ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61L 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61L |
---|---|
管理番号 | 1365454 |
審判番号 | 不服2019-9578 |
総通号数 | 250 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2020-10-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-18 |
確定日 | 2020-09-08 |
事件の表示 | 特願2014-181149「空気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月19日出願公開、特開2015- 51268、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年 9月 5日(パリ条約による優先権主張 2013年 9月 5日 (KR)大韓民国 2013年 9月 5日 (KR)大韓民国)の出願であって、平成29年8月31日付けで手続補正書が提出され、平成30年 8月13日付けで拒絶理由通知がされ、同年11月13日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成31年 3月12日付けで拒絶査定(以下、原査定という)がされ、これに対し、令和 1年 7月18日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年10月 4日付けで上申書が提出され、同年12月 5日付けで上申書が提出されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次の通りである。 理由1.請求項1,19に係る発明は、以下の引用文献1又は2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 理由2.請求項1-31に係る発明は、以下の引用文献1又は2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2001-079072号公報 2.特開2005-328915号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?7に係る発明は、令和1年7月18日付けで提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された次のとおりのものであると認める。 「 【請求項1】 空気流入口及び空気排出口を有するケースと、 前記ケースの内部において、前記空気流入口と隣接して配置される送風機と、 前記ケースの内部に配置されるフィルタ部と、 前記送風機と前記フィルタ部との間に配置され、前記送風機の吐出口から排出された空気の流動形態を制御する流体制御構造物と、 前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物と、 前記板状構造物に設けられた複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部と、 を備え、 前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、 前記複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部は、前記第1面に設けられ、 前記第2面は、前記吐出口に対面し、 前記板状構造物は、隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽し、 前記流体制御構造物は、前記送風機の吐出口より空気が流入される一端と、流入された空気が排出される他端を含み、前記一端と前記他端とを接続する側面を備え、 前記側面は、前記送風機の吐出口から前記ケースの内壁の方向に延在する第1の導管部、及び、一端が前記第1の導管部と接続され、他端が前記フィルタ部の方向に延在する第2の導管部を備え、 前記流体制御構造物の前記側面は、少なくとも一部が曲線形であることを特徴とする空気浄化装置。 【請求項2】 前記流体制御構造物の前記側面は、前記第1の導管部及び前記第2の導管部と接続され、前記ケースの内壁と平行な方向に延在する第3の導管部をさらに構成することを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。 【請求項3】 前記第2の導管部は、前記一端よりも前記他端がケースの内壁に近いことを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。 【請求項4】 前記第2の導管部は、前記一端よりも前記他端がケースの内壁から離れていることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。 【請求項5】 前記板状構造物は、前記流体制御構造物の内部に配置され、前記ケースの内壁と平行な部分を有することを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。 