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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1363468
審判番号 不服2019-3990  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-27 
確定日 2020-06-17 
事件の表示 特願2017-148887「太陽電池及びこれを含む太陽電池パネル」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 93167〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年8月1日(パリ条約による優先権主張2016年12月2日、韓国)の出願であって、平成30年7月4日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成30年10月10日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成30年12月6日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は平成30年12月11日に請求人に送達された。これに対して、平成31年3月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成31年3月27日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年3月27日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のように補正された(下線は補正箇所であり、当審で付与。以下同じ。)。

「太陽電池であって、
互いに交差する長軸及び短軸を有する半導体基板と、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域と、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域と、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を備えてなり、
前記第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え、
前記複数のパッド部が前記第2方向での両側に各々位置する第1外側パッド及び第2外側パッドを備えてなり、
前記第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記バスバーのピッチが0.1?0.35である、太陽電池。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「太陽電池であって、
互いに交差する長軸及び短軸を有する半導体基板と、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域と、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域と、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を備えてなり、
前記第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え、
前記複数のパッド部が前記第2方向での両側に各々位置する第1外側パッド及び第2外側パッドを備えてなり、
前記第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記バスバーのピッチが0.35以下である、太陽電池。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「バスバーのピッチ」について、本件補正事項のとおり、「0.1?」の限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献
ア 引用文献1
(ア) 原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2016-72637号公報(平成28年5月9日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池及びそれを含む太陽電池パネルに係り、配線材によって接続される太陽電池及びそれを含む太陽電池パネルに関する。」

b 「【0025】
図3を参照すると、本実施例に係る太陽電池150は、ベース領域10を含む半導体基板160と、半導体基板160に又は半導体基板160上に形成される導電型領域20,30と、導電型領域20,30に接続される電極42,44とを含む。ここで、導電型領域20,30は、第1導電型を有する第1導電型領域20、及び第2導電型を有する第2導電型領域30を含むことができ、電極42,44は、第1導電型領域20に接続される第1電極42、及び第2導電型領域30に接続される第2電極44を含むことができる。そして、太陽電池150は、第1パッシベーション膜22、反射防止膜24、第2パッシベーション膜32などをさらに含むことができる。これをより詳細に説明する。」

