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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G01L |
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管理番号 | 1364948 |
異議申立番号 | 異議2020-700354 |
総通号数 | 249 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2020-09-25 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-05-20 |
確定日 | 2020-08-11 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6609728号発明「圧力測定システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6609728号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6609728号(以下、「本件特許」という。)に係る特許出願は、平成30年12月12日(以下、「優先日」という。)にした特許出願(特願2018-232957号)を優先権の主張の基礎として、令和元年7月11日にした日本語特許出願(特願2019-547522号)であり、令和元年11月1日にその特許権の設定の登録がされ、同月20日にその特許掲載公報が発行された。本件特許の特許請求の範囲に記載された請求項の数は7である。 これに対して、令和2年5月20日に特許異議申立人渡辺郁子(以下、「申立人」という。)は、証拠として甲第1号証ないし甲第8号証を提出し、本件特許の請求項1ないし7について特許異議の申立てをした。 第2 本件特許に係る発明 本件特許の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明7」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 測定対象物に装着される本体内に、電力供給を受けて作動するセンサ部と、センサ部の作動を制御すると共に、このセンサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部と、制御部とセンサ部に電力供給する電源回路部とを備える真空計と、通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能であると共に、電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な端末機とを有する圧力測定システムにおいて、 真空計がその制御部に対する端末機からの電力供給を判断できるように構成され、端末機から制御部に対して電力供給されると、真空計の制御部と端末機とが通信回線を介して相互通信自在に接続されることを特徴とする圧力測定システム。 【請求項2】 前記端末機が、外部からの電源供給を受けない状態でも前記電源回路部に有線または無線による電力供給をして、前記通信回線を介して前記真空計の前記制御部に対して操作情報を送信でき、 測定対象物に装着されて圧力測定する場合、前記制御部が、前記送信を受けた操作情報とセンサ部からの入力と設定値とに応じて特定の信号を出力するように構成されることを特徴とする請求項1記載の圧力測定システム。 【請求項3】 前記端末機が、前記真空計の前記制御部に対して送信したときの前記操作情報を記憶でき、この記憶した操作情報を他の真空計の制御部に送信可能としたことを特徴とする請求項2記載の圧力測定システム。 【請求項4】 前記操作情報に、大気圧調整並びに0点調整を実施するものを含み、真空計が、大気圧調整並びに0点調整を実施する操作情報の送信を受けると、測定対象物に装着されて圧力測定するのに先立って、大気圧調整並びに0点調整を実施するように構成したことを特徴とする請求項2または請求項3記載の圧力測定システム。 【請求項5】 前記制御部に外付けのメモリが接続可能であり、このメモリに、前記制御部に記憶されている操作情報を記憶できるように構成したことを特徴とする請求項1記載の圧力測定システム。 【請求項6】 前記端末機が、この端末機と前記真空計との通信接続状態にて真空計の前記制御部から稼働情報を受信してその稼働情報を報知する報知手段を有することを特徴とする請求項1?請求項5のいずれか1項に記載の圧力測定システム。 【請求項7】 前記稼働情報に、上位制御装置から送信された値を含むことを特徴とする請求項6記載の圧力測定システム。」 第3 申立理由の概要 申立人は、本件特許の優先日前に公開された下記の文書を証拠方法として、以下の1?7に示す理由により、請求項1?7に係る特許は取り消すべきものである旨主張する。 1 本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、又は甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 3 本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 4 本件特許発明4は、甲第1、4?5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 5 本件特許発明5は、甲第1、6?8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項5に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 6 本件特許発明6は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 7 本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項7係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 甲第1号証:特開2005-188980号公報 甲第2号証:特許6280660号公報 甲第3号証:特開2017-133841号公報 甲第4号証:国際公開第2012/081537号 甲第5号証:特開2004-273682号公報 甲第6号証:特開2018-5672号公報 甲第7号証:特開2016-173263号公報 甲第8号証:特開平8-178787号公報 以下、これらの文献をそれぞれ「甲1文献」?「甲8文献」という。 第4 各文献の記載 1 甲1文献 (1)甲1文献には、以下の記載がある。 (下線は当審が付した。甲2文献についても同様。) 「【0033】 (実施例1) 本例は、外部機器との無線通信が可能な補正回路を備えた圧力センサに関する例である。