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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1363167
異議申立番号 異議2019-700335  
総通号数 247 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-07-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-04-24 
確定日 2020-05-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6411335号発明「粉末の熱処理方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6411335号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第6411335号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨・審理範囲

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6411335号に係る出願(特願2015-516561号、以下「本願」ということがある。)は、平成25年6月6日(パリ条約に基づく優先権主張:平成24年6月12日、フランス(FR))の国際出願日に出願人ロディア オペレーションズによりされたものとみなされる特許出願であり、平成30年10月5日にロディア オペレーションズを特許権者として特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、平成30年10月24日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件特許異議の申立ての趣旨
本件特許につき、平成31年4月24日に特許異議申立人エボニック デグサ ゲーエムベーハー(以下「申立人」という。)により、「特許第6411335号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許を取り消すべきである。」という趣旨の本件特許異議の申立てがされた。(以下、当該申立てを「申立て」ということがある。)

3.審理すべき範囲
上記2.の申立ての趣旨からみて、特許第6411335号の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された発明についての特許を審理の対象とすべきものである。

4.以降の手続の経緯
以降の手続の経緯は以下のとおりである。

令和 元年 8月30日付け 取消理由通知
令和 元年12月 3日 訂正請求書・意見書
令和 元年12月23日付け 通知書(申立人あて)
(なお、上記通知書に対して、申立人からの応答はなかった。)

また、本件特許については、令和2年3月5日付けで移転登録申請(一般承継)がされ、本件特許権につき、ロディア オペレーションズからポリテクニル・エスアーエス(以下、「特許権者」という。)に、令和2年3月18日付けで権利の移転登録がされた。

第2 申立人が主張する取消理由
申立人が主張する取消理由はそれぞれ以下のとおりである。

申立人は、同人が提出した本件特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、具体的な取消理由として、概略、以下の(1)及び(2)が存するとしている。

(1)本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証に記載された発明と甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。(以下、「取消理由a」という。)
(2)本件特許に係る請求項1の記載では、同項に記載した事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でなく、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし13についても同様であるから、本件特許に係る請求項1ないし13の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)の規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由b」という。)

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2006-104470号公報
甲第2号証:特表2013-527269号公報(2013年6月27日公表)
甲第3号証:特表2007-534818号公報
甲第4号証:特開2009-226952号公報
(上記「甲第1号証」ないし「甲第4号証」を、以下、「甲1」ないし「甲4」と略すことがある。)

第3 当審が通知した取消理由の概要
当審は、本件特許第6411335号に対する上記第2に示した特許異議の申立てを審理し、上記令和元年8月30日付けで、概略、以下の取消理由を通知した。

1.本件特許の請求項1ないし13の記載は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由1」という。)
2.本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載は、経済産業省令に定めるところにより、本件特許の請求項1ないし13に記載した事項で特定される特許を受けようとする発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではないのであって、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。(以下「取消理由2」という。)

第4 令和元年12月3日付け訂正請求の適否

1.訂正請求の内容
上記令和元年12月3日にされた訂正請求は、本件特許に係る特許請求の範囲を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし13について訂正することを求めるものであり、以下の訂正事項からなるものである。(なお、下記の訂正事項に係る下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。)