c 「【0082】
本実施例では、これを考慮して太陽電池150の電極42,44を形成し、これを、図9及び図10を参照して詳細に説明する。以下では、図9及び図10を参照して、第1電極42を基準として詳細に説明した後、第2電極44を説明する。
【0083】
図9は、図1の太陽電池パネルに含まれた太陽電池と、これに接続された配線材を示した平面図である。図10は、図1の太陽電池パネルに含まれた太陽電池を示した平面図である。
【0084】
図9及び図10を参照すると、本実施例において、太陽電池150(又は半導体基板160)は電極領域EAとエッジ領域PAとに区画することができる。このとき、太陽電池150(又は半導体基板160)は、一例として、フィンガーライン42aと平行な第1及び第2縁部161,162と、フィンガーライン42aに交差(一例として、直交または傾斜して交差)する第3及び第4縁部163,164とを備えることができる。第3及び第4縁部163,164は、それぞれ、第1及び第2縁部161,162と実質的に直交し、第3又は第4縁部163,164の大部分を占める中央部163a,164aと、中央部163a,164aから傾斜して第1及び第2縁部161,162にそれぞれ接続される傾斜部163b,163bとを含むことができる。これによって、一例として、平面視で、太陽電池150が略八角形の形状を有することができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、太陽電池150の平面形状が様々な形状を有してもよい。
【0085】
本実施例において、電極領域EAは、互いに平行に形成されるフィンガーライン42aが均一なピッチPで配置される領域であってもよい。そして、エッジ領域PAは、フィンガーライン42aが位置しないか、または電極領域EAのフィンガーライン42aの密度よりも低い密度で電極部が位置する領域であってもよい。本実施例では、エッジ領域PAに第1電極42の電極部が位置しない場合を例示した。
【0086】
本実施例において、電極領域EAは、バスバーライン42bまたは配線材142を基準として区画される複数個の電極領域EAを備えることができる。より具体的には、電極領域EAは、隣接する2つのバスバーライン42b又は配線材142の間に位置した第1電極領域EA1と、配線材142と太陽電池150の第3及び第4縁部163,164との間にそれぞれ位置した2つの第2電極領域EA2とを含むことができる。本実施例において、配線材142が太陽電池150の一面を基準として複数個(一例として、6個以上)備えられるので、第1電極領域EA1が複数個(即ち、配線材142の数より1つ少ない数)備えられ得る。
【0087】
このとき、第1電極領域EA1の幅W2が、第2電極領域EA2の幅W3よりも小さくてもよい。本実施例では、配線材142またはバスバーライン42bが多くの数で備えられる。したがって、第3又は第4縁部163,164の傾斜部163b,164bが第2電極領域EA2内に位置するようにするためには、第2電極領域EA2の幅W3を相対的に大きくしなければならず、これによって、バスバーライン42b又は配線材142が第3又は第4縁部163,164に位置しないようにすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、第1電極領域EA1の幅W2及び第2電極領域EA2の幅W3が様々な値を有することができる。
【0088】
本実施例において、バスバーライン42b及び配線材142のそれぞれが均一なピッチを持って配置されるので、複数の第1電極領域EA1の幅W2が互いに実質的に同一であり得る。これによって、キャリアが、均一な平均移動距離を有して移動できるので、キャリアの収集効率を向上させることができる。
【0089】
そして、エッジ領域PAは、配線材142が位置する部分に対応し、フィンガー電極42aの間に位置する第1エッジ領域PA1、及び第1エッジ領域PA1以外の部分であって、最外郭のフィンガー電極42aと半導体基板160の第1?第4縁部161,162,163,164との間で一定の距離だけ離隔する第2エッジ領域PA2を含むことができる。第1エッジ領域PA1は、配線材142が位置した部分において太陽電池150の縁部に隣接する部分にそれぞれ位置し得る。第1エッジ領域PA1は、配線材142が十分な結合力で第1電極42に付着され得るように、第1電極42の端部が太陽電池150の縁部から離隔して位置した領域である。
【0090】
第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができる。図では、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であることを例示したが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0091】
一例として、第1電極42のフィンガーライン42aは、35μm?120μmの幅W5を有することができる。そして、第1電極42のフィンガーライン42aは、1.2mm?2.8mmのピッチPを有することができ、フィンガーライン42aと交差する方向において、フィンガーライン42aの数が55個?130個であってもよい。このような幅W5及びピッチPは、容易な工程条件によって形成でき、光電変換によって生成された電流を効果的に収集しながらも、フィンガーライン42aによるシェーディング損失(shading loss)を最小化するように限定されたものである。そして、フィンガーライン42aの厚さが5μm?50μmであってもよい。このようなフィンガーライン42aの厚さは、工程時に容易に形成することができ、所望の比抵抗を有することができる範囲であり得る。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、フィンガーライン42aの幅、ピッチ、厚さなどは、工程条件の変化、太陽電池150の大きさ、フィンガーライン42aの構成物質などに応じて多様に変化可能である。
【0092】
このとき、配線材142の幅W1は、フィンガーライン42aのピッチPよりも小さく、フィンガーライン42aの幅よりも大きくすることができる。しかし、本発明がこれに限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0093】
そして、第1電極42は、電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができる。一例として、バスバーライン42bは、第1縁部161に隣接する部分から第2縁部に隣接する部分まで連続的に形成することができる。上述したように、バスバーライン42bは、隣接する太陽電池150との接続のための配線材142が位置する部分に対応するように位置し得る。このようなバスバーライン42bは、配線材142に一対一に対応するように備えることができる。これによって、本実施例において、太陽電池150の一面を基準として、バスバーライン42bの数が配線材142の数と同一に設けられ得る。本実施例において、バスバーライン42bは、配線材142と隣接する部分に位置し、フィンガーライン42aと直交又は傾斜する方向に形成され、配線材142に接続又は接触する電極部を意味し得る。
【0094】
バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができる。狭い幅のライン部421によって、太陽電池150に入射する光を遮断する面積を最小化することができ、広い幅のパッド部422によって、配線材142とバスバーライン42bとの付着力を向上させ、接触抵抗を低減することができる。そして、バスバーライン42bは、第1エッジ領域PA1に隣接するフィンガーライン42aの端部に接続されて、電極領域EAと第1エッジ領域PA1とを区画する延長部423を含むことができる。」

d 「【0149】
本発明者は、太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有することも見出した。図13は、配線材142の幅W1及び数を異ならせながら測定された太陽電池パネル100の出力を示した図である。250μm?500μmの幅W1を有する配線材142が6個?33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有することがわかる。このとき、配線材142の幅W1が増加すると、必要な配線材142の数を減少させることができることがわかる。」

