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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G09F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G09F
管理番号 1364908
異議申立番号 異議2019-700106  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-02-08 
確定日 2020-07-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6370967号発明「画像表示装置の製造方法、光硬化性樹脂組成物及び光透過性硬化樹脂層」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6370967号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、9、10について訂正することを認める。 特許第6370967号の請求項1ないし4、7、8に係る特許を維持する。 特許第6370967号の請求項5、6、9、10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6370967号(請求項の数10。以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項10に係る発明は、平成29年6月28日にした特許出願(以下、「本件特許出願」という。)に係る発明である。そして、平成30年7月20日にその特許権の設定の登録がされ、同年8月8日にその特許掲載公報が発行された。
特許異議申立人は、平成31年2月8日に、請求項1ないし請求項10に係る特許について特許異議の申立てをした。
審判長は、同年4月19日付けで、請求項1ないし請求項10に係る特許について取消理由の通知をした。これに対して、特許権者は、令和元年6月24日に、特許請求の範囲の訂正(以下、「第1次訂正」という。)を請求するとともに、意見書を提出した。特許異議申立人は、同年8月6日に意見書を提出した。
審判長は、同年9月27日付けで、第1次訂正後の請求項1ないし請求項10に係る特許について取消理由(以下、「本件取消理由」という。)の通知(決定の予告)をした。これに対して、特許権者は、同年12月2日に、特許請求の範囲の訂正(以下、「本件訂正」という。)を請求するとともに、意見書を提出した。特許異議申立人は、令和2年1月22日に意見書を提出した。
審判長は、同年3月16日付けで、本件訂正の請求について訂正拒絶理由の通知をした。これに対して、特許権者は、同年4月17日に、本件訂正の請求書及び同請求書に添付した訂正特許請求の範囲について補正(以下、「本件補正」という。)をするとともに、意見書を提出した。
なお、本件訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により、第1次訂正の請求は取り下げられたものとみなす。

第2 訂正の適否
1 本件補正の適否
(1)本件補正の内容
本件補正は、本件訂正の訂正事項3についての補正である。本件補正前及び本件補正後の訂正事項3は、以下のとおりである。

ア 本件補正前
「特許請求の範囲の請求項5に「上記工程(B)において、上記仮硬化樹脂層の硬化率が70?90%となるように、上記光硬化性樹脂組成物層に紫外線を照射して仮硬化させる、請求項1?4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法」とある記載を、
「光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記工程(B)において、上記仮硬化樹脂層の硬化率が80?90%となるように、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で紫外線照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。」に訂正する。
(請求項5の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する。)」

イ 本件補正後
「特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(請求項5の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する。)」

(2)本件補正についての当合議体の判断
本件補正は、訂正事項3を、請求項5の記載を変更する訂正から、請求項5を削除する訂正へと変更するものである。そして、本件補正後は、審理の対象となる請求項5がなくなるだけであり、審理の対象が本件補正前と比べて拡張されたり変更されたりすることはないから、本件補正は、本件訂正の請求書の要旨を変更するものではない。
したがって、本件補正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第131条の2第1項の規定に適合する。
そこで、本件補正を認めることとし、以下では、本件補正後の本件訂正を改めて「本件訂正」という。

2 本件訂正の内容
本件訂正は、本件訂正前(本件特許の特許権の設定の登録の時をいう。以下同じ。)の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10についての訂正である。そして、本件訂正前の請求項2ないし請求項8は、本件訂正前の請求項1の記載を引用して記載されているから、本件訂正前の請求項1ないし請求項8は、一群の請求項である。
したがって、本件訂正の請求は、本件訂正前の請求項1ないし請求項10について請求項ごとにする訂正の請求であり、かつ、本件訂正前の請求項1ないし請求項8からなる一群の請求項ごとにする訂正の請求である。

(1)本件訂正前後の特許請求の範囲の記載
本件訂正前及び本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10の記載は、以下のとおりである。下線は、訂正箇所を示すために当合議体が付した。

ア 本件訂正前
「【請求項1】
光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、
上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、
画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、
上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、
上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、
上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーは、環構造として、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び複素環の少なくとも1種を有する、請求項1記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2000?320000Paである、請求項1又は2記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記光硬化性樹脂組成物は、上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8?10質量%含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項5】
上記工程(B)において、上記仮硬化樹脂層の硬化率が70?90%となるように、上記光硬化性樹脂組成物層に紫外線を照射して仮硬化させる、請求項1?4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項6】
上記工程(B)において、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行う、請求項1?5のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項7】
上記工程(D)において、上記光透過性硬化樹脂層の硬化率が90%以上となるように、上記仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させる、請求項1?6のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
上記画像表示部材が、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル又はタッチパネルである、請求項1?7のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計で31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、
上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8?19質量%含有し、
硬化後のせん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、光硬化性樹脂組成物。
【請求項10】
アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計で31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8?19質量%含有する光硬化性樹脂組成物を硬化してなり、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、光透過性硬化樹脂層。」

イ 本件訂正後
「【請求項1】
光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、
上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、
画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、
上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、
上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有し、
上記工程(B)において、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーは、環構造として、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び複素環の少なくとも1種を有する、請求項1記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2400?10500Paである、請求項1又は2記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記光硬化性樹脂組成物は、上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8?10質量%含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
上記工程(D)において、上記光透過性硬化樹脂層の硬化率が90%以上となるように、上記仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させる、請求項1?4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
上記画像表示部材が、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル又はタッチパネルである、請求項1?4、7のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)」

(2)本件訂正の請求書に記載された訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。」とある記載を、
「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有し、上記工程(B)において、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項2?4、7、8も同様に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「上記光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2000?320000Paである、請求項1又は2記載の画像表示装置の製造方法。」と記載されているのを、「上記光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2400?10500Paである、請求項1又は2記載の画像表示装置の製造方法。」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4、7、8も同様に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
請求項5の記載を引用する請求項7、8も同様に訂正する。

エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6を削除する。

オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(3)その他の訂正事項
本件訂正の請求書には記載されていないが、本件訂正前後の特許請求の範囲の記載を対比すると、本件訂正は、さらに以下の訂正事項を含むものと認められる。

ア 訂正事項A
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、「請求項1?4のいずれか1項に記載の」に訂正する。
請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。

イ 訂正事項B
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれか1項に記載の」と記載されているのを、「請求項1?4、7のいずれか1項に記載の」に訂正する。

3 本件訂正についての当合議体の判断
本件訂正は、本件訂正前の請求項1ないし請求項10について請求項ごとに請求されたものであり、かつ、本件訂正前の請求項1ないし請求項8からなる一群の請求項ごとに請求されたものである。
これらの請求項は、いずれも特許異議の申立てがされた請求項であるから、本件訂正に特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の要件(独立特許要件)が課されることはない。
その他の訂正要件についての判断は、以下のとおりである。

(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
(ア)まず、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し」という記載を、「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有し」という記載に変更して、本件訂正後の請求項1の記載とする訂正である。
この訂正は、第1に、「光硬化性樹脂組成物」が「ラジカル重合性成分」及び「可塑剤」を含有するだけでなく、「光重合開始剤」も含有することを特定することにより、第2に、「光硬化性樹脂組成物」が含有する「アクリル系オリゴマー」の量が「6?11質量%」であることを特定することにより、「光硬化性樹脂組成物」の組成を限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。

(イ)次に、訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである」という記載を、「上記工程(B)において、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである」という記載に変更して、本件訂正後の請求項1の記載とする訂正である。
ここで、この訂正をする前の請求項1の記載では、「光透過性硬化樹脂層」の「せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである」という結果をもたらす工程として、「光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)」と「仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させる」「工程(D)」とが特定されている。
一方、この訂正をした後の請求項1の記載では、「光透過性硬化樹脂層」の「せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである」という結果をもたらす工程として、「光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)」と「仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させる」「工程(D)」とが特定されているだけでなく、「工程(B)においてUV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行」うことも特定されている。
すなわち、この訂正は、「光透過性硬化樹脂層」の「せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである」という結果をもたらす工程としての「工程(B)」及び「工程(D)」のうち、「工程(B)」で行われる「光照射」の光源、照度及び積算光量を限定する訂正である。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。

新規事項の追加について
訂正事項1は、「光硬化性樹脂組成物」の組成を限定する訂正(前記ア(ア))と、「光照射」の光源、照度及び積算光量を限定する訂正(前記ア(イ))とを含み、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定により、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。

(ア)「光硬化性樹脂組成物」の組成を限定する訂正
この訂正は、「光硬化性樹脂組成物」が「光重合開始剤」を含有することを特定するとともに、「光硬化性樹脂組成物」が含有する「アクリル系オリゴマー」の量が「6?11質量%」であることを特定する訂正である。
本件特許明細書(本件特許の願書に添付した明細書をいう。以下同じ。)には、光硬化性樹脂組成物は光重合開始剤を含有するものが好ましい旨の記載(【0022】)や、光重合開始剤は公知の光ラジカル重合開始剤を使用できる旨の記載(【0039】)がある。そして、光重合開始剤を含有する光硬化性樹脂組成物の実施例が、その具体的な組成とともに記載されており(【0075】ないし【0105】及び【0108】【表1】)、その中には、アクリル系オリゴマーの含有量が6質量%(実施例2)、10質量%(実施例1)、10.85質量%(実施例9)又は11質量%(実施例4ないし実施例8)である光硬化性樹脂組成物が含まれている。
この訂正は、本件特許明細書のこれらの記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

(イ)「光照射」の光源、照度及び積算光量を限定する訂正
この訂正は、本件訂正前の請求項6の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更について
訂正事項1は、「光硬化性樹脂組成物」の組成を限定する訂正(前記ア(ア))と、「光照射」の光源、照度及び積算光量を限定する訂正(前記ア(イ))とを含む。
このように、「光硬化性樹脂組成物」の組成を限定し、また、「光照射」の光源、照度及び積算光量を限定したからといって、本件訂正前の請求項に係る発明の目的に含まれない新たな目的を達成したり、本件訂正前の請求項に係る発明の課題に含まれない新たな課題を解決したりすることになるとは認められない。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項3の「光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2000?320000Paである」という記載を、「光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2400?10500Paである」という記載に変更して、本件訂正後の請求項3の記載とする訂正である。
この訂正は、「光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率」の範囲を、「2000?320000Pa」という広い範囲から「2400?10500Pa」という狭い範囲に限定する訂正である。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。

新規事項の追加について
訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする訂正であるから、同条第9項で準用する同法第126条第5項の規定により、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。
本件特許明細書には、光硬化性樹脂組成物の実施例が、その具体的な組成とともに記載されており(【0075】ないし【0105】及び【0108】【表1】)、その中には、光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2400Pa(実施例2及び実施例6)、2500Pa(実施例1、実施例7及び実施例8)、2900Pa(実施例5)、8500Pa(実施例9)及び10500Pa(実施例4)である光硬化性樹脂組成物が含まれている。
訂正事項2は、本件特許明細書のこれらの記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の範囲の実質的拡張又は変更について
訂正事項2は、「光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率」の範囲を限定する訂正である。
このように、「光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率」の範囲を限定したからといって、本件訂正前の請求項に係る発明の目的に含まれない新たな目的を達成したり、本件訂正前の請求項に係る発明の課題に含まれない新たな課題を解決したりすることになるとは認められない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。

