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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65B
管理番号 1364003
異議申立番号 異議2020-700263  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-04-15 
確定日 2020-07-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6592559号発明「ラベル加熱装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6592559号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6592559号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成30年6月7日の出願であって、令和元年9月27日にその特許権の設定登録がなされ、同年10月16日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許について、令和2年4月15日に特許異議申立人松本 征二(以下「申立人」という。)により請求項1?6に対して特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
本件特許の請求項1?6に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
被装着物に被覆されたラベルに熱風を吹き付けて該ラベルを前記被装着物に装着するためのラベル加熱装置であって、
前記被装着物が搬入出されるとともに、熱風が供給される加熱室と、
前記加熱室に蒸気を供給するとともに、その蒸気の供給量を変更可能に構成された蒸気供給機構とを備え、
前記蒸気供給機構が、前記加熱室に蒸気を供給する供給状態と、蒸気の供給を停止する停止状態とに切り替え可能に構成されており、
前記停止状態において、前記加熱室に熱風が供給されるラベル加熱装置。
【請求項2】
前記蒸気供給機構が、前記加熱室に過熱蒸気を供給する請求項1記載のラベル加熱装置。
【請求項3】
前記蒸気供給機構が、前記加熱室に供給される蒸気の供給圧を0.06MPa以下に制御する請求項1又は2記載のラベル加熱装置。
【請求項4】
前記蒸気供給機構が、
前記加熱室に供給される蒸気の温度を調整する温調部をさらに備える請求項1乃至3のうち何れか一項に記載のラベル加熱装置。
【請求項5】
前記温調部が、前記加熱室に供給される蒸気の温度を80℃以上600℃以下に温調する請求項4記載のラベル加熱装置。
【請求項6】
前記被装着物の搬送路における前記加熱室の上流又は下流に設けられ、被装着物に被覆されたラベルを加熱する第2の加熱室をさらに備え、
前記蒸気供給機構が、前記加熱室及び前記第2の加熱室の両部屋に蒸気を供給する請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のラベル加熱装置。」

3.特許異議の申立理由の概要
申立人は、以下の理由により、本件発明に係る特許を取り消すべきである旨を主張している。

本件発明1?6は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、同法113条第2号に該当し、取り消すべきである。


《引用例一覧》
甲1.特開2001-48128号公報
甲2.特開2008-50041号公報
甲3.特開2001-171620号公報
甲4.特開2014-181062号公報
甲5.国際公開2015/199221号
甲6.特開2008-150063号公報
甲7.国際公開2014/208155号
甲8.特表2003-535436号公報

ここで、甲1?8は、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付された甲第1号証?甲第8号証である。

4.甲1?8の記載
甲1?8の各々に記載された事項を甲1記載事項?甲8記載事項という。
(1)甲1記載事項
ア.「【請求項2】 周壁内が空洞で内壁面に多数の吹出し孔を所定間隔ごとに有するトンネル状の熱収縮室と、その熱収縮室の底壁上に配設したワーク移送用のコンベアと、上記空洞と連通して熱収縮室に設けた電熱ヒーター内装の空気加熱室と、その空気加熱室内の所要個所に設けられて熱風を上記吹出し孔から熱収縮室内に供給する送風手段と、その送風手段に近接して空気加熱室に設けた蒸気又は加湿空気の噴出口とからなり、その噴出口からの蒸気又は加湿空気と電熱ヒーターによる加熱空気とを上記送風手段により混合して吹出し、上記熱収縮室内を蒸気又は加湿空気と熱風との混合気による加熱雰囲気となすことを特徴とする熱収縮包装装置。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ワークに被せた熱収縮性の包装フィルムを加熱収縮によりワーク表面に密着して包装を行う熱収縮包装方法及び装置に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】これまでの熱収縮包装は、電熱ヒーターにより加熱した空気による熱風雰囲気中にて、ワークに被せた熱収縮性の包装フィルムを加熱収縮する方法と、蒸気による加熱雰囲気にて熱収縮フィルムを加熱収縮する方法とがある。
【0003】乾燥した熱風による収縮包装は、仕上がり状態にむらが生じ易く、ワークの形態によって安定した仕上がりを得ることがきわめて困難な場合がある。それに対し、蒸気による収縮包装では、仕上がりむらが殆ど見られず、仕上がり状態も安定したものとなるが、ワークの表面に熱収縮して密着した包装フィルムに、蒸気の冷却により生じた水分が付着することが多く、このため水分を乾燥除去するための付帯装置を必要としている。
【0004】この発明は上記事情から考えられたものであって、その目的は、熱風と蒸気の両方による加湿された熱風を包装フィルムの熱収縮の加熱に採用することによって、熱風又は蒸気を単独に用いた場合の課題を解決し得る新たな熱収縮包装方法及び装置を提供することにある。」