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「前記(コ)ポリアミドが半結晶であり」を「前記(コ)ポリアミドがポリアミドPA6、またはポリアミドPA6を構成する少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含み、ここでポリアミドPA6を構成する前記モノマーはカプロラクタムもしくは対応するアミノ酸であり、
前記コポリアミドは、コポリアミドのモノマーとコモノマーとの混合物全体のモル数に対して少なくとも80モル%のモノマー含量でタイプ6のポリアミドを含み、」と訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に記載の「前記組成物は特には軟化点-2℃に等しい最高温度に到達することを特徴とする」から「特には」を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に記載の「処理前の前記組成物のTfr-Tirの値と比較して少なくとも15%、特には少なくとも25%、更には少なくとも30%減少したTfr-Tir」から「、特には少なくとも25%、更には少なくとも30%」を削除する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に記載の「またはそれらのブレンド物および(コ)ポリアミド、」を「またはそれらの溶融ブレンド」と訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8に記載の「PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA4.6、MXD6、PA、PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、PA13、6.6/6.T、PA6.6/6」から、「PA4.6、MXD6、PA、」及び「6.6/6.T、」を削除し、同じく特許請求の範囲の請求項8に記載の「またはこれらのブレンド物および(コ)ポリアミド」を「またはこれらの溶融ブレンド」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に記載の「前記組成物が、ポリアミドの総重量に対して、または熱可塑性ポリマーの総重量に対して、または組成物の総重量に対して、50?100重量%、特には60?95重量%の範囲のコポリアミド成分を含有する」から「ポリアミドの総重量に対して、または熱可塑性ポリマーの総重量に対して、または」及び「50?100重量%、特には」を削除する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に記載の「特には前記構成モノマーがカプロラクタムまたはその対応するアミノ酸である」から「特には」を削除する。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に記載の
「- PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA4.6もしくはMXD6などの」を「- PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA4.6もしくはMXDから選択される」と訂正し、
「ポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドもしくはポリアラミドなどの」を「ポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドもしくはポリアラミドから選択される」と訂正し、
「またはこれらのブレンド物および(コ)ポリアミド」を「またはこれらの溶融ブレンド」と訂正し、
「- 例えば、PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、もしくはPA13などの」を「- PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、もしくはPA13から選択される」と訂正し、
「またはこれらのブレンド物およびこれらの(コ)ポリアミド」を「またはこれらの溶融ブレンド」と訂正し、
「- 例えばコポリアミドPA6.6/6などの」を「- コポリアミドPA6.6/6から選択される」と訂正する。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に記載の
「ラクタムまたはアミノ酸である少なくとも1種のポリアミド構成モノマーと、下記式(I)で表されるコモノマーと
R(Am)w-(Ac)x(OH)y(DA)z (I)
(式中、Rは、任意選択的に1?20個の炭素原子を含み、任意選択的にN、O、またはPなどのヘテロ原子を含む、直鎖、分岐鎖、脂肪族、芳香族、または脂環式の炭化水素系ラジカルであり、
- wは0?4であり、
- xは0?4であり、
- yは0?4であり、
- zは0?4であり、
- w+x+y+zは1以上、特には1?5である)
の重合によって得られる少なくとも1種のコポリアミド」を
「- テレフタル酸とジアミンとの混合物4.7モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とジアミンとの混合物0.37モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物13モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- アジピン酸とイソホロンジアミンとの混合物5モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、及び
- セバシン酸とイソホロンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
から選択される少なくとも1種のコポリアミド」と訂正する。

2.検討
なお、本件訂正前の請求項2ないし13は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし13につき、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし13を「旧請求項1」ないし「旧請求項13」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし13をそれぞれ「新請求項1」ないし「新請求項13」という。

(1)訂正の目的要件について
上記各訂正事項による訂正の目的につき検討すると、訂正事項1に係る訂正では、旧請求項1における「半結晶」の「(コ)ポリアミド」につき、本件特許明細書の記載(【0031】等)に基づき、「ポリアミドPA6、またはポリアミドPA6を構成する少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含み、ここでポリアミドPA6を構成する前記モノマーはカプロラクタムもしくは対応するアミノ酸であり、」「前記コポリアミドは、コポリアミドのモノマーとコモノマーとの混合物全体のモル数に対して少なくとも80モル%のモノマー含量でタイプ6のポリアミドを含み、」と具体的に限定して実質的に減縮された新請求項1とされているから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、訂正事項2、訂正事項3、訂正事項6及び訂正事項7に係る各訂正では、それぞれ、旧請求項3、5、9及び11につき、いずれも多重規定表現という明瞭でない記載事項を単に正すと共に、特に、訂正事項6に係る訂正では、対応関係が不明瞭である「ポリアミド」と「熱可塑性ポリマー」の並列的表現につき「熱可塑性ポリマー」を削除することにより更に正して、それぞれ、新請求項3、5、9及び11としているから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
さらに、訂正事項4、訂正事項5及び訂正事項8に係る各訂正では、それぞれ、旧請求項7、8及び12における、対応関係が不明瞭である「ブレンド物」と「(コ)ポリアミド」の並列的表現につき、いずれも「(コ)ポリアミド」を削除した上で「ブレンド物」が「溶融ブレンド(物)」であることを新請求項7、8及び12において明らかにすると共に、特に訂正事項8に係る訂正では、旧請求項12における例示物「など」なる曖昧な表現につき、例示物から「選択される」と更に正して新請求項12としているものであるから、いずれの訂正についても明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、また、訂正事項5に係る訂正では、ポリアミドに関する並列的選択肢の一部を削除して旧請求項8に係る特許請求の範囲を実質的に減縮して新請求項8としているものとも認められ、訂正事項5に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものともいえる。
そして、訂正事項9に係る訂正では、旧請求項13において、「コポリアミド」につき一般式を用いて表現されていたものを、本件特許明細書の記載(【0047】等)に基づき、具体的に6種のコポリアミドに実質的に限定して新請求項13としているものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえる。
したがって、上記訂正事項1ないし9による各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。

