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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1363010
審判番号 不服2019-13227  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-03 
確定日 2020-06-11 
事件の表示 特願2016-147033「紙管用の輸送箱」拒絶査定不服審判事件〔平成30年2月1日出願公開、特開2018-16345〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年7月27日の出願であって、令和元年7月11日付けで拒絶理由が通知され、これに対して令和元年7月19日に手続補正書及び意見書が提出され、令和元年8月29日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年10月3日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。


第2 令和元年10月3日付けの手続補正の補正却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和元年10月3日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、令和元年7月19日の手続補正により補正された願書に添付された特許請求の範囲の請求項1の
「少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により低発泡射出成形され、帯電防止性を有する箱に形成されて包装用フィルムの紙管を複数本収納可能な紙管用の輸送箱であって、
平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部と第二の幅板の一側部のいずれかに屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを含んでなることを特徴とする紙管用の輸送箱。」を
「樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により低発泡成形され、帯電防止性を有する繰り返し使用可能な輸送箱に形成されて食品保存の包装用フィルムの紙管を横に寝かせた横置き状態で複数本並べて収納可能な紙管用の輸送箱であって、
成形材料は、ポリプロピレン系の樹脂と帯電防止剤とを含有して専用金型に射出される材料で、帯電防止剤の配合量がポリプロピレン系の樹脂に対して4質量部以上11質量部以下であり、
輸送箱は、平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部に屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを備えた展開状態に低発泡射出成形され、折り畳み可能な厚さ2.0mm以上の箱に形成されて1日以上3日以下エイジングされることを特徴とする紙管用の輸送箱。」とする補正を含むものである(下線は補正箇所を明示するために当審で付与した。)。

2 補正事項
そして、上記補正は、以下の補正事項を含むものである。
(1)補正事項1
請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料について、「帯電防止剤の配合量がポリプロピレン系の樹脂に対して4質量部以上11質量部以下である」ことを特定する。

(2)補正事項2
請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である輸送箱について、「折り畳み可能な厚さ2.0mm以上の箱に形成され」ていることを特定する。

(3)補正事項3
請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である輸送箱について、「展開状態に低発泡射出成形され、折り畳み可能な」「箱に形成されて1日以上3日以下エイジングされる」ことを特定する。

3 特許法第17条の2第3項に適合するかについて
(1)補正事項1について
補正事項1は、「ポリプロピレン系の樹脂と帯電防止剤とを含有」する「成形材料」が「帯電防止剤の配合量がポリプロピレン系の樹脂に対して4質量部以上11質量部以下であ」ると特定するものであるところ、「成形材料」は「樹脂と帯電防止剤とを含有した」ものであるから、請求項1に係る発明は、「樹脂」中にポリプロピレン系の樹脂以外の樹脂が含まれるものも含まれている。そうすると、訂正事項1は、「成形材料」が、「ポリプロピレン系の樹脂」と任意でポリプロピレン系の樹脂以外の樹脂を含有するものにおいて、「帯電防止剤」を「ポリプロピレン系の樹脂に対して4質量部以上11質量部以下」含有することを特定するものである。
一方、願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)には、「帯電防止剤の配合量は、紙管2や輸送箱10の着色や汚染を未然に防止するため、樹脂に対して4?11質量部、好ましくは5?10質量部、より好ましくは7?10質量部程度が良い。」(【0030】)と記載されており、「樹脂に対して4?11質量部」とすることは記載されているが、ポリプロピレン系の樹脂に対して4質量部以上11質量部以下とすることは記載されていない。
そうすると、帯電防止剤の量は紙管や輸送箱の着色や汚染に影響するものであるから、補正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「当初明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(2)補正事項2について
補正事項2の「折り畳み可能な厚さ2.0mm以上の箱に形成され」は、その文言から、箱の厚さが2.0mm以上であることを特定するものである。
しかし、当初明細書の【0032】に輸送箱の中間品、すなわち「成形材料を射出して展開状態の輸送箱10」(【0030】)の厚さを2.0mm以上とすることは記載されているが、輸送箱自体の厚さに関しては当初明細書等に何ら記載されておらず、補正事項2は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

