で使われた抵抗値を利用し、電流測定部310で測定した電流を計算し、計算された測定電流を電圧印加部305が印加した電圧で割ってアドミタンス値を計算し、測定部位のサセプタンス値を計算する。前記のように、印加電圧の周波数を50Khz前後の低周波とすることにより、測定部位のうち、水分量を測定する所望の角質層のアドミタンスを計算できる。
【0048】
メインプロセッサ325は、計算された測定部位のサセプタンス値を利用し、測定部位の皮膚水和度を計算する(ステップ560)。」、及び、上記(1)キの図3から、引用文献1には、「電圧増幅部315の増幅率、電圧増幅部315の出力電圧をデジタル信号に変換して出力するA/D変換部320から入力されるデジタル信号の大きさ、及び電圧増幅部315の前段階で使われた抵抗値を利用し、測定部位のサセプタンス値、皮膚水和度を計算するメインプロセッサ325」が記載されているものと認められる。

エ 上記(1)エの
「【0040】
第一の方法としては、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の出力電圧を入力され、入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、電圧増幅部315の増幅率を調整する。メインプロセッサ325は、電圧増幅部315に備えられた可変抵抗の抵抗値を調整することにより、電圧増幅部315の増幅率を調整することが望ましい。
(・・・中略・・・)
【0041】
第二の方法としては、RAM335に電圧増幅部315の出力電圧を2つ以上の区間に分け、各区間に対応する増幅率値を保存しておき、メインプロセッサ325は、電圧増幅部315から入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し、電圧増幅部315の増幅率を調整する。」、及び、上記(1)キの図3から、引用文献1には、「メインプロセッサ325は、電圧増幅部315の出力電圧を入力され、入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し、電圧増幅部315の増幅率を調整する」ことが記載されているものと認められる。

オ 上記(1)イの
「【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、皮膚水和度を測定するにあたり、このような問題点を解決するために、携帯用端末機の単電源を利用して皮膚水和度を測定する皮膚水和度の測定装置」、及び、上記(1)カ、キの第2,3図から、引用文献1には、「皮膚水和度の測定回路」が記載されているものと認められる。


以上をふまえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「50khz前後の低周波数の電圧を皮膚に印加する交流電源200と、 前記電圧を印加するために皮膚に接触した印加電極210,220と、
前記電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定する測定電極250,260と、
前記電圧を印加することにより測定部位に流れる電流を測定する電流測定部310と、
測定した電流が通過することにより電圧を発生する抵抗と、
皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅する電圧増幅部315と、
前記電圧増幅部315の増幅率、前記電圧増幅部315の出力電圧をデジタル信号に変換して出力するA/D変換部320から入力されるデジタル信号の大きさ、及び、前記電圧増幅部315の前段階で使われた抵抗値を利用し、前記測定部位のサセプタンス値、皮膚水和度を計算するメインプロセッサ325と、を備え、
前記メインプロセッサ325は、前記電圧増幅部315の出力電圧を入力され、入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し、前記電圧増幅部315の増幅率を調整する、皮膚水和度の測定回路。」


第5 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

(1)引用発明の「50khz前後の低周波数の電圧」は、本願発明の「交流信号」に相当する。
したがって、引用発明の「50khz前後の低周波数の電圧を皮膚に印加する交流電源200」は、本願発明の「交流信号を発生させる交流波発生回路」に相当する。

(2)上記(1)を踏まえると、引用発明の「前記電圧を印加するために皮膚に接触した印加電極210,220」は、本願発明の「前記交流信号を印加する印加電極」に相当する。

(3)引用発明の「前記電圧に対応し、皮膚に流れる電流」は、本願発明の「前記印加電極から肌を透過した信号」に相当する。
したがって、引用発明の「前記電圧に対応し、皮膚に流れる電流を測定する測定電極250,260」は、本願発明の「前記印加電極から肌を透過した信号を検出する検出電極」に相当する。

(4)上記(1)を踏まえると、引用発明の「測定した電流が通過することにより」「発生する」「電圧」である「皮膚に流れる電流に相応する電圧」は、本願発明の「前記交流信号に基づく信号」に相当する。
そして、引用発明において、当該「電圧」が「電圧増幅部315」に入力されることは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記交流信号に基づく信号を検出し」に相当する構成を備えているといえる。

