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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01S |
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管理番号 | 1363882 |
審判番号 | 不服2019-8847 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-02 |
確定日 | 2020-07-28 |
事件の表示 | 特願2014-202178「光部品及びその製造方法ならびに発光装置及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月 9日出願公開、特開2016- 72513、請求項の数(22)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年9月30日を出願日とする出願であって平成30年7月30日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年10月5日に意見書が提出されると共に手続補正がされたが、平成31年3月25日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、令和元年7月2日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成31年3月25日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。 本願請求項1-22に係る発明は、以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2009-272576号公報 2.特開昭54-66915号公報(周知技術文献) 3.特開2009-206459号公報(周知技術文献) 4.特開2011-35198号公報(周知技術文献) 5.特表2014-524669号公報(周知技術文献) 第3 本願発明 1 本願発明について 本願請求項1-22に係る発明(以下、請求項の項番にしたがい、「本願発明1」などという。)は、平成30年10月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項に記載された事項により特定される発明であり、そのうち独立請求項に係る本願発明1、15は以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材と、 前記貫通孔の内壁に形成された第1透光部材と、 光入射面と光出射面と外周側面とを有し、前記貫通孔の中に配置されかつ蛍光体を含む第2透光部材とを備え、 前記第2透光部材の外周側面が、前記貫通孔の内壁に、前記第1透光部材による融着によって固定された光部品。」 「【請求項15】 入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材を準備し、 光入射面と光出射面と外周側面とを有しかつ蛍光体を含む第2透光部材を準備し、 前記貫通孔の内壁に第1透光部材を形成し、 前記第2透光部材の外周側面を、前記貫通孔の内壁に、前記第1透光部材による融着によって固定する工程を含む光部品の製造方法。」 第4 引用文献の記載事項、及び、引用発明 1 引用文献1 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、以下の記載がある。(下線は当審で付加。以下同様。) (1) 「【請求項1】 半導体発光素子と、 該半導体発光素子が搭載される台座と、 該半導体発光素子からの光を通過させ、かつ前記半導体発光素子に近い側から遠い側に向かって広口となる貫通孔を備え、前記半導体発光素子が封止されるキャップと、 少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、前記半導体発光素子からの出射光を透過させる第1の透光部材と、 少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、蛍光体を含有し、前記第1の透光部材からの光を透過させる第2の透光部材とを備える半導体発光装置。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、半導体発光装置に関し、より詳細には、高輝度で、紫外域光から赤色光を発光する発光ダイオード及び半導体レーザ等の半導体発光装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来から、光源である半導体発光素子からの出射光をいかに効率よく外部へ取り出すかが、半導体発光装置にとって大きな課題となっており、このため、種々の開発がなされてきた。 例えば、従来のLED発光装置は、カップを有するリードフレーム上にLEDを載置し、LED全体を樹脂で封止している。封止樹脂は、カップ内部を充填する樹脂と、この樹脂を含めたカップ全体を包囲する樹脂とから構成される。このカップ内部を充填する樹脂には、LEDの発光波長を他の波長に変換又は一部吸収する蛍光物質が含まれており、LEDからの出射光が蛍光物質により波長変換される。変換光は、四方八方に散乱するが、ほとんどの変換光はカップ内部で反射して外部へ取り出される。 