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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01F |
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管理番号 | 1363553 |
審判番号 | 不服2019-7753 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-06-11 |
確定日 | 2020-06-25 |
事件の表示 | 特願2015- 14704「コイル部品」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 8月 4日出願公開、特開2016-139742〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成27年1月28日の出願であって、平成30年10月15日付け拒絶理由通知に対する応答時、同年12月21日付けで手続補正がなされたが、平成31年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、令和1年6月11日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。 2.令和1年6月11日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 令和1年6月11日付けの手続補正を却下する。 [理 由] (1)補正後の本願発明 令和1年6月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 第1端面を含む第1端部と、第2端面を含む第2端部と、第1端部と第2端部の間に位置する中央部とを有するセラミック体と、 前記第1端面に設けられた第1電極と、 前記第2端面に設けられた第2電極と、 前記セラミック体の内部に、前記第1端部から前記第2端部に向かって螺旋形状に設けられ、一端が第1ビアホール導体を介して前記第1電極に接続され、他端が第2ビアホール導体を介して前記第2電極に接続されたコイル導体と、 を有し、 前記中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記第1端部と第2端部における単位長あたりの巻き数nより小さいことを特徴とするコイル部品。」 とあったものが、 「【請求項1】 第1端面を含む第1端部と、第2端面を含む第2端部と、第1端部と第2端部の間に位置する中央部とを有するセラミック体と、 前記第1端面全体に設けられた第1電極と、 前記第2端面全体に設けられた第2電極と、 前記セラミック体の内部に、前記第1端部から前記第2端部に向かって螺旋形状に設けられ、一端が第1ビアホール導体を介して前記第1電極に接続され、他端が第2ビアホール導体を介して前記第2電極に接続されたコイル導体と、 を有し、 前記中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記第1端部と第2端部における単位長あたりの巻き数nより小さいことを特徴とするコイル部品。」 と補正された(下線部は補正箇所を示す。)。 上記補正は、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「第1電極」、「第2電極」について、それぞれ第1端面「全体」、第2端面「全体」に設けられる旨の限定を付加するものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開2002-246231号公報(以下、「引用例」という。)には、「積層型インダクタ」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。 ア.「【請求項1】 絶縁体層を介して、1ターン以上の渦巻形状を有する複数のコイル導体パターンを積み重ねて構成した積層体を備え、 前記複数のコイル導体パターンは、電気的に直列に接続されたコイルを構成し、 前記コイルが、ターン数が異なる少なくとも2種類の前記コイル導体パターンにて構成されていること、 を特徴とする積層型インダクタ。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【請求項3】 前記絶縁体層の積み重ね方向に対して平行な方向において、ターン数の少ない前記コイル導体パターンを間にして、外側にターン数の多い前記コイル導体パターンを配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の積層型インダクタ。」 イ.「【0010】また、絶縁体層の積み重ね方向に対して平行な方向において、ターン数の少ないコイル導体パターンを間にして、外側にターン数の多いコイル導体パターンを配置したことを特徴とする。以上の構成により、コイル導体パターンのターン数は、積層体の中央部よりも上側及び下側に位置するもののターン数が多くなる。これにより、コイルの直流抵抗値分布が積層体の中央部で低く、上側及び下側で高くなる。従って、放熱効率の高い積層体の上部及び下部での発熱量が大きくなり、放熱効率の低い中央部での発熱量が抑えられる。」 ウ.「【0015】[第1実施形態、図1及び図2]図1に示すように、本第1実施形態に係る積層型インダクタ10は、1ターンの渦巻形状のコイル導体パターン11をそれぞれ表面に形成したセラミックシート21と、2ターンの渦巻形状のコイル導体パターン12をそれぞれ表面に形成したセラミックシート22と、引出用導体パターン13,14をそれぞれ表面に形成したセラミックシート23,24等にて構成されている。セラミックシート21?24は、磁性体セラミック粉末や誘電体セラミック粉末を結合剤等と一緒に混練したものをシート状にしたものである。