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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06Q
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G06Q
審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正  G06Q
管理番号 1364892
異議申立番号 異議2019-700876  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-11-07 
確定日 2020-06-19 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6510693号発明「支払代行システム、支払代行方法、端末装置、及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6510693号の特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,請求項5について訂正することを認める。 特許第6510693号の請求項1?4,6?10に係る特許を維持する。 特許第6510693号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6510693号の請求項1?10に係る特許についての出願は,平成30年2月27日に出願され,平成31年4月12日にその特許権の設定登録がされ,同年(令和元年)5月8日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は,次のとおりである。
令和 元年11月 7日 : 特許異議申立人笹井 栄治(以下,「申立人」という。)による請求項1?10に係る特許に対する特許異議の申立て
令和 2年 1月31日付け: 取消理由通知書
令和 2年 4月 6日 : 特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 2年 4月 9日付け: 申立人に対する訂正請求があった旨の通知(申立人からの回答なし)


2 訂正の適否
(1)訂正の内容
令和2年4月6日提出の訂正請求書による訂正(以下,「本件訂正請求」という。)の内容は,次のとおりである。
特許請求の範囲の請求項5を削除する(訂正事項1)。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1について,請求項5を削除するものであるから,当該訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮に該当する。

(3)小括
上記のとおり,訂正事項1に係る訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって,特許請求の範囲を,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,請求項5について訂正することを認める。


3 取消理由の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項5に係る特許に対して,当審が令和2年1月31日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。

請求項5に係る特許は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。


4 本件訂正発明
訂正後の請求項1?10に係る発明(以下,それぞれ「本件訂正発明1」?「本件訂正発明10」という。)
【請求項1】
第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システムであって,
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段と,
前記第2のカード会員が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し,前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する支払代行手段と
を有する,支払代行システム。

【請求項2】
前記第2のカード会員がカード利用額の引き落としに利用する銀行口座の情報が格納された記憶手段をさらに有し,
前記支払代行手段は,
前記支払の方法として銀行振込が選択された場合,前記支払処理として前記銀行口座に前記代金を振り込むための処理を実行する
請求項1に記載の支払代行システム。

【請求項3】
前記支払代行手段は,
前記第1のカード会員の名義で前記代金を振り込むための処理を実行する
請求項2に記載の支払代行システム。

【請求項4】
前記記憶手段には,
前記第2のカード会員のカードに紐付けて管理される前記第2のカード会員の事前入金額を含むストック情報がさらに格納され,
前記支払代行手段は,
前記支払の方法として送金が選択された場合,前記支払処理として前記代金の分だけ前記事前入金額を増加させる
請求項2又は3に記載の支払代行システム。

【請求項5】(削除)

【請求項6】
第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システムが,
前記第2のカード会員が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し,前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し,カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する
支払代行方法。

【請求項7】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第1のカード会員が用いる端末装置であって,
前記第2のカード会員が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ秘匿して送信される,前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け,受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成する制御手段を有し,
前記制御手段は,前記支払要求により,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する
端末装置。

【請求項8】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第2のカード会員が用いる端末装置であって,
前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し,前記支払代行システムから前記端末装置のみへ秘匿して送信された前記識別情報を受信して,前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力する制御手段を有し,
前記制御手段は,
前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付け,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理を実行した前記支払代行システムから,前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知を受信する
端末装置。

【請求項9】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第1のカード会員が用いる端末装置に,
前記第2のカード会員が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ秘匿して送信される,前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け,受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成し,
前記支払要求により,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する
処理を実行させる,プログラム。

【請求項10】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第2のカード会員が用いる端末装置に,
前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し,前記支払代行システムから前記端末装置のみへ秘匿して送信された前記識別情報を受信して,前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力し,
前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付けて,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理を実行した前記支払代行システムから,前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知を受信する
処理を実行させる,プログラム。


5 当審の判断
取消理由通知で指摘した請求項5は,本件訂正請求により削除されたことから,当審で指摘した理由は存在しないものとなった。


6 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1)申立人の主張の概要
ア 請求項1?10の「のみへ秘匿して」(請求項1,6?10参照。)は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,特許法第36条第6項第1号,同条第4項第1号,同法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(以上まとめて,以下,「理由1」という。)

イ 請求項1?10に係る特許は,甲第1号証及び周知技術に基づき,当業者が容易に発明をすることができたものである(以下,「理由2」という。)。


(2)理由1について
ア 特許法第36条第6項第2号について,検討をする。
申立人は,本件訂正発明1の「前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し」(下線は,特許権者が特許査定前の補正時に付与した。)との記載について,「前記支払を識別するための識別情報」を「前記第2の端末」「のみ」に対して秘匿するのか,「前記支払を識別するための識別情報」を秘匿することなく送信するが,「前記第2の端末」以外には秘匿するのか明確であるのか判然としないと主張する。このため,発明の詳細な説明の記載を参照する。
発明の詳細な説明には次の記載がある。

「 【0184】
(S204)カード決済システム101は,非加盟店端末103から支払要求Aを受信すると,今回の支払要求Aを識別するための支払IDを発行する。また,カード決済システム101は,支払ID,非加盟店のカード番号,及び支払IDの発行日時に基づいて,キー情報の生成に用いるキーを生成する。この例では,キーとして,支払ID,カード番号,発行日時から生成されるハッシュ値を利用する。カード決済システム101は,生成したキー(ハッシュ値)を非加盟店端末103に送信する。」



