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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  F04D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F04D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F04D
管理番号 1364872
異議申立番号 異議2019-700877  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-08 
確定日 2020-06-15 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6507885号発明「真空ポンプ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6507885号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。 特許第6507885号の請求項3、4に係る特許を維持する。 特許第6507885号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6507885号の請求項1?4に係る特許についての出願は、平成27年6月29日に出願され、平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ、令和元年5月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和元年11月 8日提出: 特許異議申立人中野善和による請求項1?4に係る特許に対する特許異議の申立て
令和2年 2月17日付け: 取消理由通知書
令和2年 4月 9日提出: 特許権者による意見書及び訂正請求書

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
令和2年4月9日にされた訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)の請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるものである。
この訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。

(1)訂正事項1
請求項1を削除する。

(2)訂正事項2
請求項2を削除する。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項3に
「【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設
けられたピン穴に係合するピンである、真空ポンプ。」
とあるのを、独立形式に改め、
「【請求項3】
回転駆動されるロータと、
吸気口フランジが形成され、前記ロータを収容するポンプケーシングと、
前記吸気口フランジと分離して設けられ、前記吸気口フランジを装置側フランジに固定する補助フランジと、を備え、
前記補助フランジは、
前記装置側フランジにボルトにより締結される締結部と、
前記吸気口フランジの背面に当接し、前記吸気口フランジを前記装置側フランジとの間に挟持する挟持部とを有し、
前記挟持部は、前記吸気口フランジを前記装置側フランジと共に挟持するための1つの平面を有し、かつ、前記吸気口フランジに係合する部分を有しておらず、前記1つの平面においてのみ前記吸気口フランジの背面に当接し、
前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されており、
前記ポンプケーシングに回転トルクが発生した際に、前記挟持部と前記装置側フランジとの間で前記吸気口フランジが滑るように、前記ポンプケーシングが回転し、前記挟持部および前記装置側フランジと前記吸気口フランジとの摩擦によって回転エネルギーを消費し、
前記吸気口フランジから前記補助フランジを介して前記ボルトに伝達される衝撃を緩和する緩衝部材を、前記吸気口フランジと前記補助フランジとの間に備え、
前記緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである、真空ポンプ。」
と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1に係る請求項1についての訂正は、訂正前の請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項1についての訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(2)訂正事項2
訂正事項2に係る請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項2についての訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

(3)訂正事項3
訂正事項3に係る請求項3についての訂正は、訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項2をさらに引用する訂正前の請求項3について、独立形式に改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3に係る請求項3についての訂正が、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかである。

3.一群の請求項ごとに訂正を請求することについて
訂正前の請求項2?請求項4は、それぞれ直前の請求項の記載を引用するものであり、訂正前の請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1?請求項4は、特許法施行規則第45条の4に規定する関係を有する一群の請求項を構成する。そして、本件訂正請求は、訂正事項1?訂正事項3により、訂正前の請求項1?請求項3の記載を訂正しようとするものであり、一群の請求項1?請求項4に対して請求されている。
したがって、本件訂正請求は特許法第120条の5第4項の規定に適合する。

4.小括
前記のとおり、訂正事項1?訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合し、さらに、同法第120条の5第4項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、令和2年4月9日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。

第3 訂正後の本件特許発明
本件訂正請求により訂正された請求項3,4に係る発明(以下、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項3,4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

1.本件特許発明3
「【請求項3】
回転駆動されるロータと、
吸気口フランジが形成され、前記ロータを収容するポンプケーシングと、
前記吸気口フランジと分離して設けられ、前記吸気口フランジを装置側フランジに固定する補助フランジと、を備え、
前記補助フランジは、
前記装置側フランジにボルトにより締結される締結部と、
前記吸気口フランジの背面に当接し、前記吸気口フランジを前記装置側フランジとの間に挟持する挟持部とを有し、
前記挟持部は、前記吸気口フランジを前記装置側フランジと共に挟持するための1つの平面を有し、かつ、前記吸気口フランジに係合する部分を有しておらず、前記1つの平面においてのみ前記吸気口フランジの背面に当接し、
前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されており、
前記ポンプケーシングに回転トルクが発生した際に、前記挟持部と前記装置側フランジとの間で前記吸気口フランジが滑るように、前記ポンプケーシングが回転し、前記挟持部および前記装置側フランジと前記吸気口フランジとの摩擦によって回転エネルギーを消費し、
前記吸気口フランジから前記補助フランジを介して前記ボルトに伝達される衝撃を緩和する緩衝部材を、前記吸気口フランジと前記補助フランジとの間に備え、
前記緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである、真空ポンプ。」