(3)補正事項3について
当初明細書には、「輸送箱10の中間品を冷却固化させたら、専用金型を型開きして輸送箱10の中間品を取り出し、この輸送箱10の中間品の外面に必要に応じて印刷処理を施し、輸送箱10の中間品を打ち抜き加工して不要部分を除去することにより、展開状態の輸送箱10を形成し、その後、輸送箱10の継ぎ代板13等を各種の方法で接合(例えば、熱溶着、平線止め、テープ貼り、糊貼り等)すれば、帯電防止性を有する紙管用の輸送箱10を折り畳み状態に製造することができる。輸送箱10を製造したら、複数の輸送箱10をまとめて1?3日程度、好ましくは2?3日程度エイジングし、品質の安定を図ると良い。」(【0033】)と記載されており、展開状態の輸送箱10を形成した後、輸送箱10の継ぎ代板13等を接合して輸送箱10を折り畳み状態に製造し、その輸送箱10を複数まとめて1?3日程度、好ましくは2?3日程度エイジングすることが記載されている。
しかし、補正事項3は、折り畳み状態でエイジングするものでなく、当該エイジングは、品質の安定に影響するものであるから、補正事項2は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであって、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものである。

4 むすび
以上のとおりであるから、本件補正後の請求項1に係る発明は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和元年10月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和元年7月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2 令和元年9月18日付けの手続補正の補正却下の決定」の「1 本件補正について」の記載参照。)

2 引用例
(1)引用例1
令和元年7月11日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2016-130132号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同じ)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、紙粉軽減段ボール箱及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
段ボール箱は、現在種々の物品の収納容器として用いられている。
また、紙管は糸、フィルムその他を巻回して保管する芯材として広く用いられている。
【0003】
最近では、医療関係、食品関係においては、クリーンルーム内で使用されるものも多い。クリーンルームでは、塵、ゴミ等は当然発生してはならない。しかしながら、紙管は、紙製であるため、どうしても紙粉が発生する。よって、基本的にはクリーンルームでは使用できない。これを防止するため、紙管表面にフィルムを貼る、樹脂を塗布又は含浸する等の紙粉防止処理が行われている。特許文献1参照。
【0004】
この紙管を搬送する場合、箱に収納して行うのが普通である。一般的な収納箱は段ボール箱であるが、上記したクリーンルーム用では使用できない。なぜならば、この段ボールも紙製であり紙粉が発生するためである。
段ボールの表面は選択する紙によっては、紙粉は軽減できるが、端面は裁断したままの状態であり、非常に紙粉が発生しやすい。段ボールで、この端面をカバーしたものはない。図2は、この従来の段ボールを示す。裁断面(拡大している)は裁断したままであることがわかる。
【0005】
よって、紙粉を防止するため、紙製の段ボールではなく、プラスチック段ボールが用いられている。プラスチック製であるため、紙粉は発生しない。
【0006】
しかしながら、プラスチック製であるため、どうしても静電気が発生する。帯電防止剤を混入して軽減することが行われているが、完全ではない。この静電気が発生すると、空気中の浮遊ゴミを吸着することになる。このため、その吸着したゴミをクリーンルーム内に持ち込むことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010-120717号公報」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、静電気ほとんどなく、紙粉が防止できる段ボール箱を提供する。」

(2)引用例1に記載された発明
上記(1)の摘記事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「食品関係において使用され、フィルムを巻回して保管する芯材として用いられる紙管を収納して搬送する収納箱であって、
帯電防止剤を混入したプラスチック製のプラスチック段ボールの収納箱。」

(3)引用例2
令和元年7月11日付けで通知した拒絶理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2003-104483号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は半導体ウエハなどの電子部品を収納、運搬するための樹脂製箱、すなわち電子部品運搬用樹脂製容器に関するものである。」