図15

このように,上記【0184】には,カード決済システム101は,支払ID,非加盟店のカード番号,及び支払IDの発行日時に基づいて,キー情報の生成に用いるキーを生成し,キー情報の生成にハッシュ値を利用することが記載されており,図15を参照すると,カード決済システム101が生成したハッシュ値を非加盟店端末103にのみ送信することが図示されている。さらに,特許権者は,平成30年12月5日付けの意見書で「請求項1,6-10に係る補正は,本願の出願当初の明細書(以下,当初明細書)の段落[0184],及び図15等の記載に基づきます。」と主張していることを考慮すると,本件訂正発明1の「前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し」との記載は,カード決済システム101が生成したハッシュ値(秘匿された支払を識別するための識別情報)を非加盟店端末103にのみ送信することを意味すると解釈することが適切である。
そうすると,本件訂正発明1の上記記載は明確である。

イ 特許法第36条第6項第1号,同条第4項第1号,同法第17条の2第3項について,上記アのとおりであるから,本件訂正発明1は発明の詳細な説明に記載されたものであり,当業者が容易に発明を実施することができるものであり,さらに,願書に最初に添付した明細書及び図面に記載された範囲内のものである。
なお,請求人が請求項5についてする主張は,本件訂正により削除されたため,理由は存在しないものとなった。

ウ 以上のとおりであるから,申立人の主張する理由1は,採用できない。

(3)理由2について
ア 甲第1号証(特開2002-352172号公報,平成14年12月6日出願公開)には,次の事項が記載されている。

「 【0019】
本発明は,上記実情に鑑みてなされたものであり,購入者のクレジットカードの識別番号が販売業者に知られることがなく,また,販売業者や決済代行業者にリスクを負わせない,電子商取引方法を提供することを目的とする。」

「 【0158】
[第6の実施形態]
図13は,本発明の第6の実施形態に係る電子商取引方法を行う決済代行業者と販売業者及び購入者の関係を示すブロック図である。
この実施形態では,商品或いは役務を提供する販売業者の使用するコンピュータ20で生成した注文データS21を,コンピュータ20から決済代行業者が使用するコンピュータ10Bに与えておき,コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断させることを特徴とする。
図14は,図11中のコンピュータ10Bの構成例を示す図である。
コンピュータ10Bは,プログラムによって制御されるものであり,第1の実施形態のコンピュータ10と同様の通信部11と,支払可否決定部12と,決済情報作成部13と,判定部14と,付加部15とを備えるとともに,特定情報提供部16と,判断部17とを備えている。
特定情報提供部16は,注文データS21がコンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成してコンピュータ20に送信するものである。判断部17は,コンピュータ20から与えられた注文データS21と,コンピュータ30を経由してえられた注文データS21とを比較し,コンピュータ30を経由してえられた注文データS21が改竄されているか否かを判断する。
図15は,コンピュータ10B,20,30の処理を示すフローチャートであり,この図15を参照しつつ,クレジットカードを利用した電子商取引方法を説明する。
販売業者は,コンピュータ20により,インターネットNにホームページを開設し,販売する商品や役務のリストを公開している。購入者は,そのホームページにアクセスし,例えば希望の商品があれば,ホームページの指示に従い,コンピュータ30を使用して,希望する購入品目,数量,住所,氏名,電話番号等の取引きに必要な情報とともに,代金を後払いするためのクレジットカードの種類を入力して販売業者のコンピュータ20に送信する。これらが,購入依頼のメッセージとなる。
【0159】
コンピュータ20では,コンピュータ30から送信された購入品目,数量の情報を確認し,在庫等を検査し,販売代金の総計を計算した後,購入品目41,数量42,住所43,氏名44,電話番号45等の取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加して注文データS21を作成し,コンピュータ10Bに送信する。
【0160】
コンピュータ10Bでは,コンピュータ20から与えられた注文データS21を判断部17に入力して保存すると共に,特定情報作成部16で,注文データS21と販売業者の組み合わせが一意的に特定できる特定情報を作成し,通信部11を介してコンピュータ20に送信する。この特定情報をコンピュータ20に与えることにより,決済の管理が容易になる。
【0161】
コンピュータ10Bから特定情報を受信したコンピュータ20は,注文データS21中の販売業者を特定する情報47を,コンピュータ10から与えられた特定情報に置換し,置換が行われた注文データS21を,第1の実施形態と同様にコンピュータ30に送信する。
【0162】
ここで,注文データS21は,インターネットN上を情報が流れるから,当事者以外に情報が漏洩する危険を減らすために情報を暗号化して流すことが望ましい。
購入者のコンピュータ30は,第1の実施形態と同様に,コンピュータ20から受信した注文データS21を購入者に表示し,購入者が自分の要求に合致しているか否かを確認する。確認の結果自分の要求に合致していれば,購入者は,個人情報としてのクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49をコンピュータ30を用いて入力し,注文データS21にクレジットカード情報49を付加したデータ群S31を生成する。このデータ群S31を決済依頼メッセージとして,済代行業者のコンピュータ10に送信する。このとき,個人情報が漏洩する危険を減らすために情報を暗号化して流すことが望ましい。
また,注文データS21とクレジットカード情報49とを合わせたデータ群S31に一方向ハッシュ関数を適用し,データ群S31を縮約化したメッセージダイジェスト50を生成し,メッセージダイジェスト50を,注文データS21とクレジットカード情報49とを合わせたデータ群S31に付加して送信してもよい。
【0163】
データ群S31は,コンピュータ10Bの通信部11に受信される。コンピュータ10では,データ群S31の中の注文データS21が,判断部14に与えられる。判断部14は,コンピュータ20から与えられて保存していた注文データS21と,データ群S31中の注文データS21とを比較し,データ群S31中の注文データS21が改竄されているか否かを判断し,結果を支払可否決定部12に与える。
【0164】
支払可否決定部12にはそのデータ群S31が与えられる。
支払可否決定部12は,注文データS21に改竄がないと判断されたときに,支払可否決定処理Sy2を行い,コンピュータ30から受信した注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定する。
【0165】
支払可否決定処理Sy2の結果は,決済情報作成部13に与えられる。何らかの理由で支払いを拒否する場合には,コンピュータ10Bは,コンピュータ30にその旨を示す不許可情報を送る。決済情報作成部13及び付加部15は,第1の実施形態と同様の決済情報送信処理Sy3を実施し,注文データS21の内容と,決済許可情報55である許可番号や有効期限等とを含むデータ群S11を作成し,クレジットカード情報49は伏してコンピュータ20へ送信する。
このようにして,クレジットカード情報49を販売業者に知らせることなく,電子商取引ができる。
以上のように,本実施形態の電子商取引方法では,コンピュータ10Bが,コンピュータ20から与えられた注文データと,コンピュータ30から与えられた注文データとを比較するので,注文データS21の改竄があればそれを発見することができ,決済の信頼性が向上する。また,特定情報を作成してコンピュータ20に与えるので,電子商取引の管理が容易になる。また,注文データS21をコンピュータ20からコンピュータ10Bに送信することが,コンピュータ20が特定情報を要求することになるので,無駄な通信が増えたことにならない。
なお,本発明は,上記実施形態に限定されず,種々の変形が可能である。その変形例としては,次のようなものがある。
(a) コンピュータ20はインターネットN上にホームページを開設し,購入者がコンピュータ30を用いてホームページにアクセスする例を説明したが,ホームページにアクセスせずに,電子メール等で取引きを申し込むようにしてもよい。
【0166】
(b) 各種データの改竄をチェックするために,一方向ハッシュ関数を適用して高度に暗号化したメッセージダイジェスト48,50,56,58を利用したが,他に適切な縮約化方式があれば,その縮約化方式を用いてもよい。
【0167】
(c) 本発明は,クレジットカードを利用した後払い方式にのみに適用できるばかりでなく,キャッシュカードやデビッドカードで決済する電子商取引にも適用可能である。
例えば,デビットカード方式で即時決済を行う場合にも,キャッシュカードの読み取りと暗証番号の入力とを,商品や役務の購入者が使用するコンピュータ30から行い,販売業者が使用するコンピュータ20で生成した注文データをコンピュータ30から入力することにより,注文データとキャッシュカードの情報と暗証番号とが,決済代行業者の使用するコンピュータ10に与えられる。これにより,コンピュータ10が即時決済を行うことができる。即ち,販売業者の口座に,商品や役務の代金を購入者の口座から振り込みできる。そしてコンピュータ10が,キャッシュカードの情報と暗証番号とを伏せて,決済が完了したことを示す情報をコンピュータ20に送信することにより,販売業者に決済が完了したことが示されるので,商品や役務の提供が行われる。このように,キャッシュカードの情報と暗証番号とがコンピュータ20に伏せられるので,キャッシュカードの情報と暗証番号とが,販売業者に知られることがない。また,注文データをコンピュータ20で生成するので,購入者による注文データの改竄があれば,それも販売業者或いは決済代行業者が知ることができ,販売業者にとっても安全性が確保される。なお,各コンピュータ10,20,30間の通信に,第1の実施形態と同様のメッセージダイジェストを付加したり,暗号化を採用することにより,より即時決済の安全性を高めることができる。
(d) コンピュータ10,20間は,専用回線で接続されていてもよい。また,コンピュータ10,30間も,専用回線で接続されてもよい。このように,専用回線ではコンピュータ10,20,30を接続することにより,コンピュータ10,20,30間の通信データが盗聴される危険性を低減できる。」