(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、上記訂正事項1ないし9に係る各訂正は、いずれも、不明瞭な表現を単に正したものであるか、本件特許明細書の記載に基づき、特許請求の範囲が実質的に減縮したものであることが明らかであるから、上記訂正事項1ないし9に係る訂正は、新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし9に係る各訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。

(3)独立特許要件
本件特許異議の申立てにおいては、旧請求項1ないし13、すなわち全請求項につき申立ての対象であるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定の独立特許要件につき検討することを要しない。

(4)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1ないし13について訂正を認める。

第5 本件特許に係る請求項に記載された事項
上記訂正後の本件特許に係る請求項1ないし13には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
粉末形態の、(コ)ポリアミド組成物の熱処理方法であって、
- 加熱して、10?120分の範囲の時間、組成物を最も低い融点すなわちTfminより低い温度かつTfmin-30℃よりも高い温度にする工程と、
- 室温に冷却する工程と、
- 粉末形態で得られる前記組成物を回収する工程と、
を少なくとも含み、
前記回収した組成物が最初のTfr-Tir値すなわち処理前に対して減少したTfr-Tir値を有しており、
前記(コ)ポリアミドがポリアミドPA6、またはポリアミドPA6を構成する少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含み、ここでポリアミドPA6を構成する前記モノマーはカプロラクタムもしくは対応するアミノ酸であり、
前記コポリアミドは、コポリアミドのモノマーとコモノマーとの混合物全体のモル数に対して少なくとも80モル%のモノマー含量でタイプ6のポリアミドを含み、
前記組成物が前記組成物中に存在する(コ)ポリアミドの総重量に対して10重量%以下の総含量のPA11およびPA12を含有する、
方法。
【請求項2】
前記加熱工程中、前記組成物がTfmin-28℃?Tfmin-2℃の範囲の温度にされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末の形態である前記組成物が、その軟化点以上の温度にはされず、前記組成物は軟化点-2℃に等しい最高温度に到達することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(コ)ポリアミド(類)が、最も高い融点と最も低い融点との温度差が15℃以下の複数の融点を有することを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記得られた組成物が、処理前の前記組成物のTfr-Tirの値と比較して少なくとも15%減少したTfr-Tirを有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して50?100重量%の範囲の(コ)ポリアミド成分を含有することを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1種の直鎖脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしくは環状のジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族のジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸もしくはラクタムそれ自体の重縮合によって得られるポリアミド、またはそれらの溶融ブレンドを含有することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、PA13、PA6.6/6、またはこれらの溶融ブレンドから選択される少なくとも1種のポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、組成物の総重量に対して、60?95重量%の範囲のコポリアミド成分を含有することを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ポリアミドとして、または熱可塑性ポリマーとして、1種以上のコポリアミドのみを含有することを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも1種のポリアミド構成モノマーと、少なくとも1種以上のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含有し、前記構成モノマーがカプロラクタムまたはその対応するアミノ酸であることを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、
- PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA4.6もしくはMXD6から選択される、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしく環状のジアミンとの重縮合、または、ポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドもしくはポリアラミドから選択される、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合、またはこれらの溶融ブレンド、
- PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、もしくはPA13から選択される、少なくとも1種のアミノ酸またはラクタム(アミノ酸をラクタム環の加水分解開環によって生成させることができる)それ自体の重縮合、またはこれらの溶融ブレンド、
- コポリアミドPA6.6/6から選択される、二価酸と、ジアミンと、アミノ酸との重縮合、
- これらの混合物、
によって得られる(コ)ポリアミドから選択されるコポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、
- テレフタル酸とジアミンとの混合物4.7モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とジアミンとの混合物0.37モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物13モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- アジピン酸とイソホロンジアミンとの混合物5モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、及び
- セバシン酸とイソホロンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
から選択される少なくとも1種のコポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。」
(以下、上記請求項1ないし13に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明13」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

