ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01N |
---|---|
管理番号 | 1364035 |
異議申立番号 | 異議2020-700307 |
総通号数 | 248 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-08-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-28 |
確定日 | 2020-07-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6604387号発明「送液装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6604387号の請求項1?6に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6604387号の請求項1?6に係る特許についての出願は、平成28年1月12日に出願され、令和元年10月25日にその特許権の設定登録がされ、令和元年11月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年4月28日に特許異議申立人山田宏基は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6604387号(以下「本件特許」という。)の請求項1?6の特許に係る発明(以下「本件発明1?6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 ポンプボディ、前記ポンプボディの先端に設けられ内部にポンプ室を有するポンプヘッド、前記ポンプボディ側から前記ポンプヘッド側へ伸びて先端が前記ポンプ室内に挿入されたプランジャ、及び前記プランジャの基端を保持して前記プランジャの軸方向へ前記プランジャを往復動させる駆動機構を有するプランジャポンプと、 前記プランジャポンプを収容する筐体であって、前記ポンプボディを収容するポンプボディ収容部、及び前記ポンプヘッドを収容するポンプヘッド収容部を有し、前記ポンプヘッド収容部が断熱部材により囲われて前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されている筐体と、を備え、 前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている、送液装置。 【請求項2】 前記プランジャポンプを複数台備え、それらのプランジャポンプのポンプ室が流路を介して互いに接続されており、 前記各プランジャポンプのポンプ室内の圧力を検出する圧力センサを有し、それらの前記圧力センサが前記ポンプヘッド収容部内に収容されている請求項1に記載の送液装置。 【請求項3】 前記駆動機構は前記ポンプボディの外側に設けられたモータを含み、 前記ポンプボディは前記モータとは熱的に分離された空間内に配置されている請求項1に記載の送液装置。 【請求項4】 分析流路と、 前記分析流路において移動相を送液する送液装置と、 前記分析流路上における前記送液装置の下流側に接続された試料注入部と、 前記分析流路上における前記試料注入部の下流側に接続された分析カラムと、 前記分析流路上における前記分析カラムの下流側に接続された検出器と、を備え、 前記送液装置は、 ポンプボディ、前記ポンプボディの先端に設けられ内部にポンプ室を有するポンプヘッド、前記ポンプボディ側から前記ポンプヘッド側へ伸びて先端が前記ポンプ室内に挿入されたプランジャ、及び前記プランジャの基端を保持して前記プランジャの軸方向へ前記プランジャを往復動させる駆動機構を有するプランジャポンプと、 前記プランジャポンプを収容する筐体であって、内部に、前記ポンプボディを収容するポンプボディ収容部、及び前記ポンプヘッドを収容するポンプヘッド収容部を有し、前記ポンプヘッド収容部が断熱部材により囲われて前記筐体の外部及び前記ポンプボディ収容部とは熱的に分離されている筐体と、を備え、 前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている、液体クロマトグラフ。 【請求項5】 前記プランジャポンプを複数台備え、それらのプランジャポンプのポンプ室が流路を介して互いに接続されており、 前記各プランジャポンプのポンプ室内の圧力を検出する圧力センサを有し、それらの前記圧力センサが前記ポンプヘッド収容部内に収容されている請求項4に記載の液体クロマトグラフ。 【請求項6】 前記駆動機構は前記ポンプボディの外側に設けられたモータを含み、 前記ポンプボディは前記モータとは熱的に分離された空間内に配置されている請求項4に記載の液体クロマトグラフ。」 第3 申立理由の概要 特許異議申立人山田宏基(以下「申立人」という。)