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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
管理番号 1364001
異議申立番号 異議2020-700205  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-03-24 
確定日 2020-07-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6581649号発明「粒子を含む製剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6581649号の請求項1?19に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6581649号の請求項1?19に係る特許(以下「本件特許」という)についての出願は、2015年8月11日(優先権主張 2014年8月11日 欧州特許庁、2014年9月6日 欧州特許庁、2015年7月7日 欧州特許庁)を国際出願日とするものであり、令和1年9月6日にその特許権の設定登録がされ、令和1年9月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年3月24日に特許異議申立人ディーエスエム ニュートリショナル プロダクツ アーゲー(以下「申立人」という)により特許異議の申立てがなされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?19に係る発明は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?19に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
ふるい径が0.05?3mmの範囲の摂取可能な粒子であって、
(a)水膨潤性または水溶性のポリマー要素、
(b)第1の脂質要素、
場合により、
(c)アミノ酸、
(d)ビタミン、および/または
(e)微量栄養素を含み;
-前記第1の脂質要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含み、
-前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており、
合成薬を含まない、摂取可能な粒子。
【請求項2】
活性コアとコーティングを含み、
-前記活性コアは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素と、前記第1の脂質要素とを含み、
-前記コーティングは、第2の脂質要素および/または親水性要素を含み、前記コーティングは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素を実質的に含まなくてもよく、
前記第2の脂質要素の組成は、前記第1の脂質要素の組成と同じであってもよく、または異なっていてもよい、請求項1に記載の粒子。
【請求項3】
-不活性コアと、
-前記不活性コアを覆う第1のコーティングと、
-前記第1のコーティングを覆う第2のコーティングとを含み、
前記第1のコーティングは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素と、前記第1の脂質要素とを含み、
前記第2のコーティングは、第2の脂質要素および/または親永性要素を含み、
前記第2のコーティングは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素を実質的に含まず、
前記第2の脂質要素の組成は、前記第1の脂質要素の組成と同じであってもよく、または異なっていてもよい、請求項1に記載の粒子。
【請求項4】
前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、ポリ(カルボキシレート)、キトサン、セルロースエーテルおよびキサンタンガムから選択される少なくとも1種類のポリマー材料を含み;
前記ポリ(カルボキシレート)は、好ましくは、アルギン酸、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、アクリル酸とメタクリル酸のコポリマー、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリル酸)から選択され;
前記セルロースエーテルは、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースから選択され;
前記ポリ(カルボキシレート)および/または前記カルボキシメチルセルロースは、場合により、部分的または完全に中和されており;
前記ポリマー材料は、場合により、少なくとも部分的に架橋されている、請求頃1?3のいずれかに記載の粒子。
【請求項5】
前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、サイリウムシードのバスク繊維またはオーツベータグルカンまたはカルボマーのいずれかから選択される繊維を含む、請求項1?4のいずれかに記載の粒子。
【請求項6】
前記アミノ酸が、
(a)L-アミノ酸;
(b)L-イソロイシン、L-バリン、L-チロシン、L-メチオニン、L-リシン、L-アルギニン、L-システイン、L-フェニルアラニン、L-グルタメート、L-グルタミン、L-ロイシンおよびL-トリプトファンからなる群;
(c)L-フェニルアラニン、L-ロイシン、L-グルタミン、L-グルタメートおよびL-トリプトファンからなる群;または
(d)L-トリプトファンから選択される、請求項1?5のいずれかに記載の粒子。
【請求項7】
前記ビタミンは、レチノール、レチナール、β-カロテン、チアミン、シアノコバラミン、ヒドロキシシアノコバラミン、メチルコバラミン、リボフラビン、ナイアシン、ナイアシンアミド、パントテン酸、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキサール、ビオチン、葉酸、フォリン酸、アスコルビン酸、コレカルシフェロール、エルゴカルシフェロール、トコフェロール、トコトリエノール、フィロキノンおよびメナキノンから選択される、請求項1?6のいずれかに記載の粒子。
【請求項8】
前記微量栄養素が、酢酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コリンまたはタウリンから選ばれる有機酸;ホウ素、コバルト、クロム、カルシウム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、セレン、亜鉛、ナトリウム、カリウム、リンから選ばれる微量金属または塩素の塩;およびコレステロールから選択される、請求項1?7のいずれかに記載の粒子。
【請求項9】
(a)前記第1の脂質要素中の前記中鎖または長鎖の脂肪酸化合物は、37℃より低い溶融範囲を有し;および/または
(b)前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素に対する前記第1の脂質要素の重量比は、0.1?10の範囲である、請求項1?8のいずれかに記載の粒子。
【請求項10】
前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素、前記第1の脂質要素、場合により前記アミノ酸、前記ビタミン、前記微量栄養素、前記第2の脂質要素、場合により1種類以上の薬理学的に不活性な賦形剤から本質的になる、請求項1?9のいずれかに記載の粒子。
【請求項11】
顆粒、ペレットまたはミニタブレットの形態である、請求項1?10のいずれかに記載の粒子。
【請求項12】
(a)スクリュー押出成型機を用い、前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を押出成型する;
(b)前記混合物を、場合により吐出破壊技術を用いて噴霧凝固する;
(c)前記混合物を溶融造粒する;
(d)前記混合物を圧縮してミニタブレットを生成する;
(e)前記混合物を液体媒体に溶融吐出する;または
(f)前記混合物を不活性コアにスプレーコーティングすること、
のいずれかにより前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を処理する工程を含む、請求項1?11に記載の粒子を調製するための方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法によって得られる摂取可能な粒子。
【請求項14】
請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を含む、経口投与のための固体組成物であって、前記組成物中の粒子は、場合により、0.1mm?3mmの範囲の質量平均ふるい径を有し、および/または前記組成物を重量比1で水に懸濁させて調製される懸濁物の動的安息角が30°未満である、固体組成物。
【請求項15】
請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を圧縮してタブレットを生成することによって得られる、経口投与のための固体組成物。
【請求項16】
請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の粒子と、場合により1種類以上の薬理学的に不活性な賦形剤とから本質的になる、請求項14?15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項14?16のいずれかに記載の組成物を含む単回投薬単位またはパッケージであって、前記組成物の量が3g?20gであり、および/または前記組成物中の前記第1の脂質要素の量が少なくとも2gである、単回投薬単位またはパッケージ。
【請求項18】
(a)肥満の予防および/または治療;
(b)肥満に関連する疾患または状態の予防および/または治療;
(c)食欲抑制;
(d)満腹状態の誘発;および/または
(e)体重減少
において使用するための請求項14?16のいずれかに記載の組成物および/または請求項17に記載の単回投薬単位またはパッケージであって、この使用が、場合により少なくとも1週間の期間にわたり、1日に少なくとも1回、前記組成物の経口投与を含むものである、組成物および/または単回投薬単位またはパッケージ。
【請求項19】
被験者の治療に対するアドヒアランスおよび/または治療の有効性に関する情報を収集、保存および/または表示するためのデバイスの使用をさらに含み、前記デバイスが、場合により、着用可能なデバイスである、請求項18に記載の使用のための組成物。」

以下、本件特許の請求項1?19に係る発明を、それぞれ請求項順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて「本件発明」ということもある。また、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲を、「本件明細書」という。

第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として、以下の甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ、「甲1」、「甲2」と略記する)を提出するとともに、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、以下の申立理由1?3により、請求項1?19に係る本件特許は取り消されるべき旨主張している。

<申立理由1(甲1に基づく新規性)>
本件発明1、9、10、13、14及び18は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。よって、請求項1、9、10、13、14及び18に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
<申立理由2(甲1を主引例とする進歩性)>
本件発明1?19は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、請求項1?19に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
<申立理由3(甲2を主引例とする進歩性)>
本件発明1?19は、甲2に記載された発明及び甲1に記載された事項に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、請求項1?19に係る本件特許は、特許法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。
<証拠>
甲1:特表2006-528883号公報
甲2:特表2004-508310号公報

第4 甲号証の記載
1.甲1の記載及び甲1に記載の発明
本件特許の優先日前に公表された甲1には、以下の記載がある(下線は合議体が付した。この決定中において以下同様である。)。

(1)甲1の記載
(1a)特許請求の範囲
「【請求項1】
重量平均平均粒径が1?250μmの範囲にあるカプセル化満腹剤を0.1?20重量%の量で含む食品であって、前記満腹剤が、架橋度が少なくとも20%である架橋型カプセル材料によってカプセル化されており、さらに食品が対象によって摂取されると、前記満腹剤がその対象の腸で前記カプセル材料から主に放出される食品。
・・・
【請求項3】
前記カプセル材料が1種または複数のタンパク質および/または炭水化物を含む、請求項1または2に記載の食品。
【請求項4】
前記タンパク質が、ゼラチン、乳タンパク質、アルブミンおよび植物性タンパク質から選択される、請求項3に記載の食品。
・・・
【請求項6】
前記炭水化物が、アラビアゴム、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、ペクチンおよびペクチン酸塩からなる群から選択される、請求項5に記載の食品。
【請求項7】
前記カプセル化満腹剤が、単純もしくは複合コアセルベーション法によってカプセル化されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の食品。
【請求項8】
前記満腹剤が脂質を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の食品。・・・」

