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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G16H
管理番号 1364038
異議申立番号 異議2020-700001  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-01-06 
確定日 2020-07-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第6596702号発明「プログラム、及び、情報処理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6596702号の請求項1?4,6,7に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6596702号の請求項1?4,6,7に係る特許についての出願は,令和元年8月1日に出願され,令和元年10月11日にその特許権の設定登録がされ,令和元年10月30日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和2年1月6日に特許異議申立人Dr.JOY株式会社(以下,「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。


2 本件発明
特許第6596702号の請求項1?4,6,7の特許に係る発明(以下,それぞれ「本件発明1」?「本件発明7」という。)は,それぞれ,その特許請求の範囲の請求項1?4,6,7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置と,当該医療施設が所有する第二通信装置と通信可能なコンピュータを,
医薬情報担当者の担当者IDと,当該医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の担当医療施設と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を紐づけて記憶する記憶手段,
或る担当者IDと或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,当該位置情報が示す医療施設を担当しているか否かを判定する判定手段,
前記判定手段が肯定判定した場合,担当者IDに紐づけられている位置情報を,受信した位置情報に更新する更新手段,
前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する出力手段,
として機能させるためのプログラム。
【請求項2】
前記記憶手段には,医療施設毎に,医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者が所属する会社名と,当該医薬情報担当者の位置情報とが紐づけられたリストが記憶され,
前記出力手段は,前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づくリストを当該第二通信装置に出力する,
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記リストには,前記医薬情報担当者が担当する担当商品が当該医薬情報担当者の名前に紐づけられている,
請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記リストには,前記医薬情報担当者が担当する診療科が当該医薬情報担当者の名前に紐づけられている,
請求項2又は3に記載のプログラム。

【請求項6】
前記リストには,前記医薬情報担当者の警告回数が当該医薬情報担当者の名前に紐づけられ,
前記記憶手段には,前記医療施設毎に警告条件が紐付けられており,
前記判定手段は,或る担当者IDと或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,当該位置情報が示す医療施設の警告条件を満たしたか否かを判定し,
前記更新手段は,前記判定手段が前記警告条件を満たしたと肯定判定した場合,受信した位置情報が示す医療施設のリストにおいて,受信した担当者IDに紐づく警告回数を更新する,
請求項2乃至5の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置と,当該医療施設が所有する第二通信装置と通信可能な情報処理装置であって,
医薬情報担当者の担当者IDと,当該医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の担当医療施設と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を紐づけて記憶する記憶手段と,
或る担当者IDと或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,当該位置情報が示す医療施設を担当しているか否かを判定する判定手段と,
前記判定手段が肯定判定した場合,担当者IDに紐づけられている位置情報を,受信した位置情報に更新する更新手段と,
前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する出力手段と,
を備える情報処理装置。


3 申立理由の概要
申立人は,主たる証拠として「Dr.JOY 2017.7.10 Vol.4 医療法人沖縄徳州会 湘南鎌倉総合病院」(甲第1号証),「コストと手間をかけずに,病院セキュリティを高める施策-医局前やオペ室で業者を待たせない仕組み-」,第67回日本病院学会,2017年7月20日(甲第2号証の1,甲第2号証の2),「使用許諾契約書」(甲第3号証),及び,従たる証拠として,特開2018-50739号公報(甲第4号証),「beacapp HERE 所在地見える化ソリューション Beacapp Here ビーコンとスマホでオフィス・作業現場を効率化」2019年4月1日(甲第5号証),「Dr.JOY 2018.6.15 Vol.19 東京都済生中央病院」(甲第6号証),「使用許諾契約書」(甲第7号証),特開2014-92939号公報(甲第8号証)を提出し,請求項1?4,6,7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,請求項1?4,6,7に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。


4 甲号証の記載と主引用発明
(1)甲第1号証及び甲第2号証記載事項
ア 甲第1号証は,2017年7月10日付けのDr.JOY株式会社発行の広報資料の写しあり,次の事項が記載されている。
(ア)「医療法人 沖縄徳州会 湘南鎌倉総合病院」(1頁見出し)

