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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1365533
審判番号 不服2019-15270  
総通号数 250 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2020-10-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-14 
確定日 2020-09-08 
事件の表示 特願2015-156577「磁性トナー」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月22日出願公開、特開2016- 38588、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2015-156577号(先の出願に基づく優先権主張 平成26年8月7日)は、平成27年8月7日にされた特許出願であって、その手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。
令和元年 5月24日付け:拒絶理由通知書
令和元年 8月 5日付け:手続補正書、意見書
令和元年 8月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和元年11月14日付け:審判請求書
令和元年11月14日付け:手続補正書
令和元年12月24日付け:上申書
令和元年12月24日付け:手続補正書
令和2年 1月29日付け:応対記録
令和2年 2月25日付け:上申書
令和2年 7月 3日付け:面接記録
令和2年 7月13日付け:上申書

2 原査定の概要
原査定の拒絶理由の概要は以下のとおりである。

(1)新規性
本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

(2)進歩性
本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献2及び参考文献A?Gに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

なお、原査定の拒絶理由に引用された引用文献は、以下のとおりであり、引用文献2は主引用発明が記載された文献であり、参考文献A?Gは一般技術を示す文献とされている。

引用文献2:特開2005-202131号公報
参考文献A:特開2004-258328号公報
参考文献B:特開2005-157318号公報
参考文献C:特開平6-316103号公報
参考文献D:特開2005-202133号公報
参考文献E:特開2006-251400号公報
参考文献F:特開2011-90168号公報
参考文献G:特開2005-140952号公報

3 本願発明
本件出願の請求項1?請求項3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項によって特定されるとおりの、以下のものである。
「 【請求項1】
結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子、無機微粒子a及び有機無機複合微粒子を有する磁性トナーであって、
該磁性トナーは、
(i)真比重が1.40g/cm^(3)以上1.70g/cm^(3)以下であり、
(ii)磁場796kA/mにおける飽和磁化が10Am^(2)/kg以上20Am^(2)/kg以下であり、
該無機微粒子aは、体積抵抗率が1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下の金属酸化物であり、
該有機無機複合微粒子は、
(i)樹脂粒子に無機微粒子bが埋め込まれた構造を有し、
(ii)真比重が1.50g/cm^(3)以上1.75g/cm^(3)以下であり、
(iii)形状係数SF-2が103以上120以下であり、
(vi)該無機微粒子bがシリカ微粒子である、
ことを特徴とする磁性トナー。

【請求項2】
該有機無機複合微粒子は、
(iv)表面に、該無機微粒子bに由来する凸部を複数有し、
(v)一次粒子の個数平均粒径(D1)が50nm以上200nm以下である、請求項1に記載の磁性トナー。

【請求項3】
該無機微粒子aの含有量が、磁性トナーの質量を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下である、請求項1または2に記載の磁性トナー。」

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献2について
原査定の拒絶の理由で引用文献2として引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2005-202131号公報(以下、同じく「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す。以下、同様である。

ア 「【請求項1】
少なくとも、トナー粒子と、外添剤と、を含む一成分系の静電潜像現像用トナーであって、該外添剤が、無機粒子を含む複合樹脂粒子を含有することを特徴とする一成分系の静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子の体積平均粒子径が、0.05?2μmの範囲であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
…(省略)…
【請求項4】
前記複合樹脂粒子に含まれる無機粒子が、複合樹脂粒子表面に一部露出していることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。
…(省略)…
【請求項8】
前記トナー粒子が、少なくとも、結着樹脂及び磁性微粒子を含むトナー粒子であることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の静電潜像現像用トナー。」

イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法において、静電潜像の現像のために使用する静電荷像現像用現像剤、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、静電複写方式における乾式現像方法が、プリンター、ファクシミリ等の個人向けのパーソナルコピー分野に使用され始めるに伴って、それらに使用される現像装置は、ますます小型化、軽量化が要求されるようになり、これらに対応するための種々の改善が行われている。
…(省略)…
【0017】
一方、帯電・流動性の向上を目的として添加される無機酸化物が、一般に使用されるチタニアの場合は、帯電速度はシリカに対して速く、かつチタニアが持つ低抵抗の為か帯電分布がシャープになるという特徴をもっている。また、これらの添加は現像剤のチャージアップを抑制し、ゴースト現象の抑制効果もみられる。しかしながら、チタニアを添加する場合は、トナーに高帯電を付与することができず、連続使用による搬送量の低下、帯電低下による濃度再現性の低下、背景部カブリ、機内汚れを生じ易い。
【0018】
この帯電性を改善する目的で、疎水性酸化チタンをトナーに外添する方法が提案されている(特許文献11?13参照。)。疎水性酸化チタンは、その表面をシラン化合物、シランカップリング剤、シリコーンオイル等で処理することにより得られる。この方法により、確かに帯電性は未処理の親水性チタニアに対して上げることは可能であるが、一成分トナーにおいては、処理剤の種類及び量によりある程度の帯電レベル改善はできるものの、その帯電レベルはまだ満足できるレベルではない。また、環境依存性においても限界がある。
また、処理剤で酸化チタンの疎水化を上げることにより、帯電レベルの向上、環境依存性の向上は、従来の親水性酸化チタンより確かに優れてはくるが、逆に酸化チタンの持つ帯電速度の速さ及び帯電分布のシャープさ等において、従来の酸化チタンと比較して大きく劣ってくるというのが実情である。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
本発明は、従来の技術における上記した実情に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明は、環境によらず長期に亘り、現像性、帯電性、を低下させることなく、高画質の画像が安定して形成可能な一成分系の静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
また、本発明は、高温高湿下で、タルク含有量の多い紙を用いて画像形成を行っても画像流れが発生せず、かつトナー凝集等による2次障害のない一成分系の静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
また、本発明は、環境によらず長期に亘り、トナーの帯電性及び搬送性を安定化させるとともに、低現像性、カブリ等が現れることなく、かつクリーニング性が良好であり、フィルミングや融着の発生がなく、安定して高画質な画像が得られる画像形成方法及び画像形成装置を提供することを目的とする。」

ウ 「【0104】
更に、本発明においては、一成分系現像剤に適度な流動性及び帯電性を与える目的での流動化剤微粒子の添加、電荷交換性を向上する目的での導電粉、クリーニング性の向上や、感光体へのトナーや外添剤、タルクの付着による黒点、白点、白ぬけ、コメット、フィルミング等の防止目的での滑剤、研磨剤等の添加剤を添加してもよい。
前記流動化剤微粒子、添加剤としては、疎水性シリカ、疎水化処理微粒子酸化チタン、アルミナ等の無機微粉末、脂肪酸或いはその誘導体及び金属塩等の有機微粉末、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂もしくはスチレン系樹脂等の樹脂微粉、酸化セリウム、マグネタイト等が挙げられ、これらを単独又は併用して用いることができる。」

エ 「【実施例】
【0137】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」は総て「質量部」を意味する。
また、下記の説明において、トナーの粒径は、コールターカウンター社製粒度測定機TA-IIによりアパーチャー径100μmで測定した。
【0138】
<複合樹脂粒子の作製>
-複合樹脂粒子A-
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した2Lの反応フラスコに、メラミン50.0部、37%ホルマリン96.5部、水性シリカゾル[日産化学工業(株)製、スノーテックスS(商品名):SiO_(2)濃度30.5質量%、pH10.0、平均粒子径7.9nm]20.7部、水720部を仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.7に調整した。
【0139】
次に、上記混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次に温度を70℃を維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整した。約20分後に反応系内が白濁して硬化メラミン樹脂粒子が析出した。その後、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、得られた反応液を濾過、乾燥して白色の複合樹脂粒子Aを得た。
【0140】
得られた複合樹脂粒子Aの体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置[マスターサイザー2000(商品名)マルバーン社製]で測定したところ、0.3μmであった。また、個数平均粒子径d_(50)は0.27μmであり、1/2×d_(50)以下の粒径を有する微粒子の割合は5個数%、2×d_(50)以上の粒径を有する微粒子の割合が15個数%であった。
【0141】
この硬化メラミン樹脂粒子(複合樹脂粒子A)をそのままの状態で走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、およびスライス片の状態で透過型電子顕微鏡-エネルギ-分散型X線分析(TEM-EDX)にて観察したところ、該粒子は球状で、かつコロイダルシリカが該粒子表面付近に偏在していることが確認された。」