図13



図15

図13には,決済代行業者コンピュータ10B,販売業者コンピュータ20及び購入者コンピュータ30がインターネットを介して接続されるシステムが図示されている。

図15には,順に,販売者コンピュータ20が注文データS21を作成し,注文データS21を決済代行業者コンピュータ10Bに送信し,決済代行業者コンピュータ10Bが特定情報を販売業者コンピュータ20に送信し,販売業者コンピュータが注文メッセージを購入者コンピュータ30に送信し,購入者コンピュータ30は支払許可願いメッセージを決済代行業者コンピュータ10Bに送信することが図示されている。

イ 引用発明
(ア)引用発明1
上記アから,甲第1号証には次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明1」という。)。

インターネットを介して販売業者コンピュータ20及び購入者コンピュータ30と接続される決済代行業者コンピュータ10Bであって(【図13】),
商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断させるために(【0158】),
決済代行業者コンピュータ10Bは,通信部11と,支払可否決定部12と,決済情報作成部13と,判定部14と,付加部15とを備えるとともに,特定情報提供部16と,判断部17とを備え(【0158】),
販売業者コンピュータ20によって,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加した注文データS21が作成され,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され(【0159】【図15】),
特定情報提供部16は,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成し,決済を容易にするために特定情報を販売業者コンピュータ20に送信し(【0158】【0160】【図15】),
決済代行業者コンピュータ10Bから特定情報を受信した販売業者コンピュータ20によって,注文データS21中の販売業者を特定する情報47を,決済代行業者コンピュータ10Bから与えられた特定情報に置換し,置換が行われた注文データS21が,購入者コンピュータ30に送信され(【0161】【図15】),
購入者コンピュータ30によって,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31が生成され,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され(【0162】),
決済代行業者コンピュータ10Bは,データ群S31の中の注文データS21が改竄されているか否かを判断し,結果を支払可否決定部12に与え(【0163】),
支払可否決定部12は,注文データS21に改竄がないと判断したときに,支払可否決定処理Sy2を行い,購入者コンピュータ30から受信した注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定し,支払可否決定処理Sy2の結果は,決済情報作成部13に与えられ(【0164】【0165】),
決済情報作成部13及び付加部15は,決済情報送信処理Sy3を実施し,注文データS21の内容と,決済許可情報55である許可番号や有効期限等とを含むデータ群S11を作成し,クレジットカード情報49は伏して販売業者コンピュータ20へ送信する(【0165】),
決済代行業者コンピュータ10B。