(3)訂正事項3ないし訂正事項6
訂正事項3ないし訂正事項6は、それぞれ本件訂正前の請求項5、請求項6、請求項9及び請求項10を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。そして、請求項を削除する訂正であることから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。

(4)訂正事項A及び訂正事項B
訂正事項Aは、本件訂正前の請求項7の「請求項1?6のいずれか1項に記載の」という記載を、「請求項1?4のいずれか1項に記載の」という記載に変更して、本件訂正後の請求項7の記載とする訂正である。
訂正事項Bは、本件訂正前の請求項8の「請求項1?7のいずれか1項に記載の」という記載を、「請求項1?4、7のいずれか1項に記載の」という記載に変更して、本件訂正後の請求項8の記載とする訂正である。
すなわち、訂正事項A及び訂正事項Bは、いずれも、記載を引用する請求項の数を減らす訂正である。
したがって、訂正事項A及び訂正事項Bは、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項(特許請求の範囲の減縮)を目的とする訂正である。そして、記載を引用する請求項を減らす訂正であることから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかであるし、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことも明らかである。

4 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、また、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし請求項10について訂正することを認める。

第3 本件特許に係る発明
前記第2のとおり、本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1ないし請求項10は、本件訂正後の特許請求の範囲(前記第2の2(1)イ)の記載のとおりである。そして、本件特許の請求項1ないし請求項10に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明10」といい、本件発明1ないし本件発明10を併せて「本件発明」という。)は、各請求項に記載された事項によって特定されるとおりのものである。
なお、本件発明5、本件発明6、本件発明9及び本件発明10は、削除された請求項5、請求項6、請求項9及び請求項10に係るものであるから、実際には存在しない。
また、本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、いずれも本件発明1の構成を全て含む。

第4 本件取消理由の概要
以下では、第1次訂正後の請求項1ないし請求項10に係る発明を「訂正発明1」ないし「訂正発明10」という。
また、以下の理由3及び理由4に引用された文献は、後記第5の4(1)に掲げるとおりである。

1 理由1(明確性要件違反)
訂正発明10は、明確でない。
したがって、第1次訂正後の請求項10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 理由2(サポート要件違反)
本件特許明細書の記載によれば、訂正発明1ないし訂正発明5及び訂正発明7ないし訂正発明10が解決しようとする課題は、「光硬化性樹脂組成物の仮硬化工程後、画像表示部材と光透過性光学部材とを貼合わせる際、画像表示部材や光透過性光学部材への押圧によるダメージ低減を考慮すると、光硬化性樹脂組成物がより低弾性であることが好ましいが、光硬化性樹脂組成物の低弾性化を実現しようとすると、光硬化性樹脂組成物の架橋密度が低下してしまい、また、仮硬化状態の光硬化性樹脂組成物層の最表面が硬化不十分な領域となり、いわゆるリフティング現象が起きてしまうことから、これを抑制できる画像表示装置の製造方法を提供すること」であると認められる。
しかし、本件特許明細書の記載によっては、又は技術常識に照らしても、訂正発明1ないし訂正発明5及び訂正発明7ないし訂正発明10で規定される「環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー」の含有量の範囲である「5?19質量%」又は「8?10質量%」の全てにおいて、前記の課題が解決できるということを、当業者が認識できるということはできないから、訂正発明1ないし訂正発明5及び訂正発明7ないし訂正発明10は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
したがって、第1次訂正後の請求項1ないし請求項5及び請求項7ないし請求項10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 理由3(新規性欠如)
訂正発明9及び訂正発明10は、甲1文献、甲2文献、甲3文献、甲4文献又は甲5文献に記載された発明である。
すなわち、訂正発明9及び訂正発明10は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、第1次訂正後の請求項9及び請求項10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

4 理由4(進歩性欠如)
訂正発明1ないし訂正発明5及び訂正発明7ないし訂正発明10は、以下に述べるとおり、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、第1次訂正後の請求項1ないし請求項5及び請求項7ないし請求項10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(1)理由4の1(甲1文献に記載された発明に基づく進歩性欠如)
訂正発明1ないし訂正発明5、訂正発明7及び訂正発明8は、甲1文献に記載された発明と、甲2文献、甲6文献及び引用文献1に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)理由4の2(甲2文献に記載された発明に基づく進歩性欠如)
訂正発明1ないし訂正発明5、訂正発明7及び訂正発明8は、甲2文献に記載された発明と、甲6文献及び引用文献1に記載された技術事項とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)理由4の3(甲1文献ないし甲5文献に記載された発明に基づく進歩性欠如)
訂正発明9及び訂正発明10は、甲1文献、甲2文献、甲3文献、甲4文献又は甲5文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 当合議体の判断
1 理由1(明確性要件違反)について
本件訂正前の請求項10が本件訂正により削除された結果、第1次訂正後の請求項10に係る特許についての取消理由である理由1は、その対象が存在しないものとなった。

2 理由2(サポート要件違反)について
本件訂正前の請求項5、請求項9及び請求項10が本件訂正により削除された結果、理由2のうち、第1次訂正後の請求項5、請求項9及び請求項10に係る特許に関する部分は、その対象が存在しないものとなった。
本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許について検討すると、以下のとおりである。

(1)特許法第36条第6項は、「特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。
特許請求の範囲の記載が、この規定に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断するべきである(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)第10042号))。

(2)本件特許の特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は、前記第2の2(1)イのとおりである。本件特許の請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8は、いずれも本件特許の請求項1の記載を引用して記載されている。

(3)本件特許明細書の記載ア 本件特許明細書には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光硬化性樹脂組成物の仮硬化工程後、画像表示部材と光透過性光学部材とを貼合わせる際は、仮硬化した接着剤の表層部は、できるだけ平坦であることが、貼合わせる部材との接着力をより効果的に発現させることや、接着面積を確保する観点から好ましい。また、被着体である画像表示部材や光透過性光学部材への押圧によるダメージ低減を考慮すると、より小さな貼合せ圧力で貼合せできることが好ましい。すなわち、光硬化性樹脂組成物がより低弾性であることが好ましい。
【0007】
しかしながら、光硬化性樹脂組成物の低弾性化を実現しようとすると、光硬化性樹脂組成物の架橋密度が低下してしまう。また、仮硬化状態の光硬化性樹脂組成物層の最表面が硬化不十分な領域となると、いわゆるリフティング現象が起きてしまう。このリフティング現象は、硬化不十分な領域に存在する重合性モノマー等の未硬化成分が、硬化状態領域の樹脂に染み込んで膨潤する結果、シワが生じてしまうことに起因すると考えられる。
【0008】
本技術は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、リフティング現象を抑制できる画像表示装置の製造方法を提供する。また、光硬化性樹脂組成物及び光透過性硬化樹脂層を提供する。」

「【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、光硬化性樹脂組成物中にアクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有させることにより、上記課題を解決できることを見出した。
【0010】
すなわち、本技術に係る画像表示装置の製造方法は、以下の工程(A)?(D)を有し、光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである。
<工程(A)>
光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程。
<工程(B)>
光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程。
<工程(C)>
画像表示部材と光透過性光学部材とを仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程。
<工程(D)>
画像表示部材と光透過性光学部材との間に配置された仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程。」

「【発明の効果】
【0013】
本技術は、光硬化性樹脂組成物中にアクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有させることにより、光硬化性樹脂組成物の仮硬化時に、光硬化性樹脂組成物の硬化不十分な領域に存在する未硬化成分が、嵩高い骨格である環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーによって、硬化状態の樹脂に染み込みにくくなるため、樹脂の膨潤を抑制することができる。すなわち、リフティング現象を抑制することができる。」

「【発明を実施するための形態】
…(中略)…
【0022】
光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分と、光重合開始剤と、可塑剤とを含有するものが好ましい。
…(中略)…
【0024】
アクリル系オリゴマーは、光硬化性樹脂組成物のベース材料であり、ポリイソプレン、ポリウレタン、ポリブタジエン等を骨格に有する(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましい。なお、本願明細書中、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートの両方を包含する。
…(中略)…
【0029】
アクリル系モノマーは、画像表示装置の製造工程において、光硬化性樹脂組成物に十分な反応性及び塗布性等を付与するための反応性希釈剤として使用される。アクリル系モノマーは、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを少なくとも含有し、さらにその他のアクリル系モノマーを含有していてもよい。光硬化性樹脂組成物中の環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、5?19質量%であり、5?12質量%とすることもでき、8?10質量%とすることもできる。このような構成とすることにより、光硬化性樹脂組成物層の仮硬化時に、リフティング現象を抑制することができる。」