【請求項6】 前記紫外線発光ダイオードを含む光源部から紫外線が照射される方向は、前記送風機によって送られる空気の下流方向であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化装置。 【請求項7】 空気流入口及び空気排出口を備えるケースと、 前記ケースの内部において、前記空気流入口と隣接して配置される送風機と、 前記送風機と前記ケースの空気排出口との間に配置され、前記送風機の吐出口から排出された空気が通過するフィルタ部と、 前記送風機と前記フィルタ部との間に配置された第1の流体制御構造物と、 前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物と、 前記板状構造物に設けられた複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部と、 前記フィルタ部と前記ケースの空気排出口との間に配置された第2の流体制御構造物と、を備え、 前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、 前記複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部は、前記第1面に設けられ、 前記第2面は、前記吐出口に対面し、 前記板状構造物は、隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽し、 前記第1の流体制御構造物は、前記送風機の吐出口より空気が流入される一端と、流入された空気が排出される他端を含み、前記一端と前記他端とを接続する側面を備え、 前記側面は、前記送風機の吐出口から前記ケースの内壁の方向に延在する第1の導管部、及び、一端が前記第1の導管部と接続され、他端が前記フィルタ部の方向に延在する第2の導管部を備え、 前記第1の流体制御構造物の前記側面は、少なくとも一部が曲線形であり、 前記送風機から排出された空気が、前記第1の流体制御構造物、前記フィルタ部、前記第2の流体制御構造物からなる流路を介して前記ケースの空気排出口で排出されることを特徴とする空気浄化装置。」 第4 当審の判断 1 特許法第29条第1項第3号(新規性)及び特許法第29条第2項(進歩性)について 引用文献等一覧 1.特開2001-079072号公報(原査定の引用文献1) 2.特開2005-328915号公報(原査定の引用文献2) (以下、平成30年8月13日付けの拒絶理由通知で引用された文献) 3.登録実用新案第3142204号公報 4.特開2002-078782号公報 5.特開2004-261412号公報 6.特開2011-056155号公報 7.特開2003-135576号公報 8.国際公開第2012/117547号 9.特開2006-322648号公報 10.特開2004-100597号公報 11.特開2003-180805号公報 12.特開2002-102654号公報 13.特開2001-314495号公報 14.実願平03-097409号(実開平05-047732号)のCD-ROM 15.特開平06-218214号公報 16.特開平09-108517号公報 17.特開2007-100635号公報 18.特開2005-237954号公報 19.特開2000-271486号公報 20.特開平7-311519号公報 21.特開2006-271636号公報 (以下、平成31年3月12日付けの拒絶査定の備考欄に記載された文献) 22.特開2013-103184号公報 23.特開平10-277355号公報 24.特開2002-095924号公報 25.特開2009-072430号公報 26.特開2008-104739号公報 27.特開2007-130042号公報 28.特開2001-009016号公報 29.特開2012-050979号公報 30.特開2003-287354号公報 31.特開2000-121111号公報 32.特開平9-253189号公報 33.特開平9-209937号公報 (1)引用文献の記載事項 ア 引用文献1 (ア)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2001-079072号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の記載がある。(下線は当審が付加した。「…」は当審による省略を表す。以下同様。) a 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、空気中に含まれる臭気成分を脱臭する光触媒付脱臭フィルタと、この光触媒に紫外線を照射させる紫外線照射装置とを備える空気清浄器に関する。 【0002】 【従来の技術】 上記のような空気清浄器において、例えば実開平2-83027号公報記載のごとく、光触媒への紫外線照射率向上のため、紫外線を照射するランプをケース内の通風路の中央に設けているものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 上記のような従来の空気清浄器では、上記ランプがケース内の通風路の中央に設けられていることにより、ケース内の通風抵抗が大きくなり、ケース内の空気流の圧力損失が増加するという問題が発生している。 