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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09F
管理番号 1363386
審判番号 不服2019-3072  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-05 
確定日 2020-06-16 
事件の表示 特願2017-536995「ピクセル構造およびその表示方法、表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月 7日国際公開、WO2016/050018、平成29年11月 9日国内公表、特表2017-533475〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年(平成26年)9月30日 中国)を国際出願日とする外国語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成27年11月20日 :翻訳文の提出
平成30年 7月12日付け:拒絶理由通知書
平成30年10月19日 :意見書、手続補正書の提出
(手続補正書の補正対象:特許請求の範囲)
平成30年10月25日付け:拒絶査定
(査定の謄本の送達日:平成30年11月 5日)
平成31年 3月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
(手続補正書の補正対象:特許請求の範囲)


第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月5日にされた補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1についての補正を含む。
本件補正前及び本件補正後の請求項1の記載は、以下のとおりである。下線は補正箇所を示すため、当合議体が付した。

(1)本件補正前
「 【請求項1】
順に交互に配列された第1ピクセル単位と第2ピクセル単位を含むピクセル構造であって、前記第1ピクセル単位は斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセルとを含み、前記第2ピクセル単位は斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセルとを含み、前記第1サブピクセルと前記第3サブピクセルは異なる基本色を備え、前記第2サブピクセルと前記第4サブピクセルは同一の基本色を備え、
前記基本色は3色の基本色を含み、
前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う第2ピクセル単位における4つの第3サブピクセルのうちの1つまたは複数の第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルの中心と4つの隣り合う第2ピクセル単位の4つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であり、
前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う前記第1ピクセル単位における4つの第1サブピクセルのうちの1つまたは複数の第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルの中心と4つの隣り合う第1ピクセル単位の4つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一である、ピクセル構造。」

(2)本件補正後
「 【請求項1】
順に交互に配列された第1ピクセル単位と第2ピクセル単位を含むピクセル構造であって、前記第1ピクセル単位は斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセルとを含み、前記第2ピクセル単位は斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセルとを含み、前記第1サブピクセルと前記第3サブピクセルは異なる基本色を備え、前記第2サブピクセルと前記第4サブピクセルは同一の基本色を備え、
前記基本色は3色の基本色を含み、
前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つの第2ピクセル単位における2つの第3サブピクセルのうちの少なくとも1つの第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルの中心と2つの隣り合う第2ピクセル単位の2つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であり、
前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つの前記第1ピクセル単位における2つの第1サブピクセルのうちの少なくとも1つの第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルの中心と列方向の2つの隣り合う第1ピクセル単位の2つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一である、ピクセル構造。」

2 補正の目的
(1)本件補正は、本件補正前の「前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う第2ピクセル単位における4つの第3サブピクセルのうちの1つまたは複数の第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」するという構成を、本件補正後の「前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つの第2ピクセル単位における2つの第3サブピクセルのうちの少なくとも1つの第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」するという構成に変更する補正事項(以下、「補正事項A」という。)を含むものである。
該補正事項Aは、「3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」する際に、その「基本色」として用いる「第3サブピクセル」について、本件補正前に「前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う第2ピクセル単位における4つの第3サブピクセルのうちの1つまたは複数の第3サブピクセル」としていたものを、本件補正後に「前記第1ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つの第2ピクセル単位における2つの第3サブピクセルのうちの少なくとも1つの第3サブピクセル」へ変更するもの(すなわち、「第3サブピクセル」の選択肢を、本件補正前の「前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つ」の「第3サブピクセル」から、本件補正後の「前記第1ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つ」の「第3サブピクセル」に限定するもの)であると認められる。
してみると、該補正事項Aは、「第1ピクセル単位」が「3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」する際に、その「基本色」として用いる「第3サブピクセル」の選択肢の数を4つから2つに減らすことにより、「第1ピクセル単位」に関して特定される範囲を限定するものである。