(イ)引用発明2
上記アから,甲第1号証には次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明2」という。)。

インターネットを介して決済代行業者コンピュータ10B及び販売業者コンピュータ20と接続される購入者コンピュータ30であって(【図13】),
商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断させるために(【0158】),
決済代行業者コンピュータ10Bは,通信部11と,支払可否決定部12と,決済情報作成部13と,判定部14と,付加部15とを備えるとともに,特定情報提供部16と,判断部17とを備え(【0158】),
販売業者コンピュータ20によって,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加した注文データS21が作成され,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され(【0159】【図15】),
特定情報提供部16によって,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報が作成され,決済を容易にするために特定情報が販売業者コンピュータ20に送信され(【0158】【0160】【図15】),
決済代行業者コンピュータ10Bから特定情報を受信した販売業者コンピュータ20によって,注文データS21中の販売業者を特定する情報47が,決済代行業者コンピュータ10Bから与えられた特定情報に置換され,置換が行われた注文データS21が,購入者コンピュータ30に送信され(【0161】【図15】),
購入者コンピュータ30は,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31を生成し,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信する(【0162】),
購入者コンピュータ30。

(ウ)引用発明3
上記アから,甲第1号証には次の発明が記載されているといえる(以下,「引用発明3」という。)。

インターネットを介して決済代行業者コンピュータ10B及び購入者コンピュータ30と接続される販売業者コンピュータ20であって(【図13】),
商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断させるために(【0158】),
決済代行業者コンピュータ10Bは,通信部11と,支払可否決定部12と,決済情報作成部13と,判定部14と,付加部15とを備えるとともに,特定情報提供部16と,判断部17とを備え(【0158】),
販売業者コンピュータ20は,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加して注文データS21を作成し,決済代行業者コンピュータ10Bに送信し(【0159】【図15】),
特定情報提供部16によって,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報が作成され,決済を容易にするために特定情報が販売業者コンピュータ20に送信され(【0158】【0160】【図15】),
決済代行業者コンピュータ10Bから特定情報を受信した販売業者コンピュータ20は,注文データS21中の販売業者を特定する情報47を,決済代行業者コンピュータ10Bから与えられた特定情報に置換し,置換が行われた注文データS21を,購入者コンピュータ30に送信し(【0161】【図15】),
購入者コンピュータ30によって,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31が生成され,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され(【0162】),
決済代行業者コンピュータ10Bによって,データ群S31の中の注文データS21が改竄されているか否かが判断され,結果を支払可否決定部12に与えられ(【0163】),
支払可否決定部12によって,注文データS21に改竄がないと判断されたときに,支払可否決定処理Sy2が行われ,購入者コンピュータ30から受信した注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かが決定され,支払可否決定処理Sy2の結果は,決済情報作成部13に与えられ(【0164】【0165】),
決済情報作成部13及び付加部15により,決済情報送信処理Sy3が実施され,注文データS21の内容と,決済許可情報55である許可番号や有効期限等とを含まれるデータ群S11が作成され,クレジットカード情報49が伏されてコンピュータ20へ送信される,
販売業者コンピュータ20。

ウ 本件訂正発明1について
(ア)対比
A 引用発明1において,購入者はクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を購入者コンピュータ30に入力することから,購入者はクレジットカードの所有者であるから,本件訂正発明1の「第1のカード会員」に相当する。
そして,引用発明1の「購入者コンピュータ20」は,本件訂正発明1の「第1のカード会員が用いる第1の端末」に相当する。

B 引用発明1の「販売業者」と,本件訂正発明1の「第2のカード会員であるカード非加盟店」とは,「店」で共通する。
そして,引用発明1の販売業者が用いる「販売業者コンピュータ20」は,本件訂正発明1の「第2の会員が用いる端末」と,「店が用いる第2の端末」で共通する。

C 引用発明1の「商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断」は,決済代行業者コンピュータ10Bが,購入者が販売業者から商品或いは役務の提供を受けたときの決済の代行を行うときの処理であるから,この処理を行う引用発明1の「決済代行業者10B」は,本件訂正発明1の「第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム」と,「第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム」で共通する。

D 引用発明1の「販売業者コンピュータ20によって,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加した注文データS21が作成され,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され」,「特定情報提供部16は,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成し,決済を容易にするために特定情報を販売業者コンピュータ20に送信」することにおける,販売業者コンピュータ20によって,注文データS21が決済代行業者コンピュータ10Bに送信されることは,本件訂正発明1の「要求」に相当し,これにより特定情報提供部16が,注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す「特定情報」を生成することから,引用発明1の「特定情報」は,本件訂正発明1の「支払いを識別するための識別情報」に相当する。
そして,引用発明1は,決済代行業者システム10Bの特定情報提供部が,販売業者コンピュータ20から送信された注文データS21に基づき,注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成し,特定情報を販売業者コンピュータ20へ送信され,特定情報は販売業者コンピュータ20のみに送信されることは明らかである点で,本件訂正発明1の「前記第2のカード会員が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し」と,「前記店が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ送信し」で共通する。