オ 「【0148】
[実施例1?4、比較例1?4]
(実施例1)
<トナーAの作製>
・結着樹脂:スチレン/n-ブチルアクリレート共重合体 50部
(共重合比:80/20、Mn:4,000、
Mw:200,000、MI:10、Tg:59℃)
・マグネタイト(平均粒径:0.2μm) 45部
・負帯電性帯電制御剤(Fe含有アゾ染料) 1.5部
・ポリプロピレンワックス 2.5部
(商品名:660P、三洋化成社製)
【0149】
上記組成の混合物をヘンシェルミキサーにより粉体混合し、これを設定温度140℃のエクストルーダーにより熱混練した。これを冷却した後、粗粉砕及び微粉砕を行って、50%体積径D_(50)が6.6μmの粉砕物を得た。さらに、この粉砕物を分級し、D_(50)が7.2μm、5μm以下のものが22体積%の分級品を得た。
得られたトナー分級品100部に対して、複合樹脂粒子Aを0.5部及び粒径12nmのシリコーンオイル処理シリカ1.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて外添させることによりトナーAを得た。
【0150】
得られたトナーAを、画像形成装置(富士ゼロックス社製Able1405)に用いるとともに、以下に示す条件により画像の形成を行ってトナーの評価を行った。
・現像バイアス(AC):2.0kVp-p (周波数2.4kHz)
・現像バイアス(DC):-290V
・VHigh:-400V、VLow :-50V
・静電潜像保持体と現像剤担持体との間隔:250μm
・操作環境:10℃で15%RH(低温低湿)と、30℃で85%RH(高温高湿)
・トナーの保管環境:温度45℃及び湿度90%の室内に48時間放置
【0151】
画像形成装置における現像剤担持体としては、中空状Al円筒管に下地膜及びMo系皮膜が形成されたものを用いた。その中空状円筒管には、引き抜き成形した後、センタレス研磨とガラスビーズによるブラスト処理を施したAl管を用い、その下地膜にはZn膜が形成されたものを使用した。Zn膜の形成は、1リットル中にZnを約10g、NaOHを約100g含む水溶液を用いた無電解メッキにより行った。Mo系皮膜の形成は、陰極電界処理時にモリブデン酸イオン(MoO_(4)^(2-))を含む処理液(商品名:5C011、日本表面化学株式会社製)を用いて、基体を陰極として電解処理を行った。
得られた現像剤担持体の表面粗さは、Raが1.8であった。また、Mo系皮膜の膜厚は3.1μmであった。
【0152】
上記の画像形成によるトナーの評価は、初期画質及び5000枚複写後の画質について行った。画像濃度(SAD)は、X-rite社製の濃度測定器、X-rite404Aによって測定した。
ゴーストの評価は、非画像部と画像部の現像履歴に対応する画像の濃度差により判定した。画像流れについては、5000枚複写後のベタ画像について評価を行った。
また、トナー保管後の濃度ムラについては、全面ベタ画像内の最大濃度と最小濃度の差により判定した。
なお、転写紙としては、富士ゼロックス社製J紙を使用した。
【0153】
(実施例2)
実施例1において、現像剤担持体としてMo系皮膜を形成していないAl管を用いたこと以外は、実施例1と同様に画像形成を行ってトナーの評価を行った。
【0154】
(実施例3)
実施例1において、トナー粒子に外添させた複合樹脂粒子Aに代えて、複合樹脂粒子Bを1.0部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトナーの評価を行った。
【0155】
(実施例4)
実施例1において、トナー粒子に更に粒径30nmのシランカップリング処理した疎水化チタニア1.0部用いたこと以外は、実施例1と同様にしてトナーの評価を行った。」