「【実施例】
【0075】
以下、本技術の実施例について説明する。本技術では、上述した第1の実施の形態に係る画像表示装置の製造方法により、画像表示装置を作製した。そして、仮硬化樹脂層のリフティング現象の有無と、光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率について評価した。なお、本技術は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0076】
本実施例では、以下の化合物を用いた。
…(中略)…
【0077】
[実施例1]
(工程(A):光硬化性樹脂組成物層を形成する工程)
45(w)×80(l)×0.4(t)mmの大きさのガラス板を用意し、このガラス板の周縁部全域に、乾燥厚で40μmとなるように4mm幅の遮光層を、熱硬化タイプの黒色インク(MRXインキ、帝国インキ製造社製)を用いて、スクリーン印刷法により塗布し、乾燥させることにより、遮光層付きガラス板を用意した。
【0078】
以下の各成分を均一に混合して光硬化性樹脂組成物を調製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:10質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:8.5質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート:合計で27質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で51質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で3質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.5質量部
【0079】
調製した光硬化性樹脂組成物を、樹脂用ディスペンサーを用いて遮光層付きガラス板の遮光層形成面の全面に吐出し、厚さ平均150μmの光硬化性樹脂組成物層を形成した。
【0080】
(工程(B):仮硬化樹脂層を形成する工程)
上記光硬化性樹脂組成物層に対して、紫外線照射装置(UV-LED、製品名H-16LH4-V1-SM1、HOYACANDEOOPTRONICS社製)を用いて、積算光量が280mJ/cm^(2)となるように、170mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成した。
【0081】
仮硬化樹脂層の硬化率は、FT-IR測定チャートにおけるベースラインからの1640?1620cm^(-1)の吸収ピーク高さを指標として求めたところ、約80?90%であった。
【0082】
(工程(C):貼合わせ工程)
40(W)×70(L)mmのサイズの液晶表示素子の偏光板が積層された面に、工程(B)で得たガラス板を、その仮硬化樹脂層側が偏光板側となるように載置し、ガラス板側からゴムローラで加圧して、ガラス板を貼り付けた。
【0083】
(工程(D):本硬化工程)
工程(C)で得られた液晶表示素子に対し、ガラス板側から、紫外線照射装置(メタルハライドランプ、USHIO社製)を用いて、積算光量が1000mJ/cm^(2)以上となるように、紫外線(200mW/cm^(2))を照射し仮硬化樹脂層を完全に硬化させ、光透過性硬化樹脂層を形成した。光透過性硬化樹脂層の硬化率は97%であった。これにより、液晶表示素子に、光透過性光学部材としてのガラス板が光透過性硬化樹脂層を介して積層された液晶表示装置が得られた。
【0084】
[実施例2]
実施例1における光硬化性樹脂組成物中の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:6質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:8質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート:合計で28質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で54.6質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で3質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.4質量部
【0085】
[実施例3]
実施例1における光硬化性樹脂組成物中の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:19質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:8質量部
イソボルニルアクリレート:6質量部
ベンジルアクリレート:5質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、メタクリル酸ヒドロキシプロピル:合計で17質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で40.6質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で3.8質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.6質量部
【0086】
[実施例4]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:11質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルアクリレート:8.8質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート:合計で25質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で52.85質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で2質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.35質量部
【0087】
[実施例5]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のジシクロペンタニルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0088】
[実施例6]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のイソボルニルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0089】
[実施例7]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のテトラヒドロフルフリルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0090】
[実施例8]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のベンジルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0091】
[実施例9]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:10.85質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルアクリレート:8.8質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート:合計で12質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で66質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で2質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.35質量部
【0092】
[実施例10]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:14質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:9質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート:合計で34.65質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で40質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で2質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.35質量部
【0093】
[比較例1]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:10.3質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソステアリルアクリレート:合計で36質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で51.4質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で2質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.3質量部
【0094】
[比較例2]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:10.1質量部
<環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー>
ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート:0.8質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート:合計で30質量部
<可塑剤>
両末端水酸基水素化ポリブタジエン(製品名:GI-1000、GI-3000、KRASOLLBH-P-3000)、テルペン樹脂:合計で55.7質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で3質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.4質量部
【0095】
[比較例3]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のラウリルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0096】
[比較例4]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のn-オクチルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0097】
[比較例5]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のオクチル/デシルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0098】
[比較例6]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のイソステアリルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0099】
[比較例7]
実施例4における光硬化性樹脂組成物の組成中、ジシクロペンテニルアクリレートを、等量のイソデシルアクリレートに変更したこと以外は、実施例4と同様に液晶表示装置を作製した。
【0100】
[比較例8]
実施例1における光硬化性樹脂組成物の組成を以下のように変更したこと以外は、実施例1と同様に液晶表示装置を作製した。
<アクリル系オリゴマー>
脂肪族ウレタンアクリレート:10.6質量部
<他のアクリル系モノマー>
4-ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-オクチルアクリレート、イソデシルアクリレート:合計で34質量部
<可塑剤>
テルペン樹脂:53質量部
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン:合計で2.1質量部
<添加剤>
3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤:合計で0.3質量部
【0101】
[比較例9]
比較例7の工程(B)において、積算光量が290mJ/cm^(2)となるように、344mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成したこと以外は、比較例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0102】
[比較例10]
比較例7の工程(B)において、積算光量が297mJ/cm^(2)となるように、513mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成したこと以外は、比較例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0103】
[比較例11]
比較例7の工程(B)において、積算光量が309mJ/cm^(2)となるように、852mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成したこと以外は、比較例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0104】
[比較例12]
比較例7の工程(B)において、積算光量が3696mJ/cm^(2)となるように、852mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成したこと以外は、比較例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0105】
[比較例13]
比較例7の工程(B)において、積算光量が1169mJ/cm^(2)となるように、170mW/cm^(2)強度の紫外線を照射することにより光硬化性樹脂組成物層を仮硬化させ、仮硬化樹脂層を形成したこと以外は、比較例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0106】
[仮硬化樹脂層のリフティング現象の有無]
各実施例及び比較例の工程(B)において、仮硬化樹脂層の外観を観察し、リフティング現象の発生の有無を評価した。リフティング現象が発生しなかった場合をOKと評価し、リフティング現象が発生した場合をNGと評価した。図3は、リフティング現象の評価がOKの場合の仮硬化樹脂層の外観の一例を示す平面図である。図4は、リフティング現象の評価がNGの場合の仮硬化樹脂層の外観の一例を示す平面図である。結果を下記表に示す。
【0107】
[光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率]
粘弾性測定装置を用いて、光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率を算出した。測定条件は、測定温度域20?25℃、振動数1Hz、歪み0.1%に設定した。結果を下記表に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
実施例1?10のように、光硬化性樹脂組成物がアクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計で31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%とを含有し、アクリル系モノマーが、環状の炭化水素基を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が1000?320000であることにより、リフティング現象を抑制できることが分かった。
【0110】
比較例1、3?7のように、光硬化性樹脂組成物が環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しない場合、リフティング現象が発生してしまうことが分かった。
【0111】
比較例2のように、光硬化性樹脂組成物中の環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量が5質量%未満である場合、リフティング現象が発生してしまうことが分かった。
【0112】
比較例8のように、光硬化性樹脂組成物が環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しない場合、本硬化後の光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が大きくなるように光硬化性樹脂組成物を調製しても、リフティング現象が発生してしまうことが分かった。
【0113】
比較例9?12のように、光硬化性樹脂組成物が環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有しない場合、光硬化性樹脂組成物を仮硬化する際に用いる紫外線の照度及び積算光量を変更しても、リフティング現象が発生してしまうことが分かった。」

イ 本件特許明細書の前記アの記載によれば、以下のことが認められる。
(ア)発明の詳細な説明には、光硬化性樹脂組成物の仮硬化工程後、画像表示部材と光透過性光学部材とを貼合わせる際は、画像表示部材や光透過性光学部材への押圧によるダメージ低減を考慮すると、光硬化性樹脂組成物が低弾性であることが好ましいこと(【0006】)、しかしながら、光硬化性樹脂組成物を低弾性化しようとすると、光硬化性樹脂組成物の架橋密度が低下するし、また、仮硬化状態の光硬化性樹脂組成物層の最表面が硬化不十分になると、いわゆるリフティング現象が起きるという課題があったこと(【0007】)、光硬化性樹脂組成物中にアクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有させると、光硬化性樹脂組成物の仮硬化時に、光硬化性樹脂組成物の硬化不十分な領域に存在する未硬化成分が、嵩高い骨格である環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーによって硬化状態の樹脂に染み込みにくくなるため、リフティング現象を抑制できることを見いだしたこと(【0009】及び【0013】)、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量は5?19質量%、5?12質量%又は8?10質量%にできること(【0010】及び【0029】)が記載されている。

(イ)発明の詳細な説明には、画像表示装置の製造方法に用いる光硬化性樹脂組成物の実施例1ないし実施例1及び比較例1ないし比較例13が記載されている(【0075】ないし【0113】)。
それらのうち、実施例1、実施例2、実施例4ないし実施例9及び比較例1ないし比較例13の光硬化性樹脂組成物は、いずれも、本件特許の請求項1に記載された構成のうち、「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」するという構成を備えている。
そして、比較例1ないし比較例13の光硬化性樹脂組成物は、アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを全く含有しないか(比較例2以外の比較例)、僅か(0.8質量%)しか含有せず(比較例2)、リフティング現象の発生の有無については、「NG」と評価されている。これに対して、実施例1、実施例2及び実施例4ないし実施例9の光硬化性樹脂組成物は、アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8.0質量%(実施例2)、8.5質量%(実施例1)又は8.8質量%(実施例4ないし実施例9)含有し、リフティング現象の発生の有無については、「OK」と評価されている。
そうすると、発明の詳細な説明に記載された実施例1、実施例2、実施例4ないし実施例9及び比較例1ないし比較例13の光硬化性樹脂組成物を比較対照することにより、「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」する「光硬化性樹脂組成物」について、アクリル系モノマーとして環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8.0?8.8質量%程度含有させたものは、含有させないものに比べて、リフティング現象の発生が抑制されることを理解することができる。
ここで、発明の詳細な説明には、「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」する「光硬化性樹脂組成物」の実施例しか記載されていないから、そのような「光硬化性樹脂組成物」に該当しないものについてまで、リフティング現象の発生が抑制されることを理解できるということはできない。

(ウ)以上のことを踏まえると、発明の詳細な説明には、光硬化性樹脂組成物中にアクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有させると、リフティング現象を抑制できることを見いだしたことが記載されているものの(前記(ア))、これは、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを所定量含有させるとリフティング現象を抑制できることを、光硬化性樹脂組成物全般について見いだしたという趣旨ではなく、特定の光硬化性樹脂組成物について見いだしたという趣旨に理解することが相当である。
すなわち、発明の詳細な説明には、「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」する「光硬化性樹脂組成物」について、アクリル系モノマーとして環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8.0?8.8質量%程度含有させたものは、含有させないものに比べて、リフティング現象の発生が抑制されることを見いだしたことが記載されていると認められる(前記(イ))。
そして、発明の詳細な説明には、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量が8.0?8.8質量%の実施例と0.8質量%の比較例2とが記載されており、また、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーの含有量の理論上の上限値は、55質量%-6質量%=49質量%と計算できる。

(4)発明の詳細な説明に記載された発明と特許請求の範囲に記載された発明との対比
前記(3)イ(ウ)のとおり、発明の詳細な説明には、「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」する「光硬化性樹脂組成物」について、アクリル系モノマーとして環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8.0?8.8質量%程度含有させたものは、含有させないものに比べて、リフティング現象の発生が抑制されることを見いだしたことが記載されている。
一方、本件特許の請求項1には「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、」「上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有し、」と記載されており、本件特許の請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8はいずれも本件特許の請求項1の記載を引用して記載されているから、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明にリフティング現象の発生を抑制できるものとして記載された発明に相当することは明らかである。

(5)理由2についてのまとめ
以上のとおりであるから、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。すなわち、本件発明1ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、発明の詳細な説明に記載したものである。
したがって、本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということはできない。

3 理由3(新規性欠如)について
本件訂正前の請求項9及び請求項10が本件訂正により削除された結果、第1次訂正後の請求項9及び請求項10に係る特許についての取消理由である理由3は、その対象が存在しないものとなった。

4 理由4(進歩性欠如)について
本件訂正前の請求項5が本件訂正により削除された結果、理由4の1及び理由4の2のうち、第1次訂正後の請求項5に係る特許に関する部分は、その対象が存在しないものとなった。
また、本件訂正前の請求項9及び請求項10が本件訂正により削除された結果、第1次訂正後の請求項9及び請求項10に係る特許についての取消理由である理由4の3は、その対象が存在しないものとなった。
本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許について検討すると、以下のとおりである。

(1)引用文献の一覧
本件取消理由の理由4に引用された文献は、以下のとおりである。
甲第1号証ないし甲第7号証は、特許異議申立人が特許異議申立書に添付して提出した書証(文献)である。以下では、これらの文献を、それぞれ書証番号を用いて「甲1文献」などという。
引用文献1は、当合議体が職権調査で発見した文献であり、本件特許出願に基づく優先権を主張する国際出願PCT/JP2018/023440(国際公開第2019/004020号)の国際調査報告に記載された文献である。

甲第1号証:国際公開第2016/080084号
甲第2号証:特開2015-223756号公報
甲第3号証:特開2014-95080号公報
甲第4号証:特開2013-190797号公報
甲第5号証:国際公開第2011/045862号
甲第6号証:特開2014-119557号公報
甲第7号証:中川鶴太郎・荻野一善著、「続・新化学工学講座7 レオ
ロジー」、日刊工業新聞社、昭和35年5月10日発行
引用文献1:特開2017-48358号公報

(2)引用文献に記載された発明等
ア 甲1文献
(ア)甲1文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「技術分野
[0001] 本発明は、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法に関する。」

