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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1363909
審判番号 不服2019-3816  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-03-22 
確定日 2020-07-10 
事件の表示 特願2016-560338「無線通信システムにおいて第1の基地局と第2の基地局とを動作させるための方法、その第1の基地局、および第2の基地局」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日国際公開、WO2015/150020、平成29年 4月 6日国内公表、特表2017-510210〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年3月31日、欧州)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年12月 5日付け 拒絶理由通知書
平成30年 6月 7日 意見書の提出
平成30年11月19日付け 拒絶査定
平成31年 3月22日 拒絶査定不服審判の請求
令和 1年 5月 9日 手続補正書(方式)の提出(理由補充)

第2 本願発明
本願の請求項1-12に係る発明は、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文の請求項1-12に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「 無線通信システム(RAN)において、第1の基地局(BS1)を動作させるための方法(MET-BS1)であって、
-アンテナ・アレイ(AA1)により、第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)を経由した第1の基準信号と、少なくとも1つの第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)を経由した少なくとも第2の基準信号とを送信するステップ(S1-BS1)と、
-前記移動局(MS)のサービング基地局である第2の基地局(BS2)から前記第1の基地局(BS1)への移動局(MS)のハンドオーバのために、前記第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループから選択されている放射線ビームについての表示を、前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビームとして前記選択された放射線ビームを適用するために、受信するステップ(S9-BS1)と、
-前記表示に基づいて、前記移動局(MS)にサービスするための、前記初期の放射線ビームについての無線リソースをスケジュールするステップ(S10-BS1)と
を含む方法(MET-BS1)。」

第3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、「1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。」、「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に対して下記1が引用されている。

1.国際公開第2013/048212号

第4 引用例等に記載された事項及び引用発明等
1.引用発明
原査定で引用された国際公開第2013/048212号(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(1)「[32] Exemplary embodiments of the present disclosure provide a method and an apparatus for short handover latency in a wireless communication system using beamforming.」

(当審仮約:
[32] 本開示の例示的な実施形態は、ビームフォーミングを用いる無線通信システムにおける短いハンドオーバ遅延のための方法及び装置を提供する。)

(2)「[34] Referring to FIG. 1, in the DL, a Base Station (BS) 110 transmits data (including a broadcast message) by changing a DL Tx beam direction using an array antenna.」

(当審仮約:
[34] 図1を参照すると、ダウンリンクにおいて、基地局(BS)110は、アレイアンテナを使用してDL Txビームの方向を変えながら、データ(ブロードキャストメッセージを含む)を送信する。)

(3)「[41] For coverage expansion and reliable data transmission in view of optimization, additional beamforming can be carried out. That is, a narrower beam than the beam width used in the coarse beam selection can be selected, which is referred to as fine beam selection.
[42] Unlike the wide beam used in the SCH/BCH, a reference signal (e.g., a preamble), a midamble, or a corresponding signal from the BS 210 is used, and the reference signal includes a fine (or narrow) beam ID.
[43] The reference signal is transmitted from the BS 210 to the MS 220 over the DL fine (or narrow) Tx beams.」

(当審仮約:
[41] 最適化の観点から、カバレージ拡張及び信頼性の高いデータ伝送のために、追加のビームフォーミングを実行することができる。すなわち、粗ビーム選択時に用いられるビーム幅よりも狭いビームを選択することができ、これを細いビーム選択と称する。
[42] SCH/BCHで使用される幅広いビームとは異なり、BS210からの基準信号(例えば、プリアンブル)、ミッドアンブル、又はそれに対応する信号が使用され、基準信号には細い(又は狭い)ビームIDが含まれる。
[43] 基準信号は、BS210から、DLの細い(又は狭い)Txビームを経由してMS220に送信される。)

