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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F24F
管理番号 1363150
異議申立番号 異議2019-700358  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-26 
確定日 2020-04-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6417073号発明「空気調和機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6417073号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし11〕について訂正することを認める。 特許第6417073号の請求項1、2及び4ないし11に係る特許を取り消す。 特許第6417073号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6417073号の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、平成29年4月28日に出願された特願2017-89948号の一部を平成30年9月3日に新たな特許出願としたものであって、平成30年10月12日にその特許権の設定登録がされ、平成30年10月31日に特許掲載公報が発行された。
本件異議申立ての経緯は、次のとおりである。
平成31年4月26日:特許異議申立人 安川 千里(以下、「異議申立人」という。)による請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和1年6月26日付け:取消理由通知書
令和1年8月26日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和1年9月19日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和1年10月23日:異議申立人による意見書の提出
令和1年11月12日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和2年1月8日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和2年1月9日付け:訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)
令和2年2月14日:異議申立人による意見書の提出
なお、令和2年1月8日に訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、令和1年8月26日の訂正請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の請求
1 訂正の内容
令和2年1月8日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次の事項からなる(なお、下線を付した箇所は訂正箇所である。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、
前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、
前記フィンは表面に親水性処理が施されており、
前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、
前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、
前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われている
ことを特徴とする空気調和機。」とあるのを、

「空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、
前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、
隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり、
前記フィンは表面に親水性処理が施されており、
前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、
前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、
前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われ、
前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる
ことを特徴とする空気調和機。」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に、
「請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1又は請求項2に記載の」と訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の」とあるのを、
「請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項3又は請求項9に記載の」とあるのを、
「請求項9に記載の」と訂正する。

(6)訂正事項6
特許明細書の段落【0010】に、
「前記目的を達成するため、本発明は、空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、前記フィンは表面に親水性処理が施されており、前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われていることを特徴とする空気調和機とする。
その他の手段は、後記する。」とあるのを、

「前記目的を達成するため、本発明は、空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり、前記フィンは表面に親水性処理が施されており、前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われ、前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させることを特徴とする空気調和機とする。
その他の手段は、後記する。」と訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の「複数のフィン」に対して「隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であ」ること、及び訂正前の「凍結動作」に対して「前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる」ことを限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、本願特許明細書の段落【0044】の記載「なお、空気調和機1は、フィン間隔L20(図5(b)参照)を所望の間隔(例えば、5mm以下、より好ましくは1.5mm以下)に設定するとよい。これにより、空気調和機1は、凍結運転時に、熱交換器16のフィン20とフィン20との間で水を橋渡しさせた状態で凍結させることができるため、凍結させた水を落下させ難くすることができる。その結果、空気調和機1は、凍結洗浄時に霜(氷)の付着量を増加させること(つまり、流れ出る水の量を増加させること)ができる。」に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1は、上記アのように訂正前の請求項1における記載をさらに限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項3を削除するのみであって、訂正前の請求項3の記載についてカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(3)訂正事項3
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の特許請求の範囲の請求項4に「請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1又は請求項2に記載の」と訂正することにより、訂正前の特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項から請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項から請求項3を削除したものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項4が引用する請求項から請求項3を削除するのみであって、訂正前の請求項4の記載についてカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(4)訂正事項4
ア 訂正の目的について
訂正事項4は、訂正前の特許請求の範囲の請求項9に「請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の」とあるのを、「請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の」と訂正することにより、訂正前の特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項から請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項から請求項3を削除したものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項9が引用する請求項から請求項3を削除するのみであって、訂正前の請求項9の記載についてカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(5)訂正事項5
ア 訂正事項5は、訂正前の特許請求の範囲の請求項11に「請求項3又は請求項9に記載の」とあるのを、「請求項9に記載の」と訂正することにより、訂正前の特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項から請求項3を削除するものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項から請求項3を削除したものであるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項11が引用する請求項から請求項3を削除するのみであって、訂正前の請求項11の記載についてカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

(6)訂正事項6
ア 訂正の目的について
訂正事項6は、上記訂正事項1に係る訂正に伴い特許請求の範囲の請求項1の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項6は、本願特許明細書の段落【0044】の記載「なお、空気調和機1は、フィン間隔L20(図5(b)参照)を所望の間隔(例えば、5mm以下、より好ましくは1.5mm以下)に設定するとよい。これにより、空気調和機1は、凍結運転時に、熱交換器16のフィン20とフィン20との間で水を橋渡しさせた状態で凍結させることができるため、凍結させた水を落下させ難くすることができる。その結果、空気調和機1は、凍結洗浄時に霜(氷)の付着量を増加させること(つまり、流れ出る水の量を増加させること)ができる。」に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。

ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項6は、「複数のフィン」に対して「隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であ」ること、及び「凍結動作」に対して「前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる」ことを限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1ないし11〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要
先の訂正後の請求項1ないし11に係る特許に対して、当審が令和1年11月12日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。

[理由]本件特許の請求項1、2及び4ないし11に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の甲第1ないし9号証及び参考資料1ないし4に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



<甲号証及び参考資料一覧>
甲第1号証:特開2010-14288号公報
甲第2号証:特開2013-100933号公報
甲第3号証:特開2009-250510号公報
甲第4号証:特開2009-144949号公報
甲第5号証:特開平6-331292号公報
甲第6号証:特開2010-249374号公報
甲第7号証:特開2002-71289号公報
甲第8号証:特開2011-43251号公報
甲第9号証:国際公開第2009/130764号
参考資料1:特開平11-183076号公報
参考資料2:特開2008-202907号公報
参考資料3:特開2015-143608号公報
参考資料4:特開2016-200290号公報
(当審注:参考資料1ないし4は、令和1年8月26日にされた訂正請求に対して令和1年10月23日に特許異議申立人が提出したものである。
以下、「甲第1号証」ないし「甲第9号証」を「甲1」ないし「甲9」、「参考資料1」ないし「参考資料4」を「参考1」ないし「参考4」という。)

第4 当審の判断
1 訂正後の請求項1ないし11に係る発明
上記第2における訂正請求により訂正された訂正後の請求項1ないし11に係る発明(以下、「訂正発明1」ないし「訂正発明11」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、
前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、
隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり、
前記フィンは表面に親水性処理が施されており、
前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、
前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、
前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われ、
前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記制御部は、前記熱交換器の温度を上げる運転を行い、前記霜若しくは氷を解凍する解凍動作を制御する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載の空気調和機において、
前記フィンの表面には、水の流路として機能する凸凹部が形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、前記バーリング孔によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機において、
前記バーリング孔の高さは、隣接する前記フィン同士の間隔と略同じになっている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、冷媒を流すパイプが挿入される立ち上がり加工された長孔状の溝によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、切起こし部又はリブによって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項9】
請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の空気調和機において、
前記親水性処理は、親水性樹脂皮膜で前記フィンの表面を覆う処理であり、
前記親水性樹脂皮膜は、抗菌作用を有する添加剤が添加された樹脂材によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項10】
請求項9に記載の空気調和機において、
チタンとフッ素とジンクピリチオンとの中のいずれか1乃至複数種類が、前記添加剤として用いられている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項11】
請求項9に記載の空気調和機において、
前記親水性処理は、前記熱交換器に設けられたパイプの表面にも施されている
ことを特徴とする空気調和機。」

2 甲号証
[1] 甲1
(1)甲1の記載
甲1には、次の記載がある(なお、下線は、当審において付したものである。以下同様。)。
ア 「【請求項1】
室内の空気を吸い込む吸込口と吸い込まれた前記空気を室内に吹き出す吹出口が本体ケースに形成され、前記吸込口と前記吹出口を連通する送風路内に室内熱交換器と室内送風機とが配置された室内機と、室外送風機と圧縮機と室外熱交換器と電動膨張弁が配置された室外機と、を有する空気調和機であって、
前記室内熱交換器は、親水性プレコートフィンで構成し、前記フィンの少なくも一部を着霜させる着霜運転を行い、その後除霜運転により除霜水を発生させて前記室内熱交換器の前記フィン表面に付着した汚れを除去する手段を備えたことを特徴とする空気調和機。」

イ 「【0001】
本発明は、空気調和機に関し、特に結露水による洗浄効果により耐汚染性を維持している親水性プレコートフィン材を使用した室内熱交換器を備える空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機は、室内側に配置される室内機と、屋外に配置される室外機からなり、室内機と室外機には冷媒配管を介してヒートポンプ式冷凍サイクルを構成する部品が分散して配置されている。
【0003】
空気調和機を使用すると、室内機の室内熱交換器には塵埃等の汚れが付着する。従って、室内熱交換器から室内機の本体ケースの外へ吹き出される塵埃を減少させるために、フィルターと蒸発器の間に放電線を配置して、放電線と蒸発器との間に高電圧を印加して放電を発生させて、フィルターを通過した空気中に含まれる塵埃をこの放電により帯電させて蒸発器に付着させる。そして、付着した塵埃を蒸発器に生じる除湿水で洗い流すようになっているものがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
また、親水性プレコートフィンが室内熱交換器の放熱フィンとして用いられる室内機が製品化されており、室内機の耐汚染性が年々向上している。
【特許文献1】特開平10-227477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の技術では、室内熱交換器における塵埃等の汚れは、室内熱交換器の表面全体に付着する傾向があるのに対して、結露は冷却作用がなされる熱交換器パイプの近傍から発生するために、結露は室内熱交換器のフィンの内側には形成されるがフィンの外側の表面側までには到達しにくい。
【0006】
また、室内熱交換器の上記親水性プレコートフィンは、結露水による洗浄効果により耐汚染性を維持するようにしているが、この親水性プレコートフィンでは、室内熱交換器のフィンの外側の表面側に発生する水滴が、すぐにフィンの表面から流下して無くなってしまう。このために、室内熱交換器の表面に付着している汚れが、結露水では除去しにくいという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、親水性プレコートフィンを使用した室内熱交換器の場合に、室内熱交換器のフィン表面全体を着霜させてフィン表面全体に水分が付着した状態として、その後除霜することで室内熱交換器のフィン表面全体に付着した水を流下させることにより、室内熱交換器に付着した汚れを効率良く確実に除去できる空気調和機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気調和機は、室内の空気を吸い込む吸込口と吸い込まれた前記空気を室内に吹き出す吹出口が本体ケースに形成され、前記吸込口と前記吹出口を連通する送風路内に室内熱交換器と室内送風機とが配置された室内機と、室外送風機と圧縮機と室外熱交換器と電動膨張弁が配置された室外機と、を有する空気調和機であって、前記室内熱交換器は、親水性プレコートフィンで構成し、前記フィンの少なくも一部を着霜させる着霜運転を行い、その後除霜運転により除霜水を発生させて前記室内熱交換器の前記フィン表面に付着した汚れを除去する手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、親水性プレコートフィンを使用した室内熱交換器の場合に、室内熱交換器のフィン表面全体を着霜させてフィン表面全体に水分が付着した状態として、その後除霜することで室内熱交換器のフィン表面全体に付着した水を流下させることにより、室内熱交換器に付着した汚れを効率良く確実に除去できる空気調和機を提供できる。」

ウ 「【0011】
図1に示す空気調和機の室内機1は、室内機本体11を有しており、室内機本体11は本体ケース12Pを有している。可動パネル12は本体ケース12Pの前面側に開閉可能に設けられており、本体ケース12Pは後板13を有している。可動パネル12には前部吸込口12aが開口され、本体ケース12Pの上部には上部吸込口12bが開口されている。室内機本体11内には、除湿絞り手段を構成する除湿用絞り弁5と、エアフィルタ16と、室内熱交換器17と、室内送風機19が配置されている。
【0012】
図1に示す室内熱交換器17は、前部吸込口12aに対向する前側熱交換器部17Aと、上部吸込口12bに対向する後側熱交換器部17Bとから構成されている。これらの前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bは、本体ケース12P内においてほぼ逆V字状に形成されている。前側熱交換器部17Aは、ほぼ円弧状に形成されて室内機本体11の前面側に配置され、後側熱交換器部17Bは、室内機本体11の上部後面側に配置されている。前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bの内側の空間には、除湿用絞り弁5と室内熱交換器17が配置されている。
【0013】
前側熱交換器部17Aの下部には、前ドレンパン18aが配置され、後側熱交換器部17Bの下部には、後ドレンパン18bが配置されている。後板13には、後ドレンパン18bの下部側に送風路20が形成され、室内機本体11の下部には吹出口21が開口されている。送風路20と吹出口21はつながっており、吹出口21には、上下風向を設定するためのルーバー(水平ルーバーとも言う)22,23が配置されている。これらのルーバー22,23はR方向に向きを変えることにより、運転モードに応じて吹出口21から室内に吹き出される風の向きを変えることができる。」

エ 「【0014】
図2は、空気調和機の制御ブロックの例を示している。
図2に示す制御ブロックでは、室内機1と室外機30およびリモートコントローラ70を示している。
【0015】
室内機1側には、室内制御部50、リモートコントローラ70との送受信部51、室内吸込み空気と室内熱交換器の各温度センサTS、吹出口のルーバー22,23及び左右風向を設定するためのルーバー(図示せず)を夫々駆動するためのモータ52,53,54、室内送風機19のファンモータ55、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17B、除湿用絞り弁5を備えている。除湿用絞り弁5は、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bの間に配置されている。室内制御部50は、各温度センサTSの検出する温度信号を受ける。室内制御部50は、各ルーバー駆動用のモータ52、53,54とファンモータ55の動作を制御し、除湿用絞り弁5の絞り制御を行う。
【0016】
室外機30側には、室外制御部60、圧縮機31、四方切換弁32、室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61を備えており、インバータ回路61は商用交流電源62に電気的に接続されている。室外制御部60は、電動膨張弁34、室外送風機35、インバータ回路61、四方切換弁32等の動作を制御する。室外熱交換器33は、前側熱交換器部17Aに対して電動膨張弁34と冷媒配管6により接続されている。後側熱交換器部17Bは、圧縮機31と四方切換弁32と冷媒配管6を介して室外熱交換器33に接続されている。

