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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08G
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
管理番号 1364027
異議申立番号 異議2020-700104  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-02-21 
確定日 2020-07-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第6563948号発明「ポリエステル及びポリエステルを調製するための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6563948号の請求項1ないし18に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6563948号(請求項の数18。以下、「本件特許」という。)は、平成27年3月11日(優先権主張:平成26年3月11日(2件))を国際出願日とする出願であって、令和1年8月2日に設定登録されたものである(特許掲載公報の発行日は、令和1年8月21日である。)。
その後、令和2年2月21日に、本件特許の請求項1?18に係る特許に対して、特許異議申立人である鈴木敏明(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされた。

第2 特許請求の範囲の記載
特許第6563948号の特許請求の範囲の記載は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?18に記載される以下のとおりのものである。(以下、請求項1?18に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明18」といい、まとめて「本件発明」ともいう。また、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)

「【請求項1】 エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルであって、少なくとも0.45dL/gの固有粘度を有し、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率が、0.10から0.70の範囲内である、ポリエステル。
【請求項2】 1.0dl/g以下、好ましくは0.45から0.75dL/gの範囲内の固有粘度を有する、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】 前記カルボン酸末端基の相対含有率が、0.14から0.65の範囲内である、請求項1又は2に記載のポリエステル。
【請求項4】 前記カルボン酸末端基の量が、15から122meq/kgの範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項5】 400nmでジクロロメタン:ヘキサフルオロイソプロパノール 8:2(vol/vol)混合物中の30mg/mL溶液として測定される吸光度が、0.08以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項6】 1.9から2.6の範囲内の多分散指数を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項7】 示差走査熱量測定(DSC)によって測定される結晶化度が、少なくとも25J/gである、請求項1から6のいずれか一項に記載のポリエステル。
【請求項8】 少なくとも215℃の融点を有する、請求項7に記載のポリエステル。
【請求項9】 水分含有量が、100ppmw以下である、請求項1から8のいずれか一項に記載のポリエステルを含む組成物。
【請求項10】 ポリエステルの調製のための方法であって、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを含む出発混合物をエステル化に供してエステル組成物を形成し、ここで、出発混合物中における2,5-フランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比が1:1.01から1:1.15であり、得られたエステル組成物を重縮合触媒の存在下、減圧下での重縮合に供して重縮合物を得、2,5-フランジカルボン酸とエチレングリコールとの反応中に形成された水及びいくらかのエチレングリコールを蒸留システムにおいて除去し、水とともに除去されたエチレングリコールを水から分離し、少なくとも部分的に再生利用する、方法。
【請求項11】 2,5-フランジカルボン酸とエチレングリコールとの間のエステル化反応が、160から240℃の温度及び0.9から5barの圧力で、0.5から4時間の間行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】 前記重縮合が、20から700mbarの圧力で行われる前重縮合反応及び0.05から20mbarの圧力で行われる重縮合反応を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】 前記前重縮合及び重縮合反応の合わせた期間が、1.5から4時間の範囲内である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】 前記重縮合工程中に、形成されるエチレングリコールをエステル組成物から除去し、これを重縮合に供する、請求項10から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】 前記重縮合工程が、重縮合触媒の存在下で行われる、請求項10から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】 前記重縮合触媒が、スズ、亜鉛、チタン及びアンチモンから選択される1種又は複数の元素を含む触媒から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】 前記重縮合が、245から270℃の温度及び0.05から5mbarの圧力で行われる、請求項10から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】 前記重縮合物が、90から200℃の範囲内の温度で結晶化される、請求項10から17のいずれか一項に記載の方法。」

第3 申立理由の概要及び証拠方法
特許異議申立人は、後記2の証拠を提出した上で、以下の申立理由を主張している。
1 申立理由の概要
(1)申立理由1
本件発明1?6は、本件優先日前に頒布された以下の刊行物である甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、本件発明10?17は、本件優先日前に頒布された以下の刊行物である甲第5号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
よって、本件発明1?6、10?17に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)申立理由2
本件発明1?18は、本件優先日前に頒布された以下の刊行物である甲第1号証に記載された発明及び甲第2?7号証に記載された技術的事項に基づいて、又は甲第5号証に記載された発明及び甲第1?4、6及び7号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、本件発明1?18の特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定により取り消すべきものである。