第6 当審の判断
当審は、
上記訂正後の本件の請求項1ないし13に係る発明についての特許については、上記当審が通知した理由及び各申立人が主張する理由は、いずれも理由がないものであり、いずれも維持すべきものである、と判断する。
以下、各取消理由につき検討・詳述する。

I.当審が通知した取消理由について

1.取消理由1について

(1)取消理由1の内容
取消理由1は、上記第3に示したとおり、概略、
「本件特許の請求項1ないし13は、特許法第36条第6項第1号又は第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。」
というものであって、より具体的には、
「(1)特許法第36条第6項第2号(いわゆる「クレームの明確性」)について
本件の請求項1ないし13には、以下の(a)ないし(f)に示すとおりの、一般的な技術用語ではないか、文意上の意味が不明である記載・表現が多数存在し、それらにつき明細書の発明の詳細な説明の記載に照らしても依然不明であって、それらの相互関係が不明であることにより、各請求項に記載された事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でない。」
「(a)「Tfmin」、「Tfr」及び「Tir」について」
「(b)「最も高い融点」と「最も低い融点」について」
「(c)「ブレンド物」と「(コ)ポリアミド」について」
「(d)「熱可塑性ポリマー」について」
「(e)「式(I)で表されるコモノマー」について」
「(f)多重規定表現及び例示規定表現について」
及び
「(2)特許法第36条第6項第1号(いわゆる「サポート要件」)について
・・(中略)・・
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、たとえその技術常識に照らしたとしても、本件の各請求項に記載した事項を具備する方法により製造された(コ)ポリアミド組成物であれば、上記解決課題を解決できるであろうと認識することはできない。
したがって、本件の各請求項に記載した事項で特定される発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではない(必要ならば知財高裁特別部平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。」
というものである。

(2)検討

ア.「特許法第36条第6項第2号(いわゆる「クレームの明確性」)」について
上記「(1)特許法第36条第6項第2号(いわゆる「クレームの明確性」)について」の欄で検討した事項につき、本件訂正を踏まえて再度検討すると、上記「(c)」ないし「(f)」の各点については、明瞭でない記載の釈明を目的とする上記本件訂正において明確化され、訂正後の各請求項の記載では、いわゆる明確性要件違反につき解消されたものと認められる。
また、上記「(a)」及び「(b)」の各点につき併せて検討するにあたり、特許権者が令和元年12月3日付けの意見書で主張するところに照らすと、PA6系(「タイプ6」)などの半結晶性ポリアミドにつき、複数種の結晶形の異なる結晶体が混在した多形体となっており、各結晶形に特有の結晶転移温度及び結晶融解温度(融点)が存在することを前提としたものであり、本件の請求項1に記載された各技術事項は、「(コ)ポリアミド組成物」に係る昇温速度を一定にしつつ測定するDSC分析測定などの結果において、同組成物に含有される当該複数種の結晶形のもののうち、最低のものの結晶転移温度が「Tir」及び結晶融解温度(融点)が「Tfmin」であり、最高のものの結晶転移温度が「Tfr」であるものと理解するのが自然である。
してみると、本件請求項1における「Tfmin」及び「Tfmin-30℃」なる熱処理時の温度条件は、熱処理前の粉末形態の(コ)ポリアミド組成物につき、昇温速度を一定にしつつ測定するDSC分析測定等を試行し、「Tfr-Tir」値を測定すると共に「Tfmin」を測定することにより決定できるものであるから、請求項1の記載では、同項記載の「熱処理方法」に係る発明が、明確でないとすることはできない。
したがって、当審が通知した「クレームの明確性」に係る取消理由はいずれも理由がない。

