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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R
管理番号 1363608
審判番号 不服2019-13784  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-16 
確定日 2020-07-14 
事件の表示 特願2018-506761号「車両システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月28日国際公開、WO2017/163488号、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年(平成28年)11月28日(優先権主張 2016年3月25日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月28日付けで拒絶理由が通知され、平成31年3月6日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年7月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、令和1年10月16日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、令和1年11月25日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和1年7月31日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
1.本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、当業者という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
2.本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献1-2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.本願請求項4-5に係る発明は、以下の引用文献1-3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4.本願請求項6に係る発明は、以下の引用文献1、4-5に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2007-112341号公報
2.特開2012-30618号公報
3.特開2010-111292号公報
4.特開2014-238707号公報
5.特開2010-111315号公報

特に、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、本願請求項7-8に係る発明については、平成31年3月6日付けの手続補正により新たに追加された請求項であって、先の拒絶理由通知書には拒絶の理由が示されていない旨記載されている。

第3 令和1年11月25日付け拒絶理由の概要
令和1年11月25日付け拒絶理由(以下「前置拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-11に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2007-112341号公報
2.特開2012-30618号公報
3.特開2010-111292号公報
4.特開2014-238707号公報
5.特開2010-111315号公報
6.特開2005-182307号公報(新たに引用する文献)
7.特開2002-310680号公報(新たに引用する文献;周知技術を示す文献)
8.特開2004-132897号公報(新たに引用する文献;周知技術を示す文献)
9.特開2006-134130号公報(新たに引用する文献;周知技術を示す文献)
10.特開2008-257563号公報(新たに引用する文献)
11.特開2011-232270号公報(新たに引用する文献;周知技術を示す文献)

特に請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に引用文献6に記載された技術的事項を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるか、あるいは、引用文献1に記載された発明に引用文献6に記載された技術的事項及び引用文献7-9に示される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和2年1月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
ユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段と、
登録ユーザの認証用顔画像を記憶する記憶手段と、
前記顔画像と前記認証用顔画像とを照合する顔照合手段と、
を備え、
前記顔照合手段において、
前記ユーザが前記登録ユーザであると判定されたときは、所定の機能のロックが解除され、
前記ユーザが前記登録ユーザでないと判定されたときは、所定の機能のロックが解除されず、
さらに、カーナビゲーションシステムを含み、
前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、
前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させることを特徴とする車両システム。
【請求項2】
前記所定の機能が、ドアの開錠であることを特徴とする請求項1記載の車両システム。
【請求項3】
前記ドアの開錠後、前記ドアが自動で開くことを特徴とする請求項2記載の車両システム。
【請求項4】
前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザが運転に不向きな状態である判定されたときに、警告を発することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の車両システム。
【請求項5】
前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定されたときに、警告を発することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の車両システム。
【請求項6】
さらに、香料噴霧手段を備え、
前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがイライラした表情であると判定されたときに、前記香料噴霧手段が香料を自動噴霧することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の車両システム。
【請求項7】
前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザが困惑した表情であると判定されたときに、前記カーナビゲーションシステムが道案内を行うことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の車両システム。」

第5 引用文献の記載事項、引用発明等
1 引用文献1について
(1)記載事項
前置拒絶理由に引用された引用文献1(特開2007-112341号公報)には、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。以下同様である。)。
(1a)「【0008】
上記のように、従来の車両オーナー認証装置は、携帯機に記憶されているIDと、車両側に登録されているIDが一致した場合に、オーナーと判断しているが、盗まれたキーや複製キー等を使用して車両が盗まれるという問題が発生している。
また、近年、生体認証(顔面認証、指紋認証、静脈認証等)によりオーナーと判断してドアを開錠する等の認証方法が提案されているが、個人認証率が100%でないことから、他人を誤ってオーナーとして判定してしまう等の問題が発生していた。」

(2)認定事項
ア 上記記載事項(1a)の顔面認証によりオーナーと判断してドアを開錠するものにおいて、オーナーが登録オーナーであると判断されたときは、ドアが開錠され、オーナーが登録オーナーでないと判断されたときは、ドアが開錠されないことは明らかである。

(3)引用発明
上記(1)、(2)から、引用文献1には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「顔面認証によりオーナーと判断してドアを開錠する車両オーナー認証装置であって、
前記オーナーが前記登録オーナーであると判断されたときは、ドアが開錠され、
前記オーナーが前記登録オーナーでないと判断されたときは、ドアが開錠されない、
車両オーナー認証装置。」