(3)申立理由3
本件の特許請求の範囲の請求項2の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、下記の点で明確とはいえないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件の請求項2に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

請求項2の「好ましくは」の記載について、好ましくはの部分が権利範囲であるのか否かが不明確である。

2 証拠方法
・甲第1号証 中国特許出願公開第102050941号公報
・甲第2号証 中国特許出願公開第102050941号公報の日本語翻訳文
・甲第3号証 国際公開第2013/062408号
・甲第3号証-2 特表2014-530948号公報
・甲第4号証 湯木和男編、飽和ポリエステル樹脂ハンドブック、日刊工業新聞社、1989年12月22日発行、第145?146、162?163頁
・甲第5号証 特開2014-19827号公報
・甲第6号証 Rutger J. I. Knoop 外3名著、High Molecular Weight Poly(ethylene-2,5-furanoate);Critical Aspects in Synthesis and Mechanical Property Determination、JOURNAL OF POLYMER SCIENCE,PART A:POLYMER CHEMISTRY、2013,51,第4191?4199頁
・甲第7号証 国際公開第2014/032730号
・甲第7号証-2 特表2015-533731号公報
以下、「甲第1号証」等を「甲1」等という。

第4 特許異議申立の理由についての当審の判断
1 申立理由1及び2について
(1)各甲号証の記載
ア 甲1
甲1には以下の事項が記載されている。なお、甲1の記載は、その日本語訳である甲2に基づいて行った。
(1a)「【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
以下の(1)?(6)を満たすことを特徴とする高分子重合体。
(1)当該高分子重合体は主に下記一般式で表されるフランジカルボン酸とジオールの共重合体Xを含み、

上記一般式において、Aは脂肪族アルキレン基、芳香族アルキレン基、脂環式アルキレン基またはフランアルキレン基を表す、
(2)チタン化合物由来の化合物Yを含む、
(3)リン化合物由来の化合物Zを含む、
(4)高分子重合体において、チタン元素の含有量は高分子重合体の重量に対して100ppm<Ti<500ppm、チタン元素とリン元素のモル比は0.03<Ti/P<50である、
(5)高分子重合体の融点はTm≧200℃である、及び
(6)高分子重合体において、共重合体Xの末端カルボキシル基の含有量は高分子重合体に対してCOOH≦50eq/tである。
【請求項2】
高分子重合体の固有粘度は0.500?0.800dl/gであることを特徴とする請求項1に記載の高分子重合体。
・・・
【請求項5】
エステル化反応と重縮合反応を含む請求項1に記載の高分子重合体の製造方法であって、
110℃?200℃の温度でフランジカルボン酸とジオールのエステル化反応を行い、さらに200℃?290℃の温度で重縮合反応をすることで、高分子重合体が得られ、
重縮合プロセスにおいて、触媒として金属チタン化合物とリン化合物を添加し、且つフランジカルボン酸とジオールのモル比は1.1?8.0である
ことを特徴とする高分子重合体の製造方法。」

(1b)「 【0004】
生物由来のフランジカルボン酸を原料としてポリエステルを製造することも報告されている。例えば、特開2007-146153にはフラン環構造を有する高分子化合物が開示されているが、提供されたポリエステルは分子量が低く、機械性能が低下し、耐熱性が劣化しているため、実用において制限が大きい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、生物由来の原料から製造された、高融点で優れた機械性能を有する耐加水分解性能が良好である高分子重合体及びその製造方法を提供することが目的である。」

(1c)「【0010】
高分子重合体はチタン化合物由来の化合物Yを含み、更にリン化合物由来の化合物Zを含む。高分子重合体において、高分子重合体の重量に対してチタン元素の含有量は3ppm<Ti<500ppm、チタン元素とリン元素のモル比は0.03<Ti/P<50、高分子重合体の融点Tm≧200℃、高分子重合体に対して共重合体Xの末端カルボキシル基の含有量はCOOH≦50eq/tである。COOH値は50eq/tを超えると、高分子重合体の加水分解性は低下することから、その使用性が制限される。
・・・
【0018】
以下、エステル化反応初期の単量体の添加量について説明する。初期のジオールの添加量はフランジメタノールの2?5倍であることが好ましい。過剰のジオール及び重縮合反応で生成したジオールは減圧下で反応系から除去される。」