(2)本件補正は、本件補正前の「前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う前記第1ピクセル単位における4つの第1サブピクセルのうちの1つまたは複数の第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」するという構成を、本件補正後の「前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の列方向において隣り合う上側および下側の2つの前記第1ピクセル単位における2つの第1サブピクセルのうちの少なくとも1つの第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」するという構成に変更する補正事項(以下、「補正事項B」という。)を含むものである。
してみると、該補正事項Bは、上記補正事項Aと同様の補正内容となっているから、上記補正事項Aと同様に、「第2ピクセル単位」が「3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」する際に、その「基本色」として用いる「第1サブピクセル」の選択肢の数を4つから2つに減らすことにより、「第2ピクセル単位」に関して特定される範囲を限定するものである。

(3)本件補正は、本件補正前の「前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルの中心と4つの隣り合う第2ピクセル単位の4つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であ」るという構成を、本件補正後の「前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルの中心と2つの隣り合う第2ピクセル単位の2つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であ」るという構成に変更する補正事項(以下、「補正事項C」という。)を含むものである。
該補正事項Cは、「前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルの中心と」「隣り合う第2ピクセル単位の4つの第3サブピクセルの中心との間の距離」について、4つとも同一であったものを、2つが同一で、残りの2つは任意に変更するものである。
してみると、該補正事項Cは、「第1ピクセル単位」について、その「第1ピクセルの中心」と「隣り合う第2ピクセル単位の」「第3サブピクセルの中心との間の距離」に関する限定を省くものである。

(4)本件補正は、本件補正前の「前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルの中心と4つの隣り合う第1ピクセル単位の4つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一であ」るという構成を、本件補正後の「前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルの中心と列方向の2つの隣り合う第1ピクセル単位の2つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一であ」るという構成に変更する補正事項(以下、「補正事項D」という。)を含むものである。
該補正事項Dは、「前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルの中心と」「隣り合う第1ピクセル単位の4つの第1サブピクセルの中心との間の距離」について、4つとも同一であったものを、2つが同一で、残りの2つは任意に変更するものである。
してみると、該補正事項Dは、「第2ピクセル単位」について、その「第3ピクセルの中心」と「隣り合う第1ピクセル単位の」「第1サブピクセルの中心との間の距離」に関する限定を省くものである。

(5)補正事項A、Bは、「第1ピクセル単位」又は「第2ピクセル単位」が3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示する際に、その基本色として用いるサブピクセルの選択肢の数に限定を加える補正事項である。
一方、補正事項C、Dは、「第1ピクセル単位」又は「第2ピクセル単位」のサブピクセルの中心と、それに隣り合う「第2ピクセル単位」又は「第1ピクセル単位」のサブピクセルの中心との距離に関する限定を省く補正事項である。
そうすると、「第1ピクセル単位」は、補正事項Aによって基本色として用いるサブピクセルの選択肢の数という観点から限定が加えられる一方、これとは別観点、すなわち、サブピクセルの中心間の距離という観点からは限定が省かれている。したがって、補正事項A及び補正事項Cを併せて考慮しても、「第1ピクセル単位」についての特定事項が限定されるものではない。同様に、補正事項B及び補正事項Dを併せて考慮しても、「第2ピクセル単位」についての特定事項が限定されるものではない。

以上のとおりであるから、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは、明らかである。

3 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし23に係る発明は、平成30年10月19日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし23に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項(上記第2[理由]1(1))により特定されるとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1又は2に記載された発明、及び、引用文献4、5に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1:特開2013-187187号公報
引用文献2:米国特許出願公開第2014/0252321号明細書
引用文献4:国際公開第2006/115165号
引用文献5:特開2005-062220号公報

3 引用文献
(1)引用文献1
引用文献1には、次の事項が記載されている。(下線は、当合議体が付した。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光表示装置の画素配列構造に関し、より詳しくは、複数の画素が発光してイメージ(image)を表示する有機発光表示装置の画素配列構造に関する。」