イ.「特許法第36条第6項第1号(いわゆる「サポート要件」)」について
(ア)本件発明の解決課題
本件発明の解決課題は、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(特に【0003】及び【0007】)からみて、
「レーザー焼結によるラピッドプロトタイピング」に使用する「機械特性の観点から、経時耐性(経時劣化)、耐熱性、耐光性、および/または耐薬品性の点で改良された特性も有する物品を得ることが可能な粉末」であり「高温で使用することができ、レーザー焼結に対して改良された特性を有する粉末」の製造方法の提供にあるものと認める。

(イ)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載について
本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例に係る部分以外の部分(【0001】ないし【0071】)につき検討すると、「Tfr-Tirとしても知られる最終結晶転移温度と最初の結晶転移温度との差の減少が、ポリアミド粉末の特性に対して、特には(コ)ポリアミド粉末の、特にはタイプ6または66の層の選択的溶融によって物品を製造するためのその使用に関して、影響を与えるパラメーターであることを発見した」として、「この差が減少すると、粉末の特性を向上させることができ、特には物品製造中の粉末床表面でのクラックおよび/または塊の発生を低減あるいは回避することができ、焼結適性および/または粉末の流動性を向上させることができ、またレーザー焼結によって得られる物品を特には表面品質の点で改良することもできる」(【0008】及び【0009】)ことが記載されているところ、これは、「タイプ6」などのポリアミド組成物粉末につき「Tfr-Tirとしても知られる最終結晶転移温度と最初の結晶転移温度との差の減少」されたことにより、その作用機序又は因果関係は不明であるが、「物品製造中の粉末床表面でのクラックおよび/または塊の発生を低減あるいは回避することができ、焼結適性および/または粉末の流動性を向上させる」ことができたことをいうものと認められる。
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の実施例に係る部分(【0072】ないし【0085】)につき検討すると、「タイプ6」なるポリアミドを使用する2つの実施例に係る記載が存するところ、そのいずれにおいても、本件の各請求項に記載された事項を具備する方法により製造された(コ)ポリアミド組成物粉末であれば「Tfr-Tirとしても知られる最終結晶転移温度と最初の結晶転移温度との差の減少」がされた粉末が得られたことが記載され、各粉末の溶融流動性が向上したことも記載されている。

(ウ)検討
なお、本件特許に係る出願の前に、本件の各請求項に記載された方法で製造された「Tfr-Tirとしても知られる最終結晶転移温度と最初の結晶転移温度との差」が減少したものであっても、上記解決課題が解決できない場合が存するであろうと当業者が認識することができるような技術常識が存するものとも認められない。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に接した当業者は、本件の各請求項に記載した事項を具備する方法により製造された(コ)ポリアミド組成物であれば、上記解決課題を解決できるであろうと認識することができるものと認められる。
したがって、本件の各請求項に記載した事項で特定される発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるということができる(必要ならば知財高裁特別部平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。

(エ)小括
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし13に記載された事項を具備する発明であれば、本件発明に係る上記(1)で示した課題を解決できると当業者が認識することができるように記載したものということができるから、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし13の記載では、同各項に記載した事項で特定される発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないということはできない。
以上のとおり、本件の請求項1及び同項を引用する請求項2ないし13の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものというべきであるから、当審が通知した「サポート要件」に係る取消理由は理由がない。

(3)取消理由1に係るまとめ
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由1についてはいずれも理由がない。

2.取消理由2について
上記1.(2)ア.でも説示したとおり、本件発明における「最も低い融点すなわちTfmin」は、PA6系(「タイプ6」)などの半結晶性ポリアミドにつき、複数種の結晶形の異なる結晶体が混在した多形体となっており、各結晶形に特有の結晶転移温度及び結晶融解温度(融点)が存在することを前提としたものであり、「(コ)ポリアミド組成物」に係る昇温速度を一定にしつつ測定するDSC分析測定などの結果において、同組成物に含有される当該複数種の結晶形のもののうち、最低のものの結晶融解温度(融点)が「Tfmin」であるものと認められる。
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、本件請求項1に記載された「組成物を最も低い融点すなわちTfminより低い温度かつTfmin-30℃よりも高い温度にする工程」につき、「(コ)ポリアミド組成物」に係る熱処理前のDSC分析測定などの試行により、どのような温度にするのか当業者は決定できるものであるから、当該発明の詳細な説明は、上記工程を含む請求項1の方法に係る発明を実施できる程度に記載したものということができる。
また、本件請求項1を引用する請求項2ないし13についても同様である。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件の請求項1ないし13に係る発明を当業者が実施できる程度に記載したものということができる。
よって、当審が通知した上記取消理由2は、理由がない。