(1d)「【0025】
以下、本発明の諸指標の測定方法および評価方法を説明する。
【0026】
(1)カルボキシル基の含有量(COOH)
【0027】
光学滴定法を用いて測定する。重合体をオルトクレゾールとクロロホルムの混合液(重量比70:30)に溶解し、ブロモチモールブルー指示薬を加え、その後、0.05Nの水酸化カリウムの乙醇溶液で滴定を行う。
【0028】
(2)DSC測定
【0029】
示差走査熱量計DSC(TA、Q100)で40℃から16℃/minで280℃に昇温した後に3分間保持して、熱履歴を消去し、その後、速やかに室温に冷却し、また40℃から16℃/minで280℃に昇温した後に3分間保持して、さらに16℃/minで40℃に降温して終了する。2回目の昇温で得られたガラス転移温度をTgとし、冷結晶化温度Tccと溶融温度を熔点Tmとする。
【0030】
(3)固有粘度(IV)(dl/g)
【0031】
1.6gの高分子重合体を20mlのo-クロロフェノール溶液に溶解し、25℃でその固有粘度(IV)を測定する。
【0032】
(4)ジエチレングリコール(DEG)
【0033】
0.5gの重合体を1.25ml(1,6-ヘキサンジオール/エタノールアミン)混合溶液に加え、260℃の条件下で溶解して冷却させ、メタノールを添加して、超音波で振動させ、その後、8gのテレフタル酸を用いて中性に中和する。ガスクロマトグラフィーを用いて測定する。」

(1e)「【発明を実施するための形態】
【0034】
実施例1
【0035】
エステル化プロセス中にチタン化合物を触媒として添加して、重縮合プロセス中にチタン化合物とリン化合物を触媒として添加して重縮合反応を行うことで、高分子重合体が得られる。
【0036】
具体的な反応プロセスは以下のとおりである。
【0037】
160℃の温度下で、89重量部の2,5-フランジカルボン酸(綿陽高新区高特科技有限公司)と212重量部のEG(中国揚子石化)とを精留塔を備えた重合フラスコに入れ、エステル化反応の触媒であるチタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)(ポリエステルの重量に対してチタン化合物の添加量は100ppm)を添加してエステル化反応(ES反応)させた。反応は窒素ガスの保護下で行い、反応混合物は透明になり、精留塔の塔頂温度が50℃に下げた時、前記反応が終了し、小分子の重合体を得た。
【0038】
重合の触媒として、Tiとリンとしての添加量が別々に100ppmになるように、チタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)とリン酸トリメチル化合物(AR、上海潤捷化学試剤有限公司)を前記小分子重合体に添加し(但し、添加量はいずれもポリエステルの重量に対する添加量)、大気圧から1.5時間をかけて300Pa程度に減圧し、1.5時間をかけて温度を240℃に昇温し、当該反応が終了した時、フラスコ内の温度は240℃、最終圧力は130Pa程度であり、本発明の高分子重合体が得られた。
【0039】
実施例2
【0040】
160℃の温度下で、89重量部の2,5-フランジカルボン酸(綿陽高新区高特科技有限公司)と212重量部のEG(中国揚子石化)を精留塔を備えた重合フラスコに入れ、エステル化反応の触媒であるチタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)(ポリエステルの重量に対してチタン化合物の添加量は50ppm)を添加してエステル化反応(ES反応)させ、反応は窒素ガスの保護下で行い、反応混合物は透明になり、精留塔の塔頂温度が50℃に下げた時、前記反応が終了し、小分子の重合体を得た。
【0041】
重合の触媒として、Tiの添加量が50ppm、リンの添加量が10ppmになるように、チタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)とリン酸トリメチル化合物(AR、上海潤捷化学試剤有限公司)を前記小分子重合体に添加し(但し、添加量はいずれもポリエステルの重量に対する添加量)、大気圧から1.5時間をかけて300Pa程度に減圧し、1.5時間をかけて温度を200℃に昇温し、当該反応が終了した時、フラスコ内の温度は200℃、最終圧力は130Pa程度であり、本発明の高分子重合体が得られた。」