(イ)「(注1)医薬法 第1条の4 病院又は診療所の管理者は,…当該患者が適切な環境下で療養を継続することができるよう配慮しなければならない。
第二十条 病院,診療所又は助産所は,清潔を保持するものとし,その構造設備は,衛生上,防火上及び保安上安全と認められるようなものでなければならない。」(1頁「導入の背景」の項の脚注)

(ウ)「館内入口の3箇所にDr.JOYの入退館記録端末を設置し,業者の入退館時間を管理するようにした。」(1頁「入退館管理機能の導入 -低コストでセキュリティ強化-」の項の中欄)

(エ)「IC機能により,入館/退館時間を正確に記録することができる。また,業者が入館すると,面会相手のスタッフにメールで来院の通知が送られ,Dr.JOYの画面上に「訪問中」の印がつく。これにより,在院している業者の管理と把握が可能になった。」(1頁「入退館管理機能の導入 -低コストでセキュリティ強化-」の項の右欄)

(オ)下図とともに「取引業者が持つ入退館カードは,Dr.JOY社から発行される。病院ごとに紐付けが行われるため,カードを持っていても病院の担当者でない場合や,病院が「訪問不可」と設定したユーザーは入退館できない。また,カードは1年ごとに更新されるため,最新の担当者情報が保たれ,不正な入館を防ぐことができる。」(2頁「入退館手続きのフロー」の項)


イ 甲第2号証(甲第2号証の1及び甲第2号証の2)は,2017年7月20日付けの湘南鎌倉総合病院総務課課長による発表資料の写しであり,以下の事項が記載されている。
(ア)「湘南鎌倉総合病院では,入退館システムを3箇所に設置 (1)防災センター (2)納品搬入口 (3)管理棟入口 ※(2)(3)については,当院が許可をした納品業者様のみがチェックインできるようになっており,事前アポイントなしの業者様のみ(1)で入館手続きを行ってもらう。」(6頁上「入退館システム」のシート,なお,甲第2号証の1の丸数字を,ここでは半角カッコ数字で表記する。)

(イ)「カードリーダに専用のカードをあてて入退館(カードのない人は手入力)」,「入館中の取引業者には,一覧画面に「訪問中」の表示が出る」及び「バイエル薬品」の「製薬企業(MR)」の具体的な氏名が図示されている。(甲2号証の1・6頁下「入館情報の把握」のシート,甲第2号証の2)

(ウ)「Dr.JOY導入の効果 院内の声 【薬剤部 責任者】」及び「Dr.JOY導入の効果 院内の声 【総務課 責任者】」(それぞれ甲2号証の1・7頁の上下のシートの見出し)

(エ)「そんな中,Dr.JOYを導入し,当院と取り引きのある業者さんの社名・担当者名が顔写真付きで一目で分かるようになり,またアポイント情報がシステム上に統合されたため,院内のセキュリティ向上に大変役立っている容易に感じます。」(甲2号証の1・8頁上「Dr.JOY導入の効果 院内の声 【医局秘書 担当者】」のシート)

公然実施に係る事実について
甲第1号証と甲第2号証は,いずれも,Dr.JOY株式会社から医療法人沖縄徳州会湘南鎌倉総合病院(以下,「湘南鎌倉総合病院」という。)に提供されたDr.JOYのシステム(以下,「Dr.JOYシステム」という。)について記載したものである。そして,甲第3号証によれば,本件特許の出願日の日前である平成29年2月28日から平成30年2月27日まで,Dr.JOYシステムの使用に係る契約がDr.JOY株式会社と湘南鎌倉総合病院との間で締結されており,JOYシステムがDr.JOY株式会社の広報資料(甲第1号証)や湘南鎌倉総合病院の職員による発表資料(甲第2号証)に記載されているから,この契約期間において,Dr.JOYシステムが湘南鎌倉総合病院において使用されており,さらに,JOYシステムの使用に際して,これらの広報資料や発表資料に記載された内容が公開可能なものであることを前提として使用されていたことが明らかである。
よって,Dr.JOYシステムの発明(引用発明)は,本件特許の出願日前に公然実施されたものと認められる。

