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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1363706
審判番号 不服2018-10318  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-07-27 
確定日 2020-07-01 
事件の表示 特願2015-547493「延伸カテーテル本体ドライブシャフト支持を含む回転カテーテル」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月19日国際公開、WO2014/093472、平成28年 1月18日国内公表、特表2016-501091〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年12月13日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月2日付けの拒絶理由が通知され、平成30年2月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年3月26日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年7月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、それと同時に手続補正がなされたものである。
そして、当審において、令和元年5月31日付けの拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対し、同年12月4日に意見書が提出されるとともに誤訳訂正書による手続補正がなされたが、当審拒絶理由において解消していない拒絶理由があることから、同年12月17日付けの審尋が通知され、請求人からの要請により令和2年1月9日に面接審理が行われ、同年1月17日に回答書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?12に係る発明は、令和元年12月4日に提出された誤訳訂正書による手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
カテーテル装置であって、
入れ子箇所を有する細長い柔軟な管アセンブリであって、該入れ子箇所が、固定支持構造体に固定されている近位端及び環状連結器に固定される遠位端を有する管状の外側入れ子部材、前記外側入れ子部材の内部を通って、その前記遠位端に向けて、また該遠位端から離れて長手方向に移動可能な管状の内側入れ子部材、並びに、前記外側入れ子部材に支持されるとともに、前記外側入れ子部材を通って近位側に延び、かつ、前記内側入れ子部材内に嵌め込まれて収納されるシースを含む柔軟な管アセンブリと、
前記柔軟な管アセンブリに対して移動可能で、前記外側入れ子部材及び前記内側入れ子部材を通って延びるとともに、前記シースの近位端部により前記外側入れ子部材内に支持される細長い柔軟なドライブ部材と
を備え、
前記内側入れ子部材はOリング部材を通ってスライド可能に延在し、前記Oリング部材は前記固定支持構造体の内部に位置し、
前記シースが、その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造であり、
前記シースの近位端部は、前記環状連結器を通って前記外側入れ子部材の内部に延びるとともに、近位側において、前記入れ子箇所内で前記内側入れ子部材の遠位端内に嵌まり込み、前記内側入れ子部材が、その後退位置にあるか、延伸位置にあるか、または、それらの間の任意の位置にあるかにかかわらず、前記シースの近位端部は、前記入れ子箇所内で前記ドライブ部材の部分を直接的に支持し、
前記環状連結器は、前記シースの長手方向中間部分を取り囲むとともに前記シースに固定される、
カテーテル装置。」
(なお、下線は、当審拒絶理由において解消されなかった拒絶理由に関する発明特定事項について、当審が付したものである。)

第3 当審拒絶理由について
令和元年5月31日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。
1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
●理由1(明確性)について
(略)