2.本件特許発明4
「【請求項4】
請求項3に記載の真空ポンプにおいて、
前記吸気口フランジおよび前記補助フランジに設けられたピン穴と前記ピンとの隙間寸法は、前記吸気口フランジの移動可能量が前記締結部に設けられたボルト孔と前記ボルトとの隙間寸法よりも小さくなるように設定されている、真空ポンプ。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審が令和2年2月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(進歩性)請求項1及び2に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。

引用文献1:実願昭63-170407号(実開平2-91288号)のマイクロフィルム(甲第1号証)
引用文献2:「真空装置用ベーカブルフランジの形状・寸法」、日本真空協会、昭和57年12月1日発行(甲第2号証)

2.当審の判断
本件訂正の訂正事項1及び訂正事項2により、訂正前の請求項1及び請求項2は削除されたため、取消理由通知に記載した取消理由は、その対象となる請求項1及び請求項2に係る特許が存在しないものとなった。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.新規性について
本件訂正の訂正事項1により、訂正前の請求項1は削除されたため、特許異議申立書に記載された特許法第29条第1項第3号についての特許異議申立理由は、その対象となる請求項1に係る特許が存在しないものとなった。

2.進歩性について
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア.引用文献1
(ア)取消理由通知において引用した前記引用文献1には以下の事項が記載されている(下線は、当審にて付与。以下同様。)。
a.「(B) 従来の技術
従来のターボ分子ポンプは第3図,第4図に示す構造をなしている。これら図面に示すポンプはいわゆる縦形であるが、ケーシング1の内方にターボ機構Tが内蔵されており、このターボ機構が電動機(図示せず)にて回転され作動することによってケーシング開口端部のフランジ2に連接された被排気側(第2図の8)を高真空に排気するものである。3は排気口である。なおRとKはターボ機構Tを構成する回転翼と固定翼であり、Sはスペーサである。またOはシール用Oリングである。この場合フランジ2には第3図(A)に示すように周囲に被排気側との連結を行なうための孔2Hが多数個穿設されている。この孔2Hに連結用ボルトを貫通し連接するわけであるが、このようなボルト.ナット方式による連接を行なうのは気密連接を保障するためである。」(明細書第1ページ第17行?第2ページ第15行)

b.「(C) 考案が解決しようとする課題
従来のターボ分子ポンプにおいては、フランジ2がケーシング1に対して固着されており、したがって被排気側との連結用孔2Hもケーシング1に対しては固定位置となる。
ところが排気口側位置との関係でフランジ2への被排気側の連接位置を調整したい場合、連結孔2Hのピッチ分しか調整できない。したがってピッチ角度以内の微調整は不可能なのである。」(明細書第2ページ第16行?第3ページ第5行)

c.「第1図は、この考案によるターボ分子ポンプの上方部のみを示す図で、特に要部を理解しやすくするために一部を破断して示している。第2図はさらにこの要部を拡大して示しているが被排気側8が連接された状態での要部拡大図である。」(明細書第3ページ第17行?第4ページ第2行)

d.「これらの図面から明らかなとおり2がケーシング1の開口端部に配設され、かつこのケーシング1と一体の固定フランジであり、4がこの固定フランジ2に対し回転可能に付設された回転フランジである。」(明細書第4ページ第3行?第7行)

e.「固定フランジ2の外周上部には段部2Sが形成されているが、この段部に回転フランジ4の上面に面着固定された薄板(金属板ないしプラスチック板あるいはゴム板)5が係止されるようになっている。すなわち薄板5は環状でその内径は固定フランジ2の外径より小さく形成され、接着剤で固定されるか、あるいは固定ねじ等で回転フランジ4に固定される。したがって回転フランジ4は下方に落下しないよう保持され、しかも回転が保障されている。」(明細書第4ページ第7行?第17行)

f.「この回転フランジ4には連結用孔4Hが穿設されている。またこの回転フランジ4は第2図に示すように被排気側8と連接されるとき、真空シールを確実ならしめるよう固定フランジ2の下面に係止される部分から上面までの高さ(厚さ)が固定フランジ2の厚さより小さく、図面に示すごとく間隙tが存在するようになっている。しかも薄板5がこの間隙t内に自由に介在するようになっている。
この間隙tの存在によって連結ボルト6,ナット7により被排気側8を連接するときOリングOは確実に押圧され、気密に連接される。」(明細書第5ページ第1行?第12行)

