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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1363920
審判番号 不服2019-1094  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-08-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-01-28 
確定日 2020-07-09 
事件の表示 特願2017-137894「光電池モジュールパッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月 7日出願公開、特開2017-216465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)8月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年8月4日、米国)を国際出願日とする特願2014-524153号の一部を平成29年7月14日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は次のとおりである。
平成29年 7月14日 :上申書
平成30年 6月 5日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月12日 :意見書・手続補正書
平成30年 9月21日付け:拒絶査定
平成31年 1月28日 :審判請求書・手続補正書
平成31年 2月15日 :手続補正書(審判請求書に対するもの)

第2 平成31年1月28日に提出された手続補正書による手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成31年1月28日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、
本件補正前の
「(a)ガラス板を含む第1の外側保護層と、
(b)ガラス板を含む第2の外側保護層と、
(c)前記第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハと、
を含む光電池モジュールであって、
前記ガラス板が、

を含む組成であって、ROは、MgO、CaO、SrO、および、BaOの重量%の合計を表し、M_(2)Oは、Na_(2)O、Li_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、および、Cs_(2)Oの重量%の合計を表している組成を有し、前記光電池モジュールが、
i)湿潤漏れ電流がIEC 61215測定ガイドライン下で試験される時に400MΩ・m^(2)を超える絶縁抵抗値、
ii)IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の出力電力の低下、
iii)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の曲線因子の低下、または
iv)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の直列抵抗の増加、
の1つ以上を示すことを特徴とする、光電池モジュール。」

から、

本件補正後の
「(a)ガラス板を含む第1の外側保護層と、
(b)ガラス板を含む第2の外側保護層と、
(c)前記第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハと、
を含む光電池モジュールであって、
前記ガラス板が、

を含む組成であって、ROは、MgO、CaO、SrO、および、BaOの重量%の合計を表し、M_(2)Oは、Na_(2)O、Li_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、および、Cs_(2)Oの重量%の合計を表している組成を有し、前記光電池モジュールが、
i)湿潤漏れ電流がIEC 61215測定ガイドライン下で試験される時に400MΩ・m^(2)を超える絶縁抵抗値、
ii)IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の出力電力の低下、
iii)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の曲線因子の低下、または
iv)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の直列抵抗の増加、
の1つ以上を示すことを特徴とする、光電池モジュール。」

へと補正された。

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「K_(2)O」の範囲(重量%)を、「0-5」から「0-2」に限定するものであって、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか、すなわち、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下、項を改めて検討する。

3 本件補正発明についての判断
(1)本件補正発明の認定
本件補正発明は、上記1において、本件補正後の請求項1として記載されたとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の遡及出願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-222542号公報(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同じ。)。
(ア)「【特許請求の範囲】」、
「質量%で、ガラス組成として、SiO_(2) 50?80%、Al_(2)O_(3) 5?20%、B_(2)O_(3) 5?20%、MgO 0?20%、CaO 0?20%、SrO 0?20%、BaO 0?20%、SnO_(2) 0.001?2%を含有し、且つ質量比SnO_(2)/(Fe_(2)O_(3)+SnO_(2))が0.9以上であり、紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差が2%以下であることを特徴とする太陽電池用ガラス基板。」(【請求項1】)

(イ)「【技術分野】」、
「本発明は、太陽電池用ガラス基板に関し、特に、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、薄膜太陽電池、薄膜化合物太陽電池等に好適な太陽電池用ガラス基板に関する。」(【0001】)

(ウ)「【背景技術】」、
「太陽電池は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換するデバイスである。現在、シリコン太陽電池の他、種々の化合物半導体等を素材にした太陽電池が実用化されている。」(【0002】)、
「Si結晶シリコン太陽電池は、エチレンビニルアセテート(EVA)等の樹脂を介して、太陽電池セルをインターコネクターで接続したものをガラス基板で挟み込む構造を有している。薄膜太陽電池は、ガラス基板上に透明電極、p、i、n型半導体、電極等が形成される。薄膜化合物太陽電池は、ガラス基板上に電極層、光電変換層、バッファ層等が形成された構造を有している。これらの太陽電池は、ガラス基板を介して、太陽電池セルや光電変換層に光を取り込む構造を有している。また、ガラス基板は、カバーガラス、或いは構造支持体(基材)として用いられる。」(【0003】)

(エ)「【発明が解決しようとする課題】」、
「太陽電池が長期にわたって使用された場合、紫外線によってガラス基板が変色(以下、ソラリゼーションという)することで、太陽電池素子に照射される太陽光の強度が低下し、所望の光電変換効率が得られなくなるといった問題がある。」(【0004】)、
「ガラスのソラリゼーションを抑制する方法として、ガラス組成中にTiO_(2)を添加する方法が知られているが、TiO_(2)は多量に含有させると、ガラスの耐失透性が悪化する上に、ガラスが着色し、所望の光電変換効率が得られなくなり、結局のところ、上記問題を解決することができない。」(【0005】)、
「また、薄膜化合物太陽電池では、薄膜形成時にガラス基板が高温で熱処理されるため、これらのガラス基板には高い耐熱性が必要とされる。」(【0006】)、
「そこで、本発明は、ガラスの耐失透性と高い透過率を維持しながらも、ソラリゼーションが抑制され、且つ高い耐熱性を有する太陽電池用ガラス基板を得ることを技術的課題とする。ここで、「太陽電池用ガラス基板」には、太陽電池用カバーガラスと太陽電池用構造支持体の双方が含まれる。」(【0007】)

(オ)「【課題を解決するための手段】」、
「本発明者は、種々の検討を行った結果、ガラス組成中にSnO_(2)を一定量含有させた上で、質量比でSnO_(2)/(SnO_(2)+Fe_(2)O_(3))の値を0.9以上に規制することで、ガラスのソラリゼーションが抑制されることを見出すとともに、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)を適正量含有させることで、ガラスの耐熱性と耐失透性を両立できることを見出し、本発明として提案するものである。」(【0008】)、
「すなわち、本発明の太陽電池用ガラス基板は、質量%でガラス組成をSiO_(2) 50?80%、Al_(2)O_(3) 5?20%、B_(2)O_(3) 5?20%、MgO 0?20%、CaO 0?20%、SrO 0?20%、BaO 0?20%、SnO_(2) 0.001?2%に規制するとともに、質量比SnO_(2)/(Fe_(2)O_(3)+SnO_(2))の値を0.9以上とし、さらに紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差を2%以下とすることにより、上記技術的課題を解決するに至った。ここで、「透過率」は、板厚0.7mmのガラス基板を用いて、分光光度計で測定した値を指す。また、「紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差」とは、波長185nm(2.7mW/cm^(2))および波長254nm(13mW/cm^(2))の紫外線を12時間照射した場合に、波長400nmにおける透過率が変化した量を指す。」(【0009】)

