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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1364894 |
異議申立番号 | 異議2019-700870 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2019-11-06 |
確定日 | 2020-06-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6521138号発明「成形フィルム用導電性組成物、成形フィルム、成形体およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6521138号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-13]について、訂正することを認める。 特許第6521138号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6521138号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、平成30年4月19日の出願であって、令和1年5月10日にその特許権(請求項の数13)が設定登録され、同年同月29日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対し、令和1年11月6日に特許異議申立人 岩崎 勇(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項は、全請求項)がされ、令和2年2月5日付けで取消理由が通知され、同年4月1日に特許権者 東洋インキSCホールディングス株式会社より意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がされ、同年4月7日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正があった旨の通知を特許異議申立人に行ったところ、同年5月8日に特許異議申立人より意見書の提出があったものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) (訂正事項) 特許請求の範囲の請求項1に、 「前記溶剤(C')が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である」 とあるのを、 「前記溶剤(C')が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である」 に訂正する。 あわせて、請求項1の記載を直接的あるいは間接的に引用する、請求項2ないし13についても同様に訂正する。 なお、本件訂正請求における請求項1ないし13に係る訂正は、一群の請求項[1-13]に対して請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項は、溶剤(C')の選択群から「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1-13]について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明13」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムの製造用の導電性組成物であって、 樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、 前記樹脂(A)の重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、 前記樹脂(A)の含有割合が、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8質量%以上40質量%以下であり、 前記溶剤(C)が、溶剤(C')を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含み、前記溶剤(C')が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である、成形フィルム用導電性組成物。 【請求項2】 前記導電性微粒子(B)が、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、およびカーボン微粒子より選択される1種以上の導電性微粒子を含む、請求項1に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項3】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される1種以上の置換基を有する、請求項1又は2に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項4】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される1種以上の反応性官能基を分子中に2個以上有し、更に、前記樹脂(A)が有する反応性官能基と架橋形成しうる反応性官能基を1分子中に2つ以上有する架橋剤(D)を含有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項5】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される第1の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、 成形フィルム用導電性組成物が、更に架橋剤(D)を含有し、前記架橋剤(D)が、前記第1の反応性官能基と架橋形成しうる第2の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、 前記架橋剤(D)の第2の反応性官能基の物質量の総量FD(mоl)と、前記樹脂(A)の質量MA(g)との比が下記式(1)を満たす、請求項1?4のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物。 式(1) 5.0×10^(-5) ≦ FD/MA ≦ 6.0×10^(-4) 【請求項6】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。 