• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
管理番号 1363146
異議申立番号 異議2019-700563  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-07-19 
確定日 2020-04-14 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6457858号発明「醤油含有調味液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6457858号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?3]について訂正することを認める。 特許第6457858号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6457858号の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成27年3月27日に特許出願され、平成30年12月28日に特許権の設定登録がされ、平成31年1月23日にその特許公報が発行され、令和1年7月18日に、その請求項1?3に係る発明の特許に対し、特許異議申立人 ヤマサ醤油株式会社(以下「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年10月 3日付け 取消理由通知
同年12月 9日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年12月26日付け 通知書
令和 2年 2月 5日 意見書(特許異議申立人)

第2 訂正の適否について

1 訂正の内容
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和1年12月9日に訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?3について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。)。 その訂正内容は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
訂正前の請求項1の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液」を、訂正後の請求項1の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液」と訂正する。(審決注:下線は訂正部分を示す。以下同様。)

(2)訂正事項2
訂正前の請求項2の「前記加熱殺菌が、80?130℃で、1?60分間行われたものである請求項1記載の醤油含有調味液」を、訂正後の請求項2の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであり、前記加熱殺菌が、80から130℃で、1?60分間行われたものであることを特徴とする醤油含有調味液」と訂正する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項3の「畜肉エキス及び/又は魚介エキスを更に含有する請求項1又は2に記載の醤油含有調味液」を、訂正後の請求項3の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材と、畜肉エキス及び/又は魚介エキスとを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液」と訂正する。

2 訂正の適否

(1)一群の請求項について
訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1?3について、請求項2及び3は請求項1を直接引用しており、訂正事項によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1?3に対応する訂正後の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正は、一群の請求項ごとにされたものである。

(2)訂正事項1について

ア 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「醤油含有調味液」の食塩濃度が特定されていないものを、「醤油含有調味液」の「食塩濃度が0.5?15質量%であ」ることを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項1の「醤油含有調味液」の「食塩濃度が0.5?15質量%であ」るとする事項については、願書に添付した明細書に、「【0030】・・本発明の醤油含有調味料に含まれる食塩の濃度は、特に限定されないが、0.5?25質量量%が好ましく、0.5?15質量%がより好ましい。」(審決注:下線は当審が付与。以下同様。) と記載されているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものといえ、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項2について

ア 訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、当該請求項1の記載を引用しないものとし、この際、前記(2)アに伴い、訂正前の請求項1を引用することにより請求項2に実質的に記載されていた「醤油含有調味液」の食塩濃度が特定されていないものを、「醤油含有調味液」の「食塩濃度が0.5?15質量%であ」るものに限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当すると共に、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載に基づくものであり、かつ、前記(2)イで述べたことと同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものといえるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 訂正事項2は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載に基づくものであり、かつ、前記(2)ウで述べたことと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項3について

ア 訂正事項3は、訂正前の請求項1又は2の記載を引用する請求項3の記載を、当該請求項2の記載の引用を削除し、当該請求項1の記載のみを引用する請求項3の記載とするよう限定すると共に、当該請求項1の記載を引用する請求項3の記載を、当該請求項1の記載を引用しないものとし、この際、前記(2)アに伴い、訂正前の請求項1を引用することにより請求項3に実質的に記載されていた「醤油含有調味液」の食塩濃度が特定されていないものを、「醤油含有調味液」の「食塩濃度が0.5?15質量%であ」るものに限定するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、特許法第120条の5第2項ただし書き第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものに該当する。

イ 訂正事項3は、請求項2の記載の引用を削除すると共に、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項3の記載に基づくものであり、かつ、前記(2)イで述べたことと同様の理由により、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でなされたものといえるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 訂正事項3は、請求項2の記載の引用を削除すると共に、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項3の記載に基づくものであり、かつ、前記(2)ウで述べたことと同様に、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1及び4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1?3]についての訂正を認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1?3に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明3」といい、まとめて「本件発明」ということがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液。
【請求項2】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであり、前記加熱殺菌が、80から130℃で、1?60分間行われたものであることを特徴とする醤油含有調味液。
【請求項3】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材と、畜肉エキス及び/又は魚介エキスとを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

I 取消理由の概要
訂正前の請求項1?3に係る発明に対して、令和1年10月3日付けで当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。

1 (新規性)本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1号証に示される発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。

2 (新規性)本件特許の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。

3 (サポート要件)本件特許の請求項1?3に係る発明は 、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

甲第1号証:近江牛専門店千成亭の公式ホームページ,「近江牛混ぜ込みご飯の素」[online],2014年04月18日,[2019年9月19日検索],インターネットURL:https://www.sennaritei.co.jp/c/home-use/retortpouch/omg-0001(以下「甲1」という。)
甲第2号証:公益社団法人彦根観光協会の公式ホームページ,「☆2012 彦根夏の陣☆」[online],2012年06月28日,[2019年9月19日検索],インターネットURL:https://smile.hikoneshi.com/2012/entry/698 (以下「甲2」という。)

II 当審の判断

1 取消理由の理由1(特許法第29条第1項第3号)及び理由2(同法同条同項第2号)について

(1)甲号証に示された事項

ア 甲1
甲1a「

」(「千成亭 近江牛専門店」の下)

甲1b「

」(甲1aの「近江牛混ぜ込みご飯の素」の写真の下)

甲1c「 こだわりポイント
近江肉使用 伝統ある近江牛を使った混ぜ込みご飯の素です。風味豊かな味わいをご家庭で是非お楽しみください。
※炊き上がりのご飯に、よく混ぜ込んでからお召し上がりください。」
(甲1bの「商品詳細」欄の右上の「こだわりポイント」欄)

甲1d「レビューを見る(2件)レビューを書く
この商品のレビュー(最新2件)
・・・・・ 」(「レビューを見る(2件)レビューを書く」の欄)

イ 甲2
甲2a「

」(彦根観光協会 ひこねお城大使の写真の下)

甲2b「

」(「近江牛の千成亭さんの「近江牛混ぜ込みご飯の素」と、」の写真)