カ 上記ア?オに基づけば、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「少なくとも、トナー粒子と、外添剤と、を含む一成分系の静電潜像現像用トナーであって、該外添剤が、無機粒子を含む複合樹脂粒子を含有し、
前記複合樹脂粒子に含まれる無機粒子が、複合樹脂粒子表面に一部露出し、
前記トナー粒子が、少なくとも、結着樹脂及び磁性微粒子を含むトナー粒子である、以下の工程で得られた、一成分系の静電潜像現像用トナー。
メラミン50.0部、37%ホルマリン96.5部、水性シリカゾル20.7部、水720部を仕込み、25%アンモニア水にてpHを8.7に調整し、混合物を撹拌しながら昇温し、温度を70℃に保ち、30分反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製し、温度を70℃を維持したまま、得られた初期縮合物の水溶液にドデシルベンゼンスルホン酸の10質量%水溶液を添加してpHを7.0に調整し、温度を90℃まで昇温して3時間硬化反応を続け、冷却後、得られた反応液を濾過、乾燥して白色の複合樹脂粒子を得、複合樹脂粒子Aは球状で、かつコロイダルシリカが粒子表面に偏在しており、スチレン/n-ブチルアクリレート共重合体(共重合比:80/20、Mn:4,000、Mw:200,000、MI:10、Tg:59℃)50部、マグネタイト(平均粒径:0.2μm)45部、負帯電性帯電制御剤(Fe含有アゾ染料)1.5部、ポリプロピレンワックス2.5部の混合物をヘンシェルミキサーにより粉体混合し、設定温度140℃のエクストルーダーにより熱混練し、粗粉砕及び微粉砕を行い、分級し、分級品を得、このトナー分級品100部に対して、複合樹脂粒子を0.5部及び粒径12nmのシリコーンオイル処理シリカ1.0部を外添させ、更に粒径30nmのシランカップリング処理した疎水化チタニア1.0部用いた。」
(当合議体注:「複合樹脂粒子A」及び「複合樹脂粒子」は、後者に用語を統一した。)

(2)参考文献Aについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Aとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2004-258328号公報(以下、同じく「参考文献A」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
非磁性体のスリーブと該スリーブ内に固定配置された主磁極を含む複数の磁極を有し、スリーブを回転させ、その外周面に磁性を有する現像剤を磁気吸着させて磁気ブラシを形成し、主磁極が作る磁界内で対向する潜像担持体に磁気ブラシを摺擦させ、該摺擦領域及びその周辺で潜像担持体上の潜像を可視化する現像方法であって、主磁極が作る摺擦領域内のスリーブ表面で、法線方向磁束密度が最大となる位置での法線方向磁束密度Aが100?200mT、法線方向磁束密度が最大となる位置を通る法線上で、スリーブ表面から1mm離れた位置での法線方向磁束密度がAの60%以下であり、摺擦領域内のスリーブ表面での法線方向磁束密度がAの1/2になる2点間の角度が25°以下、主磁極と隣り合う2つの磁極のスリーブ表面での法線方向磁束密度が最大となる点を各々B、Cとし、B、C点上での法線方向磁束密度をB_(B)、B_(C)として、B、C点を通る法線上でスリーブ表面より1mm離れた点における法線方向磁束密度が各々B_(B)、B_(C)の60%以下であり、B、C点の中心角が35°以内である現像方法において、飽和磁化が0.05?30emu/gの範囲内にあるトナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
トナーの真比重が1.35?1.6g/cm^(3)であることを特徴とする請求項1 記載の画像形成方法。」

イ 以上の記載に基づけば、参考文献Aには、飽和磁化が0.05?30emu/gの範囲内にあり、真比重が1.35?1.6g/cm^(3)であるトナーという技術的事項が記載されていると認められる。