この内容について、図1?図5を用いて説明する。 本例の圧力センサ11は、作用した圧力の大きさを計測する感圧素子20と、該感圧素子20の計測信号を加工、演算して出力するための補正回路21(図3参照。)とを有するものである。 上記補正回路21は、図3及び図4に示すごとく、無線送信された補正データを受信するデータ通信インターフェース部211と、補正データを格納するメモリ部212と、データ通信インターフェース部211から補正データを入力すると共に、該補正データをメモリ部212に書き込む補正データ書き込み部214と、メモリ部212に格納した補正データに基づいて計測信号を加工、演算する信号処理部213とを有してなる。 以下に、この内容について詳しく説明する。 【0034】 本例の圧力センサ11は、図1に示すごとく、感圧素子20を配設する先端面332を有するコネクタハウジング30と、該コネクタハウジング30を挿入するよう構成したセンサハウジング40とを組み合わせたものである。そして、コネクタハウジング30の先端面332とセンサハウジング40との間には、圧力室452が形成されている。 なお、本例の圧力センサ11では、上記圧力室452内にスペーサ455を配置してある。 【0035】?【0036】 (省略) 【0037】 センサハウジング40における貫通孔410をなす円筒部分の外周には、図1に示すごとく、雄ねじ部442を形成してある。 本例の圧力センサ11は、雄ねじ部442を螺入することにより、計測対象流体が流動する配管パイプ等に接続できるように構成してある。そして、この圧力センサ11は、貫通孔410を経由して流入した計測対象流体が、シールダイヤフラム45に圧力を作用するように構成してある。 【0038】 コネクタハウジング30は、図2に示すごとく、PPS樹脂よりなる樹脂成形品である。このコネクタハウジング30は、感圧素子20と電気的に接続するための3本のターミナルピン31をインサート成形してなる。各ターミナルピン31の端部は、先端面332において感圧素子20の外周側に突出している。また、各ターミナルピン31の他方の端部は、筒状を呈するソケット部300の内部に突出している。 そして、本例の圧力センサ11(図1)は、ソケット部300内に挿入した外部コネクタ(図示略)を介して、駆動電源を供給すると共に計測信号を外部に出力できるように構成してある。 【0039】 (省略) 【0040】 配設部320に配置した感圧素子20は、同図に示すごとく、ボンディングワイヤ311を介して、ピン凹部322に収容したターミナルピン31と電気的に接続してある。なお、ターミナルピン31としては、電源用、グランド用及び信号出力用の3本がある。 ここで、ピン凹部322には、シール材を充填してなるシール層323を形成してある。本例のコネクタハウジング30は、シール層323により、各ターミナルピン31の外周面とピン凹部322の内周面との間のシール性を高く維持できるように構成してある。 【0041】 本例の感圧素子20は、図3に示すごとく、センサダイヤフラム及び歪みゲージを含む計測回路22と、該計測回路22による計測信号を加工、演算する信号処理部213を含む補正回路21とをシリコン基板上に一体的に形成してなる素子である。 上記計測回路22は、センサダイヤフラムに生じた歪みを歪みゲージで計測することにより、上記センサダイヤフラムに作用した圧力の大きさを計測するように構成してある。そして、上記補正回路21は、計測回路22による計測信号を加工して外部に出力するように構成してある。 なお、上記計測回路20としては、上記の構成に限定されるものではなく、これに代えて、作用する圧力に応じて電気的な抵抗値を変化する圧力抵抗効果素子や、圧力が作用するダイヤフラムに生じた変位を静電容量の変化として検知する静電容量素子等を利用して構成することもできる。 【0042】 上記補正回路21は、図4に示すごとく、ループアンテナを有し、該ループアンテナを介して補正データを受信するデータ通信インターフェース部211と、受信した補正データを格納するメモリ部212と、該メモリ部212に補正データを書き込む補正データ書き込み部214と、メモリ部212の補正データに基づいて上記計測信号を加工、演算する信号処理部213とを有する回路である。 なお、同図に示すごとく、感圧素子20は、電源端子201とGND202との間に印加した電圧により動作するように構成してある。 【0043】 本例の信号処理部213では、メモリ部212とのインターフェースをなす部分にメモリ部に格納した補正データを読み込むレジスタ部と、ラダー抵抗型のDAコンバータ部とを形成してある。 この信号処理部213は、レジスタ部に読み込んだデジタルデータに基づいて上記DAコンバータ部を構成するラダー抵抗を適宜、切り替えて、上記デジタルデータに対応したアナログ電圧を生成するように構成してある。 そして、信号処理部213は、該アナログ電圧を基準電圧として、上記計測信号に対してアナログ的な信号処理を施すように構成してある。 【0044】 なお、本例のアナログの信号処理部213に代えて、小規模なマイコンを含む感圧素子を構成し、このマイコンを利用して信号処理部を構成することもできる。 この場合には、マイコンに実装するソフトウェアの書き換えによって上記計測信号の信号処理方法を変更することができる。 【0045】 以上のごとく構成した圧力センサ1について、補正回路21に補正データを設定する調整工程について説明する。 まず、この調整工程は、生産設備としての図示しない調整装置を用いて実施する工程である。 この調整装置は、圧力を任意に調整可能な圧力タンクを有し、該圧力タンクを配置した庫内の温度を任意に調整できるよう構成した恒温槽(図示略)と、補正データを算出すると共に該補正データを無線送信するデータ送出用PC(図示略)とをRS232C等の通信ケーブルを介して接続したものである。 【0046】 ここで、上記圧力タンクは、圧力センサ11の雄ねじ部422を螺入して連結できるように構成してある。また、上記恒温槽の庫内には、圧力センサ11のソケット部300に連結する外部コネクタを配置してある。そして、この外部コネクタを介して、庫内に収容した圧力センサ11を動作させ、その出力信号を取り込むように恒温槽を構成してある。 【0047】 また、上記データ送出用PCは、通信ケーブルを介して、圧力センサ11に作用した圧力、温度の各データと共に、圧力センサ11による出力信号を取り込めるように構成してある。そして、データ送出用PCは、取り込んだ計測データを基にして、補正回路21に設定すべきゼロ点補正値や、補正ゲイン値等の補正データを計算するように構成してある。 さらに、データ送出用PCは、恒温槽から取り出した圧力センサ11に接続する外部コネクタを有している。そして、データ送出用PCは、外部コネクタを接続した圧力センサ11に対して、補正データを無線送信するように構成してある。 【0048】 次に、調整工程の具体的な手順について説明する。 