「[0017]<光硬化性樹脂>
光硬化性樹脂組成物は、光硬化性樹脂を含むことができる。光硬化性樹脂は、充分な硬化性を発現し、硬化物の皮膜性を維持するため、本発明の光硬化性樹脂組成物100質量%中、10?85質量%であることができ、15?80質量%が好ましく、20?75質量%がより好ましい。光硬化性樹脂としては、(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。」

「[0040]<光硬化性樹脂組成物の硬化方法>
光硬化性樹脂組成物は、エネルギー線、例えば紫外線を照射することにより硬化させることができる。具体的には、LEDを光源とした光が挙げられ、光源として365nmをピークとするLED、405nmをピークとするLED、375nmをピークとするLED、385nmをピークとするLED、395nmをピークとするLED等が挙げられる。
[0041] さらに、また、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ等の光源から発せられる光が挙げられる。これらの光は、光学フィルターを通すことによって、特定の波長の光に調整したものであってもよい。具体的には、300nm以下の波長の光をカットする光学フィルター及び/又は500nm以上の波長の光をカットする光学フィルターの利用が挙げられる。
[0042] 照射方法は、特に限定されない。基材同士を接合させる前に、光硬化性樹脂組成物塗布層を硬化させて硬化樹脂層を形成する場合(例えば、後述の第1の製造方法の工程(B)等)のエネルギー線照射(例えば紫外線照射)は、例えば強度1?1500mW/cm^(2)の光を照射することができる。積算光量は30?15000mJ/cm^(2)となるように照射することができる。積算光量は、好ましくは50?12000mJ/cm^(2)、より好ましくは100?10000mJ/cm^(2)である。一方、基板同士を接合させた後に、エネルギー線照射(例えば紫外線照射)により硬化工程を行う場合(例えば、後述の第1の製造方法の工程(D)、第2の製造方法工程(C’)等)、例えば強度1?1500mW/cm^(2)の光を照射することができる。積算光量は、貼り合わせる光硬化性樹脂の硬化率によって、幅広く変化させることができ、例えば30?15000mJ/cm^(2)となるように照射することができる。強度は、好ましくは1?1200mW/cm^(2)、より好ましくは1?1000mW/cm^(2)であり、積算光量は、好ましくは50?12000mJ/cm^(2)、より好ましくは100?10000mJ/cm^(2)である。
[0043]<光硬化性樹脂組成物の用途>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用である。
[0044] 前面板としては、ガラス又はエンジニアリングプラスチック、例えばアクリル板(片面又は両面ハードコート処理やARコート処理してあってもよい)、ポリカーボネート板、PET板、PEN板などの透明プラスチック板が挙げられる。前面板を保護パネルとすることもできる。
タッチパネルとしては、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、又は光学式のタッチパネルが挙げられる。
表示体としては、LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等が挙げられる。
本発明において、前面板、タッチパネル、及び表示体は段差を有してもよく、また遮光部を有してもよい。ここで、遮光部とは、接着面に塗布した光硬化性樹脂組成物に、硬化に必要なエネルギー線(例えば紫外線)が当たらない部分をいう。
[0045]<光学表示体の製造方法>
本発明の光学表示体の製造方法について説明する。
本発明の光学表示体の第1の製造方法は、
(A)表示体及びタッチパネルのいずれか一方、表示体及び前面板のいずれか一方、又はタッチパネル及び前面板のいずれか一方に、本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程、
(B)工程(A)で得られた基板にエネルギー線(例えば紫外線)を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程、及び
(C)工程(B)で得られた基板と、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合させる工程
を含む。
工程(C)の後に、さらに、工程(D)として、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線(例えば紫外線)を照射してもよい。
…(中略)…
[0047] 本発明における第1の製造方法は、本発明の光硬化性樹脂組成物を片方の基材表面に塗布し、エネルギー線(例えば紫外線)照射によって樹脂組成物を硬化した後、塗布していない基材と接合する工程、つまり前照射工程を含む、光学表示体の製造方法である。また、本発明における第2の製造方法は、本発明の光硬化性樹脂組成物を液状で接合させた後、エネルギー線(例えば紫外線)照射によって二つの基材を接着する工程、つまり後照射工程を含む、光学表示体の製造方法である。
[0048] 本発明の光学表示体の第1の製造方法は、以下のとおりである。
工程(A)
工程(A)は、表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の一方の基材に、本発明の光硬化性樹脂組成物を塗布する工程である。工程(A)により、本発明の光硬化性樹脂組成物が塗布された基板が得られる。工程(A)は、特に限定されず、ダイコーター、ディスペンサー、スクリーン印刷等による方法を利用することができる。ここで、本発明の光硬化性樹脂組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、1,000?100,000mPa・sが好ましく、1,500?20,000mPa・sがより好ましい。工程(A)で用いられる基材は、段差を有してもよく、また遮光部を有していてもよい。本発明の光硬化性樹脂組成物は、液状で塗布することができるため、工程(A)で本発明の光硬化性樹脂組成物が塗布される基材が、段差を有する基材である場合でも、気泡の混入の問題を回避することができる。また、工程(A)は、離型フィルムを用いてラミネートする方法を用いてもよい。塗布層の厚みは、特に限定されず、例えば10?500μmとすることができ、30?350μmが好ましい。
[0049] 工程(B)
工程(B)は、工程(A)で得られた基材に、エネルギー線(例えば紫外線)を照射する工程である。工程(B)により、エネルギー線(例えば紫外線)の照射により、光硬化性組成物を硬化させることができる。硬化に関しては、上記<光硬化性樹脂組成物の硬化方法>における記載を適用することができる。また、工程(A)で離型フィルムを用いた場合は、工程(B)において、離型フィルムでラミネートを行った後に、エネルギー線(例えば紫外線)を照射してもよい。
[0050] 工程(C)
工程(C)は、工程(B)で得られた基材と、工程(A)において、光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基材とを接合させる工程である。例えば、基板の組み合わせが、表示体及びタッチパネルであり、工程(A)において、光硬化性樹脂組成物が塗布された基板が表示体である場合は、工程(C)において、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板はタッチパネルである。工程(C)で、工程(B)で得られた基材と工程(A)において光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基材と接合させることにより、基材同士を接着し、貼り合わすことができる。これにより、光学表示体が得られる。また、工程(A)で離型フィルムを用いた場合は、工程(C)において、離型フィルムを剥離した後に、基材同士が接合される。
[0051] 工程(D)
第1の製造方法においては、工程(C)の後に、工程(D)として、さらにエネルギー線(例えば紫外線)を照射してもよい。工程(C)における接合の後に、工程(D)でさらにエネルギー線(例えば紫外線)を照射し、接着力を強固なものとすることができる。この方法は、工程(B)における硬化率を制御することにより、工程(C)の後に、位置ずれ等が発見された場合に、基材同士を剥離させてリペアに付すことができるため、便利である。硬化に関しては、上記<光硬化性樹脂組成物の硬化方法>における記載を適用することができる。」

「実施例
[0054] 以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例により限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、質量部、質量%である。
[0055] 表1に示す配合の各成分を均一に混合し、実施例・比較例の光硬化性樹脂組成物を調製した。
[0056]
[表1]

[0057] 得られた実施例・比較例の光硬化性樹脂組成物を用いて、以下のようにして、特性を測定した。
<接着性>
以下の製造方法1又は製造方法2の記載のようにして、光硬化性樹脂組成物を用いて、積層体のサンプルを作製し、基材1が下側になるようにして、室温(25℃)で24時間の放置後に、目視による外観観察をして、剥がれが発生するか、否かを試験した。
○:剥がれが発生する
×:剥がれが発生しない
[0058]<<製造方法1>>
基材1(26mm×37.5mm×1.1mmt、ガラス)に、光硬化性樹脂組成物の塗布部分が10mm×10mmになるように、セロハンテープ(50μmt)3枚を用いて作成した150μmtの厚みのスペーサーを貼り、金属スキージを用いて光硬化性樹脂組成物の塗布層を形成した後、スペーサーを除去した。
コンベア型メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製、200mW/cm^(2))にて、3000mJ/cm^(2)の硬化条件で塗布層に光照射した。
基材2(26mm×37.5mm×1.1mmt、ガラス)を用意し、光照射した塗布層に載置し、加圧して接合させて、積層体を得た。
<<製造方法2>>
基材1(26mm×37.5mm×1.1mmt、ガラス)に、光硬化性樹脂組成物の塗布部分が10mm×10mmになるように、セロハンテープ(50μmt)3枚を用いて作成した150μmtの厚みのスペーサーを貼り、金属スキージを用いて光硬化性樹脂組成物の塗布層を形成した後、スペーサーを除去した。
365nmLEDランプ(Panasonic社製、UJ35)を用いて、100mW/cm^(2)で塗布層に光照射し、仮硬化樹脂層を形成した。
基材2(26mm×37.5mm×1.1mmt、ガラス)を用意し、光照射した塗布層に載置し、加圧して接合させた後、コンベア型メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製、200mW/cm^(2))にて、3000mJ/cm^(2)で基材2越しに光照射して、積層体を得た。
[0059]<弾性率>
弾性率は、JISZ1702に準拠しNo.3ダンベル試験片(厚さ1mmt)を作製して、引張圧縮試験機(ミネベア製、テクノグラフTG-2kN)を用いて10mm/minの速度により測定した。なお、ダンベル試験片は、コンベア型メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製、200mW/cm^(2))を使用し、光硬化性樹脂組成物を6000mJ/cm^(2)で硬化させた硬化物から作製した。」

なお、甲1文献の[0065][表1]に記載された「光開始剤」は、明らかに「光重合開始剤」のことである。

(イ)甲1文献の[0054]ないし[0059]に「実施例」として記載された「光硬化性樹脂組成物」は、接着性や弾性率などの特性を試験するために調製されたものであるが、「以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明する。」([0054])と記載されていることから、甲1文献の[0001]及び[0040]ないし[0051]に記載された「本発明」を実施した例、すなわち、「表示体とタッチパネル、表示体と前面板、又はタッチパネルと前面板の貼り合わせ用光硬化性樹脂組成物、これを用いた光学表示体、及び光学表示体の製造方法」([0001])における「光硬化性樹脂組成物」の実施の例であることが分かる。
したがって、甲1文献の前記(ア)の記載によれば、甲1文献には、「実施例」の「光硬化性樹脂組成物」を用いた「光学表示体の製造方法」が記載されている。特に、甲1文献には、「実施例4」の「光硬化性樹脂組成物」を用いた「光学表示体の製造方法」として、次の発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されている。

「LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等の光学表示体の製造方法であって、
表示体及び前面板のいずれか一方に、光硬化性樹脂組成物を塗布する工程(A)、
工程(A)で得られた基板にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程(B)、
工程(B)で得られた基板と、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合させる工程(C)、及び
工程(C)の後に、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射し、接着力を強固なものとする工程(D)、を含み、
光硬化性樹脂組成物の硬化に用いられるエネルギー線として、LEDを光源とした紫外線が用いられ、
工程(B)のエネルギー線照射は、強度1?1500mW/cm^(2)の光を照射して積算光量が好ましくは100?10000mJ/cm^(2)となるようにし、
工程(B)における硬化率を制御することにより、工程(C)の後に、位置ずれ等が発見された場合に、基材同士を剥離させてリペアに付すことができ、
光硬化性樹脂組成物は、(メタ)アクリレートオリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)50質量部、(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレートそれぞれ15質量部、15質量部及び10質量部ずつ、光重合開始剤4質量部、消泡剤0.1質量部、液状可塑剤30質量部、軟化点70?150℃の水添ロジンエステル60質量部、の各成分を均一に混合して調製したものであり、
光硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物から作製したダンベル試験片について、引張圧縮試験機を用いて測定された弾性率は、3.7E+04Paである、
光学表示体の製造方法。」

