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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08L
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08L
管理番号 1364878
異議申立番号 異議2019-700509  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-06-26 
確定日 2020-06-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6445020号発明「貯蔵安定性ニトリルゴムおよびそれらを製造するための方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6445020号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6、8-10〕、〔7、11〕について訂正することを認める。 特許第6445020号の請求項1ないし5、7ないし11に係る特許を維持する。 特許第6445020号の請求項6に係る特許に対する特許異議申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6445020号(請求項の数11。以下、「本件特許」という。)は、2014年(平成26年)12月29日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理2013年12月30日、欧州特許庁(EP))を国際出願日とする特許出願(特願2016-543563号)に係るものであって、平成30年12月7日に設定登録され、同年12月26日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、令和1年6月26日に、本件特許の請求項1?11に係る特許に対して、特許異議申立人 日本ゼオン株式会社(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
手続の経緯は以下のとおりである。
令和1年 6月26日 特許異議申立書
同年 8月30日付け 取消理由通知書
同年12月 5日 意見書・訂正請求書(特許権者)
同年12月23日 手続補正書(方式)(特許権者)
令和2年 2月 6日 意見書(申立人)

申立人の証拠方法は、以下のとおりである。
甲第1号証:ゴム工業便覧<第四版>、社団法人 日本ゴム協会編、236?253頁(平成6年1月20日)
甲第2号証:試験報告書、一般財団法人 化学物質評価研究機構(平成25年11月25日)
甲第3号証:特表2010-528139号公報
甲第4号証:特表2010-528140号公報
甲第5号証:特表2011-511112号公報
甲第6号証:特表2011-511111号公報
甲第7号証:国際公開第2013/000890号及びその翻訳文(特表2014-518300号公報)
甲第8号証:特開平6-57037号公報
甲第9号証:特表2017-504696号公報
甲第10号証:日本ゼオン株式会社 総合開発センター エラストマー研究所 渡辺 恭彰作成の実験成績証明書(令和1年6月24日)
(以下、甲1?甲10という。)

第2 訂正の適否についての判断
特許権者は、特許法第120条の5第1項の規定により審判長が指定した期間内である令和1年12月5日に令和1年12月23日提出の手続補正書(方式)で補正された訂正請求書を提出し、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項1?6及び8?10について訂正することを求めた(以下「本件訂正」という。また、本件願書に添付した明細書及び特許請求の範囲を「本件特許明細書等」という。)。

1 訂正の内容
(1)訂正事項1
訂正前の請求項1に「ことを特徴とする方法によって得られる、混合物。」と記載されているのを、
「ことを特徴とする方法によって得られ、
次式で定義される前記混合物の貯蔵安定性SSが、
SS(48h/100℃)=MV1-MV0
[式中、
MV0は、前記ニトリルゴムについてASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃であり、
MV1は、同一の前記ニトリルゴムについて、100℃で48時間保存した後にASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃である]
5未満の数値を有することを特徴とする、混合物。」に訂正する。

(2)訂正事項2
請求項6を削除する。

(3)訂正事項3
訂正前の請求項8に「請求項1?6のいずれか一項に記載の少なくとも1種の混合物」と記載されているのを、「請求項1?5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の混合物」に訂正する。

(4)一群の請求項
訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1?6及び8?10について、請求項2?6及び8?10はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正は、一群の請求項に対してなされたものである。

2 判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項1における「混合物」の、SS(48h/100℃)=MV1-MV0(「MV1」及び「MV0」の定義は省略する。)という式で定義される「貯蔵安定性SS」が、5未満の数値を有すると限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更について
訂正事項1は、上記アで述べたとおり、特許請求の範囲を減縮する訂正であるから、特許請求の範囲を実質上拡張又は変更するものではない。

新規事項の追加について
本件特許明細書等の特許請求の範囲の請求項6には、混合物の貯蔵安定性SSが5未満であることが記載されており、及び発明の詳細な説明の段落【0077】及び【0078】には、混合物の貯蔵安定性SSが5以下であることが記載されているから、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内であるといえる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加について
訂正事項2は、訂正前の請求項6を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当し、また、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加ではないことは明らかである。

(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正事項2により訂正前の請求項6が削除されたため、引用する請求項から請求項6を削除したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加について
訂正事項3は、実質上の特許請求の範囲の拡張・変更及び新規事項の追加ではないことは明らかである。

(4)訂正事項のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1?3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる目的に適合し、また、同法同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するから、本件訂正を認める。

第3 特許請求の範囲の記載
上記のとおり、本件訂正は認められたので、特許第6445020号の特許請求の範囲の記載は、訂正後の特許請求の範囲の次のとおりのものである(以下、請求項1?11に記載された事項により特定される発明を「本件発明1」?「本件発明11」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)。

「【請求項1】
ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までの範囲の量で含む混合物であって、
【化1】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる
ことを特徴とする方法によって得られ、
次式で定義される前記混合物の貯蔵安定性SSが、
SS(48h/100℃)=MV1-MV0
[式中、
MV0は、前記ニトリルゴムについてASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃であり、
MV1は、同一の前記ニトリルゴムについて、100℃で48時間保存した後にASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃である]
5未満の数値を有することを特徴とする、混合物。
【請求項2】
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)が同一であるか、または異なっていて、それぞれ、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはフェニル基であるが、ここでR^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つが、水素ではないことを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の二つまたは三つが水素であり、前記R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の残りの三つまたは二つが、同一であるか、または異なっていて、それぞれ、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールが以下の化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【化2】

【請求項5】
ニトリルゴムが、少なくともアクリロニトリルおよび1,3-ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
ニトリルゴムと一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物を製造するための方法であって、
(1)前記混合物が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによって調製され、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合し、
【化3】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(2)前記混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させるが、
前記乾燥を、100℃?180℃の範囲の温度で実施して、置換フェノールの含量を、0.4重量%?0.85重量%の範囲の量に調節することを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1?5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の混合物と、少なくとも1種の架橋剤を含む少なくとも1種の架橋系とを含む、加硫可能な混合物。
【請求項9】
加硫物を製造するための方法であって、請求項8に記載の加硫可能な混合物を加硫させることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の加硫可能な混合物を加硫した加硫物。
【請求項11】
ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%までの範囲の量で含む混合物であって、
【化4】

式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない、
請求項7に記載の方法によって得られる混合物。」

第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 取消理由通知の概要
当審が取消理由通知で通知した取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)取消理由1
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

2 特許異議申立理由
申立人が特許異議申立書で申立てた取消理由の概要は、以下に示すとおりである。
(1)申立理由1
本件訂正前の請求項1?5に係る発明は、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。よって、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。(取消理由1と同旨)

(2)申立理由2
本件訂正前の請求項1?6に係る発明は、甲8に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。よって、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(3)申立理由3
本件訂正前の請求項1?11に係る発明は、甲5又は甲7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。よって、これらの発明に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