(イ)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、図10に示すように、上記従来のプラスチック段ボール50では、ライナー51・51とリブ52・52とによる空間である隙間53がこれらの長さ方向に存在する。例えば、ライナー51・51の間隔およびリブ52・52の間隔が数mmである場合には、これらにより数mmの隙間53が形成される。すなわち、プラスチック段ボール50では隙間53が、その端面において開放されている。このため、該端面から前記空間にゴミが入り、電子部品等の製品出し入れの際に前記ゴミが電子部品等に付着するという問題がある。」

(ウ)「【0024】
【発明の実施の形態】〔実施の形態1〕本発明の実施の一形態について図1ないし図6に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0025】本実施の形態の電子部品用容器(電子部品収納用樹脂製容器)1は、図1に示すように、半導体ウエハ等の電子部品を収納するものであって、該電子部品用容器1は表面抵抗率が10^(13)Ω/sq未満である樹脂シート(発泡樹脂製シート)2により構成されている。
【0026】上記したように、本実施の形態の電子部品用容器1は樹脂シート2により構成されており、樹脂シート2は発泡樹脂により形成されているものであり、従来のプラスチック段ボールのようにリブとライナーとからなるものではない。このため、端面からリブ間の隙間にゴミが入ることがなく、電子部品用容器1に電子部品を出し入れする際に、リブ間の隙間のゴミが電子部品に付着するという問題の発生を防止することができる。また、樹脂シート2の表面抵抗率は10^(13)Ω/sq未満であり、これにより、電子部品の運搬時に生じる静電気を放電すること、あるいは予防することができる。このため、電子部品用容器1による運搬中に電子部品が静電破壊されることを防止することができる。なお、樹脂シート2の表面抵抗率は、10^(11)Ω/sq以下であることがよりに好ましく、10^(9)Ω/sq以下であることがさらに好ましい。
【0027】ここで、電子部品用容器1に用いられる樹脂シート2の厚さは、2mm以上、10mm以下の範囲内である。当該電子部品用容器1は、連続した1枚の樹脂シート2で構成されていてよく、また、適宜の手段で接合された2枚以上の樹脂シート2で構成されていてもよいが、電子部品用容器1を構成している少なくとも一枚の樹脂シート2には少なくとも一つの折り曲げ部3が存在する。
【0028】この折り曲げ部3は、例えば、連続した樹脂シート2から形成された隣接する二面4・4間の辺部3aであることができ、あるいは、図2に示すように、一の面4と、該面4と連続しており該面4を他の面4に接合するための接合部5(図2において斜線を付した部分)との境界となる折り曲げ部3bであることもできる。」

(エ)「【0038】また、上記樹脂シート2は、後に詳述するが、例えばプロピレン系樹脂等の熱可塑性樹脂を主成分とする樹脂からなっており、例えば発泡倍率約3倍の単一の発泡層のみで構成された単層発泡シートからなっている。重量と強度とのバランスの観点から、この樹脂シート2に含まれる少なくとも一層の発泡層の発泡倍率は1.5?9倍が好ましい。」

(オ)「【0048】前記の単層の発泡シートは、常圧加熱法、押出発泡法、加圧発泡法、射出発泡法などにより製造することができる。一方、多層発泡シートは、多層押出発泡法により製造することができ、また、予め製造したそれぞれの層を接着や融着などの手段により積層することにより製造することもできる。」

(カ)「【0052】本実施の形態の電子部品用容器1を構成する樹脂シート2の表面抵抗率は10^(13)Ω/sq未満である。このため、電子部品の運搬時に生じる静電気を放電、あるいは予防することができる。さらに、通い箱として使用される場合には、汚れ難いことが望ましい。一般に、樹脂製の箱は帯電し易く、ごみ等を吸着して汚れ易いが、本実施の形態の電子部品用容器1には、前記したように帯電防止性能が付与されているため、通い箱として使用される場合に、その表面にごみなどを吸着することにより汚れることを防止することができる。なお、電子部品用容器1を構成する樹脂シート2への帯電防止性能の付与は、帯電防止剤の使用により達成することができる。」