3.当審が通知した取消理由に係る検討のまとめ
以上のとおり、当審が通知した取消理由1及び2は、いずれも理由がなく、当該理由により、本件の請求項1ないし13に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

II.申立人が主張する取消理由について
申立人が主張する取消理由は、上記第2で示したとおりであり、再掲すると、以下のとおりであるものと認められる。

取消理由a:本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、いずれも甲第1号証に記載された発明に基づいて、または甲第1号証に記載された発明と甲第2号証ないし甲第4号証に記載された事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は特許法第29条の規定に違反してされたものであって、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。
取消理由b:本件特許に係る請求項1の記載では、同項に記載した事項で特定される特許を受けようとする発明が明確でなく、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし13についても同様であるから、本件特許に係る請求項1ないし13の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)の規定する要件を満たしていないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

以下、事案に鑑み、取消理由b、取消理由aの順に、それぞれ詳述する。

1.取消理由bについて
申立人が主張する取消理由bは、申立書の記載(第31頁?第34頁「エ 本件特許の特許請求の範囲の記載について」の欄)からみて、下記(a)ないし(c)の3点を除き、上記I.1.(1)で示した当審が通知した取消理由1(1)と略同旨の各点を主張するものと認められる。
(a)請求項1に記載の「前記組成物が前記組成物中に存在する(コ)ポリアミドの総重量に対して10重量%以下の総含量のPA11およびPA12を含有する」との点につき、PA11およびPA12が含まれているのか、含まれていないのか不明である点
(b)請求項5に記載の「前記得られた組成物」との点につき、引用請求項に記載されていない点
(c)請求項6に記載の「前記組成物が、前記組成物の総重量に対して50?100重量%の範囲の(コ)ポリアミド成分を含有する」との点につき(コ)ポリアミド以外の成分が不明である点
しかるに、上記(a)の点につき検討すると、上記(a)の記載事項は、「PA11およびPA12」が存在する場合にはポリアミドの総重量に対して10重量%以下であり、0重量%でもよいことが規定されていることを意味する、すなわち「PA11およびPA12」が任意成分であることを意味するものであることが明らかであって、何ら技術的に意味が不明であるものではない。
また、上記(b)の点につき検討すると、請求項1には「粉末形態で得られる前記組成物を回収する工程」なる記載が存するところ、上記(b)で指摘する「前記得られた組成物」は、当該「得られる・・組成物」を意味するものと理解するのが自然であって、何ら技術的意味が不明であるものではない。
さらに、上記(c)の点につき本件特許明細書の記載(【0065】)を参酌しつつ検討すると、本件発明においては当業界で慣用の種々の添加剤又は化合物を添加使用できるのであるから、本件発明で得られる粉末形態の組成物は、(コ)ポリアミド(組成物)のみならず他の添加剤等を残部含有する態様をも包含するものと解することができ、何ら不明である点が存するものではない。
してみると、申立人が主張する取消理由bにつき、上記(a)ないし(c)の点は上記それぞれ説示した理由により、いずれも理由がなく、その余についても、上記I.1.(2)ア.で取消理由1(1)につき説示した理由と同一の理由により、理由がない。

2.取消理由aについて

(1)各甲号証の記載事項及び甲1に記載された発明
以下、取消理由aにつき検討するにあたり、申立人が提示した甲1ないし甲4につき記載された事項を確認した上で、甲1に記載された発明を認定する。

ア.甲1
甲1には、【特許請求の範囲】、【0001】ないし【0015】、【0020】、【0024】、【0025】、【0040】ないし【0045】、【0071】ないし【0077】、【0087】ないし【0094】及び【0107】ないし【0110】の事項がそれぞれ記載されている。
してみると、甲1には、上記記載事項(特に【0087】ないし【0094】の記載)からみて、
「いずれも、ラウロラクタムを主モノマーとし、カプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンをコモノマーとするコポリアミドからなる樹脂粉末の2種を1:1の比で混合してなる粉末状ポリアミド組成物を110℃で1時間以上の熱コンディショニングを行う粉末状ポリアミド組成物の製造方法。」
に係る発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。

