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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A23F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23F
管理番号 1364031
異議申立番号 異議2019-701073  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-12-27 
確定日 2020-07-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第6539377号発明「容器詰飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6539377号の請求項1?4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6539377号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成26年9月12日を出願日とする特願2014-185833号の一部を、特許法第44条第1項の規定に基いて、平成29年4月4日に特願2017-074277号として新たに特許出願し、さらにその一部を、同規定に基いて新たな特許出願として平成30年4月27日に出願したものであって、令和1年6月14日にその特許権の設定登録がされ、令和1年7月3日に特許掲載公報が発行された。
その後、当該特許に対し、令和1年12月27日に特許異議申立人 松永健太郎(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は令和2年3月13日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年5月18日に意見書の提出を行った。

第2 本件発明
特許第6539377号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4に係る発明(以下、請求項順に「本件発明1」?「本件発明4」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】
次の(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、
(B)テアニン 0.002?0.018質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有し、
成分(B)と成分(C)の含有量が下記式(1);
-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027(1)
〔式(1)中、cは成分(C)の含有量(質量%)を示し、bは成分(B)の含有量(質量%)を示す。〕
の関係を満たす、
容器詰緑茶飲料。
【請求項2】
成分(A)の含有量が0.04?0.14質量%である、請求項1記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項3】
成分(B)の含有量が0.002?0.011質量%である、請求項1又は2記載の容器詰緑茶飲料。
【請求項4】
成分(B)と成分(C)との質量比[(C)/(B)]が0.04?0.3である、請求項1?3のいずれか1項に記載の容器詰緑茶飲料。」

第3 取消理由の概要
当審が令和2年3月13日付けで通知した取消理由及び申立人が申し立てた取消理由の概要は、次のとおりである。

1 当審が令和2年3月13日付けで通知した取消理由の概要
(1)(実施可能要件、委任省令要件)本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由1」という。)。

本件明細書の記載及び技術常識を参酌しても「-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027」という数式(1)の導出根拠が明らかでない。
よって、明細書における発明の詳細な説明の記載は、本件発明の「次の(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、
(B)テアニン 0.002?0.018質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有し、
成分(B)と成分(C)の含有量が下記式(1);
-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027 (1)
〔式(1)中、cは成分(C)の含有量(質量%)を示し、bは成分(B)の含有量(質量%)を示す。〕の関係を満たす」との発明特定事項(以下、「特定事項A」という。)について、技術的意味を理解することができないから、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分にしたものとはいえず、また、当業者が本件発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されたものとはいえない。

(2)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「取消理由2」という。)。

発明の詳細な説明の記載からは、本件発明の特定事項Aについて、技術的意味を理解することができないから、本件発明は、発明の詳細な説明において本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

2 申立人が申し立てた取消理由の概要
(1)(サポート要件)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである(以下、「申立理由1」という。)。

ア 官能評価について
請求項1?4に係る発明は、「高濃度の非重合体カテキン類を含有するにもかかわらず、鼻抜け香及びドライ感が改善され、コク味も豊かな容器詰飲料を提供すること」を課題としている(本件明細書【0005】)。
そして、本件明細書では、官能試験結果をもって、本件発明により上記課題が解決できたとされているところ、本件明細書に記載の手順で実施される官能試験は、客観的に正確に評価されたものということはできないから、本件明細書に記載の手順で実施される官能試験結果からでは、実施例の容器詰異飲料が、実際に、上記課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない。

イ 式(1)の関係について
請求項1?4に係る発明は、(A)非重合体カテキン類の含有量、(B)テアニンの含有量、及び(C)ルチンの含有量が所定の範囲内にあることと、成分(B)及び成分(C)の含有量が、式(1):-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027の関係を満たすことを特定している。
しかし、上述した構成に基づいて画定される数値範囲であることによって所望の効果が得られることが本件明細書の発明の詳細な説明の記載に裏付けられていないから、請求項1?4に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)(新規性)本件請求項1?4に係る発明は、甲第1号証?甲第4号証それぞれに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである(以下、「申立理由2」という。)。