(4)「[57] FIG. 5 illustrates a message flow diagram of the handover according to an exemplary embodiment of the present disclosure.
[58] Referring to FIG. 5, for the handover of an MS 510, a serving BS 520 and neighboring BSs 530 and 540 should measure the channel. The channel measurement is referred to as scanning.
(略)
[74] The Scanning is explained as below (step 2).
[75] The MS 510 fundamentally measures the channel of the DL of the BS 520. Since the beamforming is applied, the coarse beam selection is performed between the MS 510 and the BS 520 and the MS 510 measures each DL Tx beam of the BS 520. In so doing, the metric used can be either the RSSI or the CINR. The MS 510 stores the ID and the measurement result of the DL Tx beam (e.g., DL beam ID and measurement result) of the best signal strength among the measurement results of the DL Tx beams. During Scanning procedure, the fine beam selection may be performed between the MS 510 and the BS 520. In that case,
[76] A.the MS performs the coarse beam selection first to find the best ‘x’ BSs (i.e. X= the number of candidate BSs which has the best signal strength). Therefore, the MS repeats coarse beam selection with neighbor BSs, and it selects the best‘x’BSs out of all BSs with which the MS performed coarse beam selection. The MS performs fine beam selection procedure with the chosen‘x’BSs. Actually, it takes longer time to do fine beam selection because the number of fine beams is larger than the number of wide beams. So reducing the number of BSs to do fine beam selection with. When the MS sends measurement result to the serving BS after scanning +(optional) association procedure, the MS can include measurement result of either all BSs or the best‘y’BSs for bine beam
(略)
[87] In the Scanning Interleaving Interval, the MS 510 can report the Scanning/Association results of the Scanning Duration to the serving BS 520. The report can use the Periodic Reporting or the Event-driven Reporting. When the MS reports measurement result, the report message can include the measurement result(s) of one BS or more than one BS.」

(当審仮約:
[57] 図5は、本開示の例示的な実施形態によるハンドオーバのメッセージフロー図である。
[58] 図5を参照すると、MS510のハンドオーバのために、サービングBS520及び近隣BS530及び540はチャネル測定を行わなければならない。このチャネル測定をスキャニングという。
(略)
[74] 次に、スキャニングについて説明する(ステップ2)。
[75] MS510は、基本的に、BS520のDLのチャネルを測定する。ビームフォーミングが適用されるので、粗ビーム選択は、MS510とBS520との間で実行され、MS510は、BS520の各DL Txビームを測定する。その際、RSSI又はCINRのいずれかをメトリックとして使用することができる。MS510は、DL Txビームの測定結果のうち最大信号強度のDL TxビームのID及び測定結果(例えば、DL Beam IDと測定結果)を格納する。スキャニング手順の間、細いビーム選択は、MS510とBS520との間で実行されてもよい。その場合、以下のようになる。
[76] A.MSは、最良の‘x’BSを見つけるために、最初に粗ビーム選択を実行する(すなわち、X=最大信号強度を有する候補BSの数)。したがって、MSは、隣接BSで粗ビーム選択を繰り返し、MSが粗ビーム選択を行ったすべてのBSの中から最良の‘x’BSを選択する。MSは、選択された‘x’BSを用いて細いビーム選択手順を実行する。実際に、細いビームの本数は幅広いビームの本数よりも大きいため、細いビーム選択は時間がかかる。したがって、細いビーム選択を実行するBSの数を削減する。スキャニングと(任意の)関連付け手順の後に、MSが測定結果をサービングBSに送信する際、MSは全てのBS又は最良の‘y’BSの細いビームの測定結果を含むことができる。
(略)
[87] スキャニングのインターリーブ間隔において、MS510は、スキャニング期間のスキャニング/関連付け結果をサービングBS520に報告することができる。報告は、周期的報告又はイベント駆動報告を使用することができる。MSが測定結果を報告する場合、報告メッセージは、1つのBS又は1以上のBSの測定結果を含むことができる。)

なお、上記(4)の[76]の「the best‘y’BSs for bine beam」が、「the best‘y’BSs for fine beam」の誤記であることは、引用例の記載内容や技術内容からみて明らかであり、「the best‘y’BSs for bine beam」を「最良の‘y’BSの細いビーム」と仮訳した。