(1f)「【0049】
表1



イ 甲5
甲5には以下の事項が記載されている。
(5a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応を行い、オリゴマーを生成するエステル化工程と、
前記オリゴマーの縮重合反応を行い、ポリエステルを製造する縮重合工程と、
を含むポリエステル製造方法であり、
前記エステル化反応を200?250℃で行うことを特徴とするポリエステル製造方法。」

(5b)「【0051】
本発明におけるポリエステルの製造は、まず、図6に示すように、FDCA供給タンク1から配管54を経由してFDCAが原料調合槽4に供給される。FDCAは粉体であるので、FDCA供給タンク1にはこれを供給する手段としてスクリューフィーダー等が槽排出口に設置され、供給速度を制御できることが好ましい。また、EG供給タンク2からはEGが配管52、53を経由して送液ポンプ3により原料調合槽4に所定の流量で供給される。EGは0.1Pa・s程度のやや粘性を有する液体であるので、送液ポンプ3はキャンドポンプ、プランジャーポンプ等、各種ポンプが適用可能である。FDCA及びEGの供給速度は原料調合槽4内で所定のモル比となるように決定する。EG/FDCAモル比は通常1?2.5、好ましくは1.3?2.0である。これは後段のエステル化工程S1(エステル化槽9)にて非重合反応性の環状オリゴマー、特にその3量体の生成を抑制するためである。」

(5c)「【実施例】
【0092】
(PEF製造の一例)
本発明の一実施形態であるポリエステル製造方法を適用した、図6及び図7に示すポリエステル製造装置を用いてPEFを製造した。その一例を以下に示す。PEFの製造は以下の手順、条件で行った。
【0093】
まず、原料調合槽4において、EG/FDCAモル比2.0でこれらを混合し、スラリー供給槽6に供給した。スラリー供給槽6では触媒としてチタンテトラブトキシドを2700ppm添加し、混合後にエステル化槽9に送液した。
【0094】
エステル化槽9では圧力1.0気圧、温度230℃、スラリー滞留時間40分でエステル化を実施した。その結果、エステル化率95%で着色が抑制されたオリゴマーが得られた。得られたオリゴマーを初期重合槽11に供給した。
【0095】
初期重合槽11では触媒追加添加を特に実施せず、真空度2.7kPa(20torr)、温度240℃、オリゴマー滞留時間0.4hで重合を行い、プレポリマーを中間重合器13に供給した。
【0096】
中間重合器13では真空度400Pa(3torr)、温度240℃、オリゴマー滞留時間0.6hで重合を行った。この結果、重量平均分子量2.1万のプレポリマーが得られた。得られたプレポリマーを最終重合器15に供給した。
【0097】
最終重合器15では真空度133.3Pa(1torr)、温度240℃、プレポリマー滞留時間0.6hで重合を行った。なお、最終重合器15として、横型の二軸メガネ翼重合器(日立プラントテクノロジー社製)を適用した。
【0098】
得られたポリマーをポリマーストランド冷却槽103で冷却後、チップカッター104でペレット化し、各種分析を行った。その結果、数平均分子量4.0万、b値4の着色が抑制されたポリマーが得られた。」

(2)各甲号証に記載された発明
ア 甲1に記載された発明
甲1には、その特許請求の範囲の請求項1に、「以下の(1)?(6)を満たすことを特徴とする高分子重合体。
(1)当該高分子重合体は主に下記一般式で表されるフランジカルボン酸とジオールの共重合体Xを含み、