また、本願の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は当審が付した。)

「【0017】
ここで人の肌の状態は、正常な状態から角層がすべて剥がれた荒れ肌の状態、アトピーの状態、乾燥した状態など様々な状態が存在する。このため、皮膚インピーダンス値も広い範囲で変化する。 例えば、500Hzの交流信号を印加した場合、角層がすべて剥がれた荒れ肌から正常な肌の間で2KΩから20MΩの範囲で皮膚インピーダンスが変化する。人の肌の角層がすべて剥がれたような荒れ肌である場合、図5に示すように検出電極104の信号は信号検出回路320で増幅及び整形された後、前記入力端子361に出力信号の最大値が一定の部分でカットされる波形として現れる。これは増幅回路321の出力限界を超えたため起きている。
【0018】
この時、前記判定回路371は、500Hzの交流信号に基づく出力信号が増幅回路321の出力限界を超えていることを判定し、当該出力信号が最大値を越える前に増幅回路321と演算器301に当該増幅回路321のゲインを切り替える信号を出力する。これにより、前記増幅回路321のゲインを低下させ、演算器301に再測定を行わせる。その結果、前記出力信号が増幅回路321の出力限界を超えることを防止し、演算器301は正確な出力信号を検出することができる。
【0019】
図4の時刻t2では、500Hzの交流信号に基づく出力信号が増幅回路321の出力限界を超えたため、増幅回路321のゲイン変更後の出力信号を示している。増幅回路321の出力限界を超えた場合はこの出力信号を演算器301で検出し、皮膚インピーダンスを算出して皮膚バリア機能の状態を数値化する第一の測定値として用いる。」

上記記載を参酌すると、本願発明の「波形を調整する」ことは、増幅回路により信号の増幅を行うことを含むから、引用発明の「皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅する電圧増幅部315」の、「皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅する」ことは、本願発明の「波形を調整する」ことに相当する。
上記のことから、引用発明の「測定部位に流れる電流を測定する電流測定部310」、「測定した電流が通過することにより電圧を発生する抵抗」、及び、「皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅して出力する電圧増幅部315」からなる構成は、本願発明の「前記交流信号に基づく信号を検出し波形を調整する検出回路」に相当する。

(5)引用発明の「メインプロセッサ325」の「前記電圧増幅部315の増幅率、A/D変換部320から入力されるデジタル信号の大きさ、及び、前記電圧増幅部315の前段階で使われた抵抗値を利用し、前記測定部位のサセプタンス値、皮膚水和度を計算する」ための構成は、本願発明の「前記交流波発生回路の制御または前記検出回路からの出力信号を検出し演算を行う演算器」に相当する。

(6)引用発明の「前記メインプロセッサ325」の「入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し」は、「携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように」、「入力される増幅された電圧」に基づいて「RAM335から読み出」す「増幅率」を選択しているものであるから、引用発明の「メインプロセッサ325」は、本願発明の「前記信号の大きさを判定」と、「入力された信号の大きさを判定」することで共通する構成を備えている。
また、引用発明の「前記メインプロセッサ325」の「増幅率をRAM335から読み出し、前記電圧増幅部315の増幅率を調整する」は、「メインプロセッサ325」からの指令により、「前記電圧増幅部315」の増幅率が更新されるものであるから、引用発明の「メインプロセッサ325」は、本願発明の「切り替え信号を出力する」に相当する構成を備えている。
したがって、引用発明の「メインプロセッサ325」の「前記電圧増幅部315の出力電圧を入力され、入力された出力電圧が、携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように、入力される増幅された電圧の大きさに対応する増幅率をRAM335から読み出し、前記電圧増幅部315の増幅率を調整する」ための構成と、本願発明の「前記交流信号に基づく前記信号を検出し、前記信号の大きさを判定して切り替え信号を出力する判定回路」とは、「入力された信号の大きさを判定して切り替え信号を出力する判定回路」である点で共通する。