(3)(進歩性)本件請求項1?4に係る発明は、甲第1号証?甲第9号証を組み合わせることによって当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである(以下、「申立理由3」という。)。

そして、甲第1?9号証として、以下のものが挙げられている。

甲第1号証:Journal of Tea Science、2010年、30巻5号、p.399-406
甲第2号証:特開2010-148499号公報
甲第3号証:特許第5118164号公報
甲第4号証:堀江 秀樹 他、「茶主要成分の茶浸出液への溶出特性」、茶研報91、2001年、p.29-33
甲第5号証:特開2008-61511号公報
甲第6号証:神戸 保 他、「茶葉からの緑茶浸出条件と浸出液中の成分量」、別府大学紀要、第47号(2006年)、61-70頁
甲第7号証:かねはち茶園ウェブページ、URL:http://www.kane8.jp/tea_pet.html、印刷日:2019年12月18日
甲第8号証:農民運動全国連合会ウェブページ(2015年3月2日 第1155号)、URL:http://www.nouminren.ne.jp/newspaper.php?fname=dat/201503/2015030210.htm
甲第9号証:山西 貞 著、ポピュラーサイエンス お茶の科学、株式会社 裳華房、1997年5月20日発行、第7版、p.160

なお、以下、申立人が提出した甲第1?9号証を、それぞれ甲1?甲9のように省略して記載する。

第4 当審の判断
1 当審が令和2年3月13日付けで通知した取消理由について
(1)取消理由1(実施可能要件、委任省令要件)について
本件特許明細書の段落0013?0016には、以下のとおり記載されている。
「【0013】
また、本発明の容器詰飲料は、成分(B)と成分(C)の含有量が下記式(1)の関係を満たすことが重要である。
【0014】
-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027(1)
【0015】
〔式(1)中、cは成分(C)の含有量(質量%)を示し、bは成分(B)の含有量(質量%)を示す。〕
【0016】
すなわち、成分(B)の含有量をbとしたときに、-0.032b+0.00060と、-0.032b+0.0027との間に成分(C)の含有量cが存在するように制御することで、コク味が増強されるとともに、鼻抜け香及びドライ感も改善されることを見出した。」

そして、実施例1?24及び比較例1?12の結果が表1?4に示され、段落0062に、
「【0062】
表1?4から、テアニン及びルチンの含有量を特定範囲内において一定の関係を満たすように制御することで、コク味が感じられ、鼻抜け香及びドライ感の改善された容器詰飲料が得られることがわかる。」
と記載されている。

上記式(1)の導出根拠について、特許権者が令和2年5月18日に提出した意見書には、次の記載がある。

「先ず、(B)テアニンの含有量を「横軸」とし、(C)ルチンの含有量を「縦軸」として、本願明細書の【表1】に記載された実施例及び比較例の各容器詰飲料について、BC-座標にプロットした。」(3頁6?8行)

「次に、本願明細書の【表1】に記載された実施例の容器詰飲料の中で、「鼻抜け香」、「コク味」及び「ドライ感」の評価において、評点がいずれも「5.0」である実施例1の容器詰飲料をベストモードに設定し、当該容器詰飲料中の(C)ルチンの含有量「0.0006質量%」を「切片」に設定した。」(4頁1?4行)

「(B)テアニンの含有量が多い場合には(C)ルチンの含有量を減量するという逆の相関関係が成り立つから、一次式の「傾き」を負に設定する必要がある。・・・実施例2、3、4の容器詰飲料と、比較例1、2、4の容器詰飲料との境界を画定にするために、・・・実施例2、3、4に近接する形で傾き「-0.032」を設定し、一次式「-0.032b+0.0006」を導出した。」(4頁下から2行目?5頁6行)

「なお、数式(1)のうち「-0.032b+0.0027」については、比較例7の容器詰飲料との境界を画定にするために、実施例8、9に近接する形で傾き「-0.032」の線を引いて切片「0.0027」を求め、導出した。」(5頁下から3行)



」(7頁【表C】)