E 引用発明1の「購入者コンピュータ30によって,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31が生成され,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され」,「決済代行業者コンピュータ10Bは,データ群S31の中の注文データS21が改竄されているか否かを判断し,結果を支払可否決定部12に与え」,「支払可否決定部12は,注文データS21に改竄がないと判断したときに,支払可否決定処理Sy2を行い,購入者コンピュータ30から受信した注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定」することについて,引用発明1の注文データS21が付加されて生成された「決済依頼メッセージ」は,本件訂正発明1の「識別情報を含む支払い要求」に相当する。
そして,引用発明1は,購入者コンピュータ30からクレジットカード番号49aを含む決済依頼メッセージを受信し,決済代行業者コンピュータ10Bがクレジットカード番号49aに決済を行うものであって,決済代行業者コンピュータ10が,クレジットカード決済を行う手段を備えることは明らかであり,さらに,支払い可否決定部12は購入者コンピュータ30から受信した決済依頼メッセージに含まれる注文データS21の改竄がないと判断されたときに注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定するものであって,引用発明1のクレジットカード決済を行う手段は,本件訂正発明1の「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段」に相当し,引用発明1の支払い可否決定部12は,本件訂正発明1の「前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し,前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する支払代行手段」と,「前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するか否かを判断する手段」で共通する。

(イ)一致点・相違点
したがって,本件訂正発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システムであって,
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段と,
前記店が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ送信し,
前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するか否かを判断する手段と
を有する,支払代行システム。

<相違点>
(相違点1)
店について,本件訂正発明1は,「第2のカード会員であるカード非加盟店」であるのに対し,引用発明1には,そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件訂正発明1は,第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための「識別情報」を前記第2の端末のみへ「秘匿して」送信されるのに対し,引用発明1は,「特定情報」が秘匿されるか明確ではない点。

(相違点3)
所定の額について,本件訂正発明1は「前記代金と所定の手数料との合計額」であるのに対し,引用発明1は,その合計額に所定の手数料が含まれることが特定されていない点。

(相違点4)
本件訂正発明1は,「前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し,前記カード決済手段により」,「前記第1のカード会員のカードでカード決済する支払代行手段」を有し,引用発明1は,購入者コンピュータ30から決済依頼メッセージを受け付けたとき,支払可否決定部12が注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定する点。

(ウ)相違点の判断
事案に鑑み相違点1,3について検討をする。
販売業者について,甲第1号証の上記【0159】には,「コンピュータ20では,…購入品目41,数量42,住所43,氏名44,電話番号45等の取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加して注文データS21を作成し,コンピュータ10Bに送信する。」(下線は,当審が付与した。)とあり,販売業者はカード加盟店の蓋然性が高く,カード会員である非加盟店であるとする合理的理由は見当たらず,又は,販売業者を非加盟店に特定しようとする動機もない。
また,手数料について,本件特許明細書には次の記載がある。
「 【0002】
クレジットカードのブランドに加盟している店舗(以下,加盟店)では,そのブランドのクレジットカードを利用してカード決済ができる。そのため,カード会員は,自ら保有するクレジットカードを利用できる加盟店が増えることで利便性が向上する。しかし,カード決済の利用に応じて加盟店に課される手数料の負担から,加盟店の数が増えにくい。」
「 【0006】
上記の事情に鑑みると,カード会員の利便性を高めるためには,非加盟店でもカード決済を利用できる仕組みを実現することに加え,その仕組みの実現にかかるコストを低減する工夫が求められる。また,どのような販売形態を採用する非加盟店でも,その仕組みを容易に導入できるようにする工夫が求められる。
【0007】
本発明の一態様によれば,その目的は,非加盟店に負担をかけず非加盟店でのカード払いを可能にする支払代行システム,支払代行方法,端末装置,及びプログラムを提供することにある。」
上記課題を解決するための,本件訂正発明1は,第1のカード会員に手数料を負担させるものである。
これに対し,甲第1号証には上記【0019】のとおり,「購入者のクレジットカードの識別番号が販売業者に知られることがなく,また,販売業者や決済代行業者にリスクを負わせない,電子商取引方法を提供すること」を目的とするものであるから,引用発明1において購入者に手数料を負担させようとする動機はない。
そうすると,加盟店であるとの蓋然性の高い販売業者をカード会員である非加盟店に特定した上で,さらに,クレジットカード決済の手数料を購入者に負担させようとすることは,引用発明1に基づき当業者であっても容易に想到することができたとはいえず,また,本願出願日前において周知技術でもない。
したがって,上記相違点2及び4について判断するまでもなく,本件訂正発明1は,当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

エ 本件訂正発明2?4,6について
(ア)本件訂正発明2?4は,本件訂正発明1の上記相違点1及び3の「第2のカード会員である非加盟店」及び「前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する」に関する構成と同一の構成を備えるものであるから,本件訂正発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

(イ)本件訂正発明6は,本件訂正発明1に対応する支払代行方法の発明であり,「第2のカード会員であるカード非加盟店」,「前記カード決済手段により,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する」に対応する構成を備えるものであるから,本件訂正発明1と同様の理由により,当業者であっても,引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

オ 本件訂正発明7,9について
(ア)本件訂正発明7との対比
A 引用発明2の「販売業者」と,本件訂正発明7の「第2のカード会員であるカード非加盟店」とは,「店」で共通する。
そして,引用発明2の販売業者が用いる「販売業者コンピュータ20」は,本件訂正発明7の「第2のカード会員が用いる他の端末」と,「店が用いる端末」で共通する。