(3)参考文献Bについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Bとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2005-157318号公報(以下、同じく「参考文献B」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
少なくとも結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー母粒子を含有する磁性トナーであって、
(i)該結着樹脂がポリエステルユニットを含有しており、
(ii)該トナーの重量平均粒径(D4)が5.0?9.0μmであり、
(iii)該トナーの真比重が1.3?1.7g/cm^(3)であり、
(iv)該トナーの磁場796kA/mにおける飽和磁化が20?35Am^(2)/kgであり、
(v)該トナーにおいて、円形度が0.93以上の範囲にあるトナーを60個数%以上含有し、
(vi)該トナーの100kHzにおける誘電正接(tanδ)が、下記式(1)を満足することを特徴とする磁性トナー。
(数1)
(tanδ_(H)-tanδ_(L))/tanδ_(L) ≦ 0.20 (1)
〔式中、tanδ_(H)は、トナーのガラス転移温度(℃)+10℃での誘電正接を表し、tanδ_(L)は、トナーのガラス転移温度(℃)-10℃での誘電正接を表す。〕」

イ 以上の記載に基づけば、参考文献Bには、真比重が1.3?1.7g/cm^(3)であり、磁場796kA/mにおける飽和磁化が20?35Am^(2)/kgであるトナーという技術的事項が記載されていると認められる。

(4)参考文献Cについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Cとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開平6-316103号公報(以下、同じく「参考文献C」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】 磁石体外周にスリーブを設けたトナー担持体に対向して背面電極を配置し、トナー担持体と背面電極との間にマトリックス状の記録電極を配置し、記録電極への電圧印加の状態に応じて、記録電極と背面電極との間の記録体にトナー担持体からトナーを選択的に飛着させる直接記録方法において、上記トナーとしては、少なくとも定着用樹脂と磁性粉とを含有し、その飽和磁化が30emu/g以下の磁性トナーを使用し、かつ、上記トナー担持体の磁石体としては、複数の搬送用磁極とスリーブ上での磁束密度が650ガウス以上の現像用磁極とを有するものを用いることを特徴とする直接記録方法。」

イ 以上の記載に基づけば、参考文献Cには、定着用樹脂と磁性粉とを含有し、その飽和磁化が30emu/g以下の磁性トナーという技術的事項が記載されていると認められる。

(5)参考文献Dについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Dとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2005-202133号公報(以下、同じく「参考文献D」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
トナー及びキャリアを含有する静電潜像現像用二成分現像剤であって、該トナーが、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含むトナー粒子と外添剤とを含有してなり、該外添剤が、無機粒子を含む複合樹脂粒子を含有することを特徴とする静電潜像現像用二成分現像剤。」

イ 「【0046】
(複合樹脂粒子)
以下、まず本発明における複合樹脂粒子について詳細に説明する。
本発明において、複合樹脂粒子とは、無機粒子をその形状を保持したまま樹脂粒子内に取り込み、無機粒子の一部が樹脂粒子表面に露出した形で含有している樹脂粒子であり、樹脂粒子の表面はミクロにみれば凸凹形状の状態になっているものをいう。
…(省略)…
【0048】
本発明の複合樹脂粒子においては、好ましくは真比重を2.0以下に制御することにより、トナー粒子からの剥がれを抑制することができる。また、本発明の複合樹脂粒子は、その表面に無機粒子が埋没した形態をとっているため、樹脂粒子のみを単独で用いた場合に比べ、接触点が少なく強い凝集を形成しにくい。また、真比重を1.3以上に制御することにより、凝集分散を更に抑制することができる。本発明における複合樹脂粒子の真比重の好適な範囲は、1.4?1.8の範囲である。」

ウ 以上の記載に基づけば、参考文献Dには、外添剤が無機粒子を含む複合樹脂粒子を含有し、複合樹脂粒子の真比重が1.4?1.8の範囲であるトナーという技術的事項が記載されていると認められる。