(1b)発明の開示
「【0047】
驚くべきことに、我々は今回、満腹剤をカプセル化された形態で食品中に使用し、その満腹剤が主に腸、特に回腸で放出されるよう、カプセル材料がある程度架橋されているとき、特に満腹性、安定性、およびカプセル化満腹剤が従来の食品加工技術/調理技術に耐え得る能力に関して、素晴らしい成果が得られることを発見した。」
「【0061】
12?26個、好ましくは14?20個、たとえば16?18個の炭素原子を有する脂肪酸を含む満腹剤が特に有利であることが判明した。」
「【0078】
カプセル材料全体として、またはその一部として使用することのできるタンパク質としては、ゼラチン、(・・・)乳タンパク質、アルブミン、ならびにダイズ、エンドウ、トウモロコシ、コムギなどの豆類、豆果類、穀類に由来するタンパク質、および単離されたダイズタンパク質を含む植物性タンパク質が挙げられる。
【0079】
カプセル材料全体として、またはその一部として使用することのできる炭水化物としては、セルロースポリマーおよび(・・・)デンプンを含めた単糖もしくは多糖類、および糖アルコール類が挙げられる。・・・適切な材料としては、アラビアガム、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、ペクチン、およびペクチン酸塩が挙げられる。
【0080】
本発明によれば、ゼラチンと、アラビアゴム、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、もしくはペクチンのうちの少なくとも1種、特にゼラチンおよびアラビアガムとを含むカプセル材料が非常に適することが判明した。
【0081】
ゼラチンとアラビアガムをグルタルアルデヒドによって架橋したものは、本発明による使用に非常に適する。」
「【0084】
[カプセル化]
用語「カプセル化」とは、満腹剤の周囲にコーティングを形成する実施形態と、満腹剤を基材内部または基材全域に捕捉する実施形態の両方を指す。カプセル化満腹剤は、その周囲に実質的に一体化したカプセルコーティングまたはカプセル基材を携えていることが好ましい。」
「【0085】
カプセル化満腹剤粒子は、親油性の芯と疎水性の壁とからなる。カプセル化満腹剤粒子の製造には、適切などんな方法を使用してもよい。
【0086】
カプセル化満腹剤の特に好ましい調製方法は、特にそれが脂質の満腹剤と脂質でないカプセル材料とからなるとき、単純もしくは複合コアセルベーションによる方法となる。これらの技術は、当業界でよく知られており、適切に利用することのできる操作のタイプおよび操作条件を確立することは、十分に当業者の技量の範囲内である。
【0087】
一般に、コアセルベーションとは、親油性コロイドが、塩析出または相分離によって固体凝集体というよりも液体小滴になる現象のことである。重合体成分のコアセルベーションは、いくつかの異なる方法、たとえば、温度変化、pHの変化、低分子量物質の追加、または第二の高分子物質の追加によって実現することができる。単純コアセルベーションと複合コアセルベーションの2種類のコアセルベーションが存在する。一般に、単純コアセルベーションには、通常1種のみの重合体成分を含む系が適用され、複合コアセルベーションには、1種を超える重合体成分を含む系が適用される。
【0088】
本発明によれば、特に複合コアセルベーションが好ましい。複合コアセルベーションは、コロイド化学でよく知られている現象であり、カプセル化のためのコアセルベーション技術のあらましは、たとえば、P.L. Madan c.s.、Drug Development and Industrial Pharmacy、第4巻(1)、95?116ページ(1978年)およびP.B.Dearyの「Microencapsulation and drug processes」、1988年、第3章に載っている。複合コアセルベーションを(一定pHで)実現するには、(生体)高分子の一方のタイプが正電荷を帯電し、他方が負電荷を帯電する必要がある。複合コアセルベーションの際、pHは、使用する(生体)高分子それぞれの等電点(IEP)の間とする。これは、各IEPが十分に離れていることが好ましいということである。複合コアセルベーションに適するpHは、使用する(生体)高分子の濃度に応じて決まる。」

(1c)実施例
・実施例1
「【0128】
・・・
(実施例1)
[カプセル化満腹剤の調製]
以下の複合コアセルベートの調製方法を使用した。オレイン酸を満腹剤として使用し、ゼラチン/アラビアガムの混合物をカプセル材料として使用した。架橋剤は、グルタルジアルデヒドとした。
【0129】
20グラムのアラビアガムを1リットルの脱イオン水に溶かした2重量%の溶液を調製した。60℃で攪拌しながらアラビアガムを加えた。20グラムのゼラチンを1リットルの脱イオン水に溶かした2重量%の溶液を調製した。60℃で攪拌しながらゼラチンを加えた。アラビアガムとゼラチンの各溶液を、サーモスタットで調温した容器(2.5リットル容積、バッフル装備)の中で、リボン攪拌機を使用して60℃かつ150rpmで混ぜ合わせた。このゼラチン/アラビアゴム水性混合物に、100グラムのオレイン酸を加えた。オレイン酸/ゼラチン/アラビアゴム混合物をUltra-turraxミキサー(T25、IKA、ドイツ)によって13,500rpmで1分間攪拌した。蠕動ポンプ(流量100ml/時間)を使用して、pHが4.2?4.3に達するまで1.0Mの塩酸を攪拌しながら加えた。酸性化にかかる時間は、約15分であった。オレイン酸の小滴の周囲に複合コアセルベートが生成した。容器を16時間かけて60℃?10℃に段階的に冷却し、生成した複合コアセルベートをブラックバンド濾紙での濾過によって収集した。
【0130】
異なるレベルの架橋を適用するための種々のバッチを得るために、複合コアセルベートのバッチを、それぞれ80グラム(湿量)の異なる4部分に分けた。複合コアセルベートのバッチを分割しなかったとき、総収量約350グラムの複合コアセルベートが得られていた。
【0131】
架橋レベル100%を実現するためには、グルタルジアルデヒドの25重量%溶液40mlを加えた。
【0132】
架橋は、250mlの脱イオン水、80グラムの湿った複合コアセルベートおよびグルタルジアルデヒド溶液を含む500mlビーカーにおいて、攪拌機を用い室温で一晩かけて行った。攪拌速度は約35rpmとし、ビーカーは薄い箔で覆って、グルタルジアルデヒドが光の影響を受けて反応しないようにした。種々のバッチの架橋した複合コアセルベートを、ブラックバンド濾紙での濾過によって収集した。各バッチを1リットルの脱イオン水で慎重に洗浄して、未反応のグルタルジアルデヒドの溶液を除去した。水で洗浄した後、微生物の混入を防ぐため、複合コアセルベートを最後にソルビン酸カリウムの0.1重量%溶液100mlで洗浄した。複合コアセルベートは、密閉容器に入れ4℃の暗所で保管した。このような条件下で、複合コアセルベートは少なくとも6カ月間安定であった。
【0133】
20、30、および50%の架橋度を得るためには、グルタルジアルデヒドの25重量%溶液が、20gのゼラチンに対して8、12、および20mlの量だけ必要である。
【0134】
重量平均平均粒径が1?250μmの範囲にある粒子が、上記方法によって製造できる。」

・また、実施例2(【0135】?【0137】)には、実施例1のカプセル化粒子を5重量%配合した調製済み飲料が、また、実施例3(【0138】?【0140】)には、実施例1のカプセル化粒子を5重量%配合した代替食型バー製品が記載されている。
さらに、実施例4(【0141】?【0150】)には、実施例2の製品を使用した(【0143】)架橋コアセルベートのin vitro胃腸条件下での安定性試験の結果が記載され、架橋度が20%、40%、60%、および100%である複合コアセルベートを使用した放出プロフィールの結果(表3)を受けて、【0146】には、「すべての複合コアセルベートで、脂質の放出の大半が模倣小腸で始まっている。」と記載されている(なお、「複合コアセルベート」とは【0141】に記載のとおり、架橋型カプセル材料中にカプセル化された満腹剤を意味する。)。

(2)甲1に記載の発明
ア 上記(1a)の請求項1、3、6及び8、並びに、上記(1b)の【0047】の記載によれば、甲1の請求項8には、
「重量平均平均粒径が1?250μmの範囲にあるカプセル化満腹剤であって、前記満腹剤が、架橋度が少なくとも20%である架橋型カプセル材料によってカプセル化されており、前記カプセル材料が、1種または複数のタンパク質および/または炭水化物を含み、炭水化物はアラビアゴム、カラギーナン、寒天、アルギン酸塩、ペクチンおよびペクチン酸塩からなる群から選択され、前記満腹剤は脂質を含み、前記満腹剤がその対象の腸で前記カプセル材料から主に放出されるものである、食品に含ませるカプセル化満腹剤。」及び「該カプセル化満腹剤を0.1?20重量%の量で含む食品。」の発明が開示されているといえるし、上記カプセル化満腹剤は、所定の重量平均粒径を有していることから、粒子の形態であるといえる。
そして、上記請求項8に開示される発明の具体的な態様に関する甲1の(1b)、及び(1c)の記載、特に、(1c)の実施例1に、カプセル化満腹剤粒子であって、カプセル材料が、ゼラチンおよびアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋度20%で架橋した架橋型カプセル材料であり、満腹剤が、18個の炭素原子を有する脂肪酸のオレイン酸である脂質であり、合成薬を含んでいないものが記載されていることに照らせば、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。

「重量平均平均粒径が1?250μmの範囲にあるカプセル化満腹剤粒子であって、前記満腹剤が、架橋度が20%である架橋型カプセル材料によってカプセル化されており、前記カプセル材料が、タンパク質であるゼラチンおよび炭水化物であるアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋したものからなり、前記満腹剤は、18個の炭素原子を有する脂肪酸であるオレイン酸である脂質を含み、前記満腹剤がその対象の腸で前記カプセル材料から主に放出されるものである、合成薬を含まない、食品に含ませるカプセル化満腹剤粒子。」(以下「甲1粒子発明」という。)

「甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子を0.1?20重量%の量で含む食品。」(以下「甲1食品発明」という。)

イ また、上記に加えて(1a)の請求項7及び(1b)の【0086】の記載も参酌すれば、甲1には、
「甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子の調製方法であって、単純もしくは複合コアセルベーション法によってカプセル化することによる方法。」の発明が開示されているといえるところ、
上記発明の具体的な態様に関する甲1の(1b)及び(1c)の記載、特に、(1c)の実施例1の記載によれば、甲1には、以下の発明も記載されていると認められる。

「甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子の調製方法であって、複合コアセルベーション法によってカプセル化することによる方法。」(以下、「甲1方法発明」という。)

なお、申立人は、申立書において、申立人が本件発明の構成が記載されていると認識する甲1の記載箇所を散逸的に指摘するのみで、引用発明の認定はしていない。

2.甲2の記載及び甲2に記載の発明
本件特許の優先日前に公表された甲2には、以下の記載がある。
(1)甲2の記載
(2a)特許請求の範囲
「【請求項1】
液体の粘度を上昇させる少なくとも1種の物質、および胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のその他の化合物を含有する、長時間保持される満腹効果を生じさせるための経口用組成物。
【請求項2】
胃中の滞留時間を上昇させる化合物として、満腹期の延長のために寄与する脂肪酸および/または脂肪酸誘導体を含有する、請求項1記載の経口用組成物。
【請求項3】
分子中に炭素原子を少なくとも6個有する脂肪酸、その塩および/またはその誘導体を含有する、請求項1または2記載の経口用組成物。
【請求項4】
C_(10)?C_(20)、有利にC_(12)?C_(18)および特に有利にC_(13)?C_(16)の範囲の長さの炭素鎖を有する脂肪酸を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の経口用組成物。
・・・
【請求項6】
脂肪酸を粘度上昇物質1グラムあたり0.7?70mg、有利に2.5?50mg、特に有利に10?20mgの割合で含有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の経口用組成物。
【請求項7】
粘度上昇物質として天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物を含有する、請求項1から6までのいずれか1項記載の経口用組成物。
【請求項8】
粉末、顆粒、圧縮体、ペレット、錠剤、カプセル、溶液、分散液および/またはピュレーとして存在する、請求項1から7までのいずれか1項記載の経口用組成物。」

(2b)発明の詳細な説明
「【0002】
錠剤、顆粒、懸濁液または溶液の形で、胃腸管を介して長時間保持される満腹作用を示すゲル形成性の物質を有する調剤は例えば肥満症および肥満症に起因する疾患の治療のために使用される。
【0003】
相当する調剤は植物性の粘質物質および膨潤物質、例えばアルギネート、ペクチン、ふすま、デンプンゲルまたはガーゴムを含有する。服用液体と一緒になって、または胃液の存在で、この物質はゲル状の構造、いわゆるヒドロイド(hydroyd)または親水コロイドを形成し、これは特に満腹にさせることができる。
【0004】
このゲル様の組成物における問題点は、これが比較的迅速に胃出口(幽門)を通過して小腸に搬送され、短時間しか満腹でないという点である。従来の調剤の滞留時間は、それが胃の中で形成する高い粘度にもかかわらず、液体の滞留時間よりよりほんの僅かに長いにすぎない。このゲル様の組成物はその迅速な胃の通過のために、長時間保持される胃充満および長時間保持される満腹効果を達成するために使用することができないという欠点を有する。
【0005】
従って、長い胃滞留時間を有し、かつこの長時間保持される胃充満と結びついており、こうして長時間の満腹効果に作用する、ゲル様または半固体の組成物を提供することが望ましい。
【0006】
この課題は本発明により有利な方法で解決する。
【0007】
本発明の対象は液体の粘度を上昇させる少なくとも1種の物質、および胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のその他の化合物を含有する、長時間保持される満腹効果を生じさせるための経口用組成物である。
【0008】
本発明によりゲル形成またはピューレ形成のために、もしくは液体の粘度上昇のために使用した物質に更なる化合物として脂肪酸および/または脂肪酸誘導体を添加する。脂肪酸および/または脂肪酸誘導体は胃を空にするための時間をゆっくりとし、こうして胃滞留時間を所望のように延ばす。この際、本発明による組成物は全身的、薬理学的作用を有する薬剤を含有しないということを、ここで明らかにする。全身的、薬理学的作用を有する薬剤とは吸収され後に血液循環中に分配され、こうして作用器官に達する薬剤を意味する。
・・・
【0011】
粘度上昇物質とは、本発明において液体を吸収し、その際膨潤することのできる、多くの場合有機でかつ高分子の物質である。他の呼称は増粘剤、膨潤剤、ゲル形成剤または親水コロイドでもある。これらの物質は液体を吸収する際に高粘性の真性またはコロイド状溶液になり、次いでゲルまたは粘質物質を形成する。ゲルとは、本発明において高分子物質と液体との相互作用により生じる、形状安定で容易に変形可能な系であると理解される。ゲル形成剤と呼ばれる物質は三次元的に網状構造を形成し、その中に液体分子(分散媒)を取り込む。分散媒が液体である場合、リオゲルといい、これが水であればこのゲルをヒドロゲルという。
・・・
【0013】
本発明による長時間保持される満腹効果を達成するための組成物は、前記の脂肪酸、その塩および/または誘導体の他に粘度上昇物質として、天然、合成および/または半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物を含有する。このための例としては多くのものが公知である、例えば寒天、アルギン酸、アルギネート、ラミナリン、フコイジン、レンチナン、シトフィラン、アカシアゴム、カラゲナン、ガーゴム、ハリエンジュ・ビーン・ゴム、ガラクトマンナン、トラガント、ヒアルロン酸、アルテア粘質物質、マルメロ粘質物質、エダウチオオバコの種子の粘質物質、キサンタン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、デキストラン、デキストリン、セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、大豆、デンプンおよび/またはそれらの誘導体および/または混合物が公知である。」

(2c)実施例
「【0020】
次に本願発明を実施例につき詳細に説明するが、本願発明はこれに限定されるものではない。
【0021】
製造例1:
処方:
ガーゴム 100部
C_(14)-脂肪酸 3.3部
コロイドシリカ 0.2部
C_(14)-脂肪酸をコロイドシリカと一緒に微細に磨砕し、引き続き過篩する(メッシュ幅 0.3mm)。脂肪酸とコロイドシリカとの磨砕したものをガーゴムと混合する。引き続き、精製水で造粒する。この顆粒を45℃で乾燥する。
【0022】
製造例2:
処方:
ヒドロキシプロピルセルロース 100部
食用脂肪酸 3.3部
ヒドロキシプロピルセルロース5部を食用脂肪酸3.3部と一緒に磨砕する。この磨砕したものを残りのヒドロキシプロピルセルロースと均質に混合する。
【0023】
製造例3:
処方:
ふすま 100部
ミリスチン酸イソプロピル 5部
ミリスチン酸イソプロピル5部をふすま10部と一緒に磨砕する。この磨砕したものを残りのふすまと均質に混合する。
・・・
【0025】
使用例1:
製造例1中に記載した顆粒3?6gを総合ビタミン液150ml中に撹拌下に分散する。この顆粒の懸濁液を、総合ビタミン液中に添加した後、最初の1分以内に飲む。約2?3時間維持される満腹感が得られる。
【0026】
使用例2:
製造例3中に記載した混合物10gを果汁150g中に加温下に分散し、ピューレに加工する。ピューレ状の調剤を摂取した後、2?3時間維持する満腹感が達せられる。
【0027】
使用例3:
製造例2中に記載された混合物4?8gを食物(スープ、ヨーグルト、ピュレー)中に攪拌混入し、摂取する。摂取の後、食物の胃中での滞留時間は高まる。満腹感は著しく延長する。」

(2)甲2に記載の発明
上記記載(2a)の請求項1?4、6及び7の記載によれば、甲2には、「液体の粘度を上昇させる物質として天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物を含有し、および胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のC_(10)?C_(20)の範囲の長さの炭素鎖を有する脂肪酸を粘度上昇物質1グラムあたり0.7?70mg含有する、長時間保持される満腹効果を生じさせるための経口用組成物。」の発明が記載されているところ、上記(2b)の【0008】に、「本発明による組成物は全身的、薬理学的作用を有する薬剤を含有しないということを、ここで明らかにする。」と記載されるとおり、当該発明の組成物は合成薬を含まないものであるといえるから、甲2には、以下の発明が記載されていると認められる。

「液体の粘度を上昇させる物質として天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物を含有し、および胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のC_(10)?C_(20)の範囲の長さの炭素鎖を有する脂肪酸を粘度上昇物質1グラムあたり0.7?70mg含有する、合成薬を含まない、長時間保持される満腹効果を生じさせるための経口用組成物。」(以下、「甲2発明1」という。)

また、甲2発明1の経口用組成物は、少なくとも、何らかの方法で調製されるといえるから、甲2には、以下の発明も記載されていると認められる。

「甲2発明1の経口用組成物の調製方法。」(以下、「甲2発明2」という。)

なお、申立人は、申立書において、申立人が本件発明の構成が記載されていると認識する甲2の記載箇所を散逸的に指摘するのみで、引用発明の認定はしていない。

第5 当審の判断
1.申立理由1(甲1に基づく新規性)及び申立理由2(甲1を主引例とする進歩性)について

(1)本件発明1について(申立理由1、2)
ア 対比
本件発明1と甲1粒子発明とを対比する。
(ア)甲1粒子発明の粒子は、「食品に含ませる」ものであるから、本件発明1の「摂取可能な粒子」に相当する。
(イ)甲1粒子発明における「タンパク質であるゼラチンおよび炭水化物であるアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋した」「架橋度が20%である架橋型カプセル材料」がポリマーであることは当業者に明らかであるから、これは、本件発明1における「(a)」の「ポリマー要素」に相当する。
(ウ)本件明細書の【0058】に「中鎖脂肪酸は、6?12個の炭素原子を含むアシル残基を有する脂肪酸であると理解され、一方、長鎖脂肪酸は、13?21個の炭素原子を含むアシル鎖を有する脂肪酸を意味する」と記載されるとおり、本件発明1の「中鎖または長鎖の脂肪酸化合物」は「6?21個の炭素原子を含むアシル残基を有する脂肪酸」であるところ、甲1粒子発明の「オレイン酸」は、18個の炭素原子を含むアシル残基を有する脂肪酸であるから、これは、本件発明1の「(b)第1の脂質要素」であって「前記第1の脂質要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物」に相当する。
(エ)本件発明1の「(c)アミノ酸」、「(d)ビタミン」、「(e)微量栄養素」は、「場合により」含まれる任意成分であるから、これらを含まない点は相違点にはならない。

