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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C09J
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09J
管理番号 1364039
異議申立番号 異議2020-700343  
総通号数 248 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-08-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-05-18 
確定日 2020-07-27 
異議申立件数
事件の表示 特許第6608011号発明「光学用粘着シート」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6608011号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6608011号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成22年6月10日(優先権主張 平成21年6月18日、日本国)を国際出願日とする特願2011-519745号の一部を平成29年7月20日に特願2017-140426号(「子出願」という。)として出願し、さらに、前記「子出願」の一部を平成30年7月26日に出願したものであって、令和元年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同年11月20日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1?4に係る特許に対し、令和2年5月18日に特許異議申立人高橋麻衣子(以下、「申立人」という。)が、特許異議の申立てを行った。

第2 本件発明
特許第6608011号の請求項1?4の特許に係る発明(以下、「本件発明1」?「本件発明4」などという。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
アクリル系粘着剤層を含む光学用粘着シートであって、
前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数1?10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルを含み、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、68?100重量部であり、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であり、
前記モノマー成分は、さらに極性基含有モノマーを含んでいてもよく、
前記極性基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であり、
前記極性基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びN-ビニル-2-ピロリドンから選ばれるものであり、
周波数1MHzでの比誘電率が3.16?4.65であり、周波数1MHzでの誘電正接が0.065?0.116であり、周波数1.0×10^(6)Hzでの比誘電率が、周波数1.0×10^(4)Hzでの比誘電率の60%以上であり、
周波数1.0×10^(6)Hzでの誘電正接と周波数1.0×10^(4)Hzでの誘電正接との差の絶対値が、0.15以下であり、
静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられることを特徴とする光学用粘着シート。
【請求項2】
厚み精度が、10%以下である請求項1記載の光学用粘着シート。
【請求項3】
アクリル系粘着剤層が、紫外線照射による紫外線重合方法で調製された粘着剤組成物から形成される請求項1又は2記載の光学用粘着シート。
【請求項4】
請求項1?3の何れかの項に記載の光学用粘着シートを用いた液晶表示装置又は入力装置。」

第3 申立理由の概要
申立人は、下記3の甲第1号証及び甲第2号証を提出し、次の1及び2の点について主張している(以下、甲号証は、単に「甲1」などと記載する。)。
1 特許法第29条第1項第3号
本件発明1、2及び4は、甲1に記載された発明であるから、本件発明1、2及び4は、同法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 同法第29条第2項
本件発明1?4は、甲1に記載された発明に基いて、出願前に当業者が容易に想到し得る発明であるから、本件発明1?4は、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 甲1及び甲2
甲1:特開2009-76432号公報
甲2:実験成績証明書(申立人が令和2年3月26日に作成したもの)