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0020】以上のセラミックシート21?24は、図1に示すように、順に積み重ねられ、その上下にカバー用セラミックシート(図示せず)を配置した後、プレス圧着及び一体的に焼成され、図2に示すような積層体20とされる。積層体20の両端部には、端子電極1,2が設けられている。端子電極1,2は、Ag,Ag-Pd,Cu,Niなどの導電性ペーストを塗布後、焼付けたり、あるいは更に湿式めっきしたりすることによって形成される。端子電極1は引出用導体パターン13に電気的に接続され、端子電極2は引出用導体パターン14に電気的に接続されている。 ・・・・・(中 略)・・・・・ 【0023】また、積層型インダクタ10は、セラミックシート21?24の積み重ね方向に対して平行な方向において、積層体20の中央部よりも上側及び下側に位置するコイル導体パターンのターン数が多くなっているので、コイル16の直流抵抗値分布が積層体20の中央部で低く、上側及び下側で高くなる。従って、放熱効率の高い積層体20の上部及び下部での発熱量が大きくなり、放熱効率の低い中央部での発熱量が抑えられる。これにより、インダクタ10全体での放熱効率を高くすることができる。」 ・上記引用例に記載された「積層型インダクタ」は、上記「ア.」の【請求項1】、「ウ.」の記載事項、及び図1、図2によれば、絶縁体層(セラミックシート)を介して1ターン以上の渦巻形状を有する複数のコイル導体パターン11,12と、引出用導体パターン13,14を積み重ねて構成した積層体20を備え、複数のコイル導体パターン11,12は、電気的に直列に接続されたコイルを構成し、当該コイルが、ターン数が異なる少なくとも2種類のコイル導体パターン11,12にて構成されてなるものである。 ・上記「ア.」の【請求項3】、「イ.」、「ウ.」の段落【0023】の記載事項、及び図1、図2によれば、絶縁体層の積み重ね方向に対して平行な方向において、ターン数の少ないコイル導体パターンを間にして、外側(上側及び下側)にターン数の多いコイル導体パターンを配置してなるものである。 ・上記「ウ.」の段落【0020】の記載事項、及び図1、図2によれば、積層体20の両端部(絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して直交する方向の両端部)には、それぞれ端子電極1,端子電極2が設けられ、端子電極1は引出用導体パターン13に電気的に接続され、端子電極2は引出用導体パターン14に電気的に接続されてなるものである。ここで、図2から明らかなように、端子電極1,端子電極2は、それぞれ積層体20の両端部における各端面の全体に設けられている。 したがって、図1及び図2に示される第1実施形態に係るものに着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「絶縁体層(セラミックシート)を介して1ターン以上の渦巻形状を有する複数のコイル導体パターン11,12と、引出用導体パターン13,14を積み重ねて構成した積層体を備え、 前記積層体の両端部(絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して直交する方向の両端部)の各端面全体には、それぞれ端子電極1,端子電極2が設けられ、端子電極1は引出用導体パターン13に電気的に接続され、端子電極2は引出用導体パターン14に電気的に接続されてなり、 前記複数のコイル導体パターン11,12は、電気的に直列に接続されたコイルを構成し、 前記コイルが、ターン数が異なる少なくとも2種類のコイル導体パターン11,12にて構成され、前記絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して平行な方向において、ターン数の少ないコイル導体パターンを間にして、外側(上側及び下側)にターン数の多いコイル導体パターンを配置してなる積層型インダクタ。」 (3)対比 そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 ア.引用発明における「絶縁体層(セラミックシート)を介して1ターン以上の渦巻形状を有する複数のコイル導体パターン11,12と、引出用導体パターン13,14を積み重ねて構成した積層体を備え」によれば、 「積層体」は、絶縁体層(セラミックシート)を積み重ねて構成したものであるから、本願補正発明でいう「セラミック体」に相当する。そして、引用発明における「積層体」は、絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して直交する方向において、本願補正発明でいう「セラミック体」と同様に、対向する2つの端面をそれぞれ含む2つの端部と、両端部の間に位置する中央部とを有することは自明なことである。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「第1端面を含む第1端部と、第2端面を含む第2端部と、第1端部と第2端部の間に位置する中央部とを有するセラミック体と」を有するものである点で一致する。 イ.引用発明における「前記積層体の両端部(絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して直交する方向の両端部)の各端面全体には、それぞれ端子電極1,端子電極2が設けられ、・・」によれば、 「端子電極1」、「端子電極2」は、各端面全体に設けられなるものであるから、それぞれ本願補正発明でいう「第1電極」、「第2電極」に相当する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記第1端面全体に設けられた第1電極と、前記第2端面全体に設けられた第2電極と」を有するものである点で一致する。 ウ.