(6)参考文献Eについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Eとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2006-251400号公報(以下、同じく「参考文献E」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
一方向に回転可能な潜像担持体の表面を帯電させる帯電工程と、帯電された前記潜像担持体表面に光を照射して潜像を形成させる潜像形成工程と、トナーを含む現像剤により前記潜像を現像しトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を被転写体に転写する転写工程と、前記被転写体にトナー像が転写された後の潜像担持体表面に残留したトナーを、前記潜像担持体表面に当接し、且つ、電圧が印加された状態で使用される導電性ブラシを備えたクリーニング手段によりクリーニングするクリーニング工程とを有する画像形成方法において、
前記クリーニング手段が、前記潜像担持体の回転方向に沿って配置された第1の導電性ブラシと第2の導電性ブラシとを含み、前記第1の導電性ブラシに印加される電圧の極性と前記第2の導電性ブラシに印加される電圧の極性とが逆極性であり、
前記トナーが、樹脂粒子中に無機微粒子を分散含有させた複合粒子を含むことを特徴とする画像形成方法。」

イ 「【0042】
また、トナー粒子に外添された複合粒子の脱落を防止するために、複合粒子の真比重は1.3?2.0の範囲内であることが好ましく、1.4?1.8の範囲内であることがより好ましい。
真比重が、2.0を超える場合には、トナー粒子に外添された複合粒子が、トナー粒子から脱落しやすくなる場合がある。一方、真比重が、1.3未満の場合には、複合粒子同士が凝集し易くなる場合がある。なお、本発明に用いられる複合粒子は、その表面近傍に無機微粒子が存在しているため、樹脂粒子のみを単独で用いた場合と比べると、粒子同士の接触点が少なく強い凝集を形成しにくいというメリットがある。」

ウ 以上の記載に基づけば、参考文献Eには、トナーが、樹脂粒子中に無機微粒子を分散含有させた複合粒子を含み、複合粒子の真比重は1.3?2.0の範囲内であることが好ましいという技術的事項が記載されていると認められる。

(7)参考文献Fについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Fとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2011-90168号公報(以下、同じく「参考文献F」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
トナー原粉に外添剤が添加された静電荷像現像用トナーであって、
外添剤は、トナー原粉と逆極性の帯電性を有する樹脂微粒子を含み、
樹脂微粒子に、該樹脂微粒子より粒子径が小さい無機微粒子が複合化されている静電荷像現像用トナー。」

イ 「【0041】
本発明において、トナーの外添剤として用いる樹脂微粒子は、無機微粒子が複合化されたものである。これにより、樹脂微粒子の比重が大きくなり、樹脂微粒子のトナー原粉への固定化が促進され、樹脂微粒子がトナー原粉から脱離し難くなる。」

ウ 以上の記載に基づけば、参考文献Fには、トナー原粉に外添剤が添加された静電荷像現像用トナーであって、外添剤は樹脂粒子に無機微粒子が複合化されたものであるという技術的事項が記載されていると認められる。

(8)参考文献Gについて
原査定の拒絶の理由で参考文献Gとして引用され、先の出願前に、日本国内又は外国において、頒布された刊行物である、特開2005-140952号公報(以下、同じく「参考文献G」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】
表面もしくは表面近傍に無機粒子を存在させた複合架橋粒子を含有することを特徴とするトナー。」

イ 「【0006】
外添剤として、無機粒子を用いる技術も有り、無機粒子はトナーと比重が近く、混合・分散性に優れ、且つ、帯電の保持性にも優れ、トナーの帯電性、即ち現像性・転写性に優れる。」

ウ 以上の記載に基づけば、参考文献Gには、外添剤としての無機粒子とトナーの比重が近ければ、混合・分散性に優れ、且つ、帯電の保持性にも優れ、トナーの帯電性、即ち現像性・転写性に優れるという技術的事項が記載されていると認められる。

2 対比及び判断
(1)対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 結着樹脂
引用発明における「結着樹脂」は、その文言の意味するとおり、本願発明1の「結着樹脂」に相当する。

イ 磁性体
引用発明における「磁性微粒子」は、技術的にみて、本願発明1の「磁性体」に相当する。

ウ 磁性トナー粒子
引用発明における「トナー粒子」は、「結着樹脂及び磁性微粒子を含む」ものであるから、本願発明1の「磁性トナー粒子」に相当する。

エ 無機微粒子a
引用発明における「粒径30nmのシランカップリング処理した疎水化チタニア」は、金属酸化物であり、その粒径からみて微粒子といえるから、本願発明1の「無機微粒子a」に相当し、「金属酸化物であり」という要件を満たす。