そうすると、本件発明1と甲1粒子発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点1>
摂取可能な粒子であって、
(a)ポリマー要素、
(b)第1の脂質要素、
場合により、
(c)アミノ酸、
(d)ビタミン、および/または
(e)微量栄養素を含み;
-前記第1の脂質要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含み、
合成薬を含まない、摂取可能な粒子。
<相違点1>
粒子について、本件発明1では、「ふるい径が0.05?3mmの範囲」の粒子であると特定されているのに対して、甲1粒子発明では、「重量平均平均粒径が1?250μmの範囲」の粒子であると特定されている点。
<相違点2>
粒子について、本件発明1では、ポリマー要素が「水膨潤性または水溶性」であると特定され、また、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」と特定されているのに対して、甲1粒子発明では、本件発明1のポリマー要素に相当する架橋型カプセル材料である、「タンパク質であるゼラチンおよび炭水化物であるアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋した」「架橋度が20%である架橋型カプセル材料」について、「水膨潤性または水溶性」であることは特定されておらず、また、「前記満腹剤が、架橋度が20%である架橋型カプセル材料によってカプセル化されており」と特定されている点。

イ 判断
(ア)事案に鑑み、相違点2から検討する。
まず、甲1粒子発明では、本件発明1のポリマー要素に相当する架橋型カプセル材料について、「水膨潤性または水溶性」であることが特定されていない点について検討する。
甲1粒子発明の架橋型カプセル材料は、「タンパク質であるゼラチンおよび炭水化物であるアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋した」「架橋度が20%」のものであるところ、「ゼラチン」及び「アラビアゴム」が「水膨潤性または水溶性」のポリマーであることは、本件特許の優先日前から知られていたし(甲2の【0011】及び【0013】の記載(上記(2b))参照)、これらを部分的に架橋したものは水膨潤性であるといえる(必要なら、宮下徳治著「コンパクト高分子化学-機能性高分子材料の解説を中心として-」三共出版株式会社、2010年10月1日初版第12刷発行、31?33頁の「1.13.1高分子の溶解」の項目参照)。
つまり、甲1粒子発明の、「タンパク質であるゼラチンおよび炭水化物であるアラビアゴムをグルタルジアルデヒドにより架橋した」「架橋度が20%である架橋型カプセル材料」は、「水膨潤性のポリマー」であるといえるから、甲1粒子発明において、架橋型カプセル材料が「水膨潤性または水溶性」であることが特定されていない点は、実質的には相違点ではない。

次に、粒子について、本件発明1では、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」と特定されているのに対して、甲1粒子発明では、「前記満腹剤が、架橋度が20%である架橋型カプセル材料によってカプセル化されており」と特定されている点、つまり、甲1粒子発明では、本件発明1の脂質要素に相当する満腹剤が、本件発明1のポリマー要素に相当する架橋度が20%である架橋型カプセル材料でカプセル化されていることが特定されている点の相違点について検討する。

本件発明1の「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との発明特定事項(以下、「所定の構成」ともいう。)によれば、本件発明1の粒子には、(i)水膨潤性または水溶性のポリマー要素が脂質要素の中に埋め込まれている態様、(ii)水膨潤性または水溶性のポリマー要素が脂質要素でコーティングされている態様、及び、(iii)(i)と(ii)を備えた態様の3つの態様が含まれる。

ここで、本件明細書の以下の記載によれば、本件発明1の「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ」とは、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の大部分が脂質要素の中に分散し、脂質要素は、連続相を形成し、水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、不連続であり、分散した形態であるといえる。そして、これには、典型的には、脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、得られる脂質-ポリマー組成物の多孔性が、水膨張性または水溶性のポリマー自体から作られる粒子と比較して大きく減少するように十分に混合されることにより、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の大部分が脂質要素の中に分散している場合が包含されるといえる。

「【0069】
本発明によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、脂質要素の中に埋め込まれ、および/または脂質要素でコーティングされている。本明細書で使用される場合、「埋め込まれ」という用語は、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、分子状態で、コロイド状態で、または固体懸濁物の形態であるかによらず、大部分が脂質要素の中に分散していることを意味する。脂質要素は、連続相を形成し、水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、不連続であり、分散した形態である。誤りを避けるために、このことは、水膨潤性または水溶性のポリマー要素を表す材料の一部(典型的には小さなフラクション)が完全に埋め込まれていないが、脂質要素の外側表面に位置しているものを除外しない。
【0070】
典型的には、「埋め込まれ」は、本発明の内容で、脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、得られる脂質-ポリマー組成物の多孔性が、水膨張性または水溶性のポリマー自体から作られる粒子(例えば、ローラー圧縮または凝集によって作られるような粒子)と比較して大きく減少するように、十分に混合されていることも意味する。粒子の多孔性は、材料の多孔性の種々の定量化可能な態様(例えば、穴の直径、全穴体積および表面積)を決定するために用いられる分析技術であるポロシメトリーによって決定されてもよい。この技術は、ポロシメトリーを使用することによって、濡れていない液体を高圧で材料に侵入させることを含む。」

また、コーティングに関しては以下の記載があり、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が脂肪酸化合物を含む脂質要素でコーティングされている態様では、水膨潤性または水溶性のポリマー要素を含む粒子が、第1の脂質要素を表す脂質材料の層に実質的に囲まれている(覆われている)必要がある。

「【0071】
「コーティングされた」という用語は、水膨潤性または水溶性のポリマー要素を含む粒子が、第1の脂質要素を表す脂質材料の層に実質的に囲まれていることを意味する。」

つまり、本件発明1においては、上記3つのいずれの態様の場合であっても、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の表面の少なくとも大部分が連続相を形成する第1の脂質要素に覆われた形態である必要があると認められる。

(イ)一方、甲1に「用語「カプセル化」とは、満腹剤の周囲にコーティングを形成する実施形態と、満腹剤を基材内部または基材全域に捕捉する実施形態の両方を指す」(上記(1b)の【0084】)、「カプセル化満腹剤粒子は、親油性の芯と疎水性の壁とからなる」(同【0085】と記載されるとおり、甲1粒子発明においては、本件発明1の第1の脂質要素に相当する満腹剤は、本件発明1の水膨潤性または水溶性のポリマー要素に相当するカプセル化基材(カプセル材料)の内部にあるか、カプセル化基材全体に分散された状態で存在しているものであるから、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の表面の大部分あるいは全面が連続相を形成する脂質要素に覆われているとはいえない。

(ウ)そうすると、所定の構成であることを含む相違点2が実質的な相違点であることは明らかである。
よって、相違点1を検討するまでもなく、相違点2で実質的に甲1粒子発明と異なる本件発明1について、甲1粒子発明(甲1に記載された発明)であるということはできない。

(エ)また、甲1の【0047】に「我々は今回、満腹剤をカプセル化された形態で食品中に使用し、その満腹剤が主に腸、特に回腸で放出されるよう、カプセル材料がある程度架橋されているとき、特に満腹性、安定性、およびカプセル化満腹剤が従来の食品加工技術/調理技術に耐え得る能力に関して、素晴らしい成果が得られることを発見した。」と記載されるとおり、甲1粒子発明は、脂質を含む満腹剤がカプセル化(及び架橋)されている点に特徴を有している。
そうすると、当業者が、甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子を、満腹剤がカプセル材料によりカプセル化された状態から変更して、カプセル化材料の大部分が連続相を形成する満腹剤により覆われた形状のものとすること、すなわち、甲1粒子発明を本件発明1の相違点2に係る所定の構成を備えたものとすることには阻害要因があるといえる。また、仮に、阻害要因があるとまではいえない場合であっても、以下に2.で述べるとおり、甲2には、相違点2に係る所定の構成は記載されておらず、甲2を参酌しても、当業者は、所定の構成を備えた、本件発明1に係る相違点2に係る構成を導き出すことはできない。
以上のとおりであるから、仮に甲2を参酌しても、当業者は、甲1粒子発明のカプセル化満腹剤を、本件発明1の相違点2に係る構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。

一方、本件明細書の記載(【0020】、【0021】、【0065】、【0096】、【0183】?【0212】(実施例22?24))によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含む脂質要素に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされた粒子である本件発明1の粒子により、胃腸管粘膜への接着性に優れ、消化後の粒子の完全性を長く保つことができ、脂質のバイオアベイラビリティを高めることができ、満腹状態をより効果的に誘発することから、合成薬を用いた薬理学的介入を行わない場合でも食欲抑制および肥満の予防・治療が可能になる、という優れた効果が発揮されるものである。