(カ)「【発明を実施するための最良の形態】」、
「本発明の太陽電池用ガラス基板において、ガラス組成を上記範囲に限定した理由を以下に説明する。なお、以下の%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を指す。」(【0021】)、
「SiO_(2)は、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は50?80%、好ましくは55?75%、より好ましくは55?70%、更に好ましくは55?65%である。SiO_(2)の含有量が多くなると、ガラスの高温粘性が高くなり、溶融性が悪化するととともに、クリストバライトの失透ブツが析出しやすくなる。一方、SiO_(2)の含有量が少なくなると、ガラスの耐候性が悪化したり、ガラス化しにくくなったりする。」(【0022】)、
「Al_(2)O_(3)は、ガラスの歪点やヤング率を上昇させたり、クリストバライトの失透ブツの析出を抑える成分であり、その含有量は5?20%、好ましくは7?19%、より好ましくは9?18%、更に好ましくは11?17%、最も好ましくは13?17%である。Al_(2)O_(3)の含有量が多くなると、ガラスの液相温度が上昇して、ガラス基板に成形しにくくなる。また、Al_(2)O_(3)の含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなり、溶融性が悪化する傾向にある。」(【0023】)、
「B_(2)O_(3)は、融剤として作用し、ガラスの粘性を下げ、溶融性を改善する成分であり、その含有量は5?20%、好ましくは7?15%、より好ましくは8?13%、更に好ましくは8?12%、最も好ましくは8?11%である。B_(2)O_(3)の含有量が多くなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、耐候性が悪化する傾向にある。また、B_(2)O_(3)の含有量が少なくなると、液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなることに加えて、高温粘性が高くなり、溶融性が悪化する傾向にある。」(【0024】)、
「MgOは、ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であり、その含有量は0?20%、好ましくは0?7%、より好ましくは0?5%、更に好ましくは0?3%、最も好ましくは0?2%である。MgOの含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなりやすい。また、MgOの含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなる。」(【0025】)、
「CaOは、ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であり、その含有量は0?20%、好ましくは0?12%、より好ましくは3?10%、更に好ましくは3?9%である。CaOの含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなったりする。また、CaOの含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなる。」(【0026】)、
「SrOは、ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であり、その含有量は0?20%、好ましくは0?9%、より好ましくは0.5?8%、更に好ましくは0.5?7%である。SrOの含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなったりする。また、SrOの含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなる。」(【0027】)、
「BaOは、ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であり、その含有量は0?20%、好ましくは0?8%、より好ましくは0?5%、更に好ましくは0?3%である。BaOの含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなったりする。また、BaOの含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなる。」(【0028】)、
「MgO、CaO、SrO、BaOのアルカリ土類金属酸化物は、混合して含有させることで、ガラスの溶融性と耐失透性を向上させることができるが、これらの成分が多くなると、ガラスの密度が上昇する傾向にあり、ガラス基板の軽量化が困難となる。また熱膨張係数が高くなりすぎる場合がある。よって、アルカリ土類金属酸化物は、合量で0?30%、好ましくは0?20%、より好ましくは0?15%、更に好ましくは0?10%にすることが望ましい。」(【0029】)、
「SnO_(2)は、ガラスの清澄剤として作用するととともに、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果があり、その含有量は0.001?2%、好ましくは0.005?1.5%、より好ましくは0.01?1%、更に好ましくは0.05?0.5%、最も好ましくは0.05?0.3%である。SnO_(2)の含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が悪化する。また、SnO_(2)の含有量が少なくなると、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果が乏しくなったり、清澄効果が低減する。なお、SnO_(2)導入源としてSnO_(2)を主成分とする原料を用いても良いが、他の原料に含まれる微量成分、或いは電極等の溶出により含有させても差し支えない。」(【0030】)、
「ガラスのソラリゼーション抑制効果をより効果的に発現させるためには、質量比SnO_(2)/(Fe_(2)O_(3)+SnO_(2))の値を0.9以上、好ましくは0.92以上、0.94以上、0.96以上に規制すればよい。質量比SnO_(2)/(Fe_(2)O_(3)+SnO_(2))の値が0.9未満であると、所望のソラリゼーション抑制効果が得られにくくなり、太陽電池の光電変換効率が経時的に劣化しやすくなる。」(【0031】)、
「Fe_(2)O_(3)は、ガラスの透過率に影響を及ぼす成分であり、その含有量は0?0.05%、好ましくは1ppm?0.03%、更に好ましくは0.005?0.02%、最も好ましくは0.005?0.015%である。Fe_(2)O_(3)の含有量が多くなると、ガラスの可視域の透過率が低下しすぎて、太陽電池素子に照射される太陽光の量が低減する上に、ソラリゼーションが起こりやすくなり、その結果、太陽電池の光電変換効率が低下しやすくなる。また、Fe_(2)O_(3)の含有量が少なくなると、高純度のガラス原料を使用しなければならず、ガラス基板の製造コストの高騰を招く。また、Fe_(2)O_(3)の含有量が少なくなると、紫外域の透過率が高くなり過ぎることで、ガラス基板上に存在する樹脂の劣化を招き、太陽電池の寿命が短くなるおそれもある。」(【0032】)、
「また、上記成分以外にも、必要に応じて他の成分を合量で10%まで含有させることができる。」(【0033】)、
「TiO_(2)は、ガラスのソラリゼーションを抑制する効果があり、0?10%(好ましくは0?5%、より好ましくは0?3%、更に好ましくは0.001?1%、最も好ましくは0.005?0.1%)含有させることができる。既述の通り、TiO_(2)の含有量が多くなると、ガラスの耐失透性が悪化したり、ガラスが着色したりする。」(【0034】)、
「ZnOは、ガラスのヤング率を高めたり、溶融性を改善する成分であり、0?10%(好ましくは0?5%、より好ましくは0?3%、更に好ましくは0?1%、最も好ましくは0?0.5%)含有させることができる。ZnOの含有量が多くなると、ガラスの密度や熱膨張係数が高くなったりする。また、ZnOの含有量が多くなると、ガラスの耐失透性や歪点が低下する傾向にある。」(【0035】)、
「ZrO_(2)は、ガラスの耐候性を改善する成分であり、0?2%(好ましくは0?1%、より好ましくは0?0.5%、更に好ましくは0?0.2%、最も好ましくは0?0.1%)含有させることができる。ZrO_(2)の含有量が多くなると、ジルコンの失透ブツが析出しやすくなる。」(【0036】)、
「As_(2)O_(3)は、ガラスの清澄剤として作用するが、ガラス組成中に多量に含有させると、ガラスがソラリゼーションしやすくなり、太陽電池の光電変換効率が経時的に劣化しやすくなるため、その含有量は0?1%、好ましくは0?0.8%、より好ましくは0?0.5%、更に好ましくは0?0.3%であり、実質的に含有しないことが最も好ましい。また、実質的にAs_(2)O_(3)を含有しないガラス組成にすれば、近年の環境的要請を満たすことができる。」(【0037】)、
「Li_(2)O、Na_(2)O、K_(2)Oは、熱膨張係数を調整したり、高温粘性を低下させる成分であり、0?20%(好ましくは0?5%、より好ましくは0?1%、最も好ましくは0?0.1%)含有させることができる。これらの成分の含有量が多くなると、歪点が低下し、耐熱性が悪化する。また、これらの成分の含有量が多くなると、熱膨張係数が大きくなりすぎて、金属、有機系接着剤等の熱膨張係数と整合しにくくなる。さらに、これらの成分の含有量が多くなると、これらの成分がガラス基板に形成された膜に拡散した場合、所望の膜特性が得られないおそれがある。」(【0040】)、
「本発明の太陽電池用ガラス基板は、板厚が3.0mm以下、2.0mm以下、1.5mm以下、0.7mm以下、0.5mm以下、特に0.05?0.3mm、0.1?0.3mmであることが好ましい。ガラス基板の板厚が薄い程、ガラス基板を軽量化することができる。なお、ガラス基板の板厚が0.05mmより薄いと、ガラス基板の製造効率が低下する。」(【0053】)、