イ.甲2
甲2には、【特許請求の範囲】、【0001】ないし【0006】、【0015】、【0016】、【0028】及び【0029】の事項がそれぞれ記載されており、要約すると、レーザー焼結法(ラピッドプロトタイピング)による積層造形に有用なAB型ポリアミドとAABB型ポリアミドとを溶液中で共沈させる粉末状ポリアミド組成物の製造方法が記載されているものといえる。

ウ.甲3
甲3には、【特許請求の範囲】、【0001】ないし【0003】、【0012】ないし【0016】及び【0036】の事項がそれぞれ記載されており、要約すると、積層造形法による成形に有用なXY型ポリアミドを溶液中で沈殿結晶化するポリマー粉末の製造方法が記載されているものといえる。

エ.甲4
甲4には、【特許請求の範囲】、【0001】ないし【0010】及び【0021】ないし【0023】の事項がそれぞれ記載されており、要約すると、粉末から形成される成形部材の形状忠実性が良好で、部材密度が高く、加工性が容易で収縮率が小さい積層造形法による成形に有用なPA11とPA10・12/10・12とからなるコポリアミドからなるポリマー粉末の製造方法が記載されているものといえる。

(2)検討

ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、その余の点は差し置き、少なくとも以下の2点で相違するものといえる。

相違点1:本件発明1では「加熱して、10?120分の範囲の時間、組成物を最も低い融点すなわちTfminより低い温度かつTfmin-30℃よりも高い温度にする工程」であるのに対して、甲1発明では「110℃で1時間以上の熱コンディショニングを行う」点
相違点2:「(コ)ポリアミド」につき、本件発明1では「前記(コ)ポリアミドがポリアミドPA6、またはポリアミドPA6を構成する少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含み、ここでポリアミドPA6を構成する前記モノマーはカプロラクタムもしくは対応するアミノ酸であり、
前記コポリアミドは、コポリアミドのモノマーとコモノマーとの混合物全体のモル数に対して少なくとも80モル%のモノマー含量でタイプ6のポリアミドを含」むのに対して、甲1発明では「ラウロラクタムを主モノマーとし、カプロラクタム、アジピン酸及びヘキサメチレンジアミンをコモノマーとするコポリアミド」である点

イ.検討
上記相違点1につき検討すると、甲1発明における「熱コンディショニング」は1時間以上、すなわち60分から120分の間で、本件発明1における「加熱して・・高い温度にする工程」の時間と重複しているが、温度の点でTfmin(甲1【表5】からみて180℃を下回ることはないものと認められる。)-30℃を大きく下回る110℃で行っており、また、他の甲号証の記載に照らしても、甲1発明の熱コンディショニングをより高い温度で行うべきことを想起し得る事項が存するものとも認められないから、上記相違点1につき、甲1発明において当業者が適宜なし得ることということはできない。
してみると、上記相違点2などの他の点につき検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて、たとえ他の甲号証に記載された事項を組み合わせたとしても、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。
なお、本件発明2ないし13はいずれも本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2ないし13についても、同様である。
したがって、本件発明1ないし13はいずれも、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明に基づいて、又は甲1に記載された発明に他の甲号証に記載された事項を組み合わせて、当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

(3)取消理由aについてのまとめ
以上のとおりであるから、取消理由aは理由がない。

3.申立人が主張する取消理由に係る検討のまとめ
以上のとおり、申立人が主張する取消理由は、いずれも理由がない。

III.当審の判断のまとめ
よって、本件の請求項1ないし13に係る発明についての特許について、申立人が主張する理由及び提示した証拠ではいずれも取り消すことができるものではなく、その他の取消理由についても発見できないから、いずれも維持すべきものである。