●理由2(サポート要件)について
・請求項1?12
(1)本願発明の課題について
本願明細書には、本願発明の課題の記載として、
「【0005】
これらの代表的なタイプの医療センシングカテーテルは、管アセンブリを備え、それを通って、ドライブケーブルが移動可能に延びる。管アセンブリは通常、患者内に挿入可能なシースを含むとともに、入れ子箇所に固定される近位端を有するものであり、これは、ドライブケーブル及び、それによるセンサーが、患者の体内で静止している挿入されたシースの内部を経由して、患者の体内を通って選択的に移動することを許容する。入れ子箇所は、シースの近位端が支持されるその遠位端に、管状外側カテーテルもしくは入れ子部材を備える。入れ子箇所はまた、管状内側カテーテルもしくは入れ子部材を有し、これは、その近位端を通って外側入れ子部材の内部に嵌まり込むとともに、外側入れ子部材に対し、後退位置と延伸位置との間で、外側入れ子部材の内部を通って移動可能なものである。ドライブケーブルは、内側入れ子部材に固定されて、それとともに外側カテーテル部材に対して長手方向に移動する。
【0006】
内側入れ子部材の、その後退位置へ向かう遠位側の遠位移動は、シースを通して、ドライブケーブル及びセンサーを押し、また、内側入れ子部材の、その延伸位置へ向かう近位移動は、シースを通して、ドライブケーブル及びセンサーを引き戻す。内側入れ子部材が、その延伸位置に移動されたとき、外側入れ子部材の遠位端と内側カテーテル部材の遠位-端との間で、外側カテーテル部材の内部を通って延びるドライブケーブルの位置は、実質的に入れ子箇所内に支持されず拘束されない。
【0007】
内側入れ子部材の、その後退位置へ遠位側に向かうその後の移動に応じて、ドライブケーブルの、露出して支持されない部分は、望ましくない態様で、入れ子箇所内での座屈が引き起こされることがあり、それにより、シースを通るドライブケーブルの望ましい遠位前進を妨げるとともに、また、ケーブル損傷の可能性がある。このドライブケーブル座屈の可能性の問題に対してこれまでに提案された解決策は、入れ子箇所内に別個の補強構造を配置し、内側入れ子部材が、その後退位置から離れて移動される際に、入れ子箇所を通って延びるドライブケーブルの位置を支持することであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでに提案されたこのドライブケーブル支持技術は、少なくとも一の追加のコンポーネントを、全体のカテーテルアセンブリ内に与えるとともに設置する必要があり、それにより、カテーテルアセンブリのコスト、複雑さ及び製造時間を望ましくなく増大させるので、完全に満足のいくものではないことが解かった。前述したところから容易に理解できるように、上述したカテーテル・ドライブケーブル座屈問題に対しては、改善された解決策の必要性がある。本発明の主な目的は、この必要性にある。」と記載されている。
上記「代表的なタイプの医療センシングカテーテル」及び「別個の補強構造を配置し」た「これまでに提案された解決策」について、具体的な先行技術文献情報を開示しておらず(この点、特許法第36条第4項第2号に規定する要件を満たしているとはいえないが)、また、「代表的なタイプの医療センシングカテーテル」及び「別個の補強構造を配置し」た「これまでに提案された解決策」についての図面もないことから、本願発明が従来のどのようなカテーテルを前提に課題を解決した発明であるのか、必ずしも明確とはいえない。
しかしながら、原審で提示された引用文献3(米国特許出願公開第2009/0156941号明細書)には、上記本願明細書と同じ技術課題が記載(特にFIG.1及びFIG.2とそれについての記載箇所参照)されており、そして、それを解決するためのFIG.3?FIG.5のシースとして、「The ultrasonic energy is coupled via the saline into the ultrasonically transparent portion of the sheath 4 and into the body.」([0036])と記載される超音波透過材料から構成される遠位側のシース4と、「In another embodiment, the inner sheath has a proximal portion and the catheter further includes a substantially rigid cover extending over the proximal portion of the inner sheath.」([0022])及び「Optionally, a stainless steel hypo tube 45 or other suitable rigid material can be placed over the proximal sheath 3.」([0044])と記載される近位側のシース3とからなるシースが記載されており、その近位側のシース3は、ステンレスで強化したチューブあるいは他の剛性のある材料で覆われたものであることが記載されており、これらが上記本願明細書の「別個の補強構造を配置し」たものとも考えられる。

(2)シースの構成材料について
請求項1及び7の「シースが、その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造」であるということは、シースが遠位端から近位端まで1つの材料で構成されていることを意味する(例えば、超音波センサ側(遠位端側)の材料と入れ子箇所側(近位端側)の材料が異なる場合、両者の接する場所には必ず接合部が生じる。また、シースのある箇所を別の材料で覆う場合にも、その覆う材料とシースとで接合部が生じる)ものであるが、1つの材料で構成されるシースをどのような材料で構成するのか発明の詳細な説明には記載されていない。
これについて検討するに、超音波センサ側(遠位端側)のシースについては、超音波を透過する材料で構成されなければならない一方で、「入れ子箇所内で前記ドライブ部材の部分を直接的に支持する」「近位端」側の「シース」については、剛性のある材料で構成しなければ、本願発明のドライブケーブルの座屈を抑えるという課題を解決しない。してみれば、本願発明の課題を解決するためには、シースを、剛性がありかつ超音波を透過する材料で構成しなければならないところ、このような条件を満たす材料を血管内超音波(IVUS)におけるシースとして使用するという技術常識も本願優先日の時点で存在していたとはいえないことから、請求項1及び7に係る発明は、本願発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとはいえない。

(3)、(4)(略)

(5)小括
よって、上記(1)?(3)の点で、指摘した請求項及びそれを引用する請求項に係る発明は発明の詳細な説明に記載したものではないことから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

●理由3(実施可能要件)について
・請求項1?12
上記理由2の(2)で指摘した点である、超音波センサ側(遠位端側)のシースについては、超音波を透過する材料で構成されなければならない一方で、「入れ子箇所内で前記ドライブ部材の部分を直接的に支持する」「近位端」側の「シース」については、剛性のある材料で構成しなければならないことについて、発明の詳細な説明には、シースを構成する材料について何ら記載されておらず、「その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造」であるという1つの材料で(シースを別の材料で覆うこともない)シースを構成する際に、具体的にどのような材料で構成すればよいのか、発明の詳細な説明は当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえない。
よって、発明の詳細な説明は、当業者が、請求項1?12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものとはいえないことから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

