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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) G02C
管理番号 1364977
判定請求番号 判定2020-600012  
総通号数 249 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 2020-09-25 
種別 判定 
判定請求日 2020-03-03 
確定日 2020-08-06 
事件の表示 上記当事者間の特許第3955432号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 イ号図面及びその説明書に示す「スナップ付きブリッジを有する眼鏡類」は、特許第3955432号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 第1 事案の概要
1 手続の経緯
特許第3955432号(以下「本件特許」という。)は、特願2000-302262号として平成12年10月2日に出願され、平成19年1月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年3月19日に手続補正(以下「本件補正」という。)がされ、平成19年4月10日付けで特許すべき旨の査定がされ、平成19年5月11日に特許権の設定の登録がされたものである。
本件特許に関して、令和2年3月3日、判定請求人 株式会社パルス から特許権者を被請求人とする判定が請求された(判定2020-600012号)ところ、被請求人から令和2年5月22日、答弁書が提出された。
答弁書には以下の証拠が添付されている。
乙1:特開2003-261826号公報
乙2:特開平1-295652号公報

2 請求の趣旨
参考図に示す構造(以下「イ号物品」という。)は、特許第3955432号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属しない、との判定を求める。


第2 本件特許発明
本件特許発明は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、本件特許の構成を分説すると以下のとおりとなる(以下「構成要件A」などという。)。

「 (A)一組のレンズ及び一組の枠を有し、
(B)レンズを各枠に取り付け、
(C)磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け、
(D)つるの後方端間を、形状を保持する堅さと弾力性、曲げることができる可撓性を有するストラップによって連結するようにし、
(E)眼鏡類の装着と取り外しを、前記磁石のみからなる一組の連結器により、枠の内端を連結又は分離することにより行う際、前記形状を保持するストラップを介して、レンズを眼の前に正しく配置することができるようにするとともに、装着しない時、首のまわりにかけることができるようにした
(F)ことを特徴とする眼鏡類。」


第3 イ号物品
イ号物品は、別紙「(4)イ号物品の説明」及び「参考図」の記載のとおりのものである。
イ号物品を本件特許発明の構成要件に対応させて分説して記載すると以下のとおりとなる(以下「構成a」などという。)。

「 (a)一組のレンズ(1)及び一組の枠(2)を有し、
(b)レンズ(1)を各枠(2)に取り付け、
(c)2つの磁石(3)を、枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に、各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け、つる(5)を枠(2)の各外端(2B)に取り付け、
(d)塗布膜(4)で、各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆し、塗布膜(4)の表面および各枠(2)の内端(2A)の端面は略同一面内に形成されており、塗布膜(4)の厚さは各磁石(3)の端面上で1mm程度となっており、
(e)つる(5)の後方端間を、形状を保持する硬さと弾力性、曲げることができる可撓性を有するストラップ(6)によって連結するようにし、
(f)眼鏡類の装着と取り外しを、2つの磁石(3)により、各枠(2)の内端(2A)を連結又は分離することにより行う際、形状を保持するストラップ(6)を介して、レンズ(1)を眼の前に正しく配置することができるようにするとともに、装着しない時、クビのまわりにかけることができるようにした
(g)ことを特徴とする眼鏡類。」


第4 当事者の主張
1 請求人の主張
(1)請求人は、判定請求書の「(5-1)本件特許発明とイ号物品との一致点」及び「(5-2)本件特許発明とイ号物品との相違点」において、イ号物品の構成a、b、c、e、f及びgの点は、それぞれ、本件特許発明の構成要件A、B、D、E及びF並びに構成要件Cの「磁石のみからなる一組の連結器を枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け」の点を充足するとしている一方で、イ号物品の構成dの点は、塗布膜(4)が設けられていることから、本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点を充足しないと主張している。

(2)請求人は、判定請求書の「(5-3)相違点の解釈」において、イ号物品と本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」について、以下の主張をしている。
ア イ号物品では、本件特許発明のような各磁石(3)の端面の露出を避けるために、あえて、各磁石(3)の端面を覆う塗布膜(4)が設けられている。この塗布膜(4)は、各磁石(3)端面の酸化や腐食を防止しつつ、磁石(3)同士の連結力が十分に得られる範囲内の厚さとなっていることが求められる。その結果、塗布膜(4)の厚さは、各磁石(3)の端面上で1mm程度となっている。
イ 本件特許発明の構成要件Cの「磁石」そのものに皮膜があらかじめ設けられている場合もある。しかし、そのような皮膜は非常に薄い。しかも、「磁石」の端面が枠の内端の端面と同一面にあるか、または、枠の内端の端面よりも高い位置にある場合には、本件特許発明の構成要件Cの「磁石」の端面における端縁は外部からの衝撃を受け易く、本件特許発明の構成要件Cの「磁石」の端面における端縁が外部からの衝撃を受けたときには、皮膜に傷や欠けが生じ易い。
従って、本件特許発明の構成要件Cの「磁石」そのものにあらかじめ設けられたた皮膜では、塗布膜(4)によって得られる効果が期待できない。