g.「しかも被排気側8の位置(角度)を微調整する必要があるときは、ボルト6,ナット7をゆるめ、回転フランジ4を微少回転させる。」(明細書第5ページ第13行?第15行)

h.記載事項a.並びに第3図及び第4図には、従来の技術が記載されているが、引用文献1の記載全体を総合すると、この従来の技術におけるターボ分子ポンプの構成は、引用文献1の明細書第3ページ第14行?第5ページ第18行並びに第1図及び第2図に記載された実施例におけるターボ分子ポンプの構成と齟齬しない範囲において、当該実施例におけるターボ分子ポンプの構成においても採用されているといえる。すると、引用文献1の実施例におけるターボ分子ポンプは、電動機にて回転され作動するターボ機構Tを構成する回転翼Rを備えているといえる。

i.記載事項a.によると、従来の技術におけるターボ分子ポンプにおいて、ケーシング1の内方にターボ機構Tが内蔵されており、この構成についても、前記h.で示した理由と同様の理由により、実施例におけるターボ分子ポンプの構成に採用されているといえる。また、記載事項d.によると、ケーシング1の開口端部に固定フランジ2が配設されているといえるから、引用文献1の実施例におけるケーシング1は、開口端部に固定フランジ2が配設され、ターボ機構Tが内蔵されるものといえる。

j.記載事項d.によると、回転フランジ4は、固定フランジ2に対し回転可能に付設されており、記載事項f.によると、回転フランジ4は、被排気側8と連接されているといえる。すると、回転フランジ4は、固定フランジ2に対し回転可能に付設され、被排気側8と連接されているといえる。

k.第1図及び第2図によると、連結用孔4Hに連結ボルト6が貫通しているといえ、記載事項f.も考慮すると、回転フランジ4は、被排気側8を連接する連結ボルト6が貫通する連結用孔4Hを有し、また、固定フランジ2の下面に係止される部分を有しているといえる。

l.第1図及び第2図によると、固定フランジ2の径方向外周壁面と、回転フランジ4の径方向内周壁面とが対向しているといえる。

m.記載事項e.によると、ゴム板が、回転フランジ4の上面に面着固定され、固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されているといえる。

(イ)引用発明
記載事項a.?m.によれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電動機にて回転され作動するターボ機構Tを構成する回転翼Rと、
開口端部に固定フランジ2が配設され、前記ターボ機構Tが内蔵されるケーシング1と、
前記固定フランジ2に対し回転可能に付設され、被排気側8と連接される回転フランジ4と、を備え、
前記回転フランジ4は、
前記被排気側8を連接する連結ボルト6が貫通する連結用孔4Hと、
前記固定フランジ2の下面に係止される部分とを有し、
前記固定フランジ2の径方向外周壁面と、前記回転フランジ4の径方向内周壁面とが対向しており、
ゴム板が、前記回転フランジ4の上面に面着固定され、前記固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されている、ターボ分子ポンプ。」

イ.引用文献2
取消理由通知において引用した前記引用文献2には以下の事項が記載されている。
(ア)「1.適用範囲
この規格は、真空装置の管、ポンプ、弁などを連結するときに用いる固定又は回転式のボルト締めベーカブルフランジ(以下、フランジという。)の形状及び寸法について規定する。」(第1ページ第3行?第5行)

(イ)第2ページの「表1 フランジの形状・寸法」には、「回転式フランジ」についての図面、及び表として以下の事項が記載されている。



(ウ)記載事項(イ)の表によると、呼び径が16mm?250mmのいずれのものも、SがTより0.1mm大きくなっており、また、「回転式フランジ」についての図面も考慮すると、回転式フランジは、ボルトで固定される外側のフランジと、この外側のフランジに回転可能に支持される内側のフランジとで構成され、内側のフランジの径方向外周壁面と、この外周壁面と対向する外側のフランジの径方向内周壁面との間に隙間を形成しているといえる。

ウ.引用文献5
本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献5(特表2009-500549号公報(甲第5号証))には以下の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
本発明は、真空ポンプ装置、特にターボ分子ポンプ装置に関する。」

(イ)「【0008】
回動防止装置として保持エレメントはピンを有していてよい。このピンは、ポンプ室ハウジングに設けられた切欠きもしくは孔内に係合する。付加的に、保持エレメントが固定エレメント、たとえばねじを有していると有利である。したがって、本発明による保持エレメントの有利な構成は、たとえば切欠き内に係合するピンの形の回動防止装置と、固定エレメントとを有しており、この固定エレメントは真空室ハウジングに設けられたねじ山にねじ込まれる。別の有利な構成では、回動防止装置も固定エレメント、特にねじとして形成されているので、本発明による保持エレメントは特に同一に形成された少なくとも2つの固定エレメントを有している。両固定エレメントは、真空室ハウジングに設けられた切欠き、たとえばねじ山付孔内に係合するので、両固定エレメントは固定装置としても回動防止装置としても働く。」