しかし、このような構成では、カップ内で反射された光の一部が戻り光となって、LEDに照射され、吸収されることがある。これにより、LEDの特性が悪化したり、出力光の減少及びライフ特性の悪化を招く。加えて、LEDと蛍光物質とが直接接触するため、LEDで発生した熱が蛍光物質に伝搬し、蛍光物質の特性を悪化させるとともに、封止樹脂にも伝搬し、封止樹脂を劣化させるという問題があった(特許文献1?3参照)。 【0003】 また、光広がり角の小さい発光装置を得るためには、LEDから出射された光を、できるだけ多くカップ内面で反射させる必要がある。そのために、カップのLED載置面の面積をLEDの底面より大きくし、カップの深さを深くし、LEDの側面からの光をカップの底面及び斜面の広い面積で反射させる。 しかし、LEDの側面からの出射光をカップ内で反射させることにより、出射光全体として減少するなどの問題を招く。 【0004】 また、蛍光物質の特性悪化を改善するために、LED又は半導体レーザと蛍光物質とを離間させて搭載する発光装置では、散乱光がLED又は半導体レーザ自体に吸収される割合が増加し、出力光の減少及びライフ特性の悪化がより顕著となり、発光効率の低い発光装置となるという問題もある(特許文献4?7)。 さらに、上述した発光効率の低下を改善するために、LEDと蛍光物質とを離間させ、蛍光物質の外周に封止樹脂を設けた発光装置が提案されているが、この場合でも、一部の樹脂がLEDと接触しているため、LEDの発熱により、樹脂が劣化するという問題がある(特許文献6)。」 「【発明を実施するための最良の形態】 【0008】 本発明の半導体発光装置は、典型的には、図1及び図2に示したように、半導体発光素子(例えば、半導体レーザ、以下、単に「発光素子」と記することがある)11と、発光素子11を載置するための台座12と、発光素子11を台座12の一部とともに覆うキャップ13とを備えて構成される。 キャップ13は、有底の円筒形状をしており、その上面の略中央部分に、発光素子11からの出射光が通過する貫通孔16が形成されている。この貫通孔16は、発光素子に対向する内側から外側に向かって広口となる形状を有している。また、この貫通孔16内には、内側から、発光素子からの出射光を透過する第1の透光部材と、第1の透光部材からの光を透過する第2の透光部材とが、この順に配置されている。 台座12には、発光素子11の電極(図示せず)とワイヤ19を介して電気的に接続されたリード14の一端を鉛直方向に突出させるための貫通孔20が形成されている。貫通孔20における台座12とリード14との隙間には、絶縁材15が埋設されている。」 「【0019】 キャップは、発光素子の台座への搭載形態に応じて、発光素子の光出射部位に対向する部分に、発光素子からの光を通過させる貫通孔を有している。従って、貫通孔は、キャップの上面又は側面等のいずれの部位に形成されていてもよい。 貫通孔の平面形状は、特に限定されず、例えば、キャップ内側又は外側の平面視で、円形、楕円形、長方形、正方形、菱形等の多角形等が挙げられる。また、キャップ内側と外側とで、異なる平面形状であってもよい。キャップ内側の貫通孔の大きさは、発光素子の出射光の広がり角、発光素子とキャップとの距離等によって適宜調整することができる。 例えば、少なくともキャップ内側においては、発光素子の出射光の外形及び大きさに合わせたもの、つまり、発光素子からの出射光がほぼ全て貫通孔に進入できるものであればよい。ここで、ほぼ全てとは、全体の出射光の80%以上を意味する。例えば、キャップ内側の貫通孔の面積は、以下の式で表される範囲に設定することができる。 (式中、A(mm^(2))はキャップ内側の貫通孔の面積、L(mm)は発光素子とキャップまでの距 離、R(°)は、発光素子からの出射光の広がり角を表す(図9参照))。」 「【0031】 (第1の透光部材) 第1の透光部材は、主としてキャップにおける貫通孔内で支持され、かつ、発光素子からの光を直接透過させ、その後方に配置する第2の透光部材に光を入射させるための部材であり、透明であることが必要である。また、上述した第2の透光部材の材料等にもよるが、この第2の透光部材の融点又は軟化点よりも、高い融点又は軟化点を有するものが好ましい。このような材料を用いることにより、上述したように、この第1の透光部材を被覆するように、後述する融着等による第2の透光部材の形成に、十分に耐性を有し、第2の透光部材の形成を容易かつ簡便に行うことを可能とする。 さらに、第1の透光部材は、大気の屈折率(波長400?800における屈折率:約1)より大きい屈折率(n_(in))を有し、上述した第2の透光部材の屈折率(n_(out))より小さい屈折率を有している(つまり、1<n_(in)<n_(out))ことが好ましい。ここでの屈折率差は、特に限定されないが、例えば、第1の透光部材の屈折率は、第2の透光部材の屈折率が1.8?2.0程度であれば、1.6?1.79程度(好ましくは、1.6?1.7程度)であることことが例示される。 ・・・(中略)・・・ 【0033】 第1の透光部材の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、半球状、レンズ状、円盤状、円錐形状、円錐台形状又は平面視が多角形形状に加工されたこれらの形状等が挙げられる。なかでも、球状、半球状等、光の入射側及び/又は出射側に曲面を備えるものが、その表面で反射して発光素子側に戻る光を低減させることができ、あるいは、光取り出し効率を向上させることとなり、好ましい。