【請求項7】 前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が ベースフィルムの破断伸び率>導電層の破断伸び率 を満たす、請求項6に記載の成形フィルム。 【請求項8】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、加飾層と、導電層とを有する、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。 【請求項9】 前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が ベースフィルムの破断伸び率>加飾層の破断伸び率>導電層の破断伸び率 を満たす、請求項8に記載の成形フィルム。 【請求項10】 凹凸面や曲面を有する基材表面に、導電層が積層した成形体であって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形体。 【請求項11】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 基材上に前記成形フィルムを配置する工程と、 オーバーレイ成形法により、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む、成形体の製造方法。 【請求項12】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 前記成形フィルムを所定の形状に成形する工程と、 成形後の前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、 射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む、成形体の製造方法。 【請求項13】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、 射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルム中の導電層を基材側に転写する工程と、を含む、成形体の製造方法。」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 申立理由1(新規性欠如) 本件特許の訂正前の請求項1ないし6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 申立理由2(進歩性欠如) 本件特許の訂正前の請求項1ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 <証拠方法> ・甲第1号証:特開2018-41692号公報 ・甲第2号証:特開2007-296848号公報 ・参考資料1:特開2015-129234号公報 ・参考資料2:バクセンデン社のブロックイソシアネートの詳細情報 ・参考資料3:特開2018-45872号公報 第5 取消理由通知に記載した取消理由について 訂正前の請求項1ないし13に係る特許に対して、当審が令和2年2月5日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。(なお、異議申立理由はいずれも、取消理由に包含される。) 取消理由1(新規性欠如) 本件特許の訂正前の請求項1ないし7、10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 取消理由2(進歩性欠如) 本件特許の訂正前の請求項1ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 甲第1号証、甲第2号証及び参考資料1ないし3の記載事項 (1) 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には次の事項が記載されている。(下線は合議体が付したものである。以下、同様。) 「【請求項1】 熱可塑性樹脂からなるバインダ樹脂、導電性粒子、有機溶剤および硬化剤を含有することを特徴とする導電性組成物であって、上記導電性粒子が球状導電性粒子を含むことを特徴とする展延性導電性組成物。」 「【0001】 本発明は、家電製品用の表示パネルや操作パネル、携帯電話、携帯情報機器、自動車内装部品等のスイッチ部に用いられる三次元構造の回路シート、三次元プリント配線板、立体回路部品用の展延性導電性組成物およびその製造方法に関する。」 「【0019】 本発明におけるバインダ樹脂の数平均分子量は特に限定はされないが、数平均分子量が3,000?150,000であることが好ましい。より好ましくは7,000?140,000の範囲であり、さらに好ましくは10,000?130,000の範囲である。数平均分子量が低すぎると、形成された導電性薄膜の耐久性、耐湿熱性の面で好ましくない。一方、数平均分子量が高すぎると、樹脂の凝集力が増し、導電性薄膜としての耐久性等は向上するものの、展延性導電性組成物の粘度が高くなってしまい、実使用上好ましく無い。」 「【0020】 <導電性粒子> 本発明に用いられる導電性粒子としては、銀粉、金粉、白金粉、パラジウム粉等の貴金属粉、銅粉、ニッケル粉、アルミ粉、真鍮粉等の卑金属粉、銀等の貴金属でめっき又は合金化した卑金属粉等を挙げることができる。これらの金属粉は、単独で用いてもよく、また、併用してもよい。これらの中でも導電性、安定性、コスト等を考慮すると銀粉単独又は銀粉を主体とするものが好ましい。」 「【0026】 導電性粒子の含有量は、形成された導電性薄膜の導電性が良好であるという観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、400質量部以上が好ましく、560質量部以上がより好ましい。また、成分の含有量は、基材との密着性において良好であるという観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、1,900質量部以下が好ましく、1,230質量部以下がより好ましい。」 「【0028】 <有機溶剤> 本発明に用いることのできる有機溶剤は、グリコールエーテル系溶剤または/およびアルコール系溶剤であることが好ましい。グリコールエーテル系溶剤または/およびアルコール系溶剤は印刷基材となる三次元成形加工が可能な樹脂フィルムへのダメージがほとんど無い為、得られた導電性薄膜が良好な展延性を示すことができる。これらの構造を含有していない溶剤を使用した場合、三次元成形加工が可能な樹脂フィルムが溶剤によるダメージを受ける場合があり、得られた導電性薄膜の下地が弱い状態となるために良好な展延性が得られない場合がある。 