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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08G
管理番号 1364018
異議申立番号 異議2020-700134  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-28 
確定日 2020-07-13 
異議申立件数
事件の表示 特許第6568250号発明「硬化性組成物及び被覆方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6568250号の請求項1?3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6568250号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?3に係る特許についての出願は、平成30年3月1日(優先権主張 平成29年3月2日(日本)、平成29年8月21日(日本))の出願であって、令和1年8月9日にその特許権の設定登録がされ、同年8月28日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和2年2月28日に、本件特許の請求項1?3に係る特許に対して、特許異議申立人である佐藤 彰芳(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 本件発明
本件特許の請求項1?3に係る発明(以下、請求項1?3に係る発明を、順に「本件発明1」等といい、これらをまとめて、「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
硬質ポリウレタンフォーム形成用の硬化性組成物であって、
ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、リン化合物、及びポリイソシアネート化合物を含有し、イソシアネート指数が150以上であり、
上記リン化合物として、ホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステル化合物を含むことを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
上記ホスフィン酸塩化合物として、下記(式1)または下記(式2)で表わされるアルキルホスフィン酸金属塩化合物を含むことを特徴とする請求項1記載の硬化性組成物。
(式1)

(式2)

(R^(1)、R^(2)は、同一であるかまたは異なるものであり、線状または分枝状の炭素数1?6のアルキルである。R^(3)は、線状または分枝状の炭素数1?10のアルキレン、炭素数6?10のアリーレン、炭素数7?20のアルキルアリーレン、または炭素数7?20のアリールアルキレンである。Mは、Mg、Ca、Al、Sb、Sn、Ge、Ti、Zn、Fe、Zr、Ce、Bi、Sr、Mn、Li、Na、K、またはプロトン化窒素塩基である。mは1?4、nは1?4、xは1?4である。)
【請求項3】
請求項1または2記載の硬化性組成物を基材に塗付し、当該基材をフォームで被覆することを特徴とする被覆方法。」

第3 特許異議申立書に記載された取消理由の概要
請求項1?3に係る発明は、下記1?2のとおりの取消理由があるから、本件特許の請求項1?3に係る特許は、特許法第113条第2号又は第4号に該当し、取り消されるべきものである。証拠方法として、下記3の甲第1号証?甲第10号証(以下、それぞれ「甲1」等という。)を提出する。

1 取消理由1(進歩性)
1-1 請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲1に記載された発明、甲1?4、甲10に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
1-2 請求項1?3に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲2に記載された発明、甲5?甲10に記載された事項に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1?3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2 取消理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1に記載の「イソシアネート指数が150以上である」に関して、発明の詳細な説明に、本件発明の効果を奏する実施例として明示されている硬化性組成物は、イソシアネート指数が240?420の範囲内にある組成物のみであり、本件発明1?3は発明の詳細な説明に記載された範囲を超えるものである。

3 証拠方法
甲1:国際公開第2015/004928号
甲2:中国特許出願公開第105330818号明細書
甲3:国際公開第2015/128213号
甲4:特開2016-79375号公報
甲5:国際公開第2009/081515号
甲6:特開2015-224265号公報
甲7:特開平2-283736号公報
甲8:特開2015-7167号公報
甲9:特開2002-363241号公報
甲10:国際公開第2014/112394号

第4 当審の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した取消理由1-1、取消理由1-2及び取消理由2によっては、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

1 甲1を主引用文献とする取消理由1-1について
(1)甲号証に記載された事項
ア 甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
甲1には次の記載がある。
(ア)「請求の範囲
[請求項1] ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を含むウレタン樹脂、難燃剤ならびに前記ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の三量化反応を促進する三量化触媒を含むウレタン樹脂組成物であって、
前記難燃剤が、赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤を含み、
前記ウレタン樹脂100重量部に対して、前記赤リンが、3.0重量部?20重量部の範囲であり、前記リン酸塩含有難燃剤が1.0重量部?18重量部の範囲であることを特徴とする、ウレタン樹脂組成物。
・・・
[請求項4] 前記ウレタン樹脂に含まれるポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のインデックスが、150?700の範囲である、請求項1?3のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。
[請求項5] 前記ウレタン樹脂組成物が、整泡剤および発泡剤の少なくとも一つを含む、請求項1?4のいずれかに記載のウレタン樹脂組成物。」

(イ)「[0002]・・・
例えば、マンション等の集合住宅に使用される鉄筋により補強されたコンクリートの場合は、前記コンクリート表面に硬質ウレタンフォームを吹き付けて断熱層を形成する。・・・」

(ウ)「[0005] 本発明の目的は、燃焼した際の発熱量が小さく、難燃性に優れるウレタン樹脂組成物を提供することにある。」

(エ)「[0028] 次に前記ウレタン樹脂の主剤と硬化剤との配合比について説明する。
本発明においては、ポリオール化合物および水の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)であるインデックスは、[イソシアネートの当量数]×100÷[ポリオールの当量数+水の当量数]により定義される。
ここで前記ポリオール化合物の当量数は、[ポリオール化合物の水酸基価(mgKOH/g)]×[ポリオール化合物の重量(g)]÷[水酸化カリウムの分子量]により表される。
前記イソシアネート化合物の当量数は、[イソシアネート基の分子量]×100÷[イソシアネート基の重量%]により表される。
水の当量数は、[水の重量(g)]×2÷[水の分子量]により表される。
前記インデックスの範囲は、150?700の範囲となるように通常混合する。この範囲は200?700の範囲であることが好ましく、300?700の範囲であることがより好ましく、350?650の範囲であることが更に好ましい。
前記当量比が150以上ではウレタン樹脂組成物内のイソシアヌレート基の量が少なくなることで難燃性が低下することを防ぐことができ、700以下ではウレタン樹脂組成物が脆くなりすぎることを防ぐことができる。」

(オ)「[0049] 前記リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩等が挙げられる。
[0050] 前記モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム等のアンモニウム塩、
リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、
リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、
リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、
リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、
リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、
リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、
リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩、
第一リン酸アルミニウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、次亜リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩等が挙げられる。
[0051] これらの中でも、前記リン酸塩含有難燃剤の自己消火性が向上するため、モノリン酸塩を使用することが好ましく、リン酸ニ水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、第一リン酸アルミニウム、リン酸一ナトリウム、第三リン酸アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも一つを使用することがより好ましく、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムを用いることが更に好ましい。
[0052] 前記リン酸塩含有難燃剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。」

(カ)「[0055] また本発明に係るウレタン樹脂組成物は、前記赤リンおよび前記リン酸塩含有難燃剤以外の難燃剤を併用することができる。
かかる難燃剤としては、例えば、リン酸エステル、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤等が挙げられる。
・・・
[0059] 上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β?クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。」

甲1には、上記(ア)の請求項1を引用する請求項4を更に引用する請求項5に記載された発明を独立形式にした、次の発明が記載されている。

「ポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物を含むウレタン樹脂、難燃剤ならびに前記ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基の三量化反応を促進する三量化触媒を含むウレタン樹脂組成物であって、
前記難燃剤が、赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤を含み、
前記ウレタン樹脂100重量部に対して、前記赤リンが、3.0重量部?20重量部の範囲であり、前記リン酸塩含有難燃剤が1.0重量部?18重量部の範囲であり、
前記ウレタン樹脂に含まれるポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のインデックスが、150?700の範囲であり、
前記ウレタン樹脂組成物が、整泡剤および発泡剤の少なくとも一つを含む、ウレタン樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)