上記調整工程は、圧力センサ11の組み立て工程の後、組み立てた圧力センサ11について実施する工程である。 この工程では、まず、組み立てた圧力センサ11を用意する。そして、上記恒温槽を用い、圧力センサ11を上記圧力タンクに連結すると共に、圧力センサ11のソケット部300に上記外部コネクタを接続する。 【0049】 その後、上記恒温槽は、予めプログラムされた手順に沿って、順次、タンク圧力及び庫内温度を変更すると共に、その都度、圧力センサ11の出力信号を取り込んで上記データ送出用PCに向けて出力する。 なお、恒温槽は、データ送出用PCから入力した制御信号により動作するように構成しても良いし、恒温槽が内蔵するマイコン等の指令によって動作するように構成しても良い。 【0050】 上記の予めプログラムされた手順を終えた後、恒温槽から圧力センサ11を取り出す。そして、データ送出用PCの外部コネクタを圧力センサ11に接続する。 次に、データ送出用PCに格納した補正データ計算プログラムと、データ通信プログラムとを順次、実行する。補正データ計算プログラムでは、恒温槽から取り込んだ計測データに基づいて、上記補正データを算出する。また、データ通信プログラムでは、算出した補正データを圧力センサ11に向けて送信する。 【0051】 なお、ここで、上記補正データ計算プログラムは、恒温槽の上記動作中に実行しておくことも可能である。さらに、恒温槽に向けて上記補正データを送信するように上記データ送出用PCを構成することもできる。この場合には、恒温槽の庫内に収容され、そのコネクタに接続した状態の圧力センサ11に対して、補正データをセットできる。 【0052】 一方、圧力センサ11は、無線送信された補正データをデータ通信インターフェース部211により受信する。そして、受信された補正データは、補正データ書き込み部214に伝送され、さらに、メモリ部212に書き込まれる。 このように、データ送出用PCにデータ通信プログラムを実行させると、圧力センサ11のメモリ部212に補正データを格納できる。そして、メモリ部212に適正な補正データを格納した圧力センサ11では、設計仕様に基づいて精度良く圧力を計測し、信頼性の高い出力信号を生成できる。」 「【図1】 」 「【図3】 」 「【図4】 」 (2)上記(1)において摘記した記載内容を総合すると、甲1文献には、次のとおりの発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 「感圧素子20を配設する先端面332を有するコネクタハウジング30と、該コネクタハウジング30を挿入するよう構成したセンサハウジング40とを組み合わせた圧力センサ11であって、 (【0034】、【図1】) 上記センサハウジング40における貫通孔410をなす円筒部分の外周に形成された雄ねじ部442を、計測対象流体が流動する配管パイプ等に螺入することにより接続できるように構成してあり、 (【0037】、【図1】) 前記圧力センサ11のコネクタハウジング30は、上記感圧素子20と電気的に接続するための3本のターミナルピン31をインサート成形してなり、前記ターミナルピン31としては、電源用、グランド用及び信号出力用の3本があり、各ターミナルピン31の端部は、筒状を呈するソケット部300の内部に突出しており、(【0038】、【0040】、【図1】) 前記圧力センサ11は、ソケット部300内に挿入した外部コネクタを介して、駆動電源を供給すると共に計測信号を外部に出力できるように構成してあり、(【0038】) 上記感圧素子20は、センサダイヤフラム及び歪みゲージを含む計測回路22と、該計測回路22による計測信号を加工、演算する信号処理部213を含む補正回路21とをシリコン基板上に一体的に形成してなる素子であり、電源端子201とGND202との間に印加した電圧により動作するように構成してあり、(【0041】?【0042】) 上記計測回路22は、センサダイヤフラムに生じた歪みを歪みゲージで計測することにより、上記センサダイヤフラムに作用した圧力の大きさを計測するように構成してあり、上記補正回路21は、計測回路22による計測信号を加工して外部に出力するように構成してあり、(【0041】) 上記補正回路21は、ループアンテナを有し、該ループアンテナを介して補正データを受信するデータ通信インターフェース部211と、受信した補正データを格納するメモリ部212と、該メモリ部212に補正データを書き込む補正データ書き込み部214と、メモリ部212の補正データに基づいて上記計測信号を加工、演算する信号処理部213とを有する回路であり、(【0042】、【図4】) 上記アナログの信号処理部213に代えて、小規模なマイコンを含む感圧素子を構成し、このマイコンを利用して信号処理部を構成することもでき、 (【0044】) 上記補正回路21に補正データを設定する調整工程は、生産設備としての調整装置を用いて実施する工程であって、前記圧力センサ11の組み立て工程の後、組み立てた圧力センサ11について実施する工程であり、 (【0045】、【0048】) 前記調整装置は、圧力を任意に調整可能な圧力タンクを有し、該圧力タンクを配置した庫内の温度を任意に調整できるよう構成した恒温槽と、補正データを算出すると共に該補正データを無線送信するデータ送出用PCとをRS232C等の通信ケーブルを介して接続したものであり、(【0045】) 前記圧力タンクは、前記圧力センサ11の雄ねじ部422を螺入して連結できるように構成してあり、前記恒温槽の庫内には、前記圧力センサ11のソケット部300に連結する外部コネクタ(以下、「恒温槽外部コネクタ」という。)を配置してあり、前記恒温槽外部コネクタを介して、庫内に収容した前記圧力センサ11を動作させ、その出力信号を取り込むように恒温槽を構成してあり、(【0046】) 前記データ送出用PCは、前記通信ケーブルを介して、前記圧力センサ11に作用した圧力、温度の各データと共に、前記圧力センサ11による出力信号を取り込めるように構成してあり、取り込んだ計測データを基にして、前記補正回路21に設定すべきゼロ点補正値や、補正ゲイン値等の補正データを計算するように構成してあり、(【0047】) 前記データ送出用PCは、前記恒温槽から取り出した前記圧力センサ11に接続する外部コネクタ(以下、「PC外部コネクタ」という。)