(2)甲1に示された発明
甲2の甲2aの日付及び甲2bに示されいる事項からみて、甲1に示されている「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、遅くとも2012年(平成24年)には販売されていたと認められる。
甲1は、近江牛専門店千成亭の公式ホームページにおける、商品名「近江牛混ぜ込みご飯の素」のweb通販サイトであるところ、このホームページに示される事項は、本件出願前に公知となっていたと認められる。

ア 甲1には、「近江牛混ぜ込みご飯の素」の商品の写真が示されている(甲1a)。そこには「レトルト食品」(甲1a)と示されていることから、「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、レトルト食品といえる。

イ 甲1には、「商品詳細」欄の右上の「こだわりポイント」欄に、「・・近江牛を使った混ぜ込みご飯の素です。・・※炊き上がりのご飯に、良く混ぜ込んでからお召し上がりください。」(甲1c)(審決注:下線は当審が付与。以下同様。)と示されていることから、「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、ご飯に良く混ぜ込んで用いるものといえる。

ウ 甲1の「商品詳細」欄中に、「原材料」として「牛肉,ごぼう,砂糖,こんにゃく,醤油,食塩,野菜エキス,味醂,粉末醤油,酵母エキス,唐辛子」(甲1b)と示されていることから、「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、原材料として、牛肉、ごぼう、砂糖、こんにゃく、醤油、食塩、野菜エキス、味醂、粉末醤油、酵母エキス、唐辛子とを含有するものといえる。

したがって、甲1には、
「原材料として、牛肉、ごぼう、砂糖、こんにゃく、醤油、食塩、野菜エキス、味醂、粉末醤油、酵母エキス、唐辛子とを含有し、レトルト食品であり、ご飯に良く混ぜ込んで用いるものである、近江牛混ぜ込みご飯の素」
の発明(以下「甲1発明」という。)が示されているといえる。

(3)対比・判断

ア 本件発明1について

(ア)甲1発明との対比

a 甲1発明の「原材料として、牛肉、ごぼう、砂糖、こんにゃく、醤油、食塩、野菜エキス、味醂、粉末醤油、酵母エキス、唐辛子とを含有し」ている「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、醤油を含有している調味液といえ、また、「砂糖」は糖類であり、「牛肉、ごぼう」及び「こんにゃく」は具材といえる。
そうすると、甲1発明の「原材料として、牛肉、ごぼう、砂糖、こんにゃく、醤油、食塩、野菜エキス、味醂、粉末醤油、酵母エキス、唐辛子とを含有し」ている「近江牛混ぜ込みご飯の素」は、本件発明1の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し」ている「醤油含有調味液」に相当する。

b 甲1発明の「レトルト食品であ」るものについて、一般に、レトルト食品は、「レトルトパウチ食品」の略称で、「レトルトパウチ食品品質表示基準」(平成12年12月19日農林水産省告示第1680号)の「(定義)第2条」には、「レトルトパウチ食品」は、「プラスチックフィルム若しくは金属はく又はこれらを多層に合わせたものを袋状その他の形状に成形した容器(気密性及び遮光性を有するものに限る。)に調製した食品を詰め、熱溶融により密封し、加圧加熱殺菌したものをいう。」と定義されている。
そうすると、甲1発明の「レトルト食品であ」るものは、プラスチックフィルム若しくは金属はく又はこれらを多層に合わせたものを袋状等に成形した容器(気密性及び遮光性を有するもの)に調製した食品を詰め、熱溶融により密封し、加圧加熱殺菌したものといえ、これは、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されているものと認められる。
したがって、甲1発明の「レトルト食品であ」るものは、本件発明1の「トルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されて」いるものに相当する。

c 甲1発明の「ご飯に良く混ぜ込んで用いるもの」は、本件発明1の「炊飯米に混ぜて用いるためのもの」に相当する。

そうすると、両者は、
「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものである醤油含有調味液」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲1-1:粉末醤油の含有量が、本件発明1では、0.2?16質量%であるのに対し、甲1発明では、明らかでない点

相違点甲1-2:本件発明1では、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であるのに対し、甲1発明では、そうであるか明らかでない点

相違点甲1-3:食塩濃度が、本件発明1では、0.5?15質量%であるのに対し、甲1発明では、明らかでない点

(イ)判断

a 相違点甲1-1について
甲1発明の調味液に含まれる粉末醤油は、甲1の「商品詳細」欄中に「原材料」として9番目に示されており、JAS法に基づく加工食品品質表示基準により、原材料名は使用した原材料を全て重量順に表示することが原則であるが、甲1発明の調味液において、粉末醤油がどのくらいの割合で含まれているのかは不明であり、0.2?16質量%である具体的な根拠はない。
したがって、甲1発明の調味液における粉末醤油の含有量が、0.2?16質量%の範囲内であるとは認められないから、相違点甲1-1は、実質的な相違点である。

b 令和2年2月5日付け意見書に記載の特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許権者が令和1年12月9日付け意見書の添付書類として提出した、乙第1号証(以下「乙1」という。)について、内容を検討しても、原材料の特性や商品形態等の違いから、甲1発明における粉末醤油の含有量が0.2質量%以下であると推認する根拠や示唆とはなり得ず、また、乙第2号証(以下「乙2」という。)について、実験結果に疑義があり、特許権者の主張にも誤謬がある、それ故、本件発明1は、甲1に示された発明であり、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明である旨、主張する。
しかしながら、乙1に示されている商品は、甲1発明と、原材料の特性や商品形態等が異なるとしても、一般に、原材料として9番目に示されているものが、必ずしも0.2?16質量%の割合で含まれるとは限らないことは、乙1より理解され、また、乙1及び乙2を参酌しない場合でも、前記aで述べたとおりであるから、甲1発明の調味液における粉末醤油の含有量が、0.2?16質量%の範囲内であるとはいえず、相違点甲1-1は実質的な相違点といえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

c したがって、相違点甲1-2及び相違点甲1-3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に示された発明であるとはいえないし、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、前記アで述べたように、本件発明1が、甲1に示された発明であるとはいえないし、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2及び3も、本件発明1と同様の理由により、甲1に示された発明であるとはいえないし、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえない。

(4)まとめ
したがって、本件発明1?3は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に示される発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。また、本件発明1?3は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、特許法第29条第1項第2号にも該当しない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由の理由2(特許法第36条第6項第1号)に対して

令和1年10月3日付け取消理由通知で通知した、サポート要件に関する取消理由の概要は、訂正前の請求項1?3に係る発明の醤油含有調味液の食塩濃度が、本件明細書の実施例1?4で実施され、醤油の香り立ち、だしの風味、混ぜご飯の味のバランスや全体的な味の好ましさが良好であったことが客観的に確認されている濃度以外の場合、本件発明1?3の課題を解決できるとはいえない、というものである。

(1)発明の詳細な説明の記載
発明の詳細な説明には、請求項の内容の実質的な繰り返し記載の他、以下の記載がある。

ア 発明が解決しようとする課題に関する記載
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、混ぜご飯や惣菜に用いる醤油含有調味液は、前述したように、通常の醤油よりも塩分濃度が低く、具材等も含有することから、レトルト処理等に耐えうる耐熱性容器に封入されて、比較的高温の加熱殺菌がなされるので、開封して使用したときの醤油の香り立ちが物足りなくなり、高温加熱殺菌によるレトルト臭やムレ臭などの劣化臭が強くなり、良好な風味が得られないという問題があった。
【0007】
また、前記特許文献1に開示された濃厚調味液や、前記特許文献2に開示された濃厚ペースト醤油は、いずれも濃厚な醤油を含有するものであるため、混ぜご飯や総菜に対し適切な濃さの味付けが困難であると共に、同封した具材への過度な味の染み込みが発生してしまう。さらには口に入れた際に感じられる醤油の香り立ちが強すぎて、他の食材の味を打ち消してしまうため、混ぜご飯や、炒め物や焼き物、煮物等の惣菜に用いるには、適していなかった。また、濃厚な醤油を含有するため、耐熱性容器に封入して高温加熱殺菌する必要がなく、レトルト臭やムレ臭の発生という問題も生じにくいものであった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、耐熱性容器に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を軽減することにある。」

イ 発明の効果に関する記載
「【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、醤油、糖類、食塩の他に、粉末醤油を所定含有量で含有させることにより、耐熱性容器に封入されて加熱殺菌されていても、醤油の香りが高く維持され、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭が少ない醤油含有調味液を提供することができる。」

ウ 醤油、粉末醤油、糖類、食塩及びエキス類の実施の態様に関する記載
「【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の醤油含有調味液は、醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であり、耐熱性容器に封入され、加熱殺菌されていることを特徴とする。
【0017】
ここで、醤油としては、通常の調味料に用いられる醤油類でよく、例えば、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油など、またそれらの処理物などが挙げられる。また、生又は火入れ醤油のいずれも使用できる。ただし、香味の良い醸造醤油を用いることが好ましい。
【0018】
また、粉末醤油としては、上記のような醤油を通常の方法、例えば噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、低温真空乾燥法、凍結乾燥法等により乾燥粉末化して得られたものであればよく、特に限定されない。
【0019】
糖類としては、特に限定されないが、例えば、砂糖、ぶどう糖、果糖、水飴、異性化液糖などの糖類や、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール類が用いられる。また、みりん、酒精含有調味料などの甘味調味料や、サッカリン、ステビオサイド、アスパルテームなどの甘味料などを用いることもできる。
【0020】
また、本発明の醤油含有調味液は、必要により、ダシ汁類、エキス類、各種具材を含有していてもよい。
【0021】
ダシ汁類としては、例えば、鰹節、宗田節、鯖節、鮪節、鰯節などの魚節類の粉砕物や削り節類、あるいは、鰯、鯖、鯵、エビなどを干して乾燥した煮干し類の粉砕物などを、熱水やエタノールなどで抽出して得るダシ汁類が挙げられる。また、コンブ、ワカメなどの海藻類、しいたけなどのキノコ類のダシ汁も挙げられる。
【0022】
エキス類としては、例えば、鰹エキス、鰹節エキス、ホタテエキスなどの魚介類エキスや、鶏、豚、牛などの畜肉類から得られる畜肉エキス、ニンニクや生姜、椎茸などの野菜エキスなどが挙げられる。また、各種の蛋白加水分解物、酵母エキスなどを使用することもできる。
・・・・・
【0027】
本発明の醤油含有調味液は、前記粉末醤油を、0.2?16質量%、好ましくは3?15質量%含有する。粉末醤油の含有量が0.2質量%よりも少ないと、醤油の香り立ちを充分に高めることができず、16質量%を超えると、こげ臭が強くなるので好ましくない。
【0028】
また、本発明の醤油含有調味液は、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であることが好ましく、16?80質量%であることがより好ましい。粉末醤油由来の窒素含有量が、1質量%未満では、醤油の香り立ちが不十分となる傾向があり、85質量%を超えると、こげ臭が強くなる傾向がある。
【0029】
更に、本発明の醤油含有調味液に含まれる糖類の濃度は、特に限定されないが、0.5?60質量%が好ましく、0.5?40質量%がより好ましい。糖類の濃度が上記範囲であれば、混ぜご飯用の調味液や、各種惣菜用の調味液として、適度な味付けをすることができる。なお、糖類の種類および濃度は、それぞれの甘味度に応じて適宜調整することが好ましい。
【0030】
更に、本発明の醤油含有調味液に含まれる食塩の濃度は、特に限定されないが、0.5?25質量%が好ましく、0.5?15質量%がより好ましい。食塩の濃度が上記範囲であれば、混ぜご飯用の調味液や、各種惣菜用の調味液として、適度な味付けをすることができる。」