イ 甲2に記載された事項
甲2には次の記載がある(当審訳)。
(ア)「特許請求の範囲
1.以下を特徴とする難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料:
質量パーセントで、原料成分は以下を含む。
ポリエーテルポリオール 20?30%
触媒 35?45%
発泡剤 1?5%
整泡剤 1?5%
難燃剤化合物 2?8%
ナノ相乗剤 25?35%
ポリメチレンポリフェニルイソシアネート 2?5%
ここで、難燃剤化合物は、難燃剤と炭素化剤との重量比1:1から5:1の混合物であり、難燃剤は、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン化合物、メラミンシアヌル酸塩、及び次亜リン酸塩(ホスフィン酸塩)の1つ以上の組み合わせ。
2.前記リン酸エステルが、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルエチルホスホネート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)およびレゾルシノール(ジフェニルホスフェート)、である、請求項1に記載の難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料。」

(イ)「背景技術
[0002]ポリウレタンフォームは優れた断熱材であり、同じ断熱効果の下で、ポリウレタンフォームの厚さはEPSの半分に過ぎない。ポリウレタンフォームは、微小孔密度が小さく、優れた機械的特性、低い熱伝導率、強力な断熱性、耐老化性、耐薬品性などの利点があるため、広く使用されている。シンプルな家、壁、暖房用パイプ、ドア、窓の断熱材として使用される。さまざまな物理的特性の要件に応じて、ポリウレタン硬質フォームはさまざまな形状にすることができる。また、成形のために現場で直接スプレーすることもできる。
・・・
[0006]本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、より良好な環境保護、難燃性能、断熱性能および機械的特性を有する難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料を提供することである。
・・・
[0008]上記の技術的問題を解決するために、本発明で採用される技術的解決手段は次のとおりである。
以下を特徴とする難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料:
質量パーセントで、原料成分は以下を含む。
ポリエーテルポリオール 20?30%
触媒 35?45%
発泡剤 1?5%
整泡剤 1?5%
難燃剤化合物 2?8%
ナノ相乗剤 25?35%
ポリメチレンポリフェニルイソシアネート 2?5%
ここで、難燃剤化合物は、難燃剤と炭素化剤との重量比1:1から5:1の混合物であり、難燃剤はリン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン化合物、メラミンシアヌル酸塩、及び次亜リン酸塩(ホスフィン酸塩)の1つ以上の組み合わせ。」

(ウ)「[0009]好ましくは、リン酸エステルが、ジメチルメチルホスホネート、ジエチルエチルホスホネート、およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)である。また、レゾルシノール(ジフェニルホスフェート)の1つ以上の組み合わせ。
・・・
[0011]好ましくは、次亜リン酸塩(ホスフィン酸塩)が、次亜リン酸塩、ジエチルホスフィン酸塩(アルミニウムジエチルホスファイト、ADPなど)、フェニルホスフィン酸塩(フェニルホスフィネートなど)・・・の組み合わせである。
[0012]好ましくは、炭素化剤が、ペンタエリスリトールケージリン酸塩(PEPAなど)、ペンタエリスリトールおよびピペラジンピロリン酸塩の1つまたは組み合わせである。
・・・
[0014]好ましくは、触媒は、エチレンジアミン、シクロヘキシルアミン、オクタン酸カリウム、および酢酸カリウムのうちの1つである。
[0015]好ましくは、整泡剤はシリコーン整泡剤であり、発泡剤は水である。
[0016]好ましくは、ナノ相乗剤は、ナノスラグ、ナノ膨張パーライト粉末、ナノモレキュラーシーブおよびナノモンモリロナイトの1つまたは組合せである。」

(エ)「[0021]実施例1
この実施形態における難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料を調製するための原料配合は以下のとおりである:
ポリエーテルポリオール4110 22%
エチレンジアミン 3%
水 3%
シリコーン整泡剤 2%
ジエチルホスフィン酸アルミニウム 11%
ピロリン酸ピペラジン 8%
DMMP 11%
ナノモレキュラシーブ 5%
ポリメチレンポリフェニルイソシアネート 35%

実施例2
・・・

実施例4
この実施形態における難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料を調製するための原料配合は以下のとおりである:
ポリエーテルポリオール4110 21%
エチレンジアミン 2%
水 4%
シリコーン整泡剤 2%
フェニルホスフィン酸アルミニウム 10%
ペンタエリスリトールケージリン酸 10%
BDP 10%
ナノエキスパンドパーライトパウダー 3%
ポリメチレンポリフェニルイソシアネート 38%」

実施例5
・・・

[0022]テスト標準
Limiting Oxygen Index(LOI)テストは、ASTM D2863標準を参照。
圧縮強度テストについては、GB/T8813-2008を参照。
熱伝導テストはGBT 10294-2008を参照。

表-1(当審注:表1-1は省略)

表-1からわかるように、本発明の難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料は非常に良好な難燃性効果を有し、限界酸素指数は33%以上に達し、最高は36%に達し、熱伝導率は非常に低い。良好な機械的特性を維持しながら、格段の断熱性能を有する。」

ウ 甲3に記載された事項
甲3には次の記載がある(当審注:記載事項及び記載箇所は、申立人が甲3の翻訳文として提出した特表2017-506697号公報に基づく。)。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくともシアヌル酸メラミン、リン酸の誘導体及びホスホン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種の第1の含リン難燃剤(F1)、並びに、ホスフィン酸の誘導体からなる群から選択された少なくとも1種のさらなる含リン難燃剤(F2)を含む組成物。
【請求項2】
前記含リン難燃剤(F2)がホスフィン酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ホスフィン酸塩がホスフィン酸アルミニウム及びホスフィン酸亜鉛からなる群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記含リン難燃剤(F1)がリン酸エステルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
・・・
【請求項15】 請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物をケーブルシースの製造に使用する方法。」

(イ)「【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、先行技術から続き、本発明は、優れた機械的特性を有し、優れた難燃性を示し、且つ、同時に優れた機械的及び化学的安定性を有する難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供することを目的とする。」

(ウ)「【0027】 さらに、本発明の組成物は少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。原則として、熱可塑性ポリウレタンは公知である。典型的には、任意に少なくとも1種の(d)触媒及び/又は(e)通例の補助剤及び/又は添加剤の存在下で、成分(a)イソシアネートと、(b)イソシアネート反応性化合物と、任意に(c)鎖延長剤と反応させることにより製造される。成分(a)イソシアネート、(b)イソシアネート反応性化合物、及び任意に(c)鎖延長剤は、個別に又は共に、構成成分とも称される。」

(エ)「【0082】
また、本発明は、コーティング、減衰要素(damping elements)、ベローズ(bellows)、フィルム又は繊維、成形部品、建物及び輸送の床、不織物、好ましくはシール、ローラー、靴底、ホース、ケーブル、ケーブルコネクタ、ケーブルシース、クッション、ラミネート、プロファイル、ベルト、サドル、フォーム、プラグコネクタ、垂下ケーブル(trailing cables)、太陽電池モジュール、自動車のトリムの製造に、上記の難燃の熱可塑性ポリウレタンの少なくとも1種を含む本発明の組成物を使用する方法に関する。好ましくは、ケーブルシースの製造に使用することである。好ましくは、該製造は、ペレットから、本発明の組成物の射出成形、カレンダー、粉末焼結又は押出により、及び/又は本発明の組成物のさらなる発泡により行われる。」