イ 甲2文献
(ア)甲2文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体の製造方法に関し、具体的には画像表示装置である積層体の製造方法に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の積層体の製造方法は、下記の工程(A)?(D)を含む。
工程(A):基材1に、光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程、
工程(B):塗布層に、300?500nmの波長の光を照射して仮硬化樹脂層を形成する工程、
工程(C):仮硬化樹脂層の上に基材2を貼り合わせる工程、及び
工程(D):基材1及び基材2の間の仮硬化樹脂層に、光を照射して本硬化させる工程。
【0012】
<積層体>
本発明の製造方法の目的物である積層体は、基材1及び基材2が、光硬化性樹脂組成物を用いて接着されている。基材1及び基材2は、特に限定されず、同じ基材であっても、異なる基材であってもよい。工程Dで、仮硬化樹脂層に光を照射する点から、基材1及び基材2の少なくとも一方は、光透過性部材であることが好ましい。積層体は、基材1及び基材2に加えて、さらなる基材を含んでいてもよく、その基材の接着方法は、特に限定されない。
【0013】
例えば、基材1又は基材2の一方を表示体とし、他方を光透過性部材とすることにより、種々の画像表示装置である積層体を製造することができる。例えば、基材1又は基材2の一方を液晶表示パネルとし、他方を光透過性部材とすることにより、液晶表示装置が製造でき、一方を有機EL表示パネルとし、他方を光透過性部材とすることにより、有機EL表示装置を製造することができる。
【0014】
例えば、基材1又は基材2の一方を透明電極が形成された光透過性基板とし、他方を光透過性部材とすることにより、タッチパネルを製造することができる。さらに、基材1又は基材2の一方をタッチパネルとし、他方をアイコンシートや化粧板とすることもできる。」

「【0017】
<工程A>
工程Aは、基材1に、光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程である。光硬化性樹脂組成物としては、(メタ)アクリレートオリゴマー及び光重合開始剤を含む組成物を使用することができる。
…(中略)…
【0027】
光重合開始剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、0.1?20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5?15質量部であり、さらに好ましくは1?10質量部である。
…(中略)…
【0028】
光硬化性樹脂組成物には、反応希釈剤として、(メタ)アクリレートモノマーを含むことができ、…(中略)…
【0031】
(メタ)アクリレートモノマーは、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、1?250質量部であることが好ましく、より好ましくは20?200質量部であり、さらに好ましくは50?150質量部である。
【0032】
光硬化性樹脂組成物には、可塑剤を含むことができる。…(中略)…
【0035】
可塑剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、10?500質量部であることが好ましく、より好ましくは30?400質量部であり、さらに好ましくは50?300質量部である。
【0036】
光硬化性樹脂組成物は、さらに、接着付与剤を含むことができる。…(中略)…
【0038】
接着付与剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、0.01?15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1?10質量部であり、さらに好ましくは1?5質量部である。
【0039】
光硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤を含むことができる。…(中略)…
【0040】
酸化防止剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して、0.01?15質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1?10質量部であり、さらに好ましくは1?5質量部である。
…(中略)…
【0045】
<工程B>
工程(B)は、塗布層に、300?500nmの波長の光を照射して仮硬化樹脂層を形成する工程である。
【0046】
本発明における300?500nmの波長の光は、全波長の照射強度の積算値に対する300?500nmの波長の照射強度の積算値が、90%以上である光をいい、好ましくは95%以上であり、より好ましくは98%以上である。
【0047】
例えば、300?500nmの波長の光としては、LEDを光源とした光が挙げられ、光源として365nmをピークとするLED、405nmピークとするLED、375nmをピークとするLED、385nmをピークとするLED、395nmをピークとするLED等が挙げられる。
【0048】
さらに、300?500nmの波長の光としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ等の光源から発せられる光を、光学フィルターを通すことによって、特定の波長の光に調整したものが挙げられる。具体的には、300nm以下の波長の光をカットする光学フィルター及び/又は500nm以上の波長をカットする光学フィルターを通すことにより調整することができる。このような光学フィルターとしては、石英製干渉フィルター(型番:A7028-05、浜松フォトニクス社製)、LTフィルター、RTフィルター(ともにHOYA社製)、バンドパスフィルター(アイグラフィックス社製)等が挙げられる。
【0049】
塗布層に対して、300?500nmの波長の光を照射することにより、塗布層の樹脂組成物を仮硬化させて仮硬化樹脂層を形成する。照射方法は、特に限定されず、例えば強度10?1500mW/cm^(2)の光を、積算光量30?7500mJ/cm^(2)となるように照射することができる。強度は、好ましくは20?750mW/cm^(2)、より好ましくは30?400mW/cm^(2)であり、積算光量は、好ましくは50?5000mJ/cm^(2)、より好ましくは100?2000mJ/cm^(2)である。
【0050】
仮硬化性樹脂層の硬化率は、本硬化後の強度発現や流れ出し、液ダレ防止の点から、40?90%であることが好ましく、より好ましくは45?80%であり、さらに好ましくは50?70%である。硬化率は、光硬化性樹脂組成物の紫外線照射前後の(メタ)アクリル基の減少率で定義され、FT-IRによって測定することができる。
【0051】
<工程C>
工程Cは、仮硬化樹脂層の上に基材2を貼り合わせる工程である。仮硬化樹脂層を形成した基板1の上に、仮硬化樹脂層に接するように基板2を載置し、場合により、基板1側及び/基板2側から加圧して、基板1と基板2とを貼り合わせることができる。加圧方法は、特に限定されず、ゴムローラ、平板プレス装置等を用いることができる。
【0052】
<工程D>
工程Dは、基材1及び基材2の間の仮硬化樹脂層に、さらに光を照射して本硬化させる工程である。基材1、基材2のいずれかが光透過性部材である場合、光透過性部材である基材側から光を照射して、本硬化させることができる。
【0053】
光は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができ、好ましくは紫外線である。光源としては、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ等を用いることができる。」

「【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。表示は、特に断りがない限り、質量部、質量%である。
【0056】
表1に示す配合の各成分をポリエチレン容器に秤量し、スリーワンモーター(東京理科機器社製、MAZELA)、攪拌羽を用いて均一に混合し、光硬化性樹脂組成物を調製した。
【0057】
【表1】

【0058】
<実施例1>
26mm×75mm×1.1mmtガラスに、光硬化性樹脂の塗布部分が10mm×10mmの正方形状になるようにセロハンテープ(50μmt)3枚を用いて作成した150μmtの厚みのスペーサーを貼り、金属スキージを用いて光硬化性樹脂組成物塗布層を形成した後、スペーサーを除去した(図1(1))。
表2に示す仮硬化条件で、365nmLEDランプ(Panasonic社製、UJ35。図2Aに発光スペクトルを示す)を用いて、100mW/cm^(2)(365nmでの照度で塗布層に光照射し、仮硬化樹脂層を形成した。図2Aに示されるグラフから、全波長の照射強度の積算値に対する300?500nmの波長の照射強度の積算値がほぼ100%であることがわかる。
仮硬化樹脂層の硬化率は、光硬化性樹脂組成物の紫外線照射前後のアクリル基の減少率としてFT-IR(Perkin Elmer社製、Spectrum100)により測定した。減少率は、紫外線照射前の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの800?820cm^(-1)の吸収ピーク高さ(X)と紫外線照射後の樹脂組成物層のFT-IR測定チャートにおけるベースラインからの800?820cm^(-1)の吸収ピーク高さ(Y)とを以下の数式(1)に代入することにより求めた。

硬化率(%)={(X-Y)/X}×100 ・・・(1)

別の26mm×75mm×1.1mmtガラスを用意し、仮硬化樹脂層を形成したガラス上に、仮硬化樹脂層が接するようにして載置し、加圧して貼り合わせた(図1(2))。
仮硬化樹脂層の流れ出し、液ダレについて観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
流れ出し・液だれあり:×
流れ出し・液だれなし:○
メタルハライドランプ(200?400mW/cm^(2))にて3000mJ/cm^(2)で、ガラス越しに仮硬化樹脂層に光照射し、本硬化させた。
接着したガラス積層体について、引っ張り試験機(ミネベア製、テクノグラフTG-2kN)を用いて、せん断方向に10mm/分にて引っ張り強度を測定し、以下の基準で評価した(図1(3))。結果を表2に示す。
0.3MPa未満:×
0.3?0.5MPa未満:△
0.5MPa以上:○
【0059】
【表2】



(イ)甲2文献の【0055】ないし【0059】に「実施例」として記載された「光硬化性樹脂組成物」は、仮硬化樹脂層の流れ出し、液ダレなどの特性を試験するために調整されたものであるが、「本発明を実施例により具体的に説明する」(【0055】)と記載されていることから、甲2文献の【0001】、【0011】ないし【0014】及び【0017】ないし【0053】に記載された「本発明」を実施した例、すなわち、「画像表示装置である積層体の製造方法」(【0001】)における「光硬化性樹脂組成物」の実施の例であることが分かる。
したがって、甲2文献の前記(ア)の記載によれば、甲2文献には、「実施例」の「光硬化性樹脂組成物」を用いた「画像表示装置である積層体の製造方法」として、次の発明(以下、「甲2方法発明」という。)が記載されている。

「基材1及び基材2が光硬化性樹脂組成物を用いて接着された積層体である画像表示装置の製造方法であって、
基材1及び基材2の一方が表示体、他方が光透過性部材であり、例えば、一方を液晶表示パネル、他方を光透過性部材とすることで液晶表示装置が製造でき、一方を有機EL表示パネル、他方を光透過性部材とすることで、有機EL表示装置を製造することができ、一方を透明電極が形成された光透過性基板、他方を光透過性部材とすることで、タッチパネルを製造することができ、
基材1に、光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程Aと、
塗布層に、300?500nmの波長の光を照射して仮硬化樹脂層を形成する工程Bと、
仮硬化樹脂層の上に基材2を貼り合わせる工程Cと、
基材1及び基材2の間の仮硬化樹脂層に、さらに紫外線を照射して本硬化させる工程Dとを有し、
工程Bにおける300?500nmの波長の光は、365nmをピークとするLEDを光源とし、強度は好ましくは30?400mW/cm^(2)であり、積算光量は、好ましくは100?2000mJ/cm^(2)であり、
工程Bにおける仮硬化性樹脂層の硬化率は、本硬化後の強度発現や流れ出し、液ダレ防止の点から、40?90%であることが好ましく、より好ましくは45?80%であり、さらに好ましくは50?70%であり、
光硬化性樹脂組成物は、ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製UV3630ID80)50質量部、(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンタニルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレートそれぞれ20質量部、20質量部及び10質量部ずつ、光重合開始剤4質量部、消泡剤0.1質量部、可塑剤90質量部、の各成分を均一に混合して調製したものである、
画像表示装置の製造方法。」