は、請求項1?6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであるから、請求項1?6に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 より具体的には、申立人は、請求項1,4の「前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている」という記載が以下の2点において明確でない旨を主張する。 1 発明の詳細な説明には、「開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。」(段落0022)との記載があり、「開閉カバー8の内側側面」に断熱部材が設けられていることが記載されている。しかし、「開閉カバー8の少なくとも内側面」に断熱部材が設けられているとの記載はどこにもない。また、これ以外に開閉カバー8における断熱部材の配置に関する記載はない。さらに「開閉カバー8の内側側面」と「開閉カバー8の少なくとも内側面」とが同じ意味であるとの記載もないから、両者が同じ意味であるともいえない。 一方、本件特許の図1には送液装置2の斜視図が、図3と図4にはその断面図が記載されている。これらの図によれば、開閉カバー8がポンプヘッド収容部14の上下左右の面及び前面(本件特許の図1の左手前側)を兼ねていることが読み取れる。さらに、開閉カバー8のうち、ポンプヘッド10a、11aに向き合う面に断熱部材16が設けられていることが読み取れる。 しかし、開閉カバー8のうち、ポンプヘッド10a,11aに向き合う面は「前記開閉カバーの少なくとも内側面」と同じであるとはいえない。 以上のように、請求項1,4に記載された「前記開閉カバーの少なくとも内側面」とは、開閉カバーのどの部分を指すのかが明確ではない。 2 開閉カバーが厚みを有する場合、「開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている」とは、ポンプヘッドに向き合う面が断熱部材により構成されているのか、厚みを有する開閉カバーの内側のある部分が断熱部材により構成されているのか、それとも別の面が断熱部材により構成されているのかが特定できない。つまり、「開閉カバーの少なくとも内側面」という記載が開閉カバーのどの位置を指すかが明確ではない。 第4 当審の判断 1 本件発明1,4における「開閉カバーの少なくとも内側面」という記載の指すところについて検討する。 まず、「内側面」という文言について、当該文言が「内側」の「面」を指すのか、「内」の「側面」を指すのかを検討する。 本件特許の発明の詳細な説明には、「開閉カバー」と「断熱部材」の関係についての記載として、段落【0014】の「本発明に係る送液装置において、筐体が、ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、その開閉カバーの少なくとも内側面が断熱部材により構成されていることが好ましい。」という記載と、段落【0022】の「ポンプボディ収容部12とポンプヘッド収容部14は断熱部材18によって熱的に分離されている。開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。これにより、ポンプヘッド収容部14は断熱部材16,18によって囲われた空間となっている。」という記載がある。段落【0014】の記載は本件発明1,4の記載と同じであり、段落【0022】の記載は本件発明1,4の記載と異なるものであるから、段落【0022】の記載について検討する。 本件特許の段落【0022】には「ポンプボディ収容部12とポンプヘッド収容部14は断熱部材18によって熱的に分離されている。開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。」という記載に続いて「これにより、ポンプヘッド収容部14は断熱部材16,18によって囲われた空間となっている。」と記載されている。「断熱部材16」が「開閉カバー8」の「内側」の「側面」のみに設けられているのでは、「断熱部材16」と「断熱部材18」によって「ポンプヘッド収容部14」が囲われているとはいえないから、同段落の「開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。」という記載における「内側側面」は「開閉カバー8」の「内側」の「側面」だけではなく、「内側」の「面」を意図した文言であるといえる。 さらに、本件特許の段落【0019】には「まず、送液装置の一実施例を、図1から図3を用いて説明する。」とあり、段落【0022】の記載はこの説明の一部であるから、図3は段落【0022】に記載の「開閉カバー8の内側側面」に設けられた「断熱部材16」の配置を描いた図であるといえる。そして、図3における「断熱部材16」は「開閉カバー8」の「内」の「側面」だけではなく「内側」の「面」に設けられているものである。