オ 「【0017】
次に、図3を参照して、図1に示す空気調和機の室内機1と室外機30の全体構成と、冷凍サイクル回路、および冷媒パス(冷媒流路)の構成例を説明する。
【0018】
図3に示すように、空気調和機は、室内機1と室外機30を有する。図4は、室内機本体11の内部構造例を概略的に示す斜視図である。
【0019】
室内機本体11内に収容されている冷凍サイクル回路の構成部品は、すでに図1を参照して説明したように、室内熱交換器17である。
【0020】
室外機30内には、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、冷媒膨張手段である電動膨張弁34、室外送風機35等の冷凍サイクル回路の構成部品が配置されている。室内熱交換器17、圧縮機31、四方切換弁32,室外熱交換器33、電動膨張弁34は、冷媒配管6を介して接続されており、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。
【0021】
図3と図4に示すように、前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bは、それぞれ多数の親水性プレコートフィンFを有しており、これらの親水性プレコートフィンFは所定間隔をおいて、図3の紙面垂直方向Xに沿って平行に配列されている。多数の親水性プレコートフィンFは、結露水による洗浄効果により耐汚染性を維持している親水性プレコートフィン材である。
【0022】
これらの親水性プレコートフィンFには、熱交換パイプPが紙面垂直方向Xに沿って蛇行して貫通されている。前側熱交換器部17Aの多数のフィンFには、Y方向に関して前列と後列の熱交換パイプPが配置されており、同様にして、後側熱交換器部17Bの多数のフィンFにも、Z方向に関して前列と後列の熱交換パイプPが配置されている。
【0023】
室内の熱交換用の空気は、図1に示す室内送風機19を作動することで、前部吸込口12aと上部吸込口12bを通じて、図3に示す前側熱交換器部17Aと後側熱交換器部17Bにそれぞれ導かれるようになっている。前側熱交換器部17Aに導かれる熱交換空気は、前側熱交換器部17Aの2列の熱交換パイプPと熱交換を行い、後側熱交換器部17Bに導かれる熱交換空気は、後側熱交換器部17Bの2列の熱交換パイプPと熱交換を行う。」

カ 「【0037】
このように、上記構成の室内機1の室内熱交換器17が親水性プレコートフィンFを有しているが、この塵埃等の汚れが親水性プレコートフィンFに付着して汚れた場合に行う汚れ除去動作例を、次に説明する。
【0038】
塵埃等の汚れは、親水性プレコートフィンFの端面(先端部)に多く付着して、親水性プレコートフィンFの内部への浸入は少ない。すなわち、塵埃等の汚れは、親水性プレコートフィンFの内部ではなく表面側に付着する傾向がある。
【0039】
一般に、熱交換パイプPが冷却されたときに生じるドレン水は、熱交換パイプPの近傍に発生するために、親水性プレコートフィンFの端面を通過するドレン水の量は多くはない。そのため、冷房運転サイクル時と除湿運転サイクル時のドレン水を利用して、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに付着した塵埃等の汚れを除去するのは、汚れ除去効率が良くなく、充分に塵埃を除去できない。
【0040】
そこで、本発明の実施形態では、冷房運転時もしくは再熱除霜運転時に、親水性プレコートフィンFの少なくも一部に着霜させて、その後に親水性プレコートフィンFから除霜させる。各親水性プレコートフィンFの少なくも一部に着霜させると、着霜時には、各親水性プレコートフィンFの先端部(端面)側から着霜する。これにより、この除霜の時の除霜水を用いて各親水性プレコートフィンFに付着した塵埃等の汚れを除去するのである。すなわち、除霜水は各親水性プレコートフィンFの先端部(端面)を確実に流れることにより、塵埃などの汚れを効率良く確実に除去できる。
【0041】
親水性プレコートフィンFに付着した塵埃等の汚れを、除霜水を用いて除去する作業は、冷房運転サイクル時あるいは再熱除湿運転サイクル時により行うが、具体的には次のようにして行う。
【0042】
(1.冷房運転サイクル時おける親水性プレコートフィンFの汚れ除去)
室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜する作業は、冷房運転サイクル時において行い、図5(A)に示すように可動パネル12は、全閉状態あるいは半開状態とする。可動パネル12のより好ましい状態は、全閉状態である。これにより、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜させるにあたり、室内の空気との熱交換量を減らして、着霜を促進する効果が得られる。
【0043】
しかも、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜する際には、図6(C)に示すように、上下風向用のルーバー22,23の角度は、図6(A)に示す通常の冷房運転サイクル時、通常の除湿運転サイクル時、そして図6(B)に示す暖房運転サイクル時より小さく設定される。すなわち、図6(C)に示すようにルーバー22,23は上向きにする。これにより、ルーバー22,23の開く角度を小さくすることで、着霜時において室内の空気との熱交換量を低減できる。しかも、ルーバー22,23の開く角度を小さくすることで、吹出口21から冷気が吹き出さないので、ユーザに対して不快感を与えない。
【0044】
そして、親水性プレコートフィンFを着霜後、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを除霜する際には、送風運転もしくは暖房運転サイクル時に親水性プレコートフィンFを加熱して除霜を行う。除霜時には、ルーバー22,23の開く角度を小さくしているので、吹出口21から空気が吹き出さないので、ユーザに対して不快感を与えなうようにすることができる。
【0045】
このようにして、冷房運転サイクル時において、各親水性プレコートフィンFの任意の一部、特に先端部(端面)に対して着霜と除霜をおこなうことができ、室内熱交換器のフィン表面全体に付着した水を流下させることにより、室内熱交換器に付着した汚れを効率良く確実に除去できる。」

キ 「【0050】
ところで、図7に示すように、室内熱交換器17の各親水性プレコートフィンFを着霜する際の着霜量のコントロールは、室内熱交換器17の温度(TC)の値とその温度の設定時間(着霜運転時間)の大小により行う。
【0051】
図7では、縦軸が室内熱交換器17の温度(TC)を示し、横軸が時間を示している。
図7に示すように、通常の冷房運転サイクル時には、室内熱交換器17の凍結を防止するために、室内熱交換器17の温度(TC)が0℃以上になるように制御している。しかし、本発明の実施形態では、室内熱交換器17の温度(TC)が温度Tcice(ただし、Tcice<0℃)をT時間以上設けることにより、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに対して着霜させる。この室内熱交換器17の温度(TC)の値と時間Tの長さを調整することにより、親水性プレコートフィンFに対する着霜量を調整することができる。
【0052】
図3に示すように、除湿用絞り弁5の下流側である前側熱交換器部17Aの表面側の熱交換パイプP(P3)と後側熱交換器部17Bの表面側の熱交換パイプP(P4)に、除湿用絞り弁5を通った後の冷媒が通るように、すなわち除湿用絞り弁5を通った後の冷媒が前側熱交換器部17Aの表面側と後側熱交換器部17Bの表面側に通るように、室内熱交換器17の冷媒パスを設定している。これにより、汚れが付着し易い前側熱交換器部17Aの表面側と後側熱交換器部17Bの表面側に対して効率良く着霜することができる。
【0053】
しかも、冷房運転により着霜させることにより、室内熱交換器17の全体に効率良く着霜させることができ、その後暖房運転もしくは送風運転により加熱することで霜が溶けて除霜水が生じるので、この除霜水が親水性プレコートフィンFの汚れを効率良く除去できる。」

ク 「【0058】
図9は、凍結より着霜させた室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFを除霜する場合の例を説明する。
【0059】
図9では、縦軸が室内熱交換器17の温度(TC)を示し、横軸が時間を示している。
図9に示すように、通常の冷房運転サイクル時には、室内熱交換器17の凍結を防止するために、室内熱交換器17の温度(TC)が0℃以上になるように制御している。しかし、本発明の実施形態では、室内熱交換器17の温度(TC)が温度Tcice(ただし、Tcice<0℃)をT時間以上設けることにより、室内熱交換器17の親水性プレコートフィンFに対して着霜させる。この室内熱交換器17の温度(TC)の値と時間(着霜運転時間)Tの長さを調整することにより、親水性プレコートフィンFに対する着霜量を調整することができる。
【0060】
その後、室内熱交換器17の除霜をする場合には、室内熱交換器17の温度を利用して、室内熱交換器17の温度Tcdef(ただし、Tcdef>0℃)が時間Tdefの間設定されることにより、室内熱交換器17の除霜を行うことができる。なお、除霜終了の判定は、室内熱交換器17の温度TCの値により行われるが、例えば図8に示す例では、室内熱交換器17の温度TCが最大温度になった時に除霜作業が終了したと判定する。」

ケ 「



(2)上記(1)から分かること
ア 上記(1)ア?ケによれば、甲1には、室内熱交換器17と、室内制御部50及び室外制御部60と、を有する空気調和機が記載されていることが分かる。

イ 上記(1)オ、キ(特に、段落【0023】及び【0052】)によれば、室内熱交換器17は、室内の熱交換用の空気と冷媒との間で熱交換を行うことが分かる。

ウ 上記(1)ア、イ、オ?ケ(特に、段落【0021】並びに図3及び4)によれば、室内熱交換器17には、多数の親水性プレコートフィンFが設けられていること、及び、親水性プレコートフィンFは親水性プレコートフィン材からなることが分かる。

エ 上記(1)キ?ケ(特に、段落【0051】及び【0059】並びに図2、7及び9)によれば、室内制御部50及び室外制御部60は、室内熱交換器17の温度TCがT時間以上0°℃未満の温度Tciceとなる冷房運転を行い、親水性プレコートフィンFの表面に対して着霜させる着霜動作を制御するものであることが分かる。

オ 上記(1)オ、ケ(特に、段落【0022】並びに図1、3及び4)によれば、親水性プレコートフィンFには冷媒を流す熱交換パイプPが貫通されていることが分かる。

(3)甲1発明
上記(1)及び(2)を総合すると、甲1には、次の事項からなる発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「室内の熱交換用の空気と冷媒との間で熱交換を行う室内熱交換器17と、
前記室内熱交換器17に設けられた多数の親水性プレコートフィンFと、
前記室内熱交換器17の温度TCがT時間以上0℃未満の温度Tciceとなる冷房運転を行い、前記親水性プレコートフィンFの表面に対して着霜させる着霜動作を制御する室内制御部50及び室外制御部60と、を有し、
前記親水性プレコートフィンFは親水性プレコートフィン材からなり、
前記親水性プレコートフィンFには冷媒を流す熱交換パイプPが貫通されている空気調和機。」

[2] 甲2
(1)甲2の記載
甲2には、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなるクロスフィンと、該クロスフィンに形成されたフィンカラー部を挿通する冷媒流通管とを有する空気調和装置用の熱交換器に関するものである。」

イ 「【0013】
さらに、本発明に係る空気調和装置用の熱交換器において、上記防食塗膜層(6)および保護塗膜層(17)が親水性塗膜により形成されたものであってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、上記クロスフィン(4)の防食塗膜層6および上記フィンカラー部(7)の保護塗膜層(17)をそれぞれ親水性塗膜により形成したため、上記クロスフィン(4)の表面および上記フィンカラー部(7)の加工端面に付着した結露水もしくは雨水の流動性を高めて該フィンカラー部(7)の設置部に水滴が溜まるのを効果的に防止することができるため、上記フィンカラー部(7)に電界腐食が発生するのを効果的に抑制することができる。」

ウ 「【0017】
図1?図3は、本発明の実施形態に係る空気調和装置用の熱交換器を備えた室外機を示している。該室外機は、その内部に熱交換器1と送風ファン2とが配設された筺体3を有している。上記熱交換器1は、送風ファン2の回転によって筺体3内に吸い込まれた空気の流れに沿って略平行、かつ等間隔に並べられた複数枚のクロスフィン4と、該クロスフィン4と直交する方向に設置された冷媒流通管5とを備えている。
【0018】
上記クロスフィン4は、防食塗膜層6がプレコートされたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなるプレート材を、上記熱交換器1に適した大きさにプレス加工して切断した後、上記冷媒流通管5が挿通されるフィンカラー部7が形成されている。上記クロスフィン4用のプレート材の表面に形成された防食塗膜層6は、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂または疎水性シリカ等の撥水化成分を含んだ撥水性塗膜からなり、クロスフィン4の表面を被覆してその酸化を防止するとともに、クロスフィン4の表面に付着した結露水もしくは雨水が大きくなるのを抑制し、これを速やかにクロスフィン4の表面から落下させる機能を有している。
【0019】
上記フィンカラー部7は、従来周知のドローレス加工法またはドロー加工法等により形成される。上記ドローレス加工法は、図4(a)に示すように、上記冷媒流通管5の挿通位置に所定径の開口部8を形成するとともに、該開口部8の周縁を変形させて立ち上がり部9を形成するピアスバーリング工程と、図4(b)に示すように、上記立ち上がり部9をアイアニングして立ち上がり寸法を大きくするアイアニング工程と、図4(c)に示すように、上記立ち上がり部9の先端を外方に拡開させてフランジ10を形成するフレアリング工程とを有している。」