(オ)「【実施例】
【0105】
実施例は、本発明の組成物の向上した難燃性、優れた機械的特性及び低い排煙濃度を示す。
【0106】
1.原料
Elastollan 1185A10:1000の分子量を有するポリテトラヒドロフランポリオール(PTHF)、ブタン-1,4-ジオール及びMDIをベースとし、BASFポリウレタンGmbH,Elastogranstrasse 60, 49448 Lemfordeから入手したショア硬度85AのTPU。
【0107】
Melapur MC 15 ED:CAS #が37640-57-6であり、BASF SE、67056 Ludwigshafen、ドイツから入手し、粒径D99%が50μm以下であり、D50%が4.5μm以下であり、含水量が0.1質量%未満であるシアヌル酸メラミン(1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミンを有する化合物(1:1))
【0108】
Fyrolflex RDP:CAS #が125997-21-9であり、Supresta Netherlands B.V.,Office Park De Hoef,Hoefseweg 1,3821 AE Amersfoort、オランダから入手し、25℃での粘度が700mPas、酸価が0.1 mg KOH/g未満であり、含水量が0.1質量%未満であるレゾルシノールビス(ジフェニルホスファート)。
【0109】
Disflamoll DPK:CAS #が026444-49-5であり、LANXESS Deutschland GmbH,51369 Leverkusen,ドイツから入手し、酸価が0.1 mg KOH/g未満であり、含水量が0.1質量%未満であるリン酸クレジルジフェニル。
【0110】
Exolit OP 1230:CAS #が225789-38-8であり、Clariant Produkte (Deutschland) GmbH,Chemiepark knapsack,50351 Hurthから入手し、含水量が0.2質量%未満であり、平均粒径(D50)が20?40μm、ジエチルホスフィン酸アルミニウム。
【0111】
2.混合物の製造
下記の表2は、各成分を質量部で記載する組成物のリストである。混合物はそれぞれに、10個のバレル部に分け、35Dの軸長(screw length)を有する2軸押出機Berstoff ZE 40 Aを用いて製造する。
【0112】
【表1】

【0113】
3.機械的特性
混合部を有するスリーゾーンスクリュー(three-zone screw)(スクリュー比1:3)を備えるArenz一軸式押出機を用いて混合物を押出し、厚さ1.6mmのフィルムを得た。測定したパラメーターは、対応する試験試料の、使用したペレットのMFR、密度、ショア硬度、引張強度、引き裂き伝播抵抗及び破断点伸びであった。
【0114】
4.難燃性
難燃性を評価するため、厚さ1.6mmの試験試料をUL 94V(装置及び電器部品のプラスチック材料の可燃性試験のUL安全基準)に従ってテストする。
【0115】
難燃性を評価するため、ケーブル絶縁及びケーブルシースの従来の押出ライン(45mm直径の平滑管押出機)で、ケーブルを製造した。2.5:1の圧縮比を有する従来のスリーゾーンスクリューを使用した。
【0116】
まず、管状法で、0.1mmの個々の混合物を有する個々の混合物で、コア(8本の単線からなる撚線)を絶縁した。絶縁コアの直径は1.0mmであった。これらのコアの3つをより糸状にして、シェル(シェルの厚さが1mmである)を管状法で押出により適用した。ケーブル全体の外径は5mmであった。
【0117】
その後、VW1テスト(UL標準1581、§1080-VW-1(垂直試料)燃焼試験)をケーブルに対して行った。いずれの場合にも、試験を3つのケーブルに対して行った。」

エ 甲4に記載された事項
甲4には次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される難燃剤(a)とポリウレタン樹脂(b)が混合されてなる難燃性ポリウレタン樹脂であって、混合比率が重量比で(a)/(b)=5/95?50/50の範囲であることを特徴とする難燃性ポリウレタン樹脂。
【化1】

(式中、R_(1)は水素、フェニル基、または炭素数1?6の直鎖状のアルキル基であり、MはMg、Al、Ca、TiまたはZnであり、mは2、3または4である。)
【請求項2】
上記式(1)で表される難燃剤(a)100重量部に対して、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルアミド、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ベンゾグアナミン、膨張性黒鉛、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる1種または2種以上の難燃助剤(c)の合計が0?200重量部であり、上記式(1)で表される難燃剤(a)とポリウレタン樹脂(b)と上記難燃助剤(c)の混合比率が重量比で{(a)+(c)}/(b)=5/95?50/50の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の難燃性ポリウレタン樹脂。」

(イ)「【0016】
したがって、本発明は、上記課題を考慮してなされたものであり、すなわち、ハロゲン系難燃剤と同等以上の、著しく高度な難燃性能を有し、製品の着色性を阻害せず、高温・高湿条件下でも耐加水分解性と耐ブリードアウト性を兼ね備え、さらには、コスト増を抑制可能な難燃性ポリウレタン樹脂および難燃性合成皮革を提供することを目的とする。」

(ウ)「【0023】
上記式(1)で表される難燃剤の具体例としては、ホスフィン酸亜鉛(リン含有率31.7%)、フェニルホスフィン酸亜鉛(リン含有率17.8%)、メチルホスフィン酸亜鉛(リン含有率27.7%)、エチルホスフィン酸亜鉛(リン含有率24.6%)、ホスフィン酸アルミニウム(リン含有率41.9%)、フェニルホスフィン酸アルミニウム(リン含有率20.6%)、メチルホスフィン酸アルミニウム(リン含有率35.2%)およびエチルホスフィン酸アルミニウム(リン含有率30.4%)が挙げられる。これらホスフィン酸金属塩は、通常は無色または白色の粉体であるため、製品の着色性を阻害することなく使用可能である。リン含有率については、後述する。」

(エ)「【0029】
本発明の難燃剤の他に、さらなる難燃性能向上のために、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウム、リン酸エステルアミド、フタル酸メラミン、メラミン、シアヌル酸メラミン、ベンゾグアナミン、膨張性黒鉛、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムを難燃助剤として、任意で併用してもよい。使用量としては、本発明の難燃剤100重量部に対して、上記難燃助剤の少なくとも1種以上の化合物の合計が0?200重量部である。」

オ 甲10に記載された事項
甲10には次の記載がある。
(ア)「[0002]
・・・
この様にコンクリートを通じて外温が長時間にわたり建物内部に影響を与える場合がある。この影響を軽減するために、通常はコンクリートに対して断熱加工が施される。
例えば、マンション等の集合住宅に使用される鉄筋により補強されたコンクリートの場合は、前記コンクリート表面に硬質ポリウレタンフォームを吹き付けて断熱層を形成する。」

(イ)「[0021]本発明の目的は、取り扱いが容易であり、難燃性に優れ、加熱されたときに一定の形状を保つ発泡体を形成することのできる難燃性ウレタン樹脂組成物を提供することにある。」

(ウ)「[0045]またイソシアネートインデックスは、ポリオール化合物の水酸基に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比を百分率で表したものであるが、その値が100を越えるということはイソシアネート基が水酸基より過剰であることを意味する。
本発明に使用するウレタン樹脂のイソシアネートインデックスの範囲は、120?1000の範囲であることが好ましく、200?800の範囲であればより好ましく、300?600の範囲であればさらに好ましい。」