「【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係る有機発光表示装置の画素配列構造を示す図面である。
図1に示すように、本発明が第1実施形態に係る有機発光表示装置の画素配列構造は、複数の第1画素100、複数の第2画素200、及び複数の第3画素300を含む。
【0018】
ここで、画素(pixel)とは、イメージを表示する最小単位を意味する。
第1画素100、第2画素200、及び第3画素300の間には、各画素を駆動するためのゲートライン、データライン、駆動電源ラインなどの電源ライン、及び各画素を定義するための画素定義膜などの絶縁層などを配置することができ、第1画素100、第2画素200、及び第3画素300それぞれに対応してアノード電極、有機発光層、及びカソード電極を含む有機発光素子(organic light emitting diode)を配置することができる。これら構成は従来に公知された技術であるため、説明の便宜上説明せず、各画素の形態は複数の電源ライン、画素定義膜またはアノード電極などによって定義されるが、これに限定されない。
【0019】
第1画素100は、隣接する第2画素200及び第3画素に比べて小さい面積を有しており、多角形の形態中四角形状を有している。第1画素100は複数であり、複数の第1画素100は互いに同一の四角形状を有している。複数の第1画素100は相互離隔して仮想の第1直線VL1上に配列されている。第1画素100は緑色の光を発光し、緑色の光を発光する有機発光層を含んでいる。
第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSの第1頂点P1に第2画素200が位置し、仮想の正四角形VSの第2頂点P2に第3画素300が位置している。
【0020】
第2画素200は第1画素100と離隔しており、仮想の正四角形VSの第1頂点P1に中心点が位置している。第2画素200は、隣接する第1画素100に比べてさらに大きい面積を有しており、多角形の形態中八角形状を有している。第2画素200は複数であり、複数の第2画素200は互いに同一の八角形の形態を有している。複数の第2画素200は第1画素100を介在して相互離隔している。第2画素200は青色の光を発光し、青色の光を発光する有機発光層を含むことができる。
【0021】
第3画素300は第1画素100及び第2画素200と離隔しており、仮想の正四角形VSの第1頂点P1と隣接する第2頂点P2に中心点が位置している。第3画素300は、隣接する第1画素100に比べてさらに大きい面積を有すると同時に、第2画素200と同一の面積を有しており、多角形の形態中八角形状を有している。第3画素300は複数であり、複数の第3画素300は互いに同一の八角形状を有している。複数の第3画素300は第1画素100を介在して相互離隔している。第3画素300は赤色の光を発光し、赤色の光を発光する有機発光層を含むことができる。
【0022】
複数の第3画素300及び複数の第2画素200それぞれは、仮想の第2直線VL2上で相互交互的に配列され、これによって第1頂点P1に中心点が位置する複数の第2画素200、及び第2頂点P2に中心点が位置する複数の第3画素300それぞれは、第1画素100を囲んでいる。
このように、第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSの第1頂点P1に第2画素200の中心点が位置し、第2頂点P2に第3画素300の中心点が位置し、第2画素200及び第3画素300が同一の面積を有することによって、第1画素100、第2画素200及び第3画素300それぞれの間の距離は同一の第1長さL1を有し、隣接する第1画素100間の距離は第1長さL1に比べて長い第2長さL2を有するようになる。」

引用文献1には以下の図が示されている。

上記事項から、引用文献1には以下のことが記載されていると認められる。

ア 有機発光表示装置の画素配列構造において、イメージを表示する最小単位を意味する、複数の第1画素100、複数の第2画素200、及び複数の第3画素300を含んでいること(【0017】、【0018】)。

イ 第1画素100は緑色の光を発光し、緑色の光を発光する有機発光層を含み、第2画素200は青色の光を発光し、青色の光を発光する有機発光層を含み、第3画素300は赤色の光を発光し、赤色の光を発光する有機発光層を含んでいること(【0019】-【0021】)。

