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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1363905 |
審判番号 | 不服2019-5410 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-04-23 |
確定日 | 2020-07-06 |
事件の表示 | 特願2014-256609「複合容器の製造方法および製造装置、複合プリフォームの製造方法および製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 6月30日出願公開、特開2016-117169〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年12月18日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 9月 7日付け:拒絶理由通知 同年11月 9日 :意見書、手続補正書の提出 平成31年 1月21日付け:拒絶査定 同年 4月23日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 平成31年4月23日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成31年4月23日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成31年4月23日付けの手続補正の内容 平成31年4月23日に提出された手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、本件補正により補正される前の(すなわち、平成30年11月9日に提出された手続補正書により補正された)特許請求の範囲の請求項1の記載である、 「【請求項1】 複合容器の製造方法において、 プラスチック材料製のプリフォームを射出成形する工程と、 前記プリフォームの外側に、前記プリフォームに対して熱収縮する作用をもつプラスチック製部材を緩挿させる工程と、 射出成形時に加えられ、前記プリフォームに残存する熱を用いて、前記プラスチック製部材を60℃乃至100℃の温度の前記プリフォームに対して熱収縮させ、前記プラスチック製部材を前記プリフォームに対して剥離除去可能に密着させる工程と、 前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備えたことを特徴とする複合容器の製造方法。」を、 「【請求項1】 複合容器の製造方法において、 射出成形ユニットによりプラスチック材料製のプリフォームを射出成形する工程と、 プラスチック製部材装着ユニットにより前記プリフォームの外側に、前記プリフォームに対して熱収縮する作用をもつプラスチック製部材を緩挿させる工程と、 射出成形時に加えられ、前記プリフォームに残存する熱を用いて、前記プラスチック製部材を60℃乃至100℃の温度の前記プリフォームに対して熱収縮させ、前記プラスチック製部材を前記プリフォームに対して剥離除去可能に密着させる工程と、 ブロー成形ユニットにより前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備え、 前記射出成形ユニットと、前記プラスチック製部材装着ユニットと、前記ブロー成形ユニットとが、互いに一体化されるとともに、一つの制御部によって一体として制御されることを特徴とする複合容器の製造方法。」 と補正する事項を含むものである(なお、下線は、補正箇所を示すためのものである。)。 2 本件補正の目的 請求項1についての本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明の「射出成形する工程」、「プラスチック製部材を緩挿させる工程」及び「ブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程」について、それぞれに対応する装置として、「射出成形ユニット」、「プラスチック製部材装着ユニット」及び「ブロー成形ユニット」を特定し、複合容器の製造方法が、これらの3つのユニットを「互いに一体化されるとともに、一つの制御部によって一体として制御される」ことを、更に限定するものであるし、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。 よって、請求項1についての本件補正は、特許法第17条の2第5項2号に掲げる特許請求の範囲の減縮(いわゆる限定的減縮)を目的とするものである。 3 独立特許要件違反の有無について 請求項1についての本件補正が限定的減縮を目的とするものであるといえるとしたときには、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち、本件補正が特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合するものであるか(いわゆる独立特許要件違反の有無)についての検討がなされるべきところ、以下述べるように、本件補正は当該要件に違反するといえる。 すなわち、本件補正発明は、本願の出願日前に頒布された刊行物である下記引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・引用文献1 特開昭61-206623号公報 (原査定の理由で引用された「引用文献1」) (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1に記載したとおりのものである。 (2)引用文献に記載された事項等 ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、「延伸ブロー成形法を用いたラベル付き容器の製造方法」に関して、おおむね次の記載がある。 なお、下線は当審で付したものである。以下同様。 (ア) 「2.特許請求の範囲 (1)熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムを被覆させたのち二軸延伸ブロー成形する多層容器の製造方法において、熱収縮フィルムが環状インフレーションフィルムであることを特徴とする多層容器の製造方法。」