引用発明における「絶縁体層(セラミックシート)を介して1ターン以上の渦巻形状を有する複数のコイル導体パターン11,12と、引出用導体パターン13,14を積み重ねて構成した積層体を備え、前記積層体の両端部(絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して直交する方向の両端部)の各端面全体には、それぞれ端子電極1,端子電極2が設けられ、端子電極1は引出用導体パターン13に電気的に接続され、端子電極2は引出用導体パターン14に電気的に接続されてなり、前記複数のコイル導体パターン11,12は、電気的に直列に接続されたコイルを構成し」によれば、 「コイル」は、積層体の内部に設けられ、全体として、積層体の積み重ね方向(積層体の上下方向)に向かって螺旋形状に形成されているといえるものであるから、本願補正発明でいう「コイル導体」に相当する。 また、引用発明における「引出用導体パターン13」及び「引出用導体パターン14」と、本願補正発明でいう「第1ピアホール」及び「第2ビアホール」とは、それぞれ「第1導体」及び「第2導体」ということができるものである点で共通する。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記セラミック体の内部に、所定の方向に向かって螺旋形状に設けられ、一端が第1導体を介して前記第1電極に接続され、他端が第2導体を介して前記第2電極に接続されたコイル導体と」である点で共通する。 ただし、コイル導体における螺旋形状の方向、すなわちコイル軸の方向が、本願補正発明では、「前記第1端部から前記第2端部」に向かう方向である旨特定するのに対し、引用発明では、積層体の上側から下側に向かう方向であり、本願補正発明の方向とは直交する方向である点で相違している。また、第1導体及び第2導体が、本願補正発明では、「ビアホール」導体であるのに対し、引用発明では、コイル導体パターンと平行に形成された引出用導体パターンであり、「ビアホール」導体ではない点で相違している。 エ.引用発明における「前記コイルが、ターン数が異なる少なくとも2種類のコイル導体パターン11,12にて構成され、前記絶縁体層(セラミックシート)の積み重ね方向に対して平行な方向において、ターン数の少ないコイル導体パターンを間にして、外側(上側及び下側)にターン数の多いコイル導体パターンを配置してなる・・」によれば、 ターン数の少ないコイル導体パターンを間にして、外側(上側及び下側)にターン数の多いコイル導体パターンを配置してなるものであるから、コイルの中央部における単位長あたりの巻き数が、当該コイルの両端部における単位長あたりの巻き数より小さいといえるものである。 したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記コイル導体の中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記コイル導体の両端部における単位長あたりの巻き数nより小さい」点で共通するということがでる。 ただし、本願補正発明では、単位長あたりの巻き数nであるコイル導体の両端部がセラミック体の第1端部と第2端部に位置するものであるのに対し、引用発明では、積層体の上側及び下側に位置するものである点で相違している。 ここで、かかる相違点と上記「ウ.」に記載した相違点の一部とをまとめると、コイル導体における螺旋形状の方向、すなわちコイル軸の方向が、本願補正発明では、「前記第1端部から前記第2端部」に向かう方向である旨特定し、その結果、単位長あたりの巻き数nであるコイル導体の両端部が、セラミック体の第1端部と第2端部に位置するものであるのに対し、引用発明では、積層体の上側から下側に向かう方向であり、本願補正発明の方向とは直交する方向であって、コイルの両端部が積層体の上側と下側に位置するものである点で相違するということができる。 オ.そして、引用発明における「積層型インダクタ」は、本願補正発明でいう「コイル部品」に相当するものである。 よって、本願補正発明と引用発明とは、 「第1端面を含む第1端部と、第2端面を含む第2端部と、第1端部と第2端部の間に位置する中央部とを有するセラミック体と、 前記第1端面全体に設けられた第1電極と、 前記第2端面全体に設けられた第2電極と、 前記セラミック体の内部に、所定の方向に向かって螺旋形状に設けられ、一端が第1導体を介して前記第1電極に接続され、他端が第2導体を介して前記第2電極に接続されたコイル導体と、 を有し、 前記コイル導体の中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記コイル導体の両端部における前記コイル導体の中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記コイル導体の両端部における単位長あたりの巻き数nより小さいことをより小さいことを特徴とするコイル部品。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] コイル導体における螺旋形状の方向、すなわちコイル軸の方向が、本願補正発明では、「前記第1端部から前記第2端部」に向かう方向である旨特定し、その結果、単位長あたりの巻き数nであるコイル導体の両端部が、セラミック体の第1端部と第2端部に位置するものであるのに対し、引用発明では、積層体の上側から下側に向かう方向であり、本願補正発明の方向とは直交する方向であって、コイルの両端部が積層体の上側と下側に位置するものである点。 [相違点2] 第1導体及び第2導体が、本願補正発明では、「ビアホール」導体であるのに対し、引用発明では、コイル導体パターンと平行に形成された引出用導体パターンであり、「ビアホール」導体ではない点。 (4)判断 上記[相違点1]及び[相違点2]について検討する。 コイル軸の方向が外部電極が設けられた一方の端部から他方の端部に向かう方向と直交する方向であり、外部電極とコイル端との接続を引出用導体パターンで行うようにした引用発明の構成(以下、「前者の構成」という。)は、例えば国際公開第2010/109936号(図1、図2を参照)や特開平8-55726号公報(段落【0002】?