(4)申立理由4
本件の特許請求の範囲の請求項1?6及び8?10並びに11の記載は、同各項に記載された特許を受けようとする発明が、プロダクトバイプロセスの形式で記載されており、不可能・非実際的事情が説明されていないから、特許法第36条第6項第2号に適合するものでない。
よって、本件の請求項1?6及び8?10並びに11に係る発明の特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
当審は、本件発明6に係る特許については、特許異議申立を却下することとし、また、当審が通知した取消理由1、及び申立人が申し立てた申立理由1?4によっては、いずれも、本件発明1?5及び7?11に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 申立ての却下
上記第2及び第3で示したとおり、請求項6は、本件訂正により削除されているので、請求項6についての申立てを却下する。

2 取消理由1及び申立理由1について
特許異議申立人が申し立てた申立理由1は、当審が通知した取消理由1と同じであるので、まとめて検討する。

(1)甲号証の記載事項
ア 甲第1号証の記載事項について
甲1には以下の記載がある。
(ア)「アクリロニトリル・ブタジエンゴムは,アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体系合成ゴムで,ニトリルゴムとも呼ばれ,NBRと略される代表的な耐油ゴムである^(1?3)).このNBRの二重結合部分のみを選択的に水素化したゴムを,水素化ニトリルゴムと呼称し,その製造方法からHNBRと略される^(4)).」(236頁左欄2?8行)

(イ)「8.2 NBR,HNBRの製造法
8.2.1 NBRの製法
NBRはSBRと同様に乳化重合設備で製造される.
ブタジエン,アクリロニトリルのモノマーが重合缶に仕込まれ,脱イオン水,乳化剤と混合し,次いで重合触媒と調整剤を加えて乳化重合を行う.
・・・
得られたラテックスは加熱,減圧,水蒸気蒸留などの方法によって未反応モノマーの除去・回収を行った後,貯蔵安定性を高めるために老化防止剤が加えられる.
塩化カルシウム,硫酸アルミニウム,明ばん,食塩-硫酸,高分子凝集剤などを用いて凝固され,水洗・ろ過した後,乾燥され製品ができあがる(図8-1).
・・・
8.2.2 HNBRの製法
NBRの耐油性を維持し,耐熱老化性のみを向上させるためには,NBRの側鎖のシアノ基をそのままにし,炭素・炭素の二重結合部分のみを選択的に水素化することが有効である.NBRを適当な溶媒で溶解し,触媒を添加する.
水素化反応ののち触媒・溶媒を回収,凝固乾燥して,HNBRが得られる^(11)).」(236頁左欄25行?238頁左欄1行)

(ウ)


」(237頁)

(エ)


」(240頁右欄、表8-5)

(オ)
「HNBRの製造メーカーを表8-4に,市販品名を表8-5に示す^(72,53,101?103)).」(241頁左欄8?9行)

イ 甲第2号証の記載事項について
甲2には以下の記載がある。
(ア)「試験報告書
・・・
3.件名 BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)の定量
4.試料 1.ZP2020 Lot 4T237612-05
2.ZP2020 Lot 4T239656-10
3.ZP2010H Lot 4T20X208-04
4.ZP2010H Lot 4T20Z248-03
5.ZP4310 Lot 4T237610
6.IR2200 Lot 4MA22037 計6点
・・・
6.試験結果

」(1頁1行?2頁)

(2)甲1に記載された発明
甲1の記載事項(イ)及び(ウ)には、一般的なHNBR、すなわち、水素化ニトリルゴム(記載事項(ア)より)の製造方法について記載されており、これによれば、水素化ニトリルゴムは、ブタジエン、アクリロニトリルのモノマーが、脱イオン水、乳化剤、重合触媒、調整剤の存在下で乳化重合され、得られたラテックスに、老化防止剤が加えられ、凝固、水洗、ろ過後、乾燥されてニトリルゴムができあがり、ニトリルゴムを適当な溶媒で溶解し、触媒を添加して水素化反応し、水素化反応ののち触媒・溶媒を回収、凝固乾燥することにより得られるものである。
そして、甲1の記載事項(エ)には、HNBRの市販品として種々のものが挙げられているところ、これらの種々の水素化ニトリルゴムの市販品も、上記一般的な水素化ニトリルゴムの製造方法で製造されているとみるのがごく自然である。
そうすると、甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「製品名ゼットポール2020又はゼットポール2010Hであって、ブタジエン、アクリロニトリルのモノマーが、脱イオン水、乳化剤、重合触媒、調整剤の存在下で乳化重合され、得られたラテックスに、老化防止剤が加えられ、凝固、水洗、ろ過後、乾燥されてニトリルゴムができあがり、ニトリルゴムを適当な溶媒で溶解し、触媒を添加して水素化反応し、水素化反応ののち触媒・溶媒を回収、凝固乾燥することにより得られる水素化ニトリルゴム。」(以下、「甲1発明」という。)

(3)対比・判断
ア 本件発明の「ニトリルゴム」は、明細書の「本発明の水素化ニトリルゴム」との記載(【0131】、【0153】、【0159】)からみて、水素化されていないニトリルゴムに加えて、「水素化ニトリルゴム」も包含するものと解される。
したがって、以下この前提に基いて判断を行う。

イ 本件発明1について
(ア)対比
甲1発明の「水素化ニトリルゴム」は、本件発明1の「ニトリルゴム」に相当する。
甲1発明の「老化防止剤」及び本件発明1の「一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノール」は、いずれも添加剤であるということができ、両者は添加剤である限りで一致する。
甲1発明の「ブタジエン」及び「アクリロニトリル」は、それぞれ本件発明1の「少なくとも1種の共役ジエン」及び「少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル」に相当する。
甲1発明の「ブタジエン、アクリロニトリルのモノマーが、脱イオン水、乳化剤、重合触媒、調整剤の存在下で乳化重合され、得られたラテックス」は、本件発明1の「少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液」に相当する。
甲1発明の「得られたラテックスに、老化防止剤が加えられ、凝固、水洗、ろ過後、乾燥され」ることは、本件発明1の「ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の」「置換フェノールと混合し、(2)工程(1)で得られた混合物を凝集させ、分離し乾燥させ」ることに、添加剤との混合後、凝集、分離、乾燥させる限りにおいて一致する。
甲1発明の水素化ニトリルゴムは、ラテックスに老化防止剤が加えられており、老化防止剤を含むものと解されるから、水素化ニトリルゴムと老化防止剤を含む混合物であるといえる。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、
「ニトリルゴムを含み、添加剤を含む混合物であって、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、添加剤と混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させることを経る方法によって得られる、混合物。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本件発明1では、添加剤が一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールであり、その含有量がニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までの範囲であるのに対して、甲1発明では、添加剤が老化防止剤であり、その含有量については明らかでない点

(相違点2)
工程(1)及び(2)を経る方法について、本件発明1では、工程(1)及び(2)を「特徴とする」方法であるのに対して、甲1発明では、工程(1)及び(2)のあと、できあがったニトリルゴムを、さらに「適当な溶媒で溶解し、触媒を添加して水素化反応し、水素化反応ののち触媒・溶媒を回収、凝固乾燥」する点

(相違点3)
混合物の「SS(48h/100℃)=MV1-MV0」(「MV1」及び「MV0」の定義は省略する。)の式で表される貯蔵安定性SSの数値が、本件発明1では、5未満と特定されているのに対して、甲1発明では、明らかでない点