(エ)「[0056]次に本発明に使用する添加剤について説明する。
本発明に係る難燃性ウレタン樹脂組成物は、添加剤を含む。
前記添加剤は、赤リンを必須成分とし、赤リン以外に、リン酸エステル、リン酸塩含有難燃剤、臭素含有難燃剤、ホウ素含有難燃剤、アンチモン含有難燃剤および金属水酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一つを組み合わせてなる。
・・・
[0059]また本発明に使用する前記リン酸エステルは特に限定されないが、モノリン酸エステル、縮合リン酸エステル等を使用することが好ましい。
・・・
[0062]上記の中でも、硬化前の組成物中の粘度の低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いためモノリン酸エステルを使用することが好ましく、トリス(β?クロロプロピル)ホスフェートを使用することがより好ましい。
・・・
[0065]また本発明に使用するリン酸塩含有難燃剤はリン酸を含むものである。
・・・
[0067]前記リン酸塩含有難燃剤の具体例としては、例えば、モノリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩等が挙げられる。
[0068]前記モノリン酸塩としては特に限定されないが、例えば、リン酸アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素ニアンモニウム等のアンモニウム塩、
リン酸一ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、亜リン酸一ナトリウム、亜リン酸二ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム等のナトリウム塩、
リン酸一カリウム、リン酸二カリウム、リン酸三カリウム、亜リン酸一カリウム、亜リン酸二カリウム、次亜リン酸カリウム等のカリウム塩、
リン酸一リチウム、リン酸二リチウム、リン酸三リチウム、亜リン酸一リチウム、亜リン酸二リチウム、次亜リン酸リチウム等のリチウム塩、
リン酸二水素バリウム、リン酸水素バリウム、リン酸三バリウム、次亜リン酸バリウム等のバリウム塩、
リン酸一水素マグネシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸三マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩、
リン酸二水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸三カルシウム、次亜リン酸カルシウム等のカルシウム塩、
リン酸亜鉛、亜リン酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛等の亜鉛塩等が挙げられる。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
まず、本件発明1及び甲1発明は、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、整泡剤を含有し、ポリウレタンフォームを形成するための硬化性組成物である点で共通する。甲1発明の「三量化触媒」は、本件発明1の「触媒」に相当する。甲1発明の「赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤」は、本件発明1の「リン化合物」に相当する。
甲1発明の「インデックス」は、「[イソシアネートの当量数]×100÷[ポリオールの当量数+水の当量数]」で定義され(上記(1)ア(エ))、本件明細書に記載された「イソシアネート指数」の定義と同じであり、本件発明1の「イソシアネート指数」に相当し、甲1発明の「前記ウレタン樹脂に含まれるポリイソシアネート化合物およびポリオール化合物のインデックスが、150?700の範囲であり」は、本件発明1の「イソシアネート指数が150以上であり」と、150?700の範囲で重複一致する。

そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「ポリウレタンフォーム形成用の硬化性組成物であって、ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、リン化合物、及びポリイソシアネート化合物を含有し、イソシアネート指数が150?700である、硬化性組成物。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1a:リン化合物に関して、本件発明1は、「ホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステル化合物を含む」のに対して、甲1発明は、「赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤を含む」点。
相違点1b: 硬化性組成物により形成されるポリウレタンフォームが、本件発明1は「硬質」であるのに対して、甲1発明は、硬質であるかどうかが不明である点。

イ 検討
相違点1aについて検討する。
(ア)甲1発明と甲1の記載に基づく容易想到性について
甲1発明は、燃焼した際の発熱量が小さく、難燃性に優れるウレタン樹脂組成物を提供することを目的とするものであり(上記(1)ア(ウ))、赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤を必須とするものである。
そして、甲1には、上記リン酸塩含有難燃剤の具体例としてモノリン酸塩等があり、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩が記載されており、これは本件発明1の「ホスフィン酸塩化合物」に相当するものである。
しかしながら、甲1には、次亜リン酸塩以外のリン酸含有難燃剤も列記されており、その中で、次亜リン酸塩は、好ましいリン酸含有難燃剤ではなく、単なる例示にとどまるものであり(上記(1)ア(オ))、次亜リン酸塩を用いた実施例や優れた作用効果があることは何ら記載されていない。
また、甲1には、上記赤リンおよびリン酸塩含有難燃剤以外に、リン酸エステル等の難燃剤を併用することができ、硬化前の組成物中の粘度を低下させる効果と初期の発熱量を低減させる効果が高いモノリン酸エステルを使用することが好ましいことも記載されている(上記(1)ア(カ))。
しかしながら、甲1には、リン酸エステルを用いた実施例は記載されておらず、ましてや、上記次亜リン酸塩とリン酸エステルを併用することやそれによる優れた作用効果についても何ら記載されていない。
そうすると、甲1発明において、甲1に記載された事項に基づき、次亜リン酸塩であるホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステルを併用することが動機づけられるとはいえない。

(イ)甲1発明と甲2?甲4の記載に基づく容易想到性について
甲2には、特許請求の範囲として、「質量パーセントで、原料成分は以下を含む:ポリエーテルポリオール20?30%、触媒35?45%、発泡剤1?5%、整泡剤1?5%、難燃剤化合物2?8%、ナノ相乗剤25?35%、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート2?5% ここで、難燃剤化合物は、難燃剤と炭素化剤との重量比1:1から5:1の混合物であり、難燃剤は、リン酸エステル、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン化合物、メラミン、シアヌル酸塩、次亜リン酸塩(ホスフィン酸塩)の1つ以上の組み合わせ」である難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料が記載されている。
また、甲2には、実施例1として、ポリエーテルポリオール4110を22%、エチレンジアミン3%、水3%、シリコーン整泡剤2%、ジエチルホスフィン酸アルミニウム11%、ピロリン酸ピペラジン8%、DMMP11%、ナノモレキュラシーブ5%、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート35%からなる難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料、及び、実施例4として、ポリエーテルポリオール4110を21%、エチレンジアミン2%、水4%、シリコーン整泡剤2%、フェニルホスフィン酸アルミニウム10%、ペンタエリスリトールケージリン酸10%、BDP10%、ナノエキスパンドパーライトパウダー3%、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート38%からなる難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料が記載されている。ここで、エチレンジアミンは触媒であり、水は発泡剤であり、ピロリン酸ピペラジン及びペンタエリスリトールケージリン酸は炭素化剤であり、ナノモレキュラシーブ及びナノエキスパンドパーライトパウダーはナノ相乗剤である(上記(1)イ(ウ))。

しかしながら、実施例1及び4は、触媒、難燃剤化合物、ナノ相乗剤及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートの質量パーセントが特許請求の範囲と整合せず、甲2の記載全体を見ても、特許請求の範囲と上記実施例のいずれの配合割合が正しく記載されたものであるのかは不明であるから、甲2は、その記載に重大な瑕疵があるといえる。そして、甲2には、実施例1及び4の性能試験結果が記載されているが、どのような配合割合のポリウレタン硬質フォーム材料に対して行った試験結果であるのかが不明である。
そうすると、甲2には、原料成分が特定され、配合割合は正しいといえず、作用効果が不明な難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料が記載されており、このような甲2に記載された事項に基づいて、甲1発明において、「ホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステル化合物を含む」ことが動機づけられるとはいえない。

また、甲3には、優れた機械的特性を有し、優れた難燃性を示す難燃の熱可塑性ポリウレタンを提供することを目的とした、熱可塑性ポリウレタン、シアヌル酸メラミン、ホスフィン酸塩及びリン酸エステルを含む組成物が記載され(上記(1)ウ(ア)及び(イ))、甲4には、高度な難燃性能を有し、製品の着色性を阻害せず、高温・高湿条件下でも耐加水分解性と耐ブリードアウト性を兼ね備えた難燃性ポリウレタン樹脂及び難燃性合成皮革を提供することを目的とした、ホスフィン酸塩化合物を添加したポリウレタン樹脂組成物が記載されている(上記(1)エ(ア)及び(イ))。
しかしながら、甲3及び甲4に記載された上記組成物は、ポリウレタンを含む組成物であって、ポリオール化合物及びポリシアネート化合物を含む硬化性組成物ではないし、硬質ポリウレタンフォーム形成用の組成物でもなく、また、甲1発明の課題と共通する課題を解決しようとするものでもない。

そうすると、甲1発明において、甲2?甲4の記載に基づき、ホスフィン酸塩化合物および有機リン酸エステル化合物を添加することが動機づけられるとはいえない。

そして、本件発明1は、「低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を有するフォームが形成できる」(本件明細書の段落【0009】)という効果を奏するものであり、その効果は、実施例及び比較例(段落【0047】?【0057】)により具体的に理解することができる。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、相違点1bについて検討するまでもなく、甲1に記載された発明、並びに、甲1?甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1を直接引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたように、甲1に記載された発明、並びに、甲1?甲4に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、被覆方法の発明である本件発明3も、本件発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたように、甲1に記載された発明、並びに、甲1?甲4及び甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、甲1に記載された発明、並びに、甲2?甲4及び甲10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由1-1によっては、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

2 甲2を主引用文献とする取消理由1-2について
(1)甲号証に記載された事項
ア 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
甲2には、上記1(1)イのとおりの記載がある。
そして、上記1(2)イで述べたように、甲2には、特許請求の範囲と実施例1及び4の配合割合が整合しない重大な瑕疵があるから、特許請求の範囲及び上記実施例に記載された所定の配合割合を有する難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料が記載されているとは認められない。しかしながら、特許請求の範囲に記載された難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料と、上記実施例に記載された難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料とは、原料成分として、ポリオールポリエーテル、触媒、発泡剤、整泡剤、難燃剤化合物、ナノ相乗剤及びポリメチレンポリフェニルイソシアネートを含むものである点では整合する。
そうすると、甲2には、実施例1及び4に着目し、次の発明が記載されているといえる。

「ポリエーテルポリオール4110、エチレンジアミン、水、シリコーン整泡剤、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ピペラジンピロリン酸、DMMP、ナノモレキュラシーブ、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料。」(以下、「甲2発明1」という。)

「ポリエーテルポリオール4110、エチレンジアミン、水、シリコーン整泡剤、フェニルホスフィン酸アルミニウム、ペンタエリスリトールケージリン酸、BDP、ナノエキスパンドパーライトパウダー、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートからなる難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料。」(以下、「甲2発明2」という。)

イ 甲5に記載された事項
甲5には次の記載がある。
(ア)「請求の範囲
[1] 有機ポリイソシアネート(A)と水(B)とを、全配合物に対して10?70質量%の難燃剤(C)、整泡剤(D)、イソシアヌレート化反応触媒を含む触媒(E)の存在下、かつ、全イソシアネート反応性基の5モル%以下のポリオールの存在下又は不存在下で、水のイソシアネート反応性当量を9として計算したときのイソシアネートインデックス(全イソシアネート基/全イソシアネート反応性基のモル比の100倍)が150以上の条件下で、ウレア化反応及びイソシアヌレート化反応により発泡・硬化させることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」

(イ)「[0001] 本発明は、硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。更に詳細には、ポリオールを用いないことで、酸素指数が30以上という難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームが得られる該硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関する。
・・・
[0003] 有機ポリイソシアネートとポリオールを反応・発泡させる際、イソシアネートインデックスを高くして、触媒にイソシアヌレート化触媒を用いて得られるポリイソシアヌレートフォームは、その優れた特性によって断熱材、軽量構造材、吸音材として広く利用されており、ポリウレタン架橋中にイソシアヌレート環を導入することによって高耐熱性、耐加水分解性、更に寸法安定性を示すが、しかしながら高温加熱時における燃焼時に発煙量が多い、燃焼残査が少なく、炭化形成層も少ないため十分な防火性能が得られないために、その用途に制限を受けている。」

(ウ)「[0007] 本発明は、物性が良好であり、酸素指数が高く(30以上)、準不燃規格をも達成できる硬質ポリウレタンフォームの提供を目的とする。」

(エ)「[0018] 本発明に用いられる水は(B)、発泡剤とイソシアネート基反応性物質の役割を果たすものである。すなわち、水とイソシアネート基が反応すると、アミノ基と炭酸ガスが発生する。この炭酸ガスは、反応系を発泡させるものである。アミノ基は、反応系内に存在するイソシアネート基と反応してウレア基になることで、高分子化を果たすことになる。
[0019] 反応の際のイソシアネートインデックス(イソシアネート基/活性水素×100)は、300?600が好ましく、特に350?500が最も好ましい。イソシアネートインデックスが低すぎる場合は、得られる硬質ポリウレタンフォーム中に存在するイソシアヌレート基の量が少なくなるため、難燃性が不十分となる。高すぎる場合は、得られる硬質ポリウレタンフォームが脆くなりやすい。
[0020] 本発明は、イソシアネート反応性化合物としてのポリオールを意図して添加はしないが、触媒の溶剤あるいはイソシアネート反応性基を有する整泡剤から混入することを妨げるものではない。混入してくるイソシアネート反応性基のモル数は、全イソシアネート反応性基のモル数の5%を超えてはならない。」

(オ)「[0021] 本発明においては、難燃剤(C)が必須となる。イソシアヌレート基だけでは、難燃性が不十分であるためである。本発明に用いられる難燃剤(C)としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、ジエチルフェニルホスフォネート、ジメチルフェニルホスフォネート、レゾルシノールジフェニルホスフェート、トリス(クロロプロピル
)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等のリン酸エステル類、亜リン酸エチル、亜リン酸ジエチル等の亜リン酸エステル類のリン酸エステル系化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の金属水酸化物、メラミン樹脂、クレー、三酸化アンチモン、亜鉛華、炭酸カルシウム等が挙げられる。
[0022] 混合の容易さから難燃剤(C)は、リン酸エステル系の常温液状のものが好ましい。(C)の使用量は、全配合物に対する含有量で、10?70質量%であり、好ましくは15?50質量%である。」

ウ 甲6に記載された事項
甲6には次の記載がある。
(ア)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が20?80kg/m^(3)の範囲であること、ハロゲン化炭化水素及び難燃剤を含有すること、発泡セル形状が長軸と短軸を有する形状であること、並びに発泡セルの長軸と着火面の成す角度を45度よりも小さくした場合の、ISO-5660-1に準拠するコーンカロリーメータを用いた難燃性試験において、加熱強度が50kW/m^(2)の条件で測定する最大発熱速度が70kW/m^(2)未満、及び総発熱量が10.2MJ/m^(2)未満であることを特徴とする硬質ウレタンフォーム。
【請求項2】
・・・
【請求項3】
ポリオールとポリイソシアネートとを、ハロゲン化炭化水素を含有する発泡剤及び触媒の存在下、イソシアネートインデックスが200以上の条件下で反応させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬質ウレタンフォームの製造方法。」

(イ)「【0003】
硬質ウレタンフォームの難燃性を向上するためには、イソシアネート三量化触媒を用いることによるイソシアヌレート環構造の導入、また汎用のリン酸エステル系難燃剤の添加によって行われる(例えば、特許文献1?4参照)。また、更に高度な難燃性が要求される場合に於いては、難燃剤として赤燐やポリリン酸アンモニウム等の固体難燃剤が使用されることが知られている(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、これら特許文献に記載の技術で得られる硬質ウレタンフォームでは、難燃性能が不十分となる場合がある。そのため、製造される硬質ウレタンフォームの難燃性能を最大限に発現させることが重要である。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、硬質ウレタンフォームの難燃性能を最大限に発現させるために、特定の発泡セル構造を有する硬質ウレタンフォームを提供することである。」