【0004】 本発明は、上記問題点に鑑み、紫外線照射装置の設置によるケース内での空気流の圧力損失増加を防止することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記目的を達成させるために以下の技術的手段を用いる。 【0006】 請求項1記載の発明では、空気吸込口(3)から空気吹出口へ空気を導く空気通路(2、11)と、この空気通路(2、11)内において上記空気吸込口(3)から上記空気吹出口にかけて空気流を発生する送風手段(5)と、上記空気中に含まれる臭気成分を脱臭する脱臭材にて構成され、紫外線が照射されると励起する触媒が担持されているフィルタ部材(6)と、このフィルタ部材(6)に担持された上記触媒に紫外線を照射する紫外線照射手段(12、20)とを備えた空気清浄器において、 上記紫外線照射手段(12、20)が、上記空気通路(2、11)の内壁面に設けられていることを特徴としている。 … 【0009】 これら請求項1?3の発明によると、空気通路(2、10、11)内の通風抵抗は上記従来技術と比較して格段に小さくなり、その結果、空気通路(2、10、11)内での空気流の圧力損失増加を防止することができる。」 b 「【0046】 (第4実施形態) 本実施形態は、上記第1、3実施形態に対して、紫外線照射手段として、光触媒付フィルタ6に対向する平面部全体で紫外線を照射する面光源20を用い、更に、面光源20の紫外線照射面21が光触媒付フィルタ6の平面部に対して略平行となるようにしたものである。以下、その詳細について図8?11を用いて説明する。なお、図8は本実施形態の図1相当図、図9は面光源20の斜視図、図10は図9のC-C断面図、図11は平板24の平面図である。 【0047】 図8に示すように、光触媒付脱臭フィルタ6に紫外線を照射し、ケース2内壁面にほぼ沿った板状の面光源20が、ケース2内壁面のうち、光触媒付脱臭フィルタ6下方側部位に設けられている。なお、面光源20は、光触媒付脱臭フィルタ6に対向する平面部にて紫外線照射面21をなしており、この紫外線照射面21が光触媒付脱臭フィルタ6の空気通過面6aに対して略平行となっている。ここで、光触媒付脱臭フィルタ6の空気通過面6aは、紫外線が照射される平面部、すなわち請求項7における「フィルタ部材の平面部」となっている。 【0048】 また、22は、光触媒付脱臭フィルタ6にて脱臭した空気を車室内へ吹出す空気吹出口である。 【0049】 面光源20は、図9に示すように、それぞれガラス製の、発光部23および平板24にて構成されており、平板24上には2つの電極25、26が設けられている。この電極25、26間には、バッテリ(図示しない)からの供給電圧が、D/A変換器(図示しない)にて交流電圧に変換された後、印加されるようになっている。 【0050】 また、図10において、発光部23と平板24との間に形成される空間27には、希ガス(本実施形態ではキセノン)が封入され、発光部23の内面28には蛍光体が塗布されている。 【0051】 また、電極25、26は、図11に示すように、それぞれ互い違いに設けられており、電極25、26間に上記交流電圧が印加されると放電が起こり、上記キセノンが励起して上記蛍光体に衝突することによって、紫外線照射面21から紫外線が略垂直に照射されるようになっている。 【0052】 本実施形態の作動としては、乗員によって空気清浄ユニット1の再生運転の作動が指示されると、面光源20が発光するとともにファン5が駆動し、光触媒付脱臭フィルタ6の空気通過面6aに対して紫外線が略垂直に照射され、上記光触媒が励起して上記脱臭フィルタに吸着している臭気成分を酸化分解して脱臭フィルタが再生される。 【0053】 本実施形態によると、紫外線照射手段として、光触媒付脱臭フィルタ6に対向する平面部全体で紫外線照射面21をなし、ケース2内壁面にほぼ沿った板状の面光源20を用いているので、上記第1実施形態のようにLEDを複数設ける必要なく、光触媒付脱臭フィルタ6に当たる紫外線量のむらを防止して、光触媒付脱臭フィルタ6への紫外線照射率を向上できる。 【0054】 また、面光源20の紫外線照射面21から略垂直に紫外線が照射されるともに、紫外線照射面21と光触媒付脱臭フィルタ6の空気通過面6aとが略平行となっているため、光触媒付脱臭フィルタ6の空気通過面6aに対して略垂直に紫外線を照射し、空気通過面6aの全面に均等な量の紫外線を当てることができる。その結果、より効果的に光触媒付脱臭フィルタ6への紫外線照射率を向上できる 。」 c 「 」(図8) d 「 」(図9) e 「 」(図10) f 「 」(図11) (イ) 引用発明 上記(ア)から、引用文献1には、「第4実施形態」に基づく発明として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。 「空気吸込口及び空気吹出口を有し、空気吸込口から空気吹出口へ空気を導く空気通路をなすケースと、 前記ケースの内部において、前記空気吸込口と隣接して配置され、空気流を発生する送風手段であるファンと、 前記ケースの内部に配置され、前記空気中に含まれる臭気成分を脱臭する脱臭材にて構成され、紫外線が照射されると励起する触媒が担持されている光触媒付脱臭フィルタと、 前記ケース内壁面にほぼ沿って設けられた平板と、 前記平板上に設けられ、前記フィルタに担持された前記触媒に紫外線を照射する紫外線照射手段であり、放電により発光する発光部と、 を備え、 前記平板は、発光部に対向する面及びケース内壁面にほぼ沿った面を有し、 前記空気通路が前記送風手段から前記フィルタに向かって狭くなり、前記フィルタの断面積よりも前記空気吹出口の断面積が小さい、空気清浄器。」 