【0029】 グリコールエーテル系溶剤としては、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中で、熱可塑性樹脂の配合成分の溶解性に優れ、連続印刷時の溶剤揮発性が適度でありスクリーン印刷法等による印刷に対する適性が良好であるという点からジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテルおよびそれらの混合溶剤が特に好ましい。 【0030】 アルコール系溶剤としては、OH基を有する溶剤を示し、例としてはブタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ヘプタノール、テキサノール、ブチルセロソルブ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等があげられるがこれらに限定されない。これらの中で、バインダ樹脂の配合成分の溶解性に優れ、連続印刷時の溶剤揮発性が適度でありスクリーン印刷法等による印刷に対する適性が良好であるという点から3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールが特に好ましい。」 「【0036】 <硬化剤> 本発明に用いることのできる硬化剤は、種類は限定しないが密着性、耐屈曲性、硬化性等からイソシアネート化合物およびエポキシ化合物が特に好ましい。さらに、これらのイソシアネート化合物として、イソシアネート基をブロック化したものを使用すると、貯蔵安定性が向上し、さらに好ましい。イソシアネート化合物およびエポキシ化合物以外の硬化剤としては、メチル化メラミン、ブチル化メラミン、ベンゾグアナミン、尿素樹脂等のアミノ樹脂、酸無水物、イミダゾール類、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の公知の化合物が挙げられる。これらの硬化剤には、その種類に応じて選択された公知の触媒あるいは促進剤を併用することもできる。硬化剤の配合量としては、バインダ樹脂100質量部に対して、0.5?50質量部が好ましく、1?30質量部がより好ましく、2?20質量部がさらに好ましい。」 「【0042】 <<本発明の導電性薄膜、導電性積層体およびこれらの製造方法>> 本発明における展延性導電性組成物は三次元成形加工が可能な樹脂フィルムに印刷法のような簡単な方法で回路パターンとなる塗膜を形成し、次いで塗膜に含まれる有機溶剤を揮散させ塗膜を乾燥させることにより、本発明の導電性薄膜を形成することができる。三次元成形加工が可能な樹脂フィルムは、三次元形状に成形される前は、三次元成形加工が可能な平坦なシートであり得る。樹脂フィルムは、無色透明のフィルムや着色された半透明フィルムなどの光透過性の樹脂フィルムでも、光不透過性の樹脂フィルムであってもよい。樹脂フィルムには、柔軟性に優れている種々の樹脂フィルムの使用が可能であり、例えば、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアミド系、熱可塑性エラストマー系などの樹脂フィルムが挙げられる。なかでも、透明性および成形性の双方が良好であるから、ポリカーボネート系フィルムまたはポリカーボネート/ポリブチルテレフタレートアロイフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いることが好ましい。フィルムの厚さは特に限定されないが、50?500μmのものが好ましい。フィルム厚が50μmより薄いと、回路パターンを印刷する際にフィルムのカールが発生する場合や成形時にフィルムの破損が発生する場合がある。また、フィルム厚が500μmより厚くなると、フィルムの成形性が低下し得る。 【0043】 本発明の展延性導電性組成物を基材上に塗布または印刷して塗膜を形成し、展延性導電性組成物を基材上に塗布または印刷する方法はとくに限定されないが、スクリーン印刷法により印刷することが工程の簡便さおよび展延性導電性組成物を用いて電気回路を形成する業界で普及している技術である点から好ましい。」 「【0056】 <実施例1> バインダ樹脂として東洋紡社製ウレタン樹脂UR-3210を500部(有機溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルを(400部含む))、導電性粉体として球状銀粉(D=0.9μm)を1000部、硬化剤としてブロックイソシアネートを15部、硬化触媒として錫触媒を2部、カーボンブラック粉を10部、プロピレングリコールを10部添加して遊星式攪拌機で攪拌し、三本ロール混練り機に2回通して分散した。その後粘度調整としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル50部で希釈した。得られた導電性組成物をPCフィルムに対してそれぞれ所定のパターンに印刷後、130℃×30分間熱風乾燥機にて乾燥し、導電性薄膜を得た。その後、本導電性薄膜を用いて、比抵抗、密着性、などの物性を測定し評価を行った。評価結果を表1に示した。 【0057】 <実施例2?10> 導電性組成物の樹脂および配合を変えて実施例2?11を実施した。導電性組成物の配合および評価結果を表1に示した。実施例においては良好な塗膜物性、ケミカルアタックなしの評価を得ることができた。 【0058】 【表1】 【0059】 なお、表1において、バインダ樹脂、導電性粉体、有機溶剤、カーボン、その他配合物は以下のものを用いた。 バインダ樹脂A(1):ポリウレタン樹脂 (本件特許出願人から得られる) UR-3210のジプロピレングリコールモノメチルエーテル溶剤置換品(重量平均分子量:40,000 ガラス転移温度:-3℃) バインダ樹脂A(2):ポリエステル樹脂 (本件特許出願人から得られる) バイロンGK890(重量平均分子量:17.000 ガラス転移温度:20℃) バインダ樹脂A(3):フェノキシ樹脂 InChem社製 PKFE(重量平均分子量:60,000 ガラス転移温度:96℃) バインダ樹脂A(4):アクリル樹脂 共栄社化学性 オリコックスKC-7000(重量平均分子量:30.000 ガラス転移温度:56℃) バインダ樹脂A(5):ポリビニルアセタール樹脂 積水化学社 製BH-5(重量平均分子量:53,000 ガラス転移温度:67℃) 導電性粒子b(1):球状銀粉(D:0.9μm)、真球度0.95、0.5D-.2.0Dに入る個数体積分布85% 導電性粒子B(1):凝集銀(D:1.3μm) 導電性粒子B(2):フレーク状銀粉(D:3.3μm) 有機溶剤C(1):東邦化学(株)製ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ハイソルブDPM) 有機溶剤C(2):クラレ(株)製 3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(ソルフィット) その他の有機溶剤(1):(株)ダイセル製エチルジグリコールアセテート(EDGAC) 無機フィラー(1):ライオン社製ケッチェンブラック(ECP-600JP) 無機フィラー(2):日本アエロジル製 AEROSIL R972 無機ファイラー(3):東亜合成製 IXE-100 硬化剤D:ブロックイソシアネート バクセンデン製BI7960 硬化触媒:共同薬品(株)製KS1260 分散剤:ビックケミー製 Disperbyk192 添加剤:ビックケミー製 BYK-410 展延性(30%伸び)は変形率130%:(変形後長さ/初期長さ)×100[%]を意味する。 