●付記
原審で提示した引用文献1(米国特許出願公開第2011/0021911号明細書)には、本願発明のシースに相当する要素として、近位端側に「The primaryinner member 50 is formed of a biocompatible material such as polyetheretherketone (PEEK) or stainless steel.」([0055])と記載されているステンレス鋼あるいはPEEKの材料からなる一次内側部材50があり、遠位端側に「The distal sheath 66 is formed of a biocompatible flexible material such as polyethylene or other thermoplastic polymer that minimizes acoustic loss.」([0058])と記載されている音響ロスを最小とするポリエチレン又はその他の熱可塑性樹脂の柔軟な材料からなる遠位端側シース66があるという、2つの材料で構成されているシースが記載されている。
当審においては、請求項1及び7における「前記シースが、その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造であり」との事項は、本願発明の進歩性を肯定する上で重要な事項と考えていることから、上記事項を単に削除して、上記拒絶理由に対応することは適当なことではない。

第3 審尋について
上記当審拒絶理由の●理由2(サポート要件)の(2)及び●理由3(実施可能要件)について記載し、それについて回答を求めたものである。

第4 面接審理について
(1)請求人の説明
請求人は、面接審理において、概ね以下の説明を行った。
a 米国特許出願公開第2009/0156941号明細書(上記第3の当審拒絶理由の理由2(サポート要件)の(1)で引用した原審の引用文献3)の[0005]には「Electronically scanned catheters utilize a transducer array that electronically steers the ultrasound beam. In order to maximize the size of the transducer array, electronically scanning IVUS catheters locate the transducer array on the outside of the sheath. Mechanically scanning IVUS catheters locate the transducer on the inside of a sheath.」と、電子スキャン方式のIVUSカテーテルはシースの外側にトランスデューサアレイを配置することが記載されている。これは、電子スキャン方式の場合には、360°全ての方向にトランスデューサがあり、トランスデューサを回転させる必要がなく、トランスデューサを回転させるための機械部品がないことから、機械スキャン方式と違い、シースで囲まなくとも、血管などを傷つけることがないためである。

b 本願に添付した図1おいて、「超音波センサー16」が電子スキャン方式の場合には、撮像時に、「超音波センサー16」がシースから遠位側に突き出て撮像を行うために、「超音波センサー16」側(遠位端側)のシースについても、超音波を透過する材料で構成する必要はない。
【図1】


c 「超音波センサー16」が、電子スキャン方式であることについては、本願明細書の【0017】に「そのような他のタイプのカテーテル構造は、たとえば、光音響、光コヒーレンス・トモグラフィー、位相配列/複合振動子及び、分光システムを含む。」との記載があり、「位相配列/複合振動子」は、電子スキャン方式のことである。

(2)これに対し、当審からは、概ね以下のことを述べた。
本願明細書の記載及び図面の記載は、すべて機械スキャン方式についてのものであり、「位相配列/複合振動子」との記載しかないことから、この「位相配列/複合振動子」の記載から、本願発明が上記説明された電子スキャン方式のものであることをいうためには、少なくともそれを裏付ける証拠が必要である。

第5 回答書について
請求人は、上記面接審理を踏まえて、以下の内容の回答書を提出した。
(1)本願明細書の「【0004】
振動子は、カテーテルの近位端でモーター駆動装置に接続されるドライブシャフトもしくはケーブルの端に取り付けられる。回転する振動子は、超音波に干渉せず、かつ高速回転するドライブシャフトから動脈を保護するシース内に収納される。それ故に、IVUSイメージング(または「センシング」)カテーテルは、従来の血管造影法技術を用いて、閉塞の領域へ前進させることができ、そしてその後、動脈壁の中間層及び血管内膜及び閉塞物を含む動脈壁における血管内腔のリアルタイム断面像をもたらすべく操作されることができる。体の部分の内部構造を可視化するために使用するカテーテルベースのシステムの他のタイプでは、細長いドリフトシャフト構造に配置されて、シースに包まれた可動センシング/イメージング要素を実装するものもまた知られており、これには、光音響、光コヒーレンス・トモグラフィー、位相配列/複合振動子および、分光システムが含まれる。」
「【0017】
カテーテル10は、IVUSカテーテルであるとして典型的に説明したが、本発明の原理から逸脱することなく、柔軟な内部ドライブシャフトもしくはケーブル及び関連する入れ子箇所を有する他のタイプのカテーテル構造は、上述したタイプのケーブル支持を有利に包含し得ることが、この特定の技術における当業者には容易に理解される。そのような他のタイプのカテーテル構造は、たとえば、光音響、光コヒーレンス・トモグラフィー、位相配列/複合振動子及び、分光システムを含む。」
との記載によれば、体の部分の内部構造を可視化するために使用するカテーテルベースのシステムの他のタイプとして位相配列/複合振動子が含まれるとし、そして、上記第4の(1)で摘記した引用文献3の[0005]の記載から、電子スキャン方式のIVUSカテーテルはシースの外側にトランスデューサアレイを配置するものであるといえるとしている。