ウ 複数の第1画素100は相互離隔して仮想の第1直線VL1上に配列されており、第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSの第1頂点P1に第2画素200が位置し、仮想の正四角形VSの第2頂点P2に第3画素300が位置しており、複数の第3画素300及び複数の第2画素200それぞれは、仮想の第2直線VL2上で相互交互的に配列され、これによって第1頂点P1に中心点が位置する複数の第2画素200、及び第2頂点P2に中心点が位置する複数の第3画素300それぞれは、第1画素100を囲んでいること(【0019】、【0022】)。

エ 上記ウを踏まえて【図1】を参照すると、【図1】には、第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSにおいて、第1頂点P1に位置する第2画素200と、正四角形の中心点に位置する第1画素100が、斜め方向に配置しており、第2頂点P2に位置する第3画素300と、前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100が、斜め方向に配置していることが示されているものと認められる。

オ 上記ウを踏まえて【図1】を参照すると、行方向及び列方向に隣接する第2画素200の中心点と第3画素300の中心点との間の距離は、第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSの辺(隣接する第2画素200の中心点が位置する第1頂点P1と第3画素300の中心点が位置する第2頂点P2とを結ぶ辺)の長さと等しく、正四角形VSを構成する4辺の長さは全て等しいことから、第2画素200又は第3画素300の中心点と、この中心点に対して行方向及び列方向に隣接する4つの第3画素300又は第2画素200の中心点との間の距離が同一であることが示されているものと認められる。

カ 画素配列構造に関し、1行目(仮想の第2直線VL2上)で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、2行目(仮想の第1直線VL1上)に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、3行目で相互交互的に配列される複数の第2画素200及び複数の第3画素300と、4行目に配列される複数の第1画素100は、第2画素200及び第3画素300の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、5行目で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、6行目に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されていること(【0019】、【0022】、【図1】)。

上記ア?カより、引用文献1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)を、本願発明に即して整理すれば次のとおりである。

「有機発光表示装置の画素配列構造において、イメージを表示する最小単位を意味する、複数の第1画素100、複数の第2画素200、及び複数の第3画素300を含んでおり(上記ア参照)、
第1画素100は緑色の光を発光し、緑色の光を発光する有機発光層を含み、第2画素200は青色の光を発光し、青色の光を発光する有機発光層を含み、第3画素300は赤色の光を発光し、赤色の光を発光する有機発光層を含んでおり(上記イ参照)、
第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSにおいて、第1頂点P1に位置する第2画素200と、正四角形の中心点に位置する第1画素100が、斜め方向に配置しており、第2頂点P2に位置する第3画素300と、前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100が、斜め方向に配置しており(上記エ参照)、
第2画素200又は第3画素300の中心点と、この中心点に対して行方向及び列方向に隣接する4つの第3画素300又は第2画素200の中心点との間の距離が同一であり(上記オ参照)、
画素配列構造に関し、1行目(仮想の第2直線VL2上)で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、2行目(仮想の第1直線VL1上)に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、3行目で相互交互的に配列される複数の第2画素200及び複数の第3画素300と、4行目に配列される複数の第1画素100は、第2画素200及び第3画素300の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、5行目で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、6行目に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されている(上記カ参照)、
有機発光表示装置の画素配列構造(上記ア参照)。」

(2)引用文献4
引用文献4には、次の事項が記載されている。(下線は、当合議体が付した。)

「 [0004] 一方、特許文献1で提案されているサブピクセルの配置である場合は、図2(a)に示すように、1画素が赤(R)、緑(G)、青(B)、及び、緑(G)の4つのサブピクセルにより構成されることとなり、図2(b)に示すように、1画素につき2つのピークを有する輝度分布となる。これにより、この1画素は、見かけ上、画素2つ分に相当するといえる。すなわち、1画素がR、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルから構成される場合は、1画素がR、G、及び、Bの3つのサブピクセル力も構成される場合と比較して、同じ画素数であっても見かけ上1.5倍の解像度を得ることができる。しかしながら、R、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルにより構成される画素により画像が表示される表示装置を実現するうえで、各色のサブピクセルのサイズが全て同じ場合は、1画素中のGのサブピクセル数がR又はBのサブピクセル数の2倍であるため、各色のサブピクセルを最大輝度で点灯させると、ホワイトバランスが、緑色側にシフトし、表示品位が低下する点で、未だ改善の余地があった。」