上記一般式において、Aは脂肪族アルキレン基、芳香族アルキレン基、脂環式アルキレン基またはフランアルキレン基を表す、
(2)チタン化合物由来の化合物Yを含む、
(3)リン化合物由来の化合物Zを含む、
(4)高分子重合体において、チタン元素の含有量は高分子重合体の重量に対して100ppm<Ti<500ppm、チタン元素とリン元素のモル比は0.03<Ti/P<50である、
(5)高分子重合体の融点はTm≧200℃である、及び
(6)高分子重合体において、共重合体Xの末端カルボキシル基の含有量は高分子重合体に対してCOOH≦50eq/tである。」が記載され(摘記(1a))、その具体例として、実施例2に、160℃の温度下で、89重量部の2,5-フランジカルボン酸(綿陽高新区高特科技有限公司)と212重量部のEG(中国揚子石化)を精留塔を備えた重合フラスコに入れ、エステル化反応の触媒であるチタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)(ポリエステルの重量に対してチタン化合物の添加量は50ppm)を添加してエステル化反応(ES反応)させ、反応は窒素ガスの保護下で行い、反応混合物は透明になり、精留塔の塔頂温度が50℃に下げた時、前記反応が終了し、小分子の重合体を得た。重合の触媒として、Tiの添加量が50ppm、リンの添加量が10ppmになるように、チタン酸テトラブチル(AR、上海試四赫維化工有限公司)とリン酸トリメチル化合物(AR、上海潤捷化学試剤有限公司)を前記小分子重合体に添加し(但し、添加量はいずれもポリエステルの重量に対する添加量)、大気圧から1.5時間をかけて300Pa程度に減圧し、1.5時間をかけて温度を200℃に昇温し、当該反応が終了した時、フラスコ内の温度は200℃、最終圧力は130Pa程度であり、本発明の高分子重合体が得られたことが記載され(摘記(1d))、表1には、原料の配合として、ジオールとカルボン酸のモル比が6:1であること、チタン化合物が100ppm含むこと、チタンとリンのモル比が10であることが記載され、得られた重合体の物性として、IVが0.605であること、DEG含有量が1.05%であること、融点が209℃であること、COOH値が35eq/tであることが記載されている(摘記(1e))。

そうすると、甲1には、実施例2に着目すると、以下の発明が記載されていると認められる。
「160℃の温度下で、89重量部の2,5-フランジカルボン酸と212重量部のEGを精留塔を備えた重合フラスコに入れ、エステル化反応の触媒であるチタン酸テトラブチル(ポリエステルの重量に対してチタン化合物の添加量は50ppm)を添加してエステル化反応させ、反応は窒素ガスの保護下で行い、反応混合物は透明になり、精留塔の塔頂温度が50℃に下げた時、前記反応が終了し、小分子の重合体を得、重合の触媒として、Tiの添加量が50ppm、リンの添加量が10ppmになるように、チタン酸テトラブチルとリン酸トリメチル化合物を前記小分子重合体に添加し(但し、添加量はいずれもポリエステルの重量に対する添加量)、大気圧から1.5時間をかけて300Pa程度に減圧し、1.5時間をかけて温度を200℃に昇温し、当該反応が終了した時、フラスコ内の温度は200℃、最終圧力は130Pa程度により得られた高分子重合体であって、この高分子重合体は、IVが0.605であり、DEG含有量が1.05%であり、融点が209℃であり、COOH値が35eq/tである高分子重合体」(以下「甲1発明」という。)

イ 甲5に記載された発明
甲5には、その特許請求の範囲の請求項1に、「エチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応を行い、オリゴマーを生成するエステル化工程と、
前記オリゴマーの縮重合反応を行い、ポリエステルを製造する縮重合工程と、
を含むポリエステル製造方法であり、
前記エステル化反応を200?250℃で行うことを特徴とするポリエステル製造方法。」が記載されている。

そうすると、甲5には、以下の発明が記載されていると認められる。
「エチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応を行い、オリゴマーを生成するエステル化工程と、前記オリゴマーの縮重合反応を行い、ポリエステルを製造する縮重合工程と、を含むポリエステル製造方法であり、前記エステル化反応を200?250℃で行うことを特徴とするポリエステル製造方法。」(以下「甲5発明」という。)

(3)対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明は、原料のジカルボン酸として2,5-フランジカルボン酸を用い、ジオールとしてEGを用いており、このEGは表1(摘記(1f))によればエチレングリコールであるといえるから、甲1発明の高分子重合体は、エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルであるといえ、本件発明1の「エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステル」に相当する。
甲1発明のエチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルは、IVが0.605であり、甲1には、このIVは単位を(dl/g)とする固有粘度であると記載されている(摘記(1d))から、甲1発明のIVが0.605は、本件発明1の「少なくとも0.45dL/gの固有粘度を有し」に相当する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とでは、
「エチレン2,5-フランジカルボキシレート単位を含むポリエステルであって、少なくとも0.45dL/gの固有粘度を有するポリエステル」で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)ポリエステルが、本件発明1では、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率が、0.10から0.70の範囲内であるとしているのに対して、甲1発明では、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率は明らかでない点