(イ)判断
事案に鑑み、相違点3から検討する。

甲1及び甲2には、甲1発明の水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性SSの数値が5未満であることは記載されていない。また、甲1発明の水素化ニトリルゴムの貯蔵安定性SSの数値が5未満であることが技術常識であるともいえない。
そうすると、相違点3は、実質的な相違点である。

以上のとおりであるので、相違点1及び2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。

ウ 本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、上記イで述べた理由と同じ理由により、本件発明2?5は、甲1に記載された発明ではない。

(4)小括
取消理由1及び申立理由1よっては、本件発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。

3 取消理由通知において採用しなかった申立人がした申立理由について
(1)申立理由2について
ア 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明について
(ア)甲8
甲8の特許請求の範囲、段落【0007】、【0008】、【0010】、【0014】及び【0016】以降に記載の実施例及び比較例の記載、特に、実施例1の記載からみて、甲8には以下の発明が記載されていると認める。
「通常の乳化重合の手法を用いて、メタクリル酸 7%、アクリロニトリル 27%、ブタジエン 66%からなるカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックスを調製し、この重合体ラテックスに、ラテックス中のゴム分100重量部当たり、予め乳化した2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール1.0重量部を添加し、ゴム中にキトサン0.3重量部含有されるように濃度調整したキトサンの稀酸溶液にこのラテックスを攪拌下に滴下し、凝固させ、回収されたゴムを減圧乾燥機で60℃、24時間乾燥した混合物であって、JIS K6300に準じて測定したムーニー粘度が、100℃のギヤ-オーブン中に0日放置した場合が0であり、3日放置した場合が1である混合物」(以下「甲8発明」といい、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールを「BHT」ともいう。)

(イ)甲10
甲10には、特開平6-57037号公報(甲8である。)に記載される比較例1の追試がなされ、BHTの量を測定したこと(甲10の「4.」参照)、凝固後、減圧乾燥機を用いて圧力-0.1MPa(ゲージ圧)で60℃、24時間乾燥したこと(同「5-1」参照)、BHTの含有量が0.3%であったこと(同「5-2」参照)が記載されている。

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 対比
甲8発明の「メタクリル酸 7%、アクリロニトリル27%、ブタジエン66%からなるカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックス」は、本件発明1の「ニトリルゴム」に相当することは明らかである。
甲8発明の「BHT」は本件発明1の一般式(I)のうち、R^(1)及びR^(3)が分岐状のC_(4)アルキル基であり、R^(5)がC_(1)アルキル基であるから、本件発明1の一般式(I)の置換フェノールに相当する。
甲8発明の「メタクリル酸 7%、アクリロニトリル27%、ブタジエン66%からなるカルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックス」に「BHT」を添加した混合物は、本件発明1の「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物」に相当する。
甲8発明の「カルボキシル基含有アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムラテックス」は、原料として、メタクリル酸、アクリロニトリル、ブタジエンを使用して通常の乳化重合の手法を用いて調製されており、甲8発明の「ブタジエン」、「アクリロニトリル」及び「メタクリル酸」は、それぞれ、本件発明1の「共役ジエン」、「α、β-不飽和ニトリル」及び「共重合性モノマー」に相当し、甲8発明の通常の乳化重合の手法を用いて調製されることは、本件発明1の乳化重合させることによってニトリルゴムを調製することに相当する。
甲8発明の「重合体ラテックスに」「予め乳化した2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール」「を添加」することは、本件発明1の「ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合」することに相当する。
甲8発明の「重合体ラテックスに」「BHTを添加」した「ラテックスを」「凝固させ」「乾燥」させることは、凝固の後に分離することは明らかであるから、本件発明1の「工程(1)で得られた混合物を凝集させ、分離し、乾燥させる」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲8発明とは、
「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物であって、
【化1】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる
ことを特徴とする方法によって得られる混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点4)置換フェノールの混合量が、本件発明1では、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までと特定されているのに対して、甲8発明では、ラテックス中のゴム分100重量部当たり、1.0重量部の量を添加しているが、混合物中の量は明らかでない点

(相違点5)混合物の「SS(48h/100℃)=MV1-MV0」(「MV1」及び「MV0」の定義は省略する。)の式で表される貯蔵安定性SSの数値が、本件発明1では、5未満と特定されているのに対して、甲8発明では、JIS K6300に準じて測定したムーニー粘度が、100℃のギヤ-オーブン中に0日放置した場合が0であり、3日放置した場合が1である点

b 判断
(a)相違点4について
甲8には、比較例1において、減圧乾燥機を用いた乾燥の際の圧力は明示されていないが、甲10には、甲8の比較例1の追試として、圧力を-0.1MPa(ゲージ圧)で行うことが記載されている。そして、甲10や他の証拠をみても、甲8の比較例1において、減圧乾燥機を用いた乾燥の際の圧力が-0.1MPa(ゲージ圧)であるとすることが技術的に適切であることが記載されていない。そうすると、甲10に記載の追試が、甲8の比較例1の適切な追試であるということはできない。仮に、甲10の追試が適切な追試であったとしても、この追試は、あくまで甲8の比較例1におけるBHTの含有量を示しているだけであり、甲8発明である実施例1の含有量ではない。そして、比較例1におけるBHTの含有量が0.3%であれば実施例1においてもBHTの含有量が0.3%であるという技術常識もない。
そうすると、甲10の記載をみても、甲8発明においてBHTの含有量が0.3%であるとはいえず、また、0.25?0.9重量%未満であるとする理由もないから、相違点4は実質的な相違点であるといえる。

以上のとおりであるから、相違点5について検討するまでもなく本件発明1は甲8発明と同一であるとはいえない。

(イ)本件発明2?5について
本件発明2?5は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2?5は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲8発明と同一であるとはいえない。