(2)証拠文献として以下の文献を提示している。
証拠文献1:日比潔、本多康浩、木村一雄、梅村敏「特集動脈硬化症:診断と診療の進歩 トピックス III.診断の進歩 5.IVUS(血管内超音波法)」日本内科学会雑誌第102巻第2 号、平成25年2月10日、pp.334-353
証拠文献2:徳島大学医学部小児科 森一博「血管内エコーによる小児の肺動脈の評価」日本小児循環器学会雑誌15巻3 号、1999年、pp.457-460
証拠文献3:ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社インターベンショナルカーディオロジー事業部マーケティング部 野島 栄一「誌上講座 血管内超音波診断(IVUS)iLab2.5 の最新アプリケーションソフトについて」全国循環器撮影研究会誌Vol.24 、2012、pp.57-58
当審注:上記第1の手続の経緯で記載したように、本願の優先日は2012年12月13日であるから、証拠文献1については優先日の後に公開されたものであり、証拠文献3については「2012」で優先日の前あるいは後に公開されたものか不明である。したがって、本願の優先日前に公開されたものが明かな文献は証拠文献2だけである。

そして、証拠文献1の「IVUSカテーテルは,機械走査式と電子走査式に大別することができる(図3).機械走査式では,単一のtransducerが毎分1,800 回転という速度で回転することにより1 秒間に30 画像(フレーム)を得ることが出来る(30 フレームレート).一方で電子走査式はカテーテルの表面に小さいtransducerを64 個配置し,transducerから超音波信号を受信すると,次々に隣のtranducerから受信していき360度方向(1フレーム)の画像を構築する.」(345頁右欄10?最下行)との記載、
証拠文献2の「IVUS にはmechanical 式(機械走査式)とphased array 式(電子走査式)の2種類がある.前者は一つのトランスデューサーが高速回転しながら超音波を発信する方式である.後者では複数(64素子)のトランスデューサーがカテーテルの周囲に付いており,各トランスデューサーから順番に超音波が発信される.
mechanical 式ではIVUS カテーテルを覆う保護シースを装着して使用する.IVUS カテーテル自体の中にガイドワイヤーを挿入することは出来ず,モノレール方式を用いる(図1).即ち,保護シースの先端から約1.5cmの間のみガイドワイヤーが内腔を通り,トランスデューサーはその尾側に位置する.従来はトランスデューサーを保護シース内で移動させることは出来なかったが(固定型),最近では,保護シース(ポリエチレン製)の先端3 cm から尾側15 cm までトランスデューサーの移動が可能となった.現在,BostonScientific 社製のIVUS カテーテルには7 種類あるが,6 F 以上のものは固定型で,それよりサイズの小さいカテーテルでは移動可能である.
phased array 方式(Endosonic 社製)では,カテーテル中央部にガイドワイヤーを挿入して使用する.mechanical式に比して回転むらが少なく,大きく湾曲する血管には適しているが,カテーテル径は若干太めである.トランスデューサー自体はmechanical式の方が大きく,より強い超音波の発着信が可能なため,画質が良好である.そのため,小児科領域ではmechanical 式がよく用いられている.」(457頁9?22行) との記載、
証拠文献3の「現在、広く国内のPCI治療の臨床現場で血管内超音波診断(IVUS)が使用されています。
カテーテル構造によりIVUS システムは2種類に大別され、単一の探触子がシース内で回転して血管断面を撮像する機械操作方式(MechanicalScan)構造をもつカテーテル、複数の探触子が円周方向に配列された電子スキャン方式(Phased Array 方式)をもつカテーテルに大別されています。
一般に前者は高周波ではあるが回転ムラなどの虚像(アーチファクト)などが生じやすいが小径化が可能な構造となっており、後者においては回転ムラなどが生じないが高周波数化が困難な構造となっています。」との記載から、
電子スキャン(走査)方式においてカテーテルの周囲の円周方向に複数のトランスデューサー(複合振動子)を備えるphased array(位相配列)方式が用いられることは周知の技術であることが明らかであるとしている。