(キ)「【実施例】」、
「以下、本発明を実施例に基づいて説明する。」、
「表1、2は、本発明の実施例(試料No.1?6)および本発明の比較例(試料No.7?13)を示している。」(【0059】)、
「【表1】

」(【0060】)

(ク)「【産業上の利用可能性】」、
「以上に説明した通り、本発明の太陽電池用ガラス基板は、太陽電池用カバーガラス、太陽電池用構造支持体として好適である。また、本発明の太陽電池用ガラス基板は、単結晶シリコン太陽電池、多結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン太陽電池、薄膜太陽電池、薄膜化合物太陽電池等に好適である。」(【0075】)

イ 上記アによれば、引用文献には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、参考のため、引用発明の認定に用いた段落番号等の記載を括弧内に付してある。
「エチレンビニルアセテート(EVA)等の樹脂を介して、太陽電池セルをインターコネクターで接続したものをガラス基板で挟み込む構造を有しているSi結晶シリコン太陽電池であって、(【0003】)、
前記ガラス基板は、
質量%で、ガラス組成として、SiO_(2) 50?80%、Al_(2)O_(3) 5?20%、B_(2)O_(3) 5?20%、MgO 0?20%、CaO 0?20%、SrO 0?20%、BaO 0?20%、SnO_(2) 0.001?2%を含有し、且つ質量比SnO_(2)/(Fe_(2)O_(3)+SnO_(2))が0.9以上であり、紫外線照射前後で波長400nmにおける透過率差が2%以下であるものであり、(【請求項1】)
ガラス組成(質量%)が、
SiO_(2)が58.230、Al_(2)O_(3)が16.2、B_(2)O_(3)が8.3、MgOが0.6、CaOが4.0、SrOが1.8、BaOが8.9、ZnOが0、As_(2)O_(3)が0、Sb_(2)O_(3)が1.79、SnO_(2)が0.17、ZrO_(2)が0、Fe_(2)O_(3)が0.010、TiO_(2)が0であるか、(【0060】の実施例2)
SiO_(2)が58.714、Al_(2)O_(3)が14.9、B_(2)O_(3)が10.3、MgOが0.5、CaOが4.4、SrOが3.3、BaOが5.6、ZnOが0、As_(2)O_(3)が0、Sb_(2)O_(3)が2.15、SnO_(2)が0.08、ZrO_(2)が0.053、Fe_(2)O_(3)が0.003、TiO_(2)が0であるか、(【0060】の実施例3)
SiO_(2)が59.626、Al_(2)O_(3)が16.5、B_(2)O_(3)が10.3、MgOが0.3、CaOが8.0、SrOが4.5、BaOが0.5、ZnOが0、As_(2)O_(3)が0、Sb_(2)O_(3)が0、SnO_(2)が0.22、ZrO_(2)が0.042、Fe_(2)O_(3)が0.0117、TiO_(2)が0であるか、(【0060】の実施例5)
のいずれかからなる太陽電池用ガラス基板を備え、
太陽電池用ガラス基板には、太陽電池用カバーガラスが含まれる、(【0007】)
Si結晶シリコン太陽電池。」

(3)本件補正発明と引用発明との対比
ア 本件補正発明の「(a)ガラス板を含む第1の外側保護層と、
(b)ガラス板を含む第2の外側保護層と、
(c)前記第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハと、
を含む光電池モジュール」との特定事項について
(ア)引用発明の「Si結晶シリコン太陽電池」は、本件補正発明の「光電池モジュール」に相当する。そして、当該「Si結晶シリコン太陽電池」が、本件補正発明でいう「第1の外側保護層」、「第2の外側保護層」及び「第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハ」を備えることは、技術常識に照らして自明である。

(イ)引用発明の「太陽電池用ガラス基板」は、本件補正発明の「ガラス板」に相当する。そして、当該「太陽電池用ガラス基板」は、「太陽電池用カバーガラス」を含むものであるから、上記(イ)で認定した「外側保護層」に相当するものである。