ウ 小括
申立理由2によっては本件発明1?5を取り消すことはできない。

(2)申立理由3について
ア 甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明について
(ア)甲5
甲5の特許請求の範囲の請求項1には、「少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと、任意選択で場合により1種以上のさらなる共重合可能なモノマーの繰り返し単位を含み、ニトリルゴムに対して4?25ppmの範囲の塩素含有量を有する、ニトリルゴム。」が記載され、同請求項8には、「分子量調節剤の存在下、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと、任意選択で場合により1種以上のさらなる共重合可能なモノマーとのエマルション重合によってニトリルゴムを製造方法であって、重合時に得られ且つニトリルゴムを含有するラテックスを凝集させ、次に、凝集したニトリルゴムを洗浄する製造方法において、
(i)エマルション重合で得られるラテックスが、凝集前に少なくとも6のpHを有し、
(ii)ラテックスの凝集を、沈殿剤として、一価、二価または三価の金属の少なくとも1種の塩(塩化物であってもよい)を用いて行い、
(iii)ラテックスの凝集を、共沈剤として、任意選択で部分的または完全に加水分解されていてもよいポリ酢酸ビニルの存在下で行い、
(iv)ラテックスの凝集および/または凝集したラテックスの処理を、前記の一価、二価または三価の金属の塩(ii)が塩化物ではない場合には、塩化物イオンを含有する水を用いて行う、
ことを特徴とする製造方法。」が記載されている。
また、段落【0045】?【0096】、【0113】?【0114】、【0117】、【0141】?【0147】には、上記請求項1及び8に関する具体的な記載がされ、そして、【0203】以降に記載の実施例には、請求項1及び8の記載の具体例として実施例シリーズ4が記載されている。
そうすると、甲5には実施例シリーズ4の記載からみて、以下の発明
「ブタジエン、アクリロニトリル、水、イソブチレンオリゴマー残基を含有するモノスルホン酸化およびジスルホン酸化ナフタレンスルホン酸のナトリウム塩、メチレンビスナフタレンスルホン酸塩のナトリウム塩、tert-ドデシルメルカプタン、ペルオキソ二硫酸カリウムを反応器へ仕込み、重合転化率が75%に到達したら、ジエチルヒドロキシルアミン及び水酸化カリウムを用い、重合を停止させ、未反応モノマーを水蒸気蒸留で除去した後、ニトリルゴムを基準にしてBHTを1.0重量部添加し、ニトリルゴムラテックスBを得て、pH値は9.3であり、MgCl_(2)とPVAを用い23℃で溶液に添加し凝集させ、洗浄は非脱イオン水を用い60℃で5時間行い、Weldingスクリューにて予備脱水し、真空乾燥キャビネット中で70℃にて、残留水分量が1.5重量%未満になるまでバッチ式乾燥させた混合物であって、100℃で48時間保管した後と前のDIN 53523に準拠したムーニー粘度の差(「SS」=MV2-MV1)が2である混合物」(以下「甲5発明A」という。)が記載されていると認める。
また、「甲5発明Aを製造するための方法」(以下「甲5発明B」という。)の発明が記載されていると認める。

(イ)甲7
以下、甲7の記載事項及び引用箇所を、甲7のパテントファミリーである特表2014-518300号公報に基づいて示す。
甲7の特許請求の範囲の請求項1には、「ニトリルゴムの製造方法であって、
- 少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、少なくとも1種の共役ジエンと、さらに任意で1又は2種以上の共重合可能なモノマーとを、少なくとも3つの3級炭素原子及び当該3級炭素原子のうちの1つと結合した硫黄を有する炭素原子数12?16のアルキルチオールの少なくとも1種の存在下で、pHが7から10の範囲で乳化重合させてラテックスを得る工程と、
- 前記ラテックスを、マグネシウム、ナトリウム及びカリウムから選択される少なくとも1種の金属硫酸塩の存在下で、30℃以上の温度で凝固させて凝固ニトリルゴムを得る工程と、
- 前記凝固ニトリルゴムを、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム及び水酸化リチウムから選択される少なくとも1種の無機塩の存在下、pH10以上で、水により洗浄する工程、を有する上記製造方法。」が記載されている。
また、段落【0074】、【0085】?【0090】、【0105】には、上記請求項1に関する具体的な記載がされ、そして、【0111】以降に記載の実施例には、請求項1の記載の具体例として、実施例1?3が記載されている。
そうすると、甲7には、実施例1の記載からみて、以下の発明
「9.92kgの脱イオン水、0.53kgの5.4重量%ステアリン酸カリウム水溶液、及び0.440kgのDNMKを順次オートクレーブに仕込み、得られた混合物を撹拌し、水酸化カリウム10重量%水溶液をpHが8.5になるまで加えてpHの調整を行い、次いで、オートクレーブを閉じ、窒素置換し、減圧し、500gのアクリロニトリル、18.72gのTDM及び4.37kgのブタジエンを順次加え、得られた混合物を撹拌後、7℃まで冷却し、当該温度に到達してから、6gのDIHP、次いで直ちに139gの水 9.9phr、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01phr、スルホキシル酸ホルムアルデヒド 0.075phr、H_(2)SO_(4 )0.0008phr及びFeSO_(4)・7H_(2)O 0.004phrからなる水溶液を注入し、全重合時間中、重合混合物の温度を7℃に保持し、次いで、残るアクリロニトリル(1.134kg)を、流速0.162kg/hで連続的に供給し、変換度が70%の時(7時間後)に、515gの硫酸ヒドロキシルアミン2重量%水溶液を加えて重合を中断し、未反応モノマーは、水蒸気流による蒸留(ストリッピング)により除去し、凝固前に、酸化防止剤の50%懸濁液(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール/BHT、Todini)を、ニトリルゴム全重量に対して有効成分が1重量%となる量で、上記のラテックスに加え、該懸濁液は、100gの粉末状BHT、8gのDNMK及び100gの脱イオン水を、Ultraturexを用いて撹拌して調製し、43kgの水及び4kgの飽和硫酸マグネシウム水溶液を、70リットル容の容器に仕込み、全混合物を撹拌しながら凝固させ45℃まで加熱し、当該温度に達したら、得られたラテックス10kgを、撹拌しながら約10分間かけて徐々に加え、ラテックスの添加後も、全混合物をさらに10分間撹拌し続け、40kgの脱イオン水を70リットル容の開放容器に仕込み、14gの水酸化カリウムを加えてpHを11.5に調整した後、45℃に加熱し、当該温度に達したら、前工程の凝固により得たニトリルゴムの団粒1.5kgを導入し、全混合物を約10分間撹拌し、その後、ニトリルゴムをろ別して、空気乾燥器にて100℃で24時間乾燥させた(残留水分:1%未満)混合物」(以下「甲7発明A」という。)が記載されていると認める。
また、「甲7発明Aを製造するための方法」(以下「甲7発明B」という。)の発明が記載されていると認める。

さらに、甲7には、実施例2の記載からみて、以下の発明
「9.92kgの脱イオン水、0.53kgの5.4重量%ステアリン酸カリウム水溶液、及び0.440kgのDNMKを順次オートクレーブに仕込み、得られた混合物を撹拌し、水酸化カリウム10重量%水溶液をpHが8.5になるまで加えてpHの調整を行い、次いで、オートクレーブを閉じ、窒素置換した。減圧し、815gのアクリロニトリル、21.85gのTDM及び4.0kgのブタジエンを順次加え、得られた混合物を撹拌後、7℃まで冷却し、当該温度に到達してから、6gのDIHP、次いで直ちに139gの水 9.9phr、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01phr、スルホキシル酸ホルムアルデヒド 0.075phr、H_(2)SO_(4 )0.0008phr及びFeSO_(4)・7H_(2)O 0.004phrからなる水溶液を注入し、全重合時間中、重合混合物の温度を7℃に保持し、次いで、残るアクリロニトリル(1.209kg)を、流速0.173kg/hで連続的に供給し、変換度が70%の時(7時間後)に、515gの硫酸ヒドロキシルアミン2重量%水溶液を加えて重合を中断し、未反応モノマーは、水蒸気流による蒸留(ストリッピング)により除去し、凝固前に、酸化防止剤の50%懸濁液(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール/BHT、Todini)を、ニトリルゴム全重量に対して有効成分が1重量%となる量で、上記のラテックスに加え、該懸濁液は、100gの粉末状BHT、8gのDNMK及び100gの脱イオン水を、Ultraturexを用いて撹拌して調製し、43kgの水及び4kgの飽和硫酸マグネシウム水溶液を、70リットル容の容器に仕込み、全混合物を撹拌しながら凝固させ45℃まで加熱し、当該温度に達したら、得られたラテックス10kgを、撹拌しながら約10分間かけて徐々に加え、ラテックスの添加後も、全混合物をさらに10分間撹拌し続け、40kgの脱イオン水を70リットル容の開放容器に仕込み、14gの水酸化カリウムを加えてpHを11.8に調整した後、45℃に加熱し、当該温度に達したら、前工程の凝固により得たニトリルゴムの団粒1.5kgを導入し、全混合物を約10分間撹拌し、その後、ニトリルゴムをろ別して、空気乾燥器にて100℃で24時間乾燥させた(残留水分:1%未満)混合物」(以下「甲7発明C」という。)が記載されていると認める。
また、「甲7発明Cを製造するための方法」(以下「甲7発明D」という。)の発明が記載されていると認める。