(3)まとめ
位相配列/複合振動子を用いる方式は電子スキャン方式であり、電子スキャン方式のIVUSカテーテルはシースの外側にトランスデューサアレイを配置するものであることは明らかである。したがって、超音波センサ側(近位端側)のシースについては、超音波を透過する材料で構成される必要はない。よって、「シースが、その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造」であることは、発明の詳細な説明において当業者が、請求項1乃至12に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえるとしている。

第6 当審の判断
1 位相配列/複合振動子について
(1)請求人の説明について
請求人の提出した証拠文献1?3(なお、上記第5(1)で述べたとおり、上記本願優先日前に公開された文献は証拠文献2のみである)を参照するに、IVUSにおいて機械スキャン方式と電子スキャン方式があり、本願明細書の「位相配列/複合振動子」との用語のみの解釈に限り、電子スキャンにも使用しているといえることから、電子スキャン方式の要素をもち得ているといえる。

(2)当審における調査
一方、本願優先日前の「位相配列/複合振動子」についての技術を開示する文献として、例えば、以下の文献等がある。
a 特表2005-529701号公報(以下「参考文献1」という。)
(a)参考文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与した。
(参1a)「【0002】
発明の背景
診断および治療計画を立てる目的で、撮像技術は患者の身体内部を見るための医療処置に一般的に使用されている。ある撮像技術では、先端に搭載された一又はそれ以上の超音波トランスデューサを具える超音波装置が、患者の体内に、例えば血管を介して挿入される。身体の内部画像を得るために、超音波トランスデューサは超音波エネルギーのパルスを体の中に向けて発振する。超音波エネルギーの一部が、身体の内部で反射して、トランスデューサに戻ってくる。トランスデューサに衝突するこの反射された超音波エネルギー(エコー)が、電気信号を生成し、この信号が身体の内部画像を作るのに使用される。周囲の組織の平面ビューあるいは扇形面ビューを提供するために、超音波装置は典型的に一あるいはそれ以上の回転トランスデューサか、あるいは、超音波装置の周辺あるいは軸に沿って機械的に配置されたフェーズドアレイトランスデューサのいずれかを有する。」

(参1b)「【0015】
実施例の詳細な説明
・・・撮像装置20は、例えば、回転式超音波撮像器、フェーズドアレイ超音波撮像器、例えば光コヒーレンストモグラフィ(OCT:OpticalCoherence Tomography)撮像器などの光学撮像器、他などの、撮像エレメント25を具える。」

(参1c)「【0023】
図3Aは、超音波撮像装置20(1a)の実施例の軸方向における断面図であり、超音波トランスデューサ25(1)が回転式超音波撮像トランスデューサ25(1a)の形態を取っている。撮像装置20(1a)は、内部を延在する内腔325を有する細長いカテーテル本体あるいはシース315を具える。カテーテル本体315は、可撓性部材でできているので、体腔の通り道に沿って曲げることが可能である。撮像装置20(1a)は、更に内腔325内に延在する駆動シャフト330を具える。回転式超音波撮像トランスデューサ25(1a)は、駆動シャフト330の遠位端に装着されている。カテーテル本体315は、超音波パルスをカテーテル本体315を通過させるための音響窓(図示せず)を具える。内腔325は、超音波トランスデューサ25(1a)から周囲の身体への超音波エネルギーの伝達をよりよいものとするために、例えば水などの、液体を満たすようにしても良い。」

(参1d)「【0027】
図3Bは、超音波撮像装置20(1b)の他の実施例を示すものであり、ここでは、超音波トランスデューサ25(1)は、1次元または2次元の撮像トランスデューサアレイ25(1b)の形態を取っている。撮像装置20(1b)は、トランスデューサアレイ25(1b)のトランスデューサが軸に沿って配置されるか(図3Bに示すように)、あるいはカテーテル本体315の外側周囲に配置されるかした、細長いカテーテル本体あるいはシース315を具える。トランスデューサアレイ25(1b)は、身体の平面及び/又はセクタを撮像する。トランスデューサアレイ25(1b)の利点は、その超音波ビームが電気的に走査しうる(すなわち、偏向されること)、及び/又は、アレイ25(1b)の各トランスデューサの位相または遅延を別々に制御することによって焦点を合わせることができる点である。この結果、トランスデューサアレイ25(1b)は、身体を電気的にスキャンすることが可能となり、機械的なスキャナ、すなわち、回転式のトランスデューサ25(1a)より早いスキャン率を得ることができる。」

(参1e)「【0048】
図8Bは、図3Bのフェーズドトランスデューサアレイ25(1b)に関連する撮像パターン810を示す図である。フェーズドアレイ25(1b)は、セクタ形状の撮像パターン810を生成しながら身体のセクタを走査する。」