2 引用文献6について
前置拒絶理由に引用された引用文献6(特開2005-182307号公報)には、以下の事項が記載されている。
(6a)「【0025】
このコンピュータ80は、運転者の視認可能な距離に位置し、自車両の運転者が道路の遠方を注視している場合の注視点を基準とする中心視エリアに含まれる距離に位置する信号機や一時停止標識等の道路設備が、現在の運転者の中心視エリアに含まれるか否かによって、その道路設備に対する運転者の認識度合いを判定する。そして、この判定により、運転者の認識度合いが低いと判定される場合には警報を発生して、運転者に対して自車両前方に存在する上記道路設備への注意を喚起する警報発生処理を実行する。」

(6b)「【0070】
なお、本変形例の自車両走行制御部89は、ブレーキ駆動器100を駆動して自車両を停止させるようにしてもよい。これにより、運転上必要な信号機や一時停止標識等の道路標識の手前で自動的に停止することができる。」

3 引用文献7について
前置拒絶理由に引用された引用文献7(特開2002?310680号公報)には、以下の事項が記載されている。
(7a)「【請求項1】移動体に搭載されたナビゲーション機能、位置計測機能及び携帯電話機能を有する端末に対してサーバ側から携帯電話網、インターネットを介して前記端末が要望する地図上のルートの危険情報を提供する交通安全情報提供方法において、
前記移動体の端末は、
前記移動体が表示したナビ地図上における目的地点までのルートを送信する段階と、
前記位置計測機能で計測した自位置を、順次送信する段階と、
前記サーバから送信される前記ルートの危険エリア及び属性情報を記憶する段階と、
前記自位置が求められる毎に、前回の自位置と今回の自位置とから進行方向を求め、この進行方向に存在する前記ルートの危険エリアを検索する段階と、
前記危険エリアを前記ナビ地図のルートに割り付けると共に、該割り付けた危険エリアに対応する前記属性情報を知らせる段階と、
前記自位置が前記割付した危険エリアに存在しなくなったときに、前記属性情報の知らせ及び検索エリアの割付けを停止する段階とを備え、
前記サーバは、
地物、道路に緯度経度が割り当てられた地図上の交差点エリアに、交差点の形を示すポリゴン、提供情報、危険度からなる属性情報を対応させて備え、
前記ルートの受信し、該ルート上に存在する前記危険エリア及び前記属性情報とを前記移動体に送信する段階とを有することを特徴とする交通安全情報提供方法。」

4 引用文献8について
前置拒絶理由に引用された引用文献8(特開2004?132897号公報)には、以下の事項が記載されている。
(8a)「【0007】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の一形態について、図を参照しながら説明する。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における車載用ナビゲーション装置の機能を表す図である。図において、地図情報取得手段101は、記憶媒体に記憶された地図データあるいは通信により受信した地図データから、道路情報や施設に関する情報を取得する。位置検出手段102は、車両の絶対位置を検出するGPS受信機、方位センサであるジャイロ、及び、距離センサである車速パルス発生器から車両の現在位置を求めて、地図情報取得手段101によって取得された地図データと現在位置とからマップマッチングを行う。入力手段103は、ユーザの操作に応じて目的地や車両のサイズなどの各種の設定を行う。経路探索手段104は、地図情報取得手段101によって取得された地図データを用いて、入力手段103から入力された目的地までの経路を探索する。危険箇所抽出手段105は、経路探索手段104によって探索された経路をもとに、カーブ、トンネル、踏切、横断歩道などの危険箇所を抽出する。危険箇所判定手段106は、危険箇所抽出手段105によって抽出された危険箇所の危険度合いを判定する。危険箇所案内手段107は、危険箇所判定手段106で判定された内容をもとに、危険箇所をユーザに案内する。出力手段108は、危険箇所案内手段107によって案内する危険箇所を音声や画像で出力する。」

5 引用文献9について
前置拒絶理由に引用された引用文献9(特開2006?134130号公報)には、以下の事項が記載されている。
(9a)「【0008】
図2は第1実施例の警報発生装置の構成図、図3は警報発生処理フローである。
予め探査電波発射地点記憶部11に探査電波発射地点、すなわち、危険地点を登録しておく。実際には、ナビゲーションシステムを構成する地図データべースに保存されている地図データに探査電波発射地点を登録する。危険地点とは、
・信号のない交差点
・視界の悪いカーブ(カーブの曲率から指定)
・事故多発地点
・通学指定路
・バス停留所
車庫(見通しの悪い車庫での出庫時)
等がある。」