(イ)判断
まず、相違点1が実質的な相違点であるか否かについて検討する。
甲1発明のポリエステルは、そのCOOH値が35eq/tであり、35meq/kgであるということができる。しかしながら、甲1には、ポリエステルのヒドロキシル末端基の量に関する記載はなく、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率に関する記載もないから、甲1の記載をみる限り、甲1発明における相違点1に係るカルボン酸末端基の相対含有率は不明である。
確かに、甲1には、甲1発明のポリエステルの固有粘度であるIVが0.605dl/gであり、COOH値が35eq/tであることは記載されているが、この2つの値から、ポリエステルのヒドロキシル末端基の量を直接算出することはできず、また、カルボン酸末端基のモル量をヒドロキシル末端基及びカルボン酸末端基のモル量の和で割った割合として表されるカルボン酸末端基の相対含有率も直接算出することはできない。
したがって、相違点1は、実質的な相違点である。

次に、相違点1の容易想到性について検討するが、甲1には、段落【0010】に、高分子重合体の加水分解性が低下することを理由に、末端カルボキシル基の含有量がCOOH≦50eq/tである旨の記載がされているだけであり、相違点1に係るカルボン酸末端基の相対含有率に関する記載はないから、たとえ当業者であったとしても、甲1の記載に基づいて、甲1発明において相違点1が動機付けられるとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)申立人の主張
申立人は、本件明細書に記載された実験番号6で製造されたポリエステルは、固有粘度が0.61dL/gであり、COOH値が35meq/kgであること、甲1の実施例2で製造されたポリエステルは、固有粘度が0.605dl/gであり、COOH値が35eq/tであること、ポリエステルの固有粘度は分子量に依存するものであり、ポリエステルの分子量と末端基の量に関連性があることからすれば、ポリエステルの固有粘度と末端基の量は関連性があるといえ、ポリエステルのヒドロキシ末端基の量に関し、甲1の実施例2と本件明細書に記載された実験番号6とは同程度である蓋然性が高く、カルボン酸末端基の相対含有率も同程度である蓋然性が高い旨を主張する。

そこで、申立人の主張について検討する。
確かに、本件明細書に記載された実験番号6で製造されたポリエステルと甲1の実施例2で製造されたポリエステルは、固有粘度及びCOOH値は、ほぼ同一の値を有するとみることができる。しかしながら、申立人は、ポリエステルの固有粘度と末端基の量は関連性があると主張し、ポリエステルのヒドロキシ末端基の量に関し、甲1の実施例2と本件明細書に記載された実験番号6とは同程度である蓋然性が高いと主張するだけである。そして、申立人は、ポリエステルの固有粘度と末端基の量とが、具体的にどのような数式により直接何らかの値を算出することができる関係であるのかを説明したわけでもなく、同様に、甲1の実施例2において、具体的な数式を用いてポリエステルのヒドロキシ末端基の量の値を算出した上で、本件発明1と一致することを述べたわけでもない。
以上のとおりであるから、申立人の主張から、上記相違点の判断を覆すことはできない。

(エ)小括
よって、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

イ 本件発明2?9について
本件発明2?9は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記「ア」で示した理由と同じ理由により、本件発明2?6は、甲1に記載された発明であるといえず、また、本件発明2?4は、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに、本件発明5?9は、これらの発明の進歩性を否定するために提示された甲3、4、6及び7の記載をみるまでもなく、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ 本件発明10について
(ア)対比
本件発明10と甲5発明とを対比する。
甲5発明のポリエステルの製造方法は、本件発明10のポリエステルの調製のための方法に相当する。
甲5発明はエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応を行い、オリゴマーを生成することにより、エステル化合物を含む組成物が生成するから、甲5発明のエチレングリコールと2,5-フランジカルボン酸のエステル化反応を行い、オリゴマーを生成するエステル化工程は、本件発明10の「2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを含む出発混合物をエステル化に供してエステル組成物を形成し」に相当する。
甲5発明のオリゴマーの縮重合反応を行い、ポリエステルを製造する縮重合工程は、本件発明10の「得られたエステル組成物を重縮合に供して重縮合物を得」の限りにおいて一致する。