そうすると、相違点1について検討するまでもなく、相違点2で甲1粒子発明と相違する本件発明1について、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(オ)申立人の主張について
申立人は、申立理由1及び2に関し、申立書の25頁下から5行?26頁11行において、(i)「本件発明1におけるポリマー要素と脂質要素の存在形態には、甲1発明におけるポリマー要素と脂質要素の存在形態も含まれると考えられる。」、(ii)「本件発明1の実施例1の実施例を参照しても、調製された粒子においてポリマー要素と脂質要素がどのような形態で存在するのかについては、何ら示されておらず、不明である。」、(iii)「両発明においては、同様の成分を用いて同様の製造方法により粒子が調製されているため、得られる粒子は同様の形態になると考えられ、物として区別することができない。」、(iv)「設計事項程度の相違」と主張する。
しかしながら、(i)及び(ii)の主張に関しては、上記(ア)で説示したとおり、本件明細書の記載から、本件発明1の粒子においては、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の表面の少なくとも大部分が連続相を形成する第1の脂質要素に覆われた形態であることが理解できるから、この点特段不明な点はないし、実施例1で調製されている粒子は、溶融したカプリン酸(第1の脂質要素)の連続相に、カルボマーホモポリマーA NF型(ポリマー要素)が混合懸濁されて調製されるから、ポリマー要素が第1の脂質要素に覆われた形態となっていると認められる。また、上記(イ)で説示したとおり、本件発明1におけるポリマー要素と脂質要素の存在形態には、甲1粒子発明におけるポリマー要素と脂質要素の存在形態は含まれないと解される。(iv)の主張については、甲1粒子発明は脂質を含む満腹剤がカプセル化されている点に特徴を有する発明であり、これを本件発明1の形態に変更することには阻害要因があるといえるし、仮に阻害要因があるとまではいえない場合であっても、甲2を参酌しても、所定の構成を含む本件発明1の構成を導くことができないことは、上記(エ)で説示したとおりであって、当該変更は設計事項とはいえない。
さらに、(iii)の主張については、本件発明1の粒子は、本件明細書の【0102】に記載のとおり、「(a)スクリュー押出成型機を用い、前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素と、場合によりアミノ酸、ビタミンおよび/または微量栄養素を含む混合物を押出成型し;(b)前記混合物を、場合により吐出破壊技術を用いて噴霧凝固し;(c)前記混合物を溶融造粒し;(d)前記混合物を圧縮してミニタブレットを生成し;(e)前記混合物を液体媒体に溶融吐出し;(f)前記混合物を不活性コアにスプレーコーティングすることによる」方法により製造されるものであるところ、甲1粒子発明の粒子は、コアセルベーション法(甲1の請求項7及び実施例1)により製造されるものであり、その製造方法は異なる。

申立人は、申立書の26頁の下から8?3行において、甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る所定の構成を備えたものとする点に関し、「甲第1号証には、「満腹剤は、タンパク質(もしくはタンパク質単離物やペプチドなどのタンパク質由来材料)または炭水化物を含んでよい。しかし、特に満腹剤のカプセル化にコアセルベーション技術を使用するとき、脂質が好ましい満腹剤となる」(段落【0059】)との記載もある。よって、甲1発明において、満腹剤からなる活性コア中に、脂質要素に加えて「水膨潤性または水溶性のポリマー要素」を含ませることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である」とも主張する。
しかしながら、甲1には、カプセル化満腹剤粒子の調製をコアセルベーション技術により製造する場合についての具体的な開示しかなく、その場合、好ましい満腹剤は脂質なのであるから、これをあえてタンパク質等に変更することを当業者が動機付けられるとはいえないし、コアセルベーション技術により、水と混和しない脂質と水に親和性のタンパク質等とを併用してカプセル化満腹剤粒子を製造できるのかも不明である。
さらに、仮に、カプセル化満腹剤粒子をコアセルべーション以外の方法で調製する場合であっても、本件発明1は、上述のとおり、所定の構成を有することを必須としているところ、甲1には、満腹剤を脂質とタンパク質等の両方を含むものとする場合についての直接の記載すらなく、【0059】を含めた甲1の記載全体を参酌しても、満腹剤を、これに含まれるタンパク質等の少なくとも大部分が、連続相を形成する脂質に覆われた形態のものとし、本件発明1の相違点2に係る所定の構成を備えたものとすることを当業者に動機づける記載があるとはいえない。そうすると、本件発明1が、甲1粒子発明に基づいて当業者が適宜なし得る設計的事項であるということはできない。所定の構成についての記載のない甲2を参酌しても同様である。

よって、申立人の主張はいずれも採用できない。

(カ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1粒子発明(甲1に記載された発明)ではなく、また、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2(申立理由2)について
本件発明2は、本件発明1の粒子の形態を、「活性コアとコーティングを含み」、「活性コアは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素と、前記第1の脂質要素とを含み」、「前記コーティングは、第2の脂質要素および/または親水性要素を含み、前記コーティングは、前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素を実質的に含まなくてもよく、前記第2の脂質要素の組成は、前記第1の脂質要素の組成と同じであってもよく、または異なっていてもよい」ものに限定した発明である。
そして、本件発明2の「活性コア」は、本件明細書の【0072】に「活性コアは、埋め込まれているか、またはコーティングされた水膨潤性または水溶性のポリマー要素を含む第1の脂質要素を含み」と記載されているとおり、本件発明1で特定される「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特徴を備える。

そして、本件発明2と甲1粒子発明を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1及び2で相違しているところ、上記のとおり、相違点2は実質的な相違点であるし、(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1粒子発明を相違点2に係る本件発明2の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明2は、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明3(申立理由2)について
本件発明3は、本件発明1における粒子の形態を、「不活性コア」と「不活性コアを覆う第1のコーティング」と「第1のコーティングを覆う第2のコーティング」とを含むものに限定し、さらに、第1及び第2のコーティングの組成を限定した発明である。
そして、本件発明2に関し、本件明細書の【0079】に、「関連する実施形態において、本発明の粒子は、不活性コアと、不活性コアを覆う第1のコーティングと、第1のコーティングを覆う第2のコーティングとを含む。この場合、第1のコーティングは、水膨潤性または水溶性のポリマー要素と、第1の脂質要素とを含み、第2のコーティングは、第2の脂質要素と、場合により親水性要素を含み、さらに、第2のコーティングは、水膨潤性または水溶性のポリマー要素を実質的に含まない。親水性要素は、上述のように選択されてもよい。既に記載した実施形態のように、埋め込まれているか、またはコーティングされた水膨潤性または水溶性のポリマー要素を含む第1の脂質要素は、第2の脂質要素を含むコーティング層で囲まれている。その違いは、第1の脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素が粒子のコアを形成しないが、異なる組成を有する不活性コアの上の層を形成することである。」と記載されているとおり、本件発明3は、第1のコーティングが、本件発明1で特定される「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特徴を備える。

そして、本件発明3と甲1粒子発明を対比すると、両者は、いずれの形態の場合であっても、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1及び2で相違しているところ、上記のとおり、相違点2は実質的な相違点であるし、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1粒子発明を相違点2に係る本件発明3の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明3は、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明4?11(申立理由2)並びに本件発明9及び10(申立理由1)について
本件発明4は、本件発明1?3において「水膨潤性または水溶性のポリマー要素」を限定した発明であり、本件発明5は、本件発明1?4において「水膨潤性または水溶性のポリマー要素」を限定した発明であり、本件発明6は、本件発明1?5において「アミノ酸」を限定した発明であり、本件発明7は、本件発明1?6において「ビタミン」を限定した発明であり、本件発明8は、本件発明1?7において「微量栄養素」を限定した発明であり、本件発明9は、本件発明1?8において「第1の脂質要素中の前記中鎖または長鎖の脂肪酸化合物」及び「水膨潤性または水溶性のポリマー要素に対する前記第1の脂質要素の重量比」を限定した発明であり、本件発明10は、本件発明1?9において粒子の組成を限定した発明であり、本件発明11は、本件発明1?10において粒子の形態を限定した発明である。
そして、本件発明4?11と甲1粒子発明を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1及び2で相違しているところ、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は、実質的な相違点である。
そうすると、少なくとも相違点2で甲1粒子発明と実質的に相違する本件発明9及び10について、甲1に記載された発明であるということはできない。

また、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1粒子発明を相違点2に係る本件発明4?11の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で説示したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明4?11は、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明12(申立理由2)について
本件発明12は、本件発明1?11のカプセル化満腹剤粒子を調製するための方法についての発明であり、調製される粒子が本件発明1で特定される粒子である点を必須の構成要件としている。
一方、甲1方法発明は、甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子の調製方法についての発明である。
そして、上記(1)アにおける本件発明1と甲1粒子発明との対比を踏まえて、本件発明12と甲1方法発明を対比すると、両者は、以下の点で一致し、上記(1)アで記載した相違点1,2及び以下の相違点3で相違している。
<一致点2>
一致点1の粒子を調製するための方法。
<相違点3>
一致点1の粒子を調製するための方法について、本件発明12では、
「(a)スクリュー押出成型機を用い、前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を押出成型する;
(b)前記混合物を、場合により吐出破壊技術を用いて噴霧凝固する;
(c)前記混合物を溶融造粒する;
(d)前記混合物を圧縮してミニタブレットを生成する;
(e)前記混合物を液体媒体に溶融吐出する;または
(f)前記混合物を不活性コアにスプレーコーティングすること、
のいずれかにより前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を処理する工程を含む」
と特定されているのに対して、甲1方法発明では「複合コアセルベーション法によってカプセル化することによる」と特定されている点。

事案に鑑み相違点2から検討すると、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は実質的な相違点であるところ、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1方法発明の粒子を相違点2に係る本件発明12の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明12は、甲1方法発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件発明13(申立理由1及び2)について
本件発明13は、「請求項12に記載の方法によって得られる摂取可能な粒子」の発明であり、請求項12に記載の方法は、「請求項1?11に記載の粒子を調製するための方法」であるから、結局、本件発明13は、本件発明1?11の粒子(「甲1粒子発明」の粒子等)を、「請求項12に特定される(a)?(f)のいずれかにより第1の脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を処理する工程を含む」調製方法で得られた粒子に限定した発明に相当する。
そして、本件発明13と甲1粒子発明は、上記(5)に記載したとおり、少なくとも(1)アで記載した相違点1及び2で相違しているところ、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は、実質的な相違点である。
そうすると、少なくとも相違点2で実質的に甲1粒子発明と相違する本件発明13について、甲1に記載された発明であるということはできない。

また、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1粒子発明を相違点2に係る本件発明13の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明13は、甲1粒子発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとであるとはいえない。