B 引用発明2において,購入者はクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を購入者コンピュータ30に入力することから,購入者はクレジットカードの所有者であるから,本件訂正発明7の「第1のカード会員」に相当する。
そして,引用発明2の「購入者コンピュータ20」は,後述する相違点は別にして,本件訂正発明7の「第1のカード会員が用いる端末相装置」に相当する。

C 引用発明2の「商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断」は,決済代行業者コンピュータ10Bが,購入者が販売業者から商品或いは役務の提供を受けたときの決済の代行を行うときの処理であるから,この処理を行う引用発明2の「決済代行業者コンピュータ10B」は,本件訂正発明7の「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム」と,「第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム」で共通する。

D 引用発明2の「インターネットを介して決済代行業者コンピュータ10B及び販売業者コンピュータ20と接続される購入者コンピュータ30」は,上記A?Cを勘案すると,本件訂正発明7の「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第1のカード会員が用いる端末装置」と,「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第1のカード会員が用いる端末装置」で共通する。

E 引用発明2の「販売業者コンピュータ20によって,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加した注文データS21が作成され,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され」,「特定情報提供部16によって,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報が作成され,決済を容易にするために特定情報が販売業者コンピュータ20に送信され」,「決済代行業者コンピュータ10Bから特定情報を受信した販売業者コンピュータ20によって,注文データS21中の販売業者を特定する情報47が,決済代行業者コンピュータ10Bから与えられた特定情報に置換され,置換が行われた注文データS21が,購入者コンピュータ30に送信され」ることについて,販売業者コンピュータ20が注文データS21を決済代行業者コンピュータ10Bに送信することで,決済代行業者システム10Bの特定情報提供部が,販売業者コンピュータ20から送信された注文データS21に基づき,注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成し,特定情報を販売業者コンピュータ20へ送信され,販売業者コンピュータ20がこれを受信し,特定情報は販売業者コンピュータ20のみに送信され,特定情報に置換された注文データS21を購入者コンピュータに送信することは明らかであるから,引用発明2の販売業者コンピュータ20が「注文データS21」を決済代行業者コンピュータ10Bに送信すること,及び,「特定情報」は,それぞれ,本件訂正発明7の「要求」及び「支払いを識別するための識別情報」に相当し,本件訂正発明7の「前記第2のカード会員が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ秘匿して送信される,前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け」と,「前記店が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ送信される,前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け」で共通する。

F 引用発明2は,「購入者コンピュータ30は,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31を生成し,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信する」ことから,購入者コンピュータは販売業者コンピュータ20から受信した注文データS21に基づく決済依頼メッセージであるデータ群31Sを生成する手段を有することは明らかであり,引用発明2の「支払依頼メッセージ」は,本件訂正発明7の「支払要求」に相当し,購入者コンピュータ30が有する生成する手段は,本件訂正発明7の「受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成する制御手段」に相当する。
そして引用発明2は,購入者コンピュータ30は,生成したクレジットカード情報を含む支払依頼メッセージを決済代行業者コンピュータ10Bに送信する点で,本件訂正発明7の「前記支払要求により,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する」と,「前記支払要求により,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する」で共通する。

(イ)一致点・相違点
したがって,本件訂正発明7と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第1のカード会員が用いる端末装置であって,
前記店が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ送信される,前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け,受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成する制御手段を有し,
前記支払要求により,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する
端末装置。

<相違点>
(相違点1)
店について,本件訂正発明7は,「第2のカード会員であるカード非加盟店」であるのに対し,引用発明2には,そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件訂正発明7は,他の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための「識別情報」を前記他の端末のみへ「秘匿して」送信されるのに対し,引用発明2は,「特定情報」が秘匿されるか明確ではない点。

(相違点3)
所定の額について,本件訂正発明7は「前記代金と所定の手数料との合計額」であるのに対し,引用発明2は,その合計額に所定の手数料が含まれることが特定されていない点。

(相違点4)
本件訂正発明7は,「前記制御手段」が,「前記支払要求により,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する」のに対し,引用発明2には,決済依頼メッセージであるデータS31を生成する手段が,「前記支払要求により,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する」か否か特定されていない点。

(ウ)相違点の判断
事案に鑑み相違点1,3について検討をする。
相違点1及び3は,上記本件訂正発明1における相違点1及び3と同じ相違点である。
そうすると,加盟店であるとの蓋然性の高い販売業者をカード会員である非加盟店に特定した上で,さらに,クレジットカード決済の手数料を購入者に負担させようとすることは,引用発明2に基づき当業者であっても容易に想到することができたとはいえず,また,本願出願日前において周知技術でもない。
したがって,上記相違点2及び4について判断するまでもなく,本件訂正発明7は,当業者であっても引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(エ)本件訂正発明9について,本件訂正発明9は,本件訂正発明7に対応するプログラムの発明であり,「第2のカード会員であるカード非加盟店」,「前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する」に対応する構成を備えるものであるから,本件訂正発明7と同様の理由により,当業者であっても,引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

カ 本件訂正発明8,10について
(ア)本件訂正発明8との対比
A 引用発明3の「販売業者」と,本件訂正発明8の「第2のカード会員であるカード非加盟店」とは,「店」で共通する。
そして,引用発明3の販売業者が用いる「販売業者コンピュータ20」は,本件訂正発明8の「第2のカード会員が用いる端末装置」と,「店が用いる端末」で共通する。

B 引用発明3において,購入者はクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を購入者コンピュータ30に入力することから,購入者はクレジットカードの所有者であるから,本件訂正発明8「第1のカード会員」に相当する。
そして,引用発明3の「購入者コンピュータ20」は,本件訂正発明8の「第1のカード会員が用いる他の端末」に相当する。