エ 実施例に関する記載
「【実施例】
・・・・・
【0039】
<試験例1>
(醤油含有調味液の製造)
下記表1に示す配合で、醤油含有調味液を製造した。
【0040】
すなわち、1Lのステンレス製のビーカーを用いて、噴霧乾燥式の方法により製造された粉末醤油(キッコーマン食品社製)を配合又は配合しないで、濃口醤油(キッコーマン食品社製)、かつおエキス(商品名「Kエキス」、キッコーマン食品社製)、昆布エキス(真昆布エキス:キッコーマン食品社製)及び市販の砂糖と食塩を混合し、水の量を適宜調整して加えた。
【0041】
次いで、撹拌しながらガスコンロで湯煎にて加温した。90℃に達温後、50℃まで冷却してから80ml容量のレトルトパウチ袋(ONY/PET/AL/CPP、大成ラミック社製)に30g充填した。更に、レトルトパウチ袋をヒートシールで密封後、100℃、10分間加熱滅菌し、比較例及び実施例の調味液を製造した。
【0042】
なお、全窒素の測定は、ケルダール法を用いて行い、濃口醤油の全窒素は、1.47w/w%、粉末醤油の全窒素は3.1w/w%であった。
【0043】
【表1】

【0044】
(混ぜご飯の調製)
うるち精白米1合を研いで水を切り、所定量加水し電気炊飯器で炊飯して炊飯米を得た。比較例及び実施例の醤油含有調味液30gを、炊飯米340gに加え、しゃもじでよく混ぜ込んで、混ぜご飯を調製した。
【0045】
(官能評価)
醤油含有調味液の官能評価は、レトルトパウチを開封後、調味液1mlをスプーンで口中にとり、口に入れた直後の醤油の香り立ちを、比較例1の評価を3として、下記表2の通り5段階で評価した。
【0046】
また、醤油含有調味液で味付けした混ぜご飯について、官能評価を行った。評価項目は、口に入れた直後の醤油の香り立ち、だしの風味、味のバランス、全体的な味の好ましさの4項目について、比較例1の醤油含有調味液を用いて調製した混ぜご飯と同等の場合を評価点3とし、表2に示す評価基準に従って5段階の評価を行った。
【0047】
上記官能評価の結果を下記表3に示す。表3には、5段階評価の結果として、平均点を記載した。
【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
表3に示されるように、粉末醤油の配合量を、0.2?16質量%とした実施例1?4においては、口に入れた直後の醤油の香り立ちが良好で、だしの風味、混ぜご飯の味のバランス、混ぜご飯の全体的な味の好ましさも良好であり、総合評価も良好であった。
【0051】
これに対して、粉末醤油の配合量が、0質量%の比較例1、0.1質量%の比較例3では、口に入れた直後の醤油の香り立ちが悪く、総合評価も悪かった。
【0052】
また、粉末醤油の配合量が、17質量%の比較例4、100質量%の比較例2では、口に入れた直後の醤油の香り立ちは良好であるが、混ぜご飯の味のバランスや、混ぜご飯の全体的な味の好ましさが悪く、総合評価も悪かった。」

(2)本件発明1?3の課題について
発明の詳細な説明の、発明が解決しようとする課題の記載(【0006】?【0008】)及び実施例の記載(【0038】?【0057】)を総合考慮すると、本件発明1?3の解決しようとする課題は、耐熱性容器に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を軽減するものを提供することであると認められる。

(3)特許請求の範囲の記載
前記第3に記載したとおりである。

(4)判断

ア 本件訂正により、訂正前の請求項1?3には特定されていなかった、醤油含有調味液の「食塩濃度」が、発明の詳細な説明の段落【0030】に記載されている、「0.5?15質量%」と特定された。

イ 発明の詳細な説明には、本件発明1?3の実施例として実施例1?4(【0039】?【0052】)に、耐熱性容器(袋)に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、粉末醤油の含有量が0.2?16.0質量%、醤油由来の全窒素含有量に対する粉末醤油の窒素含有量の割合が1.1?84.4質量%、醤油含有調味液の食塩濃度が、訂正により特定された「0.5?15質量%」の範囲内である10.3質量%及び魚介エキスを含有する場合に、口に入れた直後の醤油の香り立ちが良好で、だしの風味、混ぜご飯の味のバランス、混ぜご飯の全体的な味の好ましさが良好であることが示されている。
さらに、発明の詳細な説明には、一般的な実施の態様の記載として、「【0030】・・本発明の醤油含有調味液に含まれる食塩の濃度は・・・0.5?15質量%がより好ましい。食塩の濃度が上記範囲であれば、混ぜご飯用の調味液や、各種惣菜用の調味液として、適度な味付けをすることができる。」、「【0027】・・本発明の醤油含有調味液は、前記粉末醤油を、0.2?16質量%・・含有する。」、及び、「【0028】・・本発明の醤油含有調味液は、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であることが好ましく・・」と記載されている。個人の好みは様々であること等を考慮すれば、食塩の濃度、粉末醤油の含有量、並びに、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたときの粉末醤油由来の窒素含有量を、これらの範囲内で適宜調整すれば、実施例ので示された結果と同様に、耐熱性容器(袋)に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、口に入れた直後の醤油の香り立ちが良好で、だしの風味、混ぜご飯の味のバランス、混ぜご飯の全体的な味の好ましさが良好であると理解できる。

そうすると、本件明細書の記載より、当業者であれば、耐熱性容器(袋)に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、粉末醤油の含有量が0.2?16.0質量%、醤油由来の全窒素含有量に対する粉末醤油の窒素含有量の割合が1?85質量%、及び、醤油含有調味液の食塩濃度が0.5?15質量%の範囲内であれば、口に入れた直後の醤油の香り立ちが良好で、だしの風味、混ぜご飯の味のバランス、混ぜご飯の全体的な味の好ましさが良好であると理解でき、その結果、耐熱性容器に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を軽減するものを提供し得ると理解でき、本件発明1?3の前記課題を解決できると認識するといえる。