エ 「【0029】
なお、上記クロスフィン4の防食塗膜層6および上記フィンカラー部7の保護塗膜層18をそれぞれ撥水性塗膜により形成してなる上記実施形態に代え、上記防食塗膜層6および保護塗膜層18を、例えばポリビニール系樹脂、ポリアクリル系樹脂、またはこれらの混合物等からなる親水性塗膜により形成してもよい。この場合には、上記クロスフィン4の表面および上記フィンカラー部7の加工端面に付着した結露水もしくは雨水の流動性を高めて該フィンカラー部7の設置部に水滴が溜まるのを効果的に防止することができるため、上記電界腐食の発生を効果的に抑制することができる。」

オ 「


(2)甲2に記載された事項
上記(1)によれば、甲2には、次の事項が記載されていると認める。
「空気調和装置用の熱交換器において、表面に親水性塗膜が形成されたクロスフィン4には冷媒を流す冷媒流通管5が挿通されているフィンカラー部7が形成されており、
前記フィンカラー部7は、前記冷媒流通管5の挿通位置に所定径の開口部8を形成するとともに、該開口部8の周縁を変形させて立ち上がり部9を形成するピアスバーリング工程と、前記立ち上がり部9をアイアニングして立ち上がり寸法を大きくするアイアニング工程と、前記立ち上がり部9の先端を外方に拡開させてフランジ10を形成するフレアリング工程とにより形成され、
前記立ち上がり部9の高さは隣接する前記クロスフィン4同士の間隔と略同じであり、隣接する前記クロスフィン4間に位置する前記冷媒流通管5は前記立ち上がり部9で覆われていること。」(以下、「甲2記載事項」という。)

[3] 甲3
(1)甲3の記載
甲3には、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は熱交換器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機の熱交換器の伝熱管には、JIS A1000番台、JIS A3000番台のアルミニウム合金または銅が使用されてきた。熱交換器を使用する際に水が凝縮するような環境では、伝熱管およびフィンに凝縮水が付着する。この凝縮水には、一般的に腐食成分が溶解している。伝熱管に上述したようなアルミニウム合金または銅を使用する場合に、適当な防食処理を行なわないと、凝縮水により経時的に伝熱管に孔食が発生する。伝熱管に孔食が生じると、伝熱管内を流動する冷媒が伝熱管の外部に漏れてしまうなどの不具合が生じる。」

イ 「【0013】
図1に示すように、熱交換器1は、フィン10と、伝熱管20とを備えている。伝熱管20は、フィン10に接続されている。熱交換器1が備えるフィン10は単数であっても複数であってもよい。また熱交換器1が備える伝熱管20は単数であっても複数であってもよい。
【0014】
図2に示すように、フィン10は、伝熱管20と接続される第1の部分11と、第1の部分11と電気的に接続された第2の部分12とを含んでいる。第1の部分11のみが伝熱管20と接触しており、第2の部分12は伝熱管20と接触していない。
【0015】
フィン10は、伝熱管20を挿入するための貫通孔を構成する筒状のカラー部13を含んでいる。カラー部13の内周を構成する第1の面13aは第1の部分11であり、カラー部13の外周を構成する第2の面13bは第2の部分12である。」

ウ 「【0037】
次に、伝熱管20とフィン10の第1の部分11とが接触するように、伝熱管20とフィン10とを接続する。
【0038】
具体的には、たとえば以下の工程を実施する。図7は、本実施の形態におけるフィン10に伝熱管20を挿入する工程を説明するための図である。図8は、図7においてVIII-VIII線に沿った断面図である。図7および図8に示すように、フィン10のカラー部13に伝熱管20を挿入する。フィン10が複数ある場合には、所定の位置に固定した伝熱管20に複数のフィン10のカラー部13を差し込むことにより、複数のフィン10を積層する。」

エ 「【0054】
上記熱交換器1において好ましくは、フィン10は、伝熱管20を挿入するための貫通孔を構成する筒状のカラー部13を含み、カラー部13の内周を構成する第1の面は第1の部分11であり、カラー部13の外周を構成する第2の面は第2の部分12である。
【0055】
また、本実施の形態における熱交換器1の製造方法は、以下の工程を備えている。伝熱管20が準備される。伝熱管20と接続される第1の部分11と、第1の部分11と電気的に接続され、かつ第1の部分11を構成する金属の自然電位よりも低い自然電位を有する金属で構成された第2の部分12とを含むフィン10が準備される。そして、伝熱管20とフィン10の第1の部分11とが接触するように、伝熱管20とフィン10とが接続される。伝熱管20を準備する工程では、第1の部分11を構成する金属の自然電位と伝熱管20を構成する金属の自然電位との差が、第2の部分12の自然電位と第1の部分11の自然電位との差よりも小さくなるような金属で構成された伝熱管20が準備される。フィン10を準備する工程は、第1の部分11を構成する金属と、第2の部分12を構成する金属とが積層された金属板を準備する工程と、この金属板に貫通孔を開けて、内周に第1の部分11が位置するとともに外周に第2の部分12が位置するように、貫通孔を構成する筒状のカラー部13を形成する工程とを含んでいる。接続する工程では、フィン10のカラー部13に伝熱管20を挿入する。
【0056】
これにより、第1の部分11と第2の部分12とが積層された金属板にカラー部を形成することで、容易にフィン10を製造することができる。このため、伝熱管20に接触する第1の部分11と、第1の部分11と電気的に接続された第2の部分12とを含むフィン10を備えた熱交換器1を容易に製造することができる。」

オ 「【0057】
(実施の形態2)
図10は、本実施の形態において、熱交換器のフィンと伝熱管とが接続されている領域を概略的に示す拡大断面図である。図10に示すように、本実施の形態における熱交換器3は、実施の形態1における熱交換器1と基本的には同様の構成を備えているが、フィン10の外表面を覆う有機親水性膜15をフィン10がさらに含んでいる点において異なる。」

カ 「【0065】
以上説明したように、本実施の形態における熱交換器3は、フィン10は、フィン10の外表面を覆う有機親水性膜15を含んでいる。
【0066】
有機親水性膜15により、フィン10の濡れ性を向上することができる。このため、フィン10に凝縮水が付着した場合であっても、有機親水性膜15と凝縮水との親和性が高いので、凝縮水がフィンから落下する速度を高めることができる。その結果、凝縮水によるフィン10および伝熱管20の腐食を抑制できる。したがって、フィン10における第2の部分12による第1の部分11に対する犠牲陽極層としての機能を維持し、かつ第1の部分11と伝熱管20との接続部分の腐食を抑制しつつ、腐食の要因である凝縮水の付着時間を短縮することができる。その結果、伝熱管20の腐食、および、伝熱管20とフィン10との接続部分の腐食をより抑制することができる。」

キ 「







(2)甲3に記載された事項
上記(1)によれば、甲3には、次の事項が記載されていると認める。
「空調機の熱交換器1において、表面に有機親水性膜15が形成されたフィン10には伝熱管20が挿通されている貫通孔を構成する筒状のカラー部13が形成されており、
前記筒状のカラー部13の前記フィン10から前記伝熱管20に沿って立ち上がる立ち上がり部分の高さは隣接する前記フィン10同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン10間に位置する前記伝熱管20は前記立ち上がり部分で覆われていること。」(以下、「甲3記載事項」という。)

[4] 甲4
(1)甲4の記載
甲4には、次の記載がある。
ア 「【0004】
また、家庭内エアコンの室内機に用いられる熱交換器において、空気中に浮遊しているホコリ、チリ等で代表される汚染物質がフィンの表面に付着すると、結露水などの影響でフィン表面が湿潤状態となり、汚染物質を栄養源とする細菌が繁殖しやすい。」

イ 「【0042】
本例の熱交換器用アルミニウムフィン材1(試料E1?試料E4)は、図1に示すごとく、アルミニウムよりなる基板2と、該基板2の表面に形成した親水性塗膜3とからなる。
上記親水性塗膜3は、抗菌剤31を含有すると共に、膜厚が0.5?2μmである。また、上記抗菌剤31の含有量は、親水性塗膜3全体の重量を100重量部とすると、1?15重量部であり、上記抗菌剤31は、銀を含有すると共に、平均粒径が上記親水性塗膜3の膜厚以下である。」

ウ 「【0065】
(実施例3)
本例は、図3及び図4に示すごとく、銅合金からなる冷媒配管7を、アルミニウムからなるフィン11に設けられた円筒状のカラー部13内に挿入配設することにより上記冷媒配管7と上記フィン11とを一体的に組み付けてなるクロスフィンチューブ61からなる熱交換器6である。
上記フィン11は、本発明の熱交換器用アルミニウムフィン材を用いて形成されている。
【0066】
熱交換器6を作製するにあたっては、具体的には、まず、熱交換器用アルミニウムフィン材に円筒状のカラー部12をプレス成形し、フィン11とした。そして、フィン11に設けられた円筒状のカラー部12内に上記冷媒配管7を挿入した。次いで、冷媒配管7を拡張し、フィン11と冷媒配管7とを固着することによりクロスフィンチューブ61を作製した。」

エ 「



(2)甲4に記載された事項
上記(1)によれば、甲4には、次の事項が記載されていると認める。
「家庭内エアコンの室内機に用いられる熱交換器において、表面に抗菌剤31を含有する親水性塗膜3が形成されたフィン11には冷媒を流す冷媒配管7が挿通されている円筒状のカラー部12が形成されており、
前記円筒状のカラー部12の前記フィン11から前記冷媒配管7に沿って立ち上がる立ち上がり部分の高さは隣接する前記フィン11同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン11間に位置する前記冷媒配管7は前記立ち上がり部分で覆われていること。」(以下、「甲4記載事項」という。)

[5] 甲5
(1)甲5の記載
甲5には、次の記載がある。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は工業用純アルミニウムあるいは、アルミニウム合金表面に、皮膜層を施したドローレス方式で形成される熱交換器用フィンに関するものである。又、ヒートポンプエアコン等に用いられるフィンアンドチューブ型熱交換器に関するものである。」

イ 「【0021】図1は本発明の一実施例の熱交換器用フィンの成形要部断面図、図2はフィンアンドチューブ型熱交換器の要部断面図、図3は同フィンアンドチューブ型熱交換器の斜視図、図4は他の実施例におけるフィンアンドチューブ型熱交換器の要部断面図、図5は同フィンアンドチューブ型熱交換器の斜視図である。
【0022】図1に示すように本発明の一実施例の熱交換器用フィン11は、ドローレス方式で成形することにより、成形されたカラー内面部11aの親水性皮膜12がほぼ除去され、撥油性皮膜13が現れた構造を有している。
【0023】本実施例の熱交換器用フィン11は、熱交換器用フィン11表面の下層に撥油性皮膜13を施し、上層に親水性皮膜12を施したことで、ドローレス方式で成形した時、カラー内面部の親水性皮膜12がほぼ除去されるが、撥油性皮膜13が現れることで、カラー内面部11aの耐食性を向上させることができる。
【0024】又、図2、図3に示すように本発明の一実施例のフィンアンドチューブ型熱交換器10は、内部を流体が流動するチューブ14を拡管することにより、一定間隔をおいて平行に配置する多数の熱交換器用フィン11のカラー内面部11aにチューブ14の外周を密着させた構造を有している。」

ウ 「



(2)甲5に記載された事項
上記(1)によれば、甲5には、次の事項が記載されていると認める。
「ヒートポンプエアコン等に用いられるフィンアンドチューブ型熱交換器において、表面に親水性皮膜12が形成された熱交換器用フィン11にはチューブ14が挿通されているカラーが形成されており、
前記カラーの前記熱交換器用フィン11から前記チューブ14に沿って立ち上がる立ち上がり部分の高さは隣接する前記熱交換器用フィン11同士の間隔と略同じであり、隣接する前記熱交換器用フィン11間に位置する前記チューブ14は前記立ち上がり部分で覆われていること。」(以下、「甲5記載事項」という。)

[6] 甲6
(1)甲6の記載
甲6には、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、冷媒と気体等の流体間での熱交換を行うためのフィンチューブ型熱交換器、並びにこのフィンチューブ型熱交換器を用いた空調冷凍装置に関するものである。」

イ 「【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1における熱交換器の側面断面図である。本実施の形態1において熱交換器は前面下部および前面上部に置かれた扁平管を用いた主熱交換器3,4と背面に置かれた扁平管を用いた主熱交換器5および空気流れ方向の1列目に配置される円管を用いた補助熱交換器6,7,8で構成される。なお、添え字a,bは主熱交換器において、空気流れ方向の風上側と風下側の熱交換器を示す。
【0012】
本実施の形態1において、空気流れ方向2列目と3列目に配置される主熱交換器について説明する。前面下部に配置される主熱交換器3aおよび3bは、フィン1の積層方向のピッチFpはFp=0.0012mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また空気の流れ方向のフィン幅はL=0.0127m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管の距離DpはDp=0.01425m、フィンの段方向の長さLは0.119m、また、前面上部に配置される主熱交換器4aおよび4bはFp=0.0012mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また空気のながれ方向のフィン幅はL=0.0127m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管の距離DpはDp=0.0127m、フィンの段方向の長さLは0.116m、また、背面に配置される主熱交換器5aおよび5bはFp=0.0012mであり、フィン厚みFt=0.0001m、また空気のながれ方向のフィン幅はL=0.0127m、熱交換器の段方向に隣接する伝熱管の距離DpはDp=0.01425m、である。伝熱管は扁平形状とし、フィンカラーと伝熱管がロウ付けおよび接着剤により、接合されている。また、主熱交換器において、扁平管は千鳥状に配列され、列毎にフィンは分割されている。」

ウ 「【0026】
図10(a)は主熱交換器3bのフィン長さLと扁平管段方向距離Dpの関係を示す平面図であり、図10(b)はフィンカラー23の成型状況を示す図である。また、図11は、前面下部主熱交換器3bの正面図および側面図であり、図11(a)は側面図、図11(b)は正面図を示している。また、図12は前面下部主熱交換器3aの正面および側面図であり、図12(a)は側面図、図12(b)は正面図を示している。また、図13は本発明の実施の形態1におけるフィンを製造する際のプレス方向(フィン送り方向)を示す説明図である。図10の主熱交換器のフィン長さL=0.119mであり、Dp=0.001425m、段数8段であるが、L>Dp×Nであり、段ピッチの段数倍よりもフィン長さが大きい形状となっている。このようなフィンを連続成型するためには、図13のようにフィンを列方向にプレスし製造する必要がある。
【0027】
本実施の形態1の主熱交換器3,4,5では、L≧Dp×Nを満たすようになっており、ユニット配置する際の熱交換器間の隙間を埋めることが可能となる。隙間をフィンで埋めることによって、熱交換器を通らない空気流れを削減することが出来、熱交換能力は向上する。
【0028】
本実施の形態1の主熱交換器3,4,5では、それぞれ2列に配置された2つの熱交換器、即ち空気流れ上流側aの熱交換器と下流側bの熱交換器はほぼ同一形状となっており、図13で示されるようにフィン開口部が互いに向き合う形で成型される場合、一度の成型が可能となる。
【0029】
主熱交換器3aおよび3bは図1で示されるように、3aは空気流れ方向の扁平管前縁部にフィンが配置され、後縁にはフィンが配置されない。一方3bは扁平管の前縁にはフィンは配置されず、後縁にはフィンが配置される。図14に示されるように、前面補助熱交換器が配置されない場合、蒸発器として用いられる場合の凝縮水流路が主熱交換器3aの重力方向下部に確保され、凝縮水滴下による露垂れの発生を防ぐことが可能となる。一方、主熱交換器3bは扁平管の前縁にフィンが配置されないため、フィン効率が3aの場合より向上し熱交換能力を確保出来る。
【0030】
主熱交換器4a、4b、5aおよび5bは、扁平管の重力方向下部に凝縮水流路が確保されるため、熱交換能力の観点から、扁平管の空気流れ方向上流にフィンを配置しない形態となっている。
【0031】
図11および図12では、主熱交換器3aおよび3bのフィン積層方向の側面図を示しているが、主熱交換器3aをUベンド側に切起し22およびフィンカラー屹立方向を配置、主熱交換器3bをヘアピン側に切起し22およびフィンカラー屹立方向を配置、もしくは、その反対とすると図13のように開口部を互いに向き合う形で成型される場合には、一度にフィン製造を行うことが可能となる。また、切起しの方向が主熱交換器3aと3bで反対となっているため、切起しの位置にずれが生じ、切起しの空気流れ後縁部での風速の遅い領域が、下流側の切起し位置の前縁を避けることになり、切起しでの前縁効果が得やすくなるため、熱交換能力を向上させることが出来る。このように、切起しの方向を主熱交換器3aと3bで反対とすることにより、扁平管の後流の死水域を減少させ、通風抵抗の減少および熱交換量の向上を図ることができる。
【0032】
図13のように、開口部を互いに向き合う形で設置してフィン成型することで、積層するフィンのフィンピッチを確保するためのフィンカラーの倒れを防止出来る。また、列方向にフィンを送ることで、フィン長さL(図10)を段数、段ピッチDpと関係なく決めることが可能となり、上述したような効果を奏する。
【0033】
本実施の形態1の熱交換器の製造工程について記す。主熱交換器に用いられる扁平管は押し出し加工で成形され、その後プレス加工にて外周形状をテーパ状に加工され、冷媒の流路を構成するジョイント21に挿入され、治具によって固定された積層フィンに挿入され、ジョイント21にUベンド16および3方管17を接続し、3方管に冷媒配管を接続したのち、ロウ材を扁平管上部、ジョイント-扁平管間、ジョイントとUベンドおよび3方管、3方管と接続配管間に配置し、冷媒配管によって接続され2列毎組み合わされた熱交換器組み立てを炉中ロウ付けし、洗浄後、親水処理材を塗布し、乾燥した後、複数の熱交換器組み立てと分配器および再熱弁をバーナーロウ付けにより接合された後、拡管により製造された円管補助熱交換器に付加された配管とバーナーロウ付けにより接合される手順で製造される。また、ジョイントとUベンドまたは3方管は、炉中ではなくバーナーロウ付けでも成型でき、フィンと扁平管を熱伝導性の接着剤を使用し、炉中ロウ付けを用いない場合でも配管接合が可能となる。熱伝導性の接着剤には、アルミナ等のフィラーを用い、熱伝導率を向上させたものを用いる。」

エ 「



(2)甲6に記載された事項
上記(1)によれば、甲6には、次の事項が記載されていると認める。
「空調冷凍装置のフィンチューブ型熱交換器において、積層するフィンのフィンピッチを確保するためのフィンカラーが、フィンの冷媒を流す扁平管が挿入される部分に形成されること。」(以下、「甲6記載事項1」という。)
また、上記(1)イの段落【0012】には「フィン1の積層方向のピッチFpを0.0012m(1.2mm)とすること。」(以下、「甲6記載事項2」という。)が記載されている。

[7] 甲7
(1)甲7の記載
甲7には、次の記載がある。
ア 「【0007】本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、空気調和機内に傾斜して配置された熱交換器であり、熱交換作用にともなって熱交換器を構成するフィンに生成付着したドレン水が円滑に排出され、信頼性の高い空気調和機用熱交換器を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を満足するため本発明は、請求項1として、空気調和機に組み込んだ状態で傾斜角度を持つように配置され、互いに狭小の間隙を存して並設される多数枚のフィンと、これらフィンに設けられるカラー部を貫通する熱交換パイプとからなり、フィンのカラー部相互間に複数の切起しが設けられたフィンドチューブ形の空気調和機用熱交換器において、フィンのカラー部とフィン端縁との最小距離および、上記フィンの切起しとフィン端縁との最小距離のうち、小さい方の値が、フィンの熱交換空気流通方向に沿う幅寸法の10分の1よりも、大きくなるように設定したことを特徴とする。」

イ 「【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、空気調和機の室内ユニットを断面にして示す。筐体であるユニット本体1の前面部と上面部とに、それぞれ室内空気をユニット本体内に吸込み案内するための吸込口2,3が設けられている。ユニット本体1の前面下部には、ユニット本体内で熱交換した空気を再び室内に吹出し案内するための吹出し口4が設けられている。
【0020】ユニット本体1内部には、側面視でほぼ逆V字状に形成される室内熱交換器5が配置される。この室内熱交換器5は、前部吸込口2下端から上部吸込口3のほぼ中間部に亘って湾曲成される前側熱交換器部5Aと、この前側熱交換器部の上端からユニット本体1の背面側に斜め下方に傾斜する後側熱交換器部5Bとから構成される。
【0021】前,後側熱交換器部5A,5Bのいずれにしても、水平面に対して、その一部もしくは全部が斜めに傾斜して配置された状態となっている。この室内熱交換器5は、多数枚のフィン6を狭小の間隙を存して配置し、複数本の熱交換パイプ7もしくは1本の熱交換パイプを蛇行させ、フィンを貫通した、いわゆるフィンドチューブ形の熱交換器である。
【0022】前,後側熱交換器部5A,5Bの下端部に対向して、それぞれドレン受け8a,8bが設けられる。また、これら熱交換器部5A,5B相互間に室内送風機を構成する横流ファン9が配置される。上記横流ファン9の周囲から上記吹出し口4に亘って送風路を形成するケーシング10が設けられていて、室内側熱交換器を通過した空気を吹出し口4に円滑に送風案内するようになっている。
【0023】図2(A)は、室内熱交換器5の一部を拡大した図である。ただし、ここでは熱交換パイプ7は省略しており、フィン6のみ示している。フィン6の熱交換空気(室内空気)が流通する方向である幅方向の中央部には、この長手方向に所定間隔を存して、列間切起し11が設けられている。この列間切起し11によって、フィン6は幅方向に対して左右両側に仕切られる。
【0024】図2(B)に、フィン6に設けられるカラー部12を示す。列間切起し11によって左右に仕切られるそれぞれの部位には、長手方向に沿って一列であり、かつ互いに所定のピッチを存して、円筒状のカラー部12が突設されている。
【0025】左右列のカラー部12は、互いにその位置が非対向に設計されていて、いわゆる千鳥状をなす配置である。上記熱交換パイプ7は、これらカラー部12に対してほとんど圧入状態で挿通され、フィン6における位置が決められている。
【0026】各列のカラー部12相互間には切起し13が設けられている。これら切起し13は、上記列間切起し11と同様、細長い孔部を形成するとともに一面側に一体に切起した、いわゆるスリット片である。
【0027】このようなスリット片からなる切起し13が、フィンの幅方向に所定間隔を存して複数条並設され、切起し群が形成される。全ての切起し13の、切起し方向は同一面側であり、両側部の切起し13の長さは、内側の切起しの長さよりも長く形成されている。
【0028】図3に、第1の実施の形態の熱交換器5を構成するフィン6の一部を示す。
【0029】上記熱交換器5は、水平面に対して所定の傾斜角度θを持つように配置されている。ユニット本体1内に導かれて、この熱交換器5を通過する熱交換空気(室内空気)は、フィン6の左側から入って右側から出る、一方向(幅方向)に流れるようになっている。
【0030】ここでは、熱交換空気の流通方向の下流側で、切起し13とフィン6端縁との最小距離bが、同じ空気下流側での熱交換パイプ7が貫通するカラー部12の外側とフィン6端縁との最小距離aよりも、小さく形成されることを特徴としている。
【0031】そのうえで、狭く設定された切起し13とフィン6端縁との距離bが、フィン6の熱交換空気の流通方向である幅方向寸法Wfの、1/10よりも広くなるよう設定されている。」

ウ 「【0056】図12に矢印で示すように、フィン6Eに生成されるドレン水は切起し13群の端部を伝わってカラー部12の周りに集まり、かつこの周りを伝わって流れる。そして、ドレン水は慣性力によってカラー部12の下側へ回り込み、このカラー部を離れるのは鉛直線に対して±45°の範囲となる。
【0057】上述の構成では、この範囲において鉛直下方に列間切起し11Aが存在するため、ドレン水が空気下流側に伝わらせるのを遅らせる。ドレン水が下流側フィン6E端縁に到達する位置を可能な限り下部にすることで、ドレン水が滴下した場合でも上記ドレン受け8a,8b内に収まる確率が高くなり、被害を最小限に抑制できる。」

エ 「【0061】第8の実施の形態として、図14に示すような構成のフィン6Gでもよい。このフィン6Gにおいて、上記切起し13を全て同一面方向(図の上面方向)に切起こす片側切起しとなす。互いに並行な切起し13と切起し13との間に、全く切起こされずベース面と同一面である平坦部20が形成されている。
【0062】すなわち、ドレン水が切起し13相互間の平坦部20を流れることで、ドレン水がフィン6G端縁に到達するのを遅らせることができる。そして、ドレン水がフィン6G端縁に到達する位置を可能な限り下部側にすることで、ドレン水が滴下した場合でもドレン受け内に収まる確率が高くなり、被害を最小限にすることができる。
【0063】なお、以上説明した全ての実施の形態の熱交換器5において、フィン6とフィン6との間であるフィンピッチを、1.4mm以下に設定してある。すなわち、フィンピッチが小さい熱交換器の場合は、フィン6表面が撥水化することによって、フィン相互間に介在するドレン水滴がブリッジ状態となる。このブリッジ状態の水滴は、時間の経過にともなってある程度の大きさになるが、重力と摩擦力のバランスが崩れるまで同じ位置で保持される。
【0064】そのため、ドレン水が流れ出るまでの量を保持するだけの広さの平坦面がフィン端部近傍にあり、かつ隘路がない構造であることを前提に、上述の数値を定めてドレン水の飛散量を確実に減少させ得る。」

オ 「





(2)甲7に記載された事項
上記(1)によれば、甲7には、次の事項が記載されていると認める。
「空気調和機に組み込んだ状態で傾斜角度を持つように配置され、互いに狭小の間隙を存して並設される多数枚のフィン6と、これらフィン6に設けられるカラー部12を貫通する熱交換パイプ7とからなるフィンドチューブ形の室内熱交換器5において、カラー部12とともにフィン6のカラー部12相互間に複数の切起し13が設けられることにより、水の流路を確保すること。」(以下、「甲7記載事項1」という。)
「空気調和機の熱交換器において、フィン6相互間に介在するドレン水滴がブリッジ状態となって保持されるようにフィンピッチを1.4mm以下に設定すること。」(以下、「甲7記載事項2」という。)

[8] 甲8
(1)甲8の記載
甲8には、次の記載がある。
ア 「【0001】
本発明は、空気調和機の室内ユニットに搭載されるフィン付き熱交換器に関するものである。」