オ 有機無機複合微粒子
引用発明における「複合樹脂粒子」は、メラミン樹脂粒子表面にコロイダルシリカが偏在しており、「コロイダルシリカ」は、技術的にみて、本願発明の「無機微粒子b」に相当する。してみると、引用発明における「複合樹脂粒子」は、本願発明1の「有機無機複合微粒子」に相当し、「(vi)該無機微粒子bがシリカ微粒子である」とする要件を満たしている。

カ 磁性トナー
引用発明の「一成分系の静電潜像現像用トナー」は、「結着樹脂及び磁性微粒子を含む」「トナー粒子」と、「シランカップリング処理した疎水化チタニア」と、「無機粒子を含む複合樹脂粒子」とを含有するものである。したがって、引用発明の「一成分系の静電潜像現像用トナー」は、技術的にみて、本願発明1の「磁性トナー」に相当する。
そして、上記ア?オの検討結果から、引用発明の「一成分系の静電潜像現像用トナー」は、本願発明1の「磁性トナー」における、「結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子、無機微粒子a及び有機無機複合微粒子を有する」という要件を満たす。

(2)一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は、次の構成で一致する。
「結着樹脂及び磁性体を含有する磁性トナー粒子、無機微粒子a及び有機無機複合微粒子を有する磁性トナーであって、無機微粒子aは金属酸化物であり、有機無機複合微粒子は、無機微粒子bがシリカ微粒子である磁性トナー。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は、次の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1の磁性トナーは、「(i)真比重が1.40g/cm^(3)以上1.70g/cm^(3)以下であり、(ii)磁場796kA/mにおける飽和磁化が10Am^(2)/kg以上20Am^(2)/kg以下」であるのに対し、引用発明は、磁性トナーの真比重及び飽和磁化が明らかでない点。

(相違点2)
本願発明1の無機微粒子aは、「体積抵抗率が1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下」であるのに対し、引用発明は、無機微粒子aの体積抵抗率が明らかでない点。

(相違点3)
本願発明1の有機無機複合微粒子は、「(i)樹脂粒子に無機微粒子bが埋め込まれた構造を有し、(ii)真比重が1.50g/cm^(3)以上1.75g/cm^(3)以下であり、(iii)形状係数SF-2が103以上120以下」であるのに対し、引用発明は、コロイダルシリカが粒子表面に偏在し、有機無機複合微粒子の真比重及び形状係数SF-2が明らかでない点。

(3)判断
事案に鑑み、上記相違点2について検討する。
ア 引用発明の「シランカップリング処理した疎水化チタニア」の体積抵抗率が、1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下であると推認できるといえるかについて、まず検討する。
引用文献2には、「環境によらず長期に亘り、現像性、帯電性、を低下させることなく、高画質の画像が安定して形成可能な一成分系の静電潜像現像用トナー」との記載があるが、疎水性チタニアを含まない実施例もあるから、これらの効果が疎水性チタニアによる効果ということができない。そうすると、たとえ、本願明細書に「本発明に係る無機微粒子aは、金属酸化物であり、例えば、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウムが挙げられる。(【0040】)」と記載されていたとしても、引用発明の疎水性チタニアの体積抵抗率が1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下であると推認することはできない、
したがって、引用発明のトナーが、相違点2に係る構成を具備するとはいえない。

イ 次に、引用発明において、当業者が相違点2に係る構成に容易に想到し得たかについて、検討する。
引用文献2には、環境によらず長期に亘り、現像性、帯電性、を低下させることなく、高画質の画像が安定して形成可能な一成分系の静電潜像現像用トナーとの記載はあるものの(【0028】参照)、トナーの無機微粒子における体積抵抗率を特定の範囲内に調整するという技術思想は開示されていない。