なお、第1の透光部材は、貫通孔の最下面(キャップの内側表面)よりも、貫通孔側に、その下面が配置していることが好ましい。 透明部材は、上述したような、光拡散材を含有していてもよい。 また、第1の透光部材は、半導体発光素子から入射される光の反射を低減させるためのフィルタが、その表面に形成されていてもよい。フィルタとしては、単層膜又は多層膜のいずれでもよく、特に、多層膜を用いる場合、高屈折率材料と低屈折率材料を交互に成膜することが好ましい。具体的には、上述した第2の透光部材におけるフィルタと同様のものが例示される。 以下に、本発明の半導体発光装置の実施例を図面に基づいて説明する。」 「【0037】 この半導体発光装置の光取り出し構造は、例えば、以下のように形成することができる。 まず、所望の金属からなる板を加工して上述した形状のキャップを準備する。 キャップの上面の中央部分に貫通孔を形成する。この貫通孔の形成は、例えば、切削加工、プレス加工、射出成形、パンチ加工等により形成することができ、この際、内側から外側に広口となる形状に制御する。 また、貫通孔の最小直径よりも大きく、最大直径よりも小さく、かつ、キャップの上面の厚みよりも小さな直径を有する球形の第1の透光部材を準備する。 波長変換部材として蛍光体を含有する第2の透光部材を構成するガラスを準備する。 その後、キャップの貫通孔内に、球形の第1の透光部材を載置し、第1の透光部材よりも低融点の材料、例えば、低融点ガラスを用い、900℃の雰囲気加熱による融着により、第1の透光部材をキャップに固定する。 続いて、第1の透光部材の表面であって、キャップの貫通孔内に第2の透光部材材料を配置し、800℃の雰囲気加熱で、表面を金型で押さえながら融着により、第2の透光部材を第1の透光部材に固定する。」 「【0046】 実施例6 この実施例の半導体発光装置80は、図8に示したように、キャップ13の貫通孔内において、第1の透光部材87及び第2の透光部材88が平坦に形成されている以外、実施例1の半導体発光装置と同様である。 これにより、実施例1とほぼ同様の効果を得ることができる。」 (2)図2、図8は以下のとおりである。 2 引用発明 上記1の記載をまとめると、引用文献1には、次の発明が記載されている。 「半導体発光素子と、 該半導体発光素子が搭載される台座と、 該半導体発光素子からの光を通過させ、かつ前記半導体発光素子に近い側から遠い側に向かって広口となる貫通孔を備え、前記半導体発光素子が封止されるキャップと、 少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、前記半導体発光素子からの出射光を透過させる第1の透光部材と、 少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、蛍光体を含有し、前記第1の透光部材からの光を透過させる第2の透光部材とを備え、(【請求項1】) 第1の透光部材は、キャップの貫通孔内に、第1の透光部材を載置し、第1の透光部材よりも低融点の材料、例えば、低融点ガラスを用い、900℃の雰囲気加熱による融着により、第1の透光部材をキャップに固定したものであり(【0037】) 第1の透光部材の形状は、円錐台形状である(【0046】、図8) 半導体発光装置の光取り出し構造。」(以下、「引用発明1」という。) 「所望の金属からなる板を加工してキャップを準備し、 キャップの上面に貫通孔を形成し、 第1の透光部材を準備し、 波長変換部材として蛍光体を含有する第2の透光部材を構成するガラスを準備し、 キャップの貫通孔内に、第1の透光部材を載置し、第1の透光部材よりも低融点の材料、例えば、低融点ガラスを用い、900℃の雰囲気加熱による融着により、第1の透光部材をキャップに固定し、第1の透光部材の表面であって、キャップの貫通孔内に第2の透光部材材料を配置し、800℃の雰囲気加熱で、表面を金型で押さえながら融着により、第2の透光部材を第1の透光部材に固定し、(【0037】) 第1の透光部材の形状は、円錐台形状である(【0046】) 光取り出し構造の形成方法。」(以下、「引用発明2」という。) 2 引用文献2 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、低温溶融ガラスを用いた接着方法について記載がある。 3 引用文献3-5 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3-5には、発光装置に使用する蛍光体について、複数の蛍光体を個別に配することが記載されている。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の「キャップ」は、本願発明1の「支持部材」に相当する。そして、引用発明1の「キャップ」は「半導体発光素子からの光を通過させ」る「貫通孔」を備えているから、本願発明1の「入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材」である。 イ 引用発明1の「低融点ガラス」は、透光部材であるといえる。 ここで、引用発明1の「低融点ガラス」がどこに形成されているか検討する。 