イ 「【0043】
また前面側熱交換器20の領域Xおよび曲線状の領域Rの段方向に隣り合う伝熱管の間のフィン21には複数のスリット型切起こしを設け、これらの領域の風下側に配置された伝熱管の間のフィン21に設けられたスリット型切起こし13a、13b、13c、13d、13eの風上側1列を段方向に隣り合う伝熱管の中心を結ぶ線に対して略ハの字型に成形している。
【0044】
また、本実施の形態では、前面側熱交換器20の領域Xおよび曲線状の領域Rの風下側のフィン21に配置されたスリット型切起こし13a、13b、13c、13d、13eの略ハの字型に成形した切起こしを、図3に示すように基板フィンから遠い側の面13aa、13abが基板フィンと概略平行となるように設けているが、図4に示す切起こし13aa’、13ab’ように気体の主流に対して傾斜を持つような構成としてもよい。この場合、前面熱交換器20に流入する気体が、気体と温度差の大きい伝熱管側へ流れやすくなるため、通風抵抗としては若干増加するが、熱交換能力を向上させることができる。特に切起こし13aa’、13ab’のように傾斜部下端をフィン基板と繋がった構成とした場合、前面熱交換器20に流入する気体が、より気体と温度差の大きい伝熱管側へ流れやすくなる。このような構成とすることで、特に風上列に配置された伝熱管と風下列に配置された伝熱管とが千鳥状に配列されていない場合、伝熱管付近を流動せずに熱交換器を通過するため十分に熱交換ができない気体の通過を防ぎ、前面熱交換器20の風下後縁27から流出する気体の風速分布の不均一を改善できるため、熱交換能力を向上させると共に、貫流送風機5の回転に起因する特異音の発生を低減することができる。」

ウ 「【0057】
このような構成をとることで、前面側熱交換器20におけるフィン21および背面側熱交換器40におけるフィン41の上端から下端までを連続した構成とできるので、フィン付き熱交換器10を蒸発器として使用する場合、フィン21、41に凝縮する水滴は連続したそれぞれのフィン21,41を伝い滑らかに流下する。更に前面側熱交換器20のフィン21の上側は、風上前縁23の直線と風下後縁25の直線とに囲まれた鉛直に近い一定の角度で傾斜しているので、蒸発時にフィン21の表面に凝縮する水滴が滞留することがない。すなわち、フィン21,41の風上前縁22、23、26,42または風下後縁24、24、27、43から飛び出してしまうという現象を抑制することができ、フィン表面に凝縮する水滴による通風抵抗の増加を抑制できる。」

エ 「



(2)甲8に記載された事項
上記(1)によれば、甲8には、次の事項が記載されていると認める。
「空気調和機の室内ユニットに搭載されるフィン付き熱交換器において、前面側熱交換器20の領域Xおよび曲線状の領域Rの風下側のフィン21に配置されたスリット型切起こし13a、13b、13c、13d、13eの略ハの字型に成形した切起こしを、基板フィンから遠い側の面13aa、13abが基板フィンと概略平行となるように設けるか、又は、気体の主流に対して傾斜を持つような構成とすることにより、熱交換効率を向上させ、フィン21に凝縮する水滴を滑らかに流下させること。」(以下、「甲8記載事項」という。)

[9] 甲9
(1)甲9の記載
甲9には、次の記載がある。
ア 「本発明に係る熱交換器は、流路部材の外面に、親水性、吸湿性、放湿性を有する被覆層を設けることもできる。
本発明に係る熱交換器は、流路部材の外面に、吸着分解性及び抗菌性を有する被覆層を設けることもできる。」([0013]及び[0014])

イ 「親水性、吸湿性、放湿性あるいは吸着分解性及び抗菌性を有する被覆層としては、例えば活性炭などの炭、活性アルミナ、シリカゲル、二酸化チタン、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、酸化チタン、イオン交換樹脂、ベントナイト、珪藻土などを配合したものがあげられるが、これらに限定はされない。」([0024])

ウ 「(h)流路部材の外面に、親水性、吸湿性、放湿性を有する被覆層が設けられているものは、流路部材外部の湿度を好適に調節することができる。すなわち、熱交換器において流路部材外部の空気は流路部材との温度差によって対流が促進され、空気が速やかに入れ替わるので、空気中の湿度を調節する効果によりすぐれている。
(i)流路部材の外面に、吸着分解性及び抗菌性を有する被覆層が設けられているものは、流路部材外部のVOCや臭気を改善し、空気を清浄化することができる。すなわち、熱交換器において流路部材外部の空気は流路部材との温度差によって対流が促進され、空気が速やかに入れ替わるので、空気中のVOCや臭気を改善して空気を清浄化する効果によりすぐれている。」([0037]及び[0038])

エ 「例えば、熱交換器Hの熱交換効率を向上させるためには、熱伝導性、放熱性や吸熱性にすぐれた被覆層を設ければよい。また、熱交換器Hの流路部材外部の湿度を好適に調節するためには、親水性、吸湿性、放湿性にすぐれた被覆層を設ければよい。また、熱交換器Hの流路部材外部のVOCや臭気を改善し、空気を清浄化するためには、吸着分解性及び抗菌性にすぐれた被覆層を設ければよく、さらに、好ましくは環境的な癒しの空間を得ることができるマイナスイオンを発生する能力にすぐれた被覆層を設けることもできる。」([0063])

オ 「使用したモデルは次の四種類である。
モデル0は、熱交換器Hと比較する対象とするもので、熱交換器Hの流路部材1から中芯部材2を取り外したものである。使用した熱交換器Hの流路部材1の外径は60mm、長さは1mである。
モデル1は、熱交換器Hであり、流路部材1の被覆層を黒色に着色したアルマイト処理層としたものである。
モデル2は、熱交換器Hにおいて流路部材1の被覆層をクールテック(商品名:オキツモ株式会社)に変えたものである。
モデル3は、熱交換器Hにおいて流路部材1の被覆層を活性炭を主剤とするハイブリッドサーモコーティング(商品名:有限会社アクア:表1、表2ではHBサーモと略して表示した)に変えたものである。このハイブリッドサーモコーティングは、表面積がきわめて大きく、放熱性、吸湿性、放湿性、吸着分解性及び抗菌性及びマイナスイオンの発生にすぐれたものである。」([0076])

カ 「(h)流路部材の外面に、親水性、吸湿性、放湿性を有する被覆層が設けられているものは、流路部材外部の湿度を好適に調節することができる。すなわち、熱交換器において流路部材外部の空気は流路部材との温度差によって対流が促進され、空気が速やかに入れ替わるので、空気中の湿度を調節する効果によりすぐれている。
(i)流路部材の外面に、吸着分解性及び抗菌性を有する被覆層が設けられているものは、流路部材外部のVOCや臭気を改善し、空気を清浄化することができる。すなわち、熱交換器において流路部材外部の空気は流路部材との温度差によって対流が促進され、空気が速やかに入れ替わるので、空気中のVOCや臭気を改善して空気を清浄化する効果によりすぐれている。」([0111]及び[0112])

キ 「流路部材(1)の外面に、親水性、吸湿性または放湿性を有する被覆層(10)が設けられている、
請求項1記載の熱交換器。」(請求の範囲の[8])

ク 「



(2)甲9に記載された事項
上記(1)によれば、甲9には、次の事項が記載されていると認める。
「熱交換器Hにおいて、流路部材1の外面に、親水性及び抗菌性を有する活性炭、二酸化チタンなどを配合した被覆層を設けること。」(以下、「甲9記載事項」という。)

3 参考資料
(1)参考1(特開平11-183076号公報)
段落【0001】、【0010】、【0012】及び【0015】等の記載からみて、参考1には以下の事項(以下、「参考1記載事項」という。)が記載されている。

「空気調和機に用いる熱交換器のフィンピッチpを1.1mm?1.4mmとすることにより、熱交換器のコンパクト化をはかるとともに風量を確保し、熱交換効率が優れたものとすること。」

(2)参考2(特開2008-202907号公報)
段落【0001】及び【0020】等の記載からみて、参考2には以下の事項(以下、「参考2記載事項」という。)が記載されている。

「空気調和機に用いる熱交換器のフィンピッチPfを1.1mm?1.4mmとすることにより、熱交換器のコンパクト化をはかるとともに風量を確保し、熱交換効率が優れたものとすること。」

(3)参考3(特開2015-143608号公報)
段落【0014】、【0044】及び【0062】等の記載からみて、参考3には以下の事項(以下、「参考3記載事項」という。)が記載されている。

「空気調和装置に用いる熱交換器のフィンピッチFPを1.0mm以上、1.4mm以下とすることにより、熱交換容量を高めること。」

(4)参考4(特開2016-200290号公報)
【特許請求の範囲】における【請求項9】等の記載からみて、参考4には以下の事項(以下、「参考4記載事項」という。)が記載されている。

「空気調和機に用いる熱交換器の複数のフィン同士の間隔を1.25mm以下とすること。」


4 [理由](特許法第29条第2項について)
(1)請求項1
ア 対比
訂正発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明における「室内の熱交換用の空気」は、その機能、構成又は技術的意義から訂正発明1における「空気」に相当し、以下同様に、「室内熱交換器17」は「熱交換器」に、「多数」は「複数」に、「親水性プレコートフィンF」は「フィン」に、「室内制御部50及び室外制御部60」は「制御部」に、「熱交換パイプP」は「パイプ」に、「貫通」は「挿通」に、「空気調和機」は「空気調和機」に、それぞれ相当する。

・甲1発明における「前記室内熱交換器17の温度TCがT時間以上0℃未満の温度Tciceとなる冷房運転」は、訂正発明1における「前記熱交換器の温度を下げる運転」に相当する。
そして、甲1発明における「前記室内熱交換器17の温度TCがT時間以上0℃未満の温度Tciceとなる冷房運転を行い、前記親水性プレコートフィンFの表面に対して着霜させる着霜動作を制御する」態様は、訂正発明1における「前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する」態様に相当する。

・甲1発明における「前記親水性プレコートフィンFは親水性プレコートフィン材からな」る態様は、親水性プレコートフィン材が表面に予め親水性の処理をしたものであることは明らかであるから、訂正発明1における「前記フィンは表面に親水性処理が施されて」いる態様に相当する。

・甲1発明における「前記親水性プレコートフィンFには冷媒を流す熱交換パイプPが貫通されている」態様は、親水性プレコートフィンFにおいて、熱交換パイプPが貫通されていることにより何らかの孔が形成されていることは明らかであるから、訂正発明1における「前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われている」態様に、「前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されている孔が形成されて」いるという限りにおいて一致する。

したがって、両者は、
「空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、
前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、
前記フィンは表面に親水性処理が施されており、
前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されている孔が形成されている
空気調和機。」の点で一致し、次の点で相違している。

[相違点1]
訂正発明1においては、「前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われている」のに対して、甲1発明においては、「前記親水性プレコートフィンFには冷媒を流す熱交換パイプPが貫通されている」ものの、親水性プレコートフィンF(フィン)に形成された孔が、縁部が立ち上がり加工されたバーリング孔であり、その縁部の高さが隣接する親水性プレコートフィンF(フィン)同士の間隔と略同じであり、隣接する前記親水性プレコートフィンF(フィン)間に位置する熱交換パイプP(パイプ)が前記縁部で覆われているかは不明である点(以下、「相違点1」という。)。

[相違点2]
訂正発明1においては「隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり」、「凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる」のに対して、甲1発明においては室内熱交換器17に設けられた多数の親水性プレコートフィンF(フィン)同士の間隔が不明であり、さらに、着霜動作の際に親水性プレコートフィンF同士の間で水を橋渡しさせた状態で凍結させるか不明である点(以下、「相違点2」という。)。