(キ)「【0058】上記樹脂に帯電防止剤を練り込む形態の場合、帯電防止剤は樹脂シート2の全体に配合されていてもよいが、少量の帯電防止剤を用いて効率良く帯電防止性能を発揮することができるように、少なくとも二層で構成された樹脂シート2の帯電防止性を発揮させたい表面を有する層のみに帯電防止剤を配合しておくことが好ましい。例えば、樹脂シート2の片面のみに帯電防止性が求められる場合には、樹脂シート2を少なくとも二層で構成し、帯電防止性が求められる表面を有する層のみに帯電防止剤を配合することにより、効率的に所望の帯電防止性を達成することができる。また、樹脂シート2の両面に帯電防止性が求められる場合には、少なくとも3層で構成した樹脂シート2の両最外層に帯電防止剤を配合することにより、効率的に所望の帯電防止性を達成することができる。」

(ク)「【0063】〔実施の形態2〕本発明の他の実施の形態について図7ないし図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。また、前記実施の形態1で述べた各種の特徴点については、本実施の形態についても組み合わせて適用し得るものとする。
【0064】本実施の形態の電子部品用容器20は、図7に示す樹脂シート21を2枚接合して形成されるものとなっている。すなわち、樹脂シート21は各蓋部8および底部10を含む正面背面構成材21aと側面構成材21bと接合部22とからなっている。したがって、一枚のシートで電子部品用容器20の直方体の4側面を形成するものではない点で、製造装置の小型化および金型の簡易化等が図れるものとなっている。

(ケ)「図1



(コ)「図2



(4)引用例2に記載された発明
上記(3)の摘記事項を総合すると、引用例2には、次の事項(以下「引用例2記載事項」という。)が記載されている。

「重量と強度とのバランスの観点から、
隣接する二面4・4間の辺部3a、及び、一の面4と、該面4と連続しており該面4を他の面4に接合するための接合部5との境界となる折り曲げ部3bである折り曲げ部3を有する連続して形成される樹脂シート2により構成された電子部品用容器1であって、
樹脂シート2は、各蓋部8および底部10を含み、樹脂に帯電防止剤を練り込み、発泡倍率約3倍の単層発泡シートからなる電子部品用容器1。」

3 本願発明と引用発明の対比・判断
ア 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「帯電防止剤を混入したプラスチック製のプラスチック段ボール」は、プラスチックと帯電防止剤とを混ぜ合わせた材料を成形したものであって、帯電防止性を当然に有するといえる。
したがって、「プラスチック段ボール」が「帯電防止剤を混入したプラスチック製」である態様と、本願発明の「少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により低発泡射出成形され、帯電防止性を有する箱に形成され」る態様とは、「少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により成形され、帯電防止性を有する箱に形成され」る態様の限りで一致する。

(イ)引用発明の「食品関係において使用され、フィルムを巻回して保管する芯材として用いられる紙管を収納して搬送する収納箱」は、「食品関係において使用され」る「フィルム」が包装に用いられること、及び収納箱に芯材が複数本収納されることが明らかである。
したがって、引用発明の当該記載は、本願発明の「包装用フィルムの紙管を複数本収納可能な紙管用の輸送箱」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により成形され、帯電防止性を有する箱に形成されて包装用フィルムの紙管を複数本収納可能な紙管用の輸送箱。」
の点で一致し、以下の点で一応相違する。

<相違点1>
輸送箱の成形手段が、本願発明では、「低発泡射出成形」であるのに対して、引用発明では、成形手段が特定されていない点。
<相違点2>
本願発明は、「平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部と第二の幅板の一側部のいずれかに屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを含んでなる」のに対して、引用発明では、プラスチック段ボールの箱である点。

イ 当審の判断
上記相違点について検討する。
<引用例2記載事項について>
まず、本願発明と引用例2記載事項とを対比する。
(ア)引用例2記載事項の「樹脂に帯電防止剤を練り込み、発泡倍率約3倍の単層発泡シートからなる」態様は、樹脂と帯電防止剤を含有する材料を発泡倍率約3倍発泡し成形するものであるから、引用例2記載事項の「樹脂に帯電防止剤を練り込み、発泡倍率約3倍の単層発泡シートからなる」態様と、本願発明の「少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により低発泡射出成形され」る態様とは、少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により発泡し成形される態様に相当する。