エ Dr.JOYシステムの発明(引用発明)について
上記ア及びイから,Dr.JOYシステムの発明(引用発明)について,次のとおり把握することができる。

(ア)上記イ(ウ)及び(エ)並びに上記ア(オ)の図の「※一般医師・秘書・薬剤師」の画面には「面会承認」,「カレンダーに転記」とあり,Dr.JOYシステムにおいて,面会承認に必要なボタンや,面会情報を含むカレンダー等が表示され,「※管理者」の画面には「日別の面会状況が一覧で分かる」とあり,入退館の予約状況一覧を表示させることができることから,Dr.JOYシステムは,異なる部署の病院内担当者が使用する複数の業務用の端末(病院が所有する端末)を含む構成であることが明らかである。そして,上記ア(オ)から,Dr.JOYシステムにおいて,これらの業務用端末と3箇所に設置された入退館記録端末と,ネットワークを介してこれらの端末と通信可能に接続されていることも明らかである。
そして,甲第1号証2頁「入館手続きのフロー」の項の「※管理者」の画面には,入退館の予約状況一覧が表示されることから,Dr.JOYシステムでは,予約状況等が一元的に管理されていることは明らかであり,Dr.JOYシステムは,予約状況等を一元的に管理するサーバを備えることも明らかである。このとき,Dr.JOYシステムのサーバを所望の手段として機能させるプログラムが存在することも明らかである。

(イ)上記ア(ウ)並びにイ(ア)及び(イ)から,Dr.JOYシステムにおいて,(1)防災センター,(2)納品搬入口,(3)管理棟入口に「入退館記録端末」が設置されることは明らかであり,業者である医薬情報担当者(MR)が使用する入館カードには,使用する医薬情報担当者(MR)を特定するIDが付与されていることは技術常識である。

(ウ)上記ア(オ)から,Dr.JOYシステムにおいて,カードを持っていても病院の担当者でない場合,湘南鎌倉総合病院に入退館できないことから,医薬情報担当者(MR)が病院の担当者であるか否かの判定が行われることは明らかであり,判定処理は,医薬情報担当者(MR)が当該病院を担当していることを示す「医薬情報担当者(MR)の担当病院情報」に基づき行われることの明らかである。このとき,甲第2号証の2から,名前及び訪問中か否かを示す「入館に関するステータス情報」も医薬情報担当者(MR)のIDと紐付けられて記憶・管理されていることは明らかである。

(エ)上記ア(エ)及び(オ)並びに上記イ(イ)から,Dr.JOYシステムは,医薬情報担当者(MR)が入退館記録端末のカードリーダに入館カードをあて,病院の担当者であると判定されると入館でき,このとき,上記ア(ウ)及び(エ)並びに上記イ(イ)から,Dr.JOYシステムのサーバは,当該医薬情報担当者(MR)の入館に関するステータス情報を「訪問中」に更新することは明らかである。

(オ)上記ア(オ)及び上記イ(イ)には,Dr.JOYシステムにおいて,管理者の画面に「日別の面会状況一覧」を表示させることや,医薬情報担当者(MR)の氏名と入館に関するステータス情報を示す一覧画面を表示させることが示されており,このような表示を行わせるために,Dr.JOYシステムでは,プッシュ配信とは異なるという意味で,業務用の端末からサーバに問合せを行う構成となっていることは技術常識である。

オ 上記ウ,エから,Dr.JOYシステムから把握できる発明(以下「引用発明」という。)は,次のとおりであると認められる。

「 病院内における医薬情報担当者(MR)が入退館の手続きを行う,防災センター,納品搬入口及び管理棟入口の3箇所に設置された入退館記録端末と,病院内担当者が使用し病院が所有する端末とネットワークを介し通信可能に接続されたサーバを機能させるプログラムであって,
サーバに,
医薬情報担当者(MR)のID,名前,医薬情報担当者(MR)の担当病院情報,入館に関するステータス情報が紐付けられて記憶・管理させ,
入退館記録端末のカードリーダに医薬情報担当者(MR)が所有するカードをあて,当該医薬情報担当者(MR)が病院の担当者であると判定された場合,前記入館に関するステータス情報を「訪問中」に更新し,
前記病院内担当者が使用し病院が所有する端末から問合せがあると,医薬情報担当者(MR)の氏名と入館に関するステータス情報を示す一覧画面を表示させる
プログラム。」

