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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1363828
審判番号 不服2019-9614  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-07-19 
確定日 2020-07-28 
事件の表示 特願2014-236587「トナー、二成分現像剤、及びカラー画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月30日出願公開、特開2016- 99504、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 【結 論】
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
【理 由】
第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2014-236587号(以下「本件出願」という。)は、平成26年11月21日の出願であって、その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
平成30年 7月19日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月20日付け:意見書
平成30年 9月20日付け:手続補正書
平成31年 2月19日付け:拒絶理由通知書
平成31年 4月 5日付け:意見書
平成31年 4月 5日付け:手続補正書
平成31年 4月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年 7月19日付け:審判請求書
令和 元年 7月19日付け:手続補正書

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、概略、本件出願の請求項1?請求項9に係る発明(平成31年4月5日付け手続補正書による補正後のもの)は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1:特開2011-141514号公報
引用文献2:特開2011-118094号公報
引用文献3:特開2002-296827号公報
引用文献4:特開2011-232552号公報
引用文献5:特開2012-078649号公報
引用文献6:特開2010-139574号公報
引用文献7:特開2012-078810号公報
引用文献8:特開2014-052571号公報
引用文献9:特開2012-013859号公報
なお、主引用例は引用文献1?3、6?7であり、引用文献4及び5は請求項1に対しての周知例、引用文献8は請求項3に対しての副引用例、引用文献9は請求項10に対しての副引用例として、それぞれ引用されたものである。

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は、令和元年7月19日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)後の特許請求の範囲の請求項1?請求項8に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
結着樹脂、離型剤、及び着色剤を少なくとも含有し、コアシェル構造を有するトナーであって、
イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計が、炭素数33?35以外の他の炭化水素化合物の信号強度を100%としたとき、信号強度比率で40%?70%であり、
前記トナーの165℃で10分間の加熱減量が0.01質量%?0.40質量%であり、かつ前記トナーの165℃で10分間加熱後から250℃までの加熱減量が0.1質量%?5.0質量%であることを特徴とするトナー。

【請求項2】
揮発性有機化合物として酢酸エチルを1μg/g?30μg/g含む請求項1に記載のトナー。

【請求項3】
少なくともポリエステル樹脂を含有する請求項1から2のいずれかに記載のトナー。

【請求項4】
少なくとも変性ポリエステル樹脂を含有する請求項1から3のいずれかに記載のトナー。

【請求項5】
平均円形度が0.93?0.99である請求項1から4のいずれかに記載のトナー。

【請求項6】
重量平均粒径D_(4)が2μm?7μmであり、かつ前記重量平均粒径D_(4)と個数平均粒径Dnの比(D_(4)/Dn)が1.00?1.25である請求項1から5のいずれかに記載のトナー。

【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のトナーと、磁性を有するキャリアとを含有することを特徴とする二成分現像剤。

【請求項8】
静電潜像担持体と、該静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、前記静電潜像をトナーを用いて現像して可視像を形成する現像手段と、前記可視像を記録媒体に転写する転写手段と、記録媒体に転写された転写像を定着部材により定着させる定着手段とを備えるカラー画像形成装置であって、
少なくとも4つ以上の現像色の異なる現像ユニットを直列に配置したタンデム型の現像方式であり、システム速度が、500mm/sec?2,500mm/secであり、かつ前記定着部材の加圧面圧が、10N/cm^(2)?150N/cm^(2)であり、
前記トナーが、請求項1から6のいずれかの記載のトナーであることを特徴とするカラー画像形成装置。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用文献1として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2011-141514号(以下、同じく「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【請求項1】
トナーを構成する材料を含有するトナー材料液を、界面活性剤を含む水系媒体中で乳化又は分散させる工程を経て得られたトナーにおいて、
前記トナー材料液は、結着剤と、着色剤と、ワックスと、を含有し、
前記ワックスは、C-H結合及びC-C結合のみで分子鎖が構成されてなり、且つ、融点が50?78〔℃〕、140℃での溶融粘度が5?15〔mPa・S〕であり、
TGA(Thermogravimetric Analysis)法による単位時間当たりの当該トナーの重量減少率は、0.001?0.1〔wt%/min〕であることを特徴とするトナー。
【請求項2】
前記TGA法は、下記TGA測定条件により測定されたものであることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
〔TGA測定条件〕
・雰囲気 大気雰囲気
・測定温度 165℃
・測定時間 10分
【請求項3】
前記ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びサゾールワックスの中から選ばれる1または2以上であり、且つ、TGA法による単位時間当たりの当該ワックスの重量減少率が、0.005?0.5〔wt%/min〕であることを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。

…(省略)…

【請求項6】
前記結着剤は、結着樹脂、及び/又は該結着樹脂の前駆体を含有することを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載のトナー。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンターあるいはファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置で使用されるトナー、これを含む現像剤、前記トナーを収容したトナー入り容器、前記トナーを収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジ及び前記トナーを収容した現像手段を備える画像形成装置に関する。」

ウ 「【0009】
…(省略)…
ここで前記した通り、高速印刷分野においては、高画像面積で大量に印刷しても、初期と変わらない高画質が求められてくる。それに対して、従来から提案されている内容のワックスでは、大量に印刷する電子写真方式の画像形成装置に使用した場合、揮発性が高いパラフィン系ワックスで各種画像形成装置部材への汚染や、転写媒体そのものを汚染させる等の不具合が生じる事が判明した。
【0010】
…(省略)…
単純にパラフィンワックスの融点を規定するだけでは、画像形成装置内汚染と所望の定着性を確保するには至っていないのが実状である。また、高速印刷をする場合の画像は、画像面積率が高いフルカラー画像が殆どであり、定着工程で加熱媒体と転写媒体を高速で確実に分離する必要があるのに対しては、ワックスによる離型性の確保と機内汚染の両立は、最も重要な課題となっている。
【0011】
…(省略)…
これにより画像ムラは解決できるが、ワックスの融点が高く、低温定着性に不利である。しかも、低温定着性を考慮し、ワックスの吸熱ピークを下げただけでは、高温時の記録材としての紙と定着装置のローラからの分離性に課題が残る。
更に、トナー定着時に発生する揮発成分が機内壁面への付着による電子部品への誤動作が発生する場合がある。揮発成分としては樹脂、着色剤からの発生もあるが、近年の材料技術によりこれらは殆ど問題とならなくなっているが、トナー中のワックスから揮発される揮発成分が残課題となっている。特にパラフィンワックスには揮発量が多く、使用上の不具合となるケースが多い。
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、低温定着時での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性との両立、さらに定着時の揮発分低減、低温定着性と高温定着時の紙とローラの分離性を両立することの可能なトナー、これを含む現像剤、前記トナーを収容したトナー入り容器、前記トナーを収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジ及び前記トナーを収容した現像手段を備える画像形成装置を提供することを目的とする。」