ウ したがって、本件発明1?3は、発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。

エ 令和2年2月5日付け意見書に記載の特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、当該意見書の「(3-4)特許法第36条第6項について」において、(ア)訂正により、本件発明1?3は「食塩濃度が0.5?15質量%である」との限定がなされたが、食塩濃度の下限値付近でも課題が解決され得るかについて、本件明細書等には記載がなく、理解できず、また、境界値付近においても臨界的な効果が奏されるかについても、本件明細書には記載がなく、理解することができないから、サポート要件を満たしていないこと、及び、(イ)本件発明3に記載の「畜肉エキス及び/又は魚介エキス」について、令和1年12月9日付け意見書で特許権者が「具材から抽出されたエキスを含有するものとは明確に区別される」と主張したことについて、そのようなことは本件明細書に記載されておらず、当該主張を認められない、それ故、本件発明1?3は、サポート要件を満たしていない旨、主張する。
しかしながら、上記(ア)について、下限値付近についても課題が解決し得ることについては、前記イで述べたとおりであり、臨界的な効果が奏されるかについては、サポート要件とは関係がない。
上記(イ)について、本件明細書の記載(【0022】)より、本件発明3に記載の「畜肉エキス及び/又は魚介エキス」が、具材とは別の原料としてのエキスのみならず、具材から抽出されるエキスを含有するものであるとしても、前記イで述べたとおり、本件明細書の実施例1?4(【0039】?【0052】)には、魚介エキスを含有した醤油含有調味液は課題を解決し得ることが示されている以上、いずれの場合でも、本件発明3の前記課題を解決できると認識するといえる。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(5)まとめ
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1?3が記載されているといえ、特許法第36条第6項第1号に適合しないということはできない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立人が主張する取消理由について

I 特許異議申立人が主張する取消理由の概要
取消理油通知で採用しなかった特許異議申立人が主張する取消理由の概要は、以下のとおりである。

1 (新規性)訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。

2 (新規性)訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であって、特許法第29条第1項第2号に掲げる発明に該当するから、本件特許の請求項1?3に係る発明は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。

3 (容易想到性)訂正前の請求項1?3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、訂正前の請求項1?3に係る特許は、同法第29条の規定に違反してなされたものである。

4 (サポート要件)本件特許の請求項1?3に係る発明は 、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。

甲第1号証:前記第4 I 1で示したとおりである。
甲第3号証:痛快!買い物ランド ショップ島の公式ホームページ,「吉野家 トリプルセット(牛丼、豚丼、親子丼、各10食、合計30食)」[online],2015年2月24日,[2019年9月19日検索],インターネットURL:http://web.archive.org/web/20150224153010/http:/www.shopjima.com/shopdetail/000000000009/ (以下「甲3」という。)
甲第4号証:cookpadの公式ホームページ,「牛丼をもっと美味しく簡単に☆雑穀米で☆」[online],2009年06月19日,[2019年9月19日検索],インターネットURL:https://cookpad.com/recipe/842475 (以下「甲4」という。)
甲第5号証:cookpadの公式ホームページ,「吉野家の牛丼を完全舌コピー」[online],2014年7月1日,[2019年9月19日検索],インターネットURL: https://web.archive.org/web/20140701134901/https://cookpad.com/recipe/655561(以下「甲5」という。)
甲第6号証:Amazonの公式ホームページ,「エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」[online], Amazon.co.jpでの取り扱い開始日 2011年10月4日,[2019年9月19日検索],インターネットURL:https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A8%E3%83%90%E3%83%A9-%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%83%BC%E3%83%97%E9%8D%8B-%E3%81%A8%E3%82%93%E3%81%93%E3%81%A4%E3%81%97%E3%82%87%E3%81%86%E3%82%86%E5%91%B3-750g/dp/B005S9V5FW (以下「甲6」という。)
甲第7号証:NICHIGO PRESSの公式ホームページ,「NICHIGO PRESS 6 JUNE2014」[online],2014年6月6日,[2019年9月19日検索],インターネットURL: https://nichigopress.jp/images/site/pdf/qld1406.pdf (以下「甲7」という。)

II 当審の判断

1 取消理由1(特許法第29条第1項第3号)及び取消理由2(同法同条同項第2号)、並びに、取消理由3(同法同条第2項)について

(1)甲3?7に示された事項

ア 甲3
甲3a「

」(「痛快!買い物ランド ショップ島」の標題及びその上)

甲3b「

」(「痛快!買い物ランド ショップ島」の標題の下)

甲3c「

」(「クリックしたAdobe Flash Playerを有効にします」の画面下)

甲3d「

」(「お客様の声」(レビュー)欄の下)

イ 甲4
甲4a「

」(「毎日の料理を楽しみにする cookpad」の標題の下)

甲4b「

」(「このレシピの生い立ち」欄の下)

ウ 甲5
甲5a「

」(「毎日の料理を楽しみに176万レシピ COOKPAD」の標題の上)

甲5b「

」(「毎日の料理を楽しみに176万レシピ COOKPAD」の標題の下)

エ 甲6
甲6a「

」(「商品の情報」欄中の「詳細情報」欄の隣)

甲6b「

」(「重要なお知らせ」欄の下)

オ 甲7
甲7a「

」(「NICHIGO PRESS」の標題)

甲7b「

」(最終欄)

(2)甲1、3及び6号証に示された発明

ア 甲1に示された発明
前記第4 II 1 (2)に示したとおりである。

イ 甲3に示された発明
甲3は、ショップ島の公式ホームページにおける、商品名「吉野家 トリプルセット(牛丼、豚丼、親子丼、各10食、合計30食)」のweb通販サイトである。

(ア)甲3bには、「吉野家 トリプルセット(牛丼、豚丼、親子丼、各10食、合計30食)」の商品の写真が示され、その「商品内容」として、「冷凍牛丼の具 ×10」と示されている(甲3b)ことから、「吉野家 冷凍牛丼の具」10食が示されているといえる。