(2)その他甲号証の記載について
ア 甲第4号証記載事項
「【請求項1】
病院内で看護師が携帯する情報機器端末と,複数の患者の看護情報を病院内の複数の区域に関連付けて記憶する記憶手段と,前記複数の区域のうちから看護師が現在いる区域を特定するための位置情報システムと,特定された前記区域に滞在する患者の看護情報を前記記憶手段から読み出して該区域にいる看護師の前記情報機器端末に提供するための制御を行う制御手段とを含むことを特徴とする看護情報処理システム。」

「 【0020】
一方,無線位置情報システム3には,看護師Nが携行する可動局機31と,病院内の複数の区域にそれぞれ設置された固定局機32と,可動局機31と固定局機32との間の交信情報に基づいて看護師Nが現在いる院内区域を特定する位置情報サーバー33とが含まれている。そして,特定された看護師の位置情報が,位置情報サーバー33の記憶装置331に蓄積され,システムの稼働中に常時,位置情報サーバー33からナースコールサーバー26を介して制御機25に提供される。」

「 【0022】
ナースコールシステム2の記憶手段,例えば,ナースコールサーバー26の記憶装置261には,図3に示すように,看護情報テーブル262,看護師情報テーブル263および区域情報テーブル264が設けられている。看護情報テーブル262には,患者IDが,担当の看護師IDと共に,受診科目や看護履歴等を含む患者特有の看護情報に予め関連付けて記憶されている。看護師情報テーブル263には,看護師IDが可動局IDおよび情報機器端末IDに予め関連付けて記憶されている。区域情報テーブル264には,複数の患者の看護情報を病院内の複数区域に関連付けるために,固定局IDが廊下灯IDおよび/またはナースコール子機IDを介して患者IDに予め関連付けて記憶されている。」

イ 甲第5号証記載事項
「Beacapp Hereは,ビーコンとスマートフォンを使って,オフィスや工場・倉庫などのマップ上で所在地を確認できるサービスです。」(スライド5頁上)

「リアルタイムな所在地把握 現場マップを使って,従業員がどこにいるか,PCからでもスマートフォンからでも簡単に確認できます。」(スライド5頁左下)

「オフィス・工場内の行動データの解析 時間帯別の人の配置や,エリアによる利用者の偏りなどを可視化するためのグラフ機能をご提供します。」(スライド5頁右下)

「スマホ導入済み 社員様がスマホを持ちます」(スライド8頁左上)

「スマホ未導入 社員様がビーコンを持ちます」(スライド8頁右上)

ウ 甲第6号証記載事項
「Dr.JOY導入と同時に医師の出待ちを禁止する周知も併せて行ったことで,院内におけるMRの不要な滞在が減り,クレームがなくなったことも,患者サービスという点で効果があった。」(1頁「セキュリティ向上と面会調整の効率化を同時に叶える」の項左欄)

エ 甲第8号証記載事項
「【請求項4】
センサのターゲットとなる対象物が設置されている領域を含む領域を通信領域とする通信装置から,携帯端末装置が前記通信装置から受信した電波の電波強度の測定結果及び前記携帯端末装置のIDを含む情報を取得する携帯端末情報取得部と,
過去に前記携帯端末装置に送信した警告情報の送信回数または前記携帯端末装置に受信された警告情報の受信回数を格納する警告回数テーブルと,
過去に前記携帯端末装置に送信した警告情報の送信回数または前記携帯端末装置に受信された警告情報の受信回数に対応する電波強度閾値を格納する閾値テーブルと,
前記警告回数テーブルから,過去に前記携帯端末装置に送信した警告情報の送信回数または前記携帯端末装置に受信された警告情報の受信回数を抽出する警告回数抽出部と,
前記閾値テーブルから,前記警告回数抽出部が抽出した前記送信回数または前記受信回数に対応する電波強度閾値を抽出する閾値抽出部と,
前記通信装置から取得した前記電波強度の測定結果を,前記閾値抽出部が抽出した前記電波強度閾値と比較する比較部と,
前記比較部の比較結果に応じて,前記携帯端末装置に警告情報を送信するかどうか判定する判定部と,
を含むことを特徴とする制御装置。」