(ウ)よって、本件補正発明と引用発明とは、「第1の外側保護層と、第2の外側保護層と、前記第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハと、を含む光電池モジュール」の点で共通するとともに、「外側保護層」の一方が「ガラス板を含」む点でも共通する。
しかし、引用発明は、「第1の外側保護層」及び「第2の外側保護層」の双方が「ガラス板を含」むことを明記していない。

イ 本件補正発明の「前記ガラス板が、

を含む組成であって、ROは、MgO、CaO、SrO、および、BaOの重量%の合計を表し、M_(2)Oは、Na_(2)O、Li_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、および、Cs_(2)Oの重量%の合計を表している組成を有し、」との特定事項について
(ア)「SiO_(2)」の重量%について、引用発明の値は、58.230(実施例2)、58.714(実施例3)及び59.626(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「50-70」に相当する。
(イ)「Al_(2)O_(3)」の重量%について、引用発明の値は、16.2(実施例2)、14.9(実施例3)及び16.5(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「8-18」に相当する。
(ウ)「B_(2)O_(3)」の重量%について、引用発明の値は、8.3(実施例2)、10.3(実施例3)及び10.3(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「7-17」に相当する。
(エ)「MgO」の重量%について、引用発明の値は、0.6(実施例2)、0.5(実施例3)及び0.3(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「1-5」とは一致しない。
(オ)「CaO」の重量%について、引用発明の値は、4.0(実施例2)、4.4(実施例3)及び8.0(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「>0-10」に相当する。
(カ)「SrO」の重量%について、引用発明の値は、1.8(実施例2)、3.3(実施例3)及び4.5(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「>0-10」に相当する。
(キ)「BaO」の重量%について、引用発明の値は、8.9(実施例2)、5.6(実施例3)及び0.5(実施例5)のいずれかであるところ、いずれであっても、本件補正発明の「>0-10」に相当する。
(ク)「RO」の重量%について、引用発明の値は、15.3(実施例2)、13.8(実施例3)及び13.3(実施例5)のいずれかであると認められるところ、いずれであっても、本件補正発明の「10-20」に相当する。
(ケ)「Na_(2)O」の重量%について、引用発明の値は、0であると認められるから、本件補正発明の「0-1」に相当する。
(コ)「K_(2)O」の重量%について、引用発明の値は、0であると認められるから、本件補正発明の「0-2」に相当する。
(サ)「M_(2)O」の重量%について、引用発明の値は、0であると認められるから、本件補正発明の「0-5」に相当する。
(シ)「SiO_(2)+B_(2)O_(3)+CaO」の重量%について、引用発明の値は、70.53(実施例2)、73.414(実施例3)及び77.926(実施例5)のいずれかであると認められるところ、いずれであっても、本件補正発明の「>57-85」に相当する。
(ス)「Na_(2)O+K_(2)O+B_(2)O_(3)+MgO+CaO+SrO」の重量%について、引用発明の値は、14.7(実施例2)、18.5(実施例3)及び23.1(実施例5)のいずれかであると認められるところ、いずれであっても、本件補正発明の「>7-30」に相当する。
(セ)「MgO+CaO+SrO」の重量%について、引用発明の値は、6.4(実施例2)、8.2(実施例3)及び12.8(実施例5)のいずれかであると認められるところ、いずれであっても、本件補正発明の「0-25」に相当する。
(ソ)「(Na_(2)O+B_(2)O_(3))-Al_(2)O_(3)」の重量%について、引用発明の値は、-7.9(実施例2)、-4.6(実施例3)及び-6.2(実施例5)のいずれかであると認められるところ、いずれであっても、本件補正発明の「-11-9」に相当する。

ウ 本件補正発明の「前記光電池モジュールが、
i)湿潤漏れ電流がIEC 61215測定ガイドライン下で試験される時に400MΩ・m^(2)を超える絶縁抵抗値、
ii)IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の出力電力の低下、
iii)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の曲線因子の低下、または
iv)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の直列抵抗の増加、
の1つ以上を示す」との特定事項について
引用発明が、本件補正発明の上記特定事項を備えるのかは不明である。

(4)一致点及び相違点の認定
上記(3)によれば、本件補正発明と引用発明とは、
「第1の外側保護層と、
第2の外側保護層と、
前記第1および第2の外側保護層の間の少なくとも1つの結晶シリコン太陽電池ウエハと、
を含む光電池モジュールであって、
前記第1および第2の外側保護層のうちの一方がガラス板を含み、
前記ガラス板が、
成分が重量%で、SiO_(2)が50-70であり、Al_(2)O_(3)が8-18であり、B_(2)O_(3)が7-17であり、CaOが>0-10であり、SrOが>0-10であり、BaOが>0-10であり、ROが10-20であり、Na_(2)Oが0-1であり、K_(2)Oが0-2であり、M_(2)Oが0-5であり、SiO_(2)+B_(2)O_(3)+CaOが>57-85であり、Na_(2)O+K_(2)O+B_(2)O+MgO+CaO+SrOが>7-30であり、MgO+CaO+SiOが0-25であり、(Na_(2)O+B_(2)O_(3))-Al_(2)O_(3)が-11-9である、
を含む組成であって、ROは、MgO、CaO、SrO、および、BaOの重量%の合計を表し、M_(2)Oは、Na_(2)O、Li_(2)O、K_(2)O、Rb_(2)O、および、Cs_(2)Oの重量%の合計を表している組成を有する、
光電池モジュール。」である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本件補正発明は、「第1の外側保護層」及び「第2の外側保護層」の双方が「ガラス板を含」むのに対し、引用発明は、それらのうちの一方が「ガラス板」を含むものの、他方も「ガラス板」を含むのかにつき明記していない点。

[相違点2]
前記ガラス板のMgOの重量%が、本件補正発明は、「1-5」であるのに対し、引用発明は、0.6(実施例2)、0.5(実施例3)及び0.3(実施例5)のいずれかである点。

[相違点3]
光電池モジュールについて、本件補正発明は、
「i)湿潤漏れ電流がIEC 61215測定ガイドライン下で試験される時に400MΩ・m^(2)を超える絶縁抵抗値、
ii)IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の出力電力の低下、
iii)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の曲線因子の低下、または
iv)前記IEC 61215高温高湿標準によって85℃/85%の湿度および-1kVのバイアス応力に2500時間暴露される時に10%未満の直列抵抗の増加、
の1つ以上を示す」のに対し、引用発明はそうであるのか不明である点。