(ウ)「【0019】
本発明の硬質ウレタンフォームは、難燃剤を含有する。難燃剤としては、特に限定するものではないが、例えば、常温で液体の難燃剤(液体難燃剤)、常温で固体の難燃剤(固体難燃剤)等が挙げられる。
【0020】
液体難燃剤としては、具体的には、リン酸とアルキレンオキシドとの付加反応によって得られるプロポキシル化リン酸、プロポキシル化ジブチルピロリン酸等の含リンポリオール等の反応型難燃剤;トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類;トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート等のハロゲン含有リン酸エステル類等が例示される。
【0021】
また、固体難燃剤としては、具体的には、ジブロモプロパノール、ジブロモネオペンチルグリコール、テトラブロモビスフェノールA、2,4,6-トリブロモフェノール、2,2’,6,6’-テトラブロモビスフェノール-S、デカブロモジフェニルエーテル、ヘキサブロモベンゼン、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、ヘキサブロモシクロドデカン等のハロゲン含有有機化合物類;臭素化ポリスチレン、臭素化エポキシ樹脂、臭素化カーボネート樹脂等のハロゲン化ポリマー類;赤リン等のリン単体;酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸アルミニウム等の無機化合物;等が例示される。これらのうち、難燃剤の分散性の点で液体難燃剤が好ましい。液体難燃剤としては、好ましくはハロゲン含有リン酸エステル類であり、トリスクロロプロピルホスフェートが安定性が良く、難燃性が高いため特に好ましい。」

(エ)「【0045】
本発明において、イソシアネートインデックスは、(全ての原料の活性水素基1当量あたりの、イソシアネート成分中のイソシアネート基の当量数)×100で求められる。」

エ 甲7に記載された事項
甲7には次の記載がある。
(ア)「特許請求の範囲
1.触媒、気泡安定剤及びクロロプロパンを含む発泡剤の存在下に於てイソシアネートと活性水素含有化合物とを反応させる硬質ポリウレタン及びポリイソシアヌレートフォームの製造法であって、用いられる気泡安定剤が主として非珪素型である製造法。」

(イ)「ポリウレタンフォーム製造のための発泡剤として実験室規模でのクロロプロパンの使用は既にMobay Chemical Companyのベルギー国特許第656,018号中に記載されている。
しかし、クロロプロパンを発泡剤として用いることによる工業的規模でのかかるフォームの製造時には、特に約30kg/m^(3)の最も通常な密度を有するフォームについて重大な収縮が観察されることがわかった。むしろ予期せぬ方法で、実験室規模では、該ベルギー国特許の場合のようにかかる収縮が観察され得ないことが確定された。
従って、本発明の目的は工業的又は半工業的規模でのポリウレタンフォーム及び(又は)ポリイソシアネートフォームの製造のこの重大な欠点を除去することである。」(3頁左下欄7行?右上欄1行)

(ウ)「ポリウレタン製造のためには、化学量論比に近い指数すなわち95?110を有するイソシアネートが使用されるが、ポリイソシアヌレートの製造にはイソシアネート自体の三量化反応を許すためにずっと高い指数が所要である。このイソシアネート指数は通常150より高い。」(4頁右下欄9?14行)

オ 甲8に記載された事項
甲8には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】
ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム形成用組成物を、モールド内で発泡、反応させることでポリウレタンフォームを成形する工程を含む硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記組成物が、更に、平均粒径が0.05?10μm、比表面積0.2?4.5m^(2)/gの紛体を、前記ポリヒドロキシ化合物100質量部に対して25?70質量部含み、且つ 前記ポリウレタンフォームを成形する工程が、実質的に密閉されたモールド内で行われることを特徴とする硬質ポリウレタンフォームの製造方法。」

(イ)「【0008】
従って、本発明の目的は、一般的なモールド成形により、良好に成形可能で、異方性が小さく、有効歪範囲が大きく、応力吸収性能の高い硬質ポリウレタンフォームの製造方法、その方法により得られる硬質ポリウレタンフォーム、及びその硬質ポリウレタンフォームからなる衝撃吸収材を提供することにある。」

(ウ)「【0020】
一方、本発明においてポリウレタンフォーム形成用組成物に配合するポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネ-ト(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系イソシアネート類、イソホロンジイソシアネート等の脂環族系イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系イソシアネート類、これらの粗製物などの1種を単独で又は2種以上を併用して使用できる。尚、ポリヒドロキシ化合物及び水等の活性水素を有する化合物の全量に対するポリイソシアネート化合物の使用量、即ちイソシアネート指数は、通常の硬質ウレタンフォームを製造する場合は80?130の範囲、イソシアヌレート変性硬質ウレタンフォームを製造する場合は150?350の範囲とすることが望ましい。」

カ 甲9に記載された事項
甲9には次の記載がある。
(ア)「【請求項1】 有機ポリイソシアネート(A)、ポリオール(B)、三量化触媒(C)、発泡剤(D)、整泡剤(E)、難燃剤(F)、助剤(G)を使用するポリイソシアヌレートフォームの製造方法において、ポリオール(B)が、少なくともフタル酸系ポリエステルポリオール(b1)を含み、全イソシアネート基と全活性水素基の当量比が1.5?8.0であり、助剤(G)として、下記一般式(1)で示される化合物の1種又は2種以上を該ポリイソシアヌレートフォーム原料に対して0.2?4.0質量%添加することを特徴とするポリイソシアヌレートフォームの製造方法。
【化1】
R_(1)-(O-R_(3))_(n)?O-R_(2) (1)
R_(1)、R_(2)は同じでも異なっていてもよい炭素数1以上の1価の炭化水素基を示す。
R_(3)は1種又は2種以上の炭素数2以上の2価の炭化水素基を示す。
nは1以上の整数を示す。」

(イ)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、特に発泡剤に水を用いてポリイソシアヌレートフォームを製造する際に、反応バランスや反応生成物の組成を変えることなく簡便に、発泡反応時の原液の混合性及び流れ性を向上させ、フォーム発泡時の初期及び恒久的な接着強さを有する寸法安定性、燃焼性の良好なポリイソシアヌレートフォームの製造方法を提供することである。」

(ウ)「【0036】本発明に使用される難燃剤(F)としては、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート(略称TCPP)、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、ポリリン酸等のリン酸エステルや亜リン酸エステル等のリン酸化合物等、塩素化パラフィン等が挙げられる。この難燃剤の使用量は、該ポリイソシアヌレートフォーム原料に対して、0.1?30質量%である。」

(エ)「【0039】本発明における全イソシアネート基と全活性水素基の当量比(イソシアネートインデックスはこの当量比を100倍したもの)としては1.5?8.0であり、特に好ましくは1.6?5.0、最も好ましくは1.8?3.5の範囲で製造される。活性水素基とは、イソシアネート反応性基を意味し、水酸基やアミノ基、カルボン酸基等であり、更には水も活性水素基を有する化合物である。この当量比が大きくなると、硬さ、難燃性が向上するが、もろさや接着性が悪くなりやすい。この範囲で製造されたポリイソシアネートフォームはウレタン結合を含有しており、本発明のポリイソシアヌレートフォームは、ウレタン結合とイソシアヌレート構造を有するフォームであり、前記当量比が大きくなるに伴ってイソシアヌレート構造が多くなる。」