ウ 甲6文献
(ア)甲6文献には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネル等の画像表示部材とその表面側に配される透明保護シート等の光透過性カバー部材とを、光透過性硬化樹脂層を介して接着・積層して画像表示装置を製造する方法に関する。」

「【0009】
すなわち、本発明は、画像表示部材と、周縁部に遮光層が形成された光透過性カバー部材とが、液状の光硬化性樹脂組成物から形成された光透過性硬化樹脂層を介し、光透過性カバー部材の遮光層形成面が画像表示部材側に配置されるように積層された画像表示装置の製造方法において、以下の工程(A)?(D)を有する製造方法を提供する。
【0010】
<工程(A)>
液状の光硬化性樹脂組成物を、光透過性カバー部材の遮光層形成側表面又は画像表示部材の表面に、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さより厚く塗布する工程。
【0011】
<工程(B)>
少なくとも遮光層上に位置する光硬化性樹脂組成物に対し紫外線を照射して仮硬化させ、遮光層上の仮硬化樹脂層の硬化率を30?80%とする工程。
【0012】
<工程(C)>
画像表示部材に、遮光層と仮硬化樹脂層とが内側となるように光透過性カバー部材を貼り合わせる工程。
【0013】
<工程(D)>
画像表示部材と光透過性カバー部材との間に挟持されている仮硬化樹脂層に対し紫外線を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性カバー部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程。」

「【0053】
以上、図1A?図1Gでは、光透過性カバー部材の遮光層側形成表面に光硬化性樹脂組成物を塗布した例を説明したが、以下の図2A?図2Fでは、画像表示部材表面に光硬化性樹脂組成物を塗布した例を説明する。なお、図1A?図1Gと図2A?図2Fとにおいて同じ図番は同一の構成要素を表している。
【0054】
<工程(AA)(塗布工程)>
まず、図2Aに示すように、画像表示部材6の表面に光硬化性樹脂組成物3を平坦になるように塗布する。この場合の塗布厚は、遮光層と光透過性カバー部材の遮光層形成側表面とで形成される段差がキャンセルされるように、遮光層の厚さの好ましくは1.2?12.5倍、より好ましくは2.5?4倍の厚さで塗布する。
【0055】
なお、この光硬化性樹脂組成物3の塗布は、必要な厚みが得られるように複数行ってもよい。
【0056】
<工程(BB)(仮硬化工程)>
次に、図2Bに示すように、少なくとも遮光層1上に位置する光硬化性樹脂組成物3に対し紫外線を照射して仮硬化させる(図2C)。ここで、少なくとも遮光層1上に位置する画像表示部材6上の光硬化性樹脂組成物3を液状から著しく流動しない状態に仮硬化させるのは、遮光層1と光透過性カバー部材2の遮光層形成側表面との間の段差をキャンセルするためである。また、塗布領域の外周を硬化させることで塗布形状を維持し、紫外線が照射されにくい遮光層1上の硬化状態を予め高めておくためである。
【0057】
このような仮硬化は、図2Bに示すように、例えば紫外線を減衰させる減衰板2を紫外線光源と光硬化性樹脂組成物3との間に設置することにより得ることができる。また、例えば光を遮蔽する遮蔽板を紫外線光源と光硬化性樹脂組成物3との間に設置し、パネル周縁部は露出、パネル主面部は遮蔽板によって遮蔽しても良い。また、紫外線の照射時間の一部期間に遮蔽板を設置するようにしても良い。
【0058】
遮光層1に対向する仮硬化樹脂層5aの硬化率(ゲル分率)は、好ましくは30?80%、より好ましくは40?70%となるようなレベルである。これにより、工程(D)の本硬化工程において、パネル主面部である光透過性カバー部材2上の光透過性硬化樹脂層7を完全硬化させる際、遮光層1上の光透過性硬化樹脂層7も完全硬化させることができる。
【0059】
また、光透過性カバー部材2表面に対向する仮硬化樹脂層5bの硬化率は、好ましくは0?80%、より好ましくは20?70%である好ましい。仮硬化樹脂層の硬化率が80%を超えると、界面剥離が生じ易くなり、接着状態が悪くなる傾向にある。
【0060】
また、遮光層1と光透過性カバー部材2との間から樹脂組成物が排除されるのを防ぐため、遮光層1上の仮硬化樹脂層5aの硬化率は、光透過性カバー部材2表面の仮硬化樹脂層5bの硬化率よりも高いことが好ましい。
【0061】
<工程(CC)(貼り合わせ工程)>
次に、図2Dに示すように、画像表示部材6の仮硬化樹脂層5に、光透過性カバー部材2をその遮光層1側から貼り合わせる。貼り合わせは、公知の圧着装置を用いて、10?80℃で加圧することにより行うことができる。
【0062】
<工程(DD)(本硬化工程)>
次に、図2Eに示すように、画像表示部材6と光透過性カバー部材2との間に挟持されている仮硬化樹脂層5に対し紫外線を照射して本硬化させる。さらに必要に応じて,光透過性カバー部材2の遮光層と画像表示部材6との間の樹脂層に紫外線を照射することにより,該樹脂層を本硬化させる。これにより、画像表示部材6と光透過性カバー部材2とを光透過性硬化樹脂層7を介して積層して画像表示装置10(図2F)を得る。
【0063】
画像表示部材6としては、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル、タッチパネル等を挙げることができる。
【0064】
また、本工程において本硬化のレベルは、遮光層1上及び光透過性カバー部材2上の両者の光透過性硬化樹脂層7の硬化率(ゲル分率)が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となるようなレベルである。」

(イ)甲6文献の前記(ア)の記載によれば、甲6文献には、次の技術事項が記載されている。

「画像表示部材と光透過性カバー部材とが光透過性硬化樹脂層を介して積層された画像表示装置の製造方法における仮硬化の工程において、仮硬化樹脂層の硬化率を30?80%とし、本硬化の工程において、光透過性硬化樹脂層の硬化率を好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上とする。」

エ 甲7文献
(ア)甲7文献の第6ページないし第9ページには、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「2. 弾性
2・1 実用弾性率
理論弾性学でもちいられる弾性率やラメ定数と別に実際上は4種類の実用弾性率がもちいられる。
1. ヤング率
断面積S、長さLの棒に力P(dyn)を加えたときdだけ伸びたとする。引っぱり応力(normalstress)p_(n)=P/S(dyn/cm^(2))と伸び歪(normalstrain)e_(n)=d/Lの比εをヤング率(Young’s modulus)という。
ε=p_(n)/e_(n)=PL/Sd (dyn/cm^(2)) (2・1)
…(中略)…
2. 剛性率
高さH、上面積Sの直方体の上面に沿って(切線的に)力P(dyn)を加えるとずり変形(shear)がおこり、上面がずりの角(angle of shear)θに対応してdだけ変形する。このときずり応力(shearingstress)p_(t)=P/S(dyn/cm^(2))とずり歪(shearstrain)e_(t)=d/H=tanθ≒θの比γを剛性率(rigidity)またはずり弾性率(shear modulus)という。
γ=p_(t)/e_(t)=PH/Sd=P/Sθ(dyn/cm^(2)) (2・3)
…(中略)…
4. ポアソン比およびポアソン数
棒の伸長においては伸び歪e_(n)を生ずる(ヤング率参照)と同時に横方向に収縮歪e_(c)を生ずる。収縮歪と伸び歪の比σをポアソン比(Poisson’s ratio)、またポアソン比の逆数mをポアソン数(Poisson number)という。
σ=-e_(c)/e_(n)=1/m (2.7)
等方性物体では独立な弾性率は二つであるから、上の四つの実用弾性率のうちいずれか二つが知れれば他は計算によって求められる。それらの関係式のうち重要なものは例えば次式である。
ε=3κ(1-2σ)=2γ(1+σ) (2・8)
1/γ=3/ε-1/3κ (2.9)
しばしばレオロジーの対象となる軟らかい物質(ゲル、ピチューメン、ゴム、可塑化プラスチックなど)ではポアソン比σは0.5に近い値をとるばあいが多い。そのばあいは(2・8)式より
ε≒3γ (2・10)
となる。この関係は引っぱり実験とずり実験の結果を比較するとき便利である。ヤング率と剛性率の間のこの三倍則は金属で成立しないことはもちろんであるが、かたいプラスチックでも成立しないことが多いから注意を要する。たとえばポリメタクリル酸メチルのヤング率と剛性率をそれぞれ実測した結果によればポアソン比σは0.3である。
2・2 種々の物質の弾性率
表2・1に弾性率の実例を示した。体積弾性率(あるいは圧縮率)およびポアソン比は物質によってあまり変わらないが、ヤング率および剛性率はタングステンの10^(12)から稀薄寒天ゲルの10^(0)まできわめて広い範囲に変る。
…(中略)…
ポアソン比の物質による変化は興味深い。二三の例をあげると表2・2のようである。金属では0.3の程度であるが、硬質プラスチック→ポリエチレン→ゴム→ゲルと進むにつれて0.5に近づく。」





(イ)甲7文献の前記の記載によれば、甲7文献には、以下の技術事項が記載されている。

「ヤング率εと剛性率γとはポアソン比σを用いた関係式ε=2γ(1+σ)を満たし、物質のポアソン比σは0.3から0.5程度の値をとる。」

オ 引用文献1
(ア)引用文献1には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示部材と、その表面側に配される光透過性光学部材とを、光透過性硬化樹脂層を介して接着、積層して画像表示装置を製造する際に用いられる、光透過性硬化樹脂層を形成するための光硬化性樹脂組成物、及び画像表示装置の製造方法に関する。」