イ 引用文献2 (ア)本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2005-328915号公報(以下、「引用文献2」という)には、次の記載がある。 a 「【0009】 本発明はかかる従来の事情に対処するためになされたものであり、無人の閉空間内において、ガスの臭い濃度が高い場合や周囲の天井、壁ないし床に分解すべき物質が吸着している場合であっても、より良好に浄化作用を発揮することが可能なガス浄化装置およびガス浄化方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明に係るガス浄化装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、浄化対象ガスのガス流路上に設けられた光触媒と、この光触媒を活性化するための放電光を生成し、かつ放電により前記浄化対象ガスからオゾンを発生させる放電電極と、前記浄化対象ガスの流れを形成して前記浄化対象ガスとともに放電により発生させた前記オゾンを無人の閉空間に放出させる駆動用ファンとを有することを特徴とするものである。」 b 「【0015】 図1は本発明に係るガス浄化装置の第1の実施形態を示す構成図であり、図2は、図1に示すガス浄化装置1の装置本体の詳細構成図である。 【0016】 ガス浄化装置1は、屋内のゴミステーションやコンテナ等の無人の閉空間2内部に設けられ、装置本体3と散水部4とを有する。装置本体3は、収納ケース5内に駆動用ファン6、放電反応部7、高電圧電源8および制御回路9を設けて構成される。そして、収納ケース5の吸気口5aから駆動用ファン6、放電反応部7、排気口5bを経由して浄化対象ガスXのガス流路10が形成される。 【0017】 放電反応部7は、放電電極11および光触媒モジュール12を備える。光触媒モジュール12は、三次元網目状のセラミックス基体の表面に例えば酸化チタン等の光触媒を担持させて構成される。光触媒モジュール12は、例えば駆動用ファン6のファン送風口6a側に形成されたガス流路10上に設けられ、光触媒モジュール12を浄化対象ガスXが通過できるように構成される。但し、駆動用ファン6の上流側に光触媒モジュール12を設けてもよい。そして、駆動用ファン6の駆動により閉空間2内部の浄化対象ガスXを収納ケース5内部に形成されたガス流路10に導く一方、収納ケース5から閉空間2に排出する浄化対象ガスXの流れを形成することができる。 【0018】 放電電極11は、高電圧電源8から電圧が印加されることにより放電光とともにオゾンを発生させ、発生させた放電光に含まれる紫外線を光触媒モジュール12が担持する光触媒に照射して活性化できるように構成される。尚、放電電極11に電圧を印加するための高電圧電源8は、収納ケース5の外部に設けてもよい。また、紫外線を光触媒モジュール12の光触媒に照射可能であれば、放電電極11の形状および位置は任意である。さらに、光触媒モジュール12は、三次元網目状のセラミックス基体に光触媒を担持させる構成のみならず、光触媒と浄化対象ガスXとが接触可能な構成であればよい。 【0019】 また、光触媒モジュール12の下流側のガス流路10は収納ケース5の排気口5bに導かれる。このため、ガス流路10内に導かれた空気等の浄化対象ガスXはオゾンとともに収納ケース5の排気口5bから閉空間2内部に放出するように構成される。収納ケース5の排気口5bは、閉空間2内部において、臭いの原因となる物質等の分解すべき物質がより多量に吸着されていると想定される部位に向けられ、オゾンが良好に当該部位に向けて放出される構造とされる。例えば、閉空間2がコンテナである場合には、コンテナの天井2aおよび四方の壁2bが金属製であるのに対し、床2cは物質を吸着し易い木製であることが多いため、収納ケース5の排気口5bは、床2cに向けられる。」 c 「 」(図2) (イ) 引用発明 上記(ア)から、引用文献2には、「第1の実施形態」に基づく発明として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。 「吸気口及び排気口を有する収納ケースと、 前記収納ケースの内部において、前記吸気口に隣接して配置される駆動用ファンと、 前記収納ケースの内部に配置される光触媒モジュールと、 前記光触媒モジュールと前記駆動用ファンとの間に配置され、光触媒を活性化するための紫外線を含む放電光を生成し、かつ放電によりオゾンを発生させる放電電極と、を備える、 ガス浄化装置。」 (2)引用発明1との対比・判断について (2-1)請求項1に係る発明について ア 引用発明1と請求項1に係る発明との対比 引用発明1の「空気吸込口」、「空気吹出口」、「ケース」、「ファン」、「光触媒付脱臭フィルタ」、「平板」、「発光部に対向する面」、「ケースの内壁面にほぼ沿った面」及び、「発光部」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「空気流入口」、「吸気排出口」、「ケース」、「送風機」、「フィルタ部」、「板状構造物」、「第1面」、「第2面」及び、「光源部」に相当する。