(5)相違点1の判断
引用発明は、紫外線によってガラス基板が変色する(ソラリゼーション)という課題を解決するための発明であると認められる(引用文献の【0004】)。
他方、太陽電池の技術分野において、ガラス基板を両側に設けて、両側から受光を行うようにした太陽電池は周知技術である(例えば、国際公開第2007/026465号の[0002]・[0003]・図7、特開2004-259928号公報の請求項1・図1を参照。)ところ、引用発明は、上記の技術的思想からみて、そのような太陽電池を排除するものではない。
そうすると、引用発明において、両側から受光を行うようにした太陽電池におけるソラリゼーションを解決するために、引用発明に記載されたようなガラス基板を、両側に設けるように構成して、相違点1に係る構成を得ることは、当業者が適宜なし得たことである。

(6)相違点2の判断
ア まず、引用文献の【0025】には、MgOについて、
(i)ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であること、(ii)含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなりやすいこと、(iii)含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなること、が記載されている。
そして、引用文献の【0026】?【0028】には、CaO、SrO及びBaOについて、(i)ガラスの歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、ガラスの溶融性を改善する成分であること、(ii)含有量が多くなると、ガラスの液相温度が高くなって、ガラス基板に成形しにくくなったり、熱膨張係数が高くなって、周辺部材の熱膨張係数と整合しにくくなったり、密度が高くなったりすること、(iii)含有量が少なくなると、ガラスの歪点やヤング率が低下したり、高温粘性が高くなって溶融しにくくなること、が記載されている。
さらに、引用文献の【0029】には、MgO、CaO、SrO及びBaOのアルカリ土類金属酸化物について、混合して含有させることで、ガラスの溶融性と耐失透性を向上させることができるが、これらの成分が多くなると、ガラスの密度が上昇する傾向にあり、ガラス基板の軽量化が困難となり、また熱膨張係数が高くなりすぎる場合があるため、アルカリ土類金属酸化物は、合量で0?30%、好ましくは0?20%、より好ましくは0?15%、更に好ましくは0?10%にすることが望ましい旨の記載がある。

イ このような引用文献の記載からすれば、当業者は、MgO、CaO、SrO及びBaOのアルカリ土類金属酸化物については、いずれも、定性的には同様の機能(上記ア(i)?(iii))を奏する成分であることが理解できる上に、それらの合量(重量%)が、ガラスの所定の特性に関する一定の目安となっていることも理解できる。そうすると、当業者であれば、引用発明において、アルカリ土類金属酸化物の合量を維持しつつ、定性的には同様の機能を奏するアルカリ土類金属酸化物の各成分について、それらの重量%を適宜設計することができるというべきである。
しかるに、引用文献の【0025】は、MgOについて、その含有量(質量%)は0?20%、好ましくは0?7%、より好ましくは0?5%、更に好ましくは0?3%、最も好ましくは0?2%であることを記載している。そうすると、当業者であれば、引用発明のMgOについて、その重量%として、相違点2に係る「1-5」に属する値に至ることに格別の困難性はなく(なお、引用文献の実施例4は、MgOの含有量が2.7質量%である。)、そのようにしても、上記(4)で認定した一致点が変更されることはない。

ウ よって、相違点2は、格別のものではない。
なお、引用文献の実施例4のガラス板は、SrOの含有量が0であるため、「>0-10」とはいえないという微差においてのみ、本件補正発明のガラス板と相違するものである。

(7)相違点3の判断
ア まず、相違点3に係る構成の技術的意味を検討する。
(ア)本件補正後の明細書(以下「本願明細書」という。)には、次の記載がある。
a 「ナトリウムは、標準的な窓のソーダ石灰ガラス組成物において一般に使用される可動元素またはイオンであり得る。光電池モジュールの寿命についてナトリウムが印加電界下でガラスから流出してモジュールの能動デバイス層上に移動し、時間とともに性能を低下させることがあるので、ナトリウムの移動度は、光電池モジュールの長期的な信頼性に問題がある場合がある。図4は、ウエハ付きSiモジュールの上部ガラスおよび下部ガラスの両方および薄膜モジュールの上部および下部ガラスの両方を低ナトリウム含有またはナトリウムを含有しない特殊ガラスと取り代える実施形態を図示する。両方の場合において特殊ガラスは、標準窓ガラスと比べてかなり厚さを低減することができ、結果としてモジュールの重量を大幅に低減することができる。光電池モジュール内のナトリウムまたはアルカリ含有ガラスを、添加したナトリウムまたは特定の実施形態においては添加したアルカリを含有しない特殊ガラスと取り代えることによって、ナトリウムの移動の不良モードを最小にすることができる。図4Aに示されたウエハ付きシリコンモジュールのための典型的な光電池モジュール400は、少なくとも2つの実質的にナトリウムを含有しないかまたは低ナトリウムのガラス板11、少なくとも1つのシリコンウエハ16および少なくとも1つの封入剤層20がガラス板の間に挟まれている。モジュールは、図4Aの横断面に示されるように端封止18、金属フレーム14、および電気的コンタクト22をさらに含むことができる。図4Bに示される薄膜光電池モジュールのための典型的な光電池モジュール401は、少なくとも2つの実質的にナトリウムを含有しないかまたは低ナトリウムのガラス板11、薄膜光電池構造体17および少なくとも1つの封入剤層20がガラス板の間に挟まれている。モジュールは、図4Bの横断面に示されるように端封止18、金属フレーム14、および電気的コンタクト22をさらに含むことができる。」(【0050】)、
「ナトリウムの場合のように、カリウムもまた、相当な移動度を有しかつガラスから流れ出る場合がある標準的な窓のソーダ石灰ガラス組成物中に一般に見出される元素またはイオンである。いくつかの実施形態において、ガラスが0?約5重量%K_(2)Oを含むことができる。・・・」(【0052】)、
「いくつかの実施形態において示される実質的気密パッケージは、モジュールの信頼性の著しい改善を示すことが強調されるべきである。実質的にナトリウムを含有しないかまたは低ナトリウムの特殊ガラスを実質的気密の融合ガラス/フリット封止と組み合わせることによって、2つの最も重大な不良モード、ナトリウムの移動および水の侵入を最小にすることができる。さらに、薄い特殊ガラスを使用することによってモジュールの重量をかなり低減することができる。2枚の3.2mmソーダ石灰ガラスを2枚の0.7mm特殊ガラスと取り代えることによって、1平方メートルのモジュールの重量を32.5ポンドから7ポンドに低減することができ、78%の重量軽減が可能である。最後に、融合ガラス/フリット封止の気密性質は、より薄い封止を使用することができるので、モジュールの活性面積を増加させることができる。例えば、薄膜モジュールは典型的に、12mmのポリマーの外周封止厚さを使用する。1m×1mのモジュールについて封止厚さを3mmに低減することによって、モジュールの活性面積を94%から98%に増加させることができ、活性面積効率12%と仮定するとモジュール効率の11.3%から11.7%への増加に相当する。」(【0090】)