(3)請求人は、更に判定請求書の「(6)イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの説明」において、イ号物品が本件特許発明に対する均等論の適用の範囲にあたらないとして、以下の主張をしている。
ア 第1要件
本件特許発明の連結器は、本件特許発明における本質的部分である。その本質的部分において、イ号物品は、構成dの点で相違している。
イ 第3要件
互いに連結させる磁石と磁石との間には何も挟まず、磁石同士を直接、接触させることにより磁石同士を連結させることは当業者における、磁石の使い方の常識である。本件特許発明において、磁石の端面に、その端面を覆う塗布膜(4)を設けることを当業者が容易に想到できるとは到底考えられない。
ウ 第5要件
出願人は、平成19年3月19日付けの手続補正書により、登録実用新案第3019999号公報(引用例1)との相違点を明確にするために、請求項1に対して、「磁石のみからなる一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付ける」という内容を追加する補正を行った。このことから、「磁石の端面を何らかの部材で覆い、磁石の端面が露出しないようにする」ことについては、出願人によって意識的に除外されたと考えるのが相当である。

2 被請求人の主張
被請求人は、判定請求答弁書において、参考図に示す構造(以下、「イ号物品」という。)は、特許第3955432号発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるとして、以下の主張をしている。

(1)請求人が主張する本件特許発明とイ号物品との一致点、相違点について、一致点とした点は認め、イ号物品の構成dの点は、塗布膜(4)が設けられていることから、本件特許発明の構成要件Cの「一組の連結器を磁石の端面が露出するように枠の各内端に取り付け」の点を充足しないとした点は争う。

(2)本件特許発明の眼鏡類に使用される「磁石」は、そのままでは非常に錆びやすく、これを防止するために、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けることが一般的に行われている。
また、磁石の表面に設ける酸化防止皮膜の材料としては、金属材料のほか、硬化性樹脂材料が一般的に用いられている(例えば、乙第1号証?乙第2号証参照。)。
したがって、このような技術的背景を勘案すると、磁石の表面に酸化防止皮膜が設けられていても、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出」を充足するものであるといえる。

(3)イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜(4)と、磁石の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜とは、形成される工程は異なるものの、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通しており、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」を充足するものであるといえる。

(4)請求人が主張する「各磁石(3)が凹部2Cから脱落するのを、塗布膜(4)によって防止することができる。」との効果は、イ号物品において、本件特許発明の構成要件を充足した上で、これに付加された構成によって奏せられる作用効果であって、当該作用効果が奏せされることがあったとしても、それが、イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの理由にはなり得ない。

(5)塗布膜(4)の厚さについて、「各磁石(3)の端面上で1mm程度」と記載されているが、当該厚さは、酸化防止皮膜の機能と、2つの磁石(3)同士の連結の機能とを勘案して決定する設計的な事項にすぎず、「各磁石(3)端面上で1mm程度」とすることが、イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの理由にはなり得ない。


第5 対比・判断
1 各構成要件の充足性について
(1)構成要件A、B、D、E及びFの充足性について
イ号物品の構成a、b、e、f及びgは、それぞれ、本件特許発明の構成要件A、B、D、E及びFを充足する。

(2)構成要件Cの充足性について
イ号物品の構成cは、本件特許発明の構成要件Cのうち、「磁石のみからなる一組の連結器を」「枠の各内端に、つるを枠の各外端に、それぞれ取り付け」の部分を充足する。

なお、上記(1)及び(2)の充足性について、当事者の間に争いはない。

(3)構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分の充足性について
ア 構成要件Cに関して、本件特許発明は、「磁石の端面が露出」しているのに対し、イ号物品は、「塗布膜(4)で」「各磁石(3)の端面を被覆し」ている。そこで、特許請求の範囲に記載された「露出」の意義を解釈するために、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮すると、明細書には、「露出」について特段の定義は記載されておらず、また、明細書には、そもそも「露出」なる用語の記載がない(本件補正により特許請求の範囲に記載された用語である。)。ただし、本件特許の図3においては、連結器11が、覆いなくむき出しになっている様子が見て取れる。

【図3】

したがって、磁石の端面の「露出」については、「何の覆いもなくあらわに見えていること」を意味すると解するのが相当である。また、このような解釈は一般的な「露出」の意味である「あらわに、むき出しになること。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]とも整合する。