展延性(60%伸び)は変形率160%:(変形後長さ/初期長さ)×100[%]を意味する。」 「【0062】 <応用実施例> 厚さ400μmのポリカーボネート(PC)フィルム(三菱ガス化学(株)製FE-2000)に実施例1にて得られた展延性導電性組成物を用いて所定の回路パターンを、乾燥膜厚が15μm±3μmとなるように印刷し、所定の条件にて乾燥した。次いで得られた回路パターン付きポリカーボネートフィルムを、直径30mmの半球形状の雄型/雌型により曲面加工を行った。得られた回路パターンに断線は無く、導通不良は発生しなかった。」 以上の記載、特に請求項1、段落【0056】?【0060】の実施例1の記載及び段落【0062】の応用実施例の記載から、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認める。 「ポリカーボネートフィルム上に導電性薄膜を備え、曲面を有する基材表面に回路パターンを形成するための導電性組成物であって、 バインダ樹脂として東洋紡社製ウレタン樹脂UR-3210を500部(有機溶剤としてジプロピレングリコールモノメチルエーテルを(400部含む))、導電性粉体として球状銀粉(D=0.9μm)を1000部、硬化剤としてブロックイソシアネート バクセンデン製BI7960を15部、硬化触媒として錫触媒を2部、カーボンブラック粉を10部、プロピレングリコールを10部、粘度調整としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル50部からなる導電性組成物。」(以下、「甲1発明」という。) (2) 甲第2号証の記載事項 甲第2号証には次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、加飾シート及びその製造方法に関する。特に、本発明は表面に装飾模様が施された成形品を形成するために用いられる加飾シート及びその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 表面に装飾模様が施された合成樹脂パネル等の成形品が広く用いられている。装飾模様は、より高級感が得られるものに移行してきており、近年、3次元的な立体感が表現された意匠を有する装飾模様を施すことが試みられている。」 (3) 参考資料1の記載事項 参考資料1には次の事項が記載されている。 「【0060】 上記高分子量ポリウレタンポリオールの市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロンUR1350(Mn=30,000,Tg=3℃,水酸基価=46,酸価<1,線形タイプ)、バイロンUR1400(Mn=40,000,Tg=83℃,水酸基価=2,酸価<1,線形タイプ)、バイロンUR3210(Mn=40,000,Tg=-3℃,水酸基価=3,酸価<1,線形タイプ)、バイロンUR5537(Mn=20,000,Tg=34℃,水酸基価=17,酸価<1,線形タイプ)、及び、バイロンUR9500(Mn=25,000,Tg=15℃,水酸基価=5,酸価<1,線形タイプ);三井化学ポリウレタン社製のタケラックE158(水酸基価=20,酸価<3)、タケラックE551T(水酸基価=30,酸価<3)、及び、タケラックA2789(水酸基価=10,酸価<2)等が挙げられる。 (4) 参考資料2の記載事項 参考資料2には次の事項が記載されている。 「II. 商品ラインナップ 用途に合わせ多種ラインナップしており、推奨用途は自動車、PCM、工業用途に加え、プラスチックコーティングにも実績があります。」 との記載に続き、 「脂肪族イソシアネート」の商品ラインナップとして、品番「7960」の記載があり、 そのNCO当量は「410」である。 (5) 参考資料3の記載事項 参考資料3には次の事項が記載されている。 「【0026】 ブロックイソシアネートは、ベースイソシアネートとブロック剤とから構成される。ベースイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、および脂環族ポリイソシアネートが好ましい。」 「【0029】 ブロックイソシアネートの具体例としては、デスモジュールBL3475 BA/SN(住化コベストロウレタン社製)、デスモジュールBL3575/1 MPA/SN、デスモジュールPL350(住化コベストロウレタン社製)、デュラネートMF-K60B(旭化成ケミカルズ社製)、SBB-70P(旭化成ケミカルズ社製)、SBN-70D(旭化成ケミカルズ社製)、SBF-70E(旭化成ケミカルズ社製)、MF-B60B(旭化成ケミカルズ社製)、17B-60P(旭化成ケミカルズ社製)、TPA-B80E(旭化成ケミカルズ社製)、E402-B80B(旭化成ケミカルズ社製)、BI-7950(Baxenden社製)、BI-7951(Baxenden社製)、BI-7960(Baxenden社製)、BI-7961(Baxenden社製)、BI-7963(Baxenden社製)、BI-7982(Baxenden社製)、BI-7990(Baxenden社製)、BI-7991(Baxenden社製)、BI-7992(Baxenden社製)、DP9C/437(Baxenden社製)、カレンズMOI-BM(昭和電工社製)、カレンズMOI-BP(昭和電工社製)等が挙げられる。」 2 対比・判断 (1) 本件発明1について 本件発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ポリカーボネートフィルム」、「導電性薄膜」、「回路パターン」はそれぞれ、本件発明1の「ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム」、「導電層」、「導電回路」に相当する。 