(イ)甲3dの「吉野家 冷凍牛丼の具」欄中には、「原材料名」として、「牛肉・玉ねぎ・タレ(砂糖・醤油・粉末醤油・ワイン・食塩・ソースミックス・生姜・オニオンエキス・にんにく・ホワイトペッパー)・酒精・調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・酸味料、(原材料の一部に小麦・牛肉・大豆・りんごを含む)」と示されている。
そうすると、「吉野家 冷凍牛丼の具」は、原材料として、「牛肉・玉ねぎ・タレ(砂糖・醤油・粉末醤油・ワイン・食塩・ソースミックス・生姜・オニオンエキス・にんにく・ホワイトペッパー)・酒精・調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・酸味料、(原材料の一部に小麦・牛肉・大豆・りんごを含む)」を含有するものといえる。

(ウ)甲3dの「吉野家 冷凍牛丼の具」欄中には、さらに、「内容量」「135グラム (一袋あたり)」及び「召し上がり方」「<湯煎調理する場合>●・・・冷凍のまま封は切らずに、袋のまま熱湯の中に入れて・・」と示されていることから、「吉野家 冷凍牛丼の具」は、袋に封入されているものといえる。

(エ)甲3cの「吉野家 牛丼」の写真の下には、「食べ方はとっても簡単!熱湯で5分ほどあたためて、アツアツのご飯にかけるだけ!」と示されていることから、「吉野家 冷凍牛丼の具」は、ご飯にかけて用いるものであるといえる。

したがって、甲3には、
「原材料として、牛肉・玉ねぎ・タレ(砂糖・醤油・粉末醤油・ワイン・食塩・ソースミックス・生姜・オニオンエキス・にんにく・ホワイトペッパー)・酒精・調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・酸味料、(原材料の一部に小麦・牛肉・大豆・りんごを含む)とを含有する、袋に封入されている、ご飯にかけて用いるものである、吉野家 冷凍牛丼の具」
の発明(以下「甲3発明」という。)が示されているといえる。

ウ 甲6に示された発明
甲6は、Amazonの公式ホームページにおける、商品名「エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」のweb通販サイトである。

(ア)甲6bの「商品の説明欄」には、「エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」の商品の写真が示されており、袋に封入されているものであることが分かる。

(イ)甲6bの「商品の説明欄」には、「品名:鍋の素(ストレートタイプ)」と示され、さらに「とんこつの旨味をベースに醤油を加えたスープに、にんにくとネギ油の旨味と香りを効かせました。」と示されていることから、「エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」は、鍋用のストレートタイプのスープといえる。

(ウ)甲6bの「商品の説明欄」には、さらに、「原材料名」として、「ポークエキス、醤油、食塩、砂糖、にんにく、チキンエキス、オニオンエキス、ガーリックソテー、香味油、粉末醤油、オニオンソテー、胡椒、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、香料、カラメル色素、増粘剤(キサンタンガム)(原材料の一部に小麦、乳、大豆を含む)」と示されている。
そうすると、「エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」は、原材料として、「ポークエキス、醤油、食塩、砂糖、にんにく、チキンエキス、オニオンエキス、ガーリックソテー、香味油、粉末醤油、オニオンソテー、胡椒、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、香料、カラメル色素、増粘剤(キサンタンガム)(原材料の一部に小麦、乳、大豆を含む)」を含有するものといえる。

したがって、甲6には、
「原材料として、ポークエキス、醤油、食塩、砂糖、にんにく、チキンエキス、オニオンエキス、ガーリックソテー、香味油、粉末醤油、オニオンソテー、胡椒、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、香料、カラメル色素、増粘剤(キサンタンガム)(原材料の一部に小麦、乳、大豆を含む)とを含有する、袋に封入されている、鍋用のストレートタイプのスープである、エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」
の発明(以下「甲6発明」という。)が示されているといえる。

(3)甲1を主引用例とする場合 (容易想到性について)

ア 本件発明1について

(ア) 甲1発明との対比
前記第4 II 1 (3)ア(ア)に示したとおりである。

(イ)判断

a 相違点甲1-1について
相違点甲1-1が実質的な相違点であることは、前記第4 II 1(3)ア(イ)に示したとおりである。
そこで、検討すると、甲1発明の調味液において、粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であることについて、甲1に明示も示唆もないことは、前記第4 II 1(3)ア(イ)に示したとおりであり、また、甲3?7に示される事項及び本件出願当時の技術常識を参酌しても、一般に、原材料名が9番目に示されている原材料の含有量(質量%)が、加工食品中0.2?16質量%である蓋然性が高いといえる具体的な根拠があるとも認められない以上、甲1発明の調味液において、粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であるとすることは、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえない。

b 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、本件明細書の段落【0015】の記載及び実施例1?4(【0039】?【0052】)の実験結果により裏付けられているように、耐熱性容器に封入されて加熱殺菌されていても、醤油の香りが高く維持され、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭が少ない醤油含有調味液を提供できることであると認められ、そのような効果は、甲1及び3?7に示された事項並びに本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者が予測し得たものとはいえない。

c したがって、相違点甲1-2及び相違点甲1-3を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に示された発明、甲3?7に示された技術的事項及び本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、前記アで述べたように、本件発明1が、甲1に示された発明、甲3?7に示された技術的事項及び本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2及び3も、本件発明1と同様の理由により、甲1に示された発明、甲3?7に示された技術的事項及び本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(4)甲3を主引用例とする場合 (新規性及び容易想到性について)

ア 本件発明1について

(ア) 甲3発明との対比

a 甲3発明の「原材料として、牛肉・玉ねぎ・タレ(砂糖・醤油・粉末醤油・ワイン・食塩・ソースミックス・生姜・オニオンエキス・にんにく・ホワイトペッパー)・酒精・調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・酸味料、(原材料の一部に小麦・牛肉・大豆・りんごを含む)とを含有する」「吉野家 冷凍牛丼の具」は、醤油を含有している調味液といえ、また、「砂糖」は糖類であり、「牛肉・玉ねぎ」は具材といえる。
そうすると、甲3発明の「原材料として、牛肉・玉ねぎ・タレ(砂糖・醤油・粉末醤油・ワイン・食塩・ソースミックス・生姜・オニオンエキス・にんにく・ホワイトペッパー)・酒精・調味料(アミノ酸等)・カラメル色素・酸味料、(原材料の一部に小麦・牛肉・大豆・りんごを含む)とを含有する」「吉野家 冷凍牛丼の具」は、本件発明1の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し」ている「醤油含有調味液」に相当する。

b 甲3発明の「袋に封入されている」ものと、本件発明1の「トルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され」ているものとは、袋に封入されているものである点で共通する。

c 甲3発明の「ご飯にかけて用いるもの」と、本件発明1の「炊飯米に混ぜて用いるためのもの」とは、炊飯米に用いるためのものである点で共通する。

そうすると、両者は、
「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、袋に封入され、炊飯米に用いるためのものである醤油含有調味液」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲3-1:粉末醤油の含有量が、本件発明1では、0.2?16質量%であるのに対し、甲3発明では、明らかでない点