エ 「【0048】
《TGA法》
また、ワックスのTGA法による単位時間当たりの重量減少率が、0.005?0.5〔wt%/min〕であることが好ましい。このワックスのTGA法による単位時間当たりの重量減少率は、より好ましくは0.005?0.1〔wt%/min〕である。
ワックスのTGAによる単位時間当たりの重量減少率が0.005wt%/分未満ではワックスとして離型性に劣り、好ましくない。0.5wt%/分を超えた場合、定着時にワックスからの揮発分が多くなり、好ましくない。
尚、測定方法は上述のトナーのTGA法による単位時間当たりの重量減少率の測定の場合と同様である。」

オ 「【0207】
(実施例1-1)
以下のようにして「トナー材料液[油相]」、「水系媒体[水相]」を調整した。
<トナー材料液[水相]の調製>
〔未変性ポリエステル(低分子ポリエステル)の合成〕
冷却管、攪拌機及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229質量部、ビスフェノールAプロピオンオキサイド3モル付加物528質量部、テレフタル酸207質量部、アジピン酸45質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃にて7時間反応させた。次いで、該反応液を10?15mmHgの減圧下にて5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸43質量部を添加し、常圧下、185℃にて2時間反応させて、未変性ポリエステルを合成した。
【0208】
得られた未変性ポリエステルは、数平均分子量(Mn)が2,600、重量平均分子量(Mw)が6,600、ガラス転移温度(Tg)が44℃、酸価が23mgKOH/gであった。
【0209】
〔マスターバッチ(MB-1)の調製〕
水1200質量部、前記着色剤としてのカーボンブラック(「Printex35」;デグサ社製、DBP吸油量=42ml/100g、pH=9.5)540質量部、及び前記未変性ポリエステル1210質量部を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。該混合物を二本ロールで160℃にて40分混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチ(MB-1)を調製した。
【0210】
〔ワックス分散液(1-1)の調製〕
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、前記未変性ポリエステル378質量部、ワックス(VICTORY Wax 東洋アドレ社製、融点:58℃、140℃での溶融粘度:12mPa・S、100℃での溶融粘度:13mPa・S、160℃での溶融粘度:9mPa・S、100℃での溶融粘度と160℃での溶融粘度との差:4mPa・S、TGAによる単位時間当たりの重量減少率が0.02wt%/分)110質量部、ワックス分散剤(BE SQUARE 185 Wax、 東洋アドレ社製、融点:68℃、140℃での溶融粘度:15mPa・S、100℃での溶融粘度:18mPa・S、160℃での溶融粘度:14mPa・S、100℃での溶融粘度と160℃での溶融粘度との差:4mPa・S、TGAによる単位時間当たりの重量減少率が0.007wt%/分)49.5質量部、及び酢酸エチル947質量部を仕込み、攪拌下85℃まで昇温し、85℃のまま5時間保持した後、1時間かけて30℃まで冷却しワックス分散液(1-1)を得た。
【0211】
〔有機溶剤相の調製〕
前記ワックス分散液(1-1)を、トナー中ワックス量4.0部に相当する質量で、前記マスターバッチ(MB-1)500質量部、及び酢酸エチル500質量部中に仕込み、2時間混合して原料溶解液を得た。得られた原料溶解液1324質量部を反応容器に移し、ビーズミル(「ウルトラビスコミル」;アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度7m/秒、及び0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填した条件で3パスして、前記カーボンブラック及び前記ワックスの分散を行った。次いで、該分散液に前記未変性ポリエステルの65質量%酢酸エチル溶液1325質量部を添加した。上記同様の条件のビーズミルで1パスし、分散し、有機溶剤相を調製した。得られた有機溶剤相の固形分濃度(測定条件:130℃、30分の加熱による)は、50質量%であった。
【0212】
〔プレポリマーの合成〕
冷却管、撹拌機及び窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物82部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸23部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下235℃で7時間反応し、さらに10?15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1-1]を得た。[中間体ポリエステル1-1]は、数平均分子量2300、重量平均分子量9750、ピーク分子量3100、Tg53℃、酸価0.7mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/gであった。
【0213】
次に、冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1-1]411部、イソホロンジイソシアネート87部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1-1]を得た。[プレポリマー1-1]の遊離イソシアネート質量%は、1.42質量%であった。
【0214】
〔ケチミン(活性水素基含有化合物)の合成〕
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、50℃にて5時間反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成した。得られたケチミン化合物(活性水素機含有化合物)のアミン価は418であった。
【0215】
〔トナー材料液の調製〕
反応容器中に、前記有機溶剤相748質量部、前記プレポリマー114質量部、及び前記ケチミン化合物2.8質量部を仕込み、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて7.3m/sにて1分間混合してトナー材料液を調製した。
【0216】
<水系媒体[水相]の調製>
〔有機樹脂微粒子分散液の調製〕
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器中に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS-30」;三洋化成工業社製)22質量部、スチレン78質量部、メタクリル酸78質量部、アクリル酸ブチル120質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、450回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。該乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温して5時間反応させた。次いで、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を添加し、75℃にて5時間熟成して、ビニル樹脂粒子(スチレン-メタクリル酸-アクリル酸ブチル-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(有機樹脂微粒子分散液)を調製した。
【0217】
得られた有機樹脂微粒子分散液に含まれる有機樹脂微粒子の体積平均粒径(Dv)を、粒度分布測定装置(「nanotrac UPA-150EX」;日機装社製)により測定したところ、54nmであった。また、該有機樹脂微粒子分散液の一部を乾燥して樹脂分を単離し、該樹脂分のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、48℃であり、重量平均分子量(Mw)を測定したところ440,000であった。
【0218】
〔水系媒体の調製〕
水990質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液(「エレミノールMON-7」;三洋化成工業社製)37質量部、前記有機樹脂微粒子分散液15部、及び酢酸エチル90質量部を混合撹拌し、乳白色の液体(水系媒体相)を得た。
【0219】
(トナー造粒工程)
〔乳化・分散工程〕
前記トナー材料液中に前記水系媒体相1210質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業社製)で、周速18m/sにて20分間混合し、水中油滴型分散液(乳化スラリー)を調製した。
【0220】
〔脱溶媒工程〕
攪拌機及び温度計をセットした反応容器中に、前記乳化・分散工程後(粒径制御後)の乳化スラリーを仕込み、30℃にて7時間脱溶剤した後、45℃にて5時間熟成を行い、分散スラリーを得た。
【0221】
〔洗浄及び乾燥〕
前記分散スラリー100質量部を減圧濾過した後、濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数10.0m/sにて10分間)した後濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数12.0m/sにて10分間)した後、減圧濾過した。得られた濾過ケーキに10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数11.0m/sにて10分間)した後、濾過した。得られた濾過ケーキにイオン交換水310質量部を添加し、TK式ホモミキサーで混合(回転数11.0m/sにて10分間)した後、濾過する操作を2回行い、最終濾過ケーキを得た。
【0222】
〔表面処理工程〕
上記洗浄により得られた濾過ケーキに、イオン交換水300質量部を添加し、TK式ホモミキサーで回転数7,000rpmで撹拌混合しトナー分散液を作成した。トナー分散液を加温し、トナー分散液の温度がT1=60℃になった後40分放置し冷却を行った。冷却後トナー分散液の電気伝導度の測定を行った。事前に作成した界面活性剤濃度の検量線より、トナー分散液の界面活性剤濃度を算出した。その値から、界面活性剤濃度が0.05wt%であった。次に濾過を行なった。
【0223】
〔乾燥〕
得られた最終濾過ケーキを循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥し、目開き75μmメッシュで篩い、実施例1-1のトナー母体粒子を得た。
【0224】
〔外添剤処理〕
得られた実施例1-1のトナー母体粒子100質量部に対し、外添剤としての疎水性シリカ1.4質量部と、疎水化酸化チタン0.7質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合処理し、目開き35μmメッシュで篩い、実施例1-1のトナーを製造した。」