第6 前置拒絶理由通知について
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「オーナー」は、上記第4(1a)記載のとおり、顔面認証によりドアの開錠を行っていることから、本願発明1の「ユーザ」に相当する。

イ 上記アを踏まえると、引用発明の「顔面認証によりオーナーと判断」する手段と、本願発明1の「ユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段と、登録ユーザの認証用顔画像を記憶する記憶手段と、前記顔画像と前記認証用顔画像とを照合する顔照合手段」とは、ユーザの顔認証手段という限りにおいて共通する。

ウ 引用発明の「ドアが開錠され」ることは、本願発明1の「所定の機能のロックが解除され」ることに相当する。

エ 引用発明の「車両オーナー認証装置」と、本願発明1の「車両システム」とは、車両装置という限りにおいて共通する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があると認める。

〔一致点〕
「ユーザの顔認証手段
を備え、
前記ユーザの顔認証手段において、
前記ユーザが前記登録ユーザであると判定されたときは、所定の機能のロックが解除され、
前記ユーザが前記登録ユーザでないと判定されたときは、所定の機能のロックが解除されない車両装置。」

〔相違点〕
〔相違点1〕
本願発明1は、ユーザの顔認証手段として「ユーザの顔画像を取得する顔画像取得手段と、登録ユーザの認証用顔画像を記憶する記憶手段と、前記顔画像と前記認証用顔画像とを照合する顔照合手段と、を備え」、「前記顔照合手段において、」ユーザが登録ユーザであるか否かを判定するのに対し、引用発明は、「顔面認証によりオーナーと判断」する手段は有するものの、その具体的な構成は明らかでない点。

〔相違点2〕
本願発明1の車両装置は、「さらに、カーナビゲーションシステムを含み、前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させる」「車両システム」であるのに対し、引用発明の車両装置は、「車両オーナー認証装置」であって、上記「車両システム」に係る事項を有していない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。
引用文献1には、上記「第5 1(1)」に示すとおり、「車両オーナー認証装置」として、「生体認証(顔面認証、指紋認証、静脈認証等)によりオーナーと判断してドアを開錠する等の認証方法が提案されている」ことは記載されているが、上記相違点2に係る本願発明1の「カーナビゲーションシステムを含み、前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させる」ことについては記載も示唆もされていない。
また、上記「第5 2」に示す引用文献6の記載においても、コンピュータにより、信号機や一時停止標識等の道路設備がある地点、すなわち一般的に危険度が高いとされる地点で、運転者がよそ見をしていると判定されたときに、自動でブレーキを作動させることが開示されているに留まり、本願発明1の「カーナビゲーションシステムを含み、前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させる」ことは記載も示唆もされていない。
さらに、上記「第5 3」-「第5 5」に示す引用文献7-9の記載においても、カーナビゲーションにおいて、危険度の高い地点であることを識別することは開示されているものの、「顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させる」ことは記載も示唆もされていない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び前置拒絶理由において引用された引用文献6-9に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7は、本願発明1の発明特定事項を全て含みさらに限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び前置拒絶理由において引用された引用文献2-11に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定について
1 理由 特許法第29条第2項(進歩性)について
本願発明1は、原査定の対象とされていない平成31年3月6日付けの手続補正書における請求項7に係る発明の特定事項を含み、さらに限定を加えたものであるから、原査定を維持することはできない。
具体的には、令和2年1月22日付けの手続補正により、本願発明1-7は「さらに、カーナビゲーションシステムを含み、前記顔照合手段において、前記ユーザが前記登録ユーザであり、且つ、前記登録ユーザがよそ見をしていると判定され、前記よそ見が、前記カーナビゲーションシステムにおいて危険度の高い地点とされている箇所で行われたときに、自動でブレーキを作動させる」という事項を有するものとなっており、上記「第6」の説示と同様に、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び前置拒絶理由の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-06-23 
出願番号 特願2018-506761(P2018-506761)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐々木 智洋田々井 正吾梶本 直樹  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 一ノ瀬 覚
佐々木 一浩
発明の名称 車両システム  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 伊佐治 創  

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