b 「本明細書において例示された光電池モジュールは、先行のデバイスと比べた時に劇的に一層良い性能を示すことができる。モジュールの安定性および性能を試験するために様々な方法が考案された。1つの試験は、湿潤漏れ電流試験である(International Standard IEC 61215、地上設置の結晶シリコン光電池(PV)モジュール-設計認定および型式承認、pp.77?79、International Electrotechnical Commission(第2版、2005年4月)を参照、その内容を参照によってその全体において組み込む)IEC 61215である。湿潤漏れ電流試験の目的は、腐蝕、接地事故、したがって感電の危険を避けるために、湿潤作業条件(雨、霧、露、溶けた雪)下で透湿に対するモジュールの絶縁化を測定することである。モジュールは、(IPX7より低い)浸漬用に設計されていない接続箱のケーブル入口を除いて全ての表面を覆う深さまで浅いタンク内に浸漬される。試験電圧が短絡出力コネクタと水槽溶液との間にモジュールの最大システム電圧まで2分間印加される。絶縁抵抗は、0.1m^(2)より大きい面積を有するモジュールの1平方メートル当たり40MΩ以上とする。湿潤漏れ電流試験は、試験所のPV認定の間の最も多い再発不良の1つとして評価される。いくつかの実施形態において、湿潤-漏れ電流試験は、IEC 61215測定ガイドラインに従って2分間600Vで行われた。」(【0094】)、
「モジュールの安定性および性能を試験する別の方法は、高温高湿試験(「DH」)である。(International Standard IEC 61215、地上設置の結晶シリコン光電池(PV)モジュール-設計認定および型式承認、pp.73?75、International Electrotechnical Commission(第2版、2005年4月)を参照、その内容を参照によってその全体において組み込む)。高温高湿試験は、モジュールを非常に過酷な条件に晒すことによって光電池モジュールの長い現場時間をシミュレートし、様々な性能基準の記録をとる環境試験である。DH試験は、任意の時間行われてもよいが、しばしば1000時間または2500時間行なわれる。目的は、85℃±2℃の温度および85%±5%の相対湿度を1000(DH1000)または2500(DH2500)時間適用することによって湿度の浸透への長時間暴露にモジュールが耐える能力を定量することであり、-1000V等の印加電圧において行なわれてもよい。DH1000試験は最も「悪影響を及ぼす」試験であり、いくつかの実験所においての不良率の上位リストにあり、c-Siモジュールの不良全体の40?50%まで占めている。同様な不良率は、薄膜もまた有するDH1000について観察され得る。DH2500は、時間が150%さらに延長されるので、一層過酷である。この試験の苛酷性は特に、積層プロセスおよび湿度からの端封を試す。電池部品の離層および腐蝕が湿度の浸透の結果として観察される場合がある。DH1000の後に見い出される重大な欠点がない場合でも、モジュールが「脆く」なる程度まで応力をかけられており、後続の機械負荷試験に合格できないのがしばしば事実である。いくつかの実施形態において、高温高湿試験は1000時間行われた。他の実施形態において、高温高湿試験は2500時間行われた。他の実施形態において、高温高湿試験は2500時間を超える時間行われた。いくつかの実施形態において、高温高湿試験は-1000Vにおいて行なわれる。」(【0095】)、
「高温高湿試験の結果として出力電力の低下が直接に測定され得る。いくつかの実施形態において、光電池モジュールは、-1000Vにおいて1000時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約2%未満の出力電力の低下を示すことがある。いくつかの実施形態において、光電池モジュールは、-1000Vにおいて2500時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、または約4%未満の出力電力の低下を示す。」(【0096】)、
「曲線因子は、高温高湿試験の関数として測定され得る別の特性である。曲線因子は、モジュールの出力電力に直接に影響を与える。曲線因子に影響を与える機構は、モジュールガラスからシリコンセル領域への、例えばナトリウムイオンなどのイオン移動であり、それは短絡および最終的には曲線因子の望ましくない低下につながる。いくつかの実施形態において、光電池モジュールは、-1000Vにおいて1000時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約2%未満の曲線因子の低下を示すことがある。いくつかの実施形態において、光電池モジュールは、-1000Vにおいて2500時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、または4%未満の曲線因子の低下を示す。」(【0097】)、
「直列抵抗は、高温高湿試験の関数として測定され得る別の特性である。直列抵抗は、モジュールがより高い効率を達成することを可能にし、したがってより大きな出力電力を生じさせることができる。ポリマー後板を通ってなどで湿分が入ると電極の腐蝕につながる場合があり、モジュールの直列抵抗を増加させ、最終的にモジュールの出力電力を低下させる。いくつかの実施形態において、直列抵抗の増加は、-1000Vにおいて1000時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、または約2%未満である。いくつかの実施形態において、低い直列抵抗の増加は、-1000Vにおいて2500時間85%±5%の相対湿度で85℃±2℃の高温高湿試験に暴露される時に約15%未満、約14%未満、約13%未満、約12%未満、約11%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、または約4%未満である。」(【0098】)

c 「実施例1
ガラス内の電荷の伝導は第一に、印加電圧に反応するイオンによる。図11に示されるガラスの体積導電率(抵抗率の逆数である)は、確立した試料調製手順および測定技術を使用して得られる。試験下のガラス試料はASTM D257に記載されているように作製され、そこで平らな試料を画定された面積および厚さに仕上げてから、金電極を反対側の平らな表面上で焼成して平行板キャパシタを形成する。次に、ASTM C657によって記載されているように試料への電気接続部を形成して炉内に置く。インピーダンススペクトル分析器を使用して平行板電極試料のインピーダンスを測定し、導電率は抵抗率ρ(Ω・cm)の以下の2つの式を用いて計算される:(1)ρ=R・(A/t)(R=抵抗(Ω)であり、Aおよびtがそれぞれ試料の有効面積および厚さである)、(2)ρ=ρ_(0)・e^((-E)_(A)^(/k)_(B)^(T))(ρ0が前指数因子(Ω・cm)であり、EAが活性化エネルギー(eV)であり、kBがボルツマン定数であり、Tが温度(K)である)。」(【0113】)、
「実施例2
湿潤漏れ試験がIEC 61215測定ガイドラインに従って+600Vにおいて行なわれ、2分間安定化される。モジュールの最低測定要件は40Mohm*m^(2)である。