「 【0038】
警告回数テーブル32は,過去に制御装置2が携帯端末装置6に送信した警告情報の送信回数を格納してもよい。警告情報の送信回数は,制御装置2が携帯端末装置6へ警告情報を送信するたびにインクリメントされる。あるいは,警告回数テーブル32は,過去に携帯端末装置6により受信された警告情報の受信回数を格納してもよい。警告情報の受信回数は,制御装置2による警告情報の送信に対して携帯端末装置6から制御装置2に確認のメッセージなどの応答が返されるたびにインクリメントされる。」


5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明との対比
(ア)引用発明の「病院」は,本件特許発明1の「医療施設」に相当し,引用発明の「病院内担当者が使用し病院が所有する端末」は,「当該医療施設が所有する第二通信装置」に相当する。
また,引用発明1の「病院内における医薬情報担当者(MR)が入退館の手続きを行う,防災センター,納品搬入口及び管理棟入口の3箇所に設置された入退館記録端末」は,医薬情報担当者の位置情報を取得可能でない点で相違するものの,病院内に設置されることから,本件発明1の「医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置」と,「医療施設内における第一通信装置」で共通する。
そして,引用発明の「サーバ」は,入退館記録端末」及び病院が所有する端末と「ネットワークを介し通信可能に接続され」ていることから,本件発明1の「医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置と,当該医療施設が所有する第二通信装置と通信可能なコンピュータ」と,「医療施設内における第一通信装置と,当該医療施設が所有する第二通信装置と通信可能なコンピュータ」で共通する。

(イ)引用発明の「医薬情報担当者(MR)のID」,「名前」及び「医薬情報担当者(MR)の担当病院情報」は,それぞれ,本件発明1の「医薬情報担当者の担当者ID」,「当該医薬情報担当者の名前」及び「当該医薬情報担当者の担当医療施設」に相当する。
さらに,引用発明の「入館に関するステータス情報」は,医薬情報担当者(MR)の位置を示す情報ではない点で異なるものの,当該医薬情報担当者(MR)が病院に存在するか否かを示す情報であって,医薬情報担当者(MR)が病院にいる場合に具体的にどこにいるかを示す本件発明1の「当該医薬情報担当者の位置情報」と,「当該医薬情報担当者の存在を示す情報」で共通する。
そして,引用発明のサーバは,プログラムによって「医薬情報担当者(MR)のID,名前,訪問許否情報,入館に関するステータス情報」を「紐付け」て記憶する記憶手段として機能させられる点で,引用発明におけるプログラムによって機能させられる記憶手段は,本件発明1の「医薬情報担当者の担当者IDと,当該医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の担当医療施設と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を紐づけて記憶する記憶手段」と,「医薬情報担当者の担当者IDと,当該医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の担当医療施設と,当該医薬情報担当者の存在を示す情報と,を紐づけて記憶する記憶手段」で共通する。

(ウ)引用発明の「入退館記録端末のカードリーダに医薬情報担当者(MR)が所有するカードをあて,当該医薬情報担当者(MR)が病院の担当者であると判定された場合」の判定処理」は,入退館記録端末のカードリーダに医薬情報担当者(MR)が所有するカードをあてると,入館記録端末がカードから医薬情報担当者(MR)のIDを読み取り,読み取ったIDをサーバに送信し,サーバにおいて記憶された当該IDと紐付けられた「医薬情報担当者(MR)の担当病院情報」と照合することで,当該医薬情報担当者(MR)の病院の担当者か否か判定をすることであり,引用発明における当該判定処理を実行する手段は本件発明1の「位置情報」に対応する情報をサーバが受信する構成であるかは不明であるものの,本件発明1の「或る担当者IDと或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,当該位置情報が示す医療施設を担当しているか否かを判定する判定手段」と,「或る担当者IDを前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,医療施設を担当しているか否かを判定する判定手段」で共通する。

(エ)引用発明の「当該医薬情報担当者(MR)が病院の担当者であると判定された場合,前記入館に関するステータス情報を「訪問中」に更新」することは,医薬情報担当者(MR)が病院内に存在することを示す情報に更新する点で,本件発明1の「前記判定手段が肯定判定した場合,担当者IDに紐づけられている位置情報を,受信した位置情報に更新する更新手段」と,「前記判定手段が肯定判定した場合,担当者IDに紐づけられている医薬情報担当者の存在を示す情報を更新する更新手段」で共通する。