イ 判断
[相違点1について]
空気調和機に用いられ、表面に親水性塗膜を施した熱交換器のフィンに、冷媒を流すパイプが挿通される縁部が立ち上がり加工された孔を形成し、該立ち上がり部の高さをフィン同士の間隔と略同じとすることによりフィン間に位置する冷媒を流すパイプが該縁部により覆われるようにすることは、甲2ないし5記載事項をみれば周知(以下、「周知技術1」という。)であって、空気調和機における熱交換器の技術分野で一般的に用いられる技術であるといえる。
そうすると、甲1発明の「冷媒を流す熱交換パイプPが貫通されている」、「親水性プレコートフィンF」において、空気調和機における熱交換器の技術分野で用いられる上記周知技術1を適用し、親水性プレコートフィンFにおいて、冷媒を流す熱交換パイプPが貫通する縁部が立ち上がり加工された孔を形成し、該立ち上がり部の高さを親水性プレコートフィンF同士の間隔と略同じとすることにより親水性プレコートフィンF間に位置する冷媒を流すパイプが該縁部により覆われるものとして、上記相違点1に係る訂正発明1とすることは当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2について]
甲6記載事項2、甲7記載事項2及び参考1ないし4記載事項には、空気調和機に用いる熱交換器において、隣接するフィン同士の間隔であるフィンピッチを1.5mm以下の適宜の間隔とすることが示されており、また、隣接するフィン同士の間隔は、熱交換器のコンパクト化、及び風量と熱交換効率とのバランスの確保等を考慮して決定されることは技術常識といえる(参考1及び参考2参照。)。
そして、甲7記載事項2には、フィンピッチを1.4mm以下に設定することによりフィン6相互間に介在するドレン水滴がブリッジ状態となって保持されることも示されているから、隣接するフィン同士の間隔であるフィンピッチを1.5mm以下とすること、及び該フィンピッチを1.5mm以下と狭くすることによりフィン同士の間にドレン水滴がブリッジ状態で保持され得ることは周知(以下、「周知技術2」という。)である。
また、隣接するフィン同士の間隔であるフィンピッチを1.5mm以下とし、フィン同士の間にドレン水滴をブリッジ状態で保持した状態とすれば、着霜動作の際にフィン同士の間のドレン水滴はブリッジ状態で保持されたまま凍結されることは明らかである。
そうすると、甲1発明の「親水性プレコートフィンF」において、熱交換器のコンパクト化、及び風量と熱交換効率とのバランスの確保等を考慮して上記周知技術2を適用して隣接する親水性プレコートフィンF同士の間隔であるフィンピッチを1.5mm以下とすることに困難性はなく、その際、フィンは、フィン同士の間にドレン水滴をブリッジ状態で保持するものとなり、着霜動作の際にフィン同士の間のドレン水滴はブリッジ状態で保持されたまま凍結することは上記周知技術2及び技術常識からみて当業者の想定の範囲内であるから、甲1発明に周知技術2を適用して上記相違点2に係る訂正発明1とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、訂正発明1は、甲1発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)請求項2
甲1において、着霜運転の後に、暖房運転を行って霜を溶かすことについて記載されている(甲1の段落【0053】、上記2[1](1)キ 参照。)。
したがって、訂正発明2は、甲1発明、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)請求項4及び5
上記甲7記載事項1には、フィン6の表面にカラー部12(バーリング孔)、複数の切起し13を設けることにより水の流路を確保することが開示されている。
そして、前記カラー部12及び複数の切起し13は、訂正発明4における「凸凹部」に相当し、前記カラー部12は、訂正発明5における「凸凹部」である「バーリング孔」に相当する。
よって、甲1発明における親水性プレコートフィンFにおいて、甲7記載事項1を参酌して水の流路として機能する凸凹部を設けること、及び凸凹部をバーリング孔から形成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、訂正発明4及び5は、甲1発明、甲7記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)請求項6
上記周知技術1は「空気調和機に用いられ、表面に親水性塗膜を施した熱交換器のフィンに、冷媒を流すパイプが挿通される縁部が立ち上がり加工された孔を形成し、該立ち上がり部の高さをフィン同士の間隔と略同じとすることによりフィン間に位置する冷媒を流すパイプが該縁部により覆われるようにすること」であって、フィンに設けられた孔(バーリング孔)の立ち上がり部の高さはフィン同士の間隔と略同じであると認められる。
よって、甲1発明における親水性プレコートフィンFにおいて、周知技術1を適用して、バーリング孔を形成してバーリング孔の立ち上がり部の高さを隣接するフィン同士の間隔と略同一とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、訂正発明6は、甲1発明、甲7記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)請求項7
上記甲6記載事項1は、「空調冷凍装置のフィンチューブ型熱交換器において、積層するフィンのフィンピッチを確保するためのフィンカラーが、フィンの冷媒を流す扁平管が挿入される部分に形成されること。」であって、フィンカラーは、扁平管を挿入する長孔状の溝を形成すると認められる。
よって、甲1発明における親水性プレコートフィンFにおいて、甲6記載事項1を参酌して、親水性プレコートフィンFを貫通する熱交換パイプPを扁平管とし、扁平管を挿入するための長孔状の溝を形成するフィンカラーを設けることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
したがって、訂正発明7は、甲1発明、甲6記載事項1、甲7記載事項1、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)請求項8
水の流路として機能する凸凹部が、切起こし部又はリブによって形成されることについて、上記甲7記載事項1における「フィン6のカラー部12相互間に複数の切起し13が設けられること」及び、上記甲8記載事項における「切起こし」がそれに相当する。
よって、甲1発明における親水性プレコートフィンFにおいて、水の流路を確保するために、甲7記載事項1及び甲8記載事項を参酌して、切起こし部またはリブを設けることは当業者が容易に想到し得ることである。
したがって、訂正発明8は、甲1発明、甲7記載事項1、甲8記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)請求項9及び10
親水性樹脂皮膜が、抗菌作用を有する添加剤が添加された樹脂材により形成されることについて、上記甲4記載事項における「表面に抗菌剤31を含有する親水性塗膜3」及び上記甲9記載事項における「親水性及び抗菌性を有する活性炭、二酸化チタンなどを配合した被覆層」がそれに相当する。 よって、甲1発明における親水性プレコートフィンFにおいて、甲4記載事項及び甲9記載事項を参酌して、フィン表面の被覆を、抗菌作用を有する添加剤が添加された樹脂材とし、さらに樹脂材の添加剤として二酸化チタン等を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、訂正発明9及び10は、甲1発明、甲4記載事項、甲6記載事項1、甲7記載事項1、甲8記載事項、甲9記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)請求項11
甲1発明において、親水性処理を親水性プレコートフィンFのみならず熱交換パイプPの表面にも施すことは、当業者が適宜なし得る設計事項である。
したがって、訂正発明11は、甲1発明、甲4記載事項、甲6記載事項1、甲7記載事項1、甲8記載事項、甲9記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、訂正発明1、2及び4ないし11は、甲1発明、甲4記載事項、甲6記載事項1、甲7記載事項1、甲8記載事項、甲9記載事項、周知技術1及び周知技術2に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、訂正発明1、2及び4ないし11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項3に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、本件特許の請求項3に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (54)【発明の名称】
空気調和機
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和機の室内機は、室内空気を内部に吸い込み、吸い込んだ室内空気を熱交換器に通して、加熱、冷却、及び除湿のいずれか任意の処理が施された調和空気を得て、得られた調和空気を室内に吹き出すことにより、室内を空気調和する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
空気調和機の室内機は、室内空気に含まれている塵埃が内部に侵入しないように、室内空気を吸い込む空気吸込口と熱交換器との間を塞ぐようにフィルタを配置し、フィルタで塵埃の大半を捕集する。しかしながら、フィルタの網目よりも微細な塵埃は、フィルタの網目を潜って室内機の内部に侵入する。
【0004】
室内機の内部では、吸い込まれた室内空気が熱交換器と衝突する際の摩擦によって、熱交換器の周りに静電気が発生する。また、室内機の内部に侵入した微細な塵埃は、油分を含む場合が多い。そのため、室内機の内部に侵入した塵埃は、静電気や油分によって熱交換器に付着する。
【0005】
熱交換器に付着した塵埃には、雑菌(カビ類を含む)の栄養分となる成分が含まれている。そして、例えば、夏季時に空気調和機が冷房運転や除湿運転を行うと、空気中の水分が熱交換器のフィンの表面に結露するため、熱交換器の周囲が高湿な状態になる。そのため、熱交換器に塵埃が付着し続けると、雑菌(カビ類を含む)が増殖して、悪臭が発生することがある。したがって、空気調和機は、熱交換器に付着した塵埃を除去して、一年を通して熱交換器を清潔に保つことが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】 特開2010-17662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の空気調和機は、熱交換器のメンテナンス性を向上させることが望まれていた。
【0008】
例えば、従来の空気調和機は、利用者が市販の洗浄液を利用して熱交換器を洗浄したり、又は、利用者が掃除業者に熱交換器の洗浄を委託したりする必要があった。
また、例えば、従来の空気調和機は、熱交換器の洗浄作業時に高所作業を行う必要があるため、作業者に負担を強いていた。ここで、高所作業とは、例えば、高所に設置された空気調和機の室内機を設置場所から取り外して分解し、室内機の中から熱交換器を取り出して熱交換器を洗浄するという作業や、高所に空気調和機の室内機を設置したままの状態で洗浄液を熱交換器に塗布して熱交換器を洗浄するという作業等である。従来の空気調和機は、熱交換器の洗浄作業時に高所作業を行う必要があるため、人間の手を介さないと、熱交換器を洗浄することができなかった。そして、高所作業は、特に、高齢者や、体の不自由な方にとって、非常に困難な作業であった。そのため、従来の空気調和機は、作業者に負担を強いていた。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、熱交換器のメンテナンス性を向上させた空気調和機を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり、前記フィンは表面に親水性処理が施されており、前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われ、前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させることを特徴とする空気調和機とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、熱交換器のメンテナンス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る空気調和機の構成図である。
【図2】実施形態に係る空気調和機の室内機の断面図である。
【図3】実施形態に係る室内機に搭載された熱交換器の概略図である。
【図4】実施形態に係る室内機に搭載された熱交換器の取付角度を示す概略図である。
【図5】実施形態に係るフィンに形成された凸凹部の一例としてのバーリング孔(穴)の概略図である。
【図6】実施形態に係るフィンに形成された凸凹部の一例を示す概略図である。
【図7】実施形態に係る凸凹部としての切起こし部が形成されたフィンの概略図である。
【図8】親水性処理の一例を示す概略図である。
【図9】親水性処理の作用の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0014】
[実施形態]
<空気調和機の構成>
以下、図1乃至図3を参照して、本実施形態に係る空気調和機1の構成につき説明する。図1は、本実施形態に係る空気調和機1の構成図である。図2は、空気調和機1の室内機2の断面図である。図3は、室内機2に搭載された熱交換器16の取付角度を示す概略図である。図4は、熱交換器16の取付角度を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、空気調和機1は、室内に配置された室内機2と、室外に配置された室外機3と、室内の使用者の手元付近に配置されたリモートコントローラ12とを有している。
【0016】
室内機2は、室内空気を内部に吸い込み、吸い込んだ室内空気を熱交換器16(図2参照)に通して、加熱、冷却、及び除湿のいずれか任意の処理が施された調和空気を得て、得られた調和空気を室内に吹き出すことにより、室内を空気調和する。室内機2は、接続配管5を介して室外機3と接続されており、室外機3との間で冷媒を循環させている。室外機3は、循環される冷媒との間で熱交換を行う。
【0017】
室内機2は、筐体7と化粧枠8とで、送風ファン14(図2参照)や熱交換器16(図2参照)等の構造体を内包している。送風ファン14は、空気吸込口6側から空気吹出口13側に空気を送る貫流ファンである。熱交換器16は、冷媒との間で熱交換を行うユニットである。
【0018】
図1に示す例では、化粧枠8の前面は、上下方向に延びる上側部分と、下側が斜め後ろ方向に延びる下側部分とを備えた形状になっている。化粧枠8の前面の上側部分には、前面パネル9が取り付けられている。前面パネル9は、室内機2の前面を覆う部材である。また、化粧枠8の前面の下側部分には、受信部10と、上下風向板18とが取り付けられている。
【0019】
受信部10は、リモートコントローラ12から送信される操作信号を受信する装置である。受信部10は、室内機2に内蔵された制御部CLと電気的に接続されている。制御部CLは、受信部10を介して受信されたリモートコントローラ12からの操作信号に基づいて空気調和機1の運転動作を制御する。
【0020】
上下風向板18は、空気吹出口13から吐き出される調和空気の上下方向の向きを規定する部材である。上下風向板18は、上側部分が上下方向に開閉するように、下端付近で化粧枠8(又は筐体7)に軸支されているとともに、図示せぬ駆動部によって回動させられる構成になっている。室内機2は、上下風向板18を開くことにより、空気吹出口13を形成する。
【0021】
図2に示すように、室内機2は、内部に、前記した送風ファン14と前記した熱交換器16と前記した上下風向板18とに加えて、フィルタ15と、ドレンパン17と、左右風向板19とを有している。
【0022】
フィルタ15は、筐体7の内部への塵埃の侵入を防止する部材である。
ドレンパン17は、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に結露して落下する水(水滴)を受ける部材である。
左右風向板19は、空気吹出口13から吐き出される調和空気の左右方向の向きを規定する部材である。