」(【0114】)、
「そこで「SLG」は、Tedlarポリマーからなる標準ソーダ石灰ガラス前板および後板である。我々の測定から、ソーダ石灰ガラス(SLG)/ポリマーパッケージはIEC 要件に合格する。例示された光電池モジュールパッケージは、組成物106(表3)の前板および後板ガラス板組成物を含む。例示された光電池モジュールパッケージは、性能が>3桁ほど良くなり、合格する。例示されたPVパッケージの一層高い抵抗は、1つには、SLGに対して106ガラスの>3桁大きい抵抗率に帰せられる。」(【0115】)、
「実施例3
電圧誘起出力低下(「PID」)を多数の光電池モジュール上の高温高湿試験によって試験し、実施形態の信頼性、性能、および安定性を比較する。標準c-Siモジュール設計を使用し、全てのデバイスが構成1または構成2(表4を参照)のどちらかの成分を含む。モジュールは全て、c-Si電池、封入剤コーティング、前板および後板成分、フレーム用ガスケット、押出アルミニウムフレーム、接続箱および接続箱接着剤を含む。」(【0116】)、
「【表4】

」(【0117】)、
「構成の一覧1からの成分を使用して5つの異なった光電池モジュールを製造する-1)ソーダ石灰ガラス前板/ポリマー後板、2)ソーダ石灰ガラス前板/ソーダ石灰ガラス後板、3)組成物106前板/ポリマー後板、4)組成物106前板/ソーダ石灰ガラス後板、および5)組成物106前板/組成物106後板。高温高湿測定をバイアス無しで(図12A)および-1000Vのバイアスで(図12B)3000時間まで実施する。図13に見ることができるように、ソーダ石灰ガラスの前板および後支持板は過酷な試験条件により急速に駄目になる。ポリマー後支持モジュールは比較的良いが、それでも、2000+時間において著しい低下を示した。驚くべきことに、低ナトリウムのガラス組成物を有する例示された光電池モジュールは、3000時間までずっと、ほとんど?全く低下を示さない。」(【0118】)、
「表5は、組成物106を含む例示された光電池モジュールについておよび構成1の成分を使用して、出力、曲線因子(FF)、および直列抵抗、R_(s)のパーセントの変化を示す。」(【0119】)、
「【表5】

」(【0120】)、
「構成の一覧2からの成分を使用して4つの異なった光電池モジュールを製造する-1)ソーダ石灰ガラス前板/ポリマー後板、2)ソーダ石灰ガラス前板/ソーダ石灰ガラス後板、3)組成物106前板/ポリマー後板、および4)組成物106前板/組成物106後板。高温高湿測定をバイアス無しで(図14A)および-1000Vのバイアスで(図14B)3000時間まで実施する。これらの試験の結果は、構成1の成分の結果と同様である。また、図15に見ることができるように、ソーダ石灰ガラス前板および後支持シートは、過酷な試験条件下で著しい低下を示す。ポリマー後支持モジュールは比較的良いが、それでも、2500+時間において著しい低下を示した。驚くべきことに、低ナトリウムのガラス組成物を有する例示された光電池モジュールは、3000時間までずっと、ほとんど?全く低下を示さない。」(【0121】)

d 「組成物106」の組成は、SiO_(2)が59.2、Al_(2)O_(3)が15、B_(2)O_(3)が11.2、MgOが0.56、CaOが4.6、SrOが3.0、BaOが5.6、ROが13.8、Na_(2)Oが0、K_(2)Oが0、M_(2)Oが0、As_(2)O_(3)が0.75、Sb_(2)O_(3)が0.007、SnO_(2)が0.007、Fe_(2)O_(3)が0.01、Clが<0.002、Fが<0.01、ZrO_(2)が0.035、ZnOが0.012である。(【0071】)

(イ)上記(ア)によれば、相違点3に係る構成の技術的意味について、次のとおりであると認められる。
a 「i)」について
「i)」は、湿潤漏れ電流が試験されるときの絶縁抵抗値が400MΩ・m^(2)を超えるとの特定事項に係るところ、かかる特定事項は、ナトリウム及びカリウムを実質的に含有しないガラス板を前板および後板に用いた光電池モジュールパッケージであれば、実現されるものと解される。
すなわち、まず、【0113】には、ガラス内の電荷の移動は第一に、印加電圧に反応するイオンによると記載されている。次に、【0050】及び【0090】には、ガラス中のナトリウムは、ソーダ石灰ガラス組成物において一般に使用される可動元素またはイオンであって、印加電圧下で移動するものであると記載されており、【0051】には、カリウムも相当な移動度を有すると記載されている。さらに、【0050】には、実質的にナトリウム又はアルカリを含有しない特殊ガラスを用いることによって、ナトリウムの移動の不良モードを最小にすることができると記載されており、【0090】の「実質的にナトリウムを含有しないかまたは低ナトリウムの特殊ガラスを実質的気密の融合ガラス/フリット封止と組み合わせることによって、2つの最も重大な不良モード、ナトリウムの移動および水の侵入を最小にすることができる」との記載も、同じ意味であると解される。
そして、実施例2(【0114】・【0115】)は、絶縁抵抗値に関する実施例であるところ、そこでは、組成物106を前板及び後板ガラス板組成物として使用した光電池モジュールパッケージが上記絶縁抵抗値を超えることが記載されており、当該組成物106(【0071】)は、ナトリウム及びカリウムを含有しないものである。他方で、絶縁抵抗値に関する他の実施例は開示されておらず、比較例は、標準ソーダ石灰ガラスを前板とするとともにポリマーを後板として使用した光電池モジュールパッケージにつき、上記絶縁抵抗値を超えないというものである。なお、実施例2には、光電池モジュールパッケージについて、前板及び後板以外の構成は具体的に記載されていない。
以上によれば、「i)」の条件は、ナトリウム及びカリウムを実質的に含有しないガラス板を前板および後板に用いた光電池モジュールパッケージであれば、実現されるものと解するのが相当である。