第4 甲1の記載
甲1には、「透明導電性フィルム、その製造方法及びそれを備えたタッチパネル」(発明の名称)について、次の記載がある。
1 「【請求項1】
透明なフィルム基材の片面または両面に少なくとも1層のアンダーコート層を介して、透明導電体層を有する透明導電性フィルムであって、
前記透明導電体層はパターン化されており、かつ前記透明導電体層を有しない非パターン部には前記少なくとも1層のアンダーコート層を有することを特徴とする透明導電性フィルム。
(・・・略・・・)
【請求項9】
少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層が配置されるように、透明な粘着剤層を介して、請求項1?8のいずれかに記載の透明導電性フィルムが少なくとも2枚積層されていることを特徴とする透明導電性フィルム。
(・・・略・・・)
【請求項11】
タッチパネルに用いられるものであることを特徴とする請求項1?10のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
【請求項12】
タッチパネルが静電容量結合方式のタッチパネルであることを特徴とする請求項11に記載の透明導電性フィルム。」
2 「【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線領域に於いて透明性を有し、かつフィルム基材上にアンダーコート層を介して透明導電体層が設けられた透明導電性フィルムおよびその製造方法に関する。さらには、当該透明導電性フィルムを備えたタッチパネルに関する。
【0002】
本発明の透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのディスプレイ方式やタッチパネルなどに於ける透明電極のほか、透明物品の帯電防止や電磁波遮断などのために用いられる。特に、本発明の透明導電性フィルムはタッチパネル用途において好適に用いられる。なかでも、静電容量結合方式のタッチパネル用途において好適である。」
3 「【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態について、図を参照しながら以下に説明する。図1は、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図1の透明導電性フィルムは、透明なフィルム基材1の片面に、アンダーコート層2を介して、透明導電体層3を有する。
(・・・略・・・)
【0025】
図6乃至図9も、本発明の透明導電性フィルムの一例を示す断面図である。図6乃至9の透明導電性フィルムは、前記図1または図5で示す透明導電性フィルムが、透明な粘着剤層4を介して2枚積層されている。また、図6乃至図9では積層して得られる透明導電性フィルムは、少なくとも片面に前記パターン化された透明導電体層3が配置されるように積層されている。図6乃至図7では、図1に示す透明導電性フィルム2枚を透明な粘着剤層4を介して積層している。図6では、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1に、他の透明導電性フィルムのパターン化された透明導電体層3が、透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。図7では、図1に示す透明導電性フィルムの透明なフィルム基材1同士が、透明な粘着剤層4を介して積層された場合である。
(・・・略・・・)
【0059】
透明導電性フィルム(例えば、フィルム基材1)と透明基体5の貼り合わせは、透明基体5側に前記の粘着剤層4を設けておき、これに前記フィルム基材1を貼り合わせるようにしてもよいし、逆にフィルム基材1側に前記の粘着剤層4を設けておき、これに透明基体5を貼り合わせるようにしてもよい。後者の方法では、粘着剤層4の形成を、フィルム基材1をロール状にして連続的に行なうことができるので、生産性の面で一層有利である。また、フィルム基材1に、順次に複数の基体フィルムを粘着剤層により貼り合せることにより透明基体5を積層することもできる。なお、基体フィルムの積層に用いる透明な粘着剤層には、下記の透明な粘着剤層4と同様のものを用いることができる。また、透明導電性フィルム同士の貼り合わせに際しても、適宜に粘着剤層4を積層する透明導電性フィルムの積層面を選択して、透明導電性フィルム同士を貼り合せることができる。」
4 「【0079】
本発明の透明導電性フィルムは、例えば、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルに好適に適用できる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適である。また、本発明の透明導電性フィルムは、例えば、電気泳動方式、ツイストボール方式、サーマル・リライタブル方式、光書き込み液晶方式、高分子分散型液晶方式、ゲスト・ホスト液晶方式、トナー表示方式、クロミズム方式、電界析出方式などのフレキシブル表示素子に好適に利用できる。」
5 「【実施例】
【0080】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、各例中、部、%はいずれも重量基準である。
(・・・略・・・)
【0089】
(積層透明導電性フィルムの作製)
次いで、前記透明基体のハードコート層形成面とは反対側の面に、厚さ約20μm、弾性係数10N/cm^(2)の透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用いた。上記粘着剤層側に、上記透明導電性フィルム(透明導電体層を形成していない側の面)を貼り合せて、積層透明導電性フィルムを作製した。」
6 (1)「【図1】


(2) 「【図7】



第5 判断
(1)甲1に記載された発明(甲1発明)
甲1の請求項1を引用する請求項9を引用する請求項11を引用する請求項12(第4 1)には、請求項9の「請求項1?8のいずれかに記載の透明導電性フィルム」を「特定の透明導電性フィルム」と記載され、便宜的に、積層された「特定の透明導電性フィルム」を「特定の透明導電性フィルムA」と記載し、「静電容量結合方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルム」を「静電容量結合方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムB」と記載すると、請求項12には、
「少なくとも片面にパターン化された透明導電体層が配置されるように、透明な粘着剤層を介して、特定の透明導電性フィルムAが少なくとも2枚積層されている、静電容量結合方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムB」が記載されているといえる。

そして、請求項12の上記「透明な粘着剤層」の具体例として、甲1の【0089】(第4 5)には、「粘着剤層組成物としては、アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用い」て形成されることが記載されている。
また、同【0025】(第4 3)には、請求項12の上記「透明導電性フィルム」の具体例について、「図6乃至図7では、図1に示す透明導電性フィルム2枚を透明な粘着剤層4を介して積層している。」と記載されているところ、【図7】(第4 6)には、「透明なフィルム基材1」、「アンダーコート層2」及び「パターン化された透明導電体層3」がこの順に積層された、2枚の「透明導電性フィルム」が「透明な粘着剤層4」を介して積層されたものが記載されている。この積層された「透明導電性フィルム」は、上記「特定の透明導電性フィルムA」に相当するから、以下、単に「特定の透明導電性フィルムA」と記載することとする。

そうすると、甲1には、請求項12に記載された上記「透明導電性フィルムB」の具体例として、【0089】(第4 5)に記載された「透明な粘着剤層」を用いた図7のものについて、透明な粘着剤層に着目して記載すると、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも片面にパターン化された透明導電体層が配置されるように、透明な粘着剤層を介して、2枚の特定の透明導電性フィルムAが積層されている、静電容量結合方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムBにおける粘着剤層であって、
アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5のアクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用いた粘着剤層組成物から形成された、透明な粘着剤層」

(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「アクリル酸ブチル」は、炭素数は4のアクリル酸アルキルエステル」であるから、本件発明1の「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数1?10の(メタ)アクリル酸アルキルエステル」に相当する。
また、甲1発明の「粘着剤層」は、「アクリル系共重合体100部に、イソシアネート系架橋剤を1部配合してなるものを用いた粘着剤層組成物から形成された」ものであるから、アクリル系粘着剤層であるといえ、本件発明1の「アクリル系粘着剤層」に相当し、さらに、甲1発明の「アクリル系共重合体」は、本件発明1の「ベースポリマー」に相当する。
そして、甲1発明の「アクリル系共重合体」は、「アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニル」を含むものであり、その重量比は「100:2:5」であるから、「アクリル酸ブチル」は、「アクリル系共重合体」の必須のモノマー成分といえ、甲1発明の「アクリル系共重合体」は、本件発明の「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー」に相当する。
そうすると、本件発明1の「アクリル系粘着剤層」と甲1発明の「粘着剤層」とは、「アクリル系粘着剤層が、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーと」する点で共通する。

また、甲1発明の「アクリル酸ブチル」は、その重量比からみて(約93重量%(=100/(100+2+5)×100)、アクリル系共重合体を形成する全モノマー成分100重量部に対して、68?100重量部の範囲のものであることは明らかであるから、甲1発明の「アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5」である構成は、本件発明1の「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、68?100重量部であ」る構成に相当する。

そして、甲1発明の「アクリル酸」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びN-ビニル-2-ピロリドンから選ばれる」「極性基含有モノマー」に相当し、その含有量は、重量比からみて(約1.9重量%(=2/(100+2+5)×100))、アクリル系共重合体を形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部の範囲のものであることは明らかであるから、甲1発明の「アクリル酸ブチルとアクリル酸と酢酸ビニルとの重量比が100:2:5」である構成は、本件発明1の「極性基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であ」る構成にも相当する。

なお、甲1発明の「酢酸ビニル」は、本件明細書【0049】において、「極性基含有モノマーや多官能性モノマー以外の共重合性モノマー(その他の共重合性モノマー)」として挙げられたものであるところ、本件発明1は、そのような「その他の共重合性モノマー」を含むことを排除していないことから、甲1発明の粘着剤組成物に「酢酸ビニル」が含まれることは相違点にはならない。

また、本件発明1における「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルを含み」、「前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であり」という発明特定事項は、「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル」の割合が0重量部である場合を含むので、甲1発明の粘着剤組成物が、「直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル」を含まない点は、相違点にはならない。

そして、甲1発明の「透明な粘着剤層を介して、2枚の特定の透明導電性フィルムAが積層されている、静電容量結合方式のタッチパネルに用いられる透明導電性フィルムB」において「2枚の特定の透明導電性フィルムA」は、本件発明1の「静電容量方式のタッチパネルを構成する部材」に相当する。

また、本件発明1の「光学用粘着シート」と甲1発明の「透明な粘着剤層」とは、両者とも、光学用の粘着性を有している物である点で共通する。

そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「アクリル系粘着剤層を含む光学用の粘着性を有している物であって、
前記アクリル系粘着剤層が、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマー、又は、直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルを必須のモノマー成分として形成されるアクリル系ポリマーをベースポリマーとし、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、炭素数1?10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチルを含み、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、68?100重量部であり、
前記直鎖状若しくは分岐鎖状の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの割合が、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であり、
前記モノマー成分は、さらに極性基含有モノマーを含んでいてもよく、
前記極性基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分100重量部に対して、0?30重量部であり、
前記極性基含有モノマーが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、及びN-ビニル-2-ピロリドンから選ばれるものであり、
静電容量方式のタッチパネルを構成する部材の貼り合わせに用いられる光学用の粘着性を有している物。」である点で一致し、次の点で相違が認められる。
(相違点1)
「光学用の粘着性を有している物」の形態について、本件発明1は、「粘着シート」であるのに対し、甲1発明は、「透明な粘着剤層」である点。
(相違点2)
「光学用の粘着性を有している物」の特性について、本件発明1の「粘着シート」は、「周波数1MHzでの比誘電率が3.16?4.65であり、周波数1MHzでの誘電正接が0.065?0.116であり、周波数1.0×10^(6)Hzでの比誘電率が、周波数1.0×10^(4)Hzでの比誘電率の60%以上であり、周波数1.0×10^(6)Hzでの誘電正接と周波数1.0×10^(4)Hzでの誘電正接との差の絶対値が、0.15以下」であるのに対し、甲1発明の「透明な粘着剤層」はそのような特性を有しているかどうか不明な点。

イ ここで、事案に鑑み、相違点1について検討する。
甲1発明の「透明な粘着剤層」は、「2枚の特定の透明導電性フィルムA」の積層体において、2枚の「特定の透明導電性フィルムA」の間に存在する、一つの「層」として理解されるものであって、「透明な粘着剤層」からは、「2枚の特定の透明導電性フィルムA」から独立した、「シート」状のものまでを認識することはできない。
また、甲1の【0089】(第4 5)には、「次いで、前記透明基体のハードコート層形成面とは反対側の面に、厚さ約20μm、弾性係数10N/cm^(2)の透明なアクリル系の粘着剤層を形成した。」と記載され、他には、粘着剤層の形成についての記載は見当たらないことから、甲1に接した当業者は、甲1発明の「透明な粘着剤層」は、透明基体(透明導電性フィルムA)に、直接、形成される形態に限られ、シート状の粘着剤を、透明基体の面に適用するような形態は想定していないと理解するのが自然である。

そうすると、本件発明1の「粘着シート」と甲1発明の「透明な粘着剤層」とは異なるものであって、上記相違点1は、実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1発明と同一であるとはいえない。

また、甲1発明の「透明な粘着剤層」を「粘着シート」として形成するためには、甲1発明の「粘着剤層組成物」から、「粘着シート」を形成する工程が新たに必要となるところ、そのような工程は、甲1発明のように、透明基体に直接、粘着剤層を形成する場合には不必要な工程である。しかも、仮に、甲1発明の「透明な粘着剤層」から「粘着シート」を作成して透明基体に適用することが可能だとしても、「粘着シート」によって形成された接着剤層が、透明基体に直接、粘着剤層を形成したものと同様な接着剤層となるかどうかは明らかではない。
そうすると、甲1発明の「透明な粘着剤層」を「粘着シート」として形成する動機付けはないというべきである。

以上のことから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明と同一であるともいえないし、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。

なお、甲2には、甲1の【0089】に記載された粘着剤組成物に含まれるものについての実験結果が記載されているとしても、甲1には、「粘着シート」については記載も示唆もないのであるから、甲2の記載は、甲1発明の「透明な粘着剤層」を「粘着シート」として形成する動機付けを示すものとはいえない。

ウ 本件発明1の効果について
本件発明1は、本件明細書に、「静電容量方式のタッチパネルにおける透明部材の貼り合わせに使用されても、タッチパネルとした場合の誤動作の発生を防止することができる。」(【0018】)と記載されるように、格別顕著な作用効果を奏するものであり、その作用効果は、実施例2?5において確認されているといえる。

エ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明と同一であるとも、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである、とすることはできない。

(3)本件発明2?4について
本件発明2?4は、本件発明1を直接的又は間接的に引用し、さらに限定するものであるから、本件発明2及び4は、本件発明1と同様に、甲1発明と同一であるとすることはできない、また、本件発明2?4は、本件発明1と同様に、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明することができたものである、とすることはできない。

(4)まとめ
以上のとおり、申立人の特許法第29条第1項第3号及び同条第2項に係る申立理由には、理由がない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。

 
異議決定日 2020-07-14 
出願番号 特願2018-140267(P2018-140267)
審決分類 P 1 651・ 113- Y (C09J)
P 1 651・ 121- Y (C09J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 川端 修
天野 斉
登録日 2019-11-01 
登録番号 特許第6608011号(P6608011)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 光学用粘着シート  
代理人 特許業務法人後藤特許事務所  
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