また、引用発明1の「平板」は、上記(1)ア(ア)cの図8から、「ファン」と「光触媒付脱臭フィルタ」との間に位置しているから、引用発明1において、平板が「ケース2内壁面にほぼ沿って設けられ」ていることは、請求項1に係る発明において、板状構造物が「前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置され」ていることに相当する。 また、引用発明1が「空気吸込口から空気吹出口へ空気を導く空気通路」を有し「前記空気通路が前記送風手段から前記フィルタに向かって狭くな」ることは、請求項1に係る発明が「前記送風機と前記フィルタ部との間に配置され、前記送風機の吐出口から排出された空気の流動形態を制御する流体制御構造物」を備え、「前記流体制御構造物は、前記送風機の吐出口より空気が流入される一端と、流入された空気が排出される他端を含み、前記一端と前記他端とを接続する側面を備える」ことに相当する。 イ 一致点及び相違点 以上のことから、請求項1に係る発明と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 空気流入口及び空気排出口を有するケースと、 前記ケースの内部において、前記空気流入口と隣接して配置される送風機と、 前記ケースの内部に配置されるフィルタ部と、 前記送風機と前記フィルタ部との間に配置され、前記送風機の吐出口から排出された空気の流動形態を制御する流体制御構造物と、 前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物と、 前記板状構造物に設けられた光源部と、 を備え、 前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、 前記光源部は、前記第1面に設けられ、 前記流体制御構造物は、前記送風機の吐出口より空気が流入される一端と、流入された空気が排出される他端を含み、前記一端と前記他端とを接続する側面を備える、 空気浄化装置。 <相違点1-1> 請求項1に係る発明の板状構造物は、「複数の紫外線発光ダイオードを含む」光源部を有するのに対し、引用発明1に係る平板は、「放電により発光する」発光部を用いている点。 <相違点1-2> 請求項1に係る発明の板状構造物の「第2面」は、「前記吐出口に対面」しているのに対し、引用発明1に係る平板の「ケース内壁面にほぼ沿った面」は、この点が特定されていない点。 <相違点1-3> 請求項1に係る発明の板状構造物は「隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽」するものであるのに対し、引用発明1に係る平板はこの点が不明である点。 <相違点1-4> 請求項1に係る発明は、「前記側面は、前記送風機の吐出口から前記ケースの内壁の方向に延在する第1の導管部、及び、一端が前記第1の導管部と接続され、他端が前記フィルタ部の方向に延在する第2の導管部を備え、前記流体制御構造物の前記側面は、少なくとも一部が曲線形であることを特徴とする」のに対し、引用発明1はこの点が特定されていない点。 ウ 相違点についての検討 <相違点1-2>について、引用文献1には、引用発明1の「平板」の「ケース内壁面にほぼ沿った面」を、空気吹出口(請求項1に係る発明における「吐出口」に相当)に対面させる点について、記載も示唆もされていない。 まず、この点が設計事項であるか検討するに、請求項1に係る発明における「板状構造物」は、「第2面」が「前記吐出口に対面」している配置となっていることについて、本願明細書は、「板状構造物644の一表面は流路方向と対向するように配置されることにより、ケース610内の空気の流れを妨げることができる。」(【0057】)、「板状構造物644を通過する間、空気の流速が遅くなることにより、空気がフィルタ部630と反応できる時間を増加させることができる。」(【0058】)と記載されている。請求項1における「板状構造物」は「前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ」るものであることも考慮すると、請求項1に係る発明における「板状構造物」における「第2面」が「前記吐出口に対面」している配置となっていることは、空気の流れを妨げ、フィルタ部における反応時間を増加させるという技術的意義を備えたものであるといえる。一方、引用文献2乃至33を考慮しても、このような技術的意義のもとで、「前記吐出口に対面」した「第2面」を有する平板を空気清浄器に設けることが一般に行われているとはいえないから、引用発明1の「平板」の「ケース内壁面にほぼ沿った面」を、空気吹出口に対面させる変更を行うことが当業者にとって容易になしうる設計事項であるということもできない。 