「【表C】に示す赤枠で囲まれた逆台形の領域は、本願明細書の実施例と、比較例及び参考例・・・とを明確に区別するものであり、当該赤枠で囲まれた逆台形の範囲内であれば、本件発明の課題を解決できることを当業者であれば十分理解することができる。」(7頁下から9?6行)

上記意見書の記載を参照すれば、本件特許明細書の段落0055における表1に記載された各実施例及び各比較例をプロットし、各実施例の容器詰飲料と、各比較例の容器詰飲料とを区別するために、その境界線を定めており、当該境界線から「-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027」という数式(1)を導出したことが理解できる。
そうすると、数式(1)の導出根拠が明らかになったのであるから、本件発明が、「次の(A)、(B)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、
(B)テアニン 0.002?0.018質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有し、
成分(B)と成分(C)の含有量が下記式(1);
-0.032b+0.0006<c<-0.032b+0.0027(1)
〔式(1)中、cは成分(C)の含有量(質量%)を示し、bは成分(B)の含有量(質量%)を示す。〕の関係を満たす」との発明特定事項(以下、「特定事項A」という。)の技術的意味を理解することができ、本件発明の特定事項Aによる効果も確認することができるから、当業者が、本件発明を実施すること、及び、本件発明の技術上の意義を理解することができないとはいえない。

(2)取消理由2(サポート要件)について
上記(1)で検討したとおり、本件特許の明細書における発明の詳細な説明の記載から、本件発明の特定事項Aについて、技術的意味を理解することができるものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4の記載は、本件発明が、発明の詳細な説明において、本件発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであるとはいえない。

2 申立人が申し立てた取消理由について
(1)申立理由1について
ア 官能評価について
本件特許明細書の段落0046?0049には、以下のとおり記載されている。
「【0046】
5.官能評価
各容器詰飲料の「鼻抜け香」、「コク味」及び「ドライ感(口が渇くような感覚)」について専門パネル3名が官能試験を行った。官能試験では、表1?4の容器詰飲料について下記の評価基準にて評価した。その後、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点は数値が大きい程、良好であることを意味する。
【0047】
(1)鼻抜け香の評価基準
実施例1の容器詰飲料の鼻抜け香を評点5とし、比較例5の容器詰飲料の鼻抜け香を評点1として、下記の5段階で評価を行った。
1:弱い
2:やや弱い
3:普通
4:やや強い
5:強い
【0048】
(2)コク味の評価基準
実施例1の容器詰飲料のコク味を評点5とし、比較例3の容器詰飲料のコク味を評点1として、下記の6段階で評価を行った。
1:弱い
2:やや弱い
3:普通
4:やや強い
5:強い
6:より強い
【0049】
(3)ドライ感(口が渇くような感覚)の評価基準
実施例1の容器詰飲料のドライ感を評点5とし、比較例6の容器詰飲料のドライ感を評点1として、下記の5段階で評価を行った。
1:強い
2:やや強い
3:普通
4:やや弱い
5:弱い」

上記記載を参照すると、官能評価の評価基準として評点5と評点1の基準が設けられており、そして、発明の詳細な説明の表1?4には、専門パネル、すなわち、訓練されたパネル3名による評点の平均値が示され、その数値において実施例と比較例との間には明らかな差異が認められる。
そうであれば、発明の詳細な説明に統計学的に有意であるか否かについて示されていないとしても、当該官能試験結果が客観的に正確に評価されたものではないとまではいえない。
よって、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4の記載は、本件発明が、その課題を解決できることを当業者が認識できるものでないとまではいえない。

イ 式(1)の関係について
上記1で述べたとおりである。

(2)申立理由2、3について
ア 各甲号証の記載事項
(ア)甲1の記載事項
甲1は、緑茶における主化合物に関する文献であり、表4「茶浸出液中の味物質の含有量」(当審注:訳文で示す。)には、以下の記載がある。



」(404頁)

(イ)甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。

「【0049】
【表2】



「【0054】
実施例5
実施例1?4の精製緑茶抽出物を用い、表4に記載の割合で各成分を配合して非重合カテキン類濃度が0.11質量%の飲料を調製した。次いで、得られた飲料を食品衛生法に基づく殺菌処理及びホットパック充填を行って容器詰飲料とした。得られた容器詰飲料は、不快な収斂味がなく、飲みやすい飲料であった。
【0055】
【表4】



(ウ)甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。

「【0020】
本容器詰緑茶飲料における総カテキン類濃度は、270ppm?920ppmであるのが好ましい。
総カテキン類濃度は、より好ましくは300ppm?850ppmであり、特に好ましくは350ppm?850ppmである。
なお、総カテキン類とは、カテキン(C)、ガロカテキン(GC)、カテキンガレート(Cg)、ガロカテキンガレート(GCg)、エピカテキン(EC)、エピガロカテキン(EGC)、エピカテキンガレート(ECg)及びエピガロカテキンガレート(EGCg)の合計8種の意味であり、総カテキン類濃度とは8種類のカテキン濃度の合計値の意味である。
総カテキン類濃度を上記範囲に調整するには、抽出条件などを調整すればよい。カテキン類を添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料のバランスが崩れるおそれがあるため、茶抽出液を得るための条件を調整するほか、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整するのが好ましい。」

「【0024】
本容器詰緑茶飲料において、テアニンの濃度は8.0ppm以上であるのが好ましく、この範囲であることにより、低温でも口に広がる香り、喉越しに残る香りもありながら、旨味があって、飲み応えのある味と香りのバランスのとれた飲料になる。
かかる観点から、テアニンの濃度は、より好ましくは10.0ppm?250ppmであり、特に好ましくは12.0ppm?250ppmである。
テアニン濃度を上記範囲に調整するには、原料選定、高温で分解しやすい点を考慮した茶葉の乾燥(火入れ)などの加工条件等により調整できる。テアニンを添加して調整することも可能であるが、緑茶飲料のバランスが崩れるおそれがあるため、茶抽出液を得るための条件を調整するほか、茶抽出液どうしの混合、或いは茶抽出物の添加などによって調整するのが好ましい。」

「【0049】
【表1】

【0050】
(配合)
抽出液A?Hを、以下の表2に示す割合で配合し、アスコルビン酸を400ppm添加した後、重曹を添加してpHを適宜調整し、イオン交換水を加えて全量を1000mlに調整し、この液を耐熱性の透明容器(ビン)に充填して蓋をし、30秒間転倒殺菌し、レトルト殺菌F_(0)値9以上(121℃、9分)を行い、直ちに20℃まで冷却して実施例1?6及び比較例1?4の緑茶飲料を作製した。
【0051】
【表2】



(エ)甲4の記載事項
甲4には、以下の記載がある。



」(30頁)

(オ)甲5の記載事項
甲5には、以下の記載がある。

「【請求項1】
飲食品の風味改善のために使用される風味改善剤であって、
ヒマワリ種子抽出物、γ-アミノ酪酸、テアニン、ルチン、ルチン誘導体、ヘスペリジン及びヘスペリジン誘導体からなる群より選ばれる少なくとも二種の成分を含有する風味改善剤。」

「【0008】
そこで、本発明は、少ない使用量で飲食品の好ましくない風味を低減できる風味改善剤を提供することを目的とする。また、本発明は、かかる風味改善剤を用いた風味改善方法及び飲食品を提供することを目的とする。」

「【0056】
8.茶の風味改善(渋味及び苦味の低減)
本発明の風味改善剤を添加することにより、茶または茶含有飲食品の渋味、苦味を低減することができる。」

「【0088】
<緑茶の風味改善例>
(実施例12a?12e及び比較例12f?12j)
グレープフルーツジュースの代わりに、緑茶4gに対して沸騰した蒸留水150mlを添加し、3分間抽出した後、これを茶こしでこして得られた緑茶抽出液50mlを冷却したものを用いたことの他は、上記のグレープフルーツジュースの風味改善例と同様にして、被検液を調製した。緑茶抽出液を質量基準として、表2に示す添加成分組成a?eを添加した風味改善例が実施例12a?12eにそれぞれ該当し、添加成分組成f?iを添加した風味改善例が比較例12f?12iにそれぞれ該当する。更に、対照として蒸留水を添加したものが比較例12jに該当する。本風味改善例においては、緑茶抽出液の苦味及び渋味について、10人の被験者による官能試験を表1の評価基準に基づき行った。」

(カ)甲6の記載事項
甲6は、茶葉からの緑茶浸出条件と浸出液中の成分量に関する文献であり、甲6には、以下の記載がある。



」(67頁)



」(68頁)

(キ)甲7の記載事項
甲7は、緑茶ペットボトル市販品分析結果に関する文献であり、甲7には、以下の記載がある。



ここにご紹介するのは、平成12年度に静岡県茶商工業協同組合が検査機関に依頼して実施した、茶葉から直接入れたお茶と、市販のペットボトルのお茶に含まれる成分の比較結果です。」

(ク)甲8の記載事項
甲8は、急須で入れたお茶とペットボトルの茶のうまみ成分(グルタミン酸及びテアニン)の分析結果を示す文献であり、甲8には、以下の記載がある。





(ケ)甲9の記載事項
甲9の「表14・6 各種の製茶を淹れる基準となる条件」には、以下の記載がある(当審注:抜粋で示す。)。


製茶 お茶の量 湯量 湯の温度 浸出時間
g ml ℃ 分
煎茶 上 2 60 70 2
煎茶 中 2 80 90 1
」(160頁)

イ 甲1?甲4に記載された発明
(ア)甲1に記載された発明
上記記載事項ア(ア)より、甲1には、tea1として次の発明が記載されていると認められる。
「EGCを299.3μg/mL、±Cを15.8μg/mL、ECを99.3μg/mL、EGCGを694.0μg/mL、GCGを88.1μg/mL、ECGを181.8μg/mL、ルチンを15.0μg/mL含有する緑茶浸出液。」(以下、「甲1発明」という。)

(イ)甲2に記載された発明
上記記載事項ア(イ)より、甲2には、実施例1の精製緑茶抽出物を含む飲料1として次の発明が記載されていると認められる。
「固形分中の非重合体カテキン類濃度が75.2質量%、(ルチン/非重合体カテキン類)が0.013である精製緑茶抽出物を0.15質量%含有する容器詰緑茶飲料。」(以下、「甲2発明」という。)

(ウ)甲3に記載された発明
上記記載事項ア(ウ)より、甲3には、実施例4として抽出物Gが100%である次の発明が記載されていると認められる。
「総カテキンが786.1ppm、テアニンが23.90ppmである茶抽出液を含有する容器詰緑茶飲料。」(以下、「甲3発明」という。)

(エ)甲4に記載された発明
上記記載事項ア(エ)より、甲4には、一番茶を50℃で浸出した茶浸出液として、次の発明が記載されていると認められる。
「EGCを170mg/l、ECを39mg/l、EGCgを104mg/l、ECgを13mg/l、テアニンを127mg/l含有する荒茶浸出液。」(以下、「甲4発明」という。)

ウ 甲1を主引用例とする場合について
(ア)本件発明1について
a 対比
甲1発明におけるEGC、±C、EC、EGCG、GCG及びECGは、本件発明1における「非重合体カテキン類」に相当し、その含有量は、299.3+15.8+99.3+694.0+88.1+181.8=1378.3(μg/mL)=0.13783(質量%)と算出されるから、本件発明1における「0.025?0.2質量%」と重複一致する。
そして、甲1発明におけるルチンの含有量は、15.0(μg/mL)=0.00150(質量%)と換算されるから、本件発明1における「0.0003?0.0016質量%」と重複一致する。
また、甲1発明における「緑茶浸出液」は飲料であることが明らかであるから、本件発明1における「緑茶飲料」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「次の(A)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有する緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点)
(相違点1)本件発明1は成分(B)としてテアニンの含有量を特定しているのに対し、甲1発明にはテアニンを含むこと及びその含有量について記載がない点。
(相違点2)本件発明1は、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを特定しているのに対し、甲1発明には、式(1)について記載がない点。
(相違点3)本件発明1は緑茶飲料が容器詰であるのに対し、甲1発明には容器詰について記載がない点。