(ウ)「【0013】
図面には、真空ポンプ装置が図示されている。この真空ポンプ装置はポンプハウジング10を有しており、このポンプハウジング10内には、長手方向軸線12を中心にして回転するロータ14が配置されている。ロータ14の個々のロータブレード(動翼)の間には、ポンプハウジング10に結合されたステータ16のステータブレード(静翼)が配置されている。ロータ14は結合エレメント18を介して駆動軸20に固く結合されている。相応して、ステータ16は結合エレメント22を介してポンプハウジング10に固く結合されている。
【0014】
真空室24内に真空を発生させるためには、ポンプハウジング10が真空室ハウジング26に開口28の範囲で固定されている。
【0015】
固定のためには、ポンプハウジング10が、図示の実施例では円環状に形成されているポンプフランジ30を有している。このポンプフランジ30は横断面L字形に形成されているので、円環状の溝32が形成されている。
【0016】
保持エレメント34を用いて、ポンプハウジング10はポンプフランジ30を介して真空室ハウジング26に固定される。このためには、図示の実施例では、保持エレメント34が特に円環セグメント状の付設部36を有しており、この付設部36がポンプフランジ30の溝32内に係合する。
【0017】
真空室ハウジング26に保持エレメント34を固定するためには、固定エレメントとしてねじ38が設けられている。この場合、本発明による保持エレメント34(図2)は固定エレメント38ならびに回動防止装置40を有しており、この場合、図示の実施例では、固定エレメント38も回動防止装置40も、ねじとして形成されている。回動防止装置40は切欠き42内に係合する。この切欠き42は、図示の実施例では真空室ハウジング26に設けられたねじ山付孔である。
【0018】
本発明による保持エレメント34は固定エレメント38の他に回動防止装置40を有しているので、故障発生時には、固定エレメント34の回動が生じないことが保証されている。ロータ14のロックのような故障発生時にロータ14からステータ16を介してポンプハウジング10へ伝達される高いトルクが発生したにもかかわらず、固定エレメントしか有しない相応する単独型保持エレメント44(図2)の場合に行われ得るような保持エレメント34の回動は行われない。
【0019】
図2に示したポンプハウジング10の斜視図は、ポンプハウジングのフランジ側を斜め上から見た図である。この場合、円環状のポンプフランジ30には4つの本発明による保持エレメント34ならびに4つの単独型保持エレメント44が配置されている。本発明による保持エレメント34はそれぞれ1つの円環状の付設部36を有しており、この付設部36はポンプフランジ30の溝32(図1)内に係合する。さらに、保持エレメント1つ当たり2つのねじ38,40が設けられており、これらのねじは固定エレメントもしくは回動防止装置として働く。
【0020】
ねじ38,40は、保持エレメント34に設けられた貫通孔46によって案内されている。
【0021】
公知先行技術を明示するために、図4には、単独型保持エレメント44が故障発生時の状態で図示されている。単独型保持エレメント44は、ねじ48を介して真空室ハウジング26に固定されている。故障発生時に生じる高いトルクに基づき、図面で見て矢印50の方向におけるポンプハウジング10の回動が行われる。これにより、図面で見て逆時計回り方向での単独型保持エレメント44の回動が行われる。このことはポンプフランジ30ならびに真空室ハウジング26の損傷を招く。」

エ.引用文献6
本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献6(国際公開第2012/114862号(甲第6号証))には以下の事項が記載されている。

(ア)「[0009]ターボ分子ポンプのポンプ本体Tは、ベース1と、ベース1の上面に載置される略円筒形状のケーシング2と,ケーシング2内に回転可能に設けられたロータ3とを備えている。ケーシング2の下端にはフランジ2bが設けられており、このフランジ2bとベース1とは複数本のボルト52により締結されている。ケーシング2の上端に設けられた吸気口フランジ部2aは、図示しない半導体製遣装置側の真空チャンバのフランジに、ボルトによって締結される。」