(7)本件発明14(申立理由1及び2)について
本件発明14は、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を含む、経口投与のための固体組成物」についての発明であり、本件発明1で特定される粒子を含む点を必須の構成要件としている。
一方、甲1食品発明は、「甲1粒子発明のカプセル化満腹剤粒子を0.1?20重量%の量で含む食品」についての発明である。
そして、上記(1)アにおける本件発明1と甲1粒子発明との対比を踏まえて、本件発明14と甲1食品発明を対比すると、食品は組成物であって、甲1食品発明の「食品」は、本件発明14の「経口投与のための組成物」に相当するといえるから、両者は、以下の点で一致し、上記(1)アで記載した相違点1、2及び以下の相違点4で相違している。
<一致点3>
一致点1の粒子を含む経口投与のための組成物。
<相違点4>
一致点1の粒子を含む経口投与のための組成物について、本件発明14では、「固体」組成物であること、及び、「前記組成物中の粒子は、場合により、0.1mm?3mmの範囲の質量平均ふるい径を有し、および/または前記組成物を重量比1で水に懸濁させて調製される懸濁物の動的安息角が30°未満である」ことが特定されているのに対し、甲1食品発明ではかかる特定はされていない点。

そして、事案に鑑み相違点2から検討すると、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は、実質的な相違点である。
そうすると、少なくとも相違点2で実質的に甲1食品発明と相違する本件発明14について、甲1に記載された発明であるということはできない。

また、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明14は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(8)本件発明15(申立理由2)について
本件発明15は、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を圧縮してタブレットを生成することによって得られる、経口投与のための固体組成物」についての発明であって、本件発明15は、圧縮して生成されるタブレットである固体組成物が本件発明1?11または13で特定される粒子を含む点を必須の構成要件としている。そして、圧縮によって粒子間の空隙が小さくなり、組成物の密度が高くなるとしても、各々の粒子を構成する各要素の位置関係は変化しないものと認められる。
そして、上記(7)における本件発明14と甲1食品発明との対比、及び、上記(1)アにおける本件発明1と甲1粒子発明との対比を踏まえて、本件発明15と甲1食品発明を対比すると、両者は、上記(7)で記載した一致点3で一致し、上記(1)アで記載した相違点1,2及び以下の相違点5で相違している。
<一致点3>
一致点1の粒子を含む経口投与のための組成物。
<相違点5>
一致点1の粒子を含む経口投与のための組成物について、本件発明15では、「複数の粒子を圧縮してタブレットを生成することによって得られる」「固体」組成物と特定されているのに対し、甲1食品発明ではかかる特定はされていない点。

事案に鑑み相違点2から検討すると、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は、実質的な相違点であるところ、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明15の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明15は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(9)本件発明16(申立理由2)について
本件発明16は、本件発明14?15において、組成物が、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の粒子と、場合により1種類以上の薬理学的に不活性な賦形剤とから本質的になる」ことを限定した発明に相当する。
そして、本件発明16と甲1食品発明を対比すると、両者は、上記(7)あるいは(8)で記載したとおり、少なくとも相違点2で相違している。
そして、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明16の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明16は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(10)本件発明17(申立理由2)について
本件発明17は、「請求項14?16のいずれかに記載の組成物を含む単回投薬単位またはパッケージ」についての発明であって、単回投薬単位またはパッケージに含まれる組成物が本件発明14?16の組成物を含むものであるところ、これらの組成物には、上記(7)?(9)に記載のとおり、上記本件発明1?11または13で特定される粒子が含まれることから、結局、本件発明17は、本件発明1の粒子を含む点を必須の構成要件としている。
そして、上記(7)?(9)における本件発明14?16と甲1食品発明との対比を踏まえて本件発明17と甲1食品発明を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点2で相違しているところ、上記(1)イ(エ)で説示したとおり、当業者は甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明17の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明17は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(11)本件発明18(申立理由1及び2)について
本件発明18は、
「(a)肥満の予防および/または治療;
(b)肥満に関連する疾患または状態の予防および/または治療;
(c)食欲抑制;
(d)満腹状態の誘発;および/または
(e)体重減少
において使用するための請求項14?16のいずれかに記載の組成物および/または請求項17に記載の単回投薬単位またはパッケージ」についての発明であって、本件発明14?17において、組成物、単回投薬単位あるいはパッケージの用途を特定する発明であるところ、上記(7)?(10)に記載のとおり、本件発明14?17は、本件発明1?11または13で特定される粒子を含む発明であるから、これを限定した本件発明18も本件発明1?11または13で特定される粒子を含む発明である。
そして、上記(7)?(10)における本件発明14?17と甲1食品発明との対比を踏まえて本件発明18と甲1食品発明を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点2で相違しているところ、上記(1)イの(ア)?(ウ)で説示したとおり、相違点2は、実質的な相違点である。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、少なくとも相違点2で甲1粒子発明と実質的に相違する本件発明18について、甲1に記載された発明であるということはできない。

また、上記(1)イ(エ)及び上記(7)?(10)で説示したとおり、当業者は甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明18の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明18は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件発明19(申立理由2)について
本件発明19は、本件明細書の【0147】の記載も参酌するに、本件発明18において、発明の対象を組成物に限定し、当該組成物が、本件発明18に特定される(a)?(e)の用途に、本件発明18で特定される投与頻度で使用される場合の発明において、さらに、「被験者の治療に対するアドヒアランスおよび/または治療の有効性に関する情報を収集、保存および/または表示するためのデバイス」が併用されることを特定した発明に相当するものである。
そして、上記(11)で説示したとおり、本件発明18は本件発明1?11または13の粒子を含む点を必須の構成要件としており、本件発明18を限定した発明である本件発明19においても同様である。
そうすると、本件発明19と甲1食品発明とは、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点2で相違しているところ、上記(1)イ(エ)及び上記(12)で説示したとおり、当業者は、甲1食品発明に含まれる甲1粒子発明の粒子を相違点2に係る本件発明19の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2で相違する本件発明19は、甲1食品発明及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(13)以上のとおりであるから、申立理由1及び申立理由2には理由がない。

2.申立理由3(甲2を主引例とする進歩性)について

(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1とを対比する。
(ア)本件発明1の粒子は、少なくとも「(a)水膨潤性または水溶性のポリマー要素」及び「(b)第1の脂質要素」を含むことから、「組成物」であるといえるし、「経口用組成物」は「摂取」されるものであるから、本件発明1の「摂取可能な粒子」と甲2発明1の経口用組成物とは、「摂取可能な組成物」である限りにおいて一致する。
(イ)甲2発明1における「液体の粘度を上昇させる物質」としての「天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物」は、ポリマーであるし、甲2の【0011】(上記(2b))の「粘度上昇物質とは、本発明において液体を吸収し、その際膨潤することのできる、多くの場合有機でかつ高分子の物質である。他の呼称は増粘剤、膨潤剤、ゲル形成剤または親水コロイドでもある。」との記載から、水膨潤性であるといえるから、甲2発明1の「液体の粘度を上昇させる物質として天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物」は、本件発明1における「(a)水膨潤性または水溶性のポリマー要素」に相当するといえる。
(ウ)上記1.(1)ア(ウ)で記載したとおり、本件明細書の【0058】によれば、本件発明1の「中鎖または長鎖の脂肪酸化合物」は「6?21個の炭素原子を含むアシル残基を有する脂肪酸」であるところ、甲2発明1の「胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のC_(10)?C_(20)の範囲の長さの炭素鎖を有する脂肪酸」は、10?20個の炭素原子を含むアシル残基を有する脂肪酸であるといえるから、これは、本件発明1の「(b)第1の脂質要素」であって「前記第1の脂質要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含」むものに相当する。
(エ)本件発明1の「(c)アミノ酸」、「(d)ビタミン」、「(e)微量栄養素」は「場合により」含まれる任意成分であるから、これらを含まない点は相違点にはならない。

そうすると、本件発明1と甲2発明1とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
<一致点1’>
摂取可能な組成物であって、
(a)水膨潤性または水溶性のポリマー要素、
(b)第1の脂質要素、
場合により、
(c)アミノ酸、
(d)ビタミン、および/または
(e)微量栄養素を含み;
-前記第1の脂質要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含み、
合成薬を含まない、摂取可能な組成物。

<相違点1’>
摂取可能な組成物について、本件発明1では、「ふるい径が0.05?3mmの範囲の粒子」であると特定されているのに対して、甲2発明1においては、かかる特定はされていない点。
<相違点2’>
組成物に含まれる(a)及び(b)の要素について、本件発明1では、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」と特定されているのに対して、甲2発明1では、かかる特定はなされておらず、これらの要素の「混合物を含有」することが特定されている点。