第7 むすび
以上のとおり、上記訂正請求における訂正については、適法であるから、訂正後の請求項〔1-13〕について、これを認容すべきものである。
そして、訂正後の請求項1ないし13に係る発明についての特許は、取り消すことはできず、維持すべきものである。
よって、上記結論のとおり、決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末形態の、(コ)ポリアミド組成物の熱処理方法であって、
- 加熱して、10?120分の範囲の時間、組成物を最も低い融点すなわちTfminより低い温度かつTfmin-30℃よりも高い温度にする工程と、
- 室温に冷却する工程と、
- 粉末形態で得られる前記組成物を回収する工程と、
を少なくとも含み、
前記回収した組成物が最初のTfr-Tir値すなわち処理前に対して減少したTfr-Tir値を有しており、
前記(コ)ポリアミドがポリアミドPA6、またはポリアミドPA6を構成する少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含み、ここでポリアミドPA6を構成する前記モノマーはカプロラクタムもしくは対応するアミノ酸であり、
前記コポリアミドは、コポリアミドのモノマーとコモノマーとの混合物全体のモル数に対して少なくとも80モル%のモノマー含量でタイプ6のポリアミドを含み、
前記組成物が前記組成物中に存在する(コ)ポリアミドの総重量に対して10重量%以下の総含量のPA11およびPA12を含有する、
方法。
【請求項2】
前記加熱工程中、前記組成物がTfmin-28℃?Tfmin-2℃の範囲の温度にされることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末の形態である前記組成物が、その軟化点以上の温度にはされず、前記組成物は軟化点-2℃に等しい最高温度に到達することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記(コ)ポリアミド(類)が、最も高い融点と最も低い融点との温度差が15℃以下の複数の融点を有することを特徴とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記得られた組成物が、処理前の前記組成物のTfr-Tirの値と比較して少なくとも15%減少したTfr-Tirを有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の総重量に対して50?100重量%の範囲の(コ)ポリアミド成分を含有することを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1種の直鎖脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしくは環状のジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族のジアミンとの重縮合によって得られるポリアミド、少なくとも1種のアミノ酸もしくはラクタムそれ自体の重縮合によって得られるポリアミド、またはそれらの溶融ブレンドを含有することを特徴とする、請求項1?6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物が、PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、PA13、PA6.6/6、またはこれらの溶融ブレンドから選択される少なくとも1種のポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物が、組成物の総重量に対して、60?95重量%の範囲のコポリアミド成分を含有することを特徴とする、請求項1?8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物が、ポリアミドとして、または熱可塑性ポリマーとして、1種以上のコポリアミドのみを含有することを特徴とする、請求項1?9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物が、少なくとも1種のポリアミド構成モノマーと、少なくとも1種以上のコモノマーとの重合によって得られるコポリアミドを含有し、前記構成モノマーがカプロラクタムまたはその対応するアミノ酸であることを特徴とする、請求項1?10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物が、
- PA6.6、PA6.10、PA6.12、PA10.10、PA12.12、PA4.6もしくはMXD6から選択される、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族もしく環状のジアミンとの重縮合、または、ポリテレフタルアミド、ポリイソフタルアミドもしくはポリアラミドから選択される、少なくとも1種の芳香族ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族ジアミンとの重縮合、またはこれらの溶融ブレンド、
- PA6、PA7、PA9、PA11、PA12、もしくはPA13から選択される少なくとも1種のアミノ酸またはラクタム(アミノ酸をラクタム環の加水分解開環によって生成させることができる)それ自体の重縮合、またはこれらの溶融ブレンド、
- コポリアミドPA6.6/6から選択される、二価酸と、ジアミンと、アミノ酸との重縮合、
- これらの混合物、
によって得られる(コ)ポリアミドから選択されるコポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、
- テレフタル酸とジアミンとの混合物4.7モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とジアミンとの混合物0.37モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの混合物13モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
- アジピン酸とイソホロンジアミンとの混合物5モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、及び
- セバシン酸とイソホロンジアミンとの混合物2モル%を含有する、タイプ6のコポリアミド、
から選択される少なくとも1種のコポリアミドを含有することを特徴とする、請求項1?12のいずれか1項に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-03-30 
出願番号 特願2015-516561(P2015-516561)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (C08G)
P 1 651・ 537- YAA (C08G)
P 1 651・ 121- YAA (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 大▲わき▼ 弘子
橋本 栄和
登録日 2018-10-05 
登録番号 特許第6411335号(P6411335)
権利者 ポリテクニル・エスアーエス
発明の名称 粉末の熱処理方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 バーナード 正子  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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