【0023】
フィルタ15は、空気吸込口6と熱交換器16との間を塞ぐように配置されている。空気調和機1は、フィルタ15の網目よりも大きな塵埃の筐体7の内部への侵入をフィルタ15で防止するとともに、フィルタ15の網目を通過した、フィルタ15の網目よりも微細な塵埃を後記する凍結洗浄で洗い流す構成になっている。空気調和機1は、好ましくは、フィルタ掃除機構(図示せず)を有する構成とし、フィルタ掃除機構でフィルタ15を自動的に(さらに好ましくは定期的に)掃除することができるとよい。
【0024】
送風ファン14は、空気を空気吸込口6から吸い込んで空気吹出口13から吹き出すことができるように、室内機2の内部の略中央付近に配置されている。熱交換器16は、送風ファン14の上流側(空気吸込口6に近い側)に配置され、送風ファン14の上流側を覆うように略逆V字状に形成されている。
【0025】
図3に示すように、熱交換器16は、前熱交換器16Fと後熱交換器16Rとで構成されている。前熱交換器16Fと後熱交換器16Rとは、それぞれ、複数のフィン(熱交換板)20と、各フィン20を貫通する複数のパイプ40とを備えている。フィン20は、冷媒と空気との間で熱交換を行うための長尺な薄い板状の部材である。フィン20は、例えば、アルミニウム合金によって構成されている。パイプ40は、冷媒を流動させるための部材である。
【0026】
前熱交換器16Fは、略中央付近で下向きに屈曲させた厚手の板状の形状を呈している。したがって、前熱交換器16Fの下部16FLの傾斜角度は、前熱交換器16Fの上部16FUの傾斜角度よりも大きくなっている。一方、後熱交換器16Rは、厚手の直板状の形状を呈している。
【0027】
以下、前熱交換器16Fの下部16FLと上部16FUとを、それぞれ、「熱交換器16の前方下部16FL」と称し、「熱交換器16の前方上部16FU」と称する場合がある。また、後熱交換器16Rを「熱交換器16の後方部16R」と称する場合がある。
【0028】
係る構成において、室内機2は、内部に吸い込んだ室内空気中の塵埃の大半をフィルタ15(図2参照)で捕集する。しかしながら、一部の塵埃は、フィルタ15で捕集されきれずに、フィルタ15の網目を潜って室内機2の内部に侵入して、熱交換器16に付着する。熱交換器16に塵埃が付着し続けると、雑菌(カビ類を含む)が増殖して、悪臭が発生する可能性がある。したがって、空気調和機1は、熱交換器16に付着した塵埃を除去する構成にすることが好ましい。そこで、本実施形態では、空気調和機1は、運転制御で、熱交換器16に対して以下のような洗浄処理を行う。
【0029】
すなわち、まず、空気調和機1は、熱交換器16の温度を下げる運転を行い、熱交換器16を急激に冷却して、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に霜若しくは氷を付着させる動作(以下、「凍結動作」と称する)を行う。本実施形態では、凍結動作を行う運転を「凍結運転」と称する。
【0030】
なお、凍結運転では、霜(氷を含む)は、空気中の水分が昇華することにより、水滴の状態を経ずに、熱交換器16のフィン20の表面に直接付着するものと考えられる。ただし、霜(氷)は、空気中の水分が熱交換器16のフィン20の表面に結露し、その結露した水分が凍結することにより、水滴の状態を経て、熱交換器16のフィン20の表面に付着する場合もありえる。
【0031】
なお、凍結運転では、通常の冷房運転とは異なり、空気調和機1は、送風ファン14を動作させない。これにより、空気調和機1は、熱交換器16を通過する空気の速度を遅くして、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に霜(氷)を付着させ易くすることができる。また、空気調和機1は、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に結露した水(結露水)に対し、その落下(水垂れ)を抑制して、フィン20の表面での水(結露水)の滞留時間を長くすることができる。その結果、空気調和機1は、安定した霜(氷)の付着量を確保することができる。
【0032】
凍結運転の後に、空気調和機1は、熱交換器16の温度を上げる運転を行い、熱交換器16を急激に加熱して、霜(氷)を解凍(融解)する動作(以下、「解凍動作」と称する)を行う。本実施形態では、解凍動作を行う運転を「解凍運転」と称する。空気調和機1は、解凍運転を行うことにより、霜(氷)を水に戻す。その際に、空気調和機1は、解凍(融解)された水が落下する勢いを利用して熱交換器16に付着した微細な塵埃を流し落とす。これにより、空気調和機1は、熱交換器16のメンテナンス性を向上させて、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。以下、この洗浄処理(凍結運転と解凍運転とによって行われる洗浄処理)を「凍結洗浄」と称する。
【0033】
なお、空気調和機1は、解凍運転時に流れ出た水をドレンパン17で受ける。ドレンパン17には、排水管が接続されている。空気調和機1は、排水管を介して流れ出た水を筐体7の外部に排水する。
【0034】
このような空気調和機1は、凍結洗浄を行うことにより、従来行われていた、利用者が市販の洗浄液を利用して熱交換器16を洗浄したり、又は、利用者が掃除業者に熱交換器16の洗浄を委託したりことを無くすことができる。
【0035】
また、このような空気調和機1は、凍結洗浄を行うことにより、従来行われていた高所作業(例えば、高所に設置された空気調和機1の室内機2を設置場所から取り外して分解し、室内機2の中から熱交換器16を取り出して熱交換器16を洗浄するという高所作業、又は、高所に空気調和機1の室内機2を設置したままの状態で洗浄液を熱交換器16に塗布して熱交換器16を洗浄するという高所作業)を無くすことができる。
そのため、空気調和機1は、熱交換器16のメンテナンス性を向上させることができる。
【0036】
<熱交換器の取付角度>
空気調和機1は、熱交換器16を効率よく洗浄するために、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させること(つまり、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に付着する霜(氷)の付着量を増加させること)が好ましい。
【0037】
本実施形態では、空気調和機1は、凍結洗浄で流れ出る水の量を増加させるために(つまり、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に付着する霜(氷)の付着量を増加させるために)、熱交換器16の付け角度が以下のようになっている。
【0038】
例えば、図4に示すように、空気調和機1の室内機2は、設置壁面91に据え付けられる。その室内機2では、熱交換器16は、前方上部(前熱交換器の上部)16FUと、前方下部(前熱交換器の下部)16FLと、後方部(後熱交換器)16Rとで、取付角度が異なっている。そして、設置壁面91の法線92に対する熱交換器16の前方上部16FUの取付角度α16FUと、前方下部16FLの取付角度α16FLと、後方部16Rの取付角度α16Rとは、それぞれ、50°±10°以内、85°±10°以内、50°±10°以内であるとよい。
【0039】
このような空気調和機1は、前方上部16FUと後方部16Rの取付角度が40°以下になる。これにより、空気調和機1は、熱交換器16のフィン20(図3参照)の表面に結露した水(結露水)に対し、その落下(水垂れ)を抑制して、フィン20の表面での水(結露水)の滞留時間を長くすることができる。その結果、空気調和機1は、霜(氷)の付着量を増加させることができる。これにより、空気調和機1は、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0040】
<凸凹部の構成>
空気調和機1は、解凍運転時や、冷房運転時、除湿運転時に流れ出た水が空気吹出口13から落下(水垂れ)しないように、流れ出た水をドレンパン17の上に適正に落下させる構成にするとよい。そこで、本実施形態では、各フィン20に水の流れを誘導する流路として機能する凸凹部30(図5参照)が設けられている。凸凹部30は、表面が凸凹状に形成された部位である。図5は、フィン20に形成された凸凹部30の一例としてのバーリング孔(穴)31の概略図である。図5(a)は、バーリング孔(穴)31の上方斜視図であり、図5(b)は、バーリング孔(穴)31の側面図である。
【0041】
図5に示すように、熱交換器16のフィン20には、パイプ40が挿通されるバーリング孔(穴)31が形成されている。バーリング孔(穴)31は、縁部が立ち上がり加工された孔である。バーリング孔(穴)31の高さH31(図5(b)参照)は、フィン間隔L20(図5(b)参照)と略同じになっている。熱交換器16は、各フィン間隔L20が同じになるように、組み立てられている。バーリング孔(穴)31は、凸凹部30の一部を構成しており、水の流れをドレンパン17の方向に誘導する流路として機能する。
【0042】
このような空気調和機1は、水の流れを誘導する流路である凸凹部30の一部をバーリング孔(穴)31で構成することにより、解凍運転時や、冷房運転時、除湿運転時に流れ出た水をドレンパン17の上に適正に落下させて、水が空気吹出口13から落下(水垂れ)することを抑制することができる。
【0043】
また、空気調和機1は、各フィン間隔L20が同じになるように、熱交換器16を組み立てることができるため、外気温度が同じであれば、各フィン20間で同じ霜(氷)の付着量を確保することができる。そのため、空気調和機1は、安定した霜(氷)の付着量を確保することができる。
【0044】
なお、空気調和機1は、フィン間隔L20(図5(b)参照)を所望の間隔(例えば、5mm以下、より好ましくは1.5mm以下)に設定するとよい。これにより、空気調和機1は、凍結運転時に、熱交換器16のフィン20とフィン20との間で水を橋渡しさせた状態で凍結させることができるため、凍結させた水を落下させ難くすることができる。その結果、空気調和機1は、凍結洗浄時に霜(氷)の付着量を増加させること(つまり、流れ出る水の量を増加させること)ができる。
【0045】
なお、凸凹部30は、バーリング孔(穴)31以外の構成によっても形成することができる(図6参照)。図6は、フィン20に形成される凸凹部30の一例を示す概略図である。図6(a)は、立ち上がり加工された長孔状の溝32で凸凹部30を形成する場合の例を示している。図6(b)は、切起こし部33で凸凹部30を形成する場合の例を示している。図6(c)は、リブ34で凸凹部30を形成する場合の例を示している。
【0046】
図6(a)に示すように、凸凹部30は、縁部が立ち上がり加工された長孔状の溝32によって形成されている。図6(a)に示す例では、長孔状の溝32は、一方向に開口するように、フィン20の端部に形成されている。パイプ40は、細長い丸型矩形状の形状を呈しており、長孔状の溝32に挿入されている。
【0047】
図6(b)に示すように、凸凹部30は、切起こし部33によって形成されている。図6(b)に示す例では、切起こし部33は、複数の切り込みをフィン20の表面や端部に形成し、各切り込み間の部位を交互に異なる方向に折り曲げることによって形成されている。なお、図6(b)に示す例では、切起こし部33がフィン20の端部に形成されているが、図7に示すように、切起こし部33はフィン20の表面に形成することもできる。
【0048】
図6(c)に示すように、凸凹部30は、複数のリブ34によって形成されている。図6(c)に示す例では、リブ34は、任意の方向(図示例では、縦方向)に延在するように、フィン20の表面に突起状に形成されている。
【0049】
図7に、凸凹部30としての切起こし部33が形成されたフィン20の一例を示す。図7は、凸凹部30としての切起こし部33が形成されたフィン20の概略図である。図7(a)は、フィン20の全体の概略構成を示しており、図7(b)は、図7(a)のA1部分を拡大して示しており、図7(c)は、図7(b)のX1-X1線に沿って切断した切起こし部33の切断面の構成を示しており、図7(d)は、図7(b)のY1-Y1線に沿って切断した切起こし部33の切断面の構成を示している。ここでは、後熱交換器16Rのフィン20を例にして説明する。
【0050】
図7(a)に示す例では、フィン20を貫通するように10本のパイプ40が配置されており、フィン20の各パイプ40間に切起こし部33が形成されている。図7(b)乃至図7(d)に示すように、切起こし部33は、例えば、複数の切り込みをフィン20の表面に所望の方向に沿って形成し、各切り込み間の部位を交互に異なる方向に折り曲げることによって形成されている。図7(b)に示す例では、切起こし部33は、各部位で突出量(折り曲げ高さ)が異なるように形成されている。
【0051】
熱交換器16(図3参照)は、表面に凸凹部30としての切起こし部33が形成されたフィン20を用いることにより、フィン20の表面と空気とが触れる面積を拡大させることができる。そのため、空気調和機1は、このような熱交換器16を用いることにより、熱交換器16の熱伝達率を向上させることができる。その結果、空気調和機1は、熱交換器16の小型化を実現することができる。
【0052】
なお、本実施形態では、熱交換器16は、凍結運転時にフィン20の表面に水を滞留させ易くして、霜(氷)の付着量を増加させることと、解凍運転時に解凍(溶融)された水を流れ易くすることとを両立された構成にすることを意図されている。これは、以下の理由によるものである。
【0053】
すなわち、空気調和機1の室内機2では、仮に、熱交換器16が最適な形状を維持していないと、熱交換器16に結露した水が送風ファン14に落下して、空気吹出口13から室内に水が飛散する現象(水飛び現象)が発生する。
【0054】
水飛び現象の発生を防止するために、例えば、仮に、熱交換器16が送風ファン14の上方に設置されない構成になっている条件と、ドレンパン17が熱交換器16に結露して落下する水を受ける構成になっている条件とを満たすように、空気調和機1の室内機2を設計した場合に、そのような室内機2は、設置壁面91の法線92(図4参照)の方向に大型化された構成になってしまう。この場合に、設置壁面91(図4参照)は、片持ち梁構造でその室内機2を支持する必要があるため、負荷がかかり易くなる。
【0055】
また、水飛び現象の発生を防止するために、例えば、仮に、熱交換器16が水を流し難い構造になるように、空気調和機1の室内機2を設計した場合に、そのような室内機2は、解凍運転時に解凍(溶融)された水が流れ難くなる。つまり、空気調和機1の室内機2は、単純に解凍運転時に解凍(溶融)された水を流れ易い構成にすると、霜(氷)の付着量を減少させてしまう。そのため、そのような室内機2では、熱交換器16の洗浄性能が低下する。また、そのような室内機2では、解凍(溶融)された水とともに塵埃がフィン20(図3参照)の表面に滞留するため、フィン20が錆びたり、雑菌(カビ類を含む)が増殖して、悪臭が発生する可能性がある。
【0056】
逆に、仮に、熱交換器16が水を流し易い構造になるように、空気調和機1の室内機2を設計した場合に、そのような室内機2は、凍結運転時にフィン20(図3参照)の表面に結露した水を滞留させることができずに直ぐに落下させてしまう。そのため、そのような室内機2では、凍結洗浄用の十分な量の水を確保することができないため、熱交換器16の洗浄性能が低下する。
【0057】
そこで、これらの現象の発生を抑制するために、前記したように、本実施形態では、熱交換器16は、凍結運転時にフィン20(図3参照)の表面に水を滞留させ易くして、霜(氷)の付着量を増加させることと、解凍運転時に解凍(溶融)された水を流れ易くすることとを両立された構成になっている。
【0058】
具体的には、例えば図7に示す例では、空気調和機1は、凸凹部30としての切起こし部33をフィン20に形成することによって、水の流れの抵抗を部分的に増大させている。そのため、空気調和機1は、凍結運転時にフィン20の表面に水を滞留させ易くして、霜(氷)の付着量を増加させることと、解凍運転時に解凍(溶融)された水を流れ易くすることとを両立させることができる。
【0059】
しかも、空気調和機1は、フィン20に形成された切起こし部33によって、フィン20の表面積が拡大されるため、霜(氷)の付着量を増加させることができる。そのため、空気調和機1は、この点でも、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0060】
<親水性処理の一例>