加えて、甲7には、実施例3の記載からみて、以下の発明
「9.92kgの脱イオン水、0.53kgの5.4重量%ステアリン酸カリウム水溶液、及び0.440kgのDNMKを順次オートクレーブに仕込み、得られた混合物を撹拌し、水酸化カリウム10重量%水溶液をpHが8.5になるまで加えてpHの調整を行い、次いで、オートクレーブを閉じ、窒素置換し、減圧し、500gのアクリロニトリル、21.85gのTDM及び4.37kgのブタジエンを順次加え、得られた混合物を撹拌後、7℃まで冷却し、当該温度に到達してから、6gのDIHP、次いで直ちに139gの水 9.9phr、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム 0.01phr、スルホキシル酸ホルムアルデヒド 0.075phr、H_(2)SO_(4 )0.0008phr及びFeSO_(4)・7H_(2)O 0.004phrからなる水溶液を注入し、全重合時間中、重合混合物の温度を7℃に保持し、次いで、残るアクリロニトリル(1.134kg)を、流速0.162kg/hで連続的に供給し、変換度が70%の時(7時間後)に、515gの硫酸ヒドロキシルアミン2重量%水溶液を加えて重合を中断し、未反応モノマーは、水蒸気流による蒸留(ストリッピング)により除去し、全重合時間中、重合混合物の温度を7℃に保持し、次いで、残るアクリロニトリル(1.209kg)を、流速0.173kg/hで連続的に供給し、変換度が70%の時(7時間後)に、515gの硫酸ヒドロキシルアミン2重量%水溶液を加えて重合を中断し、未反応モノマーは、水蒸気流による蒸留(ストリッピング)により除去し、凝固前に、酸化防止剤の50%懸濁液(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール/BHT、Todini)を、ニトリルゴム全重量に対して有効成分が1重量%となる量で、上記のラテックスに加え、該懸濁液は、100gの粉末状BHT、8gのDNMK及び100gの脱イオン水を、Ultraturexを用いて撹拌して調製し、43kgの水及び4kgの飽和硫酸マグネシウム水溶液を、70リットル容の容器に仕込み、全混合物を撹拌しながら凝固させ45℃まで加熱し、当該温度に達したら、得られたラテックス10kgを、撹拌しながら約10分間かけて徐々に加え、ラテックスの添加後も、全混合物をさらに10分間撹拌し続け、40kgの脱イオン水を70リットル容の開放容器に仕込み、14gの水酸化カリウムを加えてpHを11.5に調整した後、45℃に加熱し、当該温度に達したら、前工程の凝固により得たニトリルゴムの団粒1.5kgを導入し、全混合物を約10分間撹拌し、その後、ニトリルゴムをろ別して、空気乾燥器にて100℃で24時間乾燥させた(残留水分:1%未満)混合物」(以下「甲7発明E」という。)が記載されていると認める。
また、「甲7発明Eを製造するための方法」(以下「甲7発明F」という。)の発明が記載されていると認める。

イ 対比・判断
(ア)本件発明1について
a 甲5発明Aとの対比・判断
(a)対比
甲5発明Aの「ニトリルゴムラテックスB」は、本件発明1の「ニトリルゴム」に相当することは明らかである。
甲5発明Aの「BHT」は本件発明1の一般式(I)のうち、R^(1)及びR^(3)が分岐状のC_(4)アルキル基であり、R^(5)がC_(1)アルキル基であるから、本件発明1の一般式(I)の置換フェノールに相当する。
甲5発明Aの「ニトリルゴム」に「BHT」を添加した「混合物」は、本件発明1の「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物」に相当する。
甲5発明の「ニトリルゴムラテックスB」は、原料として、ブタジエン及びアクリロニトリルを用い重合されており、そして、甲5発明Aである実施例シリーズ4は請求項8のエマルション重合の具体例であり、エマルション重合は乳化重合であるから、甲5発明Aの「ブタジエン」及び「アクリロニトリル」は、それぞれ、本件発明1の「共役ジエン」及び「α、β-不飽和ニトリル」に相当し、「乳化重合させることによってニトリルゴムを調整し」に相当する。
甲5発明Aは、「ブタジエン、アクリロニトリル、水」を含む溶液を重合させ、「重合転化率が75%に到達したら」、「BHTを1.0重量部添加し、ニトリルゴムラテックスBを得て」いるところ、「ブタジエン、アクリロニトリル、水」を含む溶液を重合させ、「重合転化率が75%に到達」すれば、水媒体中にニトリルゴムの懸濁液が生成しているといえるから、甲5発明Aの「ブタジエン、アクリロニトリル、水」を含む溶液を重合させ、「重合転化率が75%に到達したら」、「BHTを1.0重量部添加し、ニトリルゴムラテックスBを得て」いることは、本件発明1の「ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合」することに相当する。
甲5発明Aの「ニトリルゴム」に「BHT」を添加した「ラテックスを得て」「凝集させ」「乾燥させる」ことは、凝集の後に分離することは明らかであるから、本件発明1の「工程(1)で得られた混合物を凝集させ、分離し、乾燥させる」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲5発明Aとは、
「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物であって、
【化1】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる
ことを特徴とする方法によって得られる混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点6)置換フェノールの混合量が、本件発明1では、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までと特定されているのに対して、甲5発明Aでは、ニトリルゴムを基準に、1.0重量部の量を添加しているが、混合物中の量は明らかでない点

(相違点7)混合物の「SS(48h/100℃)=MV1-MV0」(「MV1」及び「MV0」の定義は省略する。)の式で表される貯蔵安定性SSの数値が、本件発明1では、5未満と特定されているのに対して、甲5発明Aでは、100℃で48時間保管した後と前のDIN 53523に準拠したムーニー粘度の差(「SS」=MV2-MV1)が2である点