(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲2発明1を対比する。
甲2発明1の「ポリエーテルポリオール4110」、「ポリメチレンポリフェニルイソシアネート」、「シリコーン整泡剤」及び「難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料」は、本件発明1の「ポリオール化合物」、「ポリイソシアネート化合物」及び「硬質ポリウレタンフォーム形成用の硬化性組成物」に相当する。また、「エチレンジアミン」は触媒であり、「水」は発泡剤であるから(上記1(1)イ(ウ))、甲2発明1の「エチレンジアミン」及び「水」は、本件発明1の「触媒」及び「発泡剤」に相当する。
そして、甲2発明1の、「DMMP」は、ジメチルメチルホスホネートであって、本件発明1でいう有機リン酸エステル化合物の一種であることは本願優先日時点の技術常識であり、甲2の上記(1)イ(ウ)の記載とも符合する。また、甲2発明1の「ジエチルホスフィン酸アルミニウム」はホスフィン酸塩化合物である。そうすると、甲2発明1の「DMMP」及び「ジエチルホスフィン酸アルミニウム」は、本件発明1の「リン化合物」である「ホスフィン酸塩化合物」及び「有機リン酸エステル化合物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明1は、「硬質ポリウレタンフォーム形成用の硬化性組成物であって、
ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、リン化合物及びポリイソシアネート化合物を含有し、上記リン化合物として、ホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステル化合物を含む、硬化性組成物」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2a:本件発明1は「イソシアネート指数が150以上」であるのに対して、甲2発明1はイソシアネート指数が不明である点。

また、本件発明1と甲2発明2を対比すると、甲2発明2の「BOP」は、「ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)であって有機リン酸エステル化合物の一種であることは本願優先日時点の技術常識であり、甲2の上記(1)イ(ウ)の記載とも符合する。また、甲2発明2の「フェニルホスフィン酸アルミニウム」はホスフィン酸塩化合物である。そうすると、甲2発明2の「BOP」及び「フェニルホスフィン酸アルミニウム」は、本件発明1の「リン化合物」である「有機リン酸エステル化合物」及び「ホスフィン酸塩化合物」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲2発明2は、「硬質ポリウレタンフォーム形成用の硬化性組成物であって、
ポリオール化合物、発泡剤、触媒、整泡剤、リン化合物及びポリイソシアネート化合物を含有し、上記リン化合物として、ホスフィン酸塩化合物と有機リン酸エステル化合物を含む、硬化性組成物」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点2b:本件発明1は「イソシアネート指数が150以上」であるのに対して、甲2発明2はイソシアネート指数が不明である点。

イ 検討
(ア)相違点2aについて
甲5には、「硬質ポリウレタンフォームの製造方法」と称する製造方法が記載されているが、これは、上記2(1)イ(イ)及び(エ)によると、ポリオールを意図して添加せず、水をイソシアネート基反応性物質として用いて、ウレア化反応により高分子化を果たす硬質フォームの製造方法であって、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物を必須成分とする甲2発明1の組成物を用いる製造方法とは、イソシアネート基反応物質も高分子化のメカニズムも異なるものであるといえる。
そうすると、甲2発明1において、甲5に記載された事項を適用することが動機付けられるとはいえない。

甲6には、ポリオールとポリイソシアネートとを、ハロゲン化炭化水素を含有する発泡剤及び触媒の存在下、イソシアネートインデックスが200以上の条件下で反応させる硬質ウレタンフォームの製造方法、その効果を損なわない範囲で、水等のハロゲン化炭化水素以外の発泡剤も使用することも可能であること、水の使用量が、ポリオール100重量部に対して2重量部を超える場合には難燃性が低下するため好ましくないことが記載されている。そして、甲2発明1は、ハロゲン化炭化水素を用いるものではなく、水のみを発泡剤に使用するものであり、甲6に記載されたイソシアネートインデックスが200以上の条件下で反応させる場合に適合しないから、甲2発明1において、甲6に記載された事項を適用することが動機付けられるとはいえない。

甲7には、触媒、気泡安定剤及びクロロプロパンを含む発泡剤の存在下において硬質ポリウレタンフォーム又は硬質ポリイソシアネートフォームを製造方法において、クロロプロパンを発泡剤として使用する場合の収縮を改善することが記載されている(上記2(1)エ(イ))。そして、甲2発明1はクロロプロパンを含むものではないし、甲2発明1が「良好な環境保護、難燃性能、断熱性能および機械的特性を有する難燃性ポリウレタン硬質フォーム材料を提供すること」(上記1(1)イ(イ))を課題とすることが一定程度理解できるものの、甲7に記載された事項とは課題が異なるものであるから、甲2発明1に甲7に記載された事項を適用することが動機づけられるとはいえない。

甲8には、一般的なモールド成形により、良好に成形可能で、異方性が小さく、有効歪範囲が大きく、応力吸収性能が高い硬質ポリウレタンフォームを製造することを課題とし、ポリヒドロキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム形成用組成物に、所定の平均粒径及び比表面積を有する炭酸カルシウム等の粉体を所定の量で添加することが記載されている(上記2(1)オ(ア))。甲8に記載された組成物は、甲2発明1に含まれない上記粉体を必須成分とするものであるし、甲2発明1と共通する課題を有するとはいえないものである。
また、甲8には、上記組成物のイソシアネート指数を、通常の硬質ウレタンフォームを製造する場合は80?130の範囲とし、イソシアヌレート変性硬質ウレタンフォームを製造する場合は150?350の範囲とすることが望ましいことも記載されているが(上記2(1)オ(ウ))、甲2発明1は、ウレタン化触媒として公知のエチレジアミンを用いるものであり、イソシアヌレート変性硬質ウレタンフォームの製造を意図したものであるかは明らかではない。
そうすると、甲2発明1において、甲8に記載された事項を適用することが動機づけられるとはいえない。

甲9には、上記(1)カ(ア)から、有機ポリイソシアネート、フタル酸系ポリエステルポリオール、酢酸カリウム等の三量化触媒、水等の発泡剤、有機珪素系界面活性剤である整泡剤、難燃剤、助剤を含有するポリイソシアヌレートフォーム原料、及び、全イソシアネート基と全活性水素基の当量比(イソシアネートインデックスはこの当量比を100倍したもの)が1.5?8.0であることが記載されている。甲9に記載のポリイソシアネート原料は、フタル酸系ポリエステルポリオール及び三量化触媒を必須成分とするものであり、ポリエーテルポリオール及びウレタン化触媒として公知のエチレンジアミンを必須成分とする甲2発明1と、ポリオール化合物及び触媒が異なり、得ようとするフォームも異なるものである。
そうすると、甲2発明1において、甲9に記載された事項を適用することが動機づけられるとはいえない。

そして、上記1(2)イで述べたように、本件発明1は低熱伝導性及び耐熱性で優れた効果を奏するものであり、その効果は実施例及び比較例の記載から具体的に理解できるものである。

(イ)相違点2bについて
相違点2aについて述べた理由と同じ理由により、甲2発明2において、甲5?甲9に記載された事項を適用することが動機づけられるとはいえない。甲2発明2は、触媒にイソシアヌレート化触媒として公知の酢酸カリウムを用いるものであるが、甲8に記載された組成物は、甲2発明2に含まれない上記粉体を必須成分とするものであるし、甲2発明2と共通する課題を有するとはいえないものである。また、甲9に記載されたポリイソシアネート原料は、甲2発明2に含まれないフタル酸系ポリエステルポリオールを必須成分とするものである。

ウ 小括
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明、並びに甲2、及び甲5?甲9の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)本件発明2及び3について
本件発明2は、本件発明1を直接引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたように、甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲5?甲9に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
また、被覆方法の発明である本件発明3も、本件発明1を直接または間接的に引用するものであり、上記(2)で本件発明1について述べたように、甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲5?甲10に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(4)まとめ
以上のとおり、本件発明1?3は、甲2に記載された発明、並びに、甲2及び甲5?甲10に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由2(進歩性)によっては、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由2(サポート要件)について
(1)発明の詳細な説明に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には、次の事項が記載されている。
ア 「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(特表2016-531966号公報)等においては、ポリオール系化合物、イソシアネート系化合物、及び固体状難燃剤を含む組成物によって、低熱伝導性のフォームに耐熱性等を付与する試みがなされている。この固体状難燃剤については、トリフェニルホスフェート等のリン系難燃剤、デカブロモジフェニルオキシド等のハロゲン系難燃剤、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水和物系難燃剤等が記載されている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献に記載のような組成物では、形成されるフォームの耐熱性の点において改善の余地がある。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、本発明の主たる目的は、低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を有するフォームを形成させることである。」