また、本実施形態では、凍結洗浄で流れ出る水の量を増加させるとともに、熱交換器16の抗菌性能や防臭性能を向上させるために、フィン20の表面に親水性処理が施されている(図8参照)。図8は、親水性処理の一例を示す概略図である。
【0061】
図8に示すように、本実施形態では、フィン20は、金属層21、下地処理層22、親水性処理層23を有する構成になっている。
金属層21は、例えば、アルミニウム合金によって構成される。
下地処理層22は、例えば、リン酸塩皮膜、クロメート皮膜等によって構成される。
親水性処理層23は、親水性樹脂皮膜によって構成される。
【0062】
親水性処理層23を構成する親水性樹脂皮膜は、抗菌作用や防臭作用を有する添加剤24が添加された樹脂材によって形成されている。樹脂材としては、例えば、エポキシ系樹脂材やシリコン系樹脂材を用いることができる。また、添加剤24としては、例えば、チタンとフッ素とジンクピリチオン(Zinc pyrithione)との中のいずれか1乃至複数種類を用いることができる。なお、ジンクピリチオンは、ピリジンの誘導体の一種であり、化学式C_(10)H_(8)N_(2)O_(2)S_(2)Znで表される有機亜鉛錯体である。
【0063】
以下、図9を参照して、親水性処理の作用効果につき説明する。図9は、親水性処理の作用の説明図である。図9(a)は、比較例に係るフィン120に付着した水滴wtの盛り上がり高さH120wtを示している。比較例に係るフィン120は、親水性処理が施されていないフィン(以下、「非親水性のフィン」と称する)である。一方、図9(b)は、本実施形態に係るフィン20に付着した水滴wtの盛り上がり高さH20wtを示している。本実施形態に係るフィン20は、親水性処理が施されたフィン(以下、「親水性のフィン」と称する)である。
【0064】
図9(a)に示すように、比較例に係る非親水性のフィン120に付着した水滴wtは、フィン120の表面に対する縁部分の盛り上がり角度α120が例えば40°よりも大きな値になっている。そして、比較例に係る非親水性のフィン120に付着した水滴wtは、比較的大きな盛り上がり高さH120wtで盛り上がった状態になっている。
【0065】
これに対して、図9(b)に示すように、本実施形態に係る親水性のフィン20に付着した水滴wtは、フィン20の表面に対する縁部分の角度α20が例えば40°以下の値になっている。そして、本実施形態に係る親水性のフィン20に付着した水滴wtは、比較例に係る非親水性のフィン120に付着した場合よりも横方向に広がっている。そのため、本実施形態に係る親水性のフィン20に付着した水滴wtは、比較例に係る非親水性のフィン120に付着した場合の盛り上がり高さH120wtよりも小さな盛り上がり高さH20wtしか盛り上がらない状態になっている。
【0066】
なお、フィン間隔L20は、盛り上がり高さH20wtと同等か又は若干短い値になっているとよい。これにより、空気調和機1は、凍結運転時に、熱交換器16のフィン20とフィン20との間で水を橋渡しさせた状態で凍結させることができるため、凍結させた水を落下させ難くすることができる。その結果、空気調和機1は、凍結洗浄時に霜(氷)の付着量を増加させること(つまり、流れ出る水の量を増加させること)ができる。
【0067】
空気調和機1は、このような表面に親水性処理が施された親水性のフィン20を熱交換器16に用いることにより、フィン20に滞留させる水の量を増加させることができる。そのため、空気調和機1は、霜(氷)の付着量を増加させることができる。これにより、空気調和機1は、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。しかも、空気調和機1は、フィン20の親水性処理層23に抗菌作用や防臭作用を有する添加剤24が含まれているため、熱交換器16の抗菌性能や防臭性能を向上させることができる。そのため、空気調和機1は、凍結洗浄のみで熱交換器16を効率よく洗浄することができる。このような空気調和機1は、熱交換器16の長期的なメンテナンスフリーを実現することができる。
なお、親水性処理は、熱交換器16に設けられたパイプ40の表面にも施すことができる。
【0068】
<空気調和機の主な特徴>
(1)空気調和機1は、熱交換器16の温度を下げる運転を行い、フィン20の表面に水を結露させてその水(結露水)を霜(氷)として凍結させる凍結動作を制御する制御部CL(図1参照)を有している。その制御部CL(図1参照)は、熱交換器16の温度を上げる運転を行い、霜(氷)を解凍(溶融)する解凍動作も制御する。また、空気調和機1は、表面に親水性処理が施された複数のフィン20(図3及び図8参照)を有している。
【0069】
空気調和機1は、熱交換器16の温度を下げる運転を行い、フィン20の表面に霜(氷)を付着させる。その後に、空気調和機1は、熱交換器16の温度を下げる運転を行い、霜(氷)を解凍(融解)して水に戻す。その際に、空気調和機1は、解凍(融解)された水が落下する勢いを利用して熱交換器16に付着した微細な塵埃を流し落とす。これにより、空気調和機1は、熱交換器16を洗浄する。
【0070】
このような空気調和機1は、フィン20の表面に親水性処理が施されているため、凍結洗浄を行うのに十分な量の水を確保することができる。そして、空気調和機1は、確保された十分な量の水が落下する勢いを利用して熱交換器16に付着した塵埃を流し落とすことにより、熱交換器16のメンテナンス性を向上させて、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0071】
なお、従来より、防臭のために、抗菌作用を有する成分を含む皮膜で臭いの基になる物体の表面を覆う技術はある。しかしながら、その技術は、凍結洗浄とは無関係な技術であり、凍結洗浄用の十分な量の水を確保するためのものではなかった。
【0072】
(2)図4に示すように、熱交換器16は、前方上部(前熱交換器の上部)16FUと、前方下部(前熱交換器の下部)16FLと、後方部(後熱交換器)16Rとで、取付角度が異なっている。設置壁面91の法線92に対する熱交換器16の前方上部16FUの取付角度α16FUと、前方下部16FLの取付角度α16FLと、後方部16Rの取付角度α16Rとは、それぞれ、50°±10°以内、85°±10°以内、50°±10°以内であるとよい。
【0073】
このような空気調和機1は、前方上部(前熱交換器の上部)16FUと後方部(後熱交換器)16Rの取付角度を40°以下にすることができる。これにより、空気調和機1は、熱交換器16のフィン20の表面に結露した水(結露水)の落下(水垂れ)を抑制して、フィン20の表面での水(結露水)の滞留時間を長くすることができる。その結果、空気調和機1は、霜(氷)の付着量を増加させることができる。これにより、空気調和機1は、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0074】
(3)図9に示すように、隣接するフィン20同士の間隔(つまり、フィン間隔L20(図9(b)参照))は、親水性処理が施されていない状態のフィン20の表面に結露する水(結露水)の盛り上がり高さH120wt(図9(a)参照)と比較した場合に、その水(結露水)の盛り上がり高さH120wtよりも短いとよい。
【0075】
このような空気調和機1は、凍結運転時に、熱交換器16のフィン20とフィン20との間で水を橋渡しさせた状態で凍結させることができるため、凍結させた水を落下させ難くすることができる。その結果、空気調和機1は、凍結洗浄時に霜(氷)の付着量を増加させること(つまり、流れ出る水の量を増加させること)ができる。
【0076】
(4)図5乃至図7に示すように、フィン20の表面には、水の流路として機能する凸凹部30が形成されている。凸凹部30は、バーリング孔(穴)31、立ち上がり加工された長孔状の溝32、切起こし部33、リブ34等によって形成されている。
【0077】
このような空気調和機1は、凸凹部30によって、フィン20の表面と空気とが触れる面積を拡大させることができる。そのため、空気調和機1は、熱交換器16の熱伝達率を向上させることができる。その結果、空気調和機1は、熱交換器16の小型化を実現することができる。
【0078】
また、空気調和機1は、凸凹部30によって、水の流れの抵抗を部分的に増大させることができる。そのため、空気調和機1は、凍結運転時にフィン20の表面に水を滞留させ易くして、霜(氷)の付着量を増加させることと、解凍運転時に解凍(溶融)された水を流れ易くすることとを両立させることができる。
【0079】
しかも、空気調和機1は、凸凹部30によって、フィン20の表面積が拡大されるため、霜(氷)の付着量を増加させることができる。そのため、空気調和機1は、この点でも、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0080】
(5)図5に示すように、凸凹部30がバーリング孔(穴)31で形成されている場合に、バーリング孔(穴)31の高さH31(図5(b)参照)は、隣接するフィン20同士の間隔(つまり、フィン間隔L20(図5(b)参照))と略同じになっているとよい。
【0081】
このような空気調和機1は、各フィン間隔L20が同じになるように、熱交換器16を組み立てることができるため、外気温度が同じであれば、各フィン20間で同じ霜(氷)の付着量を確保することができる。そのため、空気調和機1は、安定した霜(氷)の付着量を確保することができる。
【0082】
(6)図8に示すように、親水性処理は、親水性樹脂皮膜(親水性処理層23)でフィン20の表面を覆うことによって実現されている。親水性樹脂皮膜(親水性処理層23)は、抗菌作用や防臭作用を有する添加剤が添加された樹脂材によって形成されている。添加剤としては、例えば、チタンとフッ素とジンクピリチオンとの中のいずれか1乃至複数種類を用いることができる。親水性処理は、熱交換器16に設けられたパイプ40の表面にも施されているとよい。
【0083】
このような空気調和機1は、フィン20に滞留させる水の量を増加させることができる。そのため、空気調和機1は、霜(氷)の付着量を増加させることができる。これにより、空気調和機1は、凍結洗浄時に流れ出る水の量を増加させることができ、熱交換器16を効率よく洗浄することができる。
【0084】
しかも、空気調和機1は、フィン20の親水性処理層23に抗菌作用や防臭作用を有する添加剤24が含まれているため、熱交換器16の抗菌性能や防臭性能を向上させることができる。そのため、空気調和機1は、凍結洗浄のみで熱交換器16を効率よく洗浄することができる。このような空気調和機1は、熱交換器16の長期的なメンテナンスフリーを実現することができる。
【0085】
以上の通り、本実施形態に係る空気調和機1によれば、熱交換器16のメンテナンス性を向上させることができる。
【0086】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0087】
例えば、前記した実施形態では、本発明を室内機2に適用した構成を記載したが、本発明は、室外機3に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0088】
1 空気調和機
2 室内機
3 室外機
5 接続配管
6 空気吸込口
7 筐体
8 化粧枠
9 前面パネル
10 受信部
12 リモートコントローラ
13 空気吹出口
14 送風ファン
15 フィルタ
16 熱交換器
16F 前熱交換器
16FL 前熱交換器の下部(熱交換器の前方下部)
16FU 前熱交換器の上部(熱交換器の前方上部)
16R 後熱交換器(熱交換器の後方部)
17(17F,17R) ドレンパン
18 上下風向板
19 左右風向板
20 フィン
21 金属層(アルミニウム合金)
22 下地処理層(リン酸塩皮膜、クロメート皮膜等)
23 親水性処理層(親水性樹脂皮膜)
24 添加剤(チタン、フッ素、ジンクピリチオン等)
30 凸凹部
31 バーリング孔(穴)
32 立ち上がり加工された長孔状の溝
33 切起こし部
34 リブ
40 パイプ
91 設置壁面
92 設置壁面の法線
CL 制御部
H31 バーリング孔(穴)の高さ
H20wt 水の盛り上がり高さ
L20 フィン間隔
wt 水
α16FL 熱交換器の前方下部(前熱交換器の下部)の取付角度
α16FU 熱交換器の前方上部(前熱交換器の上部)の取付角度
α16R 熱交換器の後方部(後熱交換器)の取付角度
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記熱交換器に設けられた複数のフィンと、
前記熱交換器の温度を下げる運転を行い、前記フィンの表面に霜若しくは氷を付着させる凍結動作を制御する制御部と、を有し、
隣接する前記フィン同士の間隔は、1.5mm以下で、前記フィン同士の間に水を橋渡しした状態で凍結可能な隙間であり、
前記フィンは表面に親水性処理が施されており、
前記フィンには冷媒を流すパイプが挿通されているバーリング孔が形成されており、
前記バーリング孔は縁部が立ち上がり加工された孔であり、
前記縁部の高さは隣接する前記フィン同士の間隔と略同じであり、隣接する前記フィン間に位置する前記パイプは前記縁部で覆われ、
前記凍結動作時に前記フィンと前記フィンとの間で水を前記橋渡しさせた状態で凍結させる
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機において、
前記制御部は、前記熱交換器の温度を上げる運転を行い、前記霜若しくは氷を解凍する解凍動作を制御する
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の空気調和機において、
前記フィンの表面には、水の流路として機能する凸凹部が形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、前記バーリング孔によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項6】
請求項5に記載の空気調和機において、
前記バーリング孔の高さは、隣接する前記フィン同士の間隔と略同じになっている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項7】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、冷媒を流すパイプが挿入される立ち上がり加工された長孔状の溝によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項8】
請求項4に記載の空気調和機において、
前記凸凹部は、切起こし部又はリブによって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項9】
請求項1,2,4,5,6,7,8のいずれか一項に記載の空気調和機において、
前記親水性処理は、親水性樹脂皮膜で前記フィンの表面を覆う処理であり、
前記親水性樹脂皮膜は、抗菌作用を有する添加剤が添加された樹脂材によって形成されている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項10】
請求項9に記載の空気調和機において、
チタンとフッ素とジンクピリチオンとの中のいずれか1乃至複数種類が、前記添加剤として用いられている
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項11】
請求項9に記載の空気調和機において、
前記親水性処理は、前記熱交換器に設けられたパイプの表面にも施されている
ことを特徴とする空気調和機。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-05 
出願番号 特願2018-164519(P2018-164519)
審決分類 P 1 651・ 121- ZAA (F24F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 正浩  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 塚本 英隆
松下 聡
登録日 2018-10-12 
登録番号 特許第6417073号(P6417073)
権利者 日立ジョンソンコントロールズ空調株式会社
発明の名称 空気調和機  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  
代理人 特許業務法人磯野国際特許商標事務所  

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