(7)引用発明の「測定部位に流れる電流を測定する電流測定部310」は、本願発明の「電流検出回路」に相当する。

(8)上記(4)を踏まえると、引用発明の「皮膚に流れる電流に相応する電圧を増幅する電圧増幅部315」は、本願発明の「前記交流信号に基づく前記信号の波形を調整する増幅回路」に相当する。

(9)上記(6)(8)を踏まえると、引用発明の「電圧増幅部315」は、「メインプロセッサ325」からの指令により増幅率が更新されるものであるから、引用発明は、本願発明の「前記切り替え信号に応じて前記増幅回路のゲインを変更する」ことに相当する構成を備えるものである。

(10)引用発明の「皮膚水和度の測定回路」と、本願発明の「皮膚バリア機能測定回路」は、両者「皮膚機能の測定回路」である点で共通している。

2 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

【一致点】
「交流信号を発生させる交流波発生回路と、
前記交流信号を印加する印加電極と、
前記印加電極から肌を透過した信号を検出する検出電極と、
前記交流信号に基づく信号を検出し波形を調整する検出回路と、
前記交流波発生回路の制御または前記検出回路からの出力信号を検出し演算を行う演算器と、
入力された信号の大きさを判定して切り替え信号を出力する判定回路と、を備え、
前記検出回路は、前記交流信号に基づく前記信号の波形を調整する増幅回路と、電流検出回路と、を備え、
前記切り替え信号に応じて前記増幅回路のゲインを変更する、皮膚機能の測定回路。」

【相違点1】
「皮膚機能の測定回路」が、本願発明は、「皮膚バリア機能測定回路」であるのに対し、引用発明は、「皮膚水和度の測定回路」である点。

【相違点2】
「検出回路」が、本願発明は「フィルター回路」を備えるのに対し、引用発明は「フィルター回路」を備える点について特定されていない点。

【相違点3】
判定回路で大きさを判定する「入力された信号」が、本願発明は、「検出回路」により「検出」される「前記交流信号に基づく前記信号」であり、「増幅回路」により増幅される「信号」(つまり、増幅回路により増幅される前の信号)であるのに対して、引用発明は、「前記電圧増幅部315の出力電圧」(つまり、増幅回路により増幅された後の信号)である点。


第6 判断
以下、相違点について検討する。
1 相違点1について
引用文献1の上記第4 1(1)アには、「皮膚水和度は、角質層110に含まれる水分の量を意味し、皮膚障壁の状態を表す最適の指標であり、皮膚水和度は、人により、身体部位により、または季節により異なる値を有する。」と記載されており、「皮膚水和度」は、「角質層110に含まれる水分の量を意味」するものであり、「皮膚障壁の状態を表す最適の指標」であると記載されている。
他方、本願発明においては、発明の詳細な説明を参照しても、「皮膚バリア機能」の具体的な定義について記載されておらず、【背景技術】として、「検出された電気信号は、本体部1701に内蔵された演算部にて所定の演算処理が行われ、算出されたサセプタンスやアドミタンス等に基づいて、角質層バリア機能となりえる特性値が算出される。そして、特性値を表示部1702に表示させ皮膚バリア機能を表す数値として用いる」といった算出方法が記載されているのみである。
そして、本願請求項1において、「皮膚バリア機能」の意味について、特段の特定はされていないため、本願発明の「皮膚バリア機能」は、その文言通りの意味として解釈する他なく、発明の詳細な説明の上記記載を参酌しても、「検出された電気信号に所定の演算処理が行われ、算出されたサセプタンスやアドミタンス等に基づいて」算出される「特性値」が「皮膚バリア機能」を表す数値として用いられることが把握されるまでである。
してみると、引用発明の「皮膚水和度」は、引用文献1の上記第4 1(1)オに記載されるように、「サセプタンス値」を利用して計算されるものであり、また、上記のように「皮膚障壁の状態を表す最適の指標」である、引用発明の「皮膚水和度」は本願発明の「皮膚バリア機能」に相当するものといえる。
したがって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