カ 「【0226】
( 実施例1-2)
実施例1-1のワックス分散剤をBE SQUARE 195 Wax( 東洋アドレ社製、融点:84℃、140℃での溶融粘度:10mPa・S、100℃での溶融粘度:10mPa・S、160℃での溶融粘度:8mPa・S、100℃での溶融粘度と160℃での溶融粘度との差:4mPa・S、TGAによる単位時間当たりの重量減少率0.009wt%/分)に変更した以外は実施例1-1と同様にしてトナーを作成した。
【0227】
( 実施例1-3)
実施例1-2のワックスを、パラフィンHNP-9(日本精蝋社製、融点:75℃、140℃での溶融粘度:5mPa・S、100℃での溶融粘度:8mPa・S、160℃での溶融粘度:4mPa・S、100℃での溶融粘度と160℃での溶融粘度との差:4mPa・S、TGAによる単位時間当たりの重量減少率が0.04wt%/分)に変更した以外は実施例1-2と同様にしてトナーを得た。
【0228】
( 実施例1-4)
実施例1-2のワックスを、ポリプロピレンワックス660P(三洋化成製、融点:130℃、140℃での溶融粘度:12mPa・S、100℃での溶融粘度:16mPa・S、160℃での溶融粘度:9mPa・S、100℃での溶融粘度と160℃での溶融粘度との差:7mPa・S、TGAによる単位時間当たりの重量減少率が0.02wt%/分)に変更した以外は実施例1-2と同様にしてトナーを得た。」

キ 上記ア?カによれば、引用文献1の【0207】-【0228】に記載された実施例1-1?実施例1-4のトナーは、請求項3に係る発明を具体化したものである。
以上の記載に基づけば、引用文献1には、少なくとも、実施例1-1として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「トナーを構成する材料を含有するトナー材料液を、界面活性剤を含む水系媒体中で乳化又は分散させる工程を経て得られたトナーにおいて、
トナー材料液は、結着剤と、着色剤と、ワックスと、を含有し、
ワックスは、C-H結合及びC-C結合のみで分子鎖が構成されてなり、且つ、融点が50?78〔℃〕、140℃での溶融粘度が5?15〔mPa・S〕であり、
TGA法による単位時間当たりの当該トナーの重量減少率は、0.001?0.1〔wt%/min〕であり、
ワックスは、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス及びサゾールワックスの中から選ばれる1または2以上であり、且つ、TGA法による単位時間当たりの当該ワックスの重量減少率が、0.005?0.5〔wt%/min〕であるトナーであって、
未変性ポリエステルを合成し、水1200質量部、カーボンブラック540質量部、未変性ポリエステル1210質量部を混合し、混練した後、粉砕して、マスターバッチ(MB-1)を調製し、未変性ポリエステル378質量部、ワックス(VICTORY Wax 東洋アドレ社製)110質量部、ワックス分散剤49.5質量部、及び酢酸エチル947質量部を仕込み、ワックス分散液(1-1)を得、ワックス分散液(1-1)を、マスターバッチ(MB-1)500質量部、及び酢酸エチル500質量部中に仕込み、原料溶解液を得、原料溶解液1324質量部を反応容器に移し、カーボンブラック及びワックスの分散を行い、該分散液に未変性ポリエステルの65質量%酢酸エチル溶液1325質量部を添加し、有機溶剤相を調製し、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物82部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸23部及びジブチルチンオキサイド2部を入れ、反応した[中間体ポリエステル1-1]を得、[中間体ポリエステル1-1]411部、イソホロンジイソシアネート87部、酢酸エチル500部を入れ、[プレポリマー1-1]を得、イソホロンジアミン170質量部及びメチルエチルケトン75質量部を仕込み、反応を行い、ケチミン化合物(活性水素基含有化合物)を合成し、有機溶剤相748質量部、プレポリマー114質量部、及びケチミン化合物2.8質量部を仕込み、トナー材料液を調製し、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩22質量部、スチレン78質量部、メタクリル酸78質量部、アクリル酸ブチル120質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を添加し、ビニル樹脂粒子の水性分散液(有機樹脂微粒子分散液)を調製し、水990質量部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5質量%水溶液37質量部、有機樹脂微粒子分散液15部、酢酸エチル90質量部を混合撹拌し、乳白色の液体を得、トナー材料液中に水系媒体相1210質量部を添加し、水中油滴型分散液(乳化スラリー)を調製し、乳化・分散工程後の乳化スラリーを仕込み、脱溶剤した後、分散スラリーを得、分散スラリー100質量部を減圧濾過し、最終濾過ケーキを得、濾過ケーキに、イオン交換水300質量部を添加し、トナー分散液を作成し、濾過を行ない、得られた最終濾過ケーキを乾燥し、トナー母体粒子を得、該トナー母体粒子100質量部に対し、疎水性シリカ1.4質量部、疎水化酸化チタン0.7質量部を混合処理し、製造したトナー。」