「[0005] 本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、見かけ上の解像度を向上させることができるサブピクセルの配列からなる画素、すなわち、R、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルを含む画素により画像が表示される場合に、白表示のホワイトバランスを改善し、良好な表示品位が得られる表示装置を提供することを目的とするものである。」

「[0029] (実施例1)
以下に、本発明の赤色(R)及び緑色(G)のサブピクセルペアと、青色(B)及び緑色(G)のサブピクセルペアとを含む画素(RGBG画素)により画像が構成される表示装置について説明する。なお、従来の赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の3つのサブピクセルから構成される画素を以下、RGB画素という。」

引用文献4には以下の図が示されている。

上記事項から、引用文献4には以下の技術的事項が記載されていると認められる。

「赤色(R)及び緑色(G)のサブピクセルペアと、青色(B)及び緑色(G)のサブピクセルペアとを含む画素(RGBG画素)により画像が構成される表示装置において、R、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルを含む画素により画像が表示される」という技術的事項。

4 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

(1)引用発明の「有機発光表示装置の画素配列構造」は、本願発明の「ピクセル構造」に相当する。

(2)「有機発光表示装置」においては、RGBからなる色を表示するための画素である、赤色の画素、緑色の画素、青色の画素が、サブピクセルと呼ばれるものであることは、技術常識である。
引用発明において、「緑色の光を発光し、緑色の光を発光する有機発光層を含」む「第1画素100」、「青色の光を発光し、青色の光を発光する有機発光層を含」む「第2画素200」、及び、「赤色の光を発光し、赤色の光を発光する有機発光層を含」む「第3画素300」は、「イメージを表示する最小単位を意味」し、さらに、上記技術常識より、サブピクセルを意味する。

(3)上記(2)より、引用発明の「第1画素100の中心点を正四角形の中心点とする仮想の正四角形VSにおいて、第1頂点P1に位置する第2画素200と、正四角形の中心点に位置する第1画素100が、斜め方向に配置しており、第2頂点P2に位置する第3画素300と、前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100が、斜め方向に配置して」いることにおいて、「斜め方向に配置して」いる「第1頂点P1に位置する第2画素200」と「正四角形の中心点に位置する第1画素100」は、本願発明の「斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセル」に相当し、「斜め方向に配置して」いる「第2頂点P2に位置する第3画素300」と「前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100」は、本願発明の「斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセル」に相当する。

(4)上記(2)より、引用発明において、「第1頂点P1に位置する第2画素200」は「青色」のサブピクセルであり、「第2頂点P2に位置する第3画素300」は「赤色」のサブピクセルであることから、このことは、本願発明の「前記第1サブピクセルと前記第3サブピクセルは異なる基本色を備え」ることに相当する。

(5)上記(2)より、引用発明において、「正四角形の中心点に位置する第1画素100」と「前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100」は「緑色」のサブピクセルであることから、このことは、本願発明の「前記第2サブピクセルと前記第4サブピクセルは同一の基本色を備え」ることに相当する。

(6)上記(2)より、引用発明において、「第1画素100」は「緑色」のサブピクセルであり、「第2画素200」は「青色」のサブピクセルであり、「第3画素300」は「赤色」のサブピクセルであり、引用発明において、「イメージを表示する最小単位を意味する、複数の第1画素100、複数の第2画素200、及び複数の第3画素300を含んで」いることは、「表示する」「イメージ」を構成する色が3色からなることを意味するから、このことは、本願発明の「前記基本色は3色の基本色を含」んでいることに相当する。

(7)上記(4)を踏まえると、引用発明において、「第2画素200又は第3画素300の中心点と、この中心点に対して行方向及び列方向に隣接する4つの第3画素300又は第2画素200の中心点との間の距離が同一であ」ることは、本願発明の「前記第1サブピクセルの中心と4つの隣り合う4つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であり、前記第3サブピクセルの中心と4つの隣り合う4つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一である」ことに相当する。