b 相違点についての検討
相違点1及び2について検討する。
甲1?9には、
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、
(B)テアニン 0.002?0.018質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有し、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たす緑茶飲料は記載及び示唆がない。
そして、通常、緑茶飲料はテアニン以外にも多様な成分を含むのであって、含有成分の種類や含有量は緑茶飲料によって異なり、そのバランスによって旨味、苦味、渋味、コク、香り等が調整されているものである。
そうすると、他の成分を考慮しないでテアニンのみに着目し、甲1の緑茶飲料が他の緑茶飲料と同程度のテアニンを含有する蓋然性が高いということはいえない。
また、他の緑茶飲料のテアニン含有量のみを甲1の緑茶飲料に適用し、非重合体カテキン類を0.025?0.2質量%、テアニンを0.002?0.018質量%、ルチンを0.0003?0.0016質量%の範囲に各含有量を調整するとともに、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを導き出すことは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
甲1に記載された発明を、tea2?12、16?20から認定した場合においても同様である。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明及び甲2?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)よって、本件発明1?4は甲1に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本件発明1?4は、甲1に記載された発明及び甲2?9に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

エ 甲2を主引用例とする場合について
(ア)本件発明1について
a 対比
甲2発明における非重合体カテキン類の含有量は、(75.2/100)×0.15=0.1128(質量%)と算出されるから、本件発明1における「0.025?0.2質量%」と重複一致する。
そして、甲2発明におけるルチンの含有量は、「(B)ルチン/(A)非重合体カテキン類」が0.013であることから、0.1128×0.013≒0.00147(質量%)と算出され、本件発明1における「0.0003?0.0016質量%」と重複一致する。
そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「次の(A)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有する容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点)
(相違点4)本件発明1は成分(B)としてテアニンの含有量を特定しているのに対し、甲2発明にはテアニンを含むこと及びその含有量について記載がない点。
(相違点5)本件発明1は、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを特定しているのに対し、甲2発明には、式(1)について記載がない点。

b 相違点についての検討
相違点4及び5について検討する。
前記相違点4及び5は、上記ウ(ア)aにおける相違点1及び2と同じであり、上記ウ(ア)bにおいて検討したように、甲2の緑茶飲料が他の緑茶飲料と同程度のテアニンを含有する蓋然性が高いということはできないし、他の緑茶飲料のテアニン含有量のみを甲2の緑茶飲料に適用し、非重合体カテキン類を0.025?0.2質量%、テアニンを0.002?0.018質量%、ルチンを0.0003?0.0016質量%の範囲に各含有量を調整するとともに、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを導き出すことは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び甲1、3?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
甲2に記載された発明を、飲料2?4から認定した場合においても同様である。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明及び甲1、3?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)よって、本件発明1?4は甲2に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本件発明1?4は、甲2に記載された発明及び甲1、3?9に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

オ 甲3を主引用例とする場合について
(ア)本件発明1について
a 対比
甲3発明における「総カテキン」は、本件発明1における「非重合体カテキン類」に相当し、その含有量は、786.1(ppm)=0.07861(質量%)と換算されるから、本件発明1における「0.025?0.2質量%」と重複一致する。
そして、甲3発明におけるテアニンの含有量は、23.90(ppm)=0.002390(質量%)と換算されるから、本件発明1における「0.002?0.018質量%」と重複一致する。
そうすると、本件発明1と甲3発明とは、
「次の(A)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、及び
(B)テアニン 0.002?0.018質量%
を含有する容器詰緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点)
(相違点6)本件発明1は成分(C)としてルチンの含有量を特定しているのに対し、甲3発明にはルチンを含むこと及びその含有量について記載がない点。
(相違点7)本件発明1は、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを特定しているのに対し、甲3発明には、式(1)について記載がない点。