(b)判断
i 相違点6について
甲5の段落【0176】には、劣化抑制剤の添加量について、「ニトリルゴム100phrに対して約0?5phr、好ましくは0.5?3phrの量で用いられる」ことが記載されており、この記載からすれば、甲5発明Aにおけるニトリルゴムを基準に、BHTを1.0重量部添加するとは、ニトリルゴム100重量部に対してBHTを1.0重量部添加すると解することができる。
甲5発明Aでは、ニトリルゴムラテックスにBHTを添加した後、凝集、洗浄し、真空キャビネット中で70℃にて残留水分量が1.5重量%未満になるまでバッチ式乾燥させているが、乾燥後の混合物に含まれているBHTの混合量は不明である。甲5には、上記乾燥によりBHTが揮散したとしても、どの程度の割合のBHTが揮散するのか記載はない。そして、甲5発明Aにおいて特定される条件で乾燥した場合に、BHTの混合量が本件発明1で特定される0.25?0.9重量%となる技術常識もない。
そうすると、甲5発明Aにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、相違点7について検討するまでもなく本件発明1は甲5発明Aに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

b 甲7発明A、C及びEとの対比・判断
(a)対比
甲7発明A、C及びEの「ニトリルゴム」は、本件発明1の「ニトリルゴム」に相当する。
甲7発明A、C及びEの「BHT」は本件発明1の一般式(I)のうち、R^(1)及びR^(3)が分岐状のC_(4)アルキル基であり、R^(5)がC_(1)アルキル基であるから、本件発明1の一般式(I)の置換フェノールに相当する。
甲7発明A、C及びEの「2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール/BHTを、」「ニトリルゴム」に加えた「混合物」は、本件発明1の「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物」に相当する。
甲7発明A、C及びEの「ニトリルゴム」は、原料として、アクリロニトリル及びブタジエン用い重合されており、そして、甲7発明A、C及びEである実施例1?3は請求項1の「乳化重合させてラテックスを得る」とされる具体例であるから、甲7発明A、C及びEの「ブタジエン」及び「アクリロニトリル」は、それぞれ、本件発明1の「共役ジエン」及び「α、β-不飽和ニトリル」に相当し、「乳化重合させることによってニトリルゴムを調整し」に相当する。
甲7発明A、C及びEは、「脱イオン水」、「アクリロニトリル」及び「ブタジエン」を含む溶液を重合させ、「重合を中断」の後、「BHTをニトリルゴム全重量に対して有効成分が1重量%となる量で、上記のラテックスに加え」ているところ、これは、「アクリロニトリル、ブタジエン」を含む溶液を重合させ、得られたラテックスにBHTを加えているといえるから、甲7発明A、C及びEの「脱イオン水」、「アクリロニトリル」及び「ブタジエン」を含む溶液を重合させ、「重合を中断」の後、「BHTをニトリルゴム全重量に対して有効成分が1重量%となる量で、上記のラテックスに加え」ていることは、本件発明1の「ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合」することに相当する。
甲7発明A、C及びEの「2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール/BHT」を「ニトリルゴム」に加えた「混合物」を「撹拌しながら凝固させ」「乾燥させ」は、凝固の後に分離することは明らかであるから、本件発明1の「工程(1)で得られた混合物を凝集させ、分離し、乾燥させる」ことに相当する。

そうすると、本件発明1と甲7発明A、C及びEとは、
「ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物であって、
【化1】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる
ことを特徴とする方法によって得られる混合物」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点8)置換フェノールの混合量が、本件発明1では、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までと特定されているのに対して、甲7発明A、C及びEでは、ニトリルゴム全重量に対して1重量%となる量を加えているが、混合物中の量は明らかでない点

(相違点9)混合物の「SS(48h/100℃)=MV1-MV0」(「MV1」及び「MV0」の定義は省略する。)の式で表される貯蔵安定性SSの数値が、本件発明1では、5未満と特定されているのに対して、甲7発明Aでは、明らかでない点

(b)判断
i 相違点8について
甲7発明A、C及びEでは、ニトリルゴムラテックスにBHTを添加した後、凝固、洗浄し、空気乾燥器にて100℃で24時間乾燥させ、残留水分を1%未満としているが、乾燥後の混合物に含まれているBHTの混合量は不明である。甲7には、上記乾燥によりBHTが揮散したとしても、どの程度の割合のBHTが揮散するのか記載はない。そして、甲7発明A、C及びEにおいて特定される条件で乾燥した場合に、BHTの混合量が本件発明1で特定される0.25?0.9重量%となる技術常識もない。
そうすると、甲7発明A、C及びEにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、相違点9について検討するまでもなく本件発明1は甲7発明A、C及びEに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

(イ)本件発明2?5、8?10について
本件発明2?5、8?10は、本件発明1を直接的又は間接的に引用して限定した発明であるから、本件発明2?5、8?10は、上記「(ア)」で示した理由と同じ理由により、甲5発明A又は甲7発明A、C及びEに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

(ウ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の混合物のうち、一般式(I)の置換フェノールの含量を0.4?0.85重量%の範囲とした混合物を製造するための方法の発明であって、乾燥を、100℃?180℃の範囲の温度で実施することを特定した発明である。

a 甲5発明Bとの対比・判断
(a)対比
甲5発明Bは、甲5発明Aを製造するための方法であるから、上記(ア)a(a)を参酌すると、本件発明7と甲5発明Bとは、
「ニトリルゴムと一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物を製造するための方法であって、
(1)前記混合物が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによって調製され、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合し、
【化3】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(2)前記混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点10)混合物を乾燥する温度が、本件発明7では、100℃?180℃の範囲の温度で実施するのに対して、甲5発明Bでは、70℃である点

(相違点11)置換フェノールの混合量が、本件発明7では、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%未満までと特定されているのに対して、甲5発明Bでは、ニトリルゴムを基準に、1.0重量部の量を添加しているが、混合物中の量は明らかでない点

(b)判断
事案に鑑み、相違点11から検討する。
上記(ア)a(b)で述べたように、甲5発明Aにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえないのであるから、甲5発明Bにおいても、混合量がさらに減縮された0.4重量%から0.85重量%とする動機付けがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、相違点10について検討するまでもなく本件発明7は甲5発明Bに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

b 甲7発明B、D及びFとの対比・判断
(a)対比
甲7発明B、D及びFは、甲7発明A、C及びEを製造するための方法であり、100℃で乾燥させているから、上記(ア)b(a)を参酌すると、本件発明7と甲7発明B、D及びFとは、
「ニトリルゴムと一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物を製造するための方法であって、
(1)前記混合物が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによって調製され、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合し、
【化3】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(2)前記混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させるが
前記乾燥を100℃?180℃の範囲の温度で実施する方法」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点12)置換フェノールの混合量が、本件発明7では、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%の範囲と特定されているのに対して、甲7発明B、D及びFでは、ニトリルゴム全重量に対して1重量%となる量を加えているが、混合物中の量は明らかでない点

(b)判断
上記(ア)b(b)で述べたように、甲7発明A、C及びEにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえないのであるから、甲7発明B、D及びFにおいても、配合量がさらに減縮された0.4重量%から0.85重量%とする動機付けがあるとはいえない。

以上のとおりであるから、本件発明7は甲7発明B、D及びFに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

(エ)本件発明11
本件発明11は、本件発明7に記載の方法によって得られた混合物の発明である。

a 甲5発明Aとの対比・判断
上記(ア)a(a)及び(ウ)a(a)を参酌すると、本件発明11と甲5発明Aとは少なくとも以下の点で相違する。

(相違点13)置換フェノールの混合量が、本件発明11では、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%未満までと特定されているのに対して、甲5発明Aでは、ニトリルゴムを基準に、1.0重量部の量を添加しているが、混合物中の量は明らかでない点