「【0069】
[第2の実施の形態]
[工程(A2)]
図2A及び図2Bは、画像表示装置の製造方法の工程(A2)の一例を示す説明図である。まず、図2Aに示すように、片面の周縁部に形成された遮光層1を有する光透過性光学部材2を用意する。また、図2Bに示すように、光透過性光学部材2の表面2aに、光硬化性樹脂組成物を、遮光層1と光透過性光学部材2の遮光層形成側表面2aとで形成される段差4がキャンセルされるように、遮光層1の厚さより厚く塗布して光硬化性樹脂組成物層3を形成する。具体的には、遮光層1の表面も含め、光透過性光学部材2の遮光層形成側表面2aの全面に光硬化性樹脂組成物を平坦になるように塗布し、段差が生じないようにすることが好ましい。光硬化性樹脂組成物層3の厚さは、遮光層1の厚さの1.2?50倍の厚さが好ましく、2?30倍の厚さがより好ましい。
【0070】
光硬化性樹脂組成物の塗布は、必要な厚みが得られるように行えばよく、1回で行ってもよいし、複数回行ってもよい。
【0071】
[工程(B2)]
工程(B2)において、工程(A2)で形成された光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する。
【0072】
図2C及び図2Dは、画像表示装置の製造方法の工程(B2)の一例を示す説明図である。図2Cに示すように、工程(A2)で形成された光硬化性樹脂組成物層3に光(好ましくは紫外線)を照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層5を形成する。光硬化性樹脂組成物層3の仮硬化を行うのは、光硬化性樹脂組成物を液状から著しく流動しない状態にし、図2Dに示すように、天地逆転させても流れ落ちないようにして取扱性を向上させるためである。また、仮硬化を行うことにより、遮光層1と画像表示部材との間の光透過性硬化樹脂層3を、その間から排除することなく十分に光硬化させることでき、硬化収縮も低減させることができる。
【0073】
光硬化性樹脂組成物層3の仮硬化は、仮硬化樹脂層5の硬化率が、10?80%となるように行うことが好ましく、40?80%となるように行うことがより好ましく、70?80%となるように行うことがさらに好ましい。
【0074】
光照射は、硬化率が好ましくは10?80%となるように仮硬化させることができる限り、光源の種類、出力、照度、積算光量などは特に制限なく、例えば、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を用することができる。
【0075】
また、光照射は、上述の硬化率の範囲内において、後述する工程(C2)の貼合わせ操作の際、仮硬化樹脂層5の液だれや変形が生じないような条件を選択することが好ましい。例えば、粘度で表現すると、20Pa・S以上(コーンプレートレオメーター、25℃、コーン及びプレートC35/2、回転数10rpm)とすることが好ましい。
【0076】
[工程(C2)]
工程(C2)において、画像表示部材と光透過性光学部材とを仮硬化樹脂層を介して貼合わせる。
【0077】
図2Eは、画像表示装置の製造方法の工程(C2)の一例を示す説明図である。図2Eに示すように、画像表示部材6に、光透過性光学部材2を仮硬化樹脂層5側から貼合わせる。貼合わせは、例えば、公知の圧着装置を用いて、10?80℃で加圧することにより行うことができる。
【0078】
[工程(D2)]
工程(D2)において、画像表示部材と光透過性光学部材との間に配置された仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、画像表示部材と光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る。
【0079】
図2F及び図2Gは、画像表示装置の製造方法の工程(D2)の一例を示す説明図である。図2Fに示すように、画像表示部材6と光透過性光学部材2との間に挟持されている仮硬化樹脂層5に対し光(好ましくは紫外線)を照射して本硬化させる。仮硬化樹脂層5を本硬化させるのは、仮硬化樹脂層5を十分に硬化させて、画像表示部材6と光透過性光学部材2とを接着し積層するためである。これにより、画像表示部材6と光透過性光学部材2とを光透過性硬化樹脂層7を介して積層して、図2Gに示すような画像表示装置10が得られる。なお、必要に応じて、光透過性光学部材2の遮光層1と画像表示部材6との間の仮硬化樹脂層5に光を照射することにより、この仮硬化樹脂層5を本硬化させてもよい。
【0080】
本硬化は、光透過性硬化樹脂層7の硬化率が90%以上となるように行うことが好ましく、95%以上となるように行うことがより好ましい。本硬化を行う際の光源の種類、出力、照度、積算光量などは特に制限なく、例えば、公知の紫外線照射による(メタ)アクリレートの光ラジカル重合プロセス条件を採用することができる。」

(イ)引用文献1の前記(ア)の記載によれば、引用文献1には、以下の技術事項が記載されている。

「画像表示部材とその表面側に配される光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して接着、積層した画像表示装置の製造方法における仮硬化の工程において、仮硬化樹脂層の硬化率を好ましくは10?80%、より好ましくは40?80%、さらに好ましくは70?80%とし、本硬化の工程において、光透過性硬化樹脂層の硬化率を好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上とする。」

(3)本件発明1について(理由4の1)
理由4の1は、甲1文献に記載された発明に基づく進歩性欠如である。

ア 対比
本件発明1と甲1方法発明(前記(2)ア(イ))とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)甲1方法発明の「LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等の光学表示体の製造方法」は、本件発明1の「画像表示装置の製造方法」に相当する。

(イ)甲1方法発明の「表示体及び前面板のいずれか一方に、光硬化性樹脂組成物を塗布する工程(A)」は、本件発明1の「光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)」に相当する。

(ウ)甲1方法発明は、「工程(B)」で「エネルギー線を照射」した後、「工程(D)」でも「エネルギー線を照射し、接着力を強固なものと」している。また、「工程(B)における硬化率を制御することにより、工程(C)の後に、位置ずれ等が発見された場合に、基材同士を剥離させてリペアに付すことができ」るとされている。そうすると、「工程(B)」で「エネルギー線を照射」することによる「光硬化性樹脂組成物」の「硬化」は、「仮硬化」であるということができる。
したがって、甲1方法発明の「工程(A)で得られた基板にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程(B)」は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)」に相当する。

(エ)甲1方法発明の「工程(B)で得られた基板と、工程(A)で光硬化性樹脂組成物が塗布されなかった基板を接合させる工程(C)」は、本件発明1の「画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)」に相当する。

(オ)甲1方法発明は、「LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等の光学表示体の製造方法」であるから、「工程(A)」から「工程(D)」までの一連の工程を経た後で、「表示体」と「前面板」とを「光硬化性樹脂組成物」を介して積層した「LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等の光学表示体」を得るものと認められる。
そうすると、甲1方法発明において、「工程(C)の後に、さらに光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射し、接着力を強固なものとする工程(D)」を行い、その後に「表示体」と「前面板」とを「光硬化性樹脂組成物」を介して積層した「LCD、ELディスプレー、EL照明、電子ペーパー、及びプラズマディスプレー等の光学表示体」を得ることは、本件発明1の「上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)」に相当する。

(カ)甲1方法発明の「(メタ)アクリレートオリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」及び「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレート」は、それぞれ本件発明1の「アクリル系オリゴマー」及び「アクリル系モノマー」相当する。
甲1方法発明の「(メタ)アクリレートオリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」及び「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び4-ヒドロキシブチルアクリレート」を合わせたものは、本件発明1の「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分」に相当する。
甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「(メタ)アクリレートオリゴマー」及び「(メタ)アクリレートモノマー」を合わせたものの質量比は、(50質量部+15質量部+15質量部+10質量部)/(50質量部+15質量部+15質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+30質量部+60質量部)×100=49質量%であるから、甲1方法発明は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%」「含有」するという条件を充足する。

(キ)甲1方法発明の「液状可塑剤」及び「軟化点70?150℃の水添ロジンエステル」は、本件発明1の「可塑剤」に相当する。
甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「液状可塑剤」及び「軟化点70?150℃の水添ロジンエステル」の質量比は、(30質量部+60質量部)/(50質量部+15質量部+15質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+30質量部+60質量部)×100=49質量%であるから、甲1方法発明は、本件訂正発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は」「可塑剤を40?66質量%」「含有」するという条件を充足する。

(ク)甲1方法発明の「光重合開始剤」は、本件訂正発明1の「光重合開始剤」に相当する。

(ケ)甲1方法発明の「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート」は、本件発明1の「環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。
甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート」の質量比は、15質量部/(50質量部+15質量部+15質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+30質量部+60質量部)×100=8質量%であるから、甲1方法発明は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は」「上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有」するという条件を充足する。

(コ)甲1方法発明において「光硬化性樹脂組成物の硬化に用いられるエネルギー線として、LEDを光源とした紫外線が用いられ」ることは、本件発明1の「上記工程(B)において、UV-LEDを用い」ることに相当する。

(サ)甲1方法発明において「光硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物から作製したダンベル試験片について、引張圧縮試験機を用いて測定された弾性率は、3.7E+04Paである」とされている。
ここで、甲7文献に記載された技術事項(前記(2)エ(イ))によれば、ヤング率εと剛性率γとはポアソン比σを用いた関係式ε=2γ(1+σ)を満たし、物質のポアソン比σは0.3から0.5程度の値をとる。甲1方法発明の「引張圧縮試験機を用いて測定された弾性率」はヤング率に相当し、また、剛性率(せん断弾性率)は物質が弾性的であればせん断貯蔵弾性率に近い値となるということを踏まえると、甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物から作製したダンベル試験片」のせん断貯蔵弾性率は、(3.7E+04)/{2×(1+σ)}=12000?14000Pa程度と概算することができる。
そうすると、甲1方法発明の「工程(D)」を経た後の「光硬化性樹脂組成物」の硬化物のせん断貯蔵弾性率も、これと同等のものになることが理解できるから、甲1方法発明は、本件訂正発明1の「せん断貯蔵弾性率が1000?320000Pa」という条件を充足するということができる。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲1方法発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(ア)一致点
「光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、
上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、
画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、
上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、
上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、
上記工程(B)において、UV-LEDを用いて光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。」

(イ)相違点1-1
本件発明1の「光硬化性樹脂組成物」は、「アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」するのに対し、
甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物」は、「(メタ)アクリレートオリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」(本件発明1の「アクリル系オリゴマー」に相当する。)を、50/(50+15+15+10+4+0.1+30+60)×100=27質量%含有する点。

(ウ)相違点1-2
工程(B)における光照射を、
本件発明1では、「照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件」で行うのに対し、
甲1方法発明では、「強度1?1500mW/cm^(2)の光を照射して積算光量が好ましくは100?10000mJ/cm^(2)となるように」行う点。

ウ 相違点についての判断
(ア)相違点1-1について
甲1方法発明の「光硬化性樹脂組成物」が含有する「(メタ)アクリレートオリゴマーであるポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」の量を6?11質量%にすることは、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1のいずれにも記載されていないし、示唆されてもいない。
すなわち、甲1文献には、光硬化性樹脂組成物に含まれる光硬化性樹脂として(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられているが、その量は、本件発明1とは異なる範囲にあり、光硬化性樹脂組成物100質量%中、10?85質量%であることができ、15?80質量%が好ましく、20?75質量%がより好ましいとされている([0017])。そして、甲1文献に記載された実施例1ないし実施例7及び比較例1ないし比較例3の成分の配合([0056][表1])を見ても、光硬化性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3630ID80)又はポリエーテルウレタンアクリレート(日本合成化学工業社製UV3700B))の量は、24?59質量%であり、本件発明1とは異なる範囲にある。
また、甲2文献には、光硬化性樹脂組成物は(メタ)アクリレートオリゴマー100質量部に対して光重合開始剤を0.1?20質量部、(メタ)アクリレートモノマーを1?250質量部、可塑剤を10?500質量部、接着付与剤を0.01?15質量部、及び酸化防止剤を0.01?15質量部、それぞれ含むことが好ましい旨の一般的な記載しかない(【0017】ないし【0040】)。そして、甲2文献に記載された実施例の成分の配合(【0057】【表1】)を見ても、光硬化性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリレートオリゴマー(ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー日本合成化学工業社製UV3630ID80)の量は、26質量%であり、本件発明1とは異なる範囲にある。
さらに、甲3文献ないし甲7文献及び引用文献1のいずれにも、甲1方法発明のように「光硬化性樹脂組成物を塗布する工程(A)」、「エネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物を硬化させる工程(B)」、「基板を接合させる工程(C)」及び「光硬化性樹脂組成物に、エネルギー線を照射して、接着力を強固なものとする工程(D)」を含む「画像表示装置の製造方法」に使用する「光硬化性樹脂組成物」が含有する「(メタ)アクリレートオリゴマー」の量についての記載や示唆はない。
したがって、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。

(イ)効果について
本件発明1は、リフティング現象を抑制できるという効果を奏するものである。そして、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1には、リフティング現象についての記載も示唆もないから、この効果は、当業者が甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明から予測できるものであるということはできない。

エ 本件発明1について(理由4の1)のまとめ
以上のとおり、相違点1-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点1-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1文献に記載された発明と、甲2文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(4)本件発明1について(理由4の2)
理由4の2は、甲2文献に記載された発明に基づく進歩性欠如である。