してみると、本願発明と引用発明との間における一致点及び相違点は下記の通りである。

[一致点]
「ピクセル構造であって、斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセルを含み、斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセルを含み、前記第1サブピクセルと前記第3サブピクセルは異なる基本色を備え、前記第2サブピクセルと前記第4サブピクセルは同一の基本色を備え、前記基本色は3色の基本色を含み、前記第1サブピクセルの中心と4つの隣り合う4つの第3サブピクセルの中心との間の距離が同一であり、前記第3サブピクセルの中心と4つの隣り合う4つの第1サブピクセルの中心との間の距離が同一である、ピクセル構造。」

[相違点]
本願発明は、「順に交互に配列された第1ピクセル単位と第2ピクセル単位を含」み、「前記第1ピクセル単位」が「斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセルとを含み、前記第2ピクセル単位」が「斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセルとを含み、」「前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う第2ピクセル単位における4つの第3サブピクセルのうちの1つまたは複数の第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、」「前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う前記第1ピクセル単位における4つの第1サブピクセルのうちの1つまたは複数の第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」するのに対し、引用発明は、ピクセル単位の存在やサブピクセル間の混色の状態は明らかでない点。

5 判断
上記相違点について検討する。

(1)有機発光表示装置に関する技術分野においては、RGBの3色を用いて画像を表示することが技術常識であるから、引用発明の「有機発光表示装置」は、RGBの3色を用いて画像を表示する表示装置であるものと認められる。

(2)引用発明は、以下に述べるとおり、4行単位での各色の画素(サブピクセル)の比率が、第1画素100(緑色のサブピクセル):第2画素200(青色のサブピクセル):第3画素300(赤色のサブピクセル)で、2:1:1となっているものと認められる。

ア 引用発明は、「画素配列構造に関し、1行目(仮想の第2直線VL2上)で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、2行目(仮想の第1直線VL1上)に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、3行目で相互交互的に配列される複数の第2画素200及び複数の第3画素300と、4行目に配列される複数の第1画素100は、第2画素200及び第3画素300の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されており、5行目で相互交互的に配列される複数の第3画素300及び複数の第2画素200と、6行目に配列される複数の第1画素100は、第3画素300及び第2画素200の画素1個ずつに対応して、その画素の斜め右下に第1画素100が1つずつ配置されている」という構成を有している。

イ 有機発光表示装置の画素配列構造においては、1つの赤色の画素(サブピクセル)、1つの緑色の画素(サブピクセル)、1つの青色の画素(サブピクセル)を1組としたピクセルの組を行方向および列方向に繰り返し配置することが一般的に行われていることである。
してみると、引用発明において、7行目以降の画素配列構造においても、上記イと同様の画素配列構造となっているもの、すなわち、7行目は3行目と同じ画素配列となり、8行目は4行目と同じ画素配列となっており、列方向には4行単位で繰り返し配置される画素配列構造となっているものと想定される。

(3)上記3 (2)で述べたように、引用文献4には、「赤色(R)及び緑色(G)のサブピクセルペアと、青色(B)及び緑色(G)のサブピクセルペアとを含む画素(RGBG画素)により画像が構成される表示装置において、R、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルを含む画素により画像が表示される」という技術的事項が記載されていると認められる。
該技術的事項において、「赤色(R)及び緑色(G)のサブピクセルペアと、青色(B)及び緑色(G)のサブピクセルペアとを含む画素(RGBG画素)により画像が構成される」ことは、RGBG画素単位での各色の画素(サブピクセル)の比率が、緑色の画素(サブピクセル):青色の画素(サブピクセル):赤色の画素(サブピクセル)で、2:1:1となっているものと認められる。
また、上記(1)で述べた技術常識より、該技術的事項において、「R、G、B、及び、Gの4つのサブピクセルを含む画素により画像が表示される」ことは、RGBの3色を用いて画像を表示することを意味する。