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2011-118094号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)であって、その段落【0001】、【0008】、【0010】、【0012】、【0018】、【0036】、【0058】?【0060】、【0187】、【0212】?【0215】、【0244】?【0245】及び実施例1-1?2-2等に記載された発明を、以下「引用発明2」という。

(3)引用文献3について
原査定の拒絶の理由で引用文献3として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2002-296827号公報(以下、同じく「引用文献3」という。)であって、その段落【0001】、【0014】-【0017】、【0056】?【0082】及び実施例1?10等に記載された発明を、以下「引用発明3」という。

(4)引用文献6について
原査定の拒絶の理由で引用文献6として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2010-139574号公報(以下、同じく「引用文献6」という。)であって、その段落【0008】、【0018】-【0020】、【0029】、【0034】及び【0037】等に記載された発明を、以下「引用発明6」という。

(5)引用文献7について
原査定の拒絶の理由で引用文献7として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012-78810号公報(以下、同じく「引用文献7」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。

ア 「【請求項1】
結着樹脂、炭化水素ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、
i)炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、
ii)炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であり、
iii)該総量(B)と、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降であり、炭素数29の炭化水素のピーク検出時間以前に検出される成分の総量(C)との関係が、
(B)/(C)≧2.0である、
ことを特徴とするトナー。」

イ 「【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、及び、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられるトナーに関する。」

ウ 「【0006】
本発明の目的は、高速プロセス及び厚紙への出力のいずれにおいても良好な定着特性を示し、且つ長期間の使用においても機内汚染を抑制し、長期間にわたって画像品質を維持できるトナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結着樹脂、炭化水素ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、該炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、i)炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、ii)炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であり、iii)該総量(B)と、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降であり、炭素数29の炭化水素のピーク検出時間以前に検出される成分の総量(C)との関係が、(B)/(C)≧2.0である、ことを特徴とするトナーに関する。

…(省略)…
【0015】
本発明者らは、トナーに炭化水素ワックス用いた際に発生する機内汚染成分を詳細に分析した結果、炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析を行った際のピークパターンと機内汚染進行具合に関係性があることを見出した。上記分析における200℃で10分間という加熱条件が、一般的な画像形成装置内における高沸点揮発成分の発生状況と近いためであると推察している。また、検討の結果、炭素数30以上の成分が、揮発して装置内にて析出し易く、この成分が機内汚染の大きな要因になっていることが分かった。
【0016】
以上のような検討から、機内汚染を低減するためには、トナー粒子に含有される炭化水素ワックスの高沸点揮発成分の総量及びその中の炭素数30以上の成分の総量が少ないことが必要である。そこで、本発明のトナーが含有する炭化水素ワックスは、200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であることを特徴としている。
…(省略)…」

エ 「【0033】
本発明に用いられる炭化水素ワックスとしては、以下のようなものが利用できる。高分子量ポリオレフィン重合時に得られる低分子量副生成物を精製したポリオレフィン;チーグラー触媒、メタロセン触媒の如き触媒を用いて重合したポリオレフィン;パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス;石炭ガス又は天然ガスを原料としてジントール法、ヒドロコール法、アーゲ法により合成される合成炭化水素ワックス;炭素数1個の化合物をモノマーとする合成ワックス;水酸基、カルボキシル基の如き官能基を有する炭化水素ワックス;炭化水素ワックスと官能基を有する炭化水素ワックスとの混合物が挙げられる。また、これらのワックスを、プレス発汗法、溶剤法、再結晶法、真空蒸留法、超臨界ガス抽出法、融液晶析法等の手法を用いて分子量分布をシャープにしたものや低分子量固形脂肪酸、低分子量固形アルコール、低分子量固形化合物、その他の不純物を除去したものが用いられる。その中でも好ましく用いられるものは、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、メタロセン触媒を用いて合成されたポリエチレン、ポリエチレン重合時に得られる低分子量副生物の蒸留精製物、メタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレンである。さらに、本発明のトナーに用いられるワックスは、特に高沸点揮発成分を効率良く取り除く必要性の観点から、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックスが特に好ましく用いられる。これらのワックスについて、蒸留操作を行うことで、高沸点揮発成分が発生する量を低減され、顕著な機内汚染の抑制効果が得られる。ワックスの蒸留方法として、特に短行程蒸留と分子蒸留を組み合わせた方法が好ましい。
【0034】
例えば、次のような方法で蒸留を行う。原料となるワックスに対して、圧力1?10Pa、温度180?200℃の条件で短行程蒸留を行い、初留を取り除く工程を繰り返してワックスを分取する。続いて分取したワックスに対して圧力0.1?0.5Pa、温度190?220℃の条件で分子蒸留を行い、機内汚染の原因となる炭化水素成分を取り除く。」

オ 「【実施例】
【0064】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。本実施例においては特に断りがないかぎり、部数は全て質量基準である。
【0065】
(ワックス1の製造方法)
天然ガス由来のフィッシャートロプシュワックス(融点77℃)を原料とし、ワイプトフィルム蒸発装置を用いて、温度180℃、圧力2Paの条件で30分保持した後、195℃まで段階的に昇温し、15質量%の軽質留分を取り除いた。続いて圧力を1Paにして280℃まで段階的に昇温し、蒸留残渣5質量%を取り除いた収率80質量%の蒸留ワックスを分取した。分取した蒸留ワックスを、分子蒸留装置を用いて温度195℃、圧力0.2Paの条件で軽質留分を取り除き、最終収率が原料に対して70質量%となるワックス1を得た。ワックス1を200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析の測定結果を図1に示す。
【0066】
(ワックス2の製造方法)
ワックス1の製造方法において、原料のワックスを天然ガス由来のフィッシャートロプシュワックス(融点90℃)に変更し、蒸留時間を調整する以外は同様の方法で処理を行いワックス2を得た。その際、ワイプトフィルム蒸発装置で軽質留分5質量%、蒸留残渣5質量%を除去した後に、分子蒸留装置で軽質留分10質量%を除去した。最終収率は80質量%であった。
【0067】
(ワックス3の製造方法)
ワックス1の製造方法において、原料のワックスを石炭由来のフィッシャートロプシュワックス(融点105℃)に変更し、蒸留時間を調整する以外は同様の方法で処理を行いワックス3を得た。その際、ワイプトフィルム蒸発装置で軽質留分2.5質量%、蒸留残渣2.5質量%を除去した後に、分子蒸留装置で軽質留分10質量%を除去した。最終収率は85質量%であった。
【0068】
(ワックス4の製造方法)
ワックス1の製造方法において、原料のワックスを原油から得られたスラックワックス(融点75℃)に変更し、蒸留時間を調整する以外は同様の方法で処理を行いワックス4を得た。その際、ワイプトフィルム蒸発装置で軽質留分15質量%、蒸留残渣5質量%を除去した後に、分子蒸留装置で軽質留分20質量%除去した。最終収率は60質量%であった。
【0069】
(ワックス5の製造方法)
ワックス4の製造方法において、分子蒸留の蒸留時間を調整し、軽質留分の除去量を10質量%に変更する以外は同様の方法で処理を行い、最終収率70質量%のワックス5を得た。