を有しており、前記PC外部コネクタを接続した圧力センサ11に対して、補正データを無線送信するように構成してあり、(【0047】) 前記調整工程では、前記圧力センサ11を前記圧力タンクに連結すると共に、圧力センサ11のソケット部300に前記恒温槽外部コネクタを接続し、(【0048】) 前記恒温槽は、予めプログラムされた手順に沿って、順次、タンク圧力及び庫内温度を変更すると共に、その都度、前記圧力センサ11の出力信号を取り込んで前記データ送出用PCに向けて出力し、(【0049】) 前記予めプログラムされた手順を終えた後、前記恒温槽から前記圧力センサ11を取り出して、前記PC外部コネクタを前記圧力センサ11に接続し、(【0050】) 前記データ送出用PCは、補正データ計算プログラムと、データ通信プログラムとを順次、実行して、前記補正データ計算プログラムでは、前記恒温槽から取り込んだ計測データに基づいて、前記補正データを算出し、前記データ通信プログラムでは、算出した前記補正データを前記圧力センサ11に向けて送信し、(【0050】) 前記データ送出用PCは、前記恒温槽に向けて上記補正データを送信し、前記恒温槽の庫内に収容され、前記恒温槽外部コネクタに接続した状態の前記圧力センサ11に対して、前記補正データをセットすることができるようにも構成されており、(【0051】) 前記圧力センサ11は、無線送信された前記補正データをデータ通信インターフェース部211により受信し、受信された前記補正データは、前記補正データ書き込み部214に伝送され、前記メモリ部212に書き込まれるようにして、前記補正回路21に補正データを設定する、 (【0052】、【0045】) 前記圧力センサ11。」 2 甲2文献 (1)甲2文献には、以下の記載がある。 「【0001】 本発明はワイヤレス圧力センサに関し、特に、頭蓋内圧(Intracranial pressure、ICP)を監視・測定できるワイヤレス圧力センサに関する。」 「【実施例1】 【0011】 まず図1を参照する。図1は本発明の一実施例の回路構造図である。図1に示すように、本実施例のワイヤレス圧力センサ10は、ケースモジュール400(図1には示されていないため、図3bまたは図4bを参照できる)、ワイヤレス通信モジュール100、演算回路モジュール200、センサモジュール300を含む。 【0012】 そのうち、ワイヤレス通信モジュール100がケースモジュール400内に設置され、本実施例のワイヤレス通信モジュール100はコイルであり、さらに説明するとワイヤレスRFコイルであり、演算回路モジュール200が前記ワイヤレス通信モジュール100に連接され、センサモジュール300が演算回路モジュール200に連接される。 【0013】 さらに説明すると、演算回路モジュール200は、マイクロコントローラ201、電源供給器202、アナログフロントエンド回路203、ワイヤレスRF受発信器204を含む。そのうち、ワイヤレスRF受発信器204がマイクロコントローラ201に連接され、電源供給器202がマイクロコントローラ201及びワイヤレスRF受発信器204にそれぞれ連接され、アナログフロントエンド回路203がプログラマブルゲインアンプ201a(図1には示されていないため、図2を参照できる)を含み、センサモジュール300からのアナログ信号をデジタル信号に変換する補助を提供してもよく、アナログフロントエンド回路203がマイクロコントローラ201及びセンサモジュール300に連接される。 【0014】 本実施例において、電源供給器202は主に演算回路モジュール200及びセンサモジュール300全体に電力を供給する。そのうち、一実施態様としては、ワイヤレス圧力センサ10のケースモジュール400内に小型リチウム電池等の充電池を収容し、電源を提供する。別の一実施態様としては、ワイヤレスRFリーダーが前記ワイヤレスRF受発信器204に接触して受発信するとき、ワイヤレス給電方式を通じて直接電源供給器202から演算回路モジュール200及びセンサモジュール300全体に電力を供給することができるが、本発明はこれらに限らない。 【0015】 このほか、一部の実施態様において、アナログフロントエンド回路203はマイクロコントローラ201と統合してもよく、例えばアナログ-デジタルコンバータ(Analog-to-digital converter、ADC)機能を備えたマイクロコントローラ201を直接採用することができ、そのような実施方式については図2の関連説明を参照することができる。」 「【0023】 続いて同時に図3aと図3bを参照する。図3aは本発明の一実施例の立体外観図であり、図3bは本発明の一実施例の立体分解図である。図3aに示すように、本実施例のワイヤレス圧力センサ10の外観は、ケースモジュール400内のアダプタ部材401、外殼402、外蓋404、センサモジュール300のセンサカテーテル304で構成されることが分かる。 【0024】 図3bにワイヤレス圧力センサ10を分解した後の各部材の構成状態を示す。そのうち、ワイヤレス圧力センサ10は主に、ケースモジュール400、ワイヤレス通信モジュール100、演算回路モジュール200、センサモジュール300を含む。そのうち、センサモジュール300は前記センサカテーテル304を含み、センサカテーテル上(またはその内部)に圧力センサ305が設置される。本実施例において、圧力センサ305はセンサカテーテルに圧力によって生じる変形量を測定し、フレキシブルプリント配線板306(図3bには示されていないため、図3cを参照)を介して)演算回路モジュール200に送信することができる。 【0025】 本実施例において、ケースモジュール400はアダプタ部材401、外殼402、仕切り板403、外蓋404を含む。本実施例の機構の連結様は、アダプタ部材401とセンサカテーテル304が連結され、その連結方法は旋回させて連結する等の方法とすることができ、外殼402はアダプタ部材401に連結される。その他の実施態様において、センサカテーテル304、アダプタ部材401、外殼402は一体成型の構造としてもよく、本発明はこれに限らない。」 「【0041】 最後に図5を参照する。図5は本発明の実施例の実際の使用を示す概略図である。図5に示すように、本実施例のワイヤレス圧力センサ10は頭蓋内圧の測定に用いることができ、このため、センサモジュール300を皮膚SKN、頭蓋骨SKLに穿通させて頭蓋内ICの測定したい部位に到達させる必要がある。このほか、一部の実施方式において、ケースモジュール400はねじ山等の表面構造を具備するように設計してもよく、噛み合い、嵌合、または螺合等の方式でケースモジュール400を頭蓋骨SKLの開口に結合させ、脱落を防止することができる。」 