なお、本願発明の「皮膚バリア機能」が、引用発明の「皮膚水和度」と異なるものと解したとしても、皮膚表面に印加電極、及び、検出電極を接触させ、皮膚表面に交流信号を印加して得られる信号を測定し、得られた信号に基づいて、皮膚水分量、及び、皮膚バリア機能両者の測定を行うことは、本願出願時点において周知の技術であり(例えば、特開2003-310567号公報(以下「文献(1)」という。)の特に段落【0004】-【0007】、特開2005-52227号公報(以下「文献(2)」という。)の特に段落【0015】【0016】参照)、「皮膚水和度(すなわち、皮膚水分量)の測定回路」である引用発明において、「皮膚バリア機能測定」を行う構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜なし得ることである。


2 相違点2について
上記「相違点1について」で示した文献(1)(2)には、「検出器4は信号検出に加え、過電流過電圧保護、ノイズ成分除去、演算器へのインターフェイスの機能を有するものである。」(上記文献(1)の段落【0009】、文献(2)の段落【0014】参照)と記載されており、角質水分量又は角質層バリア機能の測定を行う際にノイズ成分除去を行うことは、周知の事項であると認められる。
そして、生体のインピーダンス測定を通じて、生体の水分量を測定する際に、測定信号に対してフィルター回路によるフィルタリングを適用することにより、ノイズを除去する技術手段は、下記の文献(3)(4)に例示されるように常套手段である。

(3)特開2012-176120号公報(下線は当審が付した。)

「【0018】
図2は、実施形態の体内水分計10の機能構成例を示すブロック図である。図2において、CPU201は、ROM221に格納されているプログラムを実行することにより、体内水分計10における種々の制御を実行する。例えば、CPU201は、表示部23の表示制御、ブザー27の鳴動の制御、体内水分量の計測(本実施形態ではインピーダンス計測)などを制御する。RAM220は、計測値などを一時的に格納する。
【0019】
矩形波発信部202は、所定周波数(本実施形態では10kHz)の矩形波状の電気信号を出力する。なお、矩形波発信部202による電気信号の出力のオン、オフは、CPU201によって制御される。供給信号生成部203は、定電圧回路または定電流回路を含み、矩形波発信部202から出力された矩形波の電気信号から、被検者へ供給するための電気信号を生成する。供給信号生成部203で生成される電気信号は、矩形波発信部202が出力する矩形波信号が有する所定周波数と、所定電圧振幅(本実施形態では0.5V)或いは所定電流振幅(本実施形態では100μA)を有する。
【0020】
供給信号生成部203で生成された電気信号は第1電極31に供給される。第1電極31により供給され、生体を介して第2電極32に到達した電気信号は、電流検出回路または電圧検出回路を含む信号検出部204により検出され、計測信号に変換される。信号検出部204で得られた計測信号は、ローパスフィルタ(LPF205)により高周波ノイズ分が除去され、A/D変換器210に供給される。A/D変換器210は、供給された計測信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して、測定値としてCPU201に提供する。」

(4)特許第5612788号公報(下線は当審が付した。)