ア 対比
本件発明1と甲2方法発明(前記(2)イ(イ))とを対比すると、以下のとおりである。

(ア)甲2方法発明の「基材1及び基材2が光硬化性樹脂組成物を用いて接着された積層体である画像表示装置の製造方法」は、本件発明1の「画像表示装置の製造方法」に相当する。

(イ)甲2方法発明では、「基材1及び基材2の一方が表示体、他方が光透過性部材であ」るとされているから、「基材1」は、「表示体」又は「光透過性部材」である。
そうすると、甲2方法発明の「基材1に、光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程A」は、本件発明1の「光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)」に相当する。

(ウ)甲2方法発明の「塗布層に、300?500nmの波長の光を照射して仮硬化樹脂層を形成する工程B」は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)」に相当する。

(エ)甲2方法発明の「仮硬化樹脂層の上に基材2を貼り合わせる工程C」は、本件発明1の「画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)」に相当する。

(オ)甲2方法発明は、「基材1及び基材2が光硬化性樹脂組成物を用いて接着された積層体である画像表示装置の製造方法」であるから、「工程A」から「工程D」までの一連の工程を経た後で、「基材1及び基材2が光硬化性樹脂組成物を用いて接着された積層体である画像表示装置」を得るものと認められる。
そうすると、甲2方法発明において「基材1及び基材2の間の仮硬化樹脂層に、さらに紫外線を照射して本硬化させる工程D」を行い、その後に「基材1及び基材2が光硬化性樹脂組成物を用いて接着された積層体である画像表示装置」を得ることは、本件発明1の「上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)」に相当する。

(カ)甲2方法発明の「ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」及び「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンタニルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート」は、それぞれ本件発明1の「アクリル系オリゴマー」及び「アクリル系モノマー」に相当する。
甲2方法発明の「ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」及び「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンタニルメタクリレート、ラウリルアクリレート及び2-ヒドロキシエチルメタアクリレート」を合わせたものは、本件発明1の「アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分」に相当する。
甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「(メタ)アクリレートオリゴマー」及び「(メタ)アクリレートモノマー」を合わせたものの質量比は、(50質量部+20質量部+20質量部+10質量部)/(50質量部+20質量部+20質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+90質量部)×100=52質量%であるから、甲2方法発明は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%」「含有」するという条件を充足する。

(キ)甲2方法発明の「可塑剤」は、本件発明1の「可塑剤」に相当する。
甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「可塑剤」の質量比は、90質量部/(50質量部+20質量部+20質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+90質量部)×100=46質量%であるから、甲2方法発明は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は」「可塑剤を40?66質量%」「含有」するという条件を充足する。

(ク)甲2方法発明の「光重合開始剤」は、本件発明1の「光重合開始剤」に相当する。

(ケ)甲2方法発明の「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンタニルメタクリレート」は、本件発明1の「環構造を有する(メタ)アクリレートモノマー」に相当する。
甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」全体に対する「(メタ)アクリレートモノマーであるジシクロペンタニルメタクリレート」の質量比は、20質量部/(50質量部+20質量部+20質量部+10質量部+4質量部+0.1質量部+90質量部)×100=10質量%とであるから、甲2方法発明は、本件発明1の「上記光硬化性樹脂組成物は」「上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有」するという条件を充足する。

(コ)甲2方法発明において「工程Bにおける300?500nmの波長の光は、365nmをピークとするLEDを光源と」することは、本件発明1の「上記工程(B)において、UV-LEDを用い」ることに相当する。

(サ)甲2方法発明では、「仮硬化樹脂層」を「本硬化」させたもの(つまり、「工程D」後の「光硬化性樹脂組成物」の硬化物)の「せん断貯蔵弾性率」は特定されていない。
ところで、本件特許明細書の【0108】【表1】には、画像表示装置の製造に用いられ、甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」と類似する成分からなる光硬化性樹脂組成物の実施例について、いずれも「せん断貯蔵弾性率」が「1000?320000Pa」の範囲に含まれることが示されている。また、甲1方法発明では、同じく画像表示装置の製造に用いられ、甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」と類似する成分からなる光硬化性樹脂組成物の硬化物について、弾性率とポアソン比から概算される「せん断貯蔵弾性率」は、12000?14000Pa程度と概算することができ(前記(3)ア(サ))、「1000?320000Pa」の範囲にあるということができるほか、甲1文献の[0056][表1]に示された実施例及び比較例は、いずれも、同じく甲2方法発明のものと類似する成分からなる光硬化性樹脂組成物であり、その弾性率及びポアソン比から概算される「せん断貯蔵弾性率」は、「1000?320000Pa」の範囲にあることが分かる。
そうすると、画像表示装置の製造に用いられる「光硬化性樹脂組成物」の硬化物の「せん断貯蔵弾性率」は、一般に「1000?320000Pa」の範囲にあるということができ、甲2方法発明の「工程D」を経た後の「光硬化性樹脂組成物」の硬化物の「せん断貯蔵弾性率」も、当然に「1000?320000Pa」の範囲にあると理解される。

イ 一致点及び相違点
前記アの対比の結果をまとめると、本件発明1と甲2方法発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(ア)一致点
「光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、
上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、
画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、
上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、
上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、
上記工程(B)において、UV-LEDを用いて光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、
画像表示装置の製造方法。」

(イ)相違点2-1
本件発明1の「光硬化性樹脂組成物」は、「アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有」するのに対し、
甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」は、「ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」(本件発明1の「アクリル系オリゴマー」に相当する。)を、50/(50+20+20+10+4+0.1+90)×100=26質量%含有する点。

(ウ)相違点2-2
工程(B)における光照射を、
本件発明1では、「照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件」で行うのに対し、
甲2方法発明では、「強度は好ましくは30?400mW/cm^(2)」、「積算光量は、好ましくは100?2000mJ/cm^(2)」で行う点。

ウ 相違点についての判断
(ア)相違点2-1について
甲2方法発明の「光硬化性樹脂組成物」が含有する「ポリウレタンを骨格にもつ(メタ)アクリレートオリゴマー(日本合成化学工業社製UV3630ID80)」の量を6?11質量%にすることは、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1のいずれにも記載されていないし、示唆されてもいない。
すなわち、甲1文献及び甲2文献に記載された光硬化性樹脂組成物に含まれる(メタ)アクリレートオリゴマーの量は、いずれも本件発明1とは異なる範囲にある(前記(3)ウ(ア))。
また、甲3文献ないし甲7文献及び引用文献1のいずれにも、甲2方法発明のように「光硬化性樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する工程A」、「光を照射して仮硬化樹脂層を形成する工程B」、「基材2を貼り合わせる工程C」及び「仮硬化樹脂層に、さらに紫外線を照射して本硬化させる工程D」を有する「画像表示装置の製造方法」に使用する「光硬化性樹脂組成物」が含有する「(メタ)アクリレートオリゴマー」の量についての記載や示唆はない。
したがって、相違点2-1に係る本件発明1の構成は、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に思い付くものであるということはできない。

(イ)効果について
前記(3)ウ(イ)で述べたとおり、本件発明1は、リフティング現象を抑制できるという効果を奏するものであり、この効果は、当業者が甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明から予測できるものであるということはできない。

エ 本件発明1について(理由4の2)のまとめ
以上のとおり、相違点2-1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点2-2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2文献に記載された発明と、甲1文献、甲3文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

(5)本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8について
本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、いずれも本件発明1の構成を全て含むから、少なくとも本件発明1と甲1方法発明との相違点1-1及び相違点1-2(前記(3)イ(イ)及び(ウ))において甲1方法発明と相違し、また、少なくとも本件発明1と甲2方法発明との相違点2-1及び相違点2-2(前記(4)イ(イ)及び(ウ))において甲2方法発明と相違する。そして、前記(3)ウ(ア)及び(4)ウ(ア)のとおり、相違点1-1に係る本件発明1の構成も、相違点2-1に係る本件発明1の構成も、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に思い付くものであるということはできないから、相違点1-1又は相違点2-1に係る本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8の構成も同様である。
そうすると、本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、甲1文献ないし甲7文献及び引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
したがって、本件特許の請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。

第6 むすび
本件取消理由は、特許異議申立て理由の全てを取消理由として採用したものであるが、以上に述べたとおり、本件取消理由によっては、本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許を取り消すべきであるということはできない。そして、本件取消理由の他に、本件特許の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8に係る特許を取り消すべきであるとする理由を発見しない。
また、本件特許の請求項5、請求項6、請求項9及び請求項10に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により請求項5、請求項6、請求項9及び請求項10が削除された結果、申立ての対象が存在しないものとなった。したがって、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により、却下するべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性樹脂組成物を、光透過性光学部材の表面又は画像表示部材の表面に塗布して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程(A)と、
上記光硬化性樹脂組成物層に光照射して仮硬化を行うことにより、仮硬化樹脂層を形成する工程(B)と、
画像表示部材と光透過性光学部材とを上記仮硬化樹脂層を介して貼合わせる工程(C)と、
上記画像表示部材と上記光透過性光学部材との間に配置された上記仮硬化樹脂層に光を照射して本硬化させることにより、上記画像表示部材と上記光透過性光学部材とを光透過性硬化樹脂層を介して積層して画像表示装置を得る工程(D)とを有する、画像表示装置の製造方法であって、
上記光硬化性樹脂組成物は、アクリル系オリゴマーとアクリル系モノマーとを含有するラジカル重合性成分を合計31?55質量%と、可塑剤を40?66質量%と、光重合開始剤とを含有し、上記アクリル系モノマーとして、環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを5?19質量%含有し、上記アクリル系オリゴマーを6?11質量%含有し、
上記工程(B)において、UV-LEDを用いて、照度100?300mW/cm^(2)、積算光量100?300mJ/cm^(2)の条件で光照射を行い、更に上記工程(D)を行うことで、上記光透過性硬化樹脂層は、せん断貯蔵弾性率が1000?320000Paである、画像表示装置の製造方法。
【請求項2】
上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーは、環構造として、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び複素環の少なくとも1種を有する、請求項1記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項3】
上記光透過性硬化樹脂層のせん断貯蔵弾性率が2400?10500Paである、請求項1又は2記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項4】
上記光硬化性樹脂組成物は、上記環構造を有する(メタ)アクリレートモノマーを8?10質量%含有する、請求項1?3のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
上記工程(D)において、上記光透過性硬化樹脂層の硬化率が90%以上となるように、上記仮硬化樹脂層に紫外線を照射して本硬化させる、請求項1?4のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項8】
上記画像表示部材が、液晶表示パネル、有機EL表示パネル、プラズマ表示パネル又はタッチパネルである、請求項1?4、7のいずれか1項に記載の画像表示装置の製造方法。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-06-25 
出願番号 特願2017-125891(P2017-125891)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G09F)
P 1 651・ 113- YAA (G09F)
P 1 651・ 121- YAA (G09F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 直行  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 小林 紀史
蔵野 雅昭
登録日 2018-07-20 
登録番号 特許第6370967号(P6370967)
権利者 デクセリアルズ株式会社
発明の名称 画像表示装置の製造方法、光硬化性樹脂組成物及び光透過性硬化樹脂層  
代理人 野口 信博  
代理人 野口 信博  
代理人 穂谷野 聡  
代理人 穂谷野 聡  
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