(第1ページ左下欄第4?9行) (イ) 「本発明において熱可塑性樹脂製パリソンの表面に熱収縮フィルムの被覆を行なうには、例えば次の方法によって行なわれる。 射出延伸ブロー成形のうち、いわゆるホットパリソン方式の成形方法では、射出成形→予備加熱→二軸延伸ブローが連続工程で行なわれるが、円筒状の熱収縮フィルムは射出成形されたホットパリソンに装着され、パリソンの保持する熱によって熱収縮して、パリソン表面を被覆する。この多層パリソンは引続き次の工程へ進んで予備加熱後、二軸延伸ブローされ多層容器が得られる。熱収縮フィルムのパリソンへの被覆は、二軸延伸ブローする前であれば他の工程で行なっても良い。」(第3ページ左上欄第20行?右上欄第12行) (ウ) 「このようにしてパリソンは上記いずれの場合も、パリソン全表面のうち口部直下から胴部周囲全面および底部の一部にかかる範囲で熱収縮フィルムで被覆される。 この多層パリソンを二軸延伸ブロー成形して得られる多層容器は、口部および底部の一部分は被覆フィルムで覆われない単層となる。」(第3ページ左下欄第4?10行) (エ) 「このパリソンに、パリソン外形よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着し、パリソンの保有する熱で同フィルムを概ね収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとした。」(第3ページ右下欄第8?12行) イ 引用文献1に記載された発明 特に上記ア(イ)の記載における、各製造工程には、それぞれ対応する製造装置が存在することは当然であるから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「多層容器の製造方法において、 熱可塑性樹脂製パリソンを射出成形する装置により、熱可塑性樹脂製パリソンを射出成形する工程と、 円筒状の熱収縮フィルムを射出成形されたホットパリソンに装着する装置によって、円筒状の熱収縮フィルムを射出成形されたホットパリソンに装着し、パリソンの保持する熱によって熱収縮して、パリソン表面を被覆する工程と、 得られた多層パリソンに対して二軸延伸ブロー成形を施すブロー成形装置によって、二軸延伸ブロー成形する工程とを備え、 前記射出成形する装置と、前記熱収縮フィルムを射出成形されたホットパリソンに装着する装置と、前記ブロー成形装置が、連続工程で成形を行う多層容器の製造方法。」 (3)対比・判断 ア 本件補正発明と引用発明の対比 本件補正発明と引用発明を対比する。 引用発明における、「多層容器」、「熱可塑性樹脂製パリソン」、「射出成形する装置」、「熱収縮フィルム」、「熱収縮フィルムを射出成形されたホットパリソンに装着する装置」及び「ブロー成形装置」は、本件補正発明における、「複合容器」、「プラスチック材料製のプリフォーム」、「射出成形ユニット」、「プラスチック製部材」、「プラスチック製部材装着ユニット」及び「ブロー成形ユニット」に、それぞれ相当する。 そして、ホットパリソンという熱を有するものに、円筒状の熱収縮フィルムの装着に伴う移動の際、ホットパリソン表面に熱収縮によって熱収縮フィルムが付着しないように緩やかな状態で熱収縮フィルムをホットパリソンに装着する(緩着)は当然のことであるし(要すれば、上記(2)ア(エ)の「パリソン外形よりやや大き目の筒状のAN系樹脂からなるガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着」の記載を参照。)、この際、特に接着工程は有しないから、引用発明においても多層パリソン表面から熱収縮フィルムは剥離除去可能に密着されているものと認められる。 また、引用発明におけるブロー成形は、上記(2)ア(ウ)に摘記した、「パリソンは上記いずれの場合も、パリソン全表面のうち口部直下から胴部周囲全面および底部の一部にかかる範囲で熱収縮フィルムで被覆される」との記載から、パリソン及び熱収縮フィルムからなる多層パリソンを一体として二軸延伸ブロー成形するものと解されるから、本件補正発明における「前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程」を備えているといえる。 したがって、本件補正発明と引用発明は、 「複合容器の製造方法において、 射出成形ユニットによりプラスチック材料製のプリフォームを射出成形する工程と、 プラスチック製部材装着ユニットにより前記プリフォームの外側に、前記プリフォームに対して熱収縮する作用をもつプラスチック製部材を緩挿させる工程と、 射出成形時に加えられ、前記プリフォームに残存する熱を用いて、前記プラスチック製部材を前記プリフォームに対して熱収縮させ、前記プラスチック製部材を前記プリフォームに対して剥離除去可能に密着させる工程と、 ブロー成形ユニットにより前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材に対してブロー成形を施すことにより、前記プリフォームおよび前記プラスチック製部材を一体として膨張させる工程とを備えた 複合容器の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で相違又は一応相違する。 <相違点1> プラスチック製部材をプリフォームに対して熱収縮させる温度に関し、本件補正発明は、「60℃乃至100℃」と特定するのに対し、引用発明は、特定しない点。 <相違点2> 複合容器の製造方法において、本件補正発明は、「前記射出成形ユニットと、前記プラスチック製部材装着ユニットと、前記ブロー成形ユニットとが、互いに一体化されるとともに、一つの制御部によって一体として制御される」と特定するのに対し、引用発明は、このことを特定しない点。 イ 相違点についての判断 そこで、上記相違点について、以下に検討する。 (ア)相違点1について 引用発明において、熱収縮フィルムを熱収縮させてホットパリソンに装着する際、熱収縮フィルムの熱収縮特性に合わせて温度を最適化するのは当然のことである。また、「60℃乃至100℃」という数値範囲に対して臨界的意義は認められない。 よって、相違点1に係る、プラスチック製部材をプリフォームに対して熱収縮させる温度設定は、当業者が容易になし得る事項といえる。 (イ)相違点2について 引用発明の多層容器の製造装置は、射出成形、熱収縮フィルムのホットパリソンへの装着及びブロー成形を「連続工程」にて行うものである。 その際、射出成形から得られた「ホットパリソン」の状態で、次工程である熱収縮フィルムの熱収縮を、保有する熱を用いて行い、更に予備加熱を経て二軸延伸ブロー成形を行うことから、一連の「連続工程」に係る装置は、搬送及び熱エネルギーの効率化の観点から当然一体化されているものであるし、そのような装置群の一つの制御部による一体制御は常套手段であって実質的な相違点であるとはいえない。 仮に、引用発明の多層容器の製造装置における一連の製造装置が、互いに一体化されておらず、一つの制御部によって一体として制御されていない場合であっても、制御手段の一体化は、連続工程における生産性や熱管理といった自明な課題に照らし、当業者が適宜なし得る設計的事項である。 ウ 効果について 相違点1及び2に係る発明特定事項による効果は、熱収縮フィルムの材料選定や装置の一体制御によって必然的に奏せられるものであり、いずれも、も当業者が予想し得る程度のものである。 エ 審判請求人の主張について 請求人は、審判請求書において、以下の主張をしている。 (ア) 「引用文献1には、「射出成形ユニットと、プラスチック製部材装着ユニットと、ブロー成形ユニットとが、互いに一体化されるとともに、一つの制御部によって一体として制御されること」(上述した本願発明の特徴(a))及び「プラスチック製部材装着ユニットは、プリフォームを保持する保持部と、プラスチック製部材を把持するとともに、プラスチック製部材をプリフォームに装着する装着部とを有し、プリフォームの外側に、プリフォームに対して熱収縮する作用をもつプラスチック製部材を緩挿させること」(上述した本願発明の特徴(b))に関する記載はなく、これを示唆する旨の記載もない。」(審判請求書第10?11ページ) (イ) 「引用文献1には、装置としての保持部や装置としての装着部についての具体的な記載はない。引用文献1において、ガスバリヤー性熱収縮フィルムを装着する作業、及びフィルムを収縮させてパリソンに密着させ多層パリソンとする作業(第3頁左下欄第19行-右下欄第12行参照)は、実際には人が手作業で行っていることも十分に考えられる。 このため、引用文献1において、プラスチック製部材装着ユニットが、装置としての「パリソンを保持する手段」と、装置としての「フィルムを装着する手段」とを有することは自明なことではなく、当業者が容易に想到することはできないものと思料する。」(審判請求書第11ページ) まず、上記(ア)の主張に関して検討すると、該主張における「本願発明の特徴」の(a)については、相違点2に相当するから、上記イにおいて検討したとおりであり、また、「本願発明の特徴」の(b)については、上記アで検討したとおりであるから、上記(a)及び(b)は、いずれも引用発明と本件補正発明の実質的な相違点とは認められない。 次に上記(イ)の主張に関し、射出成形から連続工程として実施される、熱を保有するホットパリソンへの熱収縮フィルムの装着をあえて手作業で行う理由もなく、また、機械化することに格別な技術的困難性も存在しない。 よって、請求人の上記主張は採用できない。 エ 小括 したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)独立特許要件の検討のまとめ 上述のとおり、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。 4 本件補正についてのむすび 以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 以上のとおり、本件補正は却下されたため、本願の請求項1?8に係る発明は、平成30年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のとおりであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2[理由]1に摘記したとおりである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定は、概略、次のとおりの理由を含むものである。 この出願の請求項1?8に係る発明は、本願発明は、その出願前に日本国内において、頒布された下記の引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ・引用文献1 特開昭61-206623号公報 ・引用文献2 省略 3 引用文献1の記載事項等 引用文献1の記載事項並びに引用発明は、上記第2[理由]3(2)のとおりである。 4 対比・判断 上記第2[理由]2で検討したように、本件補正発明は、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に限定を加えたものである。そして、本願発明の発明特定事項に該限定を加えた本件補正発明が、上記第2[理由]3のとおり、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、該限定のない本願発明もまた引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 結語 上記第3のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-01 |
結審通知日 | 2020-05-08 |
審決日 | 2020-05-22 |
出願番号 | 特願2014-256609(P2014-256609) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B29C)
P 1 8・ 121- Z (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲高▼橋 理絵 |
特許庁審判長 |
大島 祥吾 |
特許庁審判官 |
加藤 友也 大畑 通隆 |
発明の名称 | 複合容器の製造方法および製造装置、複合プリフォームの製造方法および製造装置 |
代理人 | 村田 卓久 |
代理人 | 朝倉 悟 |
代理人 | 中村 行孝 |
代理人 | 堀田 幸裕 |
代理人 | 永井 浩之 |