相違点甲3-2:本件発明1では、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であるのに対し、甲3発明では、そうであるか明らかでない点

相違点甲3-3:食塩濃度が、本件発明1では、0.5?15質量%であるのに対し、甲3発明では、明らかでない点

相違点甲3-4:袋が、本件発明1では、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋であるのに対し、甲3発明では、明らかでない点

相違点甲3-5:本件発明1は、加熱殺菌処理されているのに対し、甲3発明では、明らかでない点

相違点甲3-6:炊飯米に用いる用法が、本件発明1は、炊飯米に混ぜて用いるものであるのに対し、甲3発明では、炊飯米にかけて用いるものである点

(イ)判断

a 新規性について
相違点甲3-1は、相違点甲1-1と同じであり、前記第4 II 1 (3) ア (イ)で述べたとおりであるから、相違点甲3-1は、実質的な相違点である。
したがって、相違点甲3-2?相違点甲3-6を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に示された発明であるとはいえないし、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえない。

b 容易想到性について
相違点甲3-1は、相違点甲1-1と同じであり、前記(3) ア(イ)で述べたとおりであるから、甲3発明において、粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であるとすることについては、甲3に明示も示唆もなく、甲1及び4?7に示される事項並びに本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえず、また、効果についても、当業者が予測し得たものともいえない。

c 小括
したがって、相違点甲3-2?相違点甲3-6を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲3に示された発明、甲1及び4?7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、前記アで述べたように、本件発明1は、甲3に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲3に示された発明、甲1及び4?7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2及び3も、本件発明1と同様の理由により、甲3に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲3に示された発明、甲1及び4?7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(5)甲6を主引用例とする場合 (新規性及び容易想到性について)

ア 本件発明1について

(ア) 甲6発明との対比

a 甲6発明の「原材料として、ポークエキス、醤油、食塩、砂糖、にんにく、チキンエキス、オニオンエキス、ガーリックソテー、香味油、粉末醤油、オニオンソテー、胡椒、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、香料、カラメル色素、増粘剤(キサンタンガム)(原材料の一部に小麦、乳、大豆を含む)とを含有する」「鍋用のストレートタイプのスープである、エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」は、醤油を含有している調味液といえ、また、「砂糖」は糖類であり、「にんにく」は具材といえる。
そうすると、甲6発明の「原材料として、ポークエキス、醤油、食塩、砂糖、にんにく、チキンエキス、オニオンエキス、ガーリックソテー、香味油、粉末醤油、オニオンソテー、胡椒、酵母エキス、調味料(アミノ酸等)、香料、カラメル色素、増粘剤(キサンタンガム)(原材料の一部に小麦、乳、大豆を含む)とを含有する」「鍋用のストレートタイプのスープである、エバラ ラーメンスープ鍋の素 とんこつしょうゆ味」は、本件発明1の「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し」ている「醤油含有調味液」に相当する。

b 甲6発明の「袋に封入されている」ものと、本件発明1の「トルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され」ているものとは、袋に封入されているものである点で共通する。

そうすると、両者は、
「醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、袋に封入された、醤油含有調味液」である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点甲6-1:粉末醤油の含有量が、本件発明1では、0.2?16質量%であるのに対し、甲6発明では、明らかでない点

相違点甲6-2:本件発明1では、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であるのに対し、甲6発明では、そうであるか明らかでない点

相違点甲6-3:食塩濃度が、本件発明1では、0.5?15質量%であるのに対し、甲6発明では、明らかでない点

相違点甲6-4:袋が、本件発明1では、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋であるのに対し、甲6発明では、明らかでない点

相違点甲6-5:本件発明1は、加熱殺菌処理されているのに対し、甲6発明は、明らかでない点

相違点甲6-6:本件発明1は、炊飯米に混ぜて用いるものであるのに対し、甲6発明では、鍋用のストレートタイプのスープである点

(イ)判断

a 新規性について
相違点甲6-1は、相違点甲1-1と同じであり、前記第4 II 1(3) ア (イ)で述べたとおりであるから、相違点甲6-1は、実質的な相違点である。
したがって、相違点甲6-2?相違点甲6-6を検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に示された発明であるとはいえないし、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえない。

b 容易想到性について
相違点甲6-1は、相違点甲1-1と同じであり、前記(3) ア(イ)で述べたとおりであるから、甲6発明において、粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であるとすることについては、甲6に明示も示唆もなく、甲1、3?5及び7に示される事項並びに本件出願当時の技術常識を参酌しても、当業者といえども、容易に想到し得たとはいえず、また、効果についても、当業者が予測し得たものともいえない。

c 小括
したがって、相違点甲6-2?相違点甲6-6を検討するまでもなく、本件発明1は、甲6に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲6に示された発明、甲1、3?5及び7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

イ 本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1においてさらに技術的に限定した発明である。
そうすると、前記アで述べたように、本件発明1は、甲6に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲6に示された発明、甲1、3?5及び7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない以上、さらに特定事項を含んだ本件発明2及び3も、本件発明1と同様の理由により、甲6に示された発明であるとも、また、本件出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、さらに、甲6に示された発明、甲1、3?5及び7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。