引用発明1には、「第1の透光部材は、キャップの貫通孔内に、第1の透光部材を載置し、第1の透光部材よりも低融点の材料、例えば、低融点ガラスを用い、900℃の雰囲気加熱による融着により、第1の透光部材をキャップに固定したものであり」と特定されているから、「低融点ガラス」は、「第1の透光部材」を「キャップの貫通孔内に支持」するためのものであり、そうだとすれば、「低融点ガラス」が「キャップの貫通孔内」に形成されていることは明らかである。 したがって、引用発明1の「低融点ガラス」は、本願発明1でいう「貫通孔の内壁に形成された」ものといえる。 このように、引用発明1の「低融点ガラス」は、「貫通孔の内壁に形成された」ものであるとともに「透光部材」でもあるから、本願発明1でいう「第1透光部材」に当たるものである。 ウ 引用発明1の「第1の透光部材」は、その形状が「円錐台形状」であり、「半導体発光素子からの出射光を透過させる」ものであるから、光入射面と光出射面と外周側面とを有することは明らかである。 また、「第1の透光部材」は「キャップの貫通孔内に支持」されている。 このように、引用発明1の「第1の透光部材」は、光入射面と光出射面と外周側面とを有し、「キャップの貫通孔内に支持」されたものであるから、本願発明1の「光入射面と光出射面とを有し、貫通孔の中に配置された第2透光部材」に当たるものである。 エ 上記イ及びウのとおりであるから、引用発明1の「第1の透光部材」と「低融点ガラス」は、本願発明1でいう「第2透光部材」「が、貫通孔の内壁に、第1透光部材による融着によって固定された」ものである。 オ したがって、本願発明1と引用発明1とは、次の(一致点)で一致し、(相違点1)で相違する。 (一致点) 「入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材と、 前記貫通孔の内壁に形成された第1透光部材と、 光入射面と光出射面と外周側面とを有し、前記貫通孔の中に配置された第2透光部材とを備え、 前記第2透光部材が、前記貫通孔の内壁に、前記第1透光部材による融着によって固定された光部品。」 (相違点1) 本願発明1の「第2透光部材」は「蛍光体」を含むのに対し、引用発明1では、「第1の透光部材」の表面に配置された「第2の透光部材」が「蛍光体」を含み、「第1の透光部材」は「蛍光体」を含んでいない点。 (相違点2) 本願発明1は、第2透光部材の「外周側面」が貫通孔の内壁に固定されているのに対し、引用発明1では、「第1の透光部材」と「貫通孔」とは「低融点ガラス」で固定されていることが特定されているにとどまり、「第1の透光部材」の「外周側面」が「貫通孔」の内壁に固定されているのかは不明である点。 (2)判断 ア 相違点1についての判断 引用発明1において、相違点1にかかる構成を得るためには、「第2の透光部材」に含まれる「蛍光体」を「第1の透光部材」に備えることが必要であるので、そのようなことが容易想到できるか否かを検討する。 (ア)引用発明の技術的意義 引用文献1は、従来技術として、蛍光物質を含んだ樹脂で封止されたLED、「LED又は半導体レーザと蛍光物質とを離間させて搭載する発光装置」、「LEDと蛍光物質とを離間させ、蛍光物質の外周に封止樹脂を設けた発光装置」を例示し、いずれも、発光効率の低下、及び、熱による劣化を両方解決するには至っていないと記載している(【0002】-【0004】)。 ここで、引用文献1(【0004】)は、従来技術のうち、半導体レーザと蛍光物質とを離間することで、熱による劣化を防ぐものは、「散乱光がLED又は半導体レーザ自体に吸収される割合が増加」し発光効率が低下するとの課題を記載している。 そうすると、引用発明は、上記課題を解決するために、「少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、前記半導体発光素子からの出射光を透過させる第1の透光部材と、少なくとも一部が前記キャップの貫通孔内に支持され、蛍光体を含有し、前記第1の透光部材からの光を透過させる第2の透光部材とを備え」た構成であるということができ、この構成を上記課題が前提とする従来技術との関係でさらに整理すれば、蛍光物質を含有した第2の透光部材のみを設けることにすると発光効率が低下するので、当該第2の透光部材のLED側に第1の透光部材を追加した構成であるということができる。そして、引用発明は、かかる構成により、「発光素子から出射された光のうち、第2の透光部材と第1の透光部材との界面で反射して発光素子側に戻ろうとする光を、第1の透光部材と大気との界面で効率的に再反射させ」(【0040】)ることができるので、光の取り出し効率を向上させて上記課題を解決するという技術的意義をもつものであると認められる。 (イ)検討 このような引用発明の技術的意義によれば、引用発明は、蛍光物質が設けられた第2の透光部材の存在を前提とした上で、それにより生じる課題を解決するために、そのLED側に第1の透光部材を追加するものである。 そうすると、引用発明において、蛍光物質が設けられた第2の透光部材から、蛍光物質を取り出し、第1の透光部材に移すことの動機付けは存在しないし、第1の透光部材に蛍光物質を添加する他の理由も見いだせない。 そうすると、相違点1に係る構成は、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2-5に記載された事項に基づいて、容易に発明できたものではない。 