(イ)「[0017]このようなことから、本実施の形態では、ベース1とケーシング2との締結構造を、図2,3に示すような構造とした。図2,3は、図1のケーシング2とベース1との締結構造を説明する図である。図2は図1のケーシング2とベース1のA-A断面を示す図である。図1に示したように、ケーシング2の下端にはフランジ2bが形成されており、このフランジ2bをベース1にボルト締結することによりケーシング2がベース1に固定されている。図2に示す例では6本のボルト52が使用されている。
[0018]ケーシング2は中心軸がロータ3の中心軸とほぼ一致するようにベース1に固定され、フランジ2bに形成されるボルト孔110は、ケーシング2の中心軸に対して同心円上に配置されている。また、図2の符号100で示す部材は、ベース1とケーシング2との締結部に設けられたピンである。ピン100には例えば平行ピンが用いられ、6本のピン100が、ボルト52が配置されている同心円と同一円上に配置されている。
[0019]図3(a)は、図2のB-B断面を示し、図3(b)は図2のC-C断面を示す。図3(a)に示すように、ベース1およびフランジ2bには、非貫通のピン穴101,102が形成されている。ピン100は、ピン穴101,102によって形成される袋状のピン穴に収納されている。ピン100の長さおよび各ピン穴101,102の深さは、ポンプ本体Tを正立姿勢とした場合、倒立姿勢とした場合のいずれの場合においても、ピン100が両方のピン穴101,102に必ず挿入されるように設定されている。」

(2)当審の判断
ア.本件特許発明3について
(ア)対比
本件特許発明3と引用発明とを対比すると、引用発明の「回転翼R」は、本件特許発明3の「ロータ」に相当する。また、引用発明の「電動機にて回転され作動するターボ機構Tを構成する回転翼R」は、電動機にて回転駆動されるものであるから、本件特許発明3の「回転駆動されるロータ」に相当する。
引用発明の「固定フランジ2」及び「ケーシング1」は、それぞれ本件特許発明3の「吸気口フランジ」及び「ポンプケーシング」に相当する。そして、引用発明の「開口端部に固定フランジ2が配設され、前記ターボ機構Tが内蔵されるケーシング1」は、ターボ機構Tを構成する回転翼Rも内蔵しているといえるから、本件特許発明3の「吸気口フランジが形成され、前記ロータを収容するポンプケーシング」に相当する。
引用発明の「回転フランジ4」は、本件特許発明3の「補助フランジ」に相当する。また、引用発明の「被排気側8」は、引用文献1の第2図の記載によると、連結ボルト6が貫通する部位がフランジ状であるといえるから、本件特許発明3の「装置側フランジ」に相当する。そして、引用発明の「前記固定フランジ2に対し回転可能に付設され、被排気側8と連接される回転フランジ4」は、固定フランジ2と別部材で構成され、固定フランジ2を被排気側8に固定するためのものといえるから、本件特許発明3の「前記吸気口フランジと分離して設けられ、前記吸気口フランジを装置側フランジに固定する補助フランジ」に相当する。
引用発明の「連結ボルト6」は、本件特許発明3の「ボルト」に相当する。そして、引用発明の回転フランジ4の「前記被排気側8を連接する連結ボルト6が貫通する連結用孔4H」が設けられる部分は、連結ボルト6で被排気側8に締結される部分であるといえるから、本件特許発明3の「前記装置側フランジにボルトにより締結される締結部」に相当する。
引用発明の「前記固定フランジ2の下面」は、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの背面」に相当する。そして、引用発明の回転フランジ4の「前記固定フランジ2の下面に係止される部分」は、引用文献1の第2図の記載によると、固定フランジ2の下面に当接しており、固定フランジ2を被排気側8との間で挟持する部分であるといえるから、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの背面に当接し、前記吸気口フランジを前記装置側フランジとの間に挟持する挟持部」に相当する。
引用発明の「前記固定フランジ2の径方向外周壁面と、前記回転フランジ4の径方向内周壁面とが対向して」いるという事項は、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されて」いるという事項と、「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面を備えて」いる点において共通する。
引用発明の「ゴム板」は、「前記回転フランジ4の上面に面着固定され、前記固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されて」おり、その一端側が回転フランジ4の上面に固定され、その他端側が固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されているから、固定フランジ2と回転フランジ4との間に設けられ、固定フランジ2に衝撃が加わった際、固定フランジ2から回転フランジ4を介してボルト6に伝達される衝撃を緩和する機能を備えているといえる。そして、本件特許発明3は、緩衝部材が設けられる位置について、吸気口フランジと補助フランジとの間のどの部分に設けるかまで特定するものではないから、引用発明の「ゴム板」は、本件特許発明3の「緩衝部材」に相当し、引用発明の「ゴム板が、前記回転フランジ4の上面に面着固定され、前記固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されている」という事項は、本件特許発明3の「前記吸気口フランジから前記補助フランジを介して前記ボルトに伝達される衝撃を緩和する緩衝部材を、前記吸気口フランジと前記補助フランジとの間に備える」という事項に相当する。
引用発明の「ターボ分子ポンプ」は、本件特許発明3の「真空ポンプ」に相当する。