ウ.「【0007】
【発明の実施の形態】図中1はトンネル状の熱収縮室で、周壁内が空洞2で各内壁面3,3に多数の吹出し孔4,4が所定間隔ごと穿設された両端開口の長尺の函体5により形成され、その熱収縮室1の底壁6上にワーク移送用のコンベアベルト7が配設してある。
【0008】8は函体天井の空洞を兼ねる空気加熱室で、函体両側の空洞2と連通して熱収縮室1の上部に設けられ、その内部の片側面に複数本の管状の電熱ヒーター9が長手方向に沿って配置してある。また空気加熱室8の中央部の天井には、電熱ヒーター9により加熱された空気を熱風として上記吹出し孔4,4から熱収縮室1に供給する送風用ファン10が下向きに設けてある。
【0009】この送風用ファン10の近傍の空気加熱室8の天井には蒸気又は加湿空気(以下蒸気等と称する)の噴出口11が設けてあり、また送風用ファン10の下側の熱収縮室1の上部内壁面には、該送風用ファン10よりも或る程度小径の還流穴12が開設してあって、熱収縮室1に供給された蒸気等と熱風の混合気が空気加熱室8に還流して循環使用することが出来るようにしてある。
【0010】上記構成の包装装置では、電熱ヒーター9により空気加熱室8に取り入れられた空気が加熱されるとともに、送風用ファン10の回転により上記空洞2を経て内壁面の各吹出し孔4,4から熱収縮室1に乾燥した熱風として吹き出される。このような状態において、上記噴出口11から送風用ファン10の近傍に装置外にて発生させた蒸気等を噴出すると、蒸気等は送風用ファン10により加熱空気と攪拌混合されて、乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4,4から吹き出るようになり、熱収縮室1は蒸気等と熱風とが混合した所定温度(たとえば100℃)の加熱雰囲気となる。
【0011】このような加熱雰囲気にある熱収縮室1に、通常のごとく、熱収縮性の包装フィルム14を緩く被せたワーク13を上記コンベアベルト7に載せて、図示のように送込むと、包装フィルムは湿潤状態の熱風により周囲から加熱されて均一に熱収縮を起こし、熱収縮室1を通過する間にワーク表面にむらなく密着するようになる。
【0012】この蒸気等と熱風との混合気による包装フィルムの熱収縮では、収縮むらが原因とされるフィルムのしわや破れなどが看られず、また水分の付着も極めて少量で、それは室温により蒸発する程度のもので、後工程として乾燥を要するものではなかった。
【0013】このようなことから、これまでの課題であった熱風又は蒸気などの単独使用による熱収縮包装の課題が解決され、そこに蒸気を採用するものであっても、包装後のワークを乾燥させる装置やスペースが不要となり、また段ボール箱等への梱包においても湿気による箱体への悪影響もなく、包装設備及び荷造り設備の簡素化、簡略化を行うことが出来るようになる。さらにまた包装装置自体の構造も、従来構造に蒸気等の供給手段を付加する程度で済むので、殊更に構造が複雑となるようなことがなく、コスト高となるようなこともない。」

エ.「【図1】



オ.「【図2】



(2)甲2記載事項
ア.「【0001】
本発明は、被包装物に被覆した熱収縮性フィルムを加熱収縮させることにより、被包装物を包装する熱収縮包装方法及びその装置に関し、特に、被包装物へ水滴を付着させることなく、短時間で均一に熱収縮性フィルムを加熱収縮させることが可能な熱収縮包装方法及びその装置に関する。」

イ.「【0018】
特に、本発明に係る熱収縮包装方法は、前記過熱蒸気として、1気圧を基準としたときに100℃よりも高く300℃以下となる過熱水蒸気を用いることが好ましい。」

ウ.「【0025】
更に、本発明では、過熱蒸気として、1気圧を基準としたときに100℃よりも高く300℃以下となる過熱水蒸気、好ましくは120℃以上となる過熱水蒸気を用いることにより、前述の第1及び第2の効果がより顕著に得られるとともに、熱収縮性フィルムの加熱温度が100℃よりも高いため、本発明の第3の効果として、被包装物や熱収縮性フィルムに水滴が付着することを防止できる。このため、水分や湿気を嫌う被包装物を包装する場合にも、本発明を好適に用いることができる。また、過熱水蒸気であれば環境への悪影響がなく、被包装物の包装を安全に行うことができる。なお、本発明において、過熱水蒸気は、1気圧のときの温度が100℃よりも高く300℃以下であれば良く、大気の圧力が1気圧よりも低い場合は、過熱水蒸気の温度は100℃よりも小さくなる。」