「【0036】
この実施形態は、携帯端末機Xから出力される信号(音声信号)を人体への入力信号(測定信号:例えば、20Hz?数十kHz)として使用する方法であり、ツボ検知器1(図1(a))を使用して、図2に示すステップでツボを検知することができる。
【0037】
(1)前記アプリにより、前記音声信号中の所望周波数帯域(例えば20Hz?数十kHz)の信号をフィルタリングして、人体に印加する信号(測定信号)として生成するステップ(STEP001)。
(2)前記測定信号を、携帯端末機XのジャックYに接続されたツボ検知器1の出力電極6から人体に印加するステップ(STEP002)。
(3)人体に印加された出力信号が、人体の別の部位から前記ツボ検知器1の入力電極5に入力されるステップ(STEP003)。
(4)入力電極5に入力された入力信号をジャックYから携帯端末機Xに送り、前記アプリにより、測定信号の周波数帯域と同じ周波数帯域の信号を抽出(フィルタリング)して検知信号を生成するステップ(STEP004)。
(5)前記検知信号を、前記アプリにより、携帯端末機XのディスプレイDに図3(a)(b)のように表示するステップ(STEP005)。
【0038】
前記STEP004において、入力信号から測定信号の周波数帯域と同じ周波数帯域の信号を抽出して検知信号を生成するのは、測定信号の変化を正確に確認できるようにするためである。この生成により、人体から入力される信号に含まれる不要信号(ノイズ)が除去される。入力信号のフィルタリングには、例えばFFT解析(高速フーリエ変換)や他のフィルタリング方法を用いることができる。(以下の測定、検知において同じ)。前記ディスプレイDに表示された検知信号を目視して電流変化を確認し、電流変化の大きい部位(電流が大きくなった部位)をツボとして認識することができる。
【0039】
前記ツボ検知方法では、ツボ検知後にツボ検知器1を人体から離すと、検知されたツボ位置が不明になるおそれがある。そこで、この実施形態では、検知されたツボ位置にマークを表示して、ツボ位置を目視で確認できるようにする。表示方法、表記については後述する。
【0040】
(人体部位(保湿)検知方法の実施形態) 本発明の人体部位検知方法(保湿検知方法)の一例を、図4、図5を参照して説明する。この保湿検知方法は、人体の皮膚、特に顔や手などの皮膚の水分量(保湿量、保湿度)を検知する方法である。皮膚の水分量(保湿量)が多い場合は、少ない場合(乾燥状態)よりもインピーダンスが低くなることから、皮膚(人体)に電流を流すと、保湿量が多い時は電流が多くなり、保湿量が少ないときは電流が少なくなる。この電流量を検知(測定)して皮膚の保湿量の多寡(保湿度の高低)を検知する方法である。
【0041】
具体的には、図4(a)に示すようにペン型の保湿検知器10のプラグ4を携帯端末機XのジャックYに接続して、図5に示すステップで保湿度を検知する方法である。
(1)前記アプリにより、携帯端末機Xから出力される音声信号中から、所望周波数帯域の信号をフィルタリングして、人体に印加する信号(測定信号)を生成するステップ(STEP001)。
(2)前記測定信号を、携帯端末機XのジャックYに接続されている保湿検知器10の出力電極6から人体に印加するステップ(STEP002)。
(3)人体に印加された測定信号が、人体の別の部位から、前記保湿検知器10の入力電極5に入力されるステップ(STEP003)。
(4)入力電極5に入力された入力信号から、前記アプリにより、測定信号の周波数帯域と同じ周波数帯域の信号を抽出(フィルタリング)して検知信号を生成するステップ(STEP004)。
(5)前記検知信号を、前記アプリにより処理して保湿度を演算処理、解析等(以下「処理」という)して、図4(b)のように、携帯端末機XのディスプレイDに表示するステップ(STEP005)。
前記ディスプレイDに表示された保湿度を目視して、皮膚の保水状態を認識することができる。検知された保湿度は、測定するたびに、前記アプリにより、携帯端末機Xに記憶(蓄積)しておき、その蓄積データを前記表形式、グラフ形式といった各種形式に変換して携帯端末機XのディスプレイDに表示することもできる。」

したがって、皮膚水和度の測定回路である引用発明において、測定された電流又は電圧に含まれるノイズ成分除去を行うために、フィルター回路を備える構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

3 相違点3について
引用発明の「メインプロセッサ325」は、「前記電圧増幅部315の出力電圧」の大きさを判定して切り替え信号を出力するものであるが、引用発明は、予め決定されている「携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲に属するように」、「前記電圧増幅部315」の増幅率を調整するものであり、予め決定されている「携帯用端末機内で測定可能な電圧の範囲」にするための「増幅率」は、「前記電圧増幅部315」による増幅前の信号を用いても、増幅後の信号を用いても同様の増幅率として決定されることは明らかであり、増幅前後のいずれの信号に基づいて増幅率の調整を行うかは設計的事項であると認められる。
したがって、引用発明において、「メインプロセッサ325」が前記電圧増幅部315に入力される前の信号の大きさを判定して切り替え信号を出力する構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。

4 そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

5 したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
審理終結日 2020-03-25 
結審通知日 2020-03-31 
審決日 2020-04-21 
出願番号 特願2015-18881(P2015-18881)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永田 浩司  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 松谷 洋平
渡戸 正義
発明の名称 皮膚バリア機能測定回路および皮膚バリア機能測定回路を有する電子機器  
代理人 渡邊 薫  

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