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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1364669 |
審判番号 | 不服2019-17600 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-26 |
確定日 | 2020-07-27 |
事件の表示 | 特願2015-194587「X線CT装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開、特開2017- 64141〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年9月30日の出願であって、平成31年4月1日付けで拒絶理由が通知され、令和元年6月10日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年10月1日付けで拒絶査定されたところ、同年12月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。 第2 令和元年12月26日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年12月26日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「X線を照射するX線管と、 複数のX線検出素子を有し、前記X線を検出するX線検出器と、 前記X線管及び前記X線検出器を保持する架台装置と、 被検体を載置可能な天板の長手方向に離間する複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合、前記複数のヘリカルスキャン領域のそれぞれにスキャン条件が設定された複数のスキャンプロトコルを設定し、前記複数のヘリカルスキャン領域と前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域とを含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する設定手段と、 前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合に自動的に、前記範囲の端から端までの間に前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動を行うことで、前記複数のスキャンプロトコルを実行する実行手段と、 を有するX線CT装置。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲 本件補正前の、令和元年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。 「X線を照射するX線管と、 複数のX線検出素子を有し、前記X線を検出するX線検出器と、 前記X線管及び前記X線検出器を保持する架台装置と、 被検体を載置可能な天板の長手方向に離間する複数のヘリカルスキャン領域のそれぞれにスキャン条件が設定された複数のスキャンプロトコルを設定し、前記複数のヘリカルスキャン領域を含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する設定手段と、 前記範囲の端から端までの間の前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動で、前記複数のスキャンプロトコルを実行する実行手段と、 を有するX線CT装置。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「設定手段」、「実行手段」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-55635号公報(平成18年3月2日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである。 (引1?a) 「【0019】 図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のブロック構成を示した図である。このX線コンピュータ断層撮影装置は、架台1、寝台2、計算機システム3から構成されている。 【0020】 架台1は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、X線管10、回転フレーム12、高電圧発生器21、スリット22、X線検出器23、データ収集装置24、架台駆動装置25を具備している。 【0021】 回転フレーム12は、Z軸を中心として回転駆動されるリングであり、X線管10とX線検出器23とを搭載している。この回転フレーム12の中央部分は開口されており、この開口部に、寝台2の天板2a上に載置された被検体Pが挿入される。 【0022】 架台駆動装置25は、回転フレーム12を回転駆動する。この回転駆動により、X線管10とX線検出器23とが対向しながら、被検体の体軸中心に螺旋状に回転することになる。 【0023】 スリット22は、X線管10と回転フレーム12の開口部との間に設けられ、スライス厚に応じてX線管10から曝射されるX線ビームの形状をコーン状(四角錐状)又はファンビーム状に整形する。 【0024】 X線管10は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム12に設けられている。当該X線管10には、X線の曝射に必要な電力(管電流、管電圧)が高電圧発生器21からスリップリング(図示せず)を介して供給される。X線管10は、供給された高電圧により電子を加速させターゲットに衝突させることで、有効視野領域FOV内に載置された被検体に対してX線を曝射する。 【0025】 高電圧発生器21は、スリップリング(図示せず)を介して、X線の曝射に必要な電力をX線管10に供給する装置であり、高電圧変圧器、フィラメント加熱変換器、整流器、高電圧切替器等から成る。 【0026】 X線検出器23は、被検体を透過したX線を検出する検出器システムであり、X線管10に対向する向きで回転フレーム12に取り付けられている。当該X線検出器23は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じた形態にて配列されている。すなわち、X線検出器23がシングルスライスタイプであれば、例えば0.5mm×0.5mmの正方の受光面を有する複数のX線検出素子が916個チャンネル方向に一列に配列される。また、X線検出器23がマルチスライスタイプであれば、例えば素子列がスライス方向に40列並設される。」 (引1?b) 「【0031】 スキャンコントローラ30は、撮影処理に関する統括的な制御を行う。例えば、撮影処理においては、スキャンコントローラ30は、予め入力されたスライス厚等のスキャン条件を内部メモリに格納し、患者ID等によって自動的に選択されたスキャン条件(あるいは、マニュアルモードにおいて、入力部39から直接設定されたスキャン条件)に基づいて、高電圧発生器21、寝台駆動部(図示せず)、架台駆動部25、及び寝台2の天板2aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管10及びX線検出器23の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像の撮影処理を行う。 (引1?c) 「【0036】 計画補助システム43は、操作者によるスキャン計画の決定を対話形式で案内するために必要な機能を備えている。例えば、患者情報、検査目的、検査部位等の事項の入力を促す画面を構築し、表示し、その画面に操作者が必要事項を入力すると、それに応じたスキ ャン計画案を作成し、その案の選択及び修正を促す画面を構築し、表示する。スキャン計画画面には、その上部に患者情報、ガントリ情報、スキャノグラムが表示され、その下部には、スキャン条件の詳細が表示される。スキャン条件には、スキャノグラム上の枠線を連動したヘリカルスキャンの開始位置及び終了位置、スキャンモード、スキャン数、管電圧(kV)、管電流(mA)、X線管10が1回転するのに要する時間を表すスキャンスピード(括弧内は撮影時間)、再構成モード、撮影視野(FOV)、スキャンスピードで天板が移動する距離を表すヘリカルピッチ等の複数項目が含まれる。」 (引1?d) 「【0042】 入力部39は、キーボードや各種スイッチ、マウス等を備え、オペレータを介してスライス厚やスライス数等の各種スキャン条件を入力可能な装置である。」 (引1?e) 「【0044】 (撮影部位別の画質レベル設定機能) 次に、本X線コンピュータ断層撮影装置が有する撮影部位別の画質レベル設定機能について説明する。本機能は、一連の撮影シーケンスにおいて、撮影部位毎に画質レベルを設定可能とするものである。撮影部位毎に画質レベルが設定されると、各画質レベルを実現するために必要なX線条件が、撮影部位毎に計算され、これに従ってX線曝射に関する制御が実行される。ここで、X線条件とは、X線管電流値、X線管電圧値等の照射X線に影響する物理量を意味する。本実施形態では、説明を具体的にするため、X線条件としてX線管電流値を計算する場合を例とする。 【0045】 本実施形態では、撮影部位毎の画質レベル設定を可能とするために、「部位別領域」という概念を導入する。この「部位別領域」とは、計画補助システム43を利用してCT画像上に設定され、当該CT画像を被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割するためのものである。 【0046】 なお、本実施形態では、説明を具体的とするため、画質レベルの設定は画像SDの設定であるとし、また、計画補助システム43を利用して部位別領域が設定されるCT画像は、本撮影(ヘリカルスキャンによる診断画像取得)に先立って取得されるスキャノグラムであるとする。 【0047】 スキャノグラム上に複数の部位別領域が設定されると、計画補助システム43を利用した所定の画面において、各部位別領域についての画像SDを設定する。管電流計算部37は、設定された画像SDに対応する管電流パターンを選択し、これと各部位別領域内のスキャノグラムのCT値に基づいて、体軸方向に沿ったスライス位置毎の管電流を計算する。本撮影においては、当該計算によって得られた管電流に従って高電圧発生器21が制御され、X線曝射が実行されることになる。 【0048】 (動作) 次に、本X線コンピュータ断層撮影装置の一連の撮影動作について、撮影部位別の画像SD設定を中心に説明する。 【0049】 図2は、本X線コンピュータ断層撮影装置の撮影において実行される処理の流れを示したフローチャートである。同図に示すように、まず、ヘリカルスキャンによる本撮影に先立って、スキャノグラムが取得され(ステップS1)、計画補助システム43を利用して、患者情報、検査目的、検査部位等の必要事項を入力することにより、スキャン計画が作成される(ステップS2)。 【0050】 次に、計画補助システム43を利用した所定画面によって、部位別撮影領域数が設定される(ステップS3)。説明を具体的にするため、ここでは、部位別撮影領域数を「3」と設定するものとする。 【0051】 部位別撮影領域数が設定されると、当該数に応じた部位別撮影領域が、スキャノグラム上に表示される。図3は、部位別撮影領域数を「3」設定することにより、スキャノグラム上に設定された三つの部位別撮影領域(同図右側)と、体軸方向に沿ったスライス位置 を横軸、管電流値を縦軸とした座表系(同図左側)とを示した図である。なお、この段階でスキャノグラム上に設定された三つの部位別撮影領域の大きさは、初期設定に従って決定されている。 【0052】 次に、図3右側に示すように、部位別撮影領域間の境界線、又は部位別撮影領域の外枠をマウス操作等によって移動させることで、各部位別撮影領域を所望の大きさに設定する(ステップS4)。 【0053】 次に、部位別撮影領域毎に画像SDの値を設定する(ステップS5)。この部位別撮影領域毎に画像SDの設定は、入力部39からの入力の他、送受信部44によりネットワークNを介して取得した情報に基づいても行うことができる。例えば、図4に示すように、IDナンバー123456の患者に関して、RIS経由により異なる二つの撮影オーダー(例えば、受付番号T230、T210)が送受信部44により受信されたとする。係る場合には、管電流計算部37は、各撮影オーダーにおいて指定された撮影部位と画像SDとに基づいて、部位別撮影領域毎に画像SDの値を設定する。なお、RIS経由によって受信された二つの撮影オーダーは、撮影回数をなるべく少なくする観点から、必要に応じて一つの撮影シーケンスに統合される。 【0054】 次に、管電流計算部37は、スキャノグラム上の個々の部位別撮影領域について、計画補助システム43によって設定された各画像SDを実現するために必要な管電流値を、管電流パターン保管部41内の管電流パターンに基づいて計算する(ステップS6)。」 (引1?f) 「【0062】 図7(a)は、本X線コンピュータ断層撮影装置により撮影部位毎に画像SDを設定し、一回のヘリカルスキャンを実行した場合の寝台速度と時間との関係を示しめしたグラフである。また、図7(b)は、高画質な診断画像を要する部位の画像SD(画像SD値=7)に合わせて、全ての部位についてヘリカルスキャンを行った場合の寝台速度と時間との関係を示したグラフである。さらに、図7(c)は、従来のシステムによりヘリカルスキャンを部位毎に分割し、各ヘリカルスキャン毎に画像SDを設定した場合の寝台速度と時間との関係を示したグラフである。 【0063】 図7(a)と図7(b)とを比較すると、図7(b)の場合は、全ての領域についての画像SDを高画質部位に合わせている。一方、図7(a)の場合は、前半領域(画像SD=10の領域)については、高画質が要求される後半部位よりも画像SDを高く設定している。従って、図7(a)の前半領域においては、図7(b)の場合に比して余分な被爆を低減させることができる。 【0064】 また、図7(a)と図7(c)とを比較すると、図7(c)の場合は、ヘリカルスキャンを部位毎に分割して実行しているため、全撮影についての画像収集範囲は、図7(a)の場合より長い。画像収集範囲においては、X線曝射が実行されることになるため、例えば図7(c)に示す期間T1、T2等は、図7(a)の場合に比して余分な被爆及び動作となる。 【0065】 従って、本X線コンピュータ断層撮影装置によれば、従来のシステムによりヘリカルスキャンを部位毎に分割して実行した場合に比して、撮影時間の短縮、作業負担の軽減、患者の被爆低減を実現することができる。」 (引1?g) 図1 (引1?h) 図5,6 (引1?i) 図7 (イ)上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (a)上記(ア)(引1?a)の 「【0019】 ・・・このX線コンピュータ断層撮影装置は、架台1、寝台2、計算機システム3から構成されている。 【0020】 架台1は、被検体Pに関する投影データを収集するために構成されたものであり、X線管10、・・・X線検出器23、・・・を具備している。 ・・・ 【0024】 X線管10は、X線を発生する真空管であり、回転フレーム12に設けられている。 ・・・ 【0026】 ・・・当該X線検出器23は、シングルスライスタイプ又はマルチスライスタイプの検出器であり、シンチレータとフォトダイオードとの組み合わせで構成される複数の検出素子が、それぞれのタイプに応じた形態にて配列されている。」 及び、(ア)(引1?g)の図1から、引用文献1には、「X線を照射するX線管10、複数の検出素子が配列され、X線を検出するX線検出器23、X線管10及びX線検出器23を具備する架台1」が記載されているものと認められる。 (b)上記(ア)(引1?e)の 「【0045】 本実施形態では、撮影部位毎の画質レベル設定を可能とするために、「部位別領域」という概念を導入する。この「部位別領域」とは、計画補助システム43を利用してCT画像上に設定され、当該CT画像を被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割するためのものである。 【0046】 なお、本実施形態では、説明を具体的とするため、画質レベルの設定は画像SDの設定であるとし、また、計画補助システム43を利用して部位別領域が設定されるCT画像は、本撮影(ヘリカルスキャンによる診断画像取得)に先立って取得されるスキャノグラムであるとする。」 から、「スキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定する計画補助システム43」が読み取れる。 (c)上記(ア)(引1?e)の 「【0044】 ・・・本機能は、一連の撮影シーケンスにおいて、撮影部位毎に画質レベルを設定可能とするものである。撮影部位毎に画質レベルが設定されると、各画質レベルを実現するために必要なX線条件が、撮影部位毎に計算され、これに従ってX線曝射に関する制御が実行される。ここで、X線条件とは、X線管電流値、X線管電圧値等の照射X線に影響する物理量を意味する。本実施形態では、説明を具体的にするため、X線条件としてX線管電流値を計算する場合を例とする。 ・・・ 【0046】 なお、本実施形態では、説明を具体的とするため、画質レベルの設定は画像SDの設定であるとし、また、計画補助システム43を利用して部位別領域が設定されるCT画像は、本撮影(ヘリカルスキャンによる診断画像取得)に先立って取得されるスキャノグラムであるとする。 【0047】 スキャノグラム上に複数の部位別領域が設定されると、計画補助システム43を利用した所定の画面において、各部位別領域についての画像SDを設定する。管電流計算部37は、設定された画像SDに対応する管電流パターンを選択し、これと各部位別領域内のスキャノグラムのCT値に基づいて、体軸方向に沿ったスライス位置毎の管電流を計算する。本撮影においては、当該計算によって得られた管電流に従って高電圧発生器21が制御され、X線曝射が実行されることになる。」 から、「計画補助システム43」は、「各部位別領域について画像SD及び画像SDに対応する管電流を設定する」ことが読み取れる。 そして、「なお、本実施形態では、説明を具体的とするため、画質レベルの設定は画像SDの設定である」の記載から、「画像SD」は「画質レベル」の一例であることが読み取れ、さらに、上記(ア)(引1?c)の 「【0036】 ・・・スキャン条件には、スキャノグラム上の枠線を連動したヘリカルスキャンの開始位置及び終了位置、スキャンモード、スキャン数、管電圧(kV)、管電流(mA)、X線管10が1回転するのに要する時間を表すスキャンスピード(括弧内は撮影時間)、再構成モード、撮影視野(FOV)、スキャンスピードで天板が移動する距離を表すヘリカルピッチ等の複数項目が含まれる。」から、「管電流」は「スキャン条件」に含まれることが読み取れることから、「計画補助システム43」は、「各部位別領域について画質レベル及び画質レベルに対応するスキャン条件を設定する」ことが読み取れる。 (d)上記(ア)(引1?e)の 「【0050】 次に、計画補助システム43を利用した所定画面によって、部位別撮影領域数が設定される(ステップS3)。説明を具体的にするため、ここでは、部位別撮影領域数を「3」と設定するものとする。 ・・・ 【0052】 ・・・部位別撮影領域間の境界線、又は部位別撮影領域の外枠をマウス操作等によって移動させることで、各部位別撮影領域を所望の大きさに設定する(ステップS4)。」 から、「計画補助システム43」は、「部位別領域間の境界線、又は部位別領域の外枠をマウス操作等によって移動させることで、各部位別領域の大きさを設定する」ことが読み取れる。 (e)上記(ア)(引1?f)の 「【0062】 図7(a)は、本X線コンピュータ断層撮影装置により撮影部位毎に画像SDを設定し、一回のヘリカルスキャンを実行した場合の寝台速度と時間との関係を示しめしたグラフである。また、図7(b)は、高画質な診断画像を要する部位の画像SD(画像SD値=7)に合わせて、全ての部位についてヘリカルスキャンを行った場合の寝台速度と時間との関係を示したグラフである。さらに、図7(c)は、従来のシステムによりヘリカルスキャンを部位毎に分割し、各ヘリカルスキャン毎に画像SDを設定した場合の寝台速度と時間との関係を示したグラフである。」 の記載、及び技術常識から、上記(ア)(引1?i)の図7(a)(b)の「再構成範囲」は、「部位別領域」の被検体の体軸方向の端から端までの範囲を意味し、「収集範囲」は、「部位別領域」の画像再構成に必要なX線データを収集する範囲を意味するものと認められ、同図から、「部位別領域の被検体の体軸方向の端から端までの間に、寝台の定速移動を行う」ことが見て取れる。 そして、上記の事項、及び、(ア)(引1?b)の 「【0031】 スキャンコントローラ30は、撮影処理に関する統括的な制御を行う。例えば、撮影処理においては、スキャンコントローラ30は、予め入力されたスライス厚等のスキャン条件を内部メモリに格納し、患者ID等によって自動的に選択されたスキャン条件(あるいは、マニュアルモードにおいて、入力部39から直接設定されたスキャン条件)に基づいて、高電圧発生器21、寝台駆動部(図示せず)、架台駆動部25、及び寝台2の天板2aの体軸方向への送り量、送り速度、X線管10及びX線検出器23の回転速度、回転ピッチ、及びX線の曝射タイミング等を制御し、被検体の所望の撮影領域に対して多方向からX線コーンビーム又はX線ファンビームを曝射させ、X線CT画像の撮影処理を行う。」 から、「複数の部位別領域が設定された場合自動的に、部位別領域の被検体の体軸方向の端から端までの間に、寝台の定速移動を行い、スキャン条件に基づいてスキャンを実行するスキャンコントローラ30」が読み取れる。 (f)(ア)(引1?a)の 「【0019】 図1は、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置のブロック構成を示した図である。このX線コンピュータ断層撮影装置は、架台1、寝台2、計算機システム3から構成されている。」 から、引用文献1には、「X線コンピュータ断層撮影装置」が記載されているものと認められる。 以上をふまえると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「X線を照射するX線管10と、 複数の検出素子が配列され、X線を検出するX線検出器23と、 X線管10及びX線検出器23を具備する架台1と、 スキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定し、各部位別領域について画質レベル及び画質レベルに対応するスキャン条件を設定し、部位別領域間の境界線、又は部位別領域の外枠をマウス操作等によって移動させることで、各部位別領域の大きさを設定する計画補助システム43と、 複数の部位別領域が設定された場合自動的に、部位別領域の被検体の体軸方向の端から端までの間に、寝台の定速移動を行い、スキャン条件に基づいてスキャンを実行するスキャンコントローラ30と、 を有するX線コンピュータ断層撮影装置。」 イ 引用文献2 (ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2006-320523号公報(平成18年11月30日出願公開。以下「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付与したものである[RM3]。 (引2?a) 「【0039】 図3は、X線CT装置100の動作の概略を示すフロー図である。 過程1では、被検体のスカウト画像を撮影し、表示する。操作者は、スカウト画像の体軸方向の1以上の範囲を指定し、その範囲に対応させてヘリカルピッチやノイズインデックスなどのシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータをグラフィカル入力またはキー入力して設定する。この過程1については、後で詳述する。」 (引2?b) 「【0052】 ステップA23では、中央処理装置3は、スカウトスキャンを実行する。すなわち、X線管21と多列X線検出器24とを例えば水平方向に対向させて固定し(Scout Plane = 90)、クレードル12を直線移動させながら、X線を曝射し、スカウトデータを収集する 。そして、スカウトデータからスカウト画像(X線透視像)を生成し、図13に示すように、表示装置6の左画面6Lにスカウト像を表示する。このスカウト画像に重ねて、例えば部位として肺を指定していると、肺に対応する一般的な開始スライス位置Lsから終了スライス位置Leまでのスライス位置が表示されている。 また、中央処理装置3は、図14に示すように、表示装置6の右画面にスキャンパラメータ設定画面を表示する。このスキャンパラメータ設定画面では、操作者が指定した部位(例えば肺)をシャトルモードヘリカルスキャンするためのパラメータが表示されている。【0053】 ステップA24では、操作者は、スライス位置の表示をドラッグ&ドロップして、図15に示すように所望のスライス位置を設定する。これに合わせて、中央処理装置3は、設定された開始位置Lsから終了位置Leを1つの範囲として認識する。また、設定された1つの範囲を1つのグループとして認識する。 【0054】 ステップA25では、操作者は、スキャンパラメータの変更及び/又は別の範囲の追加を行う。 【0055】 例えば、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えばノイズインデックス(Noise Index)の値をクリックすると、中央処理装置3は、図17に示す管電流設定画面(mAControl)をポップアップ表示するので、操作者は、図17に示す管電流設定画面で、例えば自動設定(Auto mA)を選択し、ノイズインデックスの値たとえば「10.00」をキー入力し、OKをクリックする。すると、中央処理装置3は、ノイズインデックスを基に、管電流を自動的に設定する。そして、図17に示す管電流設定画面を消し、図16に示すスキャンパラメータ設定画面を表示する。 また、例えば、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えば厚さ・速度(Thick Speed)の値をクリックすると、中央処理装置3は、図18に示すスライス厚等設定画面(Selectthe desired Image Thickness)をポップアップ表示するので、操作者は、所望の値を設定/変更する。 また、例えば、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えばグループ準備時間(Prep Shuttle Mode Group)をクリックすると、値をキー入力可能になるので、操作者は、所望の値をキー入力する。なお、グループ準備時間は、当該グループのスキャンを開始する前に置かれる準備時間である。初期値で「0.0」が設定されているが、これは準備時間を置かずに直ちに当該グループのスキャンを開始することを意味する。例えば、あるグループの前に実行するグループがあって、あるグループのグループ準備時間が「0.0」なら、前のグループのスキャンに引き続いて、あるグループのスキャンが実行される。もし、あるグループのグループ準備時間が「1.0」なら、前のグループのスキャンの後、1秒間止まってから、あるグループのスキャンが実行される。 【0056】 さらに、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、シャトルモードヘリカルスキャン・グループ追加(Add Shuttle Mode Group)をクリックすると、中央処理装置3は、図4のステップA3に戻るので、ステップA3からステップA24を繰り返して、図19に示すように次の範囲のシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータを設定する。 【0057】 図19に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えば管電流設定ボタン(mA)をクリックすると、中央処理装置3は、図20に示す管電流等表示画面(mAControl)を表示する。この管電流等表示画面では、各範囲(グループ)に設定されている管電流等のスキャンパラメータが表示される。ここで、例えばグループ1(Group1)をクリックすると、図17の管電流設定画面をポップアップ表示する。また、 OKをクリックすると、図19のスキャンパラメータ設定画面に戻る。 【0058】 図19に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えばスライス厚・速度設定ボタン(Thick Speed)をクリックすると、中央処理装置3は、図21に示すスライス厚等表示画面(Selectthe desired Image Thickness)を表示する。このスライス厚等表示画面では、各範囲(グループ)に設定されているスライス厚等のスキャンパラメータが表示される。ここで、例えばグループ1(Group1)をクリックすると、図18のスライス厚等設定画面をポップアップ表示する。また、OKをクリックすると、図19のスキャンパラメータ設定画面に戻る。 【0059】 図19に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、所望によりグループ追加を繰り返し、図22に示すように複数の範囲のシャトルモードヘリカルスキャンスのキャンパラメータを設定する。」 (引2?c) 「【0060】 スキャンパラメータの変更及び/又は別の範囲の追加を終わると、図5のステップA26へ進み、操作者は、パラメータ変化グラフィック表示,シリーズ名の登録および確認を行う。 例えば、図22のスキャンパラメータ設定画面で、パラメータ変化表示(ShowLocalizer)をクリックすると、中央処理装置3は、表示装置6の左画面6Lに、図23に示すようにスカウト画像と主なスキャンパラメータの変化を表示する。 【0061】 ここで、スキャンパラメータの変化は、次のような規則で計画される。 (1)範囲内で加速・減速を行う(加速・減速中にも投影データの収集を行う)。 (2)ある範囲と別の範囲とが一部重なる場合、解像度優先(Resolution)を選択していると、小さい方のヘリカルピッチ(遅い方の直線移動速度)を優先する。逆に、低被曝優先(Low Dose)を選択していると、大きい方のヘリカルピッチ(速い方の直線移動速度)を優先する。 (3)範囲と範囲の間は、低被曝とするため、大きい方のヘリカルピッチ(速い方の直線移動速度)で直線移動する。 (4)範囲と範囲の間は、低被曝とするため、X線の照射を停止する。 (5)加速/減速は、設定された開始加速度を基本とする所定関数に基づいて計画する。 この結果、図23に示すようなヘリカルピッチおよびノイズインデックスの変化になる。 なお、図23は加速・減速の所定関数がリニアの場合であるが、図24に示すように所定関数をノンリニアにしてもよい。」 (引2?d) 図23 (イ)上記記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 (a)上記(引2?b)の 「【0052】 ・・・このスキャンパラメータ設定画面では、操作者が指定した部位(例えば肺)をシャトルモードヘリカルスキャンするためのパラメータが表示されている。 【0053】 ステップA24では、操作者は、スライス位置の表示をドラッグ&ドロップして、図15に示すように所望のスライス位置を設定する。これに合わせて、中央処理装置3は、設定された開始位置Lsから終了位置Leを1つの範囲として認識する。また、設定された1つの範囲を1つのグループとして認識する。 ・・・ 【0056】 さらに、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、シャトルモードヘリカルスキャン・グループ追加(Add Shuttle Mode Group)をクリックすると、中央処理装置3は、図4のステップA3に戻るので、ステップA3からステップA24を繰り返して、図19に示すように次の範囲のシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータを設定する。 ・・・ 【0059】 図19に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、所望によりグループ追加を繰り返し、図22に示すように複数の範囲のシャトルモードヘリカルスキャンスのキャンパラメータを設定する。」 から、「操作者が指定した部位をシャトルモードヘリカルスキャンするためのパラメータが表示されているスキャンパラメータ設定画面において、開始位置Lsから終了位置Leを1つの範囲として、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループを設定し、上記グループを複数設定する」ことが読み取れる。 また、上記(引2?d)の図23から、上記グループとグループの間が離間してグループが設定されている(LungとLiverの間)ものが含まれることが見て取れる。 (b)上記(a)を踏まえると、上記(引2?b)の 「【0055】 また、例えば、図16に示すシャトルモードヘリカルスキャンのスキャンパラメータ設定画面で、例えばグループ準備時間(Prep Shuttle Mode Group)をクリックすると、値をキー入力可能になるので、操作者は、所望の値をキー入力する。なお、グループ準備時間は、当該グループのスキャンを開始する前に置かれる準備時間である。初期値で「0.0」が設定されているが、これは準備時間を置かずに直ちに当該グループのスキャンを開始することを意味する。例えば、あるグループの前に実行するグループがあって、あるグループのグループ準備時間が「0.0」なら、前のグループのスキャンに引き続いて、あるグループのスキャンが実行される。もし、あるグループのグループ準備時間が「1.0」なら、前のグループのスキャンの後、1秒間止まってから、あるグループのスキャンが実行される。」 、及び、上記(引2?c)の 「【0061】 ここで、スキャンパラメータの変化は、次のような規則で計画される。 ・・・ 範囲と範囲の間は、低被曝とするため、大きい方のヘリカルピッチ(速い方の直線移動速度)で直線移動する。」 から、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループとグループの間は、速い方の直線移動速度で直線移動し、前のグループのスキャンに引き続いて、あるグループのスキャンが直ちに開始されることが読み取れる。 (c)上記(引2?a)の 「【0039】 図3は、X線CT装置100の動作の概略を示すフロー図である。」 から、X線CT装置100が読み取れる。 以上をふまえると、引用文献2には、次の技術事項(以下、「引用文献2技術事項」という。)が記載されていると認められる。 (引用文献2技術事項) 「X線CT装置100において、操作者が指定した部位をシャトルモードヘリカルスキャンするためのパラメータが表示されているスキャンパラメータ設定画面において、開始位置Lsから終了位置Leを1つの範囲として、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループを設定し、上記グループはクレードル12の長手方向に離間して設定され、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループとグループの間は、速い方の直線移動速度で直線移動し、前のグループのスキャンに引き続いて、あるグループのスキャンが直ちに開始すること。」 (3)引用発明との対比 ア 本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のとおりとなる。 (ア)引用発明の「X線を照射するX線管10」、「複数の検出素子が配列され、X線を検出するX線検出器23」、「X線管10及びX線検出器23を具備する架台1」は、それぞれ本件補正発明の「X線を照射するX線管」、「複数のX線検出素子を有し、前記X線を検出するX線検出器」、「前記X線管及び前記X線検出器を保持する架台装置」に相当する。 (イ)引用発明の「被検体の体軸方向」は、本件補正発明の「被検体を載置可能な天板の長手方向」に相当し、引用発明の「部位別領域」は、本件補正発明の「ヘリカルスキャン領域」に相当する。 してみると、「スキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定」する「計画補助システム43」と、本件補正発明の「被検体を載置可能な天板の長手方向に離間する複数のヘリカルスキャン領域が設定され」る「設定手段」とは、「被検体を載置可能な天板の長手方向に複数のヘリカルスキャン領域が設定され」る点で共通する。 (ウ)本件補正発明の「複数のスキャンプロトコル」は、本願の発明の詳細な説明の、 「スキャンプロトコル設定機能82a は、複数のヘリカルスキャン領域を設定し、ヘリカルスキャン領域ごとにスキャン条件を設定する。ヘリカルスキャン領域ごとに異なるスキャン条件を設定することもできる。スキャン条件としては、ヘリカルスキャン領域ごとのX線照射条件、視野(FOV:field of view)、再構成条件、及びスライス厚などが挙げられる。」(段落【0040】) の記載から、ヘリカルスキャン領域ごとに設定されるスキャン条件を意味するものと認められる。 してみると、引用発明の「各部位別領域について画質レベル及び画質レベルに対応するスキャン条件を設定」する「計画補助システム43」は、上記(イ)を踏まえると、本件補正発明の「前記複数のヘリカルスキャン領域のそれぞれにスキャン条件が設定された複数のスキャンプロトコルを設定」する「設定手段」に相当する。 (エ)引用発明の「各部位別領域の大きさを設定する計画補助システム43」は、各部位別領域の被検体の体軸方向の大きさを設定可能であることは明らかであるので、引用発明の「各部位別領域の大きさを設定する計画補助システム43」と、本件補正発明の「前記複数のヘリカルスキャン領域と前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域とを含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する設定手段」とは、「前記複数のヘリカルスキャン領域を含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する設定手段」である点で共通する。 (オ)上記(ウ)を踏まえると、引用発明の「複数の部位別領域が設定された場合自動的に、部位別領域の被検体の体軸方向の端から端までの間に、寝台の定速移動を行い、スキャン条件に基づいてスキャンを実行するスキャンコントローラ30」は、本件補正発明の「前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合に自動的に、前記範囲の端から端までの間の前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動で、前記複数のスキャンプロトコルを実行する実行手段」に相当する。 (カ)引用発明の「X線コンピュータ断層撮影装置」は、本件補正発明の「X線CT装置」に相当する。 イ 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 【一致点】 「X線を照射するX線管と、 複数のX線検出素子を有し、前記X線を検出するX線検出器と、 前記X線管及び前記X線検出器を保持する架台装置と、 被検体を載置可能な天板の長手方向に複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合、前記複数のヘリカルスキャン領域のそれぞれにスキャン条件が設定された複数のスキャンプロトコルを設定し、前記複数のヘリカルスキャン領域を含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する設定手段と、 前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合に自動的に、前記範囲の端から端までの間に前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動を行うことで、スキャン条件に基づいてスキャンを実行する実行手段と、 を有するX線CT装置。」 【相違点】 本件補正発明と引用発明は、「被検体を載置可能な天板の長手方向に複数のヘリカルスキャン領域が設定され」る点で共通するものの、本件補正発明が「天板の長手方向に離間する複数のヘリカルスキャン領域が設定され」るのに対して、引用発明の「複数のヘリカルスキャン領域」は「天板の長手方向に離間」していない点。 また、本件補正発明が「前記複数のヘリカルスキャン領域と前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域とを含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する」のに対し、引用発明の「複数のヘリカルスキャン領域」は「天板の長手方向に離間」していないため、「前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域」「を含む領域の前記長手方向の成分である範囲」を設定することについて特定されておらず、「前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合に自動的に」「前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域」を含む「前記範囲」の「端から端までの間に前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動を行う」ことについて特定されていない点。 (4)判断 以下、相違点について検討する。 ア 相違点について 「スキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定し」、「複数の部位別領域が設定された場合自動的に、部位別領域の被検体の体軸方向の端から端までの間に、寝台の定速移動を行い、スキャン条件に基づいてスキャンを実行する」引用発明において、スキャンを実行すべき被検体の臓器ないし部位は、それぞれ互いに隣接する領域にあるとは限らないため、引用発明の「複数の部位別領域」は、被検体の検査目的、つまり検査すべき臓器や部位に応じて、被検体の対軸方向に離間した領域に設定することが望ましい場合があることは明らかである。 そして、引用文献2には、「X線CT装置100において、操作者が指定した部位をシャトルモードヘリカルスキャンするためのパラメータが表示されているスキャンパラメータ設定画面において、開始位置Lsから終了位置Leを1つの範囲として、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループを設定し、上記グループはクレードル12の長手方向に離間して設定され、シャトルモードヘリカルスキャンを実行するグループとグループの間は、速い方の直線移動速度で直線移動し、前のグループのスキャンに引き続いて、あるグループのスキャンが直ちに開始すること。」という引用文献2技術事項が記載されている。 引用文献2に記載されたX線CT装置100は、ヘリカルスキャンを実行する被検体の部位に対応するグループを複数設定し、設定されたグループに対してスキャンを実行するものであり、「スキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定し」「スキャン条件に基づいてスキャンを実行する」「X線コンピュータ断層撮影装置」である引用発明と共通性を有している。 そうすると、引用文献1及び2に接した当業者であれば、引用発明においてスキャノグラムを被検体の体軸方向に対して複数の領域に分割する部位別領域を設定するにあたって、被検体の対軸方向に離間した複数の部位別領域の検査を行うために、被検体の対軸方向に離間した複数の部位別領域を設定する構成とし、複数の部位別領域の間は、速い方の直線移動速度で直線移動し、前の部位別領域のスキャンに引き続いて、他の部位別領域のスキャンが直ちに開始する構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。 また、引用発明は、「部位別領域間の境界線、又は部位別領域の外枠をマウス操作等によって移動させることで、各部位別領域の大きさを設定する計画補助システム43」を有するものであるから、引用発明において、被検体の対軸方向に離間した複数の部位別領域を設定する構成を採用した場合、最初にスキャンが実行される部位別領域の境界線、及び、最後にスキャンが実行される部位別領域の境界線を設定することとなるから、本件補正発明の「前記複数のヘリカルスキャン領域と前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域とを含む領域の前記長手方向の成分である範囲を設定する」構成を充足する。 そして、引用発明は、複数の部位別領域内において、同じ速度で定速移動を行うものであるから、「複数の部位別領域の間は、速い方の直線移動速度で直線移動」する場合、「複数の部位別領域」内と「複数の部位別領域」の間は、いずれも同じ速度で定速移動することとなるから、本件補正発明の「前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合に自動的に、前記範囲の端から端までの間に前記天板又は前記架台装置の一連の定速移動を行うことで、前記複数のスキャンプロトコルを実行する実行手段」の構成を充足する。 したがって、引用発明において、引用文献2技術事項を採用し、上記相違点に係る本件補正発明の構成を得ることは当業者が容易に想到しうることである。 イ そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び引用文献2技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 ウ したがって、本件補正発明は、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 令和元年12月26日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、同年年6月10日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1ないし9に係る発明は,本願の出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて,その出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない、というものである。 引用文献1:特開2006-55635号公報 引用文献2:特開2006-320523号公報 引用文献3:特開2005-323627号公報 引用文献4:特開2000-210266号公報 引用文献5:特開2008-11905号公報 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び2の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「複数のスキャンプロトコル」が「複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合」に設定されること、「範囲」に「前記離間する複数のヘリカルスキャン領域に挟まれる領域」が含まれること、「実行手段」が「前記複数のスキャンプロトコルを実行する」のが「前記複数のヘリカルスキャン領域が設定された場合」であって、「自動的に」実行されることに係る限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び引用文献2技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-05-19 |
結審通知日 | 2020-05-26 |
審決日 | 2020-06-08 |
出願番号 | 特願2015-194587(P2015-194587) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山口 裕之 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
森 竜介 松谷 洋平 |
発明の名称 | X線CT装置 |
代理人 | 特許業務法人東京国際特許事務所 |