(オ)引用発明の「前記病院内担当者が使用し病院が所有する端末から問合せがあると,医薬情報担当者(MR)の氏名と入館に関するステータス情報を示す一覧画面を表示させる」について,医薬情報担当者(MR)の情報は,サーバで管理されることから,業務用端末を所有する病院に紐付いていることは明らかであり,プログラムによってサーバが表示させる手段として機能させられる点で,当該表示させられる手段は,本件発明1の「前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する出力手段」と,「前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の存在を示す情報と,を当該第二通信装置に出力する出力手段」で共通する。

(カ)引用発明の「プログラム」はサーバを,記憶手段,判定手段,出力手段として機能させることは明らかである点で,後述の相違点は別にして,本件発明1の「として機能させるためのプログラム」に相当する。

(キ)一致点・相違点
上記(ア)?(カ)から,本件発明1と引用発明とは,次の点で一致又は相違する。

<一致点>
医療施設内における第一通信装置と,当該医療施設が所有する第二通信装置と通信可能なコンピュータを,
医薬情報担当者の担当者IDと,当該医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の担当医療施設と,当該医薬情報担当者の存在を示す情報と,を紐づけて記憶する記憶手段,
或る担当者IDを前記第一通信装置から受信した場合に,前記記憶手段を参照して,当該担当者IDに紐づく医薬情報担当者が,医療施設を担当しているか否かを判定する判定手段,
前記判定手段が肯定判定した場合,担当者IDに紐づけられている存否情報を更新する更新手段,
前記第二通信装置から出力要求があった場合,当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の存在を示す情報と,を当該第二通信装置に出力する出力手段,
として機能させるためのプログラム。

<相違点>
医薬情報担当者の存在を示す情報が,本件発明1は医療施設内における「医薬情報担当者の位置情報」であって,判定手段による医薬情報担当者が医療施設を担当しているかとの判定のために,第一通信装置から取得されるのに対し,引用発明では,医薬情報担当者が当該医療施設に存在することを単に示す「入館に関するステータス情報」である点。

(ク)なお,申立人は,特許異議申立書で,次のように主張する。
「甲1発明における「第二通信装置」は,本件特許発明1における「第二通信装置」に相当し,同様に「記憶手段」は「記憶手段」に,「判定手段」は「判定手段」に,「更新手段」は「更新手段」に相当する。」
しかしながら,上述したとおり,引用発明の「入退館記録端末」は「医薬情報担当者の位置情報」を取得する機能を有しておらず,これに伴い,引用発明の「記憶手段」,「判定手段」,「更新手段」の機能は,本件発明1の位置情報に基づいた処理を行う「記憶手段」,「判定手段」,「更新手段」の機能と異なるものである。
よって,申立人の上記主張を採用することはできず,一致点及び相違点を上記のとおり認定する。

イ 判断
(ア)甲第4号証には,上記第4号証記載事項のとおり,記載事項は,特定された前記区域に滞在する患者の看護情報を前記記憶手段から読み出して該区域にいる看護師の前記情報機器端末に提供することを特定するものであり,患者又は看護師Nの位置情報に関する情報が用いられることが記載されている。
しかしながら,甲第4号証には,この位置情報を用いて医療施設の担当の判定を行い,判定結果に基づく処理を行うことは記載されておらず,示唆もされていない。また,甲第4号証には,第二通信装置から出力要求に応じて患者又は看護師Nの位置情報を出力することも記載されておらず,示唆もされていない。
そして,甲第4号証には,「医薬情報担当者の担当医療施設」についても記載されていないことから,担当医療施設の概念のない甲第4号証を引用発明に適用する動機はなく,適用できたとしても,上記相違点の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項であるとはいない。
甲第5号証には,上記第5号証記載事項のとおり,ビーコンとスマートフォンを使って,従業員の所在地を確認することが記載されている。
しかしながら,甲第5号証には,この位置情報を用いて施設の担当の判定を行うものではない。また,甲第5号証には,「当該第二通信装置を所有する医療施設に紐づく医薬情報担当者の名前と,当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する」ことは記載されておらず,示唆もされていない。
そして,甲第5号証には,「当該医薬情報担当者の担当医療施設」について記載されていないことから,担当医療施設の概念のない甲第4号証を引用発明に適用する動機はなく,適用できたとしても,上記相違点の構成とすることは,当業者が容易になし得た事項であるとはいない。
また,上記第6号証?第8号証記載事項には,上記相違点に関する構成は,記載も示唆もされていない。
また,上記相違点については,当該技術分野における周知技術でもない。