…(省略)…

【0095】
ワックス1?29についての測定結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
〔実施例1〕
下記の手順によって懸濁重合法トナーを製造した。
【0098】
温度60℃に加温したイオン交換水1300質量部に、リン酸三カルシウム9質量部、10%塩酸11質量部を添加し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000r/minにて撹拌し、pH5.2の水系媒体を調製した。
【0099】
一方、
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40.0質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3・・・・・・・・・・・・・・・6.5質量部
・帯電制御剤ボントロンE-88(オリエント化学社製)・・・・・・1.0質量部
・帯電制御樹脂〔FCA-1001-NS(藤倉化成社製)〕・・・・・1.0質量部
からなる混合物を、スターミルLMZ2型(アジサワ・ファインテック社製)を用いて3時間分散し、顔料分散組成物を調整した。
【0100】
さらに、別容器にて、下記の材料をプロペラ式攪拌装置にて100r/minで溶解して溶解液を調製した。
・スチレン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.0質量部
・n-ブチルアクリレート・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.0質量部
・飽和ポリエステル樹脂・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5.0質量部
〔イソフタル酸/テレフタル酸/無水トリメリット酸/ビスフェノールAプロピレンオキサイド2mol付加物/ビスフェノールAプロピレンオキサイド3mol付加物=50mol%/50mol%/0.1mol%/88mol%/22mol%から生成〕
(酸価10mgKOH/g、ピーク分子量10,000、重量平均分子量:9,900、
Tg=72℃)
次に上記溶解液に、
・ワックス1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10.0質量部
・ジビニルベンゼン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・0.20質量部
を投入し、更に前記顔料分散組成物を加え、その後、混合液を温度65℃に加温した後にTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)にて、10,000r/minにて攪拌し、重合性単量体組成物を作成した。
【0101】
続いて、上記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤として8.0質量部のパーブチルPV(10時間半減期温度54.6℃(日本油脂製))を加え、温度70℃にてTK式ホモミキサーを用いて10,000r/minで20分間攪拌し、重合性単量体組成物を造粒した。
【0102】
この重合性単量体の水分散液をプロペラ式攪拌装置に移して120r/minで攪拌しつつ、温度70℃で5時間反応させた後、温度80℃まで昇温し、更に5時間反応を行い、トナー粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してトナー粒子を得た。
【0103】
上記トナー粒子100質量部に対して、流動性向上剤として、シリカ微粉体に対して20質量%のジメチルシリコーンオイルで処理された、負極性に摩擦帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.7質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合して、重量平均粒径(D4)が6.5μmのトナーNo.1を得た。トナーNo.1の物性を表2に示す。トナーNo.1について、下記の評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、表2におけるワックスの含有量は結着樹脂100.0質量部に対するワックスの含有量である。
【0104】
[機内汚染評価]
トナーNo.1について、下記の様な改造を施した市販のレーザービームプリンターLBP9500C(キヤノン社製)を用いて、200,000枚の耐久試験を行った。プリンターの改造条件としては、普通紙モードのプロセススピードを360mm/secに、厚紙モードのプロセススピードを90mm/secに変更し、定着温調を200℃に設定した。耐久評価チャートは各色印字率が5%(フルカラー印字率20%)のオリジナルチャートを用い、イエロー・マゼンタ・シアン・ブラックの全ステーションに、トナーNo.1を詰め替えたシアンカートリッジを装着し、トナーが無くなる毎にカートリッジ交換を行い、プリントを続けた。