そうすると、本件特許発明3と引用発明とは、
「回転駆動されるロータと、
吸気口フランジが形成され、前記ロータを収容するポンプケーシングと、
前記吸気口フランジと分離して設けられ、前記吸気口フランジを装置側フランジに固定する補助フランジと、を備え、
前記補助フランジは、
前記装置側フランジにボルトにより締結される締結部と、
前記吸気口フランジの背面に当接し、前記吸気口フランジを前記装置側フランジとの間に挟持する挟持部とを有し、
前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面を備えており、
前記吸気口フランジから前記補助フランジを介して前記ボルトに伝達される衝撃を緩和する緩衝部材を、前記吸気口フランジと前記補助フランジとの間に備える、真空ポンプ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本件特許発明3は、「前記挟持部は、前記吸気口フランジを前記装置側フランジと共に挟持するための1つの平面を有し、かつ、前記吸気口フランジに係合する部分を有しておらず、前記1つの平面においてのみ前記吸気口フランジの背面に当接し」、「前記ポンプケーシングに回転トルクが発生した際に、前記挟持部と前記装置側フランジとの間で前記吸気口フランジが滑るように、前記ポンプケーシングが回転し、前記挟持部および前記装置側フランジと前記吸気口フランジとの摩擦によって回転エネルギーを消費」するのに対し、引用発明は、回転フランジ4の固定フランジ2の下面に係止される部分が、1つの平面を有するか明確でなく、また、ケーシング1に回転トルクが発生した際、どのような作用を奏するかも明確でない点。

[相違点2]
吸気口フランジの径方向外周壁面と、この径方向外周壁面と対向する補助フランジの径方向内周壁面について、本件特許発明3は、これらの「間には隙間が形成されて」いるのに対し、引用発明は、このような隙間が形成されているか明確でない点。

[相違点3]
緩衝部材について、本件特許発明3は、「前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである」のに対し、引用発明は、回転フランジ4の上面に面着固定され、固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されているゴム板であって、ピン穴及びピンを備えていない点。