(参1f)上記図3B、図8Bとして以下の図面が記載されている。
【図3B】

【図8B】


(b)参考文献1の「フェーズドアレイトランスデューサ」が、本願明細書の「位相配列/複合振動子」に対応するところ、「フェーズドアレイトランスデューサ」は、1次元または2次元の撮像トランスデューサアレイの形態もとるものであり、上記図3Bを見ても分かるとおり、軸に対して360°全ての方向にトランスデューサがある必要はないもので、その際には、軸を回転させて全方向の撮像を行うことになる。

b 国際公開第2012/064413号(以下「参考文献2」という。)(a)参考文献2には、以下の事項が記載されている。
(参2a)「Moreover, IVUS imaging systems can be used to monitor one or more heart chambers. IVUS imaging systems have been developed to provide a diagnostic tool for visualizing a variety of diseases or disorders. An IVUS imaging system can include a control module (with a pulse generator, an image processor, and a monitor), a catheter, and one or more transducers disposed in the catheter. The transducer-containing catheter can be positioned in a lumen or cavity within, or in proximity to, a region to be imaged, such as a blood vessel wall or patient tissue in proximity to a blood vessel " wall. The pulse generator in the control module generates electrical pulses that are delivered to the one or more transducers and transformed to acoustic pulses that are transmitted through patient tissue. Reflected pulses of the transmitted acoustic pulses are absorbed by the one or more transducers and transformed to electric pulses. The transformed electric pulses are delivered to the image processor and converted to an image displayable on the monitor. 」(2頁1?12行)
(訳:IVUS撮像システムは、様々な病気又は疾患を視覚化するための診断ツールを提供するために配備されている。IVUS撮像システムは、制御モジュール(パルス発生器、画像処理プロセッサ、及びモニタを有する)、カテーテル、及びカテーテルに配置された1つ又はそれよりも多くのトランスデューサを含むことができる。トランスデューサ収容カテーテルは、血管壁又は血管壁の近くの患者組織のような撮像される領域内又は領域の近くの内腔又は空洞に位置決めすることができる。制御モジュールのパルス発生器は、電気パルスを発生し、これは、1つ又はそれよりも多くのトランスデューサに送出されて患者組織を通して送信される音響パルスに変形される。送信された音響パルスの反射パルスは、1つ又はそれよりも多くのトランスデューサによって吸収され、電気パルスに変形される。変形された電気パルスは、画像処理プロセッサに送出され、モニタ上で表示可能な画像に変換される。)

(参2b)「The longitudinal axis 303 of the sheath 302 is generally parallel with the blood vessel lumen 406. The driveshaft 310 is configured and arranged to rotate about the longitudinal axis 303 of the sheath 302, as shown by arrow 410. As shown in Figure 4, the one or more transducers 3 12 are side-facing. In other words, a face of the one or more transducers 312 is oriented such that the normal line of the face is in a direction 412 that is roughly perpendicular 414 to the longitudinal axis 303 of the sheath 302. Thus, the one or more transducers 312 are disposed at an angle that is often conducive to imaging patient tissue, such as the blood vessel wall 404, from within the lumen 406 of the blood vessel 402. The one or more transducers 312 can be rotated about the longitudinal axis 303 of the sheath 302, as shown by arrow 410, while transmitting and receiving acoustic signals along a plurality of radial scan lines.」(13頁5?15行)
(訳:シース302の縦軸線303は、血管内腔406とほぼ平行である。ドライブシャフト310は、矢印410によって示すように、シース302の縦軸線303の周りで回転するように構成かつ配置される。図4に示すように、1つ又はそれよりも多くのトランスデューサ312は、側方向きである。言い換えると、1つ又はそれよりも多くのトランスデューサ312の面は、面の法線がシース302の縦軸線303にほぼ垂直な方向414になる方向412にあるように向けられる。従って、1つ又はそれよりも多くのトランスデューサ312は、多くの場合、血管402の内腔406内からの血管壁404のような患者組織の撮像を助ける角度に配置される。1つ又はそれよりも多くのトランスデューサ312は、複数の半径方向走査線に沿って音響信号を送信及び受信しながら矢印410によって示すようにシース302の縦軸線303の周りで回転することができる。)

(参2c)「Figure 6 is a schematic view of one embodiment of three different signal processing channels 601-603 that can be used to extract different information from input echo signals 606 received along a radial scan line. The received echo signals 606 can be from acoustic signals transmitted concurrently, or sequentially, along the radial scan line. 」(17頁28?31行)
(訳:図6は、半径方向走査線に沿って受信された入力エコー信号606から異なる情報を抽出するのに使用することができる3つの異なる信号処理チャンネル601-603の一実施形態の概略図である。受信されたエコー信号606は、半径方向走査線に沿って同時に又は順次送信された音響信号からのものとすることができる。)