(5)「[90] When the serving BS 520 and the neighboring BSs 530 and 540 negotiate about the handover, the NW-HO_Request message includes at least the following parameters.
[91] MSID indicates the ID of the MS to hand over.
[92] DL Beam ID is used to indicate the DL Tx beam to be used by the corresponding neighboring BS to transmit data to the MS after the handover (Network Re-Entry procedure) of the MS is completed. The DL Beam ID indicates the ID of the DL Tx beam of the greatest signal strength determined by the MS during the scanning of the corresponding BS.」

(当審仮約:
[90] サービングBS520及び隣接BS530、540がハンドオーバを交渉する場合、NW-HO_Requestメッセージは、少なくとも以下のパラメータを含む。
[91] MSIDは、ハンドオーバするMSのIDを示す。
[92] MSのハンドオーバ(ネットワーク再進入手順)が完了した後、対応する隣接BSがMSにデータを送信するために使用されるDL Txビームを指示するために、DL Beam IDが使用される。DL Beam IDは、対応するBSのスキャニング中にMSによって決定された最大信号強度のDL TxビームのIDを示す。)

(6)図5として以下の図面が記載されている。




上記(1)-(5)の記載及び(6)の図面並びに当業者の技術常識を考慮すると、以下のことがいえる。

ア 上記(1)によれば、引用例は無線通信システムの方法に関するものであり、上記(4)の記載及び上記(6)の図5から、ハンドオーバにおいて、隣接BS(A)(530)が動作することが見てとれる。
よって、引用例には「無線通信システムにおいて、隣接BSが動作する方法」が記載されているといえる。

イ 上記(2)には、BSがアレイアンテナを使用してDL Txビームの方向を変えながらデータを送信することが記載されており、上記(3)には、基準信号が、BSからDLの細い(又は狭い)Txビームを経由してMSに送信されることが記載されているから、引用例のBSは、「アレイアンテナにより、各DLの細い(又は狭い)Txビームを経由した基準信号を送信する」ものであるといえる。
そして、上記(6)の図5に記載された隣接BS(A)(530)が、上記BSと同様の動作を行うことは明らかであるから、隣接BSは、「アレイアンテナにより、各DLの細い(又は狭い)Txビームを経由した基準信号を送信する」といえる。

ウ 上記(6)の図5から、隣接BS(A)(530)がサービングBS(520)からNW-HO_Request(4-1)を受信すること、NW-HO_Request(4-1)にはDL Beam IDが含まれること、サービングBS(520)から隣接BS(A)(530)へのMSのハンドオーバを行うことが見てとれる。よって、隣接BS(A)(530)は、「サービングBSから隣接BSへのMSのハンドオーバのために」DL Beam IDを受信するといえる。
そして、上記(5)には、DL Beam IDが、対応する隣接BSのスキャニング中にMSによって決定された最大信号強度のDL TxビームIDを示すことが記載されているといえ、ここで上記(4)によると、ビーム選択手順においてMSが隣接BSの各DLの細いTxビームを測定することから、DL Beam IDは、「隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示す」ものであるといえる。
よって、隣接BSは「サービングBSから隣接BSへのMSのハンドオーバのために、隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam ID」を受信するといえる。

また、上記(5)には、ハンドオーバが完了した後、対応する隣接BSがMSにデータを送信するために使用されるDL Txビームを指示するために、DL Beam IDが使用されると記載されている。ここで、上述のとおり、DL Beam IDは、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すものであるといえるから、隣接BSは、「DL Beam IDを、ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビームとして前記MSによって選択された最大信号強度のDL Txビームを適用するために受信する」といえる。

よって、隣接BSは、「サービングBSから隣接BSへのMSのハンドオーバのために、隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam IDを、ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビームとして前記MSによって選択された最大信号強度のDL Txビームを適用するために受信する」といえる。

エ 上記(5)には、DL Beam IDを使用して、MSのハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために使用するDL Txビームを隣接BSに指示することが記載されているといえる。
そして、隣接BSが、当該DL Beam IDを使用して指示されたビームを、MSのハンドオーバが完了した後にMSにデータを送信するDL Txビームのビームとして設定することは明らかであるから、引用例の隣接BSは、「DL Beam IDに基づいて、MSのハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために使用するDL Txビームのビームを設定する」といえる。