そうすると、本件発明10と甲5発明とは、「ポリエステルの調製のための方法であって、2,5-フランジカルボン酸及びエチレングリコールを含む出発混合物をエステル化に供してエステル組成物を形成し、得られたエステル組成物を重縮合に供して重縮合物を得る方法」で一致し、次の点で相違する。

(相違点2)出発混合物中における2,5-フランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比が、本件発明10では、1:1.01から1:1.15と特定されているのに対して、甲5発明では明らかでない点

(相違点3)重縮合を得る方法が、本件発明10では、重縮合触媒の存在下、減圧下で行うのに対して、甲5発明では明らかでない点

(相違点4)本件発明10では、2,5-フランジカルボン酸とエチレングリコールとの反応中に形成された水及びいくらかのエチレングリコールを蒸留システムにおいて除去し、水とともに除去されたエチレングリコールを水から分離し、少なくとも部分的に再生利用することが特定されているのに対して、甲5発明では明らかでない点

(イ)判断
相違点2について検討する。
甲5の段落【0051】には、EG/FDCAモル比は通常1?2.5、好ましくは1.3?2.0である、と記載されており(摘記(5b))、EGはエチレングリコール、FDCAは2,5-フランジカルボン酸であるところ、数値範囲でいえば、本件発明10で特定される1:1.01から1:1.15が含まれるが、甲5に記載された数値範囲が広範囲であり、その広範囲な数値範囲の中に本件発明10で特定された数値範囲が含まれるとしても、このような数値範囲の重複のみをもって、2,5-フランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比が一致するとはいえない。
したがって、相違点2は、実質的な相違点である。

次に、相違点2の容易想到性について検討するが、上述したとおり、甲5には、EG/FDCAモル比は通常1?2.5、好ましくは1.3?2.0である、と記載されており、また、実施例においてもEG/FDCAモル比が2.0で行うことが記載されている(摘記(5c))から、甲5の記載からは、2,5-フランジカルボン酸のエチレングリコールに対するモル比を、1:1.01から1:1.15とする動機付けがあるとはいえない。また、他の証拠をみても、相違点2を動機付ける記載はない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明10は、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

(ウ)小括
よって、本件発明10は、甲5に記載された発明であるとはいえず、また、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたともいえない。

エ 本件発明11?18について
本件発明11?18は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、上記「ウ」で示した理由と同じ理由により、本件発明11?17は、甲5に記載された発明であるといえず、また、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、さらに、本件発明18は、この発明の進歩性を否定するために提示された甲3、4、6及び7の記載をみるまでもなく、甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由1及び2によっては、本件発明を取り消すことはできない。

2 申立理由3について
(1)明確性の考え方について
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術的常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきことはいうまでもない、とされている(平成21年(行ケ)第10434号判決参照。)。
以下、この観点に従って検討する。

(2)特許請求の範囲の請求項2の記載
特許請求の範囲の請求項2には以下の記載がされている。
「【請求項2】 1.0dl/g以下、好ましくは0.45から0.75dL/gの範囲内の固有粘度を有する、請求項1に記載のポリエステル。」

(3)判断
請求項2には、ポリエステルの固有粘度の範囲を記載するに当たり、確かに「1.0dl/g以下、好ましくは0.45から0.75dL/g」と記載されているが、この記載をみる限り、請求項2におけるポリエステルの固有粘度の範囲は1.0dl/g以下であるといえ、0.45から0.75dL/gの範囲は、あくまで1.0dl/g以下の範囲において好ましい範囲をさらに記載しただけといえるから、好ましくは0.45から0.75dL/gという記載があることのみをもって、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。

(4)まとめ
以上のとおりであるから、申立理由3によっては、本件発明を取り消すことはできない。

第5 むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?18に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-07-02 
出願番号 特願2016-556833(P2016-556833)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C08G)
P 1 651・ 121- Y (C08G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小森 勇  
特許庁審判長 近野 光知
特許庁審判官 橋本 栄和
佐藤 健史
登録日 2019-08-02 
登録番号 特許第6563948号(P6563948)
権利者 フラニックス・テクノロジーズ・ベーフェー
発明の名称 ポリエステル及びポリエステルを調製するための方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 塩尻 一尋  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
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