イ 判断
事案に鑑み、相違点2’から検討する。
(ア)上記1.(1)イ(ア)で記載したとおり、本件発明1の相違点2’に係る発明特定事項(「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」)は、本件明細書の記載によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の大部分が脂質要素の中に分散し、脂質要素は、連続相を形成し、水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、不連続であり、分散した形態である。そして、これには、典型的には、脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、得られる脂質-ポリマー組成物の多孔性が、水膨張性または水溶性のポリマー自体から作られる粒子と比較して大きく減少するように十分に混合されることにより、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の大部分が脂質要素の中に分散している場合が包含されるといえ、本件発明1においては、上記1.(1)イ(ア)で記載した3つのいずれの態様の場合であっても、水膨潤性または水溶性のポリマー要素の表面の少なくとも大部分が連続相を形成する第1の脂質要素に覆われている必要があると認められる。
(イ)一方、甲2には、組成物に「液体の粘度を上昇させる物質として天然、合成、半合成のポリサッカリドおよび/またはポリ酸および/またはこれらの混合物」(以下、「粘度上昇物質」という。)及び「胃の中で満腹効果を延長するためにこの粘度上昇物質の滞留時間を上昇する少なくとも1種のC_(10)?C_(20)の範囲の長さの炭素鎖を有する脂肪酸」(以下、「脂肪酸」という。)を含有させる手法についての一般的な記載はない。また、甲2には、具体的な実施例として、製造例1に、粘度上昇物質であるガーゴム100部に、C_(14)-脂肪酸3.3部とコロイドシリカ0.2部からの微細磨砕物を過篩(メッシュ幅 0.3mm)した磨砕物を混合し、精製水で造粒・乾燥して顆粒とすることが、製造例2に、製造例2に粘度上昇物質であるヒドロキシプロピルセルロース5部を食用脂肪酸3.3部と一緒に磨砕後、ヒドロキシプロピルセルロース95部と均質に混合して混合物とすることが、製造例3に、粘度上昇物質であるふすま10部をミリスチン酸イソプロピル3.3部と一緒に磨砕後、ふすま90部と均質に混合して混合物とすることが、それぞれ記載されている(上記第4の2.(1)(2c)参照)。
(ウ)ここで、甲2発明1の組成物を、本件発明1の相違点2’に係る発明特定事項を備えたものとすることが実施例の記載を含めた甲2の記載全体から示唆されるといえるかについて検討する。
甲2には、(甲2発明1の粘度上昇物質に相当する)植物性の粘質物質および膨潤物質は、服用液体と一緒になって、または胃液の存在下で、ゲル状の構造を形成し、満腹にさせることが従来から知られていたが、ゲル状の構造は胃の通過が迅速なために、長時間満腹効果を保持することができないという問題があった(【0003】?【0004】)ところ、甲2発明1は、胃中での満腹効果を延長するために、粘度上昇物質の滞留時間を上昇する更なる化合物として、脂肪酸を含有させてゲル状構造の胃における滞留時間を上昇させることでこの問題を解決した発明である旨記載されている(上記(2b)の【0006】?【0008】)。
つまり、甲2発明1は、胃に存在させるゲル状構造による満腹効果を前提としており、脂肪酸は、胃ゲル状構造が胃に長く滞留するために使用される成分であるために、甲2には、脂肪酸の含有量は、粘度上昇物質1グラムあたり0.7?70mgと粘度上昇物質に比べてかなり少量となっている。また、製造例1?3では、少量の(粘度上昇物質と)脂肪酸の微細磨砕物を大量のガーゴム等の粘度上昇物質と混合しており、仮に、製造例1?3に記載の顆粒あるいは混合物の製造工程において、微細磨砕工程によりガーゴム等の粘度上昇物質と脂肪酸が十分に混合された結果、磨砕前に比べて磨砕物では多孔性がガーゴム等の粘度上昇物質単独の場合より減少している場合であっても、製造例1?3で得られる組成物は、大量のガーゴム等の粘度上昇物質の中に脂肪酸(あるいはそのエステル)が分散している状態となっており、本件発明1の粒子のように、水膨潤性または水溶性のポリマー要素に相当する粘度上昇物質の大部分が連続層を形成する脂肪酸中に分散された、粘度上昇物質の表面の大部分が脂肪酸(あるいはそのエステル)に覆われた状態にはなり得ないものと認められる。
このことは、甲2発明1の組成物による満腹効果が、組成物中の大部分を占める粘度上昇物質によるゲル状構造の形成に基づくものであって、胃内に、満腹効果を与える粘度上昇物質によるゲル構造が確実に存在している必要があることとも符合する。
なお、仮に、脂肪酸が溶融状態で混合される等、特段の工夫がされた場合には、脂肪酸の含有量が少量の場合であっても、十分に混合すれば、脂肪酸により粘度上昇物質の表面の大部分が覆われる可能性はあるが、製造例1で使用されているC_(14)脂肪酸は、融点が54.4℃であり、製造例1の製法で脂肪酸が液状となっているとも解されないし、仮に、脂肪酸により粘度上昇物質の表面の大部分が覆われた場合には、疎水性の脂肪酸の存在によりゲル構造の形成が阻害される可能性も考えられるから、そのような構造とすることは想定されないともいえる。

さらに、上記1.で検討したとおり、甲1からも本件発明1の相違点2’にかかる構成は示唆されないし、甲2発明1の組成物をそのような構成とすることを当業者に動機付けるような本件特許の優先日前の技術常識があったとも認められない。

そうすると、当業者は、甲2発明1の組成物を、本件発明1の相違点2’に係る構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。

(エ)一方、上記1.(1)イ(エ)に記載したとおり、本件明細書の記載によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含む脂質要素に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされた粒子である本件発明1の粒子により、胃腸管粘膜への接着性に優れ、消化後の粒子の完全性を長く保つことができ、脂質のバイオアベイラビリティを高めることができ、満腹状態をより効果的に誘発することから、合成薬を用いた薬理学的介入を行わない場合でも食欲抑制および肥満の予防・治療が可能になる、という優れた効果が発揮される。

そうすると、相違点1’について検討するまでもなく、相違点2’で甲2発明1と相違する本件発明1について、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(オ)申立人の主張について
申立人は、本件発明1についての申立理由3に関し、申立書の38頁6?11行において、「甲2発明は、ポリマー要素と脂質要素の存在形態について、何ら特定するものではなく、当該存在形態が甲2発明の本質的な要素でないことは明らかである。例えば、同様の課題を有する甲第1号証を参考にして、脂質要素の比率を高めることによって、甲2発明において、ポリマー要素と脂質要素の存在形態を本件発明1のようにすること(上記(ア-1)参照)は、当業者が適宜なし得ることである。」と主張する。
しかしながら、上記(ウ)で説示したとおり、甲2発明1は、胃に存在させる粘度上昇物質に起因するゲル状構造による満腹効果を前提とし、脂肪酸は胃ゲル状構造が胃に長く滞留できるようにするためのものであって、甲2には、甲2発明1の組成物を、脂肪酸により粘度上昇物質の表面の大部分が覆われた形態とすることは全く示唆されていないし、仮に、そのような形態にした場合には、疎水性の脂肪酸の存在によりゲル構造の形成が阻害される可能性も考えられる。そうすると、当業者は、脂肪酸の含有量を、粘度上昇物質1グラムあたり0.7?70mgから、粘度上昇物質の表面の大部分を覆う程の高含有量に変更することを動機づけられることはないから、かかる変更を、当業者が適宜なし得ることであるということはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。

(カ)小括
以上のとおり、本件発明1は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件発明2について
上記1.(2)に記載のとおり、本件発明2は、本件発明1の粒子の形態を、「活性コアとコーティングを含み」等の構成を備えたものに限定した発明であるところ、本件明細書の【0072】の記載から明らかなとおり、本件発明2は、活性コアが本件発明1で特定される「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特徴を備えるものである。
そして、本件発明2と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1’及び2’で相違しているところ、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、当業者は甲2発明1を相違点2’に係る本件発明2の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(ウ)、(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2’で相違する本件発明2は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明3について
上記1.(3)に記載のとおり、本件発明3は、本件発明1における粒子の形態を、「不活性コア」と「不活性コアを覆う第1のコーティング」と「第1のコーティングを覆う第2のコーティング」とを含むものにする等の限定をした発明であり、本件明細書の【0079】によれば、本件発明3においては、粒子のコーティング部分が、本件発明1で特定される「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特徴を備えるものである。

そして、本件発明3と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも上記(1)アで記載した相違点1’及び2’で相違しているところ、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、当業者は甲2発明1を相違点2’に係る本件発明3の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(ウ)、(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2’で相違する本件発明2は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明4?11について
上記1.(4)で記載したとおり、本件発明4は本件発明1?3を限定した発明であり、本件発明5は、本件発明1?4を限定した発明であり、本件発明6は本件発明1?5を限定した発明であり、本件発明7は本件発明1?6を限定した発明であり、本件発明8は本件発明1?7を限定した発明であり、本件発明9は本件発明1?8を限定した発明であり、本件発明10は本件発明1?9を限定した発明であり、本件発明11は本件発明1?10を限定した発明である。
そして、本件発明4?11と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1’及び2’で相違しているところ、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、当業者は甲2発明1を相違点2’に係る本件発明の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(ウ)、(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2’で相違する本件発明4?11は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)本件発明12について
本件発明12は、本件発明1?11のカプセル化満腹剤粒子を調製するための方法についての発明であり、調製される粒子が本件発明1で特定される粒子である点を必須の構成要件としている。
一方、甲2発明2は、甲2発明1の経口用組成物の調製方法の発明である。
そして、上記(1)アにおける本件発明1と甲2発明1との対比を踏まえて、本件発明12と甲2発明2を対比すると、両者は、以下の点で一致しており、上記(1)アで記載した相違点1’、2’及び以下の相違点3’で相違している。
<一致点2’>
一致点1の組成物を調製するための方法。
<相違点3’>
一致点1の組成物を調製するための方法について、本件発明12では、
「(a)スクリュー押出成型機を用い、前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を押出成型する;
(b)前記混合物を、場合により吐出破壊技術を用いて噴霧凝固する;
(c)前記混合物を溶融造粒する;
(d)前記混合物を圧縮してミニタブレットを生成する;
(e)前記混合物を液体媒体に溶融吐出する;または
(f)前記混合物を不活性コアにスプレーコーティングすること、
のいずれかにより前記第1の脂質要素と前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を処理する工程を含む」
と特定されているのに対して、甲2発明2では調製方法における工程が特定されていない点。