(4)上記(1)?(3)より、引用発明と引用文献4記載の技術的事項は共に、各色の画素(サブピクセル)の比率が、第1画素100(緑色のサブピクセル):第2画素200(青色のサブピクセル):第3画素300(赤色のサブピクセル)で、2:1:1となって配置される画素配列構造を有し、RGBの3色を用いて画像を表示する表示装置に関する技術分野で共通しているといえる。

(5)してみると、引用発明において、「斜め方向に配置して」いる、「青色」のサブピクセルである「第1頂点P1に位置する第2画素200」と、「緑色」のサブピクセルである「正四角形の中心点に位置する第1画素100」とを、引用文献4記載の技術的事項と同様にサブピクセルペア(以下、「サブピクセルペアA」という。)とし、「斜め方向に配置して」いる、「赤色」のサブピクセルである「第2頂点P2に位置する第3画素300」と、「緑色」のサブピクセルである「前記第1画素100に対して仮想の第1直線VL1が延びる方向に隣接する第1画素100」とを、引用文献4記載の技術的事項と同様にサブピクセルペア(以下、「サブピクセルペアB」という。)として、これら4つのサブピクセルを含む画素(RGBG画素)によりRGBの3色を用いた画像を表示するように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。

(6)上記(5)のようにサブピクセルペアA、Bを構成することで、本願発明の「前記第1ピクセル単位」が「斜線状に配列された第1サブピクセルと第2サブピクセルとを含み、前記第2ピクセル単位」が「斜線状に配列された第3サブピクセルと第4サブピクセルとを含」む構成が満たされるものと認められる。
また、引用発明において、このように構成したサブピクセルA、Bにおける4つのサブピクセルを含む画素(RGBG画素)によりRGBの3色を用いた画像を表示するように構成することは、これら4つのサブピクセルによりRGBの3色が混色した画像を表示することを意味し、このことは、本願発明の、「前記第1ピクセル単位は、前記第1ピクセル単位の前記第1サブピクセルおよび前記第2サブピクセルから、ならびに前記第1ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う第2ピクセル単位における4つの第3サブピクセルのうちの1つまたは複数の第3サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示し、」「前記第2ピクセル単位は、前記第2ピクセル単位の前記第3サブピクセルおよび前記第4サブピクセルから、ならびに前記第2ピクセル単位の右側、左側、上側、および下側の4つの隣り合う前記第1ピクセル単位における4つの第1サブピクセルのうちの1つまたは複数の第1サブピクセルからの3色の基本色を混色することによって3色の基本色を表示」することを意味する。

(7)引用発明は、「複数の第1画素100は相互離隔して仮想の第1直線VL1上に配列され、複数の第3画素300及び複数の第2画素200それぞれは、仮想の第2直線VL2上で相互交互的に配列され」るものであるから、引用発明において上記キのようにサブピクセルペアを構成することは、サブピクセルペアA、Bが、仮想の第1直線VL1と第2直線VL2が延びる方向に相互交互的に配列されることを意味し、このことは、本願発明の「順に交互に配列された第1ピクセル単位と第2ピクセル単位」に相当する。

(8)上記(5)?(7)より、引用発明において、引用文献4記載の技術的事項と同様にして、サブピクセルペアA、Bを構成し、サブピクセルペアA、Bを構成する4つのサブピクセルを含む画素(RGBG画素)によりRGBの3色を用いた画像を表示するように構成して、上記相違点に係る構成を設けることは、当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献4に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。


 
別掲
 
審理終結日 2020-01-14 
結審通知日 2020-01-20 
審決日 2020-01-31 
出願番号 特願2017-536995(P2017-536995)
審決分類 P 1 8・ 572- WZ (G09F)
P 1 8・ 121- WZ (G09F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 村川 雄一  
特許庁審判長 小林 紀史
特許庁審判官 梶田 真也
関根 裕
発明の名称 ピクセル構造およびその表示方法、表示装置  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  

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