e 図3から、半導体基板160の一面に第1導電型領域20が形成され、半導体基板160の他面に第2導電型領域30が形成されることが看て取れる。

f 図9、10から、パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、両側にそれぞれ位置するパッド部を備えていることが看て取れる。

g 図3は以下のとおりである。


h 図9は以下のとおりである。


i 図10は以下のとおりである。


j 図13は以下のとおりである。


(イ)上記記載及び図面から、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

引用発明
「配線材によって接続される太陽電池150であって、
ベース領域10を含む半導体基板160と、
半導体基板160に形成される導電型領域20、30と、導電型領域20、30は、第1導電型を有する第1導電型領域20、及び第2導電型を有する第2導電型領域30を含むことができ、
半導体基板160の一面に第1導電型領域20が形成され、半導体基板160の他面に第2導電型領域30が形成されており、
電極42、44は、第1導電型領域20に接続される第1電極42、及び第2導電型領域30に接続される第2電極44を含むことができ、
第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができ、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であり、
第1電極42は、電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができ、バスバーライン42bは、隣接する太陽電池150との接続のための配線材142が位置する部分に対応するように位置し得、
バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができ、
パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、両側にそれぞれ位置するパッド部を備えており、
太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有し、250μm?500μmの幅W1を有する配線材142が6個?33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有する、
太陽電池。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2014-33240号公報(平成26年2月20日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電システムにおいて、屋根等に複数枚並べて設置される太陽電池モジュールに関するものである。」

b 「【0020】
また、基板11の受光面には、入射光から変換された電気エネルギーを取り出す受光面側電極として、銀で形成された細線電極であるグリッド電極13と同じく銀で形成された所定幅の受光面バス電極(受光面リード接続電極)14とが形成され、それぞれ底面部において上記n型拡散層と電気的に接続している。受光面バス電極14は、太陽電池セル20の接続方向である第1の方向に沿って2本が平行に形成されている。グリッド電極13は、受光面バス電極14と直交する方向に多数本が細形に形成されている。グリッド電極13は、受光面にて発電した電力を無駄なく取り出すために、できるだけ細く、また受光面(表面)の全体にわたるように形成されている。太陽光が当たることによって、図3の受光面側がマイナス(-)電極、図4の裏面側がプラス(+)電極となる。受光面バス電極14は、受光面側リード線4が接続されて、グリッド電極13によって集められた電気エネルギーをさらに外部に取り出すために設けられている(図3)。なお、図3及び図5等において、受光面バス電極14は、受光面側リード線4より細く記載されているが、これは、受光面バス電極14と受光面側リード線4とが重なる様子をわかりやすく表現するためであり、実際には受光面バス電極14と受光面側リード線4とは同じ幅である。
【0021】
一方、基板11の裏面には、裏面のほぼ全面を覆うようにしてアルミニウムでなる裏面集電電極12が設けられている。また、基板11の裏面のグリッド電極13と対応した位置(グリッド電極13と基板11の厚さ方向に重なる位置)には、銀でなる裏面バス電極(裏面リード接続電極)15が太陽電池セル20の接続方向である第1の方向に延びて形成されている。裏面バス電極15は、裏面側リード線7が接続されて、裏面集電電極12によって集められた電気エネルギーをさらに外部に取り出すために設けられている(図4)。なお、図4及び図6等において、裏面バス電極15は、裏面側リード線7より太く記載されているが、これは、裏面バス電極15と裏面側リード線7とが重なる様子を表現するためであり、実際には裏面バス電極15と裏面側リード線7とは同じ幅である。
【0022】
基板11の裏面は、前面にわたって銀電極にて覆ってもよいがコストが嵩むため、上記のように特に裏面側リード線7を接続する箇所のみ銀製の裏面バス電極15が設けられている。なお、裏面バス電極15は、本実施の形態のように直線状なもののほかに、離散的にドット状(飛び石状)に設けられる場合もある。そして、本実施の形態においては、以上のようにして正方形に作製した太陽電池セルを受光面側リード線4及び裏面側リード線7にて相互に接続する前に、受光面バス電極14が延びる方向に二分割して、短辺長Sと長辺長Lとの比が1/2:1の長方形の太陽電池セル20を得る。
【0023】
分割された太陽電池セル20を得るにあたっては、まず、所定の工程を行うことにより、正方形の基板11に受光面バス電極14、グリッド電極13、裏面集電電極12、及び裏面バス電極15を形成して基礎となる太陽電池セル(第1の太陽電池セル)を作製する。このとき、これら各電極が形成される受光面電極領域と裏面電極領域は、分割する線に合わせて2つの領域に分けて形成しておく、そして、分割線に沿って切断することにより上記長方形の太陽電池セル20を得る。なお、本実施の形態の太陽電池セル20は、正方形に作製した太陽電池セルを二分割しているが、三分割、或いは四分割とさらに多数に分割(n分割)してもよい。n分割する場合には、受光面電極領域と裏面電極領域とをあらかじめn箇所に分けて形成しておく。」