C 引用発明3の「商品或いは役務を提供する販売業者の使用する販売業者コンピュータ20で生成した注文データS21を,販売業者コンピュータ20から決済代行業者が使用する決済代行業者コンピュータ10Bに与えておき,購入者コンピュータ30を経由して与えた注文データS21と比較させて,注文データS21の改竄の有無を判断」は,決済代行業者コンピュータ10Bが,購入者が販売業者から商或いは役務の提供を受けたときの決済の代行を行うときの処理であるから,この処理を行う引用発明3の「決済代行業者コンピュータ10B」は,本件訂正発明8の「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム」と,「第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム」で共通する。

D 引用発明3の「インターネットを介して決済代行業者コンピュータ10B及び購入者コンピュータ30と接続される販売業者コンピュータ20」は,上記A?Cを勘案すると,本件訂正発明8の「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記第2のカード会員が用いる端末装置」と,「カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記店が用いる端末装置」で共通する。

E 引用発明3の「販売業者コンピュータ20は,取引きに必要な情報に,その販売代金46とクレジットカードの発行会社から発行された販売者自身を特定する情報47とを付加して注文データS21を作成し,決済代行業者コンピュータ10Bに送信し」,「特定情報提供部16によって,注文データS21が販売業者コンピュータ20から与えられたときに,その注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報が作成され,決済を容易にするために特定情報が販売業者コンピュータ20に送信され」,「決済代行業者コンピュータ10Bから特定情報を受信した販売業者コンピュータ20は,注文データS21中の販売業者を特定する情報47を,決済代行業者コンピュータ10Bから与えられた特定情報に置換し,置換が行われた注文データS21を,購入者コンピュータ30に送信」することについて,販売業者コンピュータ20が注文データS21を決済代行業者コンピュータ10Bに送信することで,決済代行業者システム10Bの特定情報提供部が,販売業者コンピュータ20から送信された注文データS21に基づき,注文データS21と販売業者の組み合わせを一意的に示す特定情報を作成し,特定情報を販売業者コンピュータ20へ送信され,販売業者コンピュータ20がこれを受信し,特定情報は販売業者コンピュータ20のみに送信され,販売業者コンピュータ20は,置換が行われた注文情報S21を購入者コンピュータ30に送信し,販売業者コンピュータ20はこれらの処理を実行する手段を備えることは明らかであるから,引用発明3の販売業者コンピュータ20が「注文データS21」を決済代行業者コンピュータ10Bに送信すること,及び,「特定情報」は,それぞれ,本件訂正発明8の「要求」及び「支払いを識別するための識別情報」に相当し,引用発明3のこれらの処理を実行する手段は,本件訂正発明8の「前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し,前記支払代行システムから前記端末装置のみへ秘匿して送信された前記識別情報を受信して,前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力する制御手段を有し」と,「前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し,前記支払代行システムから前記端末装置のみへ送信された前記識別情報を受信して,前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力する制御手段を有し」で共通する。

F 引用発明3の「購入者コンピュータ30によって,購入者が入力したクレジットカード番号49a,パスワード49b等の決済に必要なクレジットカード情報49を注文データS21に付加したデータ群S31が生成され,このデータ群S31が決済依頼メッセージとして,決済代行業者コンピュータ10Bに送信され」,「決済代行業者コンピュータ10Bによって,データ群S31の中の注文データS21が改竄されているか否かが判断され,結果を支払可否決定部12に与えられ」,「支払可否決定部12によって,注文データS21に改竄がないと判断されたときに,支払可否決定処理Sy2が行われ,購入者コンピュータ30から受信した注文データS21とクレジットカード情報49に基づき,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かが決定され,支払可否決定処理Sy2の結果は,決済情報作成部13に与えられ」,「決済情報作成部13及び付加部15により,決済情報送信処理Sy3が実施され,注文データS21の内容と,決済許可情報55である許可番号や有効期限等とを含まれるデータ群S11が作成され,クレジットカード情報49が伏されてコンピュータ20へ送信される」ことは,決済代行業者コンピュータ10Bが購入者コンピュータ30から決済依頼メッセージを受信すると,購入者に代って商品或いは役務の代金を支払うか否かを決定し,結果を販売業者コンピュータ20に送信することから,引用発明3の「決済依頼メッセージ」は,本件訂正発明8の「識別情報を含む支払要求」に相当し,本件訂正発明8の「前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付け,前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理,及び,前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理を実行した前記支払代行システムから,前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知を受信する」と,「前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付け,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理のための前記支払代行システムから,通知を受信する」で共通する。

(イ)一致点・相違点
したがって,本件訂正発明8と引用発明3との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

<一致点>
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき,第1のカード会員から,店への代金の支払を代行する支払代行システム,と通信する,前記店が用いる端末装置であって,
前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し,前記支払代行システムから前記端末装置のみへ送信された前記識別情報を受信して,前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力する制御手段を有し,
前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付け,前記店に対する前記代金の支払処理について,所定の額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理のための前記支払代行システムから,通知を受信する
端末装置。

(相違点1)
店について,本件訂正発明8は,「第2のカード会員であるカード非加盟店」であるのに対し,引用発明3には,そのような特定がされていない点。

(相違点2)
本件訂正発明8は,他の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための「識別情報」を前記他の端末のみへ「秘匿して」送信されるのに対し,引用発明3は,「特定情報」が秘匿されるか明確ではない点。

(相違点3)
所定の額について,本件訂正発明8は「前記代金と所定の手数料との合計額」であるのに対し,引用発明3は,その合計額に所定の手数料が含まれることが特定されていない点。