(イ)また,引用発明では,「入退館記録端末」が,防災センター,納品搬入口及び管理棟入口の3箇所に設置されており,医薬情報担当者(MR)が入館手続きを行うと,防災センター,納品搬入口及び管理棟入口から,手続きを行った医薬情報担当者(MR)を特定する情報,及び,どこの設置された入退館記録端末であるかを示す信号を併せて,「訪問不可」とされている否か判定を依頼する信号がサーバに送られることは当業者であれば理解できる事項である。
そして,判定結果が「訪問不可」でないときには,入館に関するステータスが「訪問中」になるのみで,その後,医薬情報担当者(MR)が病院内のどこにいるかを特定することはできず,このため,どこに設置された入退館記録端末であるかを示す信号に基づき,医薬情報担当者(MR)が所在する位置を特定することはできない。
また,どこの設置された入退館記録端末であるかを示す信号「○○病院」というエリアを特定する位置情報であると解釈をしても,引用発明では,病院内担当者が使用し病院が使用する端末からの問合せに対しては,医薬情報担当者(MR)が当該病院に「訪問中」であるか否かを示す一覧を示すのみで,他の病院における在・不在を不必要に示すものではなく,この一覧は医薬情報担当者(MR)の当該病院における在・不在を示す情報であって,位置情報を示すものではない。
このように,引用発明には,医薬情報担当者(MR)の位置情報を取得し,管理しようとする技術的思想は含まれていない。また,引用発明は,サーバで訪問許可に関する情報を管理し,これを用いて,医薬情報担当者(MR)が当該病院に「訪問中」か否かを管理するものであるから,入退館記録端末から送られてきたどこの設置された入退館記録端末であるかを示す信号を,医薬情報担当者(MR)の位置情報として使用する動機もない。

(ウ)このように,引用発明において,入退館記録端末から送られてきたどこの設置された入退館記録端末であるかを示す信号を,医薬情報担当者(MR)の位置情報として使用する動機もない以上,入退館記録端末を,甲第4号証,甲第5号証におけるビーコンの機能を適用しようとする動機はないことから,当業者が容易に想到することができたとはいえない。

ウ 小括
したがって,本件発明1は,当業者であっても引用発明及び甲第4?8号証記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)本件発明7について
本件発明7について,本件発明7は,本件発明1に対応する情報処理装置の発明であり,本件発明7は「医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置」,「…或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,…,当該位置情報が示す医療施設を担当しているか否かを判定する」こと,「担当者IDに紐づけられている位置情報を,受信した位置情報に更新する」こと,「当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する」ことに対応する構成を備えるものであるから,本件発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明及び甲第4?8号証記載事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)請求項2?4,6について
また,本件発明2?4,6は,本件発明1の「医療施設内における医薬情報担当者の位置情報を取得可能な第一通信装置」,「…或る位置情報を前記第一通信装置から受信した場合に,…,当該位置情報が示す医療施設を担当しているか否かを判定する」こと,「担当者IDに紐づけられている位置情報を,受信した位置情報に更新する」こと,「当該医薬情報担当者の位置情報と,を当該第二通信装置に出力する」ことに関する構成と同一の構成を備えるものであるから,本件発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び甲第4?8号証記載事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

6 むすび
以上を踏まえれば,請求項1?4,6,7に係る特許は,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また,他に請求項1?4,6,7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-07-16 
出願番号 特願2019-141909(P2019-141909)
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G16H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮地 匡人  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松田 直也
相崎 裕恒
登録日 2019-10-11 
登録番号 特許第6596702号(P6596702)
権利者 ホスピタルコンプライアンスマネージメントジャパン株式会社
発明の名称 プログラム、及び、情報処理装置  
代理人 南 俊宏  
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