c 図3、5から、グリッド電極13は太陽電池セル20の長軸と平行に形成され、受光面バス電極14は太陽電池セル20の短軸と平行に形成されていることが看て取れる。

d 図3は以下のとおりである。


e 図5は以下のとおりである。


ウ 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、特開2016-146373号公報(平成28年8月12日公開)には、図面とともに、次の記載がある。
a 「【技術分野】
【0001】
発明は、太陽電池モジュール及びその製造方法に関する。」

b 「【0036】
太陽電池セル11の平面形状は長方形である。太陽電池セル11における、後述する金属線23の配設方向(金属線23の軸方向:図1における左右方向)の長さは、フィンガー電極20、21の配設方向(フィンガー電極20、21の軸方向:図1における上下方向)の長さの1/2である。すなわち、太陽電池セル11の平面形状は、正方形を一辺方向に二等分割した形状である。通常、太陽電池セルの平面形状は正方形である。一方、上述のように、接続部材12の電気抵抗による電力損失は電流の二乗に比例する。従って、このように太陽電池セル11の面積を通常の半分にし、かつ数を倍にすることにより、出力電力を同一としたままで電流量を小さくすることができ、電力損失を理論上1/4に低減することができる。」

c 図1は以下のとおりである。


(3)対比
本件補正発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「太陽電池」、「半導体基板」、「第1導電型領域」、「第2導電型領域」、「第1電極」、「第2電極」は、それぞれ本件補正発明の「太陽電池」、「半導体基板」、「第1導電型領域」、「第2導電型領域」、「第1電極」、「第2電極」に相当する。

イ 引用発明において、「第1電極42は、電極領域EA内でそれぞれ一定の幅W5及びピッチPを持って互いに離隔する複数のフィンガーライン42aを含むことができ、フィンガーライン42aが互いに平行であり、太陽電池150のメイン縁部(特に、第1及び第2縁部)と平行であり」、「電極領域EA内でフィンガーライン42aと交差する方向に形成されてフィンガーライン42aを接続するバスバーライン42bを含むことができ」、「バスバーライン42bは、配線材142が接続される方向に沿って相対的に狭い幅を持って長く延びるライン部421、及びライン部421よりも広い幅を有して配線材142との接続面積を増加させるパッド部422を備えることができ」るから、引用発明の「フィンガーライン42a」の延びる方向、「フィンガーライン42aと交差する方向」は、それぞれ本件補正発明の「第1方向」、「第2方向」に相当し、本件補正発明の「第1電極は、前記長軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び前記短軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え」との構成と、「第1電極は、一方の軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び他方の軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え」る点で共通する。

ウ 引用発明において、「パッド部422はバスバーライン42bに沿って複数設けられ、両側にそれぞれ位置するパッド部を備えて」いるから、本件補正発明の「複数のパッド部が前記第2方向での両側に各々位置する第1外側パッド及び第2外側パッドを備えてなり」との構成を有している。

エ 上記ア?ウから、本件補正発明と引用発明は、 以下の点で一致し、相違点1?3で相違する。

<一致点>
「太陽電池であって、
半導体基板と、
前記半導体基板の一面に形成される第1導電型領域と、
前記半導体基板の他面に形成される第2導電型領域と、
前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、
前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を備えてなり、
前記第1電極は、一方の軸と平行する第1方向に位置し、互いに平行する複数のフィンガーライン及び他方の軸と平行する第2方向に位置する複数のパッド部を備えた複数のバスバーを備え、
前記複数のパッド部が前記第2方向での両側に各々位置する第1外側パッド及び第2外側パッドを備えてなる、
太陽電池。」

<相違点1>
「半導体基板」について、本件補正発明は「互いに交差する長軸及び短軸を有する」のに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点2>
「フィンガーライン」、「バスバー」について、本件補正発明は 「フィンガーライン」が「長軸と平行する第1方向に位置し」、「バスバー」が「短軸と平行する第2方向に位置する」のに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

