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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1365388
審判番号 不服2019-15726  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-22 
確定日 2020-09-14 
事件の表示 特願2018-126618「検体測定の遠隔監視」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月 8日出願公開、特開2018-171485、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)12月19日(パリ条約による優先権主張2012年12月31日(US)アメリカ合衆国、2013年3月15日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2015-550498号の一部を平成30年7月3日に新たな外国語書面出願としたものであって、平成30年7月11日付けで手続補正がされ、平成31年1月28日付けで拒絶理由通知がされ、令和元年5月7日付けで手続補正がされ、同年10月7日付けで、同年5月7日にされた手続補正が却下されるとともに同時に拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月22日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、令和2年1月24日に前置報告がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

理由1.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由2.(新規性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由3.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2006-239084号公報

第3 本願発明
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和元年11月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

[請求項1]遠隔モニタで、ホストの検体状態を監視する受信器から取得された検体センサデータから、サーバによって検出された事象を表す通知メッセージを受信することと、前記遠隔モニタが前記通知メッセージを受信すると、前記遠隔モニタを有効にし、前記遠隔モニタで、前記通知メッセージを、提示することであって、前記遠隔モニタの有効化は、監視アプリケーションを有効にすることを含む、提示することと、前記通知メッセージの前記提示に応答して、前記遠隔モニタによって、前記サーバにアクセスすることと、前記アクセスに応答して、少なくとも前記検体センサデータを含む情報を受信することと、を含む、方法。

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した)。

(引1a)「[0001] 本発明は、携帯端末により有線及び/ 又は無線ネットワークにより接続する複数の状態測定装置を監視する方法に関する。特に、病院において看護師が入院している複数の患者
の状態の監視項目として使う動脈血酸素飽和度(以下、S_(p)O_(2)、脈拍数等を測定する生体情報モニターを携帯端末でリアルタイムに監視する方法に関する。」

(引1b)「[0023]この実施例における生体情報モニター20は、S_(p)O_(2)、脈拍数、血圧をモニタリングすることができる。生体情報モニター20はケーブルにより患者の指等に装着される。生体情報モニター20が測定したデータはアクセスポイント30によりネットワークを介してサーバ40に蓄積される。アクセスポイントは無線基地局であるとともに有線LANを収容でき、生体情報モニター20とアクセスポイント30とは有線、又は無線により接続されている。

[0024] ネットワークにはサーバ40が接続しており、生体情報モニター20が送信するデータを格納している。また、管理用パソコン50から入力された患者データも生体情報モニターと関連付けられてサーバ40に格納される。」

(引1c)「[0026] 携帯端末10とアクセスポイント30とは無線により接続する。サーバ40には生体情報モニター20から一定間隔で患者のS_(p)O_(2)値、脈拍数、血圧値が送信されてくる。サーバ40は送信されてくるデータを格納するとともに、所定の携帯端末10にその携帯端末を携行する看護師が監視する生体情報モニターの情報を所定の間隔で送信する。

[0027]図2は携帯端末10に通常表示される画面の一構成例である。この画面の構成例では、生体情報モニター20を「東3」、「西3」、及び「北3」の3グループにグループ化している。この3グループはこれらのシンボルでグループ表示エリア120に表示される。

[0028] グループ表示エリア120において、「東3」をクリックすることによりグループ表示エリア110には、「東3」グループに設置されている全ての状態測定装置がシンボルにより表示される。ここでは「東3」の生体情報モニターの1番をE301として表示している。

[0029] E301に相当する生体情報モニターに異常が発生するとE301は色が変化等することで異常が発生したことを看護師に伝える。なお「ALL」を選択することにより、全ての生体情報モニターのシンボルを携帯端末10の画面に表示することができる。

[0030] 発生した異常内容は簡単なメッセージとして、メッセージ表示エリア130にリアルタイムで表示される。図2においてはE301に発生した異常は、発生した時刻、異常内容、及びアラーム発生の上限値、又は下限値とともに表示される。E301で発生したより詳細な異常内容を知るには、E301をクリックすれば良い。

[0031]図3はE301が送信する患者の詳細情報を表示する画面の一構成例である。詳細情報表示エリア160には、表示中の生体情報モニターはE301であること、患者のID、入床日、患者の氏名、患者の主治医、主治医の連絡先が表示される。また、S_(p)O_(2)値、血圧値、及びPIが表示される。更に、患者の連絡先も表示される。」

(引1d)「[0040]更に、メッセージから、より詳細な内容を知る必要があると判断した場合は、生体情報モニターのシンボル、例えばE301をクリックすることにより、図3に示す詳細画面を表示させることができる。」

(引1e)「図2


(2)引用文献1に記載された発明
ア 上記記載において「生体情報モニター」と「生体情報モニター20」及び「携帯端末」と「携帯端末10」とは、同じものを指していることは明らかであるから、それぞれ、「生体情報モニター20」及び「携帯端末10」として整理した。

イ アを踏まえると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「S_(p)O_(2)、脈拍数等を測定する生体情報モニター20を携帯端末10でリアルタイムに監視する方法において
生体情報モニター20は、S_(p)O_(2)、脈拍数、血圧をモニタリングすることができ、ケーブルにより患者の指等に装着され、
生体情報モニター20が測定したデータはアクセスポイント30によりネットワークを介してサーバ40に蓄積され、
サーバ40は所定の携帯端末10にその携帯端末10を携行する看護師が監視する生体情報モニター20の情報を所定の間隔で送信し、患者データも生体情報モニター20と関連付けられてサーバ40に格納され、
携帯端末10に通常表示される画面は、生体情報モニター20を「東3」、「西3」、及び「北3」の3グループにグループ化し、この3グループはこれらのシンボルでグループ表示エリア120に表示され、グループ表示エリア120において、「東3」をクリックすることによりグループ表示エリア110には、「東3」グループに設置されている全ての状態測定装置がシンボルにより表示され、「東3」の生体情報モニター20の1番をE301として表示し、E301に相当する生体情報モニター20に異常が発生するとE301は色が変化等することで異常が発生したことを看護師に伝え、発生した異常内容は簡単なメッセージとして、メッセージ表示エリア130にリアルタイムで表示し、
E301に発生した異常は、S_(p)O_(2)下限、脈拍下限であって、発生した時刻、異常内容、及びアラーム発生の上限値、又は下限値とともに表示し、メッセージから、より詳細な内容を知る必要があると判断した場合は、生体情報モニター20のシンボル、例えばE301をクリックすることにより、詳細情報表示エリア160には、表示中の生体情報モニター20はE301であること、患者のID、入床日、患者の氏名、患者の主治医、主治医の連絡先、S_(p)O_(2)値、血圧値、及びPI、患者の連絡先が表示される、S_(p)O_(2)、脈拍数等を測定する生体情報モニター20を携帯端末10でリアルタイムに監視する方法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。

ア 引用発明の「携帯端末10に通常表示される画面」、「患者」、「生体情報モニター20」、「サーバ40」、「S_(p)O_(2)下限、脈拍下限」及び「メッセージ」はそれぞれ、本願発明1の「遠隔モニタ」、「ホスト」、「受信器」、「サーバ」、「異常」及び「通知メッセージ」に相当する。そして、引用発明における「携帯端末10に通常表示される画面」に「表示され」るメッセージは、受信しなければ表示できないものであるから携帯端末で表示される前に受信しているものと認められる。また、引用発明は、「異常が発生したことを看護師に伝え」るものであるから、「異常内容」は検出されているものである。
よって、引用発明における「看護師が」「携行する」「携帯端末」で、「患者の」「S_(p)O_(2)、脈拍数、血圧をモニタリングする」「生体情報モニターが測定したデータ」「をサーバ40に蓄積し」「S_(p)O_(2)下限、脈拍下限であ」る「異常内容」を「表示され」る「メッセージ」を受信することは、本願発明1における「遠隔モニタで、ホストの検体状態を監視する受信器から取得された検体センサデータから、サーバによって検出された事象を表す通知メッセージを受信すること」と、遠隔モニタで、ホストの状態を監視する受信器から取得されたセンサデータから、検出された事象を表す通知メッセージを受信することという点で共通する。

イ 引用発明は「携帯端末10に通常表示される画面」に「表示され」る「詳細な内容」として、「患者のID、入床日、患者の氏名、患者の主治医、主治医の連絡先、S_(p)O_(2)値、血圧値、及びPI、患者の連絡先が表示される」のであるから、携帯端末が、患者データが生体情報モニターと関連付けられて格納されているサーバにアクセスしている。また、引用発明は「携帯端末10に通常表示される画面」に「表示され」る「詳細な内容」として、「患者のID、入床日、患者の氏名、患者の主治医、主治医の連絡先、S_(p)O_(2)値、血圧値、及びPI、患者の連絡先が表示される」のであるから、表示する前に、センサデータを含む情報を受信しているものである。
よって、引用発明における「メッセージとして」「表示され」「より詳細な内容を知る必要があると判断した場合は、生体情報モニターのシンボル」「をクリックすることにより」「携帯端末」がサーバにアクセスすること、と、「クリックすることにより」「患者のID、入床日、患者の氏名、患者の主治医、主治医の連絡先、S_(p)O_(2)値、血圧値、及びPI、患者の連絡先」を受信する「監視する方法」は、本願発明1における「前記通知メッセージの前記提示に応答して、前記遠隔モニタによって、前記サーバにアクセスすることと、前記アクセスに応答して、少なくとも前記検体センサデータを含む情報を受信することと、を含む、方法。」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「遠隔モニタで、ホストの状態を監視する受信器から取得されたセンサデータから、検出された事象を表す通知メッセージを受信することと、前記通知メッセージの前記提示に応答して、前記遠隔モニタによって、前記サーバにアクセスすることと、前記アクセスに応答して、少なくとも前記センサデータを含む情報を受信することと、を含む、方法。」

(相違点)
(相違点1)監視するホストの状態として、本願発明1は検体の状態を監視するのに対し、引用発明は、S_(p)O_(2)値、脈拍数、血圧値を監視する点。
(相違点2)事象を検出するのが、本願発明1はサーバであるのに対し、引用発明はどこの機構が検出しているのか定かでない点。
(相違点3)遠隔モニタが通知メッセージを受信すると、本願発明1は遠隔モニタを有効にし、遠隔モニタで、通知メッセージを、提示することであって、遠隔モニタの有効化は、監視アプリケーションを有効にすることを含む、提示するのに対し、引用発明は遠隔モニタを有効化するのか否か定かでない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
引用発明において、「サーバ40は所定の携帯端末10にその携帯端末を携行する看護師が監視する生体情報モニターの情報を所定の間隔で送信」するものである。また、「携帯端末10に通常表示される画面は、生体情報モニター20を「東3」、「西3」、及び「北3」の3グループにグループ化し、この3グループはこれらのシンボルでグループ表示エリア120に表示され・・・異常が発生するとE301は色が変化等することで異常が発生したことを看護師に伝え」、「発生した異常内容は簡単なメッセージとして、メッセージ表示エリア130にリアルタイムで表示される」ものであるから、異常の発生及びメッセージの表示前から、携帯端末10による監視機能、つまり監視アプリケーションは有効になっているものである。
してみると、引用発明において、携帯端末10がメッセージを受信することを契機に、監視アプリケーションを有効にする動機付けがあるとはいえない。
また、前置報告で引用された文献に記載された事項を考慮しても、当該相違点3に係る構成が、周知技術であるとはいえない。
さらに、本願発明1は、当該相違点3に係る構成を具備することにより、[0031]欄に記載されているように、遠隔モニタの電力を節約することができるという効果を奏するものである。
したがって、上記相違点1、2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について
1 理由1(明確性)について
原査定の拒絶の理由1は、概略、請求項1の「・・・受信機を増強するための・・・」との記載は明確でない。また、請求項1の「遠隔モニタを有効にする」との構成は、遠隔モニタの何を有効にするのか明確でないというものである。
これに対し、審判請求時の補正により「受信機を増強するための」という記載は削除された。
また、審判請求時の補正により、「遠隔モニタを有効にする」との記載は、「遠隔モニタで、通知メッセージを、提示することであって、遠隔モニタの有効化は、監視アプリケーションを有効にすることを含む」と補正され、有効にする対象が明確に把握することができるようになった。
よって、原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2、3(新規性進歩性)について
上記第5のとおり、審判請求時の補正により補正された本願発明1は、引用発明との対比において、実質的相違点を有するものである。よって、本願発明1は、引用発明であるとはいえない。
また、上記第5のとおり、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
よって、原査定の理由2、3を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-08-24 
出願番号 特願2018-126618(P2018-126618)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 増渕 俊仁  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 福島 浩司
磯野 光司
発明の名称 検体測定の遠隔監視  
代理人 阿部 達彦  
代理人 村山 靖彦  
代理人 実広 信哉  

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