(相違点4)
本件訂正発明8は,「前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理」及び「前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理」を「実行した前記支払代行システム」から,「前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知」を受信し,この処理を「前記制御手段」が実行するのに対し,引用発明3は,決済代行業者コンピュータ10Bは,支払処理及び決済処理を実行しておらず,販売業者コンピュータ20は,通知としてクレジットカード情報49が付された決済可否情報55を受信する点。

(ウ)相違点の判断
事案に鑑み相違点1,3について検討をする。
相違点1及び3は,上記本件訂正発明1における相違点1及び3と同じ相違点である。
そうすると,加盟店であるとの蓋然性の高い販売業者をカード会員である非加盟店に特定した上で,さらに,クレジットカード決済の手数料を購入者に負担させようとすることは,引用発明3に基づき当業者であっても容易に想到することができたとはいえず,また,本願出願日前において周知技術でもない。
したがって,上記相違点2及び4について判断するまでもなく,本件訂正発明8は,当業者であっても引用発明3に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(エ)本件訂正発明10について,本件訂正発明10は,本件訂正発明8に対応するプログラムの発明であり,「第2のカード会員であるカード非加盟店」,「前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する」に対応する構成を備えるものであるから,本件訂正発明8と同様の理由により,当業者であっても,引用発明3に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

キ 以上のとおりであるから,申立人の主張する理由2は,採用できない。


7 まとめ
本件訂正発明1?4,6,7,8,9,10に係る特許は,特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに,他に本件訂正発明1?4,6,7,8,9,10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
請求項5に係る特許は,上記のとおり本件訂正請求により削除され,これにより,請求項5に係る特許異議申立ては,申立ての対象が存在しないものとなる。このため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システムであって、
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段と、
前記第2のカード会員が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し、前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し、前記カード決済手段により、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する支払代行手段と
を有する、支払代行システム。
【請求項2】
前記第2のカード会員がカード利用額の引き落としに利用する銀行口座の情報が格納された記憶手段をさらに有し、
前記支払代行手段は、
前記支払の方法として銀行振込が選択された場合、前記支払処理として前記銀行口座に前記代金を振り込むための処理を実行する
請求項1に記載の支払代行システム。
【請求項3】
前記支払代行手段は、
前記第1のカード会員の名義で前記代金を振り込むための処理を実行する
請求項2に記載の支払代行システム。
【請求項4】
前記記憶手段には、
前記第2のカード会員のカードに紐付けて管理される前記第2のカード会員の事前入金額を含むストック情報がさらに格納され、
前記支払代行手段は、
前記支払の方法として送金が選択された場合、前記支払処理として前記代金の分だけ前記事前入金額を増加させる
請求項2又は3に記載の支払代行システム。
【請求項5】(削除)
【請求項6】
第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システムが、
前記第2のカード会員が用いる第2の端末からの要求に応じて前記支払を識別するための識別情報を前記第2の端末のみへ秘匿して送信し、前記第1のカード会員が用いる第1の端末から前記識別情報を含む支払要求を受け付けたとき、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理を実行し、カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行するカード決済手段により、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済する
支払代行方法。
【請求項7】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき、第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム、と通信する、前記第1のカード会員が用いる端末装置であって、
前記第2のカード会員が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ秘匿して送信される、前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け、受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成する制御手段を有し、
前記制御手段は、前記支払要求により、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行、及び、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する
端末装置。
【請求項8】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき、第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム、と通信する、前記第2のカード会員が用いる端末装置であって、
前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し、前記支払代行システムから前記端末装置のみへ秘匿して送信された前記識別情報を受信して、前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力する制御手段を有し、
前記制御手段は、
前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付け、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理、及び、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理を実行した前記支払代行システムから、前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知を受信する
端末装置。
【請求項9】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき、第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム、と通信する、前記第1のカード会員が用いる端末装置に、
前記第2のカード会員が用いる他の端末装置からの要求に応じて前記支払代行システムから前記他の端末装置のみへ秘匿して送信される、前記支払を識別するための識別情報の入力を受け付け、受け付けた前記識別情報を含む支払要求を生成し、
前記支払要求により、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理の実行、及び、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理の実行を前記支払代行システムに要求する
処理を実行させる、プログラム。
【請求項10】
カード加盟店の決済システムとしてカード決済を実行でき、第1のカード会員から、第2のカード会員であるカード非加盟店への代金の支払を代行する支払代行システム、と通信する、前記第2のカード会員が用いる端末装置に、
前記支払を識別するための識別情報を前記端末装置に送信するように前記支払代行システムに要求し、前記支払代行システムから前記端末装置のみへ秘匿して送信された前記識別情報を受信して、前記識別情報を前記第1のカード会員が用いる他の端末装置により取得可能な形式で出力し、
前記他の端末装置から前記識別情報を含む支払要求を受け付けて、前記第2のカード会員に対する前記代金の支払処理、及び、前記代金と所定の手数料との合計額を前記第1のカード会員のカードでカード決済するための決済処理を実行した前記支払代行システムから、前記支払処理及び前記決済処理の手続完了の通知を受信する
処理を実行させる、プログラム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-11 
出願番号 特願2018-33485(P2018-33485)
審決分類 P 1 651・ 561- YAA (G06Q)
P 1 651・ 536- YAA (G06Q)
P 1 651・ 121- YAA (G06Q)
P 1 651・ 537- YAA (G06Q)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田川 泰宏  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 松田 直也
速水 雄太
登録日 2019-04-12 
登録番号 特許第6510693号(P6510693)
権利者 三井住友カード株式会社
発明の名称 支払代行システム、支払代行方法、端末装置、及びプログラム  
代理人 特許業務法人 谷・阿部特許事務所  
代理人 特許業務法人谷・阿部特許事務所  

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