事案に鑑み相違点2から検討すると、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、当業者は甲2発明2において調製される甲2発明1の組成物を、相違点2’に係る本件発明12の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(ウ)、(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2‘で相違する本件発明12は、甲2発明2及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(6)本件発明13について
本件発明13は、「請求項12に記載の方法によって得られる摂取可能な粒子」の発明であり、請求項12に記載の方法は、「請求項1?11に記載の粒子を調製するための方法」であるから、結局、本件発明13は、本件発明1?11の粒子を、「請求項12に特定される(a)?(f)のいずれかにより第1の脂質要素と水膨潤性または水溶性のポリマー要素とを含む混合物を処理する工程を含む」調製方法で得られた粒子に限定した発明に相当する。
そして、本件発明13と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも、上記(1)アで記載した相違点1’及び2’で相違しているところ、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、当業者は請求項12に記載の方法によって得られる甲2発明1の組成物を、相違点2’に係る本件発明の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(1)イ(ウ)、(エ)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点2’で相違する本件発明13は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(7)本件発明14について
本件発明14は、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を含む、経口投与のための固体組成物」についての発明である。
そして、上記(1)アにおける本件発明1と甲2発明1との対比を踏まえて、本件発明14と甲2発明1を対比すると、両者は、上記(1)アで記載した一致点1’で一致し、以下の相違点4’及び5’で相違している。
<相違点4’>
一致点1’の摂取可能な組成物について、本件発明14では、摂取可能な組成物が「ふるい径が0.05?3mmの範囲の粒子」を含む「固体組成物」であり、該粒子に含まれる(a)及び(b)の要素について、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」と特定されているのに対して、甲2発明1では、かかる特定はされていない点。
<相違点5’>
一致点1’の組成物について、本件発明14では、「前記組成物中の粒子は、場合により、0.1mm?3mmの範囲の質量平均ふるい径を有し、および/または前記組成物を重量比1で水に懸濁させて調製される懸濁物の動的安息角が30°未満である」と特定されているのに対し、甲2発明1ではかかる特定はされていない点。

事案に鑑み相違点4’から検討する。
甲2には、組成物の形態として請求項8に顆粒が記載されており、また、製造例1において顆粒を製造していることから、甲1発明1の組成物を顆粒の形態、つまり、粒子を含む固体組成物の形態とすることは当業者が容易になし得ることであるとはいえる。しかしながら、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、甲2発明1は、胃に存在させるゲル状構造による満腹効果を前提としており、当業者は、甲1の記載を参酌しても、甲2発明1の組成物を顆粒のような粒子を含む組成物形態とする場合に、(本件発明14の水膨潤性または水溶性のポリマー要素に相当する)粘度上昇物質の大部分が脂肪酸中に分散されて、粘度上昇物質の表面の大部分が脂肪酸に覆われた状態とすること、つまり、本件発明14の相違点4’に係る構成である、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特定を満足するものとすること)を動機づけられるとはいえない。
一方、上記1.(1)イ(エ)で指摘した本件明細書の段落の記載によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含む脂質要素に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされた粒子である本件発明1の粒子を含む本件発明14の組成物により、胃腸管粘膜への接着性に優れ、消化後の粒子の完全性を長く保つことができ、脂質のバイオアベイラビリティを高めることができ、満腹状態をより効果的に誘発することから合成薬を用いた薬理学的介入を行わない場合でも食欲抑制および肥満の予防・治療が可能になる、という優れた効果が発揮される。

そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、相違点4’で甲2発明1と相違する本件発明14について、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(8)本件発明15について
本件発明15は、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の複数の粒子を圧縮してタブレットを生成することによって得られる、経口投与のための固体組成物」についての発明であって、本件発明15は、圧縮して生成されるタブレットである固体組成物が本件発明1?11または13で特定される粒子を含む点を必須の構成要件としている。そして、圧縮によって粒子間の空隙が小さくなり、組成物の密度が高くなるとしても、各々の粒子を構成する各要素の位置関係は変化しないものと認められる。
そして、上記(7)における本件発明14と甲2発明1との対比、及び、上記(1)アにおける本件発明1と甲2発明1との対比を踏まえて、本件発明15と甲2発明1を対比すると、両者は、上記(1)アで記載した一致点1’で一致し、以下の相違点6’で相違している。
<相違点6’>
一致点1’の摂取可能な組成物について、本件発明15では、摂取可能な組成物が、「複数の粒子を圧縮してタブレットを生成することによって得られる」「固体」組成物であり、該粒子は、「ふるい径が0.05?3mmの範囲の粒子」であって、該粒子に含まれる(a)及び(b)の要素について、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特定を満足することが特定されているのに対し、甲2発明1ではかかる特定はされていない点。

そして、相違点6’について検討すると、甲2には、組成物の形態として請求項8に圧縮されて製造されるタブレットに相当するといえる錠剤が記載されているし、錠剤の製造において、薬効成分を含む粒子を含む材料から錠剤を形成することは一般的に行われていることであるから、甲2発明1の組成物を粒子とし、これを含むタブレットの形態とすることは当業者が容易になし得ることであるとはいえる。しかしながら、上記(1)イ(ウ)で説示したとおり、甲2発明1は、胃に存在させるゲル状構造による満腹効果を前提としており、当業者は、甲1の記載を参酌しても、甲2発明1の組成物を粒子の形態とし、これをタブレットに構成する場合であっても、タブレットに含まれる粒子に含まれる成分を、粘度上昇物質の大部分が脂肪酸中に分散されて、粘度上昇物質の表面の大部分が脂肪酸に覆われた状態とすること、つまり、本件発明15の相違点6’に係る構成である、「前記水膨潤性または水溶性のポリマー要素は、前記脂質要素の中に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされており」との特定を満足するものとすることを動機づけられるとはいえない。
一方、上記1.(1)イ(エ)で指摘した本件明細書の段落の記載によれば、水膨潤性または水溶性のポリマー要素が、中鎖または長鎖の脂肪酸化合物を含む脂質要素に埋め込まれ、および/または前記脂質要素でコーティングされた粒子である本件発明1の粒子を含む本件発明15のタブレットとされた組成物により、胃腸管粘膜への接着性に優れ、消化後の粒子の完全性を長く保つことができ、脂質のバイオアベイラビリティを高めることができ、満腹状態をより効果的に誘発することから合成薬を用いた薬理学的介入を行わない場合でも食欲抑制および肥満の予防・治療が可能になる、という優れた効果が発揮される。

そうすると、本件発明15について、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(9)本件発明16について
本件発明16は、本件発明14?15において、組成物が、「請求項1?11または請求項13のいずれかに記載の粒子と、場合により1種類以上の薬理学的に不活性な賦形剤とから本質的になる」ことを限定した発明に相当する。
そして、本件発明16と甲2発明1を対比すると、両者は、上記(7)あるいは(8)で記載した相違点で、少なくとも相違している。
そして、上記(7)及び(8)で説示したとおり、当業者は甲2発明1の組成物を相違点4’あるいは6’に係る本件発明16の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(7)及び(8)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点4’あるいは6’で甲2発明1と相違する本件発明16は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(10)本件発明17について
本件発明17は、「請求項14?16のいずれかに記載の粒子を含む単回投薬単位またはパッケージ」についての発明であって、単回投薬単位またはパッケージに含まれる組成物を構成する粒子が本件発明14?16の組成物を含むものであるから、上記(7)?(9)における本件発明14?16と甲2発明1との対比を踏まえて本件発明17と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも、上記(7)あるいは(8)で記載した相違点で、少なくとも相違している。
そして、上記(7)及び(8)で説示したとおり、当業者は甲2発明1の組成物を相違点4’あるいは6’に係る本件発明16の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(7)及び(8)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点4’あるいは6’で甲2発明1と相違する本件発明17は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(11)本件発明18について
本件発明18は、
「(a)肥満の予防および/または治療;
(b)肥満に関連する疾患または状態の予防および/または治療;
(c)食欲抑制;
(d)満腹状態の誘発;および/または
(e)体重減少
において使用するための請求項14?16のいずれかに記載の組成物および/または請求項17に記載の単回投薬単位またはパッケージ」についての発明であって、本件発明14?17において、組成物、単回投薬単位あるいはパッケージの用途を特定する発明である。そして、本件発明14?17は、本件発明1?11または13で特定される粒子を含む発明である。

ここで、上記(7)?(10)における本件発明14?17と甲2発明1との対比を踏まえて本件発明18と甲2発明1を対比すると、両者は、少なくとも、上記(7)あるいは(8)で記載した相違点で相違している。
そして、上記(7)及び(8)で説示したとおり、当業者は甲2発明1の組成物を相違点4’あるいは6’に係る本件発明18の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(7)及び(8)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点4’あるいは6’で甲2発明1と相違する本件発明18は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(12)本件発明19について
本件発明19は、本件明細書の【0147】の記載も参酌するに、本件発明18において、発明の対象を組成物に限定し、当該組成物が、本件発明18に特定される(a)?(e)の用途に、本件発明18で特定される所定の頻度で使用される場合の発明において、さらに、「被験者の治療に対するアドヒアランスおよび/または治療の有効性に関する情報を収集、保存および/または表示するためのデバイス」が併用されることを特定した発明に相当する。
そして、本件発明18は、本件発明14?17の組成物の発明をさらに限定した発明に相当するものであるから、上記(7)?(11)における説示を踏まえるに、本件発明19と甲2発明1とは、少なくとも、上記(7)あるいは(8)で記載した相違点で、相違している。
そして、上記(7)及び(8)で説示したとおり、当業者は甲2発明1の組成物を相違点4’あるいは6’に係る本件発明19の構成を備えたものとすることを動機づけられるとはいえない。
そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、上記(7)及び(8)で記載したと同様の理由によって、少なくとも相違点4’あるいは6’で相違する本件発明19は、甲2発明1及び甲1に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(13)以上のとおりであるから、申立理由3には理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、申立理由1?3にはいずれも理由がなく、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?19に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?19に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-25 
出願番号 特願2017-507871(P2017-507871)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 伊藤 清子  
特許庁審判長 滝口 尚良
特許庁審判官 松本 直子
渕野 留香
登録日 2019-09-06 
登録番号 特許第6581649号(P6581649)
権利者 ペロラ ゲーエムベーハー
発明の名称 粒子を含む製剤  
代理人 清水 義憲  
代理人 関口 一哉  
代理人 酒巻 順一郎  
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