(イ)判断
事案に鑑みて、[相違点3]から検討する。
引用発明のゴム板は、回転フランジ4の上面に面着固定され、固定フランジ2の外周上部に形成された段部2Sに係止されているものであって、引用文献1には、固定フランジ2にピン穴を設け、回転フランジ4にこのピン穴に係合するピンを設けることについて、何ら記載も示唆もされていない。
また、引用文献5には、前記「(1)ウ.」の記載事項(イ)によると、回動防止装置として、保持エレメントにピンを有し、このピンを、ポンプ室ハウジングに設けられた切欠きもしくは孔内に係合する点が記載されている。しかしながら、引用文献5の実施例では、回動防止手段40として、ねじを用い、このねじを真空室ハウジング26に設けられた切欠き42に係合することが記載されているのみであり(前記「(1)ウ.」の記載事項(ウ)参照)、この実施例を考慮しても、回動防止装置として、ピンを用いた際に、保持エレメントのピンが係合する切欠きもしくは孔が、ポンプ室ハウジングのどの部分に設けられるのかを把握することができず、ポンプフランジ30に設けられるか否かも不明である。
さらに、引用文献6には、前記「(1)エ.」の記載事項(ア)及び(イ)によると、ピン100を、ピン穴101,102によって形成される袋状のピン穴に収納する点が記載されているが、ピン100及びピン穴101,102が設けられる箇所は、ターボ分子ポンプのポンプ本体Tを構成する、ベース1とケーシング2との締結部であって、ケーシング2の上端に設けられた吸気口フランジ部2aと、半導体製遣装置側の真空チャンバのフランジとの締結部ではない。
そうすると、引用文献5及び引用文献6のいずれにも、本件特許発明3の前記相違点3に係る発明特定事項である「緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである」という事項に相当する開示はない。同様に、引用文献2、引用文献3(「保全作業安全ガイドライン 改定版」、日本真空工業会CS委員会、2010年3月第1刷発行(甲第3号証))、引用文献4(「コンパクトな電源一体化ターボ分子ポンプ「TMP?X2905/X3405シリーズ」を発売」、株式会社島津製作所、2013年8月29日プレスリリース(甲第4号証))にも、緩衝部材として、このようなピン穴及びピンを設けることについて、何ら記載も示唆もされていない。
そして、引用発明の回転フランジ4は、「固定フランジ2に対し回転可能に付設され」るものであり、また、前記「(1)ア.(ア)」の記載事項b.及びg.によると、引用発明は、ケーシング1の排気口3の位置を調整するために、ケーシング1に配設される固定フランジ2と、被排気側8と連接される回転フランジ4との相対的な位置(角度)関係について、連結用孔4Hのピッチ角度以内の微調整を可能にするものであって、ボルト6、ナット7をゆるめて、固定フランジ2と回転フランジ4とを相対的に微少回転させるものである。そして、引用発明において、仮に、固定フランジ2にピン穴を設け、回転フランジ4にこのピン穴に係合するピンを設けたとすると、このピン穴とピンとの干渉により、固定フランジ2と回転フランジ4との相対的な位置(角度)関係の微調整、つまり、ケーシング1の排気口3の位置の微調整に制限が加わることとなる。
そうすると、引用発明において、固定フランジ2にピン穴を設け、回転フランジ4にこのピン穴に係合するピンを設けることは、ケーシング1の排気口3の位置を調整するという引用発明の課題を解決するうえで、調整に制限を加えるものであるから、引用発明のゴム板に代えて、又は加えて、本件特許発明3の前記相違点3に係る発明特定事項を設けることの動機付けはなく、むしろ当該発明特定事項を設けることを阻害する理由が存在するといえる。
さらに、本件特許発明3は、「真空ポンプ」において、「緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである」という発明特定事項を備えることにより、緩衝部材として設けられたピンが破壊又は塑性変形することによって、補助フランジに加わる衝撃をやわらげる働きをするため、ロータ破壊等が発生した場合でも、ポンプ固定用のボルトの破断や大きな変形を防止することができるとともに、ピンを補助フランジと別体で設けているので、破損又は変形したピンを交換することで補助フランジを再利用することができるという作用効果を奏するものである(本件特許明細書の段落【0026】参照。)。このような作用効果については、引用文献1?引用文献6のいずれにも、何ら示唆されていないから、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、引用文献5に記載された事項及び引用文献6に記載された事項から当業者が予測できるものではない。
すると、本件特許発明3の前記相違点3に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、引用文献5に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づき、容易に想到できるものではない。

(ウ)まとめ
前記「(イ)」に示したように、本件特許発明3の前記相違点3に係る発明特定事項は、当業者といえども、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、引用文献5に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づき、容易に想到できるものではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明3は、当業者といえども、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、引用文献5に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件特許発明4ついて
請求項4は請求項3を引用するものであり、本件特許発明4も「緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである」という発明特定事項を備えるものであるから、本件特許発明3と同じ理由により、本件特許発明4は、当業者といえども、引用発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、引用文献4に記載された事項、引用文献5に記載された事項及び引用文献6に記載された事項に基づいて、容易に発明をすることができたものではない。

3.特許法第36条第6項第1号及び第2号、並びに第4項第1号について
(1)異議申立人の主張について
特許異議申立人は、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されて」いるという事項(以下、「隙間構成」という。)の作用効果は、特許査定時の明細書の段落[0024]の記載によれば、「吸気口フランジ211が径方向にも移動した場合」に「衝撃を低減」するものであるが、平成30年10月19日に提出された意見書(甲第7号証)の主張によれば、「ポンプケーシングが回転」した場合に「回転エネルギー」を消費するものと把握され、特許査定時の明細書に記載のものと相違している旨、主張している。

(2)特許法第36条第6項第1号について
特許異議申立人は、前記(1)に示した主張を前提に、意見書の主張に対応する隙間構成は特許査定時の明細書に記載されていないため、出願経過を参酌すれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許に係る特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件を満たさない旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されて」いるという発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落[0024]には、「図3に示す例では、吸気口フランジ211の外周面と締結部223の内周面との間に隙間Gが設けられている。」との開示があるから、意見書において、発明の詳細な説明に明示していない作用効果を主張したとしても、そのことをもって、本件特許発明3の前記発明特定事項が、発明の詳細な説明に記載されたものでないとはいえない。
そうすると、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載した発明であるといえ、同様に、請求項3を引用する請求項4に係る本件特許発明4は、発明の詳細な説明に記載した発明であるといえる。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものである。