b 相違点についての検討
相違点6及び7について検討する。
甲1?9には、
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、
(B)テアニン 0.002?0.018質量%、及び
(C)ルチン 0.0003?0.0016質量%
を含有し、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たす緑茶飲料は記載及び示唆がない。
そして、通常、緑茶飲料はルチン以外にも多様な成分を含むのであって、含有成分の種類や含有量は緑茶飲料によって異なり、そのバランスによって旨味、苦味、渋味、コク、香り等が調整されているものである。
そうすると、他の成分を考慮しないでルチンのみに着目し、甲3の緑茶飲料が他の緑茶飲料と同程度のルチンを含有する蓋然性が高いということはいえない。
また、他の緑茶飲料のルチン含有量のみを甲3の緑茶飲料に適用し、非重合体カテキン類を0.025?0.2質量%、テアニンを0.002?0.018質量%、ルチンを0.0003?0.0016質量%の範囲に各含有量を調整するとともに、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを導き出すことは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、本件発明1は、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明及び甲1?2、4?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明及び甲1?2、4?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)よって、本件発明1?4は甲3に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本件発明1?4は、甲3に記載された発明及び甲1?2、4?9に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

カ 甲4を主引用例とする場合
(ア)本件発明1について
a 対比
甲4発明におけるEGC、EC、EGCg及びECgは、本件発明1における「非重合体カテキン類」に相当し、その含有量は、170+39+104+13=326(mg/l)=0.0326(質量%)と算出されるから、本件発明1における「0.025?0.2質量%」と重複一致する。
そして、甲4発明におけるテアニンの含有量は、127(mg/l)=0.0127(質量%)と換算されるから、本件発明1における「0.002?0.018質量%」と重複一致する。
また、甲4発明における「荒茶」は製茶前の煎茶等であるから緑茶の一種といえ、「荒茶浸出液」は飲料であることが明らかである。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「次の(A)及び(C);
(A)非重合体カテキン類 0.025?0.2質量%、及び
(B)テアニン 0.002?0.018質量%
を含有する緑茶飲料。」
である点で一致し、以下の点において相違する。

(相違点)
(相違点8)本件発明1は成分(C)としてルチンの含有量を特定しているのに対し、甲3発明にはルチンを含むこと及びその含有量について記載がない点。
(相違点9)本件発明1は、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを特定しているのに対し、甲3発明には、式(1)について記載がない点。
(相違点10)本件発明1は緑茶飲料が容器詰であるのに対し、甲4発明には容器詰について記載がない点。

b 相違点についての検討
相違点8及び9について検討する。
前記相違点8及び9は、上記オ(ア)aにおける相違点6及び7と同じであり、上記オ(ア)bにおいて検討したように、甲4の緑茶飲料が他の緑茶飲料と同程度のルチンを含有する蓋然性が高いということはできないし、他の緑茶飲料のルチン含有量のみを甲4の緑茶飲料に適用し、非重合体カテキン類を0.025?0.2質量%、テアニンを0.002?0.018質量%、ルチンを0.0003?0.0016質量%の範囲に各含有量を調整するとともに、成分(B)と成分(C)の含有量が式(1)の関係を満たすことを導き出すことは、当業者が容易になし得たとはいえない。
したがって、相違点10について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明及び甲1?3、5?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(イ)本件発明2?4について
本件発明2?4はいずれも、本件発明1の発明特定事項をその発明特定事項とするものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲4に記載された発明であるとはいえず、また、甲4に記載された発明及び甲1?3、5?9に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

(ウ)よって、本件発明1?4は甲4に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項3号の規定により特許を受けることができないとはいえない。また、本件発明1?4は、甲4に記載された発明及び甲1?3、5?9に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1?4に係る特許は、当審が令和2年3月13日付けで通知した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことができない。
また、他に請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2020-06-29 
出願番号 特願2018-86568(P2018-86568)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A23F)
P 1 651・ 121- Y (A23F)
P 1 651・ 536- Y (A23F)
P 1 651・ 113- Y (A23F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 玉井 真人吉森 晃  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 齊藤 真由美
櫛引 智子
登録日 2019-06-14 
登録番号 特許第6539377号(P6539377)
権利者 花王株式会社
発明の名称 容器詰飲料  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
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