そして、この相違点が当業者が容易に想到できないことは、上記(ア)a(b)で述べたとおりであり、甲5発明Aにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえないのであるから、混合量がさらに減縮された0.4重量%から0.85重量%とする動機付けがあるとはいえない。

よって、本件発明11は、甲5発明Aに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

b 甲7発明A、C及びEとの対比・判断
上記(ア)b(a)及び(ウ)b(a)を参酌すると、本件発明11と甲7発明A、C及びEとは少なくとも以下の点で相違する。

(相違点14)置換フェノールの混合量が、本件発明11では、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%未満までと特定されているのに対して、甲7発明Aでは、ニトリルゴム全重量に対して1重量%となる量を加えているが、混合物中の量は明らかでない点

そして、この相違点が当業者が容易に想到できないことは、上記(ウ)b(b)で述べたとおりであり、甲7発明A、C及びEにおいて、混合物中の置換フェノールの混合量が、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満とする動機付けがあるとはいえないのであるから、配合量がさらに減縮された0.4重量%から0.85重量%とする動機付けがあるとはいえない。

よって、本件発明11は、甲7発明A、C及びEに基いて当業者が容易に想到できた発明であるとはいえない。

ウ 小括
以上のとおりであるので、申立理由3によっては本件発明1?5、7?11を取り消すことはできない。

(3)申立理由4について
ア 請求項1の記載
請求項1には、「ニトリルゴムを含み、一般式(I)(化学構造式は省略する。)の少なくとも1種の置換フェノールを、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までの範囲の量で含む混合物」と記載がされているから、本件発明1は物の発明であるといえる。
また、請求項1には、
「(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させる
ことを特徴とする方法によって得られ、」という記載がなされているから、請求項1には、その物の製造方法が記載されているといえる。

イ 物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合の考え方について
物の発明に係る特許請求の範囲にその物を製造方法が記載されている場合、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
以下、この考え方に従って検討する。

ウ 本件特許明細書等の記載
本件特許明細書等には、本件発明の背景技術は、「ニトリルゴムが貯蔵安定性であり、次いで、それらのゴム混合物が、加工信頼性を有すると同時に、高い加硫速度を有し、その加硫物が極めて良好な機械物性を有するような量の老化安定剤を含む、ニトリルゴムについては、何の情報も存在しない」(段落【0031】)であることが記載され、本件発明の課題は、「貯蔵安定性があり、そのゴム混合物が、高い加工信頼性と高い加硫速度とを有し、それがさらに、加硫させた状態においては、300%伸びでの改良されたレベルの応力値と極めて良好な破断時伸びとを有しているような、ニトリルゴムを提供すること」(段落【0034】)であることが記載されている。
そして、段落【0188】以降の実施例においては、本件発明で特定されるニトリルゴムに、置換フェノールを0.25?0.9重量%未満含む混合物であって、本件発明で特定される製造方法により得られる混合物が、貯蔵安定性に優れ、高い加工信頼性及び高い加硫速度を有しており、加硫物が300%伸びにおける優れた応力値及び良好な破断伸びを有することが具体的なデータとともに記載されている。

エ 審判請求書の記載
本件特許に係る特許出願における平成30年4月18日に提出された審判請求書には、この審判請求書と同時に提出した手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1には、混合物の発明が記載されているところ、以下の記載がされている。

「ここで、補正後の請求項1?6は、「混合物」(物)の発明に係る請求項に、「(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、単離し、乾燥させる、方法によって得られる」という、その物の製造方法が記載されている場合に該当することとなります。しかしながら、この記載に関しては、平成29年12月5日付の意見書において旧請求項12について申し上げたいわゆる不可能・非実際的事情と同様の事情が存在いたします。以下にその詳細を申し述べます。
補正後の請求項1?6に係る「混合物」は、上述のプロセスによって製造されます。このプロセスによって製造された混合物は、以下に詳述いたしますとおり、高いスコーチ抵抗性、遅い加硫開始、高い加硫速度、並びに加硫された状態での300%伸びにおける高い応力値(σ_(300))及び良好な破断時伸びという優れた性質を有します。
このような、本願発明において奏される優れた性質は、その混合物中に含まれる様々な化合物の作用によるものですが、この作用を、物の構造又は特性により直接特定することは、不可能であるといえます。
以下に述べますとおり、上記プロセスは、引用文献2及び3に記載された方法とは異なっており、また、得られた混合物やその加硫物の物性も異なりますので、混合物の構造も異なっていることは明らかであると思料します。しかしながら、たとえ構造が異なることが明確であったとしても、一般に高分子化合物を含む混合物の構造を完全に特定することは不可能です。加えて、本願の混合物は、補正後の請求項1に記載いたしましたとおり、ニトリルゴムと一般式(I)の置換フェノールを特定の量で混合し、凝集、単離し、特定の温度条件で乾燥するという、複数の工程等を含む極めて複雑な方法により製造されるものです。したがって、当業者であれば、本発明の方法により製造した混合物の構造を特定することは不可能であることは当然に理解できると思料します。」

また、この審判請求書には、引用文献等に記載された発明との対比において、以下の記載がされている。
「理論に拘束されるものではありませんが、凝集前に存在する不飽和のニトリルゴムは、凝集後に得られる飽和ニトリルゴムよりも副反応に対する感受性が高く、特に引用文献2及び3に記載されているような水素化ニトリルゴムの場合はこれが顕著であることが考えられます。本願発明者らは、一般式(I)の置換フェノールが存在することによって、不飽和ニトリルゴムの副反応が抑制され、そのことが、対応する飽和ニトリルゴムの加硫物の性質の改善に寄与することを見出しました。」

オ 審査段階で引用された引用文献の記載
本件特許に係る特許出願における平成30年4月18日に提出された審判請求書に記載された審査段階で引用された引用文献2及び3には、以下の記載がされている。

(ア)引用文献2(特開平10-152525号公報)
引用文献2には、引張強さ及び耐摩耗性に優れ、繊維との接着強度が高く、ロール加工性に優れるカルボキシル化ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方法を提供することを課題とし(段落【0006】)、特許請求の範囲の請求項2に記載された
「 加熱密閉式混練機において、ゴム温度60?170℃の範囲でニトリル基含有高飽和共重合体ゴムに、エチレン性不飽和カルボン酸又はその無水物を添加し、次いでゴム温度200?280℃の範囲でニトリル基含有高飽和共重合体ゴムとエチレン性不飽和ジカルボン酸又はその無水物とを付加反応させることを特徴とするカルボキシル化ニトリル基含有高飽和共重合体ゴムの製造方法。」の発明が記載されている。
また、段落【0068】には、加熱密閉式混練機中で混練するに際して老化防止剤を添加することにより、ゴムのゲル化、ムーニー粘度の上昇を防止することができることが記載されており、同【0071】には、フェノール系老化防止剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールが例示され、同【0072】には、老化防止剤の量は、ニトリル基含有高飽和重合体ゴム100重量部に対して、好ましくは0.1?2重量部であることが記載されている。
そして、実施例においては、ニトリル基含有高飽和重合体ゴム100重量部を、加熱密閉式混練機である加圧ニーダーを用いて素練りし、ゴム温度が130℃まで上昇したのち、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール0.5部配合することが記載されている(段落【0091】参照)。