(3)特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人は、前記(1)に示した主張を前提に、特許査定時の明細書に記載のものと、意見書の主張のものとで隙間構成の作用効果が相違しているから、隙間構成の技術的意義を特定することができず、隙間構成は明確ではなく、本件特許に係る特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件を満たさない旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されて」いるという発明特定事項は、吸気口フランジの径方向外周壁面と、補助フランジの径方向内周壁面との間に、隙間が形成されたことを特定するものであって、明確といえるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載された作用効果と、意見書で主張する作用効果が異なるものであるとしても、そのことをもって、本件特許発明3の前記発明特定事項が、明確でないとはいえない。
そうすると、本件特許発明3は、明確であるといえ、同様に、請求項3を引用する請求項4に係る本件特許発明4は、明確であるといえる。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものである。

(4)特許法第36条第4項第1号について
特許異議申立人は、前記(1)に示した主張を前提に、隙間構成が特許査定時の明細書等に記載されていない以上、本件特許に係る特許請求の範囲の記載に接した当業者は、これをどのように実施すればよいか、特許査定時の明細書等の記載から把握することができないから、本件特許に係る発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号の要件を満たさない旨、主張している。
しかしながら、本件特許発明3の「前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されて」いるという発明特定事項について、本件特許明細書の発明の詳細な説明の段落[0024]には、「図3に示す例では、吸気口フランジ211の外周面と締結部223の内周面との間に隙間Gが設けられている。」との開示があるから、この開示に接した当業者であれば、吸気口フランジの径方向外周壁面と、補助フランジの径方向内周壁面との間に、隙間を形成することは可能といえる。
そうすると、発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明3の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえ、同様に、請求項3を引用する請求項4に係る本件特許発明4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立理由によっては、請求項3及び請求項4に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に請求項3及び請求項4に係る特許を取り消す理由を発見しない。
また、本件訂正請求により、請求項1及び請求項2は削除されたため、請求項1及び請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、その対象となる特許が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により、その申立てを却下する。

よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
回転駆動されるロータと、
吸気口フランジが形成され、前記ロータを収容するポンプケーシングと、
前記吸気口フランジと分離して設けられ、前記吸気口フランジを装置側フランジに固定する補助フランジと、を備え、
前記補助フランジは、
前記装置側フランジにボルトにより締結される締結部と、
前記吸気口フランジの背面に当接し、前記吸気口フランジを前記装置側フランジとの間に挟持する挟持部とを有し、
前記挟持部は、前記吸気口フランジを前記装置側フランジと共に挟持するための1つの平面を有し、かつ、前記吸気口フランジに係合する部分を有しておらず、前記1つの平面においてのみ前記吸気口フランジの背面に当接し、
前記吸気口フランジの径方向外周壁面と、前記径方向外周壁面と対向する前記補助フランジの径方向内周壁面との間には隙間が形成されており、
前記ポンプケーシングに回転トルクが発生した際に、前記挟持部と前記装置側フランジとの間で前記吸気口フランジが滑るように、前記ポンプケーシングが回転し、前記挟持部および前記装置側フランジと前記吸気口フランジとの摩擦によって回転エネルギーを消費し、
前記吸気口フランジから前記補助フランジを介して前記ボルトに伝達される衝撃を緩和する緩衝部材を、前記吸気口フランジと前記補助フランジとの間に備え、
前記緩衝部材は、前記吸気口フランジに設けられたピン穴および前記補助フランジに設けられたピン穴に係合するピンである、真空ポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の真空ポンプにおいて、
前記吸気口フランジおよび前記補助フランジに設けられたピン穴と前記ピンとの隙間寸法は、前記吸気口フランジの移動可能量が前記締結部に設けられたボルト孔と前記ボルトとの隙間寸法よりも小さくなるように設定されている、真空ポンプ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-01 
出願番号 特願2015-130309(P2015-130309)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (F04D)
P 1 651・ 536- YAA (F04D)
P 1 651・ 121- YAA (F04D)
P 1 651・ 537- YAA (F04D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 所村 陽一  
特許庁審判長 久保 竜一
特許庁審判官 柿崎 拓
窪田 治彦
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6507885号(P6507885)
権利者 株式会社島津製作所
発明の名称 真空ポンプ  
代理人 永井 冬紀  
代理人 妹尾 明展  
代理人 森本 卓行  
代理人 阿久津 好二  
代理人 江口 裕之  
代理人 岸本 雅之  
代理人 森本 卓行  
代理人 妹尾 明展  
代理人 喜多 俊文  
代理人 喜多 俊文  
代理人 岸本 雅之  
代理人 阿久津 好二  
代理人 永井 冬紀  
代理人 江口 裕之  
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