【0004】、図6?8を参照)に記載されているように周知のものである。また、コイル軸の方向を一方の外部電極が設けられた端部から他方の外部電極が設けられた端部に向かう方向とするとともに、一方の外部電極とコイルの一端との接続及び他方の外部電極とコイルの他端との接続をそれぞれビアホール(スルーホール)導体で行うようにした構成(以下、「後者の構成」という。)も、例えば原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2011/145517号(段落[0012]?[0015]、図1、図2を参照)、さらには上記国際公開第2010/109936号(段落[0048]?[0050]、図6、図7を参照)、上記特開平8-55726号公報(【請求項1】、段落【0017】?【0020】、図1?5を参照)、特開2000-323327号公報(【請求項1】、図1、図2)に記載されているように周知のものである。してみれば、前者の構成も後者の構成も当業者が適宜とり得る構成であり、引用発明において、前者の構成に代えて後者の構成を採用し、相違点1及び2に係る構成とすることも当業者であれば容易になし得ることである。 そして、引用例の段落【0010】及び【0023】には「放熱効率の高い積層体20の上部及び下部での発熱量が大きくなり、放熱効率の低い中央部での発熱量が抑えられる。これにより、インダクタ10全体での放熱効率を高くすることができる。」と記載されているように、積層体20の中央部よりも外周部の方が放熱効率が高く、そして、外周部の中でも外部電極が形成された部分は一層放熱効率が高くなるということは当業者にとって自明といえる技術事項であることを踏まえると、上記各相違点を総合的に判断しても本願補正発明が奏する効果は、引用発明及び周知の技術事項から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。 この点について、請求人は審判請求書において、「引出用導体パターンを設けることの技術的意義が明らかにされている引出用導体パターンを含む引用発明1において、引出用導体パターンに代えてビアホール導体を適用することが容易か否かを判断する際には、引用発明1におけるコイル導体パターンの構成及びそれ自身の作用効果は考慮されるべきです。そして、コイル導体パターンと平行に形成された引出用導体パターンを用いた構成及びそのような引出用導体パターンを用いたことによる作用効果を考慮すれば、引出用導体パターンを含む引用発明1に、引用文献3及び4に開示された構成を適用することには阻害理由があります。」などと主張している。 しかしながら、引用例に記載された発明は、従来の積層型インダクタが、多ターンのコイル導体を使用しているため、1ターンごとのインダクタンス調整ができず、インダクタンスの中心値合わせができないという課題(段落【0003】)を解決するために、ターン数が異なる少なくとも2種類のコイル導体パターン(例えば1ターンと2ターンのコイル導体パターン)を用いるという手段を採用したものであり(【請求項1】、段落【0008】など参照)、段落【0021】に記載された「コイル16のインダクタンス値の微調整を、従来と同様に、引出用導体パターン13,14の形状を変えることにより行っている。」という記載は、この記載における「従来と同様に」という文言、及び、この記載の直後の「ただし、この引出用導体パターン13,14は、本発明の請求項1でいうところの、1ターン以上の渦巻形状を有するコイル導体パターンに相当しないことはいうまでもない。」という記載も踏まえると、引出用導体パターン13,14の形状を変えることによってインダクタンス値の微調整を行うことが前記課題を解決するための必須の事項というわけではないことは明らかである。 したがって、引用発明に対して、上記後者の構成を適用することに阻害理由があるとは認められず、請求人の上記主張を採用することはできない。 (5)本件補正についてのむすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 令和1年6月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成30年12月21日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1端面を含む第1端部と、第2端面を含む第2端部と、第1端部と第2端部の間に位置する中央部とを有するセラミック体と、 前記第1端面に設けられた第1電極と、 前記第2端面に設けられた第2電極と、 前記セラミック体の内部に、前記第1端部から前記第2端部に向かって螺旋形状に設けられ、一端が第1ビアホール導体を介して前記第1電極に接続され、他端が第2ビアホール導体を介して前記第2電極に接続されたコイル導体と、 を有し、 前記中央部における単位長あたりの巻き数mが、前記第1端部と第2端部における単位長あたりの巻き数nより小さいことを特徴とするコイル部品。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「第1電極」、「第2電極」について、それぞれ第1端面「全体」、第2端面「全体」に設けられる旨の限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-04-15 |
結審通知日 | 2020-04-21 |
審決日 | 2020-05-07 |
出願番号 | 特願2015-14704(P2015-14704) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01F)
P 1 8・ 575- Z (H01F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木下 直哉、堀 拓也 |
特許庁審判長 |
酒井 朋広 |
特許庁審判官 |
井上 信一 須原 宏光 |
発明の名称 | コイル部品 |
代理人 | 吉田 環 |
代理人 | 山尾 憲人 |