してみれば、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 無線通信システムにおいて、隣接BSが動作する方法であって、
アレイアンテナにより、各DLの細い(又は狭い)Txビームを経由した基準信号を送信することと、
サービングBSから隣接BSへのMSのハンドオーバのために、隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam IDを、ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビームとして、前記MSによって選択された最大信号強度のDL Txビームを適用するために受信することと、
DL Beam IDに基づいて、MSのハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために使用するDL Txビームのビームを設定することと
を含む方法。」

第5 対比・判断

本願発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。

ア 引用発明の「隣接BS」はMSのハンドオーバ先の基地局であるから、本願発明のハンドオーバ先の基地局である「第1の基地局(BS1)」に相当する。また、引用発明の「無線通信システム」はBSとMSとで構成されるものであるから、本願発明の「無線通信システム(RAN)」に相当する。そして、引用発明の「隣接BSが動作する方法」は、「第1の基地局(BS1)を動作させるための方法」といえる。
よって、引用発明の「無線通信システムにおいて、隣接BSが動作する方法」は、本願発明と同様に、「無線通信システム(RAN)において、第1の基地局(BS1)を動作させるための方法」であるといえる。

イ 引用発明の「アレイアンテナ」は、本願発明の「アンテナ・アレイ(AA1)」に相当する。そして、引用発明の「各DLの細い(又は狭い)Txビーム」が、放射方向が異なるいくつかの放射線ビームを意味することは当業者における技術常識であり、そのような放射方向が異なるいくつかの放射線ビームを「第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)」、「第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)」と称することは任意である。そうすると、引用発明の「各DLの細い(又は狭い)Txビームを経由した基準信号」は、本願発明の「第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)を経由した第1の基準信号と、少なくとも1つの第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)を経由した少なくとも第2の基準信号」に含まれる。
よって、引用発明の「アレイアンテナにより、各DLの細い(又は狭い)Txビームを経由した基準信号を送信すること」は、本願発明の「-アンテナ・アレイ(AA1)により、第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)を経由した第1の基準信号と、少なくとも1つの第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)を経由した少なくとも第2の基準信号とを送信するステップ」に含まれる。

ウ 引用発明の「MS」は、本願発明の「移動局(MS)」に相当する。そして、引用発明の「サービングBS」を、本願発明と同様に、「移動局(MS)のサービング基地局である第2の基地局(BS2)」と称することは任意である。
また、引用発明の「隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビーム」全体を、本願発明と同様に、「第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループ」と称することは任意である。そして、引用発明の「MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam ID」は、本願発明の「選択されている放射線ビームについての表示」に含まれるといえる。
よって、引用発明の「隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択されている最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam ID」は、本願発明の「前記第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループから選択されている放射線ビームについての表示」に含まれる。

さらに、引用発明の「ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビーム」は、本願発明と同様に、「前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビーム」であるといえるから、引用発明の「ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビームとして前記MSによって選択された最大信号強度のDL Txビームを適用する」ことは、本願発明の「前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビームとして前記選択された放射線ビームを適用する」ことに相当する。

よって、引用発明の「サービングBSから隣接BSへのMSのハンドオーバのために、隣接BSの各DLの細い(又は狭い)Txビームの中から、MSによって選択された最大信号強度のDL TxビームのIDを示すDL Beam IDを、ハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために隣接BSが使用するDL Txビームとして前記MSによって選択された最大信号強度のDL Txビームを適用するために受信すること」は、本願発明の「-前記移動局(MS)のサービング基地局である第2の基地局(BS2)から前記第1の基地局(BS1)への移動局(MS)のハンドオーバのために、前記第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループから選択されている放射線ビームについての表示を、前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビームとして前記選択された放射線ビームを適用するために、受信するステップ」に含まれる。