イ イ号物品において、「2つの磁石(3)」は、「枠(2)の各内端(2A)に設けられた凹部(2C)内に、各磁石(3)の端面が各内端(2A)の端面よりも低くなるように取り付け」、「塗布膜(4)で」、「各磁石(3)の端面を被覆し」ている。

ウ ここで、イ号物品の「塗布膜(4)」は、「各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆し」ており、また、「塗布膜(4)の表面及び各枠(2)の内端(2A)の端面は略同一面内に形成されて」いるのであるから、イ号物品の「磁石」は、「各枠(2)」及び「塗布膜(4)」によって、完全に覆われることとなる(この点は、参考図の【イ号図3】、【イ号図4】からも見て取れる事項である。)。したがって、イ号物品の「磁石」は、「塗布膜(4)」によって端面が全面覆われており、「磁石の端面が露出」しているとはいえない。

エ ところで、磁石においては、その表面に酸化防止を目的とした皮膜を設けることが、当業者において周知慣用されており、また、表面の皮膜を含めて(皮膜を磁石の一部とみなして)「磁石」という場合もある。しかしながら、イ号物品における「塗布膜(4)」は、「各凹部(2C)を埋め込むとともに、各磁石(3)の端面を被覆」するものである。したがって、イ号物品における「塗布膜(4)」は、磁石の製造時に、磁石の表面に設けられる酸化防止の皮膜とは異なるものと解するのが妥当であるから、これを「磁石」の一部をなす部材とみることはできない。

オ 以上から、イ号物品の構成dは、本件特許発明の構成要件Cの「磁石の端面が露出するように」の部分を充足しない。

(4)各構成要件の充足性のまとめ
上記(3)のとおり、イ号物品は、本件特許発明の構成要件Cを充足しない。

2 均等について
請求人は、判定請求書において、イ号物品は、均等の第1要件、第3要件及び第5要件を満たさないから均等論の適用の範囲にあたらない旨を具体的に主張している。これに対して、被請求人は、判定請求答弁書において、均等について、第1?3要件について何ら主張、立証をせず、また、第5要件について何ら反論をしなかった。
以上鑑みると、当合議体は、均等論の観点からも,イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属するとは、判断できない。

3 被請求人の主張について
(1)被請求人は、磁石の表面に酸化防止皮膜を設けることが一般的に行われており、磁石の表面に酸化防止皮膜が設けられていても、本件特許発明の構成要件C中の「磁石の端面が露出」を充足すると主張している。また、被請求人は、イ号物品の製造時に磁石(3)の表面に酸化防止の目的で設けられた塗布膜(4)と、磁石の製造時に磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜とは、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通していると主張している。さらに、被請求人は、各磁石(3)が凹部2Cから脱落するのを、塗布膜(4)によって防止することができるとの効果は、イ号物品において、本件特許発明の構成要件を充足した上で、これに付加された構成によって奏せられる作用効果であると主張している。
しかし、上記1(3)のとおり、イ号物品の「塗布膜(4)」は,磁石の製造時ではなくイ号物品の製造時に設けられたものであるから、イ号物品の「塗布膜(4)」は、磁石の一部を構成するものとみなすことができない。したがって、イ号物品の「塗布膜(4)」と磁石の酸化防止皮膜とが、磁石の表面に酸化防止の目的で設けられる皮膜の点で共通しているとしても、イ号物品が、上記構成要件C中の「磁石の端面が露出する」の部分を充足するということはできない。

(2)また、塗布膜(4)の厚さについて、イ号物品は各磁石(3)の端面上で1mm程度であるが、被請求人は、当該厚さは設計的な事項にすぎず、「各磁石(3)端面上で1mm程度」とすることが、イ号物品が本件特許発明の技術的範囲に属しないとの理由にはなり得ないと主張している。
しかし、上記1(3)のとおり、イ号物品の「塗布膜(4)」は、磁石の一部を構成するものとはいえない。したがって、充足/非充足の観点においては、被請求人の主張を採用することはできない。

4 まとめ
イ号物品は、本件特許発明の構成要件Cを充足していない。また、被請求人は、均等について何ら反論をしなかったから、イ号物品は、本件特許発明の均等物であるということもできない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、イ号物品は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。


別紙「(4)イ号物品の説明」及び「参考図」



 
判定日 2020-07-29 
出願番号 特願2000-302262(P2000-302262)
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (G02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 越河 勉  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
井口 猶二
登録日 2007-05-11 
登録番号 特許第3955432号(P3955432)
発明の名称 スナップ付きブリッジを有する眼鏡類  
代理人 森 治  
代理人 森 治  
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