(参2d)Fig.4として以下の図面が記載されている。


(b)音響パルスを送信し反射パルスを吸収する多くのトランスデューサは、(参2c)から、「位相配列/複合振動子」といえ、それは、(参2b)及び(参2d)のFig.4の記載から、シースの中でドライブシャフトにより回転するものである。

c 特開昭56-15733号公報(以下「参考文献3」という。)
参考文献3には、以下の事項が記載されている。
(参3a)「2.特許請求の範囲
(1)復数個(当審注:「複数個」の誤記であると認める。)の振動子が配列された体表接触形超音波プローブの任意個数の振動子を同時に駆動し超音波ビームを送波し、次に順次同時駆動振動子群をずらすことにより超音波ビームで被検体内部を走査し、被検体内部の超音波反響断層像を表示する超音波診断装置において、被検体の体腔内におけるラジアルスキャンを行なうために複数の振動子を少なくとも一列に配置した体腔内に挿入可能であり、且つ任意回転数で回転数能な体腔用超音波プローブによる超音波送受波信号処理を同一回路構成によって行なうことを特徴とする超音波診断装置。」

(参3b)第4図として以下の図面が記載されている。


d 特開平8-275947号公報(以下「参考文献4」という。)
参考文献4には、以下の事項が記載されている。
(参4a)「【0013】
【作用】以上の様に、この発明に係わる超音波イメージング・カテーテルは構成されているので、回転軸に対して所定の角度をもって取り付けられた板状の保持部材の両面に、電子走査型の振動子群を設けることによって、回転軸を単純に回転することだけで極めて広い領域を有する立体走査を行うことが出来、以って、外管の挿入先端部近傍の生体組織を立体的に画像観察できる超音波イメージング・カテーテルが、実現できる。」

(参4b)図5として以下の図面が記載されている。


e 小括
上記参考文献1?4から、シースの中で「位相配列/複合振動子」をドライブシャフトで回転させることにより超音波撮像を行うことは本願優先日前に周知技術であり、特に、参考文献1及び2はIVUS(血管内超音波)についての技術を示すものであるから、IVUSにおいても本願優先日前に周知技術であるといえる。

(3)本願明細書における「位相配列/複合振動子」について
本願発明は、上記第3の理由2(サポート要件)の(1)「本願発明の課題について」において摘記したように、「ドライブケーブル」についての技術であり、その課題も「ドライブケーブル」の座屈を解決しようとしたものである。してみると、本願明細書には、上記第5の(1)で摘記したように、「位相配列/複合振動子」との用語の記載はあるものの、その用語をもってして、「ドライブケーブル」のない、すなわち、機械的回転の伴わないカテーテルについての技術を開示しているものとまではいえない。
一方、上記参考文献の記載からも、「位相配列/複合振動子」がすべて、軸に対して360°全ての方向にトランスデューサが配列されたもの、すなわち回転する必要のないものを示すものではなく、「位相配列/複合振動子」には1次元または2次元の撮像トランスデューサアレイの形態をとり、軸を回転させて全ての方向の撮像を行うものもある。
してみれば、本願明細書における「位相配列/複合振動子」は、「ドライブケーブル」のないもの、すなわち軸に対して360°全ての方向にトランスデューサが配列されたものとして記載されているとはいえず、上記参考文献に示されているように、1次元または2次元の撮像トランスデューサアレイの形態をとり、軸を回転させてすべての方向の撮像を行う、すなわち「ドライブケーブル」があるものとして解釈するのが相当である。
そうすると、上記第4の(1)で記載した引用文献3に「electronically scanning IVUS catheters locatethe transducer array on the outside of the sheath」(電子スキャン方式のIVUSカテーテルはシースの外側にトランスデューサアレイを配置する)と記載され、これは軸に対して360°全ての方向にトランスデューサが配列されたもの、すなわち回転せずドライブケーブルの必要のないカテーテルのことを示したものといえるが、引用文献3の当該記載をもってして、本願明細書の「位相配列/複合振動子」を回転せずドライブケーブルの必要のないものと解することは適当ではない。