エ.「【0040】
前記加熱収縮装置6は、図2及び図3に示したように、熱収縮性フィルム8を加熱収縮させる加熱収縮室21を有しており、この加熱収縮室21には、過熱蒸気生成装置23で生成した過熱蒸気を流入する過熱蒸気流入口27と、加熱収縮室21の内壁面に配された過熱蒸気噴射ノズル24と、過熱蒸気流入口27から過熱蒸気噴射ノズル24に向けて過熱蒸気を案内する過熱蒸気案内路25と、熱蒸気噴射ノズル24から噴射した過熱蒸気を排出する過熱蒸気排出口28とが形成されている。」

オ.「【0045】
また、過熱蒸気生成装置23は、生成した過熱蒸気を熱収縮室21に供給する際に過熱蒸気の流量を調整可能なように過熱部32の下流側に流量制御バルブ35を配している。更に、前記調整手段34は、加熱コイル33の加熱温度と、流量制御バルブ35の開度とを調整可能に構成されており、熱収縮室21に供給する過熱蒸気の温度や流量を制御している。なお、本発明における過熱蒸気生成装置は、上述のような電磁誘導加熱コイル33によって水蒸気を加熱する方式を利用するものではなく、例えばバーナーの燃焼によって水蒸気を加熱する方式やその他の加熱方式などを利用して、水蒸気を加熱するものであっても良い。」

カ.「【0051】
このとき、過熱蒸気生成装置23では、調整手段34で加熱コイル33の加熱温度とを調整することによって、100℃よりも高く300℃以下となる過熱水蒸気を生成している。なお、本発明はこれに限定されず、熱収縮性フィルム8の材質によっては、例えば300℃よりも高い過熱水蒸気や、加熱収縮装置6内全体を減圧して100℃未満の温度の過熱水蒸気、或いは、水以外の液体を蒸発させて得られるその他の過熱蒸気などを過熱蒸気生成装置23で生成して用いることも可能である。」

(3)甲3記載事項
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、PETボトル等の容器にシュリンクラベルを装着するラベル装着装置に搭載される、シュリンクラベルを加熱収縮させるためのラベル加熱装置に関する。」

イ.「【0018】このラベル加熱装置1は、図1及び図2(a)、(b)に示すように、搬送コンベアCを囲うように設置される加熱処理室10と、この加熱処理室10内に設置される蒸気吹付手段11、12とを備えており、この蒸気吹付手段11、12によって加熱処理室10内を通過する容器Bに嵌挿されたシュリンクラベルLに加熱蒸気を吹き付けることで、シュリンクラベルLを熱収縮させるようになっている。
【0019】前記加熱処理室10は、図1に示すように、容器Bに嵌挿されたシュリンクラベルLの下部を重点的に熱収縮させる第1加熱ゾーンZ1と、シュリンクラベルLを全体的に熱収縮させる第2加熱ゾーンZ2とに区画されており、各加熱ゾーンZ1、Z2に蒸気吹付手段11、12がそれぞれ設置されている。」

ウ.「【0026】一方、第2加熱ゾーンZ2に設置される蒸気吹付手段12は、搬送コンベアCを挟んで対向するように配置された一対の蒸気噴射ユニットから構成されており、各蒸気噴射ユニットは、図1に示すように、蒸気供給管17が接続されるヘッダ部12aと、このヘッダ部12aにバルブ12bを介して接続される、容器Bの搬送方向に延びる上下6本の蒸気噴射管12cとから構成されている。
【0027】各蒸気噴射管12cには、多数の蒸気噴射孔12dが容器Bの搬送方向に一定間隔で形成されており、バルブ12bを開閉することによって、各蒸気噴射管12cから噴射される加熱蒸気の噴射量を調整することができるようになっている。
【0028】蒸気吹付手段11、12にそれぞれ加熱蒸気を供給する蒸気供給管17は、図5に示すように、制御弁19を介して蒸気ボイラ18に接続されており、各制御弁19を開閉させることによって、各蒸気吹付手段11、12への供給蒸気量を調整することができるようになっている。
【0029】また、加熱処理室10には、各加熱ゾーンZ1、Z2の温度をそれぞれ検出する温度センサ20が取り付けられていると共に各蒸気供給管17における制御弁19の上流側には蒸気供給圧を検出するための圧力センサ21が取り付けられており、温度センサ20からの温度検出信号と圧力センサ21からの圧力検出信号に基づいてカスケード制御を行う調節器22からの操作出力信号に応じて制御弁19が開閉動作を行うことにより、各加熱ゾーンZ1、Z2内の温度が常時設定温度に保持されるようになっている。」