また、原査定で引用された引用文献A?Gにも、上記技術思想について開示はなく、また、そのような技術思想が、当業者における先の出願時における技術常識であったことを示す証拠もない。

さらに、すすんで検討する。
先の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である、特開2000-258950号公報には、帯電の環境依存性が小さく、長期にわたり安定した画質が得られ、トナー転写における帯電変化が少なく、複数転写や多重転写においても安定した高い転写効率が得られる静電荷像現像用トナーにおいて、外添剤に用いるシランカップリング処理された酸化チタン微粒子の体積抵抗率が、1×10^(10)?1×10^(14)Ωcmであることが記載されており(【請求項1】、【0067】-【0069】参照)、同特開2002-108001号公報には、長期にわたって転写性が良好で、高画質、かつ画像ディフェクトの発生しない静電荷像現像用トナーにおいて、外添剤に用いるシランカップリング処理された酸化チタンの体積抵抗率は、1×10^(10)Ωcm?1×10^(14)Ωcmの範囲が好ましいことが記載されており(【0031】参照)、同特開2013-186411号公報には、電荷の注入によりトナーが非画像部に付着する現象(注入カブリ)の発生を抑制した画像が得られる静電荷像現像用トナーにおいて外添剤に用いられる、シラザン化合物で疎水化処理された酸化チタン粒子の体積抵抗率は、10^(10)Ω・cm以上10^(15)Ω・cm以下がよいことが記載されている(【請求項1】、【0052】、【0055】参照)。
以上によれば、先の出願前において、トナーの外添剤として使用されていた、シランカップリング処理された酸化チタン粒子の体積抵抗率は、概ね、10^(10)Ω・cm以上10^(15)Ω・cm以下のものであって、本願発明1の「1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下」のものを用いることが技術常識であったことを示す証拠もない。
また、次のように考えることもできる。
引用文献2の【0017】?【0018】に記載されているように、疎水性酸化チタンをトナーに外添する方法は、チタニアが持つ低抵抗に起因して、トナーに高帯電性を付与することができないという問題を改善するために提案されたものであることに照らせば、当業者が、引用発明の「シランカップリング処理された酸化チタン粒子」の体積抵抗率として、上記周知の範囲よりも2桁程度小さくするように、例えば、疎水化率を変更する等して調整することは想定し難いことである。
以上によれば、引用発明において、当業者が、無機微粒子aの体積抵抗率を、上記相違点2に係る数値範囲とすることに容易に想到し得たということはできない。

ウ 本願発明1の効果として、本件出願の明細書の【0130】【表7】には、無機微粒子aの体積抵抗率が相違点2の数値範囲内であれば、「現像性」、「かぶり」及び「転写効率」がいずれも良好または許容レベルであることが記載されている。ここで、無機微粒子aの体積抵抗率を1.0×10^(3)Ω・cm以上1.0×10^(8)Ω・cm以下の範囲内に調整するという技術思想がいずれの文献に記載されていないことは上記イのとおりであるから、上記効果は、引用発明や参考文献A?Gに記載された技術的事項から当業者が予測できない効果であると認められる。
したがって、上記相違点1、相違点3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、参考文献A?Gに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(4)請求項2?請求項3に係る発明について
本件出願の請求項2?3に係る発明は、いずれも、本願発明1に対してさらに他の発明特定事項を付加してなる磁性トナーの発明であるから、本願発明1の全ての発明特定事項を具備するものである。
そうしてみると、前記(3)で述べたのと同じ理由により、これらの発明も、引用文献2に記載された発明及び参考文献A?Gに記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。

第3 むすび
以上のとおり、本願発明1?3は、引用文献2に記載された発明及び参考文献A?Gに記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本件出願を拒絶することはできない。
また、他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2020-08-21 
出願番号 特願2015-156577(P2015-156577)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
P 1 8・ 113- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 福田 由紀  
特許庁審判長 里村 利光
特許庁審判官 神尾 寧
宮澤 浩
発明の名称 磁性トナー  
代理人 渡辺 敬介  
代理人 山口 芳広  
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