(6)まとめ
したがって、本件発明1?3は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3及び6に示される発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当しない。また、本件発明1?3は、その出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明であるともいえず、特許法第29条第1項第2号にも該当しない。
さらに、甲1、3及び6に示された発明、甲4、5及び7に示された技術的事項並びに本件出願当時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してなされたものではないから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものではない。

2 取消理由4(特許法第36条第6項第1号)について

(1)特許異議申立人が申し立てた取消理由4(特許法第36条第6項第1号)の概要は、以下のア及びイである。

ア 粉末醤油の種類について、製造過程において高温を経る/経ないによって粉末醤油の香気は大きく異なることは技術常識であるところ、 本件明細書中の実施例には、高温を経る方法による粉末醤油の使用例しか記載がない。そのため、低温真空乾燥法、凍結乾燥法によって得られる粉末醤油を用いた場合にいかなる効果が奏されるか(課題が解決可能か)理解することができない。したがって、訂正前の請求項1?3に係る発明は、課題が解決可能か否か不明な部分を包含しているから、サポート要件を満たさない。

イ 粉末醤油の含有量について、 調味料における醤油の香り立ちに関しては、醤油と粉末醤油双方の含有量によって決まることは、技術常識である。本件明細書には、粉末醤油の含有量が0.2質量%である実施例1では、醤油が39.5%含有されており、この際、醤油の含有量を0.07質量%とした場合であっても、実施例1と同程度に醤油の香り立ちが発揮されるとは到底理解できず、その場合に醤油の香りが高く維持されるという課題が解決可能であるか認識することはできない。したがって、訂正前の請求項1?3に係る発明は、課題が解決可能か否か不明な部分を包含しているから、サポート要件を満たさない。

(2)上記アについて
発明の詳細な説明に、本件発明1?3の具体例である、実施例1?4(【0039】?【0052】)では、耐熱性容器(袋)に封入され、加熱殺菌された醤油含有調味液において、噴霧乾燥式の方法(高温を経る方法)により製造された粉末醤油の含有量が0.2?16.0質量%、醤油由来の全窒素含有量に対する粉末醤油の窒素含有量の割合が1.1?84.4質量%、醤油含有調味液の食塩濃度が、10.3質量%及び醤油6.25?39.5質量%の場合に、口に入れた直後の醤油の香り立ちが良好で、だしの風味、混ぜご飯の味のバランス、混ぜご飯の全体的な味の好ましさが良好であることが示されており、これらの結果から、実施例1?4で実施されたものは、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を軽減するものであることが、客観的に確認されているといえる。
本件明細書の実施例に、粉末醤油の種類として、高温を経ない方法で製造された粉末醤油を用いた具体例が記載されていないとしても、粉末醤油の種類に関する実施の態様の記載(「【0017】・・醤油としては、通常の調味料に用いられる醤油類でよく・・。ただし、香味の良い醸造醤油を用いることが好ましい。【0018】また、粉末醤油としては、上記のような醤油を通常の方法、例えば噴霧乾燥法、ドラム乾燥法、低温真空乾燥法、凍結乾燥法等により乾燥粉末化して得られたものであればよく、特に限定されない。」)を知見した当業者であれば、高温を経る方法で製造されたもののみならず、高温を経ない方法で製造された粉末醤油を用いる場合においても、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を程度に差があるかもしれないが、軽減することを理解できるといえ、本件発明1?3の課題を解決し得ると認識できるといえる。

(3)上記イについて
発明の詳細な説明に、本件発明1?3の具体例である、実施例1?4(【0039】?【0052】)に示されている事項については、前記(1)で述べたとおりである。
実施例1?4において、醤油の含有量が6.25?39.5質量%と幅広く実施され、それに対応して粉末醤油の含有量や醤油由来の全窒素含有量に対する粉末醤油の窒素含有量の割合も、表1(【0043】)に明示されており、これらの事項を参考に、本件明細書に記載されている、「醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であること」についての実施の態様の記載(「【0028】・・本発明の醤油含有調味液は、醤油及び粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であることが好ましく・・。粉末醤油由来の窒素含有量が、1質量%未満では、醤油の香り立ちが不十分となる傾向があり、85質量%を超えると、こげ臭が強くなる傾向がある。」)を踏まえ、醤油及び粉末醤油の両含有量を適宜調整して、醤油の香り立ちを良好にし、レトルト臭やムレ臭などの劣化臭を軽減し得る醤油含有調味液を提供し得ると、当業者は理解でき、本件発明1?3の課題を解決し得ると認識できるといえる。

(4)まとめ
したがって、発明の詳細な説明には、本件発明1?3が記載されているといえ、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないということはできない。
よって、本件発明1?3に係る特許は、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものではない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?3に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立ての理由並びに証拠によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液。
【請求項2】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材とを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであり、前記加熱殺菌が、80?130℃で、1?60分間行われたものであることを特徴とする醤油含有調味液。
【請求項3】
醤油と、粉末醤油と、糖類と、食塩と、具材と、畜肉エキス及び/又は魚介エキスとを含有し、前記粉末醤油の含有量が0.2?16質量%であって、かつ、前記醤油及び前記粉末醤油由来の合計窒素含有量を100質量%としたとき、前記粉末醤油由来の窒素含有量が1?85質量%であり、食塩濃度が0.5?15質量%であり、レトルト処理可能な耐熱性パウチ袋に封入され、加熱殺菌されており、炊飯米に混ぜて用いるためのものであることを特徴とする醤油含有調味液。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-31 
出願番号 特願2015-65592(P2015-65592)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (A23L)
P 1 651・ 112- YAA (A23L)
P 1 651・ 121- YAA (A23L)
P 1 651・ 113- YAA (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 北田 祐介金田 康平  
特許庁審判長 中島 庸子
特許庁審判官 中島 芳人
齊藤 真由美
登録日 2018-12-28 
登録番号 特許第6457858号(P6457858)
権利者 キッコーマン株式会社
発明の名称 醤油含有調味液  
代理人 宮尾 武孝  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
代理人 松井 茂  
代理人 宮尾 武孝  
代理人 松井 茂  
代理人 特許業務法人創成国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