…(省略)…

【0113】
〔実施例2〕
下記の手順によって乳化凝集法トナーを製造した。
(樹脂粒子分散液1の調製)
・スチレン 90.0質量部
・nブチルアクリレート 20.0質量部
・アクリル酸 3.0質量部
・ドデカンチオール 6.0質量部
・四臭化炭素 1.0質量部
上記材料を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)2.5質量部をイオン交換水140質量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化した。この乳化液を10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム1質量部を溶解したイオン交換水10質量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が温度70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。こうして、平均粒径が0.17μm、ガラス転移点が57℃、重量平均分子量(Mw)が11,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製した。
【0114】
(樹脂粒子分散液2の調製)
・スチレン 75.0質量部
・nブチルアクリレート 25.0質量部
・アクリル酸 2.0質量部
上記材料を混合し、溶解したものを、非イオン性界面活性剤(三洋化成(株)製:ノニポール400)1.5質量部及びアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3質量部をイオン交換水140質量部に溶解したものに、フラスコ中で分散し、乳化した。この乳化液を10分間ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム0.8質量部を溶解したイオン交換水10質量部を投入し、窒素置換を行った後、前記フラスコ内を撹拌しながら内容物が温度70℃になるまでオイルバスで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続した。この様にして、平均粒径が0.1μm、ガラス転移点が61℃、重量平均分子量(Mw)が550,000である樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製した。
【0115】
(ワックス粒子分散液の調製)
・ワックス2(融点92℃) 50.0質量部
・アニオン性界面活性剤 5.0質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 200.0質量部
上記材料を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が0.5μmのワックスを分散させてなるワックス粒子分散液を調製した。
【0116】
(着色剤粒子分散液1の調製)
・C.I.ピグメントブルー15:3 20.0質量部
・アニオン性界面活性剤 2.0質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0質量部
上記材料を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この着色剤粒子分散液1における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-700)を用いて測定したところ、含まれる着色剤粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0117】
(帯電制御粒子分散液の調製)
・ジ-アルキル-サリチル酸の金属化合物 20.0質量部
(帯電制御剤、ボントロンE-88、オリエント化学工業社製)
・アニオン性界面活性剤 2.0質量部
(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)
・イオン交換水 78.0質量部
上記材料を混合し、サンドグラインダーミルを用いて分散した。この帯電制御粒子分散液における粒度分布を、粒度測定装置(堀場製作所製、LA-700)を用いて測定したところ、含まれる帯電制御粒子の平均粒径は、0.2μmであり、また1μmを超える粗大粒子は観察されなかった。
【0118】
(混合液調製)
・樹脂粒子分散液1 250.0質量部
・樹脂粒子分散液2 110.0質量部
・着色剤粒子分散液1 50.0質量部
・ワックス粒子分散液 80.0質量部
上記材料を、撹拌装置,冷却管,温度計を装着した1リットルのセパラブルフラスコに投入し撹拌した。この混合液を1N-水酸化カリウムを用いてpH=5.2に調整した。
【0119】
(凝集粒子形成)
この混合液に凝集剤として、10%塩化ナトリウム水溶液150質量部を滴下し、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら温度57℃まで加熱した。この温度の時、3質量部の樹脂粒子分散液2と10質量部の帯電制御剤粒子分散液を加えた。温度50℃で1時間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると重量平均粒径が約5.3μmである凝集粒子(A)が形成されていることが確認された。
【0120】
(融着工程)
その後、ここにアニオン製界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3質量部を追加した後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら温度105℃まで加熱し、1時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、重量平均粒径(D4)が6.0μmのトナー粒子(2)を得た。このトナー粒子(2)100質量部に対し、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理された、負極性に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.8質量部をヘンシェルミキサーに投入し、3000r/minで15分間混合してトナーNo.2を得た。得られたトナーNo.2の物性を表2に示す。また、トナーNo.2について、実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0121】
〔実施例3〕
下記の手順によって粉砕法によるトナーを製造した。
【0122】
懸濁重合法によって、重合開始剤として2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンを用いたスチレン-ブチルアクリレート共重合体A(St/BA=80/20、Tg=67℃、Mw=820,000)を作製した。ついで、溶液重合法によって、重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキサイドを用いたスチレン-ブチルアクリレート共重合体B(St/BA=85/15、Tg=61℃、Mw=15,800)を作製した。共重合体Bを70質量部に対し共重合体Aを30質量部を溶液中で混合したものを結着樹脂1とした。
・結着樹脂 100.0質量部
・C.I.Pigment Blue15:3 6.0質量部
・帯電制御剤ボントロンE-88(オリエント化学社製) 1.0質量部
・ワックス 34.0質量部
【0123】
上記材料をヘンシェルミキサーで予備混合した後、温度110℃に設定した二軸混練押出機にて混練した。得られた混練物を冷却しカッターミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた粉砕機を用いて微粉砕し、コアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて分級し、重量平均粒径6.5μmのトナー粒子を得た。上記トナー粒子100質量部に、流動性向上剤として、ジメチルシリコーンオイル(20質量%)で処理された、負極性に帯電する疎水性シリカ微粉体(1次粒子径:7nm、BET比表面積:130m2/g)1.7質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で3000r/minで15分間混合して、重量平均粒径(D4)が6.7μmのトナーNo.3を得た。得られたトナーNo.3の物性を表2に示す。また、トナーNo.3について、実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。
【0124】
〔実施例4乃至10、比較例1乃至4、及び、比較例7乃至17〕
ワックスの種類及び含有量を表2に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして懸濁重合法トナーNo.4乃至13、16乃至27を得た。トナーNo.4乃至13、16乃至27の物性を表2に示す。また、トナーNo.4乃至13、16乃至27について、実施例1と同様に評価した結果を表3に示す。

…(省略)…

【0129】
【表2】

【0130】
【表3】



カ 上記ア?オによれば、引用文献7には、請求項1に係るトナーの具体例として、懸濁重合法(実施例1)、乳化凝集法(実施例2)及び粉砕法(実施例3)によって製造された、以下の(ア)?(ウ)の発明(以下、順に「引用発明7-1」、「引用発明7-2」及び「引用発明7-3」という。)が記載されていると認められる。
(ア)引用発明7-1
「電子写真法、静電記録法、及び、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられ、結着樹脂、炭化水素ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、
i)炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、
ii)炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であり、
iii)該総量(B)と、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降であり、炭素数29の炭化水素のピーク検出時間以前に検出される成分の総量(C)との関係が、
(B)/(C)≧2.0であり、
スチレンを40.0質量部、C.I.ピグメントブルー15:3を6.5質量部、帯電制御剤ボントロンE-88を1.0質量部、帯電制御樹脂を1.0質量部からなる混合物を、分散し、顔料分散組成物を調整し、
スチレンを30.0質量部、n-ブチルアクリレートを30.0質量部、飽和ポリエステル樹脂を5.0質量部、溶解して溶解液を調製し、溶解液に、ワックス1を10.0質量部、ジビニルベンゼンを0.20質量部、を投入し、顔料分散組成物を加え、混合液を攪拌し、重合性単量体組成物を作成し、水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、8.0質量部のパーブチルPVを加え、攪拌し、重合性単量体組成物を造粒し、重合性単量体の水分散液を攪拌しトナー粒子を製造し、トナー粒子100質量部に対して、疎水性シリカ微粉体1.7質量部を混合して、懸濁重合法で製造したトナーNo.1。」