また、甲1発明の「バインダ樹脂」、「導電性粉体」、「有機溶剤」は、本件発明1の「樹脂(A)」、「導電性微粒子(B)」、「溶剤(C)」に相当する。 さらに、甲1発明の「バインダ樹脂」は「東洋紡社製ウレタン樹脂UR-3210」であるが、参考資料1の段落【0060】の記載から、「Mn=40,000」である。 また、甲1発明におけるバインダ樹脂である「東洋紡社製ウレタン樹脂UR-3210」の含有割合は、導電性組成物に含まれる固形分全量、つまり、東洋紡社製ウレタン樹脂UR-3210(100部)、導電性粉体として球状銀粉(1000部)、硬化剤としてブロックイソシアネート バクセンデン製BI7960(15部)、硬化触媒として錫触媒(2部)、カーボンブラック粉(10部)から算出すると、100/(100+1000+15+2+10)≒8.9質量%となるから、本件発明1の「前記樹脂(A)の含有割合が、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8質量%以上40質量%以下」との特定事項を満たしている。 以上の点をふまえ、本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、 「ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムの製造用の導電性組成物であって、 樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、 前記樹脂(A)の含有割合が、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8質量%以上40質量%以下である、 成形フィルム製造用導電性組成物。」 で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点1) 樹脂(A)の平均分子量に関し、本件発明1は、「重量平均分子量が20,000以上600,000以下」であるのに対し、甲1発明は、「Mn=40,000」である点。 (相違点2) 溶剤(C)に関し、本件発明1は、「溶剤(C')を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含み、前記溶剤(C')が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である」のに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 事案に鑑み、まず、相違点2について検討する。 甲第1号証の段落【0029】、【0030】には、有機溶剤として、グリコールエーテル系溶剤、アルコール系溶剤が多数列記されており、その中には、本件発明1で特定する溶剤(C’)にあたるものも含まれる。 しかしながら、本件発明1の溶剤(C’)は、本件明細書の段落【0042】の記載、 「【0042】 <溶剤(C)> 本実施の導電性組成物は、溶剤(C)が、下記条件(1)及び条件(2)を満たす溶剤(C’)を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含むことを特徴とする。 (1)沸点180℃以上270℃以下である (2)ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の極性パラメータδpが0≦δp≦5.0である、および、ハンセン溶解性パラメータ(HSP)の水素結合パラメータδhが9.8≦δh≦24.0である、のうち少なくとも一方を満たす」 との条件を満たす溶剤(C’)を選択し用いることで、「引張力による導電性の低下が抑制された成形フィルムを製造可能な成形フィルム用導電性組成物、引張力による導電性の低下が抑制された成形フィルム、及び、導電性に優れた成形体及びその製造方法を提供する」(段落【0007】)との格別の効果を奏するものである。 してみると、甲第1号証の段落【0029】、【0030】に、本件発明1の溶剤(C’)にあたるものがいくつか記載されているとしても、それは、多数の有機溶剤が列記されたものの中に記載があったにすぎず、また、甲第1号証の段落【0029】、【0030】に記載の溶剤の中から、特に、本件発明1の溶剤(C’)にあたる溶剤を選択し用いる動機付けもない。 さらに、甲第2号証の記載を見ても、甲1発明において、本件発明1の溶剤(C’)にあたる溶剤を適用することを導くこともできない。 この点について、特許異議申立人は特許異議申立書の第33頁において、甲第1号証の実施例1では「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」と「プロピレングリコール」の二種類の溶剤が用いられており、いずれも本件発明1の溶剤(C’)に相当する旨主張するが、上述のとおり、本件訂正により、本件発明1の溶剤(C’)には、「ジプロピレングリコールモノメチルエーテル」は含まれなくなった。また、甲第1号証の実施例1で用いられている「プロピレングリコール」は、有機溶剤中の割合が10/(400+10)≒2.4%にすぎず、やはり、上記相違点を満たすものではない。 さらに、特許異議申立人の意見書における主張については、上記検討のとおりである。 よって、特許異議申立人の主張は採用できない。 したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、あるいは、甲1発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2) 本件発明2ないし13に係る発明について 本件発明2ないし13はいずれも、直接又は間接的に請求項1を引用する発明であり、本件発明1の特定事項を全て有するものである。 そして、上記(1)のとおり、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではなく、また、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明2ないし7、10もまた、甲第1号証に記載された発明ではなく、さらに、本件発明1の特定事項を全て含む発明である本件発明2ないし13もまた、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第7 結論 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムの製造用の導電性組成物であって、 樹脂(A)と、導電性微粒子(B)と、溶剤(C)と、を含有し、 前記樹脂(A)の重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、 前記樹脂(A)の含有割合が、導電性組成物に含まれる固形分全量に対し8質量%以上40質量%以下であり、 前記溶剤(C)が、溶剤(C’)を、前記溶剤(C)100質量部中40質量部以上含み、前記溶剤(C’)が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ベンジルアルコール、テトラリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ターピネオール、トリアセチン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテルよりなる群から選択される1種以上である、成形フィルム用導電性組成物。 