次に、この点が他の引用文献に記載された事項と組み合わせることにより当業者が容易に想到できるか検討するに、引用文献2乃至33には、本願請求項1に係る、送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物」であって、「前記板状構造物に設けられた複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部」を備え、「前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、前記複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部は、前記第1面に設けられ、前記第2面は、前記吐出口に対面し、前記板状構造物は、隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽する」ものである板状構造物に相当する部材が記載も示唆もされていない(特に、引用文献25については【0001】、【0009】?【0026】、図1?4、引用文献26については【0001】、【0030】?【0059】図1?3、11、12参照)。そうすると、引用発明1及び引用文献2乃至33に基づいて、引用発明1の「平板」の「ケース内壁面にほぼ沿った面」を、空気吹出口に対面させる変更を行うことを、引用発明1及び引用文献2乃至33の記載から当業者が容易に想到し得たとはいえない。 以上から、引用発明1及び引用文献2乃至33の記載に基づいて、<相違点1-2>を解消することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 エ 小括 そうすると、そのほかの相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は引用発明1ではなく、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2乃至33の記載に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-2)請求項2?6について 請求項2?6は請求項1を引用するものであり、請求項2?6に係る各発明は、請求項1と同様に、板状構造物の「第2面」が「前記吐出口に対面」しているという発明特定事項を備えるものであるから、請求項1に係る発明と同じ理由により、請求項2?6に係る各発明は、引用発明1ではなく、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2乃至33の記載に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2-3)請求項7について 請求項7は請求項1と同様に空気浄化装置の発明であり、請求項1と同様に、板状構造物の「第2面」が「前記吐出口に対面」しているという発明特定事項を備えるものであるから、請求項1に係る発明と同じ理由により、請求項7に係る発明は、引用発明1ではなく、当業者であっても、引用発明1並びに引用文献2乃至33の記載に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)引用発明2との対比・判断について (3-1)請求項1に係る発明について ア 引用発明2と請求項1に係る発明との対比 引用発明2における「吸気口」、「排気口」、「収納ケース」、「駆動用ファン」、「光触媒モジュール」及び「ガス浄化装置」は、それぞれ、請求項1に係る発明の「空気流入口」、「空気排出口」、「ケース」、「送風機」、「フィルタ部」及び「空気浄化装置」に相当する。 引用発明2における「放電電極」は、紫外線を含む放電光とともにオゾンを発生するものであるから、請求項1に係る発明の「複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部」と、紫外線を発生させる光源部である点で共通するが、「複数の紫外線発光ダイオードを含む」光源部ではない点で相違する。 イ 一致点及び相違点 以上のことから、請求項1に係る発明と引用発明2との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 空気流入口及び空気排出口を有するケースと、 前記ケースの内部において、前記空気流入口と隣接して配置される送風機と、 前記ケースの内部に配置されるフィルタ部と、 紫外線を発生させる光源部と、を備える、 空気浄化装置。 <相違点2-1> 請求項1に係る発明は、「前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物」であって、「前記板状構造物に設けられた複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部」を備え、「前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、前記複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部は、前記第1面に設けられ、前記第2面は、前記吐出口に対面し、前記板状構造物は、隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽する」ものである板状構造物を備えるのに対し、引用発明2は当該板状構造物に相当する部材を備えると特定されていない点。 <相違点2-2> 請求項1に係る発明は「前記送風機と前記フィルタ部との間に配置され、前記送風機の吐出口から排出された空気の流動形態を制御する流体制御構造物」を備え、「前記流体制御構造物は、前記送風機の吐出口より空気が流入される一端と、流入された空気が排出される他端を含み、前記一端と前記他端とを接続する側面を備え、前記側面は、前記送風機の吐出口から前記ケースの内壁の方向に延在する第1の導管部、及び、一端が前記第1の導管部と接続され、他端が前記フィルタ部の方向に延在する第2の導管部を備え、前記流体制御構造物の前記側面は、少なくとも一部が曲線形であることを特徴とする」のに対し、引用発明2は上記「流体制御構造物」にあたるものを備えるか不明である点。 ウ 相違点についての検討 <相違点2-1>について、引用文献2には、請求項1に係る発明における、「前記送風機の吐出口と前記フィルタ部との間に配置された板状構造物」であって、「前記板状構造物に設けられた複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部」を備え、「前記板状構造物は、第1面及び前記第1面の反対側の第2面を有し、前記吐出口と前記フィルタ部とによって挟まれた領域に設けられ、前記複数の紫外線発光ダイオードを含む光源部は、前記第1面に設けられ、前記第2面は、前記吐出口に対面し、前記板状構造物は、隣接する前記紫外線発光ダイオードを含む光源部の間の空気の流れを遮蔽する」ものである板状構造物に相当する部材が記載も示唆もされていない。また、引用文献1、3乃至33(特に、引用文献25については【0001】、【0009】?【0026】、図1?4、引用文献26については【0001】、【0030】?【0059】図1?3、11、12参照)にも、上記板状構造物に相当する部材が記載も示唆もされていない。 してみれば、引用発明2並びに引用文献1、3乃至33の記載に基づいて、<相違点2-1>を解消することは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 エ 小括 そうすると、そのほかの相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は引用発明2ではなく、請求項1に係る発明は、当業者であっても引用発明2並びに引用文献1、3乃至33の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない (3-2)請求項2?6について 請求項2?6は請求項1を引用するものであり、請求項2?6に係る各発明は、請求項1と同様に、上記板状構造物を備えるものであるから、請求項1に係る発明と同じ理由により、請求項2?6に係る各発明は引用発明2ではなく、当業者であっても、引用発明2並びに引用文献1、3乃至33の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3-3)請求項7について 請求項7は請求項1と同様に空気浄化装置の発明であり、請求項1と同様に、上記板状構造物を備えるものであるから、請求項1に係る発明と同じ理由により、請求項7に係る発明は引用発明2ではなく、当業者であっても、引用発明2並びに引用文献1、3乃至33の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5 原査定について 原査定における引用文献1に基づく拒絶理由について、審判請求時の補正により、請求項1?7に係る発明は、「前記第2面は、前記吐出口に対面し」という発明特定事項を有するものとなっており、このことに起因して、上記第4で認定した<相違点1-2>が生じている。そして、上記第4に説示したとおり、当業者であっても、引用文献1に記載の発明に基づいて<相違点1-2>を解消することに容易に想到するとはいえないから、当該拒絶理由を維持することはできない。 原査定における引用文献2に基づく拒絶理由について、拒絶査定の備考欄では「放電電極11は『板状構造物』及び『紫外線光源部』に相当する」との認定がなされているところ、引用文献2の放電電極11は板形状であることが記載も示唆もされていないから、放電電極11が板状構造物に相当するとはいえない。そして、放電電極11が板状構造物に相当するとはいえないことを踏まえた上で、上記第4で説示したとおり、上記<相違点2-1>が認定され、<相違点2-1>を解消することは当業者が容易に想到し得たとはいえないとの結論が導かれるから、当該拒絶理由を維持することはできない。 したがって、原査定の理由1?2を維持することはできない。 第6 むすび 以上の通り、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論の通り審決する。 |
審決日 | 2020-08-18 |
出願番号 | 特願2014-181149(P2014-181149) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A61L)
P 1 8・ 113- WY (A61L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 松井 一泰 |
特許庁審判長 |
菊地 則義 |
特許庁審判官 |
金 公彦 岡田 隆介 |
発明の名称 | 空気浄化装置 |
代理人 | 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ |