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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B21D
管理番号 1364789
審判番号 不服2019-15251  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-09-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-13 
確定日 2020-08-25 
事件の表示 特願2015-72363「成形装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年11月10日出願公開、特開2016-190262、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月31日の出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 3月30日 :補正書の提出
平成31年 2月 1日付け:拒絶理由通知
平成31年 4月12日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 8月 6日付け:拒絶査定
令和 1年11月13日 :審判請求と同時に手続補正書の提出
令和 2年 5月28日 :上申書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和1年8月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献1-5に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の技術を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2009-220141号公報
2.特開昭63-317621号公報
3.特開2003-251418号公報
4.特開平9-271921号公報(周知技術を示す文献)
5.特開平9-253791号公報(周知技術を示す文献)

第3 本願発明
本願請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、令和1年11月13日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、そのうち本願発明1は以下のとおりの発明である。

「金属パイプをブロー成形する成形装置であって、
金属パイプ材料を加熱する加熱部と、
前記金属パイプ材料に気体を供給して膨張させる気体供給部と、
前記膨張した前記金属パイプ材料を接触させて前記金属パイプを成形する金型が取り付けられる金型取付部と、
前記加熱部によって加熱される前記金属パイプ材料の温度を前記金属パイプ材料と直接接触することなく検出する温度検出部と、を備え、
前記温度検出部は、前記金型に設けられ、当該金型を介して前記金属パイプ材料の温度を検出する、成形装置。」

また、本願発明2-3は、概略、本願発明1を減縮した発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は理解の便のため当審にて付与。以下同。)。

「【0001】
本発明は、パイプのブロー成形技術に関する。」

「【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るパイプ製品の製造装置の原理図であり、パイプ製品の製造装置10は、下型11及び上型12からなるブロー成形金型13と、下型11と上型12との間にパイプ14を昇降可能に水平に支えるパイプ支持機構30と、このパイプ支持機構30で支えられているパイプ14に通電して加熱する通電加熱機構50と、加熱されたパイプに高圧ガスを吹込むガス吹込み機構60と、パイプが焼入れ温度(AC3変態点温度以上)に加熱されたときにブロー成形金型13を閉じるとともに加熱されたパイプに高圧ガスを吹込ませる一連の制御を行う制御部70と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とからなる。
【0022】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
下型11は、大きな基台15に固定されている。
そして、下型11は、大きな鋼製ブロックの上面に成形用凹部16を備え、左右端にスプリング17、17で支持された仮受けロッド18、18を備え、冷却水通路19を内蔵し、中央に下から差し込んだ熱電対21を備えている。この熱電対21はスプリング22で上下移動自在に支持されている。
【0023】
なお、仮受けロッド18、18は製品の払い出しピンを兼ねる。また、熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計や光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。さらには、通電時間と温度との相関が得られれば、測温手段は省くことができる。
【0024】
上型12は、下面に成形用凹部24を備え、冷却水通路25を内蔵した大きな鋼製ブロックである。そして、上型12は加圧シリンダ26で吊され、ガイドシリンダ27、27で横に振れないように案内される。」

「【0034】
ブロー成形は数秒で完了した。そして、ブロー成形されて膨らんだパイプ14の外周面が下型11の成形凹部16に接触して急冷され、同時に、上型12の成形凹部24に接触して急冷される。
【0035】
図5は冷却と時間の関係を示すグラフであり、パイプは、25秒で30℃ 付近まで急冷された。すなわち、熱マスの大きな金型に、パイプの保有熱が吸収され、結果として、パイプは急冷された。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。
急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態した。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイトなど)に変態した。したがって、別途、焼戻し処理を行う必要はない。
【0036】
図6は得られたパイプ製品の断面図であり、パイプ製品80は、中央のバルーン部81と両端のネック部82、82とからなる。
パイプ製品80はブロー成形品であると共に熱処理された高張力品でもある。したがって、本発明によれば、高強度のブロー成形パイプ製品が製造可能となる。」

「【0038】
パイプ自体を発熱させるため、加熱時間は数秒?数十秒で済む。加熱時間が極く短くなり生産性を容易に高めることができる。加熱炉が不要であるため、設備費も圧縮できる。
さらに、ブロー工程で膨らんだパイプが金型に接触する。パイプは焼入れ温度であって高温であり、金型は常温であるため、パイプが金型で急冷され、焼入れが行われる。したがって、高強度材を得ることができる。
すなわち、本発明によれば、加熱時間が短くて済み、高強度処理を講じることができる。」

「【0042】
ブロー成形金型は無水冷金型と水冷金型の何れでもよい。ただし、無水冷金型は、ブロー成形終了後に金型を常温付近まで下げるときに、長時間を要する。この点、水冷金型であれば、短時間で冷却が完了する。したがって、生産性向上の観点からは、水冷金型が望ましい。」

(2)引用文献1に記載された技術的事項
上記(1)の段落【0023】の「熱電対21は測温手段の一例を示したに過ぎず、輻射温度計や光温度計のような非接触型温度センサであってもよい。」の記載事項から、温度検出には非接触型温度センサを用いることできるという技術的事項が開示されていると認められる。

(3)引用発明
上記(1)の記載事項及び上記(2)の技術的事項から、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「パイプ製品80をブロー成形すると共に熱処理する製造装置10であって、
パイプ14を加熱する通電加熱機構50と、
前記パイプ14に高圧ガスを供給して膨張させるガス吹込み機構60と、
前記膨張した前記パイプ14を接触させて前記パイプ製品80を成形するブロー成形金型13が取り付けられる基台15及び加圧シリンダ26、ガイドシリンダ27と、
前記通電加熱機構50によって加熱される前記パイプ14の温度を前記パイプ14と直接接触することなく検出する非接触型温度センサと、
ブロー成型金型13を強制的に水冷して常温にする水循環機構72と、を備え、
前記非接触型温度センサを用いて前記パイプ14の温度を検出する、製造装置10。」

2.引用文献4について
(1)引用文献4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、樹脂中子全体を鋳造製品から除去できる、樹脂中子の除去方法に関する。」

「【0020】本発明の第7実施例の樹脂中子の除去方法は、図8、図9に示すように、本発明の第5実施例において、樹脂中子の軟化状態を金型3の温度を検出することにより間接的に検出するようにした方法からなる。図8に示すように、金型3に温度センサー18(たとえば、熱電対、赤外線センサー、など)が取付けられている。また、樹脂中子1の温度と金型3の温度との間には強い相関関係があるので、試験または理論解析などによってその相関関係を求め、それを制御装置12に格納しておく。・・・」

(2)引用文献4記載の技術的事項
上記(1)の記載事項から、上記引用文献4には、樹脂中子全体を鋳造製品から除去するために、金型3に温度センサー18を取付け、樹脂中子の軟化状態を金型3の温度を検出することにより間接的に検出する技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献5について
(1)引用文献5の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋳造製品からの除去タイミングが正確な、樹脂中子の除去方法に関する。」

「【0012】本発明の第3実施例においては、図4、図5に示すように、金型3に温度センサー(たとえば、熱電対5、赤外線センサー、など)が取付けられている。また、樹脂中子1の温度と金型3の温度との間には強い相関関係があるので、試験または理論解析などによってその相関関係を求め、それを制御装置7に格納しておく。・・・」

(2)引用文献5記載の技術的事項
上記(1)の記載事項から、上記引用文献5には、鋳造製品からの樹脂中子の除去方法に関して、金型3に温度センサーを取付け、樹脂中子1の温度と金型3の温度との間の相関関係を利用して、正確なタイミングで除去するという技術的事項が記載されていると認められる。

4.その他の文献について
また、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の第2ページ左下欄第9-15行には「このシリンダー3の作動により電極2の被加熱鋼材1端面への押し付け力を調整し制御する。5-1、5-1、5-3は温度検出器であり、5-1、5-2は、接触部近傍の温度を測定するための電極端面近傍に設置し、5-3は被加熱鋼材の長手方向中央部の温度を測定できるように設置してある。」と記載され、被加熱鋼材1端面に押し付けられる電極2に温度検出器5-1、5-2を設置することが開示されている。
更に、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の図1には、金型を金型外側部分と、金型内側部分とにより構成し、金型内側部分が金型外側部分の分割面を覆うように構成される点が図示されている。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明における「パイプ製品80」は、本願発明1における「金属パイプ」に相当し、以下同様に、「製造装置10」は「成形装置」に、「パイプ14」は「金属パイプ材料」に、「通電加熱機構50」は「加熱部」に、「高圧ガス」は「気体」に、「ガス吹込み機構60」は「気体供給部」に、「ブロー成形金型13」は「金型」に、「基台15及び加圧シリンダ26、ガイドシリンダ27」は「金型取付部」に、「パイプ14の温度を前記パイプ14と直接接触することなく検出する非接触型温度センサ」は「金属パイプ材料の温度を前記金属パイプ材料と直接接触することなく検出する温度検出部」に、それぞれ相当する。

イ したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「金属パイプをブロー成形する成形装置であって、
金属パイプ材料を加熱する加熱部と、
前記金属パイプ材料に気体を供給して膨張させる気体供給部と、
前記膨張した前記金属パイプ材料を接触させて前記金属パイプを成形する金型が取り付けられる金型取付部と、
前記加熱部によって加熱される前記金属パイプ材料の温度を前記金属パイプ材料と直接接触することなく検出する温度検出部と、を備える、成形装置。」

(相違点)
温度検出部が、本願発明1は、「前記金型に設けられ、当該金型を介して前記金属パイプ材料の温度を検出する」のに対し、引用発明は、「前記非接触型温度センサを用いて前記パイプ14の温度を検出する」点。

(2)相違点についての判断
引用文献4及び5記載の技術的事項(上記第4の2.(2)及び第4の3.(2))に示すとおり、樹脂中子を鋳造製品から除去するために、温度検出部である温度センサーを金型に設け、当該金型を介して前記樹脂中子の温度を検出することは、本願出願前から周知技術であるといえる。
しかし、引用発明のブロー成型金型13は、パイプ製品80を熱処理するために、水循環機構72によって強制的に水冷されて常温であるから、仮に、引用発明のブロー成型金型13に温度センサーを設けても、正確なパイプ14の温度を検出することはできない。
したがって、引用発明は、引用文献4及び5記載の技術的事項の適用を阻害する要因を有しているといわざるを得ない。
もっとも、引用文献1には、「無冷却金型」を用いることの開示もある(上記第4の1.(1)【0042】)が、生産性向上の観点から、冷却金型が望ましいと記載されているから、無冷却金型を用いれば、生産性が低下することは明らかである。そうすると、引用発明のブロー成型金型13に温度センサーを設けて、パイプ14の温度を検出するためには、生産性が低下する無冷却金型を用いることになるが、引用文献4及び5記載の技術的事項には、金型に温度センサーを設けて温度を検出することの利点が何も示されていないから、当業者が、あえて生産性を低下させてまで、引用発明に引用文献4及び5記載の技術的事項を適用する動機がない。
したがって、上記相違点に係る構成は、当業者であっても、引用発明及び引用文献4及び5記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また、上記相違点に係る構成は、上記引用文献2及び3にも記載されていない。

(3)引用発明と比較した有利な効果
本願発明1は、温度検出部が、加熱される金属パイプ材料と直接接触することなく温度を検出できるため、金属パイプ材料の表面に跡が付くこと等を防止でき、成形品の外観上の品質を向上させることができるという効果を有するものである。
この点について、引用発明も非接触型温度センサを用いて温度を検出するものであるが、輻射温度計や光温度計のような非接触型温度センサを採用した場合、非接触型温度センサで金属パイプ材料の表面からの輻射熱などを測定することとなるが、この場合は、非接触型温度センサが、剥離したスケールの温度を誤って測定してしまうという可能性が生じるのに対して、本願発明1は、温度検出部が金型に設けられ、当該金型を介して金属パイプ材料の温度を検出することによって、上述のように剥離したスケールの温度を測定することを回避することで、検出精度を向上することができるという、引用発明と比較した有利な効果を有する。

(4)本願発明1のむすび
したがって、本願発明1は、引用発明及び引用文献2-5に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-3について
本願発明2-3は、本願発明1の構成全てを引用した発明であって、本願発明1の相違点に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-5に記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1.理由(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-3は「金型を介して前記金属パイプ材料の温度を検出する」という事項を有するものとなっており、上記第5 1.(1)イの「相違点」に係る構成を有していることから、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1-3は、当業者が引用発明及び引用文献2-5記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2020-08-05 
出願番号 特願2015-72363(P2015-72363)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 青木 良憲
大山 健
発明の名称 成形装置  
代理人 柳 康樹  
代理人 黒木 義樹  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 阿部 寛  
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