(イ)引用発明7-2「電子写真法、静電記録法、及び、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられ、結着樹脂、炭化水素ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、
i)炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、
ii)炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であり、
iii)該総量(B)と、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降であり、炭素数29の炭化水素のピーク検出時間以前に検出される成分の総量(C)との関係が、
(B)/(C)≧2.0であり、
スチレンを90.0質量部、nブチルアクリレートを20.0質量部、アクリル酸を3.0質量部、ドデカンチオールを6.0質量部、四臭化炭素を1.0質量部、混合し、分散し、乳化した乳化液を混合しながら、乳化重合を継続し、樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液1を調製し、
スチレンを75.0質量部、nブチルアクリレートを25.0質量部、アクリル酸を2.0質量部、を混合し、分散し、乳化した乳化液を混合しながら、乳化重合を継続し、樹脂粒子を分散させてなる樹脂粒子分散液2を調製し、
ワックス2を50.0質量部、アニオン性界面活性剤を5.0質量部、イオン交換水を200.0質量部、分散し、ワックスを分散させてなるワックス粒子分散液を調製し、C.I.ピグメントブルー15:3を20.0質量部、アニオン性界面活性剤を2.0質量部、イオン交換水を78.0質量部、混合し、分散し、着色剤粒子分散液1を調製し、ジ-アルキル-サリチル酸の金属化合物を20.0質量部、アニオン性界面活性剤を2.0質量部、イオン交換水を78.0質量部、混合し、分散し、帯電制御粒子分散液を調整し、樹脂粒子分散液1を250.0質量部、樹脂粒子分散液2を110.0質量部、着色剤粒子分散液1を50.0質量部、ワックス粒子分散液を80.0質量部、投入撹拌し、混合液を調整し、この混合液に10%塩化ナトリウム水溶液150質量部を滴下し、3質量部の樹脂粒子分散液2と10質量部の帯電制御剤粒子分散液を加え、アニオン製界面活性剤3質量部を追加し、トナー粒子(2)を得て、トナー粒子(2)100質量部に対し、負極性に帯電する疎水性シリカ微粉体1.8質量部を混合して乳化凝集法で製造したトナーNo.2。」

(ウ)引用発明7-3「電子写真法、静電記録法、及び、トナージェット法の如き画像形成方法に用いられ、結着樹脂、炭化水素ワックス及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
該炭化水素ワックスを200℃で10分間加熱して揮発した成分のGC/MS分析において、
i)炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(A)が1500ppm以下であり、
ii)炭素数30の炭化水素のピーク検出時間以降に検出される成分の総量(B)が570ppm以下であり、
iii)該総量(B)と、炭素数16の炭化水素のピーク検出時間以降であり、炭素数29の炭化水素のピーク検出時間以前に検出される成分の総量(C)との関係が、
(B)/(C)≧2.0であり、
懸濁重合法によって、スチレン-ブチルアクリレート共重合体Aを作製し、溶液重合法によって、スチレン-ブチルアクリレート共重合体Bを作製し、共重合体Bを70質量部に対し共重合体Aを30質量部、混合したものを結着樹脂1とし、結着樹脂を100.0質量部、C.I.Pigment Blue15:3を6.0質量部、帯電制御剤ボントロンE-88を1.0質量部、ワックス3を34.0質量部、混合した後、混練し、得られた混練物を粗粉砕した後、微粉砕し、トナー粒子を得て、トナー粒子100質量部に、疎水性シリカ微粉体1.7質量部を混合して、粉砕法で製造したトナーNo.3。」

(6)引用文献4、5について
原査定の拒絶の理由で引用文献4として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2011-232552号公報(以下、同じく「引用文献4」という。)には「【0009】本発明は、少なくとも結着樹脂、ポリエステル樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子と無機微粉体とを有するトナーであって、…省略…」、「【0026】 懸濁重合法により本発明のトナーを得ることで、ワックスがトナー粒子の中心付近に存在し、結着樹脂の外層にポリエステル樹脂が存在するコアシェル構造となり、…省略…」と、また、原査定の拒絶の理由で引用文献5として引用され、本件出願前に、日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2012-078649号公報(以下、同じく「引用文献5」という。)には「【0007】本発明は、結着樹脂、着色剤、炭化水素ワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、…省略…」、「【0020】 …省略…本発明に用いられるトナー粒子が、水系媒体中で造粒されることにより製造される場合、各樹脂の極性の差からトナー粒子がコアシェル構造を形成していると考えている。」と記載されている。

以上の記載に基づけば、引用文献4、5には、結着樹脂、着色剤及びワックスを含有するトナー粒子を有するトナーであって、コアシェル構造を有するという技術的事項が記載されていると認められる。

2 対比及び判断
(1)対比
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 結着樹脂
引用発明1における「未変性ポリエステル」は、定着時における機能からみて、本願発明1の「結着樹脂」に相当する。

イ 離型剤
引用発明1の「ワックス」は、技術的にみて、本願発明1の「離型剤」に相当する。

ウ 着色剤
引用発明1の「着色剤としてのカーボンブラック」は、その文言の意味するとおり、本願発明1の「着色剤」に相当する。

エ トナーの加熱減量
引用発明1の「重量減少率」は、「TGA法による単位時間当たりの」「重量減少率」である。ここで、本願発明1の「加熱減量」は、「トナー」のものであって、その測定方法(本件出願の明細書の【0143】参照。)からみて、本願発明1の「加熱減量」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。
「結着樹脂、離型剤、及び着色剤を少なくとも含有するトナー。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明1は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1は、「コアシェル構造を有する」のに対し、引用発明1のトナーは、そのような構成を備えていない点。

(相違点2)
本願発明1は、「イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計が、炭素数33?35以外の他の炭化水素化合物の信号強度を100%としたとき、信号強度比率で40%?70%であ」るのに対し、引用発明1は、上記信号強度比率が明らかでない点。

(相違点3)
トナーの加熱減量について、本願発明1では、「トナーの165℃で10分間の加熱減量が0.01質量%?0.40質量%であり、かつ前記トナーの165℃で10分間加熱後から250℃までの加熱減量が0.1質量%?5.0質量%である」と特定されているのに対し、引用発明1では、「TGA法による単位時間当たりの当該トナーの重量減少率は、0.001?0.1〔wt%/min〕であり」と特定されている点。

(3)判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
ア 引用発明1のトナーが、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計が、炭素数33?35以外の他の炭化水素化合物の信号強度を100%としたとき、信号強度比率で40%?70%である蓋然性が高いといえるかについて、まず検討する。

原査定では、「ワックスの耐熱性が高いこと、ワックスの揮発を抑制すること、トナーの低温定着性が高いこと、部材汚染が抑制されること」の点で効果が類似していることから、引用発明1が、相違点2を満たす蓋然性が高いとの判断がなされている。しかしながら、これらの効果と、トナーにおける炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量との定量的な関係を推認し得るような記載は、引用文献1にはなく、また、これが技術常識であることを示す証拠もないから、効果が類似することを根拠に、引用発明が、相違点2に係る構成を具備する蓋然性が高いとまではいえない。
(当合議体注:このことは、引用発明1のトナーの製造方法において、ワックスが、市販品を精製(蒸留)することなく用いられていることからも理解できることである。)
したがって、引用発明1のトナーが、相違点2に係る構成を具備する蓋然性が高いとはいえない。