「【図1】 」 「【図3a】 」 「【図3b】 」 「【図5】 」 (2)上記(1)において摘記した記載内容を総合すると、甲2文献には、次のとおりの発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲2発明] 「ケースモジュール400、ワイヤレス通信モジュール100、演算回路モジュール200、センサモジュール300を含み、頭蓋内圧を監視・測定できるワイヤレス圧力センサ10において、 (【0001】、【0011】、【図1】) 前記ワイヤレス圧力センサ10の外観は、ケースモジュール400内のアダプタ部材401、外殼402、外蓋404、センサモジュール300のセンサカテーテル304で構成され、センサカテーテル304、アダプタ部材401、外殼402は一体成型の構造としてもよく、 (【0023】、【0025】、【図3a】) 前記ケースモジュール400は、ねじ山等の表面構造を具備し、噛み合い、嵌合、または螺合等の方式で前記ケースモジュール400を頭蓋骨SKLの開口に結合させ、脱落を防止することができ、 (【0041】、【図5】) 前記センサモジュール300は、前記演算回路モジュール200に連接され、前記センサカテーテル304を含み、前記センサカテーテル上(またはその内部)に圧力センサ305が設置され、前記圧力センサ305は前記センサカテーテル304に圧力によって生じる変形量を測定し、前記演算回路モジュール200に送信するものであり、 (【0012】、【0024】、【図1】、【図3b】) 前記演算回路モジュール200は前記ワイヤレス通信モジュール100に連接されており、前記ワイヤレス通信モジュール100は、前記ケースモジュール400内に設置されたワイヤレスRFコイルであり、(【0012】、【図1】) 前記演算回路モジュール200は、マイクロコントローラ201、電源供給器202、アナログフロントエンド回路203、ワイヤレスRF受発信器204を含み、前記ワイヤレスRF受発信器204が前記マイクロコントローラ201に連接され、前記電源供給器202が前記マイクロコントローラ201及び前記ワイヤレスRF受発信器204にそれぞれ連接され、(【0013】、【図1】) 前記電源供給器202は主に演算回路モジュール200及びセンサモジュール300全体に電力を供給するものであり、ワイヤレスRFリーダーが前記ワイヤレスRF受発信器204に接触して受発信するとき、ワイヤレス給電方式を通じて直接電源供給器202から前記演算回路モジュール200及び前記センサモジュール300全体に電力を供給することができる、(【0014】、【図1】) ワイヤレス圧力センサ10。」 3 甲3文献 甲3文献には、段落【0020】?【0022】、【0032】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲3記載事項] 「ダイアフラム102の稼働領域102aに形成された可動電極104を歪みゲージとして用いる圧力センサを真空計として使用すること。」 4 甲4文献 甲4文献には、段落【0043】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲4記載事項] 「ワーク容器とマスター容器との間の差圧を計測する差圧センサにおいて、前記マスター容器及びワーク容器内は大気圧状態に設定され、大気圧状態での計測開始前に差圧センサは、0点調整が行われること。」 5 甲5文献 甲5文献には、段落【0031】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲5記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲5記載事項] 「エッチング装置におけるプロセス用圧力計7の校正方法として、エッチング工程(S100)を所定回数実施した後でプロセスチャンバ2の内部圧力を大気圧として、大気圧下で前記プロセス用圧力計7の点検を行う工程(S500)を実施し、前記プロセス用圧力計7の精度が基準を満たさない場合には、前記プロセス用圧力計7の0点調整を行う工程(S600)を実施すること。」 6 甲6文献 甲6文献には、段落【0012】、【0035】?【0036】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲6記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲6記載事項] 「流量調整装置100と外部装置300とをケーブル200を介して接続した流量調整システムにおいて、前記流量調整装置100と前記外部装置300とは、前記ケーブル200を介して通信可能に接続されており、 前記流量調整装置100は、記憶部90と通信部95とを備えており、 前記記憶部90は、制御部30が得た計測流路14を流通する流体の流量(実流量)と、前記外部装置300から受信する目標流量の設定値と、電動駆動部22が進退させる弁体部21の位置から得られる弁体部21の開度と、圧力センサ70が測定する流体の圧力とを対応付けた情報を記憶する装置であり、 前記記憶部90は、情報の書き込みと読み出しを繰り返し行うことが可能な装置であり、例えば、EEPROM等の不揮発性メモリにより構成されており、前記記憶部90への情報の書き込みおよび読み出しは、前記制御部30により制御され、 前記制御部30は、前記通信部95が前記外部装置300から前記情報の送信要求を受信した場合に、前記記憶部90に記憶された前記情報を前記外部装置300へ送信するよう前記通信部95を制御すること。」 7 甲7文献 甲7文献には、【請求項11】、段落【0015】、【0031】?【0036】、【0041】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲7記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲7記載事項] 「上部シート3aと下部シート3bの間に圧力センサ5、制御装置7、電源装置9、配線基板11、断熱材13及び接着剤15が配置されたシート部材3から構成される計測装置1において、 前記制御装置7は、例えば、マイコンチップ7a(演算装置)、メモリチップ7b(記憶装置)、通信ICチップ7c(無線送信装置)、外部接続端子7d及びスイッチ装置7eを備えており、 前記外部接続端子7dは、前記記憶装置7bに記憶されたデータを外部に取り出すためのものであり、データ出力以外の用途、例えばマイコンチップ7aへのプログラム等のデータ入力の用途や、マイコンチップ7aのオンとオフを電気的に切り替える用途などにも使用できること。」 8 甲8文献 甲8文献には、【請求項3】?【請求項4】、段落【0022】、【0041】の記載内容からみて、次の技術事項(以下「甲8記載事項」という。)が記載されていると認められる。 [甲8記載事項] 「圧力発信器の校正装置1が、外部コンピュータ3から校正対象となる圧力発信器の設定値などのデータを読みだし、前記校正装置1で実施した圧力発信器の校正データを前記外部コンピュータ3へ出力するといった前記外部コンピュータ3との情報交換を行うためのインターフェイスを制御装置ユニット13内に内蔵しており、 前記外部コンピュータ3において、前記圧力発信器1の特性変化値,調整の有無、などのメンテナンスデータを管理すること。」 第5 当審の判断 1 本件特許発明1について (1)本件特許発明1と甲1発明との対比・判断 ア 対比 (ア)甲1発明の「計測対象流体が流動する配管パイプ等」は、本件特許発明1の「測定対象物」に相当する。 また、甲1発明の「センサハウジング40における貫通孔410をなす円筒部分の外周に形成された雄ねじ部442」は、「計測対象流体が流動する配管パイプ等に螺入」されることにより「接続」されるから、甲1発明の「センサハウジング40」と「コネクタハウジング30」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体」に相当する。 (イ)甲1発明の「感圧素子20」は、「センサダイヤフラム及び歪みゲージを含む計測回路22」を有し、「上記計測回路22は、センサダイヤフラムに生じた歪みを歪みゲージで計測することにより、上記センサダイヤフラムに作用した圧力の大きさを計測するように構成してあ」るから、甲1発明の「感圧素子20」は、本件特許発明1の「センサ部」に相当する。 また、上記「感圧素子20」は、「コネクタハウジング30」の「先端面332」に「配設」され、「該コネクタハウジング30」は「センサハウジング40」に「挿入」されることから、上記「感圧素子20」は「センサハウジング40」内にあるといえる。 そして、上記「感圧素子20」は、「電源用」及び「グランド用」の「ターミナルピン31」と「電気的に接続」されており、「電源端子201とGND202との間に印加した電圧により動作するように構成して」あるから、本件特許発明1の「電力供給を受けて作動するセンサ部」に相当する。 そうすると、甲1発明の「感圧素子20」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「電力供給を受けて作動するセンサ部」に相当する。 (ウ)甲1発明の「補正回路21」は、「計測回路22による計測信号を加工して外部に出力するように構成してあり」、上記「補正回路21」の「信号処理部213」「に代えて、小規模なマイコンを含む感圧素子を構成し、このマイコンを利用して信号処理部を構成することもでき」るから、この「感圧素子」に含まれる「小規模なマイコン」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「このセンサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部」に相当する。 (エ)甲1発明の「コネクタハウジング30」に「インサート成形」された「3本のターミナルピン31」は、「電源用、グランド用及び信号出力用」として「上記感圧素子20と電気的に接続」され、「端部は、筒状を呈するソケット部300の内部に突出しており」、「ソケット部300内に挿入した外部コネクタを介して、駆動電源を供給すると共に計測信号を外部に出力でき」、「上記感圧素子20」は、「電源端子201とGND202との間に印加した電圧により動作」するから、この「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」及び「電源端子201とGND202」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「制御部とセンサ部に電力供給する電源回路部」に相当する。 (オ)甲1発明の「圧力センサ11」と本件特許発明1の「真空計」とは、圧力測定装置である点で共通する。 (カ)甲1発明では、「上記補正回路21に補正データを設定する調整工程」において、「補正データを算出する」「データ送出用PC」は、「PC外部コネクタ」を「恒温槽から取り出した前記圧力センサ11」に「接続」して、「前記PC外部コネクタを接続した圧力センサ11に対して、補正データを無線送信する」から、この「データ送出用PC」は、無線通信により圧力センサ11の補正回路21(「小規模なマイコン」)に接続可能であり、このことは、本件特許発明1の「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能である」ことに相当する。 そうすると、甲1発明の「PC外部コネクタ」を介して「圧力センサ11」と「接続」された「データ送出用PC」は、本件特許発明1の「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能である端末機」に相当する。 (キ)甲1発明の「上記補正回路21に補正データを設定する調整工程」における「圧力センサ」と「圧力を任意に調整可能な圧力タンクを有し、該圧力タンクを配置した庫内の温度を任意に調整できるよう構成した恒温槽と、補正データを算出すると共に該補正データを無線送信するデータ送出用PCとをRS232C等の通信ケーブルを介して接続した」「調整装置」は、本件特許発明1の「圧力測定システム」に相当する。 以上(ア)?(キ)の対比内容をまとめると、本件特許発明1と甲1発明とは、以下の一致点Aで一致し、以下の相違点A-1ないしA-3で相違する。 [一致点A] 「測定対象物に装着される本体内に、電力供給を受けて作動するセンサ部と、このセンサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部と、制御部とセンサ部に電力供給する電源回路部とを備える圧力測定装置と、通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能である端末機とを有する圧力測定システム。」 [相違点A-1] 「圧力測定装置」が、本件特許発明1では、「真空計」であるのに対して、甲1発明では、「配管パイプ等」に「流動する」「計測対象流体」により「センサダイヤフラムに生じた歪みを歪みゲージで計測することにより、上記センサダイヤフラムに作用した圧力の大きさを計測する」ものであって、「真空計」とはいえない点。 [相違点A-2] 「センサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部」が、本件特許発明1では、「センサ部の作動を制御する」ものであるのに対して、甲1発明では、そのようなものであるか不明である点。 [相違点A-3] 本件特許発明1は、「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能である端末機」が、「電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な」ものであり、「真空計がその制御部に対する端末機からの電力供給を判断できるように構成され、端末機から制御部に対して電力供給されると、真空計の制御部と端末機とが通信回線を介して相互通信自在に接続される」ものであるのに対して、甲1発明では、「圧力センサ11」と「接続」された「データ送出用PC」が、「PC外部コネクタ」を介して、「圧力センサ11」に電力供給しているかどうか不明である点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点A-3について検討する。 (ア)甲1発明の「補正回路21に補正データを設定する調整工程」における「圧力センサ11」への電力供給については、以下の(イ)及び(ウ)に示すとおり、圧力センサ11が恒温槽に接続された場合とデータ送出用PCに接続された場合の2段階に分けて検討を行う。 (イ)まず、「圧力センサ11」は、「調整装置」の「圧力タンク」に「連結」され、「圧力タンクを配置した庫内の温度を任意に調整できるよう構成した恒温槽」の「庫内」に「配置」された「恒温槽外部コネクタを介して」「恒温槽」と接続され、「庫内に収容」されて「動作」するから、圧力センサ11が恒温槽に接続された場合には、「圧力センサ11」は、「恒温槽」用の電源から「恒温槽外部コネクタ」を介して「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」に電力供給されているといえる。 (ウ)次に、「恒温槽」が、「予めプログラムされた手順に沿って、順次、タンク圧力及び庫内温度を変更すると共に、その都度、前記圧力センサ11の出力信号を取り込んで前記データ送出用PCに向けて出力し」、「前記予めプログラムされた手順を終えた後」は、「圧力センサ11」は、「前記恒温槽から」「取り出」され、「PC外部コネクタ」が「前記圧力センサ11に接続」される。 そして、「データ送出用PC」が、「取り込んだ計測データを基にして、前記補正回路21に設定すべきゼロ点補正値や、補正ゲイン値等の補正データを計算」し、「PC外部コネクタを接続した圧力センサ11に対して、補正データを無線送信する」のであるから、圧力センサ11がデータ送出用PCに接続された場合には、「圧力センサ11」は、「データ送出用PC」から「PC外部コネクタ」を介して「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」に電力供給されているようにも思われる。 (エ)しかしながら、「データ送出用PC」から「圧力センサ11」への電力供給については、甲第1号証には何ら記載も示唆もされておらず、甲1発明では、「圧力センサ11」が「データ送出用PC」から「PC外部コネクタ」を介して「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」に電力供給されていると断言することはできない。 仮に、甲1発明では、「圧力センサ11」が「データ送出用PC」から「PC外部コネクタ」を介して「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」に電力供給されているとしても、電力供給源が恒温槽からデータ送出用PCに切り換わる際には、圧力センサ11の恒温槽からの取り出しと、「恒温槽外部コネクタ」から「PC外部コネクタ」への取り替えが行われるが、圧力センサ11自身は電力供給源の切り換えが行われたことを何ら認識しているとはいえないから、甲1発明は、本件特許発明1のように、圧力測定装置(圧力センサ11)がその制御部(小規模なマイコン)に対する端末機(データ送出用PC)からの電力供給を「判断できるように構成」されているとはいえない。 (オ)また、甲1発明では、「圧力センサ11」が「PC外部コネクタ」を介して「電源用」「ターミナルピン」と「グランド用」「ターミナルピン」に電力供給されているとしても、「データ送出用PC」は「算出した前記補正データを前記圧力センサ11に向けて送信」し、「圧力センサ11」は、それを受信するのみであって、「圧力センサ11」から「データ送出用PC」に向けて送信してはいないから、双方向の通信ではなく、本件特許発明1のように、圧力測定装置(圧力センサ11)の制御部(小規模なマイコン)と端末機(データ送出用PC)とが通信回線を介して「相互通信自在」に接続されるとはいえない。 (カ)もっとも、甲1発明では、「前記データ送出用PCは、前記恒温槽に向けて上記補正データを送信し、前記恒温槽の庫内に収容され、前記恒温槽外部コネクタに接続した状態の前記圧力センサ11に対して、前記補正データをセットすることができるようにも構成されて」いるから、この場合には、「恒温槽」を介して、「データ送出用PC」と「圧力センサ11」は「相互通信自在に接続」されているように思われる。 (キ)しかしながら、その場合、「圧力センサ11」は「恒温槽の庫内に収容され、前記恒温槽外部コネクタに接続した状態」にあるから、電力供給源は「恒温槽」であって「データ送出用PC」ではなく、かかる状態における「データ送出用PC」は、もはや「電源回路部に電力供給が可能な端末機」であるとはいえない。 (ク)そして、上記相違点A-3に係る本件特許発明1の構成は、甲2発明及び甲3?8記載事項のいずれにも開示されていないから、圧力センサ11と接続されたデータ送出用PCが、PC外部コネクタを介して、圧力センサ11に電力供給しているとは断言できず、圧力センサ11がその制御部(小規模なマイコン)に対するデータ送出用PCからの電力供給を判断できるように構成されているともいえず、しかも、圧力センサ11の制御部(小規模なマイコン)とデータ送出用PCとが通信回線を介して相互通信自在に接続されるとはいえない甲1発明に、上記甲2発明及び甲3?8記載事項を如何に適用しても、当業者が上記相違点A-3に係る本件特許発明1の構成とすることは容易であるとはいえない。 (ケ)したがって、相違点A-1及び相違点A-2を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1文献に記載された発明ではなく、また、甲1?8文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件発明1と甲2発明との対比・判断 ア 対比 (ア)甲2発明の「頭蓋内圧を監視・測定」する際の「頭蓋」は、本件特許発明1の「測定対象物」に相当する。 また、甲2発明の「ワイヤレス圧力センサ10の外観」を「構成」する「ケースモジュール400内のアダプタ部材401、外殼402、外蓋404、センサモジュール300のセンサカテーテル304」であって、「センサカテーテル304、アダプタ部材401、外殼402」を「一体成型の構造」としたものは、本件特許発明1の「本体」に相当する。 さらに、甲2発明の「ケースモジュール400」が「ねじ山等の表面構造を具備し、噛み合い、嵌合、または螺合等の方式で前記ケースモジュール400を頭蓋骨SKLの開口に結合」することは、本件特許発明1の「本体」が「測定対象物に装着される」ことに相当する。 (イ)甲2発明の「センサモジュール300」は、「センサカテーテル304を含み、前記センサカテーテル」の「内部」に「圧力センサ305が設置され」ているから、甲2発明の「圧力センサ305」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「センサ部」に相当する。 また、甲2発明の「センサモジュール300」は、「電源供給器202」から「電力を供給」されるから、このような「センサモジュール300」に含まれる「圧力センサ305」は、本件特許発明1の「電力供給を受けて作動するセンサ部」に相当する。 そうすると、甲2発明の「圧力センサ305」は、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「電力供給を受けて作動するセンサ部」に相当する。 (ウ)甲2発明の「演算回路モジュール200」は、「マイクロコントローラ201」と「ワイヤレスRF受発信器204」を含み、「圧力センサ305」が「測定」した「センサカテーテル304に圧力によって生じる変形量」が「センサモジュール300」から「送信」され、「ワイヤレス通信モジュール100に連接されて」いるから、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「このセンサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部」に相当する。 (エ)甲2発明の「電源供給器202」は、「主に演算回路モジュール200及びセンサモジュール300全体に電力を供給するもの」であるから、本件特許発明1の「測定対象物に装着される本体内」に備えられた「制御部とセンサ部に電力供給する電源回路部」に相当する。 (オ)甲2発明の「ワイヤレス圧力センサ10」と本件特許発明1の「真空計」とは、圧力測定装置である点で共通する。 (カ)甲2発明では、「ワイヤレスRFリーダーが前記ワイヤレスRF受発信器204に接触して受発信するとき、ワイヤレス給電方式を通じて直接電源供給器202から前記演算回路モジュール200及び前記センサモジュール300全体に電力を供給することができる」から、甲2発明の「ワイヤレスRFリーダー」は、本件特許発明1の「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能であると共に、電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な端末機」と、「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能であると共に、電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な」機器である点で共通する。 (キ)甲2発明の「ワイヤレス圧力センサ10」と「ワイヤレスRFリーダー」は、本件特許発明1の「圧力測定システム」に相当する。 以上(ア)?(キ)の対比内容をまとめると、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の一致点Bで一致し、以下の相違点B-1ないしB-4で相違する。 [一致点B] 「測定対象物に装着される本体内に、電力供給を受けて作動するセンサ部と、このセンサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部と、制御部とセンサ部に電力供給する電源回路部とを備える圧力測定装置と、通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能であると共に、電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な機器とを有する圧力測定システム。」 [相違点B-1] 「圧力測定装置」が、本件特許発明1では、「真空計」であるのに対して、甲2発明では、「頭蓋内圧を監視・測定」するものであって、「真空計」とはいえない点。 [相違点B-2] 「センサ部からの入力を処理して所定の信号を出力する制御部」が、本件特許発明1では、「センサ部の作動を制御する」ものであるのに対して、甲2発明では、そのようなものであるか不明である点。 [相違点B-3] 「通信回線を介して通信自在に制御部に接続可能であると共に、電源回路部に有線または無線による電力供給が可能な機器」が、本件特許発明1では、「端末機」であるのに対して、甲2発明では、「ワイヤレスRFリーダー」であって、「端末機」であるとはいえない点。 [相違点B-4] 本件特許発明1は、「真空計がその制御部に対する端末機からの電力供給を判断できるように構成され、端末機から制御部に対して電力供給されると、真空計の制御部と端末機とが通信回線を介して相互通信自在に接続される」のに対して、甲2発明は、そのような構成を備えていない点。 イ 判断 事案に鑑み、上記相違点B-4について検討する。 圧力測定装置が、その制御部に対する端末機からの電力供給を判断できるように構成されることは、上記(1)イ(エ)において検討したように甲1発明に開示されておらず、また、甲3?8記載事項のいずれにも開示されていないから、甲2発明に、上記甲1発明及び甲3?8記載事項を如何に適用しても、当業者が上記相違点B-4に係る本件特許発明1の構成とすることは容易であるとはいえない。 したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2文献に記載された発明ではなく、また、甲1?8文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 2 本件特許発明2?7について 本件特許発明2?7は、本件特許発明1の構成をすべて含むものであるから、上記1に示した理由と同様の理由により、本件特許発明2?7は、甲1文献に記載された発明ではなく、甲2文献に記載された発明でもなく、甲1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 3 申立人の主張 (1)申立人は、本件特許発明1及び2がいずれも新規性がない旨主張する。 しかしながら、上記1(1)及び(2)において検討したとおり、本件特許発明1と甲1発明とは、上記相違点A-1ないしA-3が存在し、また、本件特許発明1と甲2発明とは、上記相違点B-1ないしB-4が存在するから、本件特許発明1及び2は新規性を欠くものではなく、申立人の上記主張には理由がない。 (2)申立人は、本件特許発明3?7がいずれも進歩性がない旨主張する。 しかしながら、上記2において述べたように、本件特許発明3?7は、甲1?8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないから、申立人の上記主張には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-07-30 |
出願番号 | 特願2019-547522(P2019-547522) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
Y
(G01L)
P 1 651・ 121- Y (G01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 森 雅之 |
特許庁審判長 |
中塚 直樹 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 中澤 真吾 |
登録日 | 2019-11-01 |
登録番号 | 特許第6609728号(P6609728) |
権利者 | 株式会社アルバック |
発明の名称 | 圧力測定システム |
代理人 | 特許業務法人青莪 |