イ したがって、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、引用発明1及び引用文献2ー5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 ウ よって、本願発明1は引用発明1及び引用文献2ー5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明15 (1)対比 本願発明15と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の「キャップ」に形成された「貫通孔」は、発光素子から照射された光が通過するから、入射開口部と出射開口部とを有するものであり、引用発明2の「キャップ」は、本願発明15の支持部材に相当する。 したがって、引用発明2は本願発明15の「入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材を準備」する工程を備える。 イ 引用発明2の「第1の透光部材」は「円錐台形状」であり、発光素子から照射された光を透過させるものであるから、光入射面と光出射面と外周側面とを有するものであり、引用発明2の「第1の透光部材」は、本願発明15の「第2透光部材」に相当する。 そうすると、引用発明2は、本願発明15の「光入射面と光出射面と外周側面とを有する第2透光部材を準備」する工程を備える。 ウ 上記1(1)イと同様に、引用発明2の「低融点ガラス」は「貫通孔」内部に設けられるものであり、引用発明2の「低融点ガラス」は、本願発明15の第1透光部材に相当する。 そして、引用発明2の「第1の透光部材」は「キャップの貫通孔内」に「低融点ガラスを用い」た「融着により」固定されるものである。 したがって、引用発明2は、本願発明15の「前記貫通孔の内壁に第1透光部材を形成し、前記第2透光部材を、前記貫通孔の内壁に、前記第1透光部材による融着によって固定する工程」を備える。 エ 引用発明2の「光取り出し構造」は、本願発明15の「光部品」に相当する。 オ したがって、本願発明15と引用発明2とは、次の(一致点)で一致し、(相違点2)で相違する。 (一致点) 「入射開口部と出射開口部を有する貫通孔が形成された支持部材を準備し、 光入射面と光出射面と外周側面とを有する第2透光部材を準備し、 前記貫通孔の内壁に第1透光部材を形成し、 前記第2透光部材を、前記貫通孔の内壁に、前記第1透光部材による融着によって固定する工程を含む光部品の製造方法。」 (相違点3) 本願発明15は第2透光部材が蛍光体を含むことが特定されている一方、引用発明では「第1の透光部材」の表面に配置された「第2の透光部材」が「蛍光体」を含み、「第1の透光部材」は「蛍光体」を含んでいない点。 (相違点4) 本願発明15は、第2透光部材を貫通孔の内壁に、第1透光部材による融着によって固定するに際し、第2透光部材の「外周側面」が貫通孔の内壁に固定されているのに対し、引用発明2では、「第1の透光部材」と「貫通孔」とは「低融点ガラス」で固定されることが特定されているにとどまり、「第1の透光部材」の「外周側面」が「貫通孔」の内壁に固定されるのかは不明である点。 (2)判断 上記1(2)で示した相違点1と同様の理由により、引用発明2において、「第2の透光部材」に含まれる「蛍光体」を「第1の透光部材」に備えることで、相違点3に係る構成を得ることは、当業者にとって容易になし得たものとは認められない。 したがって、本願発明15は、相違点4について検討するまでもなく、引用発明2及び引用文献2-5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 よって、本願発明15は引用発明2及び引用文献2ー5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3 本願発明2-14,16-22 本願発明2-14は、本願発明1に従属し、本願発明1の発明特定事項をすべて含むものである。したがって、本願発明1と同じ理由(上記1参照)により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2ー5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 また、本願発明16-22は、本願発明15に従属し、本願発明15の発明特定事項をすべて含むものである。したがって、本願発明15と同じ理由(上記2参照)により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2ー5に記載された技術事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-22は、当業者が引用文献1に記載の発明及び引用文献2-5に記載された技術事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。 したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2020-07-08 |
出願番号 | 特願2014-202178(P2014-202178) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01S)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
瀬川 勝久 |
特許庁審判官 |
田中 秀直 山村 浩 |
発明の名称 | 光部品及びその製造方法ならびに発光装置及びその製造方法 |
代理人 | 新樹グローバル・アイピー特許業務法人 |