エ 引用発明の「MSのハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために使用するDL Txビーム」は、本願発明の「前記移動局(MS)にサービスするための、前記初期の放射線ビーム」に相当する。
また、「ビーム」は空間の無線リソースであり、「無線リソース」に含まれるといえるから、引用発明の「DL Beam IDに基づいて」「ビームを設定する」ことは、「-前記表示に基づいて」「無線リソースをスケジュールする」ことに含まれる。
よって、引用発明の「DL Beam IDに基づいて、MSのハンドオーバが完了した後、MSにデータを送信するために使用するDL Txビームのビームを設定すること」は、本願発明の「-前記表示に基づいて、前記移動局(MS)にサービスするための、前記初期の放射線ビームについての無線リソースをスケジュールするステップ」に含まれる。

したがって、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「 無線通信システム(RAN)において、第1の基地局(BS1)を動作させるための方法であって、
-アンテナ・アレイ(AA1)により、第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)を経由した第1の基準信号と、少なくとも1つの第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)を経由した少なくとも第2の基準信号とを送信するステップと、
-前記移動局(MS)のサービング基地局である第2の基地局(BS2)から前記第1の基地局(BS1)への移動局(MS)のハンドオーバのために、前記第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループから選択されている放射線ビームについての表示を、前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビームとして前記選択された放射線ビームを適用するために、受信するステップと、
-前記表示に基づいて、前記移動局(MS)にサービスするための、前記初期の放射線ビームについての無線リソースをスケジュールするステップと
を含む方法。」
で一致し、相違するところはない。

したがって、本願発明は、引用発明と同一であり、また引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[請求人の補正案について]

令和1年5月9日に提出された手続補正書(方式)には、補正案が提示されているので、当該補正案についても検討する。

補正案の請求項1は次のとおりである。(下線は補正箇所を示す。)

「 無線通信システム(RAN)において、第1の基地局(BS1)を動作させるための方法(MET-BS1)であって、
-アンテナ・アレイ(AA1)により、第1の方向に向かって方向づけられている第1の放射線ビーム(BM1-BS1)を経由した第1の基準信号と、少なくとも1つの第2の方向に向かって方向づけられている少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)を経由した少なくとも第2の基準信号とを送信するステップ(S1-BS1)と、
-前記移動局(MS)のサービング基地局である第2の基地局(BS2)から前記第1の基地局(BS1)への移動局(MS)のハンドオーバのために、前記第1の放射線ビーム(BM1-BS1)と、前記少なくとも1つの第2の放射線ビーム(BM2-BS1、...、BM5-BS1)とを含む放射線ビームのグループから選択されている放射線ビームについての表示を、前記移動局(MS)にサービスするための前記第1の基地局(BS1)における初期の放射線ビームとして前記選択された放射線ビームを適用するために、受信するステップ(S9-BS1)と、
-前記表示に基づいて、前記移動局(MS)にサービスするための、前記初期の放射線ビームについての無線リソースをスケジュールするステップとを含み、
前記表示は、前記選択された放射線ビームの識別子を含み、
前記表示は、前記選択された放射線ビームの品質情報をさらに含む方法(MET-BS1)。」

上記補正案は、請求項1に、請求項2の「前記表示は、前記選択された放射線ビームの識別子を含む」、及び、請求項3の「前記表示は、前記選択された放射線ビームの品質情報をさらに含む」との特徴を付加するものである。
ここで、原査定の拒絶の理由において、請求項3に対して引用された特開2013-132070号公報の段落[0022]には、ハンドオーバ元基地局が、ハンドオーバの際に、移動局が測定した移動局とハンドオーバ先無線基地局との間の無線品質情報をハンドオーバ先無線基地局に送信する技術が記載されており、特に段落[0047]には、Mesurement Reportに含まれる無線品質情報そのものをTarget eNodeB3に通知することが記載されているから、引用発明において、「DL Beam ID」に加えて、選択された放射線ビームの品質情報を、隣接BSが受信するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、手続補正書(方式)に記載された補正案も、引用発明及び特開2013-132070号公報に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、上記補正案は採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-12 
結審通知日 2020-02-13 
審決日 2020-03-02 
出願番号 特願2016-560338(P2016-560338)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 113- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
原田 聖子
発明の名称 無線通信システムにおいて第1の基地局と第2の基地局とを動作させるための方法、その第1の基地局、および第2の基地局  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 岡部 讓  

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