(イ)引用文献3(特表2005-516095号公報)
引用文献3には、耐熱性空気老化性の改良を課題とし(段落【0007】?【0011】)、特許請求の範囲の請求項10に記載された
「 (i)ニトリルポリマー; (ii)フィラー; (iii)第2級アミンと元素の周期律(IUPAC 1985)表1-2族から選択された金属との金属塩; (vi)加硫系;および (v)要すれば強塩基、強塩基の塩および弱酸、弱酸の塩、カルボジイミド、ポリカルボジイミドおよびそれらの混合物からなる群から選択された添加剤を含有するポリマー組成物を混合する工程を包含するニトリルポリマー加硫物の製造方法。」の発明が記載されている。
そして、実施例5においては、部分水素化ニトリルゴム100重量部に老化防止剤としのBHT0.3重量部配合することが記載されている。(段落【0041】?【0048】参照)。

カ 判断
本件発明1は、貯蔵安定性に優れ、高い加工信頼性と高い加硫速度とを有し、加硫させた状態においては、300%伸びでの改良された応力値と極めて良好な破断時伸びを有するニトリルゴム混合物を提供することを課題とし、本件発明1で特定されるニトリルゴムに、置換フェノールを0.25?0.9重量%未満含む混合物であって、本件発明1で特定される製造方法により得られる混合物である。
また、本件発明1で特定される製造方法により得られる混合物が、従来技術であるといえる審査段階で引用された引用文献2及び3には記載されていない、貯蔵安定性に優れ、高い加工信頼性及び高い加硫速度を有しており、加硫物が300%伸びにおける優れた応力値及び良好な破断伸びを有するという効果を示すことがデータととも確認することができる。

そして、これらの点や、審判請求書における、凝集前のニトリルゴムに一般式(I)の置換フェノールが存在することが重要であること、このような優れた性質を有する混合物は、混合物の構造又は特性により直接特定することは不可能であることという主張からすると、本件発明1は、単なる「混合物」と解することはできないといえるところ、ニトリルゴムと一般式(I)の置換フェノールの混合状態や両者の存在状態により記載することはできないといえる。

そうすると、本件発明1の混合物をその構造又は特性により直接特定することには、不可能・非実際的事情があるということができる。
また、本件発明1を直接的又は間接的に引用する本件発明2?5、8及び10並びに本件発明11も、同じ理由により、不可能・非実際的事情があるといえる。
なお、本件発明9は、「加硫物を製造するための方法」の発明であり、物の発明ではないから、本件発明9に対する申立理由4には理由がない。

キ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書において、本件発明1の混合物は、ニトリルゴムと一般式(I)の置換フェノールの2種が含まれているだけであり、作用は起こらないこと、ニトリルゴムと一般式(I)の置換フェノールは化学的に反応を生じないことを理由に、不可能・非実際的事情はない旨の主張をする。

しかしながら、この主張は、あくまでニトリルゴムと一般式(I)の置換フェノールとが単純に混合された混合物であることを前提とした主張にすぎず、上記カで述べた判断を覆すことはできない。
よって、申立人の主張は採用できない。

ク 小括
以上のとおりであるので、申立理由4によっては本件発明1?5、8?11を取り消すことはできない。

第6 むすび
したがって、請求項6に係る特許については、特許異議申立を却下することとする。
また、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?5、7?11に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1?5、7?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、ニトリルゴムを基準にして、0.25重量%から0.9重量%未満までの範囲の量で含む混合物であって、
【化1】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(1)少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによってニトリルゴムを調製し、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の前記置換フェノールと混合し、
(2)工程(1)で得られた混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させることを特徴とする方法によって得られ、
次式で定義される前記混合物の貯蔵安定性SSが、
SS(48h/100℃)=MV1-MV0
[式中、
MV0は、前記ニトリルゴムについてASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃であり、
MV1は、同一の前記ニトリルゴムについて、100℃で48時間保存した後にASTM D1646に従って測定したムーニー粘度ML1+4@100℃である]
5未満の数値を有することを特徴とする、混合物。
【請求項2】
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)が同一であるか、または異なっていて、それぞれ、水素、ヒドロキシル、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、シクロペンチル、シクロヘキシル、またはフェニル基であるが、ここでR^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つが、水素ではないことを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の二つまたは三つが水素であり、前記R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の残りの三つまたは二つが、同一であるか、または異なっていて、それぞれ、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
前記一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールが以下の化合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の混合物。
【化2】

【請求項5】
ニトリルゴムが、少なくともアクリロニトリルおよび1,3-ブタジエンから誘導される繰り返し単位を有することを特徴とする、請求項1?4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
ニトリルゴムと一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを含む混合物を製造するための方法であって、
(1)前記混合物が、少なくとも1種の共役ジエンと、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリルと、さらなる共重合性モノマー無しか、または1種または複数のさらなる共重合性モノマーとを乳化重合させることによって調製され、それにより得られた前記ニトリルゴムの水媒体中の懸濁液を、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールと混合し、
【化3】

[式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない]、
(2)前記混合物を、凝集させ、分離し、乾燥させるが、
前記乾燥を、100℃?180℃の範囲の温度で実施して、置換フェノールの含量を、0.4重量%?0.85重量%の範囲の量に調節することを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項1?5のいずれか一項に記載の少なくとも1種の混合物と、少なくとも1種の架橋剤を含む少なくとも1種の架橋系とを含む、加硫可能な混合物。
【請求項9】
加硫物を製造するための方法であって、請求項8に記載の加硫可能な混合物を加硫させることを特徴とする、方法。
【請求項10】
請求項8に記載の加硫可能な混合物を加硫した加硫物。
【請求項11】
ニトリルゴムを含み、一般式(I)の少なくとも1種の置換フェノールを、ニトリルゴムを基準にして、0.4重量%から0.85重量%までの範囲の量で含む混合物であって、
【化4】

式中、
R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)は同一であるか、または異なっていて、それぞれ水素、ヒドロキシル、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルキル基、直鎖状もしくは分岐状のC_(1)?C_(8)アルコキシ基、C_(3)?C_(8)シクロアルキル基、またはフェニル基であるが、ここで、R^(1)、R^(2)、R^(3)、R^(4)、およびR^(5)基の少なくとも一つは、水素ではない、
請求項7に記載の方法によって得られる混合物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-08 
出願番号 特願2016-543563(P2016-543563)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L)
P 1 651・ 537- YAA (C08L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松浦 裕介  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 安田 周史
佐藤 健史
登録日 2018-12-07 
登録番号 特許第6445020号(P6445020)
権利者 アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
発明の名称 貯蔵安定性ニトリルゴムおよびそれらを製造するための方法  
代理人 村山 靖彦  
代理人 前田・鈴木国際特許業務法人  
代理人 実広 信哉  
代理人 阿部 達彦  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  
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