(4)甲4記載事項
ア.「【0001】
本発明は、例えば、ラベル装着システムのラベル装着装置の下流側に設けられ、当該ラベル装着装置によってPETボトル等の容器に装着されたシュリンクラベルを加熱収縮させるラベル加熱装置に関するものである。」

イ.「【0045】
ラベル加熱装置6は、ボトル排出装置5の第2ベルトコンベア51の所定の区間に当該第2ベルトコンベア51上を移動するラベル付きボトルBのボトル列を囲むように設置されている。ラベル加熱装置6は、長尺の直方体形状の加熱処理室61(図2参照)と、その加熱処理室61の両側の側壁に配設される8個の蒸気吹付機62(図3参照)と、これらの蒸気吹付機62に蒸気を送るための配管設備を収納する配管収納ボックス63(図3参照)と、蒸気吹込機64(図1、図2参照)とを含む。」

ウ.「【0048】
加熱処理室61は、同一構成の加熱処理室を2個連結して構成されている。ラベル付きボトルBのボトル列の移動方向に対して上流側の加熱処理室61Aは、ラベル付きボトルBに嵌挿されたラベルLの下部を重点的に熱収縮させるゾーンを形成し、下流側の上流側の加熱処理室61Bは、そのラベルLを全体的に熱収縮させるゾーンを形成している。」

エ.「【0052】
加熱処理室61A,61Bは、図3(a)に示されるように、それぞれ配管収納ボックス63A,63Bの上面に載置されている。配管収納ボックス63A,63B内には、図示省略のボイラーから供給される蒸気を加熱処理室61A,61B内の蒸気吹付機62に分配するための蒸気供給管65が配設されている。ボイラーから加熱処理室61A,61Bに蒸気を供給する蒸気供給主管65aは、配管収納ボックス63Bの端部からボックス内に入り、配管収納ボックス63A,63B内の下部を配管収納ボックス63Aの端部まで直線的には配設されている。蒸気供給主管65aの配管収納ボックス63A内を通る部分と配管収納ボックス63B内を通る部分の適所にそれぞれ2つの分岐が設けられ、各分岐から加熱処理室61A内の蒸気吹付機62と加熱処理室61B内の蒸気吹付機62に蒸気を分配する蒸気供給管65が接続されている。
【0053】
蒸気供給主管65aの基端部の適所には主電磁弁(図示省略、図6の主電磁弁12参照)が設けられている。主電磁弁は、加熱処理室61A,61B内の蒸気吹付機62への蒸気の供給(ラベル加熱装置6のラベル加熱処理の開始と停止)を制御する弁である。主電磁弁を開くと、加熱処理室61A,61B内の全ての蒸気吹付機62に所定の温度の蒸気が供給され、加熱処理室61A,61B内を移動するラベル付きボトルBに対してラベル加熱処理を行う。一方、主電磁弁を閉じると、加熱処理室61A,61B内の全ての蒸気吹付機62への蒸気の供給が停止され、ラベル加熱装置6のラベル加熱処理動作が停止する。」

オ.「【0062】
加熱処理室61A内の4個の管装着ヘッド623Aには、配管収納ボックス63A内の蒸気供給主管65a及び蒸気供給管65を通して蒸気が供給され、その蒸気が各管装着ヘッド623Aに接続された蒸気噴射管621A及び蒸気噴射管621Bに分配され、蒸気噴出孔622から噴出される。管装着ヘッド623Aの2本の蒸気噴射管621Aと5本の蒸気噴射管621Bの各装着部にはバルブ623aが設けられており、各バルブ623aの開口量を調節することにより各蒸気噴射管621Aと各蒸気噴射管621Bから噴出される蒸気の噴出量が調節される。
【0063】
同様に、加熱処理室61B内の4個の管装着ヘッド623Bには、配管収納ボックス63B内の蒸気供給主管65a及び蒸気供給管65を通して蒸気が供給され、その蒸気が各管装着ヘッド623Bに接続された蒸気噴射管621Bに分配され、蒸気噴出孔622から噴出される。管装着ヘッド623Bの6個の蒸気噴射管621Bの各装着部にもバルブ623aが設けられており、そのバルブ623aの開口量を調節することにより各蒸気噴射管621Bから噴出される蒸気の噴出量が調節される。」

(5)甲5記載事項
ア.「[0001] この発明は、例えば、液体飲料を充填するプラスチック容器に被嵌された筒状のシュリンクラベル等を加熱収縮させるシュリンクラベルの加熱収縮装置に関する。」