【請求項2】 前記導電性微粒子(B)が、銀粉、銅粉、銀コート粉、銅合金粉、導電性酸化物粉、およびカーボン微粒子より選択される1種以上の導電性微粒子を含む、請求項1に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項3】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される1種以上の置換基を有する、請求項1又は2に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項4】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される1種以上の反応性官能基を分子中に2個以上有し、更に、前記樹脂(A)が有する反応性官能基と架橋形成しうる反応性官能基を1分子中に2つ以上有する架橋剤(D)を含有する、請求項1?3のいずれか一項に記載の成形フィルム用導電性組成物。 【請求項5】 前記樹脂(A)が、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、および酸無水物基より選択される第1の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、重量平均分子量が20,000以上600,000以下であり、 成形フィルム用導電性組成物が、更に架橋剤(D)を含有し、前記架橋剤(D)が、前記第1の反応性官能基と架橋形成しうる第2の反応性官能基を1分子中に2つ以上有し、 前記架橋剤(D)の第2の反応性官能基の物質量の総量F_(D)(mol)と、前記樹脂(A)の質量M_(A)(g)との比が下記式(1)を満たす、請求項1?4のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物。 式(1) 5.0×10^(-5) ≦ F_(D)/M_(A) ≦ 6.0×10^(-4) 【請求項6】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に導電層を備え、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。 【請求項7】 前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が ベースフィルムの破断伸び率>導電層の破断伸び率 を満たす、請求項6に記載の成形フィルム。 【請求項8】 ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に、加飾層と、導電層とを有する、凹凸面や曲面を有する基材表面に導電回路を形成するための成形フィルムであって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形フィルム。 【請求項9】 前記ベースフィルムの軟化点温度における各層の破断伸び率の関係が ベースフィルムの破断伸び率>加飾層の破断伸び率>導電層の破断伸び率 を満たす、請求項8に記載の成形フィルム。 【請求項10】 凹凸面や曲面を有する基材表面に、導電層が積層した成形体であって、 前記導電層が、請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物の硬化物である、成形体。 【請求項11】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 基材上に前記成形フィルムを配置する工程と、 オーバーレイ成形法により、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む、成形体の製造方法。 【請求項12】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 前記成形フィルムを所定の形状に成形する工程と、 成形後の前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、 射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルムと前記基材とを一体化する工程と、を含む、成形体の製造方法。 【請求項13】 請求項1?5のいずれか一項記載の成形フィルム用導電性組成物を、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び、ポリエチレンテレフタレートより選択されるフィルム、又はこれらの積層フィルムより選択されるベースフィルム上に印刷し、乾燥することにより成形フィルムを製造する工程と、 前記成形フィルムを、射出成形用の型内に配置する工程と、 射出成形により基材を成形すると共に、前記成形フィルム中の導電層を基材側に転写する工程と、を含む、成形体の製造方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-06-08 |
出願番号 | 特願2018-80514(P2018-80514) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 121- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 南 宏樹 |
特許庁審判長 |
加藤 友也 |
特許庁審判官 |
大畑 通隆 植前 充司 |
登録日 | 2019-05-10 |
登録番号 | 特許第6521138号(P6521138) |
権利者 | 東洋インキSCホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 成形フィルム用導電性組成物、成形フィルム、成形体およびその製造方法 |
代理人 | 家入 健 |
代理人 | 家入 健 |
代理人 | 秦 恵子 |
代理人 | 秦 恵子 |