<相違点3>
本件補正発明は、「第2方向での前記半導体基板の幅に対する前記第1方向での前記バスバーのピッチが0.1?0.35である」のに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(4)判断
ア 相違点1、2について
相違点1、2は、関連するため併せて検討する。
太陽電池の技術分野において、正方形状の太陽電池を二分割し、長軸、短軸を有する長方形状の太陽電池として用いること、及び長方形状の太陽電池を形成した際に、フィンガーライン(引用文献2の「グリッド電極13」、引用文献3の「フィンガー電極20、21」が相当。)を長軸と平行に配置し、バスバー(引用文献2の「受光面バス電極14」、引用文献3の「金属線23」の一部が相当。)を短軸と平行に配置することは、引用文献2、3に記載されているように周知である。なお、太陽電池が長方形状であるということは半導体基板も長方形状であることは明らかである。
そして、太陽電池の技術分野において、太陽電池の形状をどのように設定するかは当業者が適宜選択しうる事項であり、本件補正発明において、太陽電池の形状を正方形としなければいけない格別の事情もないことから、上記周知事項を、引用発明に適用し、相違点1、2に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。

イ 相違点3について
引用発明は、「太陽電池150の一面に位置する配線材142の数(又はバスバーライン42bの数)は、配線材142の幅W1と一定の関係を有し、250μm?500μmの幅W1を有する配線材142が6個?33個備えられると、太陽電池パネル100の出力が優れた値を有する」との構成を備えるものであるから、配線材142が6個?19個とする態様、つまりバスバーライン42bを6本?19本とする態様を含み得るものである。
そして、上記アで説示したように、引用発明に上記周知事項を適用した場合に、上記のようなバスバーライン42bを6本?19本とする態様を想定すると、バスバーライン42bのピッチは、太陽電池(半導体基板)の長軸の幅の1/7?1/20程度となり、長軸の幅は短軸の幅の2倍程度であるから、バスバーライン42bのピッチは、短軸の幅(本件補正発明の「第2方向での前記半導体基板の幅)の1/3.5(=0.29)?1/10(=0.1)程度となり、相違点3に係る数値限定を満たす程度の値となる。
したがって、相違点3に係る数値限定は、上記アで説示したように引用発明に上記周知事項を適用した場合に、引用発明において結果的に満たされる蓋然性がきわめて高いものであるといえるから、格別な数値範囲とはいえない。また、本件明細書の記載を見ても、格別の臨界的意義は認められない。
よって、上記数値限定は、当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。

ウ 作用効果について
相違点1?3に係る本件補正発明の効果について、引用発明及び周知事項から、当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

エ 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、
「う2) 特に、従来では、長軸及び短軸を具備しても半導体基板160の幅(W3)に対するバスバー42bのピッチが0.35を超過して電流が流れる経路を最適化できなかったのです。このことから、電流を減らすために短軸及び長軸を有する太陽電池150で実際にこれによる効果を充分に具現することが困難であったのです。これに対して、本願発明は上記固有の発明特定事項を採用してなることにより、半導体基板160の幅(W3)に対するバスバー42bのピッチを一定割合以下に限定して短軸及び長軸を有する太陽電池150での効率を効果的に向上することができたのです(〔0083〕)。
う3) 従って、以上の通り、本願発明が上記固有の発明特定事項、即ち、『ピッチの上限値を0.35以下』を採用することによる臨界的意義及びその技術的意義(効果)を有することが明らかに理解されるのです。」、「え2) 従って、以上の通り、本願発明が上記固有の発明特定事項、即ち、『ピッチの上限値を0.1以上』を採用することによる臨界的意義及びその技術的意義(効果)を有することが明らかに理解されるのです。」と主張している。
当該主張について検討すると、上記イで説示したように、「ピッチが0.1?0.35である」点は、引用発明におけるバスバーライン42bを6本?19本とする態様から想定され得る数値であるし、上記主張や本件明細書の記載を見ても、上記数値限定に格別の技術的意義や臨界的意義は認められず、このような数値限定を採用することは当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)小括
したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成31年3月27日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本件補正発明に対応する本件補正前の発明は、平成30年10月10日に提出された手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に頒布された引用文献1に記載された発明及び周知事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

3 進歩性について
(1)引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?3及びその記載事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「バスバーのピッチ」について、「0.1?」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-14 
結審通知日 2020-01-21 
審決日 2020-02-03 
出願番号 特願2017-148887(P2017-148887)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 幹島田 英昭嵯峨根 多美  
特許庁審判長 瀬川 勝久
特許庁審判官 野村 伸雄
井上 博之
発明の名称 太陽電池及びこれを含む太陽電池パネル  
代理人 小林 英了  
代理人 堅田 健史  

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