イ.「[0017] この加熱収縮装置1は、同図に示すように、筒状ラベルLが被嵌された容器PCを搬送する搬送コンベアCが通過する、前面が扉2aによって開閉可能な加熱処理室2と、種々の機器や配管が配設された機器集積部3と、種々の機器を制御する制御盤4とから構成されており、制御盤4は、加熱処理室2の上部に設置されている。
[0018] 前記加熱処理室2は、図2?図6に示すように、容器PCに被嵌された筒状ラベルLを熱収縮させるために過熱水蒸気を用いて加熱する熱収縮ゾーンZAと、熱収縮することによって筒状ラベルLが装着された容器PCに付着している水滴を蒸発させるために加熱空気を吹き付ける乾燥ゾーンZBとを備えており、熱収縮ゾーンZAには、筒状ラベルLが被嵌された容器PCの搬送路を取り囲む開閉可能なステンレスによって形成された厚みが1.5mmのカバー11が設置されている。なお、カバー11の厚みは保温性が高く、結露が発生しにくくなる観点から従来の1.2mm程度のカバーよりも1.5mmのものがよい。」

ウ.「[0037] 機器集積部3には、図6に示すように、蒸気ボイラ20によって生成された水蒸気を供給する蒸気配管21と、この蒸気配管21によって供給された水蒸気を加熱して160?180℃程度の過熱水蒸気を生成するスーパーヒータ22と、蒸気配管21によって供給される水蒸気の蒸気供給圧を検出する圧力センサ23と、所定流量の水蒸気をスーパーヒータ22に供給するために、圧力センサ23によって検出された蒸気供給圧に応じて蒸気供給路を開閉する電動バルブ24と、水蒸気の蒸気ヘッダ16への供給圧力を調整する圧力調整弁25と、加熱空気生成用の空気を加熱空気吹出ユニット14に供給する乾燥用ブロア26と、乾燥用ブロア26の上流側に配設される予熱ユニット27及びフィルターユニット28と、吸引ボックス18内の空気を排出する容器保持用ブロア29と、熱収縮ゾーンZA内の余剰水蒸気を予熱ユニット27に供給する排気用ブロア30と、加熱空気生成用の空気を予熱するために使用された余剰水蒸気を凝縮させる凝縮用熱交換器31とが配設されている。」

(6)甲6記載事項
ア.「【0001】
この発明は、例えば、PETボトル等の容器に被嵌されたシュリンクフィルムからなる筒状ラベルやカップ入り食品を包み込んでいるシュリンクフィルムからなる包材等を加熱収縮させるシュリンクフィルムの加熱収縮装置に関する。」

イ.「【0013】
この加熱収縮装置1は、図1?図3に示すように、搬送コンベアCを囲うように設置される加熱処理室10と、この加熱処理室10内を通過するボトルに被嵌された筒状ラベルを加熱する加熱手段とを備えており、ボトルが加熱処理室10内を通過する間に、ボトルに被嵌された筒状ラベルが熱収縮するようになっている。」

ウ.「【0016】
前記加熱手段は、予備加熱ゾーンZAに設置された内部トンネル12A内を通過するボトルBに被嵌された筒状ラベルLを加熱する予備加熱手段21と、本加熱ゾーンZBに設置された内部トンネル12B内を通過するボトルBに被嵌された筒状ラベルLを加熱する本加熱手段22とを備えている。」

エ.「【0019】
前記本加熱手段22は、図4、図6及び図7に示すように、飽和水蒸気を発生させるボイラーを備えた飽和水蒸気発生ユニット(図示せず)と、この飽和水蒸気発生ユニットから送出される飽和水蒸気を常圧で加熱することによって150?180℃の過熱水蒸気(常圧過熱水蒸気)を生成する電磁誘導加熱方式の過熱水蒸気生成ユニット23と、この過熱水蒸気生成ユニット23から送出される過熱水蒸気を内部トンネル12B内に導く蒸気供給管24と、この蒸気供給管24に接続され、内部トンネル12B内に設置された過熱水蒸気供給ヘッド25とを備えている。」

(7)甲7記載事項
ア.「[0001] 本発明は、シュリンクフィルムの加熱収縮装置に係り、特に、PETボトル、ビール瓶、カップ容器などの物品の周囲に被嵌された筒状のシュリンクフィルムを加熱収縮させて装着するシュリンクフィルムの加熱収縮装置に関する。」

イ.「[0013] 本発明に係るシュリンクフィルムの加熱収縮装置は、シュリンクフィルムが被嵌された物品を搬送するコンベヤを囲んで設けられ、前記シュリンクフィルムを加熱により収縮させて物品の周囲に装着するシュリンクフィルムの加熱収縮装置であって、前記シュリンクフィルムの一部分を収縮させる部分収縮ゾーンと、前記シュリンクフィルム全体の大部分を収縮させる全体収縮ゾーンとを備え、前記部分収縮ゾーンでは、前記シュリンクフィルムに比較的低温の第1水蒸気および比較的高温の第2水蒸気の一方を噴き付けて部分的に収縮させて前記シュリンクフィルムを前記物品に固定し、前記全体収縮ゾーンでは、前記シュリンクフィルムに前記第1水蒸気および前記第2水蒸気の他方を噴き付けて全体的に収縮させることにより前記シュリンクフィルムを前記物品に装着するものである。
ここで、本願の明細書および特許請求の範囲において「第1水蒸気」とは1気圧の条件下で温度が100℃以下となる水蒸気である。また、本願の明細書および特許請求の範囲において「第2水蒸気」とは1気圧を基準としたときに温度が100℃よりも高く300℃以下となる過熱水蒸気であり、好ましくは120℃?300℃、より好ましくは150℃?180℃の過熱水蒸気である。」

ウ.「[0026] 加熱収縮装置10は、シュリンクフィルムSが被嵌されたボトル容器Bを搬送するコンベヤ2に沿って設けられる加熱収縮ゾーンを形成するためのトンネル状のカバー12を備える。カバー12は、例えば金属板によって形成され、図1および図2に示すように、コンベヤ2を挟んだ両側と上方とを覆って設けられている。」

エ.「[0029] また、加熱収縮装置10は、蒸気発生装置18および蒸気加熱装置20を備えている。 蒸気発生装置18は、各ゾーンZ1?Z3に供給するための第1水蒸気を生成するためのものである。蒸気発生装置18で生成された100℃以下の第1水蒸気は、配管22,24を介して部分収縮ゾーンZ1および追加収縮ゾーンZ3に供給されるとともに、配管26を介して蒸気加熱装置20に供給される。
[0030] 蒸気加熱装置20は、蒸気発生装置18から供給される第1水蒸気を常圧で加熱して約150℃?180℃の第2水蒸気(または過熱水蒸気)を生成するためのものである。第2水蒸気を生成するための加熱手段としては、例えば、電磁加熱誘導式のものを用いることができる。蒸気加熱装置20により生成された第2水蒸気は、配管28を介して全体収縮ゾーンZ2に供給される。」

(8)甲8記載事項
「【0045】
バンド14又はパネル16がキャンドル25又はホルダ20の周囲に位置付けられると、この複合体は、何らかの既知の機構(例えば、コンベヤベルト)によって加熱ステーション内へ送ることができ、この加熱ステーションにおいて、バンド14又はパネル16は、キャンドル25又はホルダ20上に熱収縮される(ステップSA(3)及びステップSB(3))。この加熱ステーションは、高温乾燥空気、又は、高温湿潤空気若しくは蒸気を付与することもできるし、或いは、高温空気と蒸気とを何回か連続的に組み合わせて付与することもできる。当該分野ではよく知られているように、仕上り包装材料10において最もよくしわ及び気泡を回避するには、高温空気と蒸気とを連続的に組み合わせて付与するのが好ましい。しかしながら、基体に付与する際、包装材料にしわ及び気泡を形成させることにより、おもしろい変わった視覚効果を得てもよい、ということは注意されたい。例えば、このような凹凸によって製品に視覚的深さ及び変化が加えられ、夜光性ラベルの場合、3次元効果が可能となる。上記の厚さ及び収縮特性を有するPETフィルムによって、上記の寸法を有すると共に夜光性デザインが印刷されたバンド14が形成される場合、このバンド14は、4つの連続的な高温乾燥空気ステーションで処理され(用途によって、華氏約100度?約400度、好ましくは、華氏約300度?約400度の温度において、それぞれ、約1秒?約2秒)、次に、蒸気ステーションで処理される(約5psi?約15psiの圧力において、約3秒?約5秒)。」

5.特許異議の申立理由についての当審の判断
(1)甲1発明
甲1記載事項(上記4.(1)ア.?オ.を参照)からみて、甲1には以下の甲1発明が記載されているといえる。
《甲1発明》
ワーク13に被せた熱収縮性の包装フィルム14を湿潤状態の熱風による加熱収縮によりワーク表面に密着して包装を行う熱収縮装置であって、
底壁6上にワーク移送用のコンベアベルト7が配設してあり、内壁面3の吹出し孔4から加熱された空気が熱風として供給される熱収縮室と、
乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4から吹き出るよう、加熱空気と攪拌混合される蒸気等を噴出する噴出口11とを備え、
吹出し孔4から熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、蒸気等が加熱空気と攪拌混合されて、乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4から吹き出るようになる、熱収縮装置。

(2)本件発明1
ア.対比
甲1発明の「ワーク13」、「熱収縮性の包装フィルム14」及び「熱収縮装置」は、それぞれ、本件発明1の「被装着物」、「ラベル」及び「ラベル加熱装置」に相当するから、甲1発明の「ワーク13に被せた熱収縮性の包装フィルム14を湿潤状態の熱風による加熱収縮によりワーク表面に密着して包装を行う」点は、本件発明1の「被装着物に被覆されたラベルに熱風を吹き付けて該ラベルを前記被装着物に装着する」点に相当する。
また、甲1発明の「熱収縮室」は本件発明1の「加熱室」に相当し、甲1発明の「熱収縮室」の「底壁6上に」「配設してあ」る「ワーク移送用のコンベアベルト7は、「熱収縮室」に「ワーク」を搬出入するものであるから、甲1発明の「底壁6上にワーク移送用のコンベアベルト7が配設してあり、内壁面3の吹出し孔4から加熱された空気が熱風として供給される熱収縮室」は、本件発明の「前記被装着物が搬入出されるとともに、熱風が供給される加熱室」に相当する。
また、甲1発明の「噴出口11」は、「熱収縮室」の「内壁面3」の「吹出し孔4」から吹き出る「加熱空気と攪拌混合される蒸気等」を噴出するものであるから、甲1発明の「乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4から吹き出るよう、加熱空気と攪拌混合される蒸気等を噴出する噴出口11」は、「前記加熱室に蒸気を供給する」限りにおいて、甲1発明の「前記加熱室に蒸気を供給するとともに、その蒸気の供給量を変更可能に構成された蒸気供給機構」に一致する。
そして、甲1発明において、「吹出し孔4から熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、蒸気等が加熱空気と攪拌混合されて、乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4から吹き出るようになる」点は、噴出口11から蒸気等を噴出する前は、吹出し孔4から熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出され、噴出口11から蒸気等を噴出すると、吹出し孔4から熱収縮室1に湿潤状態の熱風が吹き出されるものであるから、甲1発明の「吹出し孔4から熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、蒸気等が加熱空気と攪拌混合されて、乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4から吹き出るようになる」点は、「蒸気供給機構」が、「蒸気の供給を停止する停止状態」から「加熱室に蒸気を供給する供給状態」へと切り替わる限りにおいて、本件発明1の、「前記蒸気供給機構が、前記加熱室に蒸気を供給する供給状態と、蒸気の供給を停止する停止状態とに切り替え可能に構成されており、前記停止状態において、前記加熱室に熱風が供給される」点に一致する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりである。
《一致点》
被装着物に被覆されたラベルに熱風を吹き付けて該ラベルを前記被装着物に装着するためのラベル加熱装置であって、
前記被装着物が搬入出されるとともに、熱風が供給される加熱室と、
前記加熱室に蒸気を供給する蒸気供給機構とを備え、
前記蒸気供給機構が、蒸気の供給を停止する停止状態から、前記加熱室に蒸気を供給する供給状態へと切り替わり、
前記停止状態において、前記加熱室に熱風が供給されるラベル加熱装置。

《相違点1》
「蒸気供給機構」について、本件発明1は、「その蒸気の供給量を変更可能に構成された」ものであるのに対し、甲1発明は、蒸気の供給量を変更可能に構成されたものであるか否か明らかでない点。

《相違点2》
「蒸気供給機構」について、本件発明1は「前記加熱室に蒸気を供給する供給状態と、蒸気の供給を停止する停止状態とに切り替え可能」であるのに対し、甲1発明は、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態になるものではあるが、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態から、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態へと切り替え可能であるか否か明らかでない点。

イ.相違点の検討
事案に鑑み、まず《相違点2》について検討する。
甲1発明は、「乾燥した熱風による収縮包装は、仕上がり状態にむらが生じ易く、ワークの形態によって安定した仕上がりを得ることがきわめて困難な場合がある。それに対し、蒸気による収縮包装では、仕上がりむらが殆ど見られず、仕上がり状態も安定したものとなるが、ワークの表面に熱収縮して密着した包装フィルムに、蒸気の冷却により生じた水分が付着することが多く、このため水分を乾燥除去するための付帯装置を必要としている。」(上記4.(1)の段落【0003】)という課題に対して、「乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4,4から吹き出るように」することで、「熱乾燥室1」を「蒸気等と熱風とが混合した所定温度(たとえば100℃)の加熱雰囲気」とし(上記4.(1)の段落【0010】)、「このような加熱雰囲気にある熱収縮室1に、通常のごとく、熱収縮性の包装フィルム14を緩く被せたワーク13を上記コンベアベルト7に載せて、図示のように送込むと、包装フィルムは湿潤状態の熱風により周囲から加熱されて均一に熱収縮を起こし、熱収縮室1を通過する間にワーク表面にむらなく密着するようになる」(上記4.(1)の段落【0011】)構成とすることで、「この蒸気等と熱風との混合気による包装フィルムの熱収縮では、収縮むらが原因とされるフィルムのしわや破れなどが看られず、また水分の付着も極めて少量で、それは室温により蒸発する程度のもので、後工程として乾燥を要するものではなかった。」(上記4.(1)の段落【0012】)という作用効果を奏するものである。
つまり、甲1発明においては、包装フィルムの加熱収縮を「蒸気等と熱風との混合気」により行うことが重要な要件となっていると解されるから、「熱乾燥室1」に、「乾燥した熱風」と「湿潤状態の熱風」とを相互に切り替え可能に供給することには、その動機付けがなく、むしろ阻害要因があるというべきである。
また、甲1発明は、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態になるものではあるが、それは単に、熱収縮包装装置を起動して包装フィルムを加熱収縮できるような状態とするまでの手順を示したものにしか過ぎず、甲1発明において、熱収縮室1に乾燥した熱風のみが供給された状態で包装フィルムの加熱収縮を行うこと、及び、加熱室に蒸気等のみが供給された状態で包装フィルムの加熱収縮を行うことを想定していないことは、甲1発明の上記課題からも明らかであるから、甲1発明において、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態において、噴出口11から蒸気等を噴出すると、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態になるという構成から、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態から、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態へと切り替え可能な構成とすることが明らかであるとはいえない。

そうすると、甲1発明において、熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態から、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態へと切り替え可能とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
また、甲1発明において、上記のように熱収縮室1に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態から、熱収縮室1に乾燥した熱風が吹き出される状態へと切り替え可能とすることの動機付けとなる記載やこれを示唆する記載は、甲2?8にもなく、熱収縮室に熱風が湿潤状態にて吹き出される状態と、熱収縮室に乾燥した熱風が吹き出される状態とを切り替え可能とすることが、本件特許出願時において周知の技術であったともいえない。

ウ.申立人の主張について
上記《相違点2》に関し、申立人は、甲1の段落【0010】の第1文の「上記構成の包装装置では、電熱ヒーター9により空気加熱室8に取り入れられた空気が加熱されるとともに、送風用ファン10の回転により上記空洞2を経て内壁面の各吹出し孔4,4から熱収縮室1に乾燥した熱風として吹き出される。」との記載は本件発明1でいうところの「停止状態」に相当し、段落【0010】の第2文の「このような状態において、上記噴出口11から送風用ファン10の近傍に装置外にて発生させた蒸気等を噴出すると、蒸気等は送風用ファン10により加熱空気と攪拌混合されて、乾燥した熱風が湿潤状態にて吹出し孔4,4から吹き出るようになり、熱収縮室1は蒸気等と熱風とが混合した所定温度(たとえば100℃)の加熱雰囲気となる。」との記載は本件発明1でいうところの「供給状態」に相当するものであるから、甲1に記載された熱収縮包装装置は、噴出口11を介した蒸気の熱収縮室への供給の有無を変更することにより、「供給状態」と「停止状態」との2状態とに切り替え可能に構成されたものである旨主張している(特許異議申立書21ページ24行?22ページ18行)。

しかしながら、上記ア.で示したとおり、甲1発明において「供給状態」から「停止状態」へと切り替え可能であるか否かは明らかでなく、上記イ.で示したとおり、甲1発明において「供給状態」から「停止状態」へと切り替え可能とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

エ.小括
したがって、本件発明は、上記《相違点1》について検討するまでもなく、甲1発明、及び、甲2?甲8記載事項または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明2?6
本件発明2?6は、本件発明1の構成要件を全て含むものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明、及び、甲2?甲8記載事項または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本件発明1?6は、甲1発明、及び、甲2?甲8記載事項または周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、その特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
そして、ほかに本件発明1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論の通り決定する。
 
異議決定日 2020-06-23 
出願番号 特願2018-109421(P2018-109421)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B65B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 高山 芳之
特許庁審判官 井上 茂夫
中村 一雄
登録日 2019-09-27 
登録番号 特許第6592559号(P6592559)
権利者 フジヤマパックシステム株式会社
発明の名称 ラベル加熱装置  
代理人 西村 竜平  
代理人 前田 治子  
代理人 上村 喜永  
代理人 中村 惇志  
代理人 齊藤 真大  

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