イ 次に、引用発明1において、当業者が、相違点2に係る構成に容易に想到し得たかについて、検討する。
引用文献1には、低温定着時での離型性に優れ、フィルミングの発生が少なく、低温定着性と耐熱保存性との両立、さらに定着時の揮発分低減、低温定着性と高温定着時の紙とローラの分離性を両立することの可能なトナーとの記載はあるものの(【0012】参照)、トナーにおける、炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量を特定の範囲内に調整する、例えば、離型剤成分分布を所定のものにするという技術思想は開示されていない。
また、原査定で引用した、引用文献4及び5にも、上記技術思想について開示はなく、また、そのような技術思想が当業者における本件出願時における技術常識であったことを示す証拠もない。
以上によれば、引用発明1において、当業者が、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計の信号強度比率を、上記相違点2に係る数値範囲とすることに容易に想到し得たということはできない。

ウ 本願発明1の効果として、本件出願の明細書の【0203】【表3】には、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計の信号強度比率が相違点2の数値範囲内であれば、「排気フィルタ詰まり」、「キャリアスペント性」及び「低温定着性」がいずれも良好または許容レベルであることが記載されている。ここで、炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量を特定の範囲内に調整するという技術思想がいずれの文献に記載されていないことは上記イのとおりであるから、上記効果は、引用発明1や引用文献4、5に記載された技術的事項から当業者が予測できない効果であると認められる。

したがって、上記相違点1、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

また、引用文献1に記載の他の実施例から、主引用発明を認定したとしても同様である。

(4)請求項2?請求項9に係る発明について
本件出願の請求項2?9に係る発明は、いずれも、本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加してなるトナー、二成分現像剤又はカラー画像形成装置の発明であるから、同じ前記発明特定事項を具備するものである。
そうしてみると、前記(3)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献1に記載された発明、引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(5)引用文献2、3を主引用例とした場合
本願発明1と引用発明2、3を対比すると、相違点は、以下に示す相違点3以外は、上記(2)に示した、相違点1?2と同様である。
(相違点3)
本願発明1では、「トナーの165℃で10分間の加熱減量が0.01質量%?0.40質量%であり、かつ前記トナーの165℃で10分間加熱後から250℃までの加熱減量が0.1質量%?5.0質量%である」のに対し、引用発明2、3では、上記加熱減量が明らかでない点。
そして、相違点についての判断は、上記(3)で述べたのと同様の理由により、本願発明1は、引用文献2、3に記載された発明及び引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2?9についても、上記(3)で述べたのと同様の理由により、引用文献2、3に記載された発明及び引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(6)引用文献7を主引用例とした場合
本願発明1と引用発明7-1?7-3とを、それぞれ対比すると、相違点は、上記(5)の相違点1?3と同様である。

(7)引用文献7を主引用例とした場合の判断
事案に鑑みて、上記相違点2について検討する。
ア 引用発明7-1、引用発明7-2、引用発明7-3の各トナーが、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計が、炭素数33?35以外の他の炭化水素化合物の信号強度を100%としたとき、信号強度比率で40%?70%である蓋然性が高いといえるかについて、まず検討する。

原査定では、「多様な条件下で蒸留されたワックスを用いたトナーが記載されている」ことから、引用発明7-1?7-3が、相違点2を満たす蓋然性が高いとの判断がなされている。しかしながら、引用発明7-1?7-3のトナーにおける「ワックス1」?「ワックス3」は、高沸点揮発成分を取り除くために蒸留操作が行われたものであるところ(引用文献7の【0033】)、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量を調整することを意図したものではないし、また、蒸留操作を行う前の原料ワックスが天然ガス由来または石炭由来のワックスであるため、蒸留操作前のイオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量は不明であって、蒸留操作後の同含有量はなおさら不明というほかない。
したがって、引用発明7-1?7-3のトナーが、相違点2に係る本願発明の構成を具備する蓋然性が高いとまではいえない。

イ 次に、引用発明7-1?7-3において、当業者が、相違点2に係る構成に容易に想到し得たかについて、検討する。
引用文献7には、良好な定着特性を示し、且つ、機内汚染を抑制し、長期間にわたって画像品質を維持できるトナーを提供するために、ワックスの高沸点揮発成分の総量及びその中の炭素数30以上の成分の総量を少なくすることは記載されているものの(【0006】、【0016】参照。)、トナーにおける、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量を特定の範囲内に調整する、例えば、離型剤成分分布を所定のものにするという技術思想は開示されていない。
また、原査定で引用した、引用文献4及び5にも、上記技術思想について開示はなく、また、そのような技術思想が当業者における本件出願時における技術常識であったことを示す証拠もない。
以上によれば、引用発明7-1?7-3において、当業者が、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計の信号強度比率を、上記相違点2に係る数値範囲とすることに容易に想到し得たということはできない。

ウ 本願発明1の効果として、本件出願の明細書の【0203】【表3】には、イオン付着質量分析法(IAMS)で測定した炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量の総計の信号強度比率が相違点2の数値範囲内であれば、「排気フィルタ詰まり」、「キャリアスペント性」及び「低温定着性」がいずれも良好または許容レベルであることが記載されている。ここで、炭素数33?35の炭化水素化合物の含有量を特定の範囲内に調整するという技術思想がいずれの文献に記載されていないことは上記イのとおりであるから、上記効果は、引用発明7-1?7-3や引用文献4、5に記載された技術的事項から当業者が予測できない効果であると認められる。

したがって、上記相違点1、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明7-1?7-3、引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

また、仮に、引用文献7に記載された他の実施例に係るトナーから、主引用発明を認定したとしても判断は同様である。

(8)請求項2?請求項9に係る発明について
本件出願の請求項2?9に係る発明は、いずれも、本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加してなるトナー、二成分現像剤又はカラー画像形成装置の発明であるから、同じ前記発明特定事項を具備するものである。
そうしてみると、前記(7)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献7に記載された発明、引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

(9)引用文献6を主引用例とした場合
本願発明1と引用発明6を対比すると、相違点は、上記(6)で検討した、相違点1?3と同様である。
そして、相違点についての判断は、上記(7)で述べたのと同様の理由により、本願発明1は、引用文献6に記載された発明及び引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2?9についても、上記(7)で述べたのと同じ理由により、引用文献6に記載された発明及び引用文献4及び5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明1?8は、引用文献1?3、6?7に記載された発明及び引用文献4?5、8?9に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-07-10 
出願番号 特願2014-236587(P2014-236587)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樋口 祐介廣田 健介  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 神尾 寧
井口 猶二
発明の名称 トナー、二成分現像剤、及びカラー画像形成装置  
代理人 廣田 浩一  
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