すなわち、本件特許の段落【0022】における「開閉カバー8の内側側面」という記載は、「開閉カバー8」の「内側」の「側面」だけではなく、「内側」の「面」を指すことは、本件特許の図3からも見てとれる。 したがって、本件特許の段落【0022】における「開閉カバー8の内側側面」という記載における「内側側面」は、「内側」の「面」を指すと理解できる。 そうすると、本件発明1,4における「前記開閉カバーの少なくとも内側面」という記載における「内側面」は、本件特許の段落【0022】及び図3を参酌して、「内」の「側面」ではなく「内側」の「面」を指すと理解できる。 よって、本件発明1,4における「開閉カバーの少なくとも内側面」という記載は明確といえる。 2 申立人の主張について検討する。 (1)上記「第3」の「1」について ア 「発明の詳細な説明には、『開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。』(段落0022)との記載があり、『開閉カバー8の内側側面』に断熱部材が設けられていることが記載されている。しかし、『開閉カバー8の少なくとも内側面』に断熱部材が設けられているとの記載はどこにもない。また、これ以外に開閉カバー8における断熱部材の配置に関する記載はない。さらに、『開閉カバー8の内側側面』と『開閉カバー8の少なくとも内側面』とが同じ意味であるとの記載もないから、両者が同じ意味であるともいえない。」という主張について検討する。 本件特許の発明の詳細な説明の段落【0022】の「開閉カバー8の内側側面には板状の断熱部材16が設けられている。」という記載における「内側側面」について、上記「第4」の「1」にて記載したように、「内側側面」は「開閉カバー8」の「内側」の「側面」だけではなく、「内側」の「面」を意図した文言であるといえる。 そうすると、本件特許の段落【0022】の「開閉カバー8の内側側面」という記載と、本件発明1,4の「開閉カバーの少なくとも内側面」という記載は、同じ意味であると認められる。 イ 「本件特許公報の図面からは開閉カバー8のうち、ポンプヘッド10a,11aに向き合う面に断熱部材16が設けられることが読み取れるが、開閉カバー8のうち、ポンプヘッド10a,11aに向き合う面は「前記開閉カバーの少なくとも内側面」と同じであるとはいえない。」という主張について、本件発明1,4には「ポンプヘッド」に「向き合う面」という文言はない。 そして上記「第4」の「1」に記載したように、本件発明1,4における「開閉カバーの少なくとも内側面」という記載は明確であるところ、本件発明1,4に記載がない「ポンプヘッド」に「向き合う面」と、「開閉カバーの少なくとも内側面」が同じであるか異なるかが、本件発明1,4が明確であるか否かに影響するものではない。 ウ 上記ア、イより、上記「第3」の「1」に記載の申立人の主張は採用できない。 (2)上記「第3」の「2」について 上記「第4」の「1」にて記載したように、本件発明1,4の「前記筐体は、前記ポンプヘッド収容部の開閉を行なうための開閉カバーを有し、前記開閉カバーの少なくとも内側面が前記断熱部材により構成されている」という記載における「開閉カバー」は、本件特許の段落【0022】及び図3を参酌すると、その「少なくとも内側面」を構成する「断熱部材」と、「ポンプボディ収容部」と「ポンプヘッド収容部」とを熱的に分離する「断熱部材」とで、「ポンプヘッド収容部」を囲うものであるといえる。 そしてこのことは、本件発明1,4の「開閉カバー」が厚みを有するものであったとしても変わるところではない。 よって、上記「第3」の「2」に記載の申立人の主張は採用できない。 以上から、申立人の主張は採用できない。 3 よって、本件発明1,4に係る特許は明確であり、本件発明1,4にそれぞれ従属する本件発明2?3,5?6に係る特許も明確である。 第5 むすび したがって、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1?6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-07-10 |
出願番号 | 特願2017-561074(P2017-561074) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(G01N)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 赤坂 祐樹 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
▲高▼見 重雄 磯野 光司 |
登録日 | 2019-10-25 |
登録番号 | 特許第6604387号(P6604387) |
権利者 | 株式会社島津製作所 |
発明の名称 | 送液装置 |
代理人 | 江口 裕之 |
代理人 | 岸本 雅之 |
代理人 | 阿久津 好二 |
代理人 | 喜多 俊文 |
代理人 | 野口 大輔 |
代理人 | 妹尾 明展 |