(イ)引用例2記載事項の「電子部品用容器1」は、「帯電防止剤を練り込」んだ樹脂シート2で形成されているから、引用例2記載事項の「電子部品用容器1」と本願発明の「帯電防止性を有する箱に形成されて包装用フィルムの紙管を複数本収納可能な紙管用の輸送箱」とは、帯電防止性を有する箱に形成されて被収納物を収納可能な輸送箱の限りで一致する。

(ウ)引用例2記載事項の「隣接する二面4・4間の辺部3a、及び、一の面4と、該面4と連続しており該面4を他の面4に接合するための接合部5との境界となる折り曲げ部3bである折り曲げ部3を有する連続して形成される樹脂シート2により構成された電子部品用容器1」は、図2を参照するに、図2の左側の面4から順に面4-1?面4-4と表記すると、平面矩形で板状の面4が、面4-1の一側部に辺部3aで屈曲可能に接続される面4-2と、面4-2の一側部に辺部3aで屈曲可能に接続される面4-3と、面4-3の一側部に辺部3aで屈曲可能に接続される面4-4と、面4-1の辺部3aの反対側部に折り曲げ部3bで屈曲可能に接続されて面4-1と面4-4とを接合する接合部5とを有しており、面4-1と面4-3及び面4-2と面4-4とが互いに対向し、引用例2記載事項の「各蓋部8および底部10」は、面4-1?面4-4の両端部にそれぞれ屈曲可能に接続されている。
したがって、引用例2記載事項の「電子部品用容器1」と、本願発明の「平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部と第二の幅板の一側部のいずれかに屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを含んでなる」「紙管用の輸送箱」とは、「平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部と第二の幅板の一側部のいずれかに屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを含んでなる」「輸送箱」の限りで一致する。

したがって、引用例2記載事項を本願発明の文言に置き換えて整理すると、引用例2には以下の事項が記載されているといえる。

「重量と強度とのバランスの観点から、
少なくとも樹脂と帯電防止剤とを含有した成形材料により発泡し成形され、帯電防止性を有する箱に形成されて被収納物を収納可能な輸送箱であって、
平面略矩形の第一の長板と、この第一の長板の一側部に屈曲可能に接続される第一の幅板と、この第一の幅板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の長板に対向可能な第二の長板と、この第二の長板の一側部に屈曲可能に接続されて第一の幅板に対向可能な第二の幅板と、第一の長板の他側部と第二の幅板の一側部のいずれかに屈曲可能に接続されて第一の長板と第二の幅板とを接続する継ぎ代板と、第一、第二の長板と第一、第二の幅板との両端部にそれぞれ屈曲可能に接続される複数枚のフラップ板とを含んでなる輸送箱とする点。」

<相違点1及び2について>
引用例2記載事項は、発泡倍率約3倍であるから、通常「低発泡」といえるものであり、さらに、引用例2の【0038】には、発泡倍率1.5倍とすることも示唆されている。また、【0048】には、発泡シートを射出発泡法で製造することが記載されており、そもそも、「低発泡射出成形」は、周知である。
そうすると、引用発明の収納箱において、重量と強度のバランスをとることは当然の課題であるから、そのために、引用発明と同様に帯電防止性を有する箱である引用例2記載事項を適用するに際して、具体的に周知である低発泡射出成形によるものとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

<本願発明の効果について>
そして、本願発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2記載事項及び周知の事項から、予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

ウ まとめ
したがって、本願発明は、引用発明、引用例2記載事項及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができない。
ゆえに、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-03-31 
結審通知日 2020-04-07 
審決日 2020-04-22 
出願番号 特願2016-147033(P2016-147033)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 矢澤 周一郎  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 佐々木 正章
中村 一雄
発明の名称 紙管用の輸送箱  
代理人 馬場 信幸  
代理人 宮尾 明茂  
代理人 藤本 英介  
代理人 神田 正義  

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