(4)シースとの関係について
上記(3)で述べたとおり、本願明細書に「位相配列/複合振動子」との用語があるとしても、それは軸が回転する「ドライブケーブル」があるものとして解釈することが相当である。そして、回転する「位相配列/複合振動子」であるトランスデューサをシースのないところで回転させては、血管等を傷つけることから、「位相配列/複合振動子」であるトランスデューサはシースに包まれることになり、請求人の主張するように、上記第4(1)bで摘記した図1の「超音波センサー16」(トランスデューサ)がシースから遠位側に突き出て撮像を行うこともないといえる。この点、本願明細書にも、上記第5(1)で摘記したように「シースに包まれた可動センシング/イメージング要素を実装するものもまた知られており、これには、光音響、光コヒーレンス・トモグラフィー、位相配列/複合振動子および、分光システムが含まれる。」と記載されており、「位相配列/複合振動子」の場合でも「シースに包まれ」ることが記載されている。
一方、請求人の主張するとおり、上記第4の(1)で記載した引用文献3には「electronicallyscanning IVUS catheters locate the transducer array on the outside of thesheath」(電子スキャン方式のIVUSカテーテルはシースの外側にトランスデューサアレイを配置する)との記載があるものの、これは軸に対して360°全ての方向にトランスデューサが配列されて軸が回転しない(ドライブケーブルがない)カテーテルのことを示したものといえ、血管を傷つける恐れもないことから、シースの外側にトランスデューサアレイを配置してもよいこと記載したものといえる。
しかし、上記(3)で述べたとおり、本願明細書及び図面に開示されている技術がドライブケーブルについての技術であることに鑑みると、引用文献3の当該記載をもってして、本願明細書の「位相配列/複合振動子」を回転せずドライブケーブルの必要のないものと解することは適当ではない。
そうすると、超音波センサーすなわちトランスデューサが「位相配列/複合振動子」としても、それは請求人の主張するように、シースの外側で(遠位側に突き出て)撮像を行うものと解されないことから、請求人の「超音波センサ側のシースについては、超音波を透過する材料で構成される必要はない」との主張は当を得たものではない。
よって、本願発明における「シース」は、上記第3の当審拒絶理由の理由2及び理由3で記載したように、超音波センサー側のシースについては、超音波を透過する材料で構成されなければならないことには変わりはない。

(5)超音波センサーがシースから遠位側に突き出る点について
超音波センサーがシースから遠位側に突き出て撮像を行うとの請求人の説明について、念のため検討しておくが、上記(2)で摘記した参考文献1の(参1f)図8B、参考文献2の(参2e)Fig.4、参考文献3の(参3b)第4図、参考文献4の(参4b)図5のいずれにおいても、撮像時において、トランスデューサはシース(あるいはそれに対応するもの)の中にあるものであり、請求人の主張する撮像の際に超音波センサー(トランスデューサ)がシースから遠位側に突き出るような態様を示す先行技術文献を確認することはできない。
また、請求人の提示した証拠文献1においても、以下の図面が記載されており、

そこには「ボルケーノ社のEagle Eye(図4C)は電子走査式である.・・・先端からtransducerまでの距離が・・・Eagle Eyeで10.5mmと短い.」と記載され、上記図4Cからも撮影時にtransducer(超音波センサー)がシースから遠位側に突き出る点は確認できない。
よって、請求人の主張する、「超音波センサー16」が電子スキャン方式の場合には、撮影時に、「超音波センサー16」がシースから遠位側に突き出て撮像を行うために、「超音波センサー16」側(遠位端側)のシースについて超音波を透過する材料で構成する必要はないとの説明は、技術的根拠に欠くものであり、採用できない。

(6)まとめ
したがって、上記第3の当審拒絶理由の理由2及び3に対して、請求人は、面接審理及び回答書において「超音波センサ側のシースについては、超音波を透過する材料で構成される必要はない」ことを前提に、シースが一つの材料で構成され「その遠位端からその近位端まで接合部無し」の構造となることを説明しようとしたが、その前提は、上記(1)?(5)で説示したように本願明細書から正当なものとはいえないことから、面接審理及び回答書における請求人の説明を踏まえても、上記第3の当審拒絶理由の理由2及び3を解消できるものではない。
そして、シースを構成する剛性がありかつ超音波を透過する材料について、本願明細書には何ら記載されていないのであるから、「その遠位端からその近位端まで接合部無しの構造」とするシースを、具体的にどのような材料で構成するのか不明であることには変わりはなく、依然として上記第3の当審拒絶理由の理由2及び理由3について解消されていない。

第7 むすび
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、そして、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないことから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり、審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-01-30 
結審通知日 2020-02-04 
審決日 2020-02-18 
出願番号 特願2015-547493(P2015-547493)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 三崎 仁
信田 昌男
発明の名称 延伸カテーテル本体ドライブシャフト支持を含む回転カテーテル  
代理人 五十嵐 貴裕  
代理人 笛田 秀仙  

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