b 「ii)」?「iv)」について
「ii)」、「iii)」及び「iv)」は、所定の高温高湿環境及びバイアス応力下に所定時間暴露されるときに、それぞれ、出力電圧の低下が10%未満である、曲線因子の低下が10%未満である、及び、直列抵抗の増加が10%未満である、との特定事項に係るところ、かかる特定事項も、上記aと同様に、ナトリウム及びカリウムを実質的に含有しないガラス板を前板および後板に用いた光電池モジュールパッケージであれば、実現されるものと解される。
すなわち、実施例3(【0116】?【0121】)は、高温高湿環境及びバイアス応力下の試験に関する実施例であるところ、そこでは、標準c-Siモジュール設計において、前板及び後板を、ソーダ石灰ガラス、ポリマー及び組成物106から選択したときのそれぞれにおける出力電圧、曲線因子及び直列抵抗の変動が定量的に記載されており、もっぱら、前板及び後板の材質に着目した試験が行われている。そして、【0118】及び【0121】には、低ナトリウムのガラス組成物を有する例示された光電池モジュールは、3000時間までずっと、ほとんど?全く低下を示さないとも記載されている。
さらに、【0097】には、曲線因子に影響を与える機構は、モジュールガラスからシリコンセル領域への、例えばナトリウムイオンなどのイオン移動であることが記載されている。
また、【0098】には、出力電圧の低下及び直列抵抗の増加について、ポリマー後板を通ってなどで湿分が入ると電極の腐蝕につながる場合があり、モジュールの直列抵抗を増加させ、最終的にモジュールの出力電力を低下させることが記載されている。
以上によれば、「ii)」、「iii)」及び「iv)」の条件についても、ナトリウム及びカリウムを実質的に含有しないガラス板を前板および後板に用いた光電池モジュールパッケージであれば、実現されるものと解するのが相当である。

イ 上記アを踏まえた上で、相違点3について判断する。
引用発明のガラス基板は、ナトリウム及びカリウムを含有しないものである。
そして、引用発明において、相違点1を解消したことにより得られた構成は、ナトリウム及びカリウムを含有しないガラス板を前板および後板に用いた光電池モジュールであり、相違点2を解消したことにより得られた構成も、ナトリウム及びカリウムを含有しないガラス板を前板および後板に用いたという意味において同じである。
そうすると、引用発明において相違点1及び2に係る構成に至れば、相違点3に係る構成にも至ることができるといえるのであり、よって、相違点3は、相違点1及び2と同様に、格別なものではない。

(8)本件補正発明の効果について
これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の効果である、モジュールの耐用寿命にわたってエネルギー出力を増加させるという効果(【0007】)は、引用発明、引用文献に記載された技術的事項及び技術常識に照らして格別顕著なものとはいえない。
すなわち、引用文献の【0040】には、ガラスのLi_(2)O、Na_(2)O及びK_(2)Oの含有量が多くなると、これらの成分がガラス基板に形成された膜に拡散することに伴う不具合が生じる旨が記載されているし、また、ガラス基板を両側に設けた場合に、ガラス基板を片側一方だけに設ける場合よりも耐環境性が向上することは自明である。そうすると、本件補正発明の効果は、引用発明、引用文献に記載された技術的事項及び技術常識に照らして予測し得るものにすぎないのであり、格別顕著なものとはいえない。

(9)請求人の主張について
請求人は、本件補正発明の光電池モジュールは、第1及び第2の外側保護層を構成するガラス板のMgOの含有率が1-5重量%であることを特徴としており、CaO、SrO及びBaO等の他のアルカリ土類金属酸化物と組み合わせてMgOをガラスに1-5重量%の範囲で添加して使用すると、融解温度を低下させ、歪点を上昇させることを見いだしたものであって、それにより、光電池モジュールの絶縁抵抗値、出力電力の低下、曲線因子の低下及び直列抵抗の増加について、本件補正発明に記載されている特性が得られることを見いだしたものである旨主張する。
しかしながら、まず、MgOの特性についてみると、引用文献の【0025】には、MgOの含有量が少なくなると、ガラスの歪点が低下することが記載されているし、同【0029】には、MgOが他のアルカリ土類金属酸化物と混合して含有させるものである旨の記載がある。また、MgOが、融解温度を低下させて歪点を高めるものであることは技術常識でもある(例えば、請求人が出願人である国際公開第2010/042460号の[0038]、同じく国際公開2010/138784号の[0035]を参照。)。
そして、光電池モジュールの絶縁抵抗値、出力電力の低下、曲線因子の低下及び直列抵抗の増加という特性についてみると、上記(7)ア(イ)a及びbで検討したとおりであるから、MgOが1-5重量%の範囲で添加されているか否かは、これらの特性とは関係しないと認められる。むしろ、本願明細書の【0045】には、MgOの重量%につき、0が下限であってもよいことが記載されているし、また、本願明細書に記載された実施例2及び3(本件補正発明で特定された特性を満たしている。)において唯一用いられたガラス組成物である組成物106についてみても、そのMgOの重量%は0.56なのであって、1-5ではない。
したがって、請求人の主張は採用できない。

(10)本件補正発明についての判断の小括
以上のとおりであるから、本件補正発明は、引用発明、引用文献に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 本件補正についてのむすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成30年9月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2の[理由]1において、本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の遡及出願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった上記引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、上記第2の[理由]3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]3で検討した本件補正発明において、「K_(2)O」の範囲(重量%)を、「0-2」から「0-5」に拡張したものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに、それを減縮したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]3で認定判断したとおり、引用発明、引用文献に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明、引用文献に記載された技術的事項及び技術常識に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-02-05 
結審通知日 2020-02-12 
審決日 2020-02-26 
出願番号 特願2017-137894(P2017-137894)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 嵯峨根 多美小林 幹  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 山村 浩
松川 直樹
発明の名称 光電池モジュールパッケージ  
代理人 柳田 征史  
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