イ 「【0034】
本発明の硬化性組成物では、イソシアネート指数が好ましくは150以上、より好ましくは180?800、さらに好ましくは200?500、最も好ましくは250?400となるように、上記ポリオール化合物と上記ポリイソシアネート化合物等を混合することが望ましい。イソシアネート指数がこのような範囲内であれば、耐熱性等の点で好適である。なお、イソシアネート指数とは、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量数を、活性水素含有成分(ポリオール化合物、及び水等)の活性水素の総当量数で除した数値の100倍で表されるものである。」

ウ 「【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0048】
第1液として、表1に示す重量割合にて下記原料を均一に混合したもの(第1液1?35)を用意した。第2液としては、ポリメリックMDIからなるもの(第2液1)を用意した。なお、表1において、触媒については有効成分の量を記載している。
・ポリオール化合物1:芳香族ポリエステルポリオール(テレフタル酸系ポリエステルポリオール、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g)
・ポリオール化合物2:脂肪族ポリエステルポリオール(コハク酸系ポリエステルポリオール、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:100mgKOH/g)
・ポリオール化合物3:芳香族ポリエーテルポリオール(マンニッヒ変性ポリエーテルポリオール、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:350mgKOH/g)
・ポリオール化合物4:芳香族/脂肪族ポリエステルポリオール(フタル酸/アジピン酸系ポリエステルポリオール、酸価:0mgKOH/g、水酸基価:350mgKOH/g)
・ポリオール化合物5:芳香族ポリエステルポリオール(フタル酸系ポリエステルポリオール、酸価:160mgKOH/g、水酸基価:250mgKOH/g)
・発泡剤1:ハイドロクロロフルオロオレフィン
・発泡剤2:ハイドロフルオロオレフィン
・発泡剤3:水(水酸基価:6233mgKOH/g)
・触媒1:ヌレート化触媒(テトラアルキルアンモニウム有機酸塩)
・触媒2:樹脂化触媒(1,2‐ジメチルイミダゾール)
・触媒3:泡化触媒(ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル)
・リン化合物1:ホスフィン酸塩化合物(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、平均粒径4μm、密度1.35g/cm^(3))
・リン化合物2:ホスフィン酸塩化合物(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、平均粒径10μm、密度1.35g/cm^(3))
・リン化合物3:ホスフィン酸塩化合物(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウム、平均粒径20μm、密度1.35g/cm^(3))
・リン化合物4:有機リン酸エステル化合物(トリス(β-クロロプロピル)ホスフェート、密度1.29g/cm^(3))
・二重結合化合物1:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度:10mmol/g、水酸基価:0mgKOH/g)
・二重結合化合物2:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度:11mmol/g、水酸基価:0mgKOH/g)
・二重結合化合物3:エチレン性不飽和二重結合含有化合物(ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレン性不飽和二重結合濃度:10mmol/g、水酸基価:25mgKOH/g)
・整泡剤:シリコーン系整泡剤
【0049】
第1液、第2液をそれぞれ40℃に加温し、これらを表2に示すイソシアネート指数となるように混合し、得られた混合液を基材(スレート板)に塗工し、発泡させて、基材の片面全体がフォームで被覆された試験体(厚み50mm)を得た。得られた試験体について下記の方法で各試験を実施した。第1液と第2液の組み合わせ、及びその結果を表2に示す。
【0050】
(1)フォーム形成性
形成されたフォームの状態を目視にて観察した。評価基準は以下のとおりである。
◎:均質なフォームが形成された。
○:ほぼ均質なフォームが形成された。
△:フォームに一部異常(不均一発泡、付着不良等)が認められた。
×:フォームに異常が認められた。
【0051】
(2)熱伝導率
試験体のフォーム部分を切り出し、熱伝導率計を用いて、熱伝導率を測定した。評価基準は以下のとおりである。
○:熱伝導率が0.03W/(m・K)以下
×:熱伝導率が0.03W/(m・K)超
【0052】
(3)耐熱性試験
ISO 5660に規定されるコーンカロリーメーターを用いて実施した。なお、加熱強度は50kW/m^(2)、加熱時間は5分、10分、20分でそれぞれ行った。評価項目及び評価基準は、以下のとおりである。
【0053】
(評価項目)
(3-1)寸法変化
A:試験後の厚み方向の寸法変化が5mm以下
B:試験後の厚み方向の寸法変化が10mm以下
C:試験後の厚み方向の寸法変化が10mm超20mm以下
X:試験後の厚み方向の寸法変化が20mm超
(3-2)総発熱量
A:総発熱量が8MJ/m^(2)以下
X:総発熱量が8MJ/m^(2)超
(3-3)最大発熱速度
A:最大発熱速度が200kW/m^(2)以下
X:最大発熱速度が200kW/m^(2)超
【0054】
(評価基準)

【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
表2の結果から明らかなように、本発明の硬化性組成物(実施例1?35)によるフォームは、熱伝導率が低く、耐熱性試験において、寸法変化、総発熱量、最大発熱速度等を十分に抑制することができ、さらにフォーム内に健全部を残存させることができ、優れた耐熱性を示すものであった。」

(2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。この点について、以下に検討する。

(3)本件発明が解決しようとする課題
本件発明が解決しようとする課題は、上記(1)アによると、「低熱伝導性、耐熱性等において優れた性能を有するフォームを形成させる」硬化性組成物及びその被覆方法を提供することであると解される。

(4)当審の判断
本件明細書には、本件発明1の硬化性組成物において、イソシアネート指数を150以上であれば耐熱性の点で好ましいことが記載され(上記(1)イ)、実施例において、イソシアネート指数が240(実施例34)?420(実施例35)の範囲になるように硬化性組成物を調製し、塗工、発泡した試験片を用いて、フォーム形成性、熱伝導性、及び耐熱性を評価している。これは、イソシアネート指数150以上の下限近傍における耐熱性を評価することを目的として行ったものであると解される。
そして、イソシアネート指数が240である実施例34において、耐熱性の総合評価はCであり、段落【0054】によると、加熱時間5分で、試験後の厚み方向の寸法変化がB(5mm超10mm以下)であり、総発熱量がA(8MJ/m^(2)以下)であり、最大発熱速度がA(200kW/m^(2)以下)であったものであり、優れた耐熱性を示すものであり、熱伝導性及びフォーム形成性でも優れたものであると解される。そして、イソシアネート指数が150以上240未満及び480超である場合に、上記課題を解決できないと解すべき本件出願日時点の技術常識も見当たらない。
そうすると、発明の詳細な説明は、本件発明が上記課題を解決することを当業者が認識できるように記載されているということができ、取消理由3(サポート要件)によっては、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
なお、申立人は、本件発明1?3において、イソシアネート指数が150以上240未満及び420超である場合に上記課題を解決することを明らかにしていない旨の主張に関して、その技術的根拠を何ら具体的に提示していない。

第5 むすび
以上のとおり、申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すことはできない。
他に、本件特許の請求項1?3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-07-03 
出願番号 特願2018-36183(P2018-36183)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C08G)
P 1 651・ 537- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 三原 健治  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 近野 光知
橋本 栄和
登録日 2019-08-09 
登録番号 特許第6568250号